(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係
る貯留用バッグを製造する製造方法及び製造装置
について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る貯留用バッグ10は、
図1に示すように、樹脂シート16を袋状に成形して構成され、その内部に流動食や輸液剤(栄養剤、薬剤等)の貯留物を貯留した状態で提供される。例えば、固形物を飲み込むことが困難な患者に対しては、図示しないチューブ組立体のチューブを胃の中に挿入する一方で、体外に露出したチューブの端部に貯留用バッグ10を接続して流動経路を構築することで、貯留物である流動食を体内に供給する。
【0023】
貯留用バッグ10は、貯留物を貯留する貯留空間12aを有するバッグ本体12と、バッグ本体12に溶着されるスパウト14(吐出部材)とを備える。このスパウト14は、貯留空間12aに貯留される貯留物を貯留用バッグ10の外部に流出させる。また、スパウト14は、バッグ本体12よりも硬質に形成されることで、流動経路の構築時に、チューブ組立体との接続を容易化させる。
【0024】
バッグ本体12は、例えば、正面視で長方形状に形成される。このバッグ本体12は、後述する製造装置60により、柔軟性を有する1枚以上の樹脂シート16が重ねられて、所定部位(上下左右の4辺)が熱シール及び切断されることで製袋される。これにより、バッグ本体12は、4つの熱シール部18(トップシール部20、ボトムシール部22、一対のサイドシール部24)を有する。
【0025】
バッグ本体12の内部、すなわち熱シール部18の内側には、貯留物を所定量収容可能な容積を有する上記の貯留空間12aが形成されている。例えば、貯留物として流動食を貯留する貯留用バッグ10は、100g〜600g程度の容積の貯留空間12aを有する。勿論、貯留空間12aの容積は、貯留物の種類や用途に応じて適宜設計されてよい。また、バッグ本体12は、ボトムシール部22側やサイドシール部24側に容積を確保するためのマチ(底面部や側面部)が設けられていてもよい。
【0026】
バッグ本体12の樹脂シート16を構成する材料は、貯留物を良好に真空パックし得る樹脂材料が選択されることが好ましい。この種の樹脂材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂があげられる。或いは、樹脂シート16は、異なる樹脂材料を複合してシート状に形成したものや、複数の樹脂材料のシートを積層したものを適用してもよい。
【0027】
一方、貯留用バッグ10のスパウト14は、バッグ本体12のトップシール部20の形成時に熱シールされることで、樹脂シート16に溶着されバッグ本体12に一体化する。スパウト14を構成する材料は、上述したようにバッグ本体12よりも硬質な樹脂材料が適用されることが好ましい。この種の樹脂材料は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。或いは、スパウト14は、複数の樹脂材料を混合することで、所望の硬質性を得てもよい。
【0028】
このスパウト14は、
図2Aに示すように、チューブ組立体が装着される突出部26と、バッグ本体12に取り付けられる被溶着部28とを有する。突出部26及び被溶着部28の中心部には、スパウト14の上下方向(軸方向)に沿って、貯留物の吐出路30が貫通形成されている。
【0029】
突出部26は、チューブ組立体が装着される先端ノズル部32と、先端ノズル部32の基端に連なる雄ネジ部34とを有する。雄ネジ部34は、図示しない雌ネジ部を有するチューブ組立体の端子がねじ込まれる部位であり、貯留用バッグ10及びチューブ組立体の規格によっては設けられなくてもよい。
【0030】
先端ノズル部32は、軸心部に吐出路30を有する円筒状に形成され、その先端部に貯留物を吐出する吐出口32aを有する。また、先端ノズル部32の外形は、雄ネジ部34側から先端に向かって緩やかに先細りとなるテーパ状に形成されている。この先端ノズル部32には、貯留用バッグ10の使用前に、吐出口32aを閉塞して貯留物の吐出を遮断するキャップ36が取り付けられる(
図1参照)。
【0031】
