(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中空状の複合材料構造物の内側に位置し、複数のセグメントにより構成され、隣接する前記セグメント同士の側面が互いに結合されることにより、単一の構造体として保持される、複合材料構造物製造用成形型において、前記セグメント同士の側面に設けられるシール構造であって、
隣接する前記セグメントの少なくとも一方の側面にはシール溝が設けられ、
前記シール溝には、前記セグメント同士の側面を結合することにより、当該セグメント間をシールする、有端で線状のシール部材が挿入されており、
前記シール部材のうち、前記シール溝に挿入された状態で当該シール溝の底面に当接する部位をシール底部とし、当該シール底部に対向する部位をシール上部としたときに、
前記シール上部には、前記シール溝に前記シール部材が挿入された状態で、少なくともその先端が当該シール溝の外側に突出する、リップ部が設けられているとともに、
前記シール部材には、その内部に中空が形成されているか、または、少なくとも前記シール底部に凹部が形成されており、
前記セグメント同士の側面が互いに結合した状態では、他方の前記セグメントの側面によって前記シール部材が横断面方向に押しつぶされた状態にあり、
前記セグメントにおいて前記構造体の外周面を構成する面を、当該セグメントの表面としたときに、
前記シール溝の両端部は、前記セグメントの表面に向かって折れ曲がっており、
前記シール部材が前記シール溝に挿入された状態では、当該シール部材の両端部は、前記セグメントの表面に設けられる端部押さえ部材によって、当該表面から露出しないように押さえ付けられていることを特徴とする、
複合材料構造物製造用成形型のシール構造。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の代表的な実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0027】
[複合材料構造物製造用成形型]
まず、本開示に係る複合材料構造物製造用成形型(以下、成形型と略す。)の一例について、
図1(A),(B)〜
図4を参照して説明する。
【0028】
図1(A)に示すように、本実施の形態に係る成形型10は、単一の円筒状構造体(円筒状部材)であるマンドレル11と、その両端に位置する一対のサポートリング12とから少なくとも構成されている。マンドレル11は、3個の第一セグメント20および3個の第二セグメント30の合計6個のセグメントが、互いにその側面で結合されることにより形成されている。
図1(B)に模式的に示すように、マンドレル11においては、第一セグメント20と第二セグメント30とが交互に結合されている。このマンドレル11の両端はサポートリング12によりそれぞれ支持されている。これによって6個のセグメント20および30が円筒状に保持されることになる。
【0029】
図1(A)に示すように、それぞれのセグメント20および30の両端部の表面には、複数の真空吸引孔13が設けられている。さらに、互いに隣接するセグメント20および30において、その両端部周縁の表面の間には、シール溝25の端部が露出している。このシール溝25の内部には、後述するシール部材が挿入されている。また、
図1(B)において点線で囲んだ部位Psは、本開示に係る成形型10のシール構造が設けられる位置であり、第一セグメント20および第二セグメント30が側面で結合された位置に相当する。本開示に係るシール構造には、
図1(A)に示すシール溝25が含まれる。このシール構造については後述する。
【0030】
マンドレル11の外周面には、両端部周縁を除いて、ストリンガを装着するための溝状凹部が形成されている。なお、
図1(A)、並びに、マンドレル11、セグメント20および30を図示する他の図面では、マンドレル11の構成、あるいは、セグメント20および30の構成を明確に図示する便宜上、溝状凹部の記載を省略している。
【0031】
第一セグメント20は、
図2(A)に示すように、全体が矩形平板状の構成を有している。第一セグメント20において、マンドレル11の外周面を構成する面を「セグメント表面21」としたときに、このセグメント表面21は凸状の曲面(凸面状あるいは凸曲面)となっている。また、第一セグメント20における両端部周縁の面を「セグメント端部表面22」としたときに、このセグメント端部表面22には真空吸引孔13が設けられている。