雄ネジ部34は、先端ノズル部32と被溶着部28の間に設けられ、被溶着部28の先端面から短く突出している。この雄ネジ部34は、先端ノズル部32に比べて太径の円筒状に形成され、その外周面には周方向に巻回したネジ山34aが設けられている。
【0032】
また、スパウト14の被溶着部28は、平面視(吐出口32aを臨む矢視)で、トップシール部20の延在方向に沿って長軸を有し、延在方向と直交する方向に短軸を有する略菱形状に形成されている。被溶着部28は、トップシール部20の方向に沿って長いことで、広い範囲にわたって樹脂シート16に溶着され得る部位となっている。また、被溶着部28は、側面視で、スパウト14の軸方向に充分な厚みを有しており、全体的な外観として略舟型状を呈している。
【0033】
被溶着部28は、軸方向に延びる筒状部38と、筒状部38の外周面に連結されると共に筒状部38の周囲で格子状に形成された舟型本体40とを有する。また、舟型本体40の先端側(雄ネジ部34側)には、雄ネジ部34の基端に連なり、舟型本体40よりも僅かに大きな菱形状の天板42が設けられている。
【0034】
筒状部38は、雄ネジ部34の外径と同一の外径を有する円筒状に形成され、その内部に貯留物の吐出路30が貫通形成されている。そして、筒状部38の基端(スパウト14の基端面)には、貯留空間12aの貯留物を吐出路30に流入させる流入口38aが設けられている。
【0035】
天板42は、突出部26の軸方向と直交する方向に延びており、バッグ本体12と突出部26の境界を構成している。この天板42は、長軸方向及び短軸方向の角部がR状に形成され、また短軸方向に対し長軸方向が比較的長いことで、トップシール部20の延在方向に沿って扁平な菱形状を呈している。天板42の長軸側(
図2A中の左右両側)の端部は、舟型本体40の長軸方向の両端部40a、40bに一致する一方、天板42の外縁及び短軸側(
図2A中の紙面手前及び紙面奥方向)の端部は、舟型本体40よりも若干突出している。この天板42の突出部分の基端面には樹脂シート16が溶着される。
【0036】
舟型本体40は、複数の突片44が三次元的に骨組みされた部位であり、この突片44の突出端44aと樹脂シート16が溶着されることで、バッグ本体12とスパウト14の溶着がなされる。各突片44の突出端44aは、舟型本体40の外観を構成し、且つ各突片44同士の間には、隙間46が形成されている。
【0037】
具体的に、複数の突片44は、筒状部38の外周面から天板42に対し平行に延びると共に、筒状部38の軸方向に平行に延びることで、舟型本体40全体を格子状としている。なお、舟型本体40の両端部40a、40bは、筒状部38から長軸方向に長く延びる一対の対角突片48、48により構成される。一方、隙間46は、隣接する突片44の間の熱伝達率を低減して、突出端44aの溶融を促進する。バッグ本体12の樹脂シート16は、隙間46を除いた舟型本体40の外側部(すなわち、各突片44の突出端44a)に熱シールされることで、強固に溶着される。
【0038】
また、舟型本体40の両端部40a、40bには、一対の羽根52、52が各々外側に向かって突出形成されている。一対の羽根52、52は、薄板状に形成され、一対の対角突片48、48の両端部に連なっている。各羽根52は、樹脂シート16の熱シール時における溶着熱により溶融して、舟型本体40の長軸方向の両端付近の樹脂シート16のシール力を高める。
【0039】
そして、トップシール部20は、
図2Bに示すように、重なった樹脂シート16の間に被溶着部28が溶着された吐出部材シール部54と、樹脂シート16同士のみが溶着されたシートシール部56とを有するように形成される。さらに、吐出部材シール部54は、樹脂シート16との間で熱シールが1度だけなされる第1溶着部54aと、熱シールが2度なされる第2溶着部54bとを有する。具体的には、第1溶着部54aは、舟型本体40の両端部40a、40b及び両端部40a、40b付近で上下方向(筒状部38の軸方向)に沿って設けられ、第2溶着部54bは、第1溶着部54aの形成範囲以外(舟型本体40の長軸方向中央部)に設けられる。
【0040】
ここで、舟型本体40の両端部40a、40b(角部)付近は、舟型本体40の中でも薄肉に形成されており、後記の一対のヒータブロックに挟まれると熱が逃げ難いため、舟型本体40の長軸方向中央部に比べて溶融し易い。そのため、仮に熱シールが2度行われると、構成する樹脂材料が容易に溶融して、溶融バリを多量に生じさせる。