【0032】
さらに、第一セグメント20において、隣接する第二セグメント30に結合される面を「セグメント側面23」としたときに、セグメント表面21を上側として水平に配置させた状態では、
図2(A),(B)に示すように、セグメント側面23には、当該セグメント側面23の長手方向に沿ってシール溝25が設けられている。このシール溝25の両端部は、本実施の形態では、
図2(A)に示すように、セグメント端部表面22に向かって折れ曲がっている。
【0033】
なお、第一セグメント20において、マンドレル11の端面を構成する面を「セグメント端面24」とすれば、シール溝25は、
図2(A),(B)に示すように、セグメント端面24から確認することができない。それゆえ、
図2(B)では、シール溝25を破線で図示している。また、第一セグメント20のセグメント側面23には、当該セグメント側面23を第二セグメント30の側面に結合するために、図示しない結合部材が設けられており、セグメント端面24には、当該セグメント端面24をサポートリング12に固定するために、図示しない固定部材が設けられている。
【0034】
第一セグメント20においては、両方のセグメント側面23は、水平方向に面しているか、または、水平方向に対して上側に傾斜する方向に面している。本実施の形態では、例えば、
図2(B)に示すように、セグメント側面23は、その法線方向が、水平方向の上側に傾斜した方向に向かっている。
【0035】
後述するように、本実施の形態では、マンドレル11を円筒形に組み立てるときに、先に第二セグメント30が一対のサポートリング12に固定され、その後に、一対の第二セグメント30の間に、第一セグメント20が下から上に向かって嵌め込まれて固定される。したがって、第一セグメント20のセグメント側面23は、嵌め込みを妨げないように、その法線方向が水平方向(
図2(B)の矢印Ar1方向)に向かうように(水平方向を向くように)形成されていればよい。言い換えれば、第一セグメント20を水平に配置させたときには、セグメント側面23は、垂直方向(
図2(B)の一点鎖線に沿った方向)に沿った位置となっている。
【0036】
ここで、マンドレル11は、当該マンドレル11を含む成形型10を用いて円筒状の複合材料構造物(例えばワンピースバレル(OPB))を成形した後、当該複合材料構造物を成形型10から脱型することになる。この脱型は、マンドレル11を解体することにより行われる。マンドレル11の解体は、マンドレル11の組み立てとは逆の順序で行われる。したがって、第一セグメント20は、一対の第二セグメント30の間から引き抜かれることになる。
【0037】
そこで、第一セグメント20のセグメント側面23は、
図2(B)に示すように、セグメント側面23の法線方向が上側(セグメント表面21側)に傾斜(
図2(B)の矢印Ar2方向)するように形成されていることが好ましい。法線方向が上側に傾斜しているということは、セグメント側面23が上側に向くように傾斜しているということができる。言い換えれば、セグメント側面23は、当該セグメント側面23の裏側の縁が表側の縁よりも外側に広がるように傾斜しているということができる。このようなセグメント側面23の傾斜は、第一セグメント20のセグメント側面23に「抜き勾配」を形成することになるので、第一セグメント20を一対の第二セグメント30の間から引き抜きやすくなることから、マンドレル11を解体しやすくすることができる。
【0038】
なお、セグメント側面23の傾斜角(抜き勾配角度)は特に限定されず、マンドレル11および成形型10の具体的な形状または寸法等に応じて好適な角度が適宜設定される。例えば、本実施の形態では、8〜12°の範囲、好ましくは約10°の角度であればよい。また、対向するセグメント側面23の双方が同じ角度で傾斜してもよいし、異なる角度で傾斜してもよい。
【0039】
第二セグメント30は、