【0041】
これに対し、本実施形態の舟型本体40の両端部40a、40bは、第1溶着部54aの形成箇所であり、溶着が1度行われるだけなので、その溶融度合が抑えられて樹脂シート16に溶着される。これにより、熱シール時に、被溶着部28の両端部40a、40b(特に、貯留空間12a側の角部)の溶融が抑制され、溶融バリが大幅に少なくなる又は殆どなくなる。
【0042】
また、シートシール部56も、樹脂シート16同士が1度だけ熱シールされる第1溶着部56aと、樹脂シート16同士が2度熱シールされる第2溶着部56bとを有する。第1溶着部56aは、スパウト14(被溶着部28)の両端部40a、40bに各々隣接する端部近位領域に設けられると共に、第2溶着部56bを挟んでトップシール部20の延在方向両端部まで延設される。すなわち、第1溶着部56aは、シートシール部56のうち第2溶着部54b以外の大部分に設けられる。
【0043】
一方、第2溶着部56bは、端部近位領域に隣接する隣接領域に設けられ、スパウト14から所定間隔離れた位置に形成される。この第2溶着部56bは、トップシール部20の延在方向に沿って比較的短い範囲に形成されている。
【0044】
本実施形態に係るバッグ本体12及びスパウト14は、基本的には以上のように構成される。なお、スパウト14(被溶着部28)の構成は上記に限定されないことは勿論である。例えば、被溶着部28は、上述した突片44を備えない、滑らかな外周面に形成されていてもよい。また例えば、被溶着部28の外形は、
図3A〜
図3Cに示す第1〜第3構成例の略舟型状であってもよい。
【0045】
具体的に、第1構成例に係る被溶着部28Aは、
図3Aに示す平面視で、被溶着部28の長軸方向の長さが短軸方向の長さよりも若干だけ長い(正方形に近い)菱形状に形成されている。このように本明細書では、トップシール部20の延在方向に沿った長さが短くても、舟型状に当てはまるものとする。
【0046】
また、第2構成例に係る被溶着部28Bは、
図3Bに示す平面視で、六角状に形成されてトップシール部20の延在方向に沿って扁平に形成されている。このように本明細書では、多角形状に形成されていても舟型状に当てはまるものとする。
【0047】
さらに、第3構成例に係る被溶着部28Cは、
図3Cに示す平面視で、中心部が円形状で左右方向に一対の翼状部58、58が突出した形状となっている。翼状部58は、突出方向に向かって幅狭となるテーパ状に形成されているとよい。このように本明細書では、翼状部58が設けられたものでも舟型状に当てはまるものとする。
【0048】
次に
図4を参照して、本実施形態に係る貯留用バッグ10の製造装置60及び製造方法について説明する。貯留用バッグ10は、樹脂シート16を成形しながら貯留物を充填する製造装置60(所謂、縦型製袋充填包装機)を使用して製造される。この製造装置60は、シート供給部62、シート搬送部64、ヒータ部66及び充填部68を備える。
【0049】
製造装置60のシート供給部62は、図示しない回転モータにより回転自在な支持軸62aを有し、この支持軸62aには、樹脂シート16を巻きつけたロール70がセットされる。樹脂シート16が巻かれるロール70の幅は、成形される貯留用バッグ10の長辺(サイドシール部24)の長さの2倍以上となっている。シート供給部62は、支持軸62aを回転して、1枚の連続する樹脂シート16をロール70から送出して下流側に供給する。
【0050】
製造装置60のシート搬送部64は、複数の従動ローラ64a及び一対の送りローラ64b、64bにより樹脂シート16の搬送経路を構成し、連続する樹脂シート16を間欠的に搬送する。従動ローラ64aは、例えば、折り畳み前の樹脂シート16に皺等が生じないように、テンションをかける。一対の送りローラ64b、64bは、トップヒータ78及びボトムヒータ80の下方(下流)側に設けられ、樹脂シート16を挟み込んだ状態で図示しない駆動源により回転することで樹脂シート16を下方に送出する。この一対の送りローラ64b、64bは、1回の間欠駆動により、貯留用バッグ10の短辺(トップシール部20、ボトムシール部22)に応じた長さで樹脂シート16を送り出す。
【0051】