図3(A)に示すように、第一セグメント20と同様に、全体が矩形平板状の構成を有している。第二セグメント30において、マンドレル11の外周面を構成する面を「セグメント表面31」としたときに、このセグメント表面31も第一セグメント20のセグメント表面21と同様に、凸状の曲面となっている。また、第一セグメント20と同様に、第二セグメント30における両端部周縁の面を「セグメント端部表面32」としたときに、このセグメント端部表面32には真空吸引孔13が設けられている。
【0040】
さらに、第二セグメント30において、隣接する第一セグメント20に結合される面を「セグメント側面33」としたときに、両方のセグメント側面33は水平方向に対して下側に傾斜する方向に面している形状を有している。つまり、第二セグメント30の裏側からセグメント表面31に向かって、その幅が広がるように、両方のセグメント側面33が傾斜している。
【0041】
後述するように、本実施の形態では、マンドレル11を円筒形に組み立てるときには、先に一対のサポートリング12に第二セグメント30が固定され、その後に、各第二セグメント30,30の間に第一セグメント20が嵌め込まれる。したがって、先に固定された第二セグメント30は、第一セグメント20の嵌め込みを妨げないように、その裏側の面積が小さくなっていることが好ましい。それゆえ、第二セグメント30の両方のセグメント側面33は、その法線方向が下側(
図3(B)の矢印Ar3方向)に向かうように、言い換えれば、セグメント側面33が下側に向かって傾斜するように形成されていると好ましい。
【0042】
また、セグメント側面33には、当該セグメント側面33を第一セグメント20のセグメント側面23と結合するために、図示しない結合部材が設けられている。第二セグメント30において、マンドレル11の端面を構成する面を「セグメント端面34」とすれば、このセグメント端面34には、第一セグメント20のセグメント端面24と同様に、当該セグメント端面34をサポートリング12に固定するために、図示しない固定部材が設けられている。
【0043】
第二セグメント30のセグメント側面33には、セグメント表面31につながる縁部がそれぞれのセグメント側面33よりも外側に突出した庇部35が設けられている。したがって、
図3(A),(B)に示すように、第二セグメント30をセグメント表面31から見れば、下側を向いているセグメント側面33は、庇部35によって完全に隠れた状態となる。
【0044】
なお、セグメント側面33が下側へ傾斜する程度、および、庇部35が突出する程度は、特に限定されず、マンドレル11の具体的構成、第二セグメント30そのものの具体的構成、あるいは、第二セグメント30に結合する第一セグメント20の具体的構成に応じて適宜設定される。
【0045】
また、
図3(B)に示すように、庇部35の端面は、セグメント側面33の一部を構成している。したがって、第二セグメント30においては、セグメント側面33は、第二セグメント30の本体側面と、この本体側面から突出する庇部35の端面との2段構成になっている。しかしながら、セグメント側面33の具体的な構成は特に限定されず、段差のない単一面で構成されてもよいし3段以上の構成であってもよい。
【0046】
本実施の形態では、セグメント側面33のうち庇部35の端面が第一セグメント20のセグメント側面23の一部に結合するよう構成されている(
図1(B)の部位Ps参照)。庇部35の端面が結合するセグメント側面23の一部には後述するシール構造が設けられている。それゆえ、隣接するセグメント20および30においては、セグメント側面23およびセグメント側面33が全面的に結合する構成に限定されず、本実施の形態のように、互いに一部同士が結合するよう構成されてもよい。
【0047】
[複合材料構造物の成形]
次に、前述した成形型10を用いて複合材料構造物を成形する(製造する)方法の一例について、
図4および
図5(A)〜
図5(C)を参照して具体的に説明する。
【0048】
まず、成形型10(
図1(A)参照)は、前記の通り、6個のセグメント20および30をサポートリング12に固定することにより、単一の円筒状構造体であるマンドレル11に組み立てられる。
【0049】