また、シート搬送部64は、樹脂シート16の搬送経路上に印刷部72及び折り畳み機構部74を備える。印刷部72は、搬送中の樹脂シート16に貯留用バッグ10の印刷を行う。折り畳み機構部74は、樹脂シート16を上部から下部に向かって搬送する製袋ラインの上流位置に設けられる。この折り畳み機構部74は、樹脂シート16を一方面が対向するように折り畳むことで、1枚の樹脂シート16を2重にする。
【0052】
製造装置60のヒータ部66は、部材ヒータ76(第1ヒータ部)、トップヒータ78(第2ヒータ部)、ボトムヒータ80及びサイドヒータ82を有する。部材ヒータ76は、2重に折り畳まれた樹脂シート16とスパウト14とを熱シールする第1シール工程を実施する。トップヒータ78は、スパウト14と樹脂シート16が熱シールされた部分、及び樹脂シート16同士をまとめて熱シールする第2シール工程を実施することで、トップシール部20を形成する。すなわち、貯留用バッグ10のトップシール部20は、部材ヒータ76とトップヒータ78により、上述した第1溶着部54a、56a及び第2溶着部54b、56bを有するようになる。
【0053】
詳細には、部材ヒータ76は、一対の部材ヒータブロック84、84(一対の金型)により構成される。一対の部材ヒータブロック84、84は、樹脂シート16の搬送時に互いに離間した位置にあり、樹脂シート16の搬送停止時に互いに近接して2枚重なる樹脂シート16を挟み込む。また、部材ヒータ76は、図示しない供給装置を有し、別途成形された複数のスパウト14を搬送して、折り畳み機構部74で2枚の樹脂シート16の間に所定タイミング毎に1個ずつ供給する。一対の部材ヒータブロック84、84は、2枚の樹脂シート16とその間にスパウト14を挟んで熱シールを行うことで、樹脂シート16にスパウト14を取り付ける。
【0054】
図5に示すように、一対の部材ヒータブロック84、84は、その上下方向がスパウト14の長軸方向の長さよりも多少長く形成され、上下方向と直交する幅方向にスパウト14の舟型本体40の厚みに応じた幅を有するブロック体に形成されている。そして、一対の部材ヒータブロック84、84の各対向面85は、上端部から下端部に向かって、上側突出面85a、上側非加熱面85b、部材加熱面85c、下側非加熱面85d及び下側突出面85eを有している。
【0055】
上側突出面85a及び下側突出面85eは、一対の部材ヒータブロック84、84の上端部及び下端部に連なる位置に設けられ、上側非加熱面85b、部材加熱面85c及び下側非加熱面85dよりも他方の部材ヒータブロック側に突出している。上側突出面85aと下側突出面85eは、上下方向(樹脂シート16の搬送方向)に互いに平行な平坦面に形成されている。この上側突出面85aと下側突出面85eは、部材ヒータ76の閉塞時に、重なり合った樹脂シート16を挟んで熱シールするシート加熱部となっている。これにより、部材シール時における樹脂シート16同士の剥がれが防止される。
【0056】
上側非加熱面85b及び下側非加熱面85dは、上側突出面85a及び下側突出面85eに対し段差85fを介して連なり、上下方向に互いに平行な平坦面に形成されている。この上側非加熱面85b及び下側非加熱面85dは、部材ヒータ76の閉塞状態で、隣接する上側突出面85a、部材加熱面85c及び下側突出面85eの形状に基づき、樹脂シート16や舟型本体40を挟み込まない(樹脂シート16に非接触となる)非加熱部となっている。そのため、部材ヒータ76のシール時でも、上側非加熱面85b及び下側非加熱面85dと対向する部分は熱シールがなされない。この上側非加熱面85b及び下側非加熱面85dの上下方向の形成範囲は、例えば、3〜10mm程度に設定するとよく、本実施形態では5mmに設定するとよい。
【0057】
一方、部材加熱面85cは、上側非加熱面85bと下側非加熱面85dの間に挟まれた上下方向中間部で、舟型本体40の長軸方向の側面形状に一致する3角形状(谷状)の窪みに形成されている。すなわち、部材加熱面85cは、舟型本体40の短軸側の外形に一致するように上下方向に対して所定角度傾斜している。また、部材加熱面85cの上下方向中央部は、舟型本体40の短軸側の丸角の角度に合った角度で湾曲している。これにより、部材加熱面85cは、スパウト14及び重なった樹脂シート16同士を一体的に挟み込んで熱シールする加熱部となっている。さらに、部材加熱面85cと上側非加熱面85bの間、部材加熱面85cと下側非加熱面85dの間は、滑らかな湾曲形状で互いに連なっている。