6個のセグメント20および30に対しては、マンドレル11に組み立てられる前に、複合材料構造物を構成する部品の一部が予め取り付けられる。例えば、セグメント20および30には、前述したように、セグメント表面21または31に図示しない溝状凹部が設けられているので、この溝状凹部にストリンガ等のスティフナが取り付けられる。このような部品の取付けが完了すれば、これらセグメント20および30を組み立ててマンドレル11を構築する。
【0050】
図4に示すように、一対のサポートリング12は、それぞれクレードル41(マンドレル支持構造体)によって直立した状態で回転可能に支持されている。クレードル41は、サポートリング12を回転させるために複数の支持ローラを備えている。一対のクレードル41により一対のサポートリング12がそれぞれ支持される。そして、これらサポートリング12の間であり、かつ、環状のサポートリング12の中空に相当する位置に、プレシジョンレール42(マンドレル組立分解装置)が配置される。
【0051】
プレシジョンレール42は、6個のセグメント20および30をそれぞれサポートリング12に固定して組み立てるための組立装置であり、
図4に示すように、ジャッキ部43レール本体44等を備えている。ジャッキ部43は、その上側に第一セグメント20または第二セグメント30を1個ずつ載置して、12時方向すなわち上側に持ち上げるものである。レール本体44は、ジャッキ部43等を支持し、またジャッキ部43を駆動する駆動機構等を含むものである。
【0052】
前述したように、本実施の形態では、6個のセグメント20および30を単一の構造体であるマンドレル11に組み立てる場合には、まず、3個の第二セグメント30をサポートリング12に固定する。
【0053】
例えば、1個目の第二セグメント30をジャッキ部43の上に載置し、ジャッキ部43を動作させて12時方向(垂直上方向)に持ち上げ、第二セグメント30をサポートリング12の上側の位置にまで到達させる。この状態で、図示しない固定部材により、第二セグメント30の両方のセグメント端面34をそれぞれのサポートリング12の内面(固定面)に固定する。
【0054】
その後、クレードル41により、サポートリング12を、セグメント2個分すなわち約120°回転させる。これにより、図中上側の位置に固定された第二セグメント30は下側の位置に移動し、上側には何も固定されていない状態となる。そこで、2番目の第二セグメント30および3番目の第二セグメント30を、1番目の第二セグメント30と同様にサポートリング12に固定して回転させる。ここで、3番目の第二セグメント30を固定した後には、サポートリング12はセグメント1個分すなわち約60°回転させる。これにより、サポートリング12には、第二セグメント30が1個置きに固定された状態となる。
【0055】
そこで、1個目の第一セグメント20をジャッキ部43の上に載置し、ジャッキ部43を動作させて12時方向(垂直上方向)に持ち上げ、第一セグメント20をサポートリング12の上側の位置にまで到達させる。この状態では、第一セグメント20は、先に固定された一対の第二セグメント30の間に挿入されることになる。そこで、第一セグメント20の両方のセグメント端面34をそれぞれのサポートリング12の内面(固定面)に固定するとともに、第一セグメント20の両方のセグメント側面23を、図示しない結合部材により第二セグメント30の両方のセグメント側面33に結合する。
【0056】
その後、クレードル41により、サポートリング12を、セグメント2個分すなわち約120°回転させる。これにより、図中上側の位置に固定された第一セグメント20は下側の位置に移動し、上側には何も固定されていない状態となる。そこで、2番目の第一セグメント20および3番目の第一セグメント20を、1番目の第一セグメント20と同様にサポートリング12に固定するとともに、隣接する第二セグメント30に結合する。これにより、一対のサポートリング12の間に、単一の構造体であるマンドレル11が組み立てられる。なお、
図4は、3番目(最後)の第一セグメント20をジャッキ部43の上に載置した状態を示している。
【0057】
このようにして、成形型10が構築されれば、
図5(A)に示すように、マンドレル11の外周面にプリプレグ50が積層される。プリプレグ50の積層方法は特に限定されないが、代表的には、積層ローラを備える自動積層機により、マンドレル11を回転させながらプリプレグ50を貼付することにより積層される。