【0058】
以上の対向面85を有する部材ヒータ76は、
図6に示すように閉塞状態で、一対の上側突出面85a、85aと一対の下側突出面85e、85eとが、重なり合った樹脂シート16を外側から挟み込んで熱シールを行う。また、重なり合った樹脂シート16が舟型本体40を間に挟んだ状態で、その外側から一対の部材加熱面85c、85cが狭み込んで押圧することで、樹脂シート16とスパウト14の熱シールを行う。この熱シールにより、舟型本体40の突片44が溶融することで樹脂シート16との溶着がなされる。その一方で、一対の上側非加熱面85b、85bと一対の下側非加熱面85d、85dが、樹脂シート16及び舟型本体40を挟み込まないことで、その対向部分の熱シールを回避する。なお、一対の部材ヒータブロック84、84は、上側突出面85a、部材加熱面85c及び下側突出面85eの近傍位置に、図示しないヒータ線を埋め込んでおくとよい。
【0059】
また、トップヒータ78は、一対のトップヒータブロック88、88により構成され、部材ヒータ76よりも搬送方向下流側に間隔をあけて設置される。一対のトップヒータブロック88、88は、一対の部材ヒータブロック84、84に連動して開閉し、樹脂シート16の搬送時に相互に離間し、樹脂シート16の搬送停止に伴い相互に近接して樹脂シート16及びスパウト14を挟み込む。
【0060】
一対のトップヒータブロック88、88は、一対の部材ヒータブロック84、84よりも上下方向に長く形成され、貯留用バッグ10のトップシール部20に対応する長さに構成されている。一対のトップヒータブロック88、88の幅は、舟型本体40の厚みにちょうど一致している。また、各トップヒータブロック88、88の対向面85の上下方向中間部には、舟型本体40の外形に一致する3角形状の溝が設けられている。すなわち、一対のトップヒータブロック88、88は、相互の近接状態で、重なり合った樹脂シート16同士、樹脂シート16とスパウト14間をまとめて熱シールする。以上の部材ヒータ76及びトップヒータ78により、貯留用バッグ10は、
図2Bに示す第1及び第2溶着部54a、54b、56a、56bを有したトップシール部20が形成される。
【0061】
図4に戻り、ヒータ部66のボトムヒータ80は、一対のボトムヒータブロック90、90により構成され、トップヒータ78と同一の高さ位置に設置される。一対のボトムヒータブロック90、90も、樹脂シート16の搬送時に相互に離間し、樹脂シート16の搬送停止に伴い相互に近接して樹脂シート16挟み込むことで、ボトムシール部22(
図1参照)を形成する。
【0062】
なお、ヒータ部66は、トップヒータ78の下方位置に、スパウト14との溶着部分を冷却する冷却部92を備えていてもよい。例えば、冷却部92は、熱伝達率が高い金属材からなる一対のブロック体により構成される。この冷却部92により、樹脂シート16とスパウト14が早期に冷却され、以降の成形において樹脂シート16とスパウト14の溶着状態の崩れをなくすことができる。
【0063】
サイドヒータ82は、一対のサイドヒータブロック94、94により構成され、製袋ライン(充填部68よりも下側)の最も下流位置に設置される。つまり、製造装置60は、サイドシール部24の形成後に、その上側位置で流動食の充填を行う構成となっている。一対のサイドヒータブロック94、94は、1度の熱シールで、サイドヒータ82の下側に搬送された貯留用バッグ10の第1サイドシール部24a(
図1参照)と、サイドヒータ82の上側の貯留用バッグ10の第2サイドシール部24b(
図1参照)とを形成する。サイドヒータ82の上側の貯留用バッグ10は、次の樹脂シート16の間欠移動によりサイドヒータ82の下側に移動し、次の熱シールにより第1サイドシール部24aが形成される。
【0064】
また、一対のサイドヒータブロック94、94は、その対向面85の上下方向中間位置にカッター95を備える。カッター95は、サイドシール部24の形成後に、樹脂シート16に進出して第1サイドシール部24aと第2サイドシール部24bを切断する。第1サイドシール部24aが形成された下側の貯留用バッグ10は、カッター95により分断されることで、連続する樹脂シート16から切り離される。
【0065】