【0058】
なお、
図5(A)〜
図5(C)では、マンドレル11を構成する第一セグメント20の端部断面の一部を模式的に図示しているが、第二セグメント30も、基本的には
図5(A)〜
図5(C)と同様の構成を有している。それゆえ、
図5(A)〜
図5(C)を参照して説明する第一セグメント20の構成は、特に断りの無い限り第二セグメント30にも当てはまる。
【0059】
図5(A)〜
図5(C)に模式的に示すように、セグメント表面21はマンドレル11の外周面を構成するので、プリプレグ50はセグメント表面21に積層されることになる。また、第一セグメント20のセグメント端面24は、前記の通り固定部材16により固定されている。さらに、第一セグメント20には、前記の通り、セグメント端部表面22に真空吸引孔13が設けられている。また、サポートリング12には、破線で模式的に示すように、真空吸引配管14が設けられている。
【0060】
プリプレグ50の積層が完了すれば、
図5(B)に示すように、その上にカールプレート51を取り付け、さらに、プリプレグ50(およびカールプレート51)全体を覆うようにバギングフィルム52を被せ、当該バギングフィルム52の周縁部全体を接着部材53(例えばタッキーテープ等)で密封する。これにより、成形型10の外周面に真空バッグが形成される。このとき、バギングフィルム52は、プリプレグ50が積層されたセグメント表面21(マンドレル11の外周面)だけでなく、セグメント端部表面22のうち真空吸引孔13が設けられている領域まで覆っている。
【0061】
真空バッグの形成後には、成形型10はオートクレーブ内に収容されて、所定の温度および所定の圧力でプリプレグ50の硬化処理が施される。オートクレーブに収容される前には、
図5(C)に示すように、第一セグメント20の裏面から真空吸引孔13に接続ホース15の一端が接続される。接続ホース15の他端は、サポートリング12に設けられる真空吸引配管14に接続される。これにより、真空バッグ内は、
図5(C)のブロック矢印Vcで示すように、真空吸引孔13を介して真空吸引可能となる。
【0062】
オートクレーブに収容された硬化処理が開始されれば、
図5(C)のブロック矢印Prで示すように、マンドレル11の外側から真空バッグに対してオートクレーブによる所定の圧力が加えられるとともに、所定の温度で加熱される。前記の通り真空バッグ内は真空吸引されているので、プリプレグ50が加熱されながら圧縮される。これにより、マンドレル11の外周面に設けられたスティフナと、プリプレグ50が硬化してなるスキンとが強固に密着して一体化され、複合材料構造物が成形される。
【0063】
硬化処理が終了すれば、オートクレーブから成形型10を搬出し、バギングフィルム52およびカールプレート51を取り外す。その後、マンドレル11に支持された状態で複合材料構造物に対してトリミングおよび穴開けが行われる。その後、複合材料構造物から成形型10が脱型される。この脱型においては、前述したマンドレル11の組立方法とは逆の手順でマンドレル11が分解されて、6個のセグメント20および30が複合材料構造物の内側から除去される。このようにして複合材料構造物が製造される。
【0064】
[シール構造]
次に、マンドレル11を構成する第一セグメント20および第二セグメント30の間に設けられるシール構造について、
図6(A)〜
図7(F)を参照して具体的に説明する。
【0065】
本開示に係るシール構造は、隣接するセグメント20および30の間に設けられ、
図6(A)または
図6(B)に示すように、シール溝25およびシール部材26から少なくとも構成され、
図7(A)〜
図7(F)に示すように、シール部材26は、外側に突出するリップ部262または265を備えるとともに、内部に中空部263を有するか、外周面に凹部264または266を有する構成となっている。
【0066】
シール溝25は、隣接するセグメント20および30の少なくとも一方のセグメント側面23または33に設けられ、当該セグメント側面23または33の長手方向に沿って配置される。本実施の形態では、シール溝25は、第一セグメント20の両方のセグメント側面23に設けられているが、第二セグメント30のセグメント側面33にはシール溝25は設けられていない。前述したように、第一セグメント20のセグメント側面23は、水平方向に面しているか水平方向から上側に傾斜して面しているので、第二セグメント30のセグメント側面33よりもシール構造を設けやすい。
【0067】
図6(A)または
図6(B)では、マンドレル11の一部分として第一セグメント20の一方の端部のみを模式的に例示している。図示しないが、第一セグメント20の他方の端部も
図6(A)または
図6(B)と同様の構成を有している。また、
図6(A)および
図6(B)では、シール溝25が設けられるセグメント側面23は、第一セグメント20の側方から目視できるので、模式的な部分側面図として図示しているが、セグメント表面21の近傍については、
図5(B)または
図5(C)と同様に、セグメント表面21にプリプレグ50が積層されて真空バッグが形成された状態を説明するため、模式的な部分断面図として図示している。
【0068】
シール溝25にはシール部材26が挿入される。シール部材26は、隣接するセグメント20および30同士の側面を結合することにより、当該セグメント20および30の間をシールするものである。隣接するセグメント20および30が結合した状態では、セグメント側面23とセグメント側面33との間には、所定のクリアランスが保持されている。シール部材26は、このようなクリアランスを保持した状態でセグメント側面22またはセグメント側面33に当接することで押しつぶされる。これにより、セグメント20および30の間がシールされる。
【0069】
本開示で用いられるシール部材26は、環状ではなく、有端で線状の構成となっている。このような線状のシール部材26は、押出成形等により低コストかつ容易に製造することができる。シール部材26は、基本的に、1回のオートクレーブの使用で廃棄する使い捨てであるため、シール部材26の製造コストの増加を回避することで、複合材料構造物の製造コストの増加も回避することができる。
【0070】
シール溝25は、
図6(A)に示すように、セグメント側面23に少なくとも1本形成されていればよいが、
図6(B)に示すように、外側シール溝25aおよび内側シール溝25bとして2本のシール溝25が形成されてもよいし、図示しないが3本以上形成されてもよい。また、複数のシール溝25が形成されている場合、それぞれのシール溝25には同じ種類のシール部材26が挿入されてもよいし、異なる種類のシール部材26が挿入されてもよい。例えば、
図6(B)に示す構成では、外側シール溝25aには、第一シール部材26aが挿入され、内側シール溝25bには、第一シール部材26aとは異なる第二シール部材26bが挿入されている。なお、シール部材26の端部の構成については後述する。
【0071】
シール部材26は、前記の通り、リップ部262または265を備えるとともに、中空部263、および、凹部264または266の少なくとも一方を有する構成となっている。リップ部262または265、中空部263、凹部264または266の具体的な構成は特に限定されないが、代表的には、
図7(A)〜
図7(F)に示すようなシール部材26A〜26Fを挙げることができる。
【0072】
図7(A)に示すように、シール部材26Aは、シール本体261の内部に中空部263を有するとともに、外周面に直立リップ部262を備える構成となっている。シール部材26Aにおいて、シール溝25に挿入された状態で当該シール溝25の底面に当接するシール本体261の部位をシール底部とし、当該シール底部に対向する部位をシール上部とすると、直立リップ部262は、略平坦なシール上部から略法線方向に向かって突出するように設けられている。直立リップ部262は、シール溝25にシール部材26Aが挿入された状態で、少なくともその先端が当該シール溝25の外側に突出する。なお、シール部材26Aのシール本体261の横断面は矩形状であり、シール底部は略平坦な面となっている。
【0073】
図7(B)に示すように、シール部材26Bは、シール部材26Aと同様に、直立リップ部262を備えているが、中空部263を有しておらず、シール底部に底面凹部264を有している。シール部材26Bにおいては、シール本体261の横断面は略台形状であり、シール上部の幅がシール底部の幅よりも小さくなっている。