一方、製造装置60の充填部68は、成形途中のバッグ本体12に対し貯留物を供給する機能を有する。この充填部68は、供給管96及び一対のしごきローラ98、98を備える。供給管96の上流側は、図示しない貯留物の供給タンクに接続される。供給管96は、折り畳まれる樹脂シート16の間に上部側から挿入され、下流端がしごきローラ98に重なる位置まで延びている。
【0066】
一対のしごきローラ98、98は、貯留物の充填時に、相互に近接移動して供給管96の下流端をしごくことで、供給管96の下流端に流動した貯留物を排出させ、さらに過剰な貯留物の充填を遮断する。そして、充填部68は、第1サイドシール部24aの形成後に、供給管96を介して貯留物を吐出し、第2サイドシール部24bがシールされる前の貯留空間12aに貯留物を充填する。
【0067】
以上のように構成される製造装置60は、図示しない制御部により、上記のシート供給部62、シート搬送部64、ヒータ部66及び充填部68を連動して動作させることで、貯留用バッグ10を製造する。貯留用バッグ10は、貯留空間12aに貯留物が収容された状態で成形されると、製袋ラインから図示しないコンベア等に提供され、次の工程(例えば、検査工程や梱包工程等)に順次搬送される。
【0068】
次に、従来の貯留用バッグ110のスパウト114の溶着構造と、本実施形態に係る貯留用バッグ10のスパウト14の溶着構造との相違について、その作用効果を含めて具体的に説明する。
【0069】
図7Bに示すように、従来の貯留用バッグ110のトップシール部120は、スパウト114の被溶着部128に対して部材ヒータによる部材シール工程と、トップヒータによるトップシール工程とを2度実施する。そして、2度とも被溶着部128の外側部全面、及び被溶着部128の両端部140a、140bに隣接する樹脂シート16同士を熱シールしている。従って、トップシール部120には、被溶着部128と樹脂シート116とを2度溶着した箇所(吐出部材シール箇所154)が形成される。なお、トップシール部120の吐出部材シール箇所154以外は、トップヒータにより1度だけ溶着がなされたシートシール箇所156となる。
【0070】
この場合、貯留用バッグ110は、製造時に、部材ヒータの熱シールの熱がぬけないタイミングで、次のトップヒータの熱シールにより熱が加えられることで、舟型本体140(被溶着部128)の長軸方向の両端部140a、140bが多量に溶融する。特に、舟型本体40の両端部140a、140bは、幅狭に形成されていることで、熱が逃げ難く溶融が促進される。
【0071】
その結果、両端部140a、140bの貯留空間12a側の角部は、舟型本体40の肉(樹脂材料)が貯留空間12aに溶け出して硬化することで、舟型本体40から溶融バリ200を突出させる。この溶融バリ200は、その形成と同時に樹脂シート116に融着することがある。これにより、貯留用バッグ110の使用時等の外力により、溶融バリ200が被溶着部128から破断して分裂した場合に樹脂シート116も一緒に破断するおそれがある。また、使用時に内圧が上昇し、舟型本体140付近の樹脂シート116が広がった際に溶融バリ200から樹脂シート116が剥がれ、その際にピンホールが発生するおそれがある。さらに、硬化した溶融バリ200が樹脂シート16を直接破るおそれもある。
【0072】
これに対し、本実施形態に係る貯留用バッグ10は、
図2B及び
図7Aに示すように、トップシール部20に第1溶着部54aと第2溶着部54bを有する。そして、第1溶着部54a、56aが、舟型本体40の両端部40a、40b及び両端部40a、40bの周辺部に設けられることで、舟型本体40の両端部40a、40bに対する熱の影響が大幅に少なくなる。これにより両端部40a、40bの角部の溶融が回避されて、溶融バリ100の発生が抑制される。例えば、被溶着部28の両端部40a、40bに形成される溶融バリ100の体積は、ほぼ確実に4.4mm
3以下となり、後述する実験結果によれば温度条件を変えたとしても、全て2.8mm
3以下であった。
【0073】
このように体積が4.4mm
3以下の溶融バリ100であれば、樹脂シート16に融着する機会が低減されて、溶融バリ100による樹脂シート16の破断、ピンホールの発生等を抑止することができる。従って、貯留用バッグ10は、バッグ本体12の樹脂シート16とスパウト14の溶着状態を良好に保つことができる。また、舟型本体40の両端部40a、40b及び両端部40a、40b付近を第1溶着部54a、56aに形成する構成は、上述したように部材ヒータ76の金型(一対の部材ヒータブロック84、84)の改良により簡単に実現可能であり、製造コストを大幅に低減すると共に、製造の作業効率を向上させ得る。
【0074】
以上のように、貯留用バッグ10は、舟型本体40(被溶着部28)の両端部40a、40bに形成された溶融バリ100の体積が4.4mm
3以下であることで、溶融バリ100によるバッグ本体12の損傷を抑制して、使用現場での取扱性を一層向上させることができる。すなわち、貯留用バッグ10は、溶融バリ100が発生しても4.4mm
3以下の体積であれば、樹脂シート16との融着が抑えられて、溶融バリ100による樹脂シート16の損傷を大幅に減らすことができる。さらに、貯留用バッグ10は、溶融バリの体積が2.8mm
3以下であれば、樹脂シート16に対する溶融バリの影響をより一層低減することができ、樹脂シート16とスパウト14の溶着状態を良好に保つことが可能となる。
【0075】
この場合、貯留用バッグ10は、少なくとも両端部40a、40bにおいて樹脂シート16に1度熱シールされた第1溶着部54aを有することで、比較的溶融し易い部分の溶融機会が少なくなるため、溶融バリ100の体積を大幅に減らすことができる。その一方で、貯留用バッグ10は、長軸方向中央部において樹脂シート16に2度熱シールされた第2溶着部54bを有するので、被溶着部28と樹脂シート16を確実に溶着することができる。
【0076】
また、一対の部材ヒータブロック84、84が、被溶着部28の両端部40a、40bから離間した位置の樹脂シート16を熱シールすることで、第2シール工程後には、バッグ本体12のトップシール部20にも2度熱シールした第2溶着部56bが形成される。そのため、貯留用バッグ10は、スパウト14の近くで樹脂シート16を強固に溶着して、スパウト14の姿勢の崩れ等を抑制して安定的な熱シール状態で形成される。その一方で、両端部40a、40bの近くは、非加熱(第1溶着部56a)となるので、両端部40a、40bの溶融を防ぐことができる。
【0077】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【実施例】
【0078】
本実施形態に係る貯留用バッグ10について、本出願人は、スパウト14を溶着したトップシール部20の状態を確認するための実験を行った。その実験結果を
図8A〜
図10に示す。
【0079】
〔第1実施例〕
第1実施例では、
図7Bに示す従来の貯留用バッグ110(以下、従来品という)に生じる溶融バリ200の状態と、
図7Aに示す本実施形態に係る貯留用バッグ10(以下、改良品という)に生じる溶融バリ100の状態とを直接比較した。実験では、従来の製造装置により所定数の従来品を製造すると共に、製造装置60により所定数の改良品を製造した。この際の部材シール及びトップシールにおける熱シールの条件として、各ヒータブロックの温度をA℃、B℃、C℃、D℃、E℃にそれぞれ設定した(Aは150より大きな値であり、B=A+2、C=A+5、D=A+8、E=A+10である)。また、ヒータブロックによるシール時間(閉塞状態の時間)を1.5秒に統一し、さらにヒータブロックの閉塞状態における圧力も0.49MPa以上となるように設定した。
【0080】
そして、製造した試料(現行品、改良品)に生じている溶融バリ100、200の各寸法を計測すると共に、その体積を算出した。この寸法として、溶融バリ100、200の長さ(舟型本体40の長軸方向に沿った長さ)、溶融バリ100、200の高さ(筒状部38の軸方向に沿った長さ)、及び溶融バリ100、200の幅(舟型本体40の短軸方向に沿った長さ)をそれぞれ計器により計測した。また体積は、計測した各溶融バリ100、200の寸法から、簡易的な計算式(体積=(長さ×高さ×幅)/2)により算出した。
【0081】
図8Aは、上記の実験において、舟型本体40の両端部40a、40bに生じた溶融バリ100、200の各寸法の平均値を棒グラフで示している。
図8A中において、斜線のハッチを有する棒グラフが従来品であり、白抜きの棒グラフが改良品である。また、複数の試料における溶融バリ100、200の寸法のバラツキについて、細いバーで示している。つまり、バーが長ければバラツキが大きく、バーが短ければバラツキが小さいことになる。