【0074】
このように、シール部材26Aまたは26Bでは、シール上部に直立リップ部262を備え、シール本体261の内部に中空部263を有するか、シール底部に底面凹部264を有している。中空部263または底面凹部264は、シール本体261における肉盗みまたは肉抜きの部位として機能するため、隣接するセグメント20および30同士のセグメント側面23および33が互いに結合した状態では、中空部263または底面凹部264は第二セグメント30のセグメント側面33の押さえ付けにより容易に押しつぶされる。
【0075】
また、直立リップ部262は、第一セグメント20のセグメント側面23から外側(第二セグメント30の方向)に突出しているが、シール部材26Aまたは26Bの材質に由来して弾性を有している。それゆえ、直立リップ部262は、セグメント側面33に結合した状態で立設しようとする。これにより、シール溝25の内部は、シール本体261と直立リップ部262とによって良好にシールされる。
【0076】
このとき、シール部材26Aまたは26Bの上側から見れば、直立リップ部262の略直下に中空部263または底面凹部264が位置するので、押しつぶされやすい中空部263または底面凹部264と、弾性により立設方向に付勢される直立リップ部262とは、略直線上に位置することになる。それゆえ、マンドレル11の組立時においても、大きな荷重を加えることなくシール部材26Aまたは26Bを圧縮することができるとともに、隣接するセグメント20および30の間に良好なシール状態を実現することができる。その結果、良好なシール状態を確保しつつ、低荷重でセグメント20および30を移動させることができるので、隣接するセグメント20および30の外周面の位置を調整しやすくすることができる。
【0077】
図7(A)および
図7(B)に示すシール部材26Aまたは26Bは、略直立状態である直立リップ部262を備えるとともに、シール本体261を横断面方向につぶすための変形構造である中空部263または底面凹部264が直立リップ部262に沿って略直線上に位置している構成である。しかしながら、本開示に係るシール部材26は、このような構成に限定されず、例えば、
図7(C)〜
図7(F)に示すように、直立リップ部262ではなく傾斜リップ部265を備える構成であってもよい。
【0078】
例えば、
図7(C)に示すように、シール部材26Cは、シール上部において、当該シール上部の法線方向に対して傾斜するように突出する傾斜リップ部265を備えている。シール本体261の横断面において、シール底部およびシール上部をつなぐ方向を「シール部材26の横断面の縦方向」とし、この縦方向に直交する方向を「シール部材26の横断面の横方向」としたときに、シール部材26Cにおいては、シール本体261の横断面は、シール部材26Aまたは26Bとは異なり、シール溝25の横断面全体に及ぶような「縦長」の形状ではなく「横長」の形状となっている。
【0079】
それゆえ、シール部材26Cにおいては、傾斜リップ部265とシール本体261との間には、傾斜リップ部265が上下方向に移動可能な可動空間が形成されている。シール部材26Cのシール底部には、シール部材26Bと同様に、底面凹部264が形成されているが、前記可動空間もシール部材26Cの外周面に設けられる凹部と見なすことができる。
【0080】
また、
図7(D)に示すように、シール部材26Dは、シール部材26Cと同様に傾斜リップ部265を備えるとともに、シール本体261の横断面が「横長」の形状となっているが、底面凹部264を有しておらず、代わりに中空部263を有している。
【0081】
このように、シール部材26Cまたは26Dでは、シール上部に傾斜リップ部265を備え、横断面が「横長」のシール本体261において、シール底部に底面凹部264を有するか、その内部に中空部263を有している。隣接するセグメント20および30同士のセグメント側面23および33が互いに結合した状態では、傾斜リップ部265は、直下の可動空間の存在により容易に下方に押さえ付けられるが、その弾性によりセグメント側面33に当接した状態で立設しようとする。また、「横長」のシール本体261においては、傾斜リップ部265の押さえ付けに応じて、底面凹部264または中空部263が押しつぶされる。これにより、シール溝25の内部は、シール本体261と傾斜リップ部265とによって良好にシールされる。