【0082】
図8Aを参照すると、改良品の溶融バリ100のほうが、従来品の溶融バリ200よりもその寸法が全体的に短いことがわかる。従って、改良品のほうが、溶融バリ100の発生量が少ないとみなすことができる。また、従来品の溶融バリ200は、寸法のバラツキが大きいのに対し、改良品の溶融バリ100は、従来品よりも寸法のバラツキが小さい。よって、改良品は、溶融バリ100が小さく且つバラツキがあまりない製品状態で安定に製造されていることが確認できた。
【0083】
また、
図8Bは、従来品の体積及び改良品の体積を算出したものを点グラフで示している。この
図8Bを参照すると、改良品の溶融バリ100の体積のほうが、従来品の溶融バリ200の体積よりも小さく、さらに体積のバラツキも小さいことが分かる。例えば、従来品は、溶融バリ200の体積が4.5mm
3以上となるものが幾つか発生し、3.0mm
3以下の溶融バリを有するものは存在しなかった。その一方で、改良品は、溶融バリ100の体積が概ね2.8mm
3以下でまとまっている。従って、改良品は、従来品に対し溶融バリ100が充分に小さい状態で製造されていることが確認できた。
【0084】
〔第2実施例〕
第2実施例では、実施例1で製造した従来品及び改良品に関し、屈曲等の外力を加える屈曲操作を実際に行い、スパウト14の周辺部においてバッグ本体12に破断が生じるか否かを確認する実験を行った。具体的に、屈曲操作では、スパウト14の溶融バリ100、200の発生部付近を保持して、スパウト14に対してバッグ本体12をシール方向と直交する方向に90°に動かし、この動作を5回繰り返して貯留用バッグ10、110の状態を確認した。
図9は、温度条件を変化させて製造した所定数(5個)の試料(従来品、改良品)に対し破断が生じた個数を表した表である。
【0085】
図9を参照すると、従来品では、幾つかの貯留用バッグ110に破断が生じているのに対し、改良品では、温度条件を変えても、いずれの貯留用バッグ10にも破断が生じていないことが分かる。従って、改良品は、従来品と比較して、屈曲操作時の破れがなく、良好に使用することができると言い得る。また、
図8Bに示す溶融バリ200の体積が4.8mm
3以上の場合には、屈曲操作時にバッグ本体12に破断が生じることが多かった。逆に、
図8Bに示す溶融バリが4.4mm
3以下では、屈曲操作時にバッグ本体12に破断が生じることは殆どなかった。よって、溶融バリ100、200の体積の許容限界は、4.4mm
3以下であることが求められ、より好ましくは2.8mm
3以下であるとよい。改良品は、溶融バリ100の体積が2.8mm
3以下であったために、バッグ本体12の破断が一つも生じないことを確認できた。
【0086】
〔第3実施例〕
第3実施例では、実施例1で製造した従来品及び改良品に関し、バッグ本体12に圧力を加えて、バッグ本体12とスパウト14との間が破れる圧力を測定する破袋圧力を測定する実験を行った。
図10は、温度条件を変化させて製造した試料(従来品、改良品)の破袋圧力の平均値を示す棒グラフである。なお、
図10中において、複数の試料における破袋圧力のバラツキについては細いバーで示している。
【0087】
図10を参照すると、改良品の破袋圧力の平均値は、従来品の破袋圧力の平均値よりも若干大きかった(ただし、温度がD℃場合は、従来品のほうが大きかった)。実際の貯留用バッグ10の使用においては、この破袋圧力について有意差はないものと考えられ、つまり改良品におけるバッグ本体12とスパウト14との溶着状態(溶着力)は、従来品と同程度となると言い得る。
【0088】
また、
図10を参照すると、改良品の破袋圧力は、従来品の破袋圧力よりもバラツキが少ないことが分かる。従って、製造装置60は、従来品に比べて、破袋圧力が充分に高いものを安定的に製造可能であることが確認できた。
【0089】
また、従来品及び改良品に対して、他の実験を幾つか行ったとこところ、いずれも従来品と改良品で有為な差がなかった。他の実験としては、エージレスチェッカーを注入して3時間放置した際の液漏れがあるか否かを確認する気密性の実験、所定圧力で2時間加圧して液漏れがあるか否か確認する耐圧性の実験、及び熱シール部のシール強度の測定バッグがあげられる。