【0082】
また、本開示に係るシール部材26は、傾斜リップ部265を備えるとともに、シール上部の幅がシール底部の幅よりも大きくなっている構成であってもよい。
【0083】
例えば、
図7(E)に示すように、シール部材26Eは、傾斜リップ部265を備えるとともに、シール底部に底面凹部264が形成され、さらに、シール上部の幅がシール底部の幅よりも大きくなっており、シール上部における傾斜リップ部265に隣接した位置に、上面凹部266が形成されている。
【0084】
あるいは、
図7(F)に示すように、シール部材26Fは、傾斜リップ部265を備えるとともに、シール底部に底面凹部264が形成され、さらに、シール上部の幅がシール底部の幅よりも大きくなっており、シール本体261の内部に中空部263が形成されている。
【0085】
このように、シール部材26Eまたは26Fでは、シール底部よりも幅広のシール上部に傾斜リップ部265を備え、シール底部に底面凹部264を有するか、その内部に中空部263を有している。隣接するセグメント20および30同士のセグメント側面23および33が互いに結合した状態では、傾斜リップ部265は、直下の可動空間の存在により容易に下方に押さえ付けられるが、その弾性によりセグメント側面33に当接した状態で立設しようとする。また、シール本体261においては、傾斜リップ部265の押さえ付けに応じて、底面凹部264または中空部263が押しつぶされるとともに、シール上部が幅広であるため、シール溝25の幅方向を良好にシールすることができる。
【0086】
特に、シール部材26Eのように、可動空間とは別に上面凹部266が形成されたり、シール部材26Fのように中空部263が形成されたりしていれば、上面凹部266または中空部263の変形により、幅広のシール上部の縁部が、シール本体261の内部側に移動しやすくなる。そのため、幅広のシール上部により横断面の横方向へのシール状態を向上することが可能となる。これにより、シール溝25の内部は、シール本体261と傾斜リップ部265と幅広のシール上部とによって良好にシールされる。
【0087】
なお、
図7(A)〜
図7(F)に示すシール部材26A〜26Fのいずれを選択するかについては特に限定されない。シール構造に要求されるシール性能の程度、シール部材26の材質、セグメント20および30の移動荷重等の諸条件に応じて、好適な横断面形状のシール部材26を選択することができる。また、後述するように、セグメント側面23に複数のシール溝25が形成される場合には、それぞれのシール溝25に要求される条件に応じて、異なる横断面を有するシール部材26を選択することができる。
【0088】
例えば、
図6(B)に示す構成では、外側シール溝25aに挿入する第一シール部材26aとしては、傾斜リップ部265を備えるシール部材26C〜26Fのいずれかを用いるとともに、内側シール溝25bに挿入する第二シール部材26bとしては、直立リップ部262を備えるシール部材26Aまたは26Bを用いることができる。
【0089】
シール溝25の外側からはオートクレーブによる高い圧力が加えられる。そこで、傾斜リップ部265の直下の可動領域に圧力が加えられるように、外側シール溝25aにシール部材26C〜26Fのいずれかを配置する。これにより、材料に由来する弾性だけでなく圧力差によって傾斜リップ部265を立設側に強く付勢することができるので、より一層良好なシール状態を実現することができる。
【0090】
また、シール溝25の内側は、真空バッグの内部に面している。ここで、オートクレーブによる加熱硬化に際しては、プリプレグ50を構成するマトリクス樹脂(熱硬化性樹脂)は、そのまま硬化するのではなく一旦軟化する。このとき、軟化したマトリクス樹脂がシール溝25に向かって流れ出す可能性があるので、このマトリクス樹脂の漏洩を有効に防止または抑制できることが好ましい。
【0091】
つまり、内側シール溝25bに挿入される第二シール部材26bに対しては、外側シール溝25aに挿入される第一シール材26aとともに、真空バッグの外側における高圧を冗長的にシールする性能(圧力シール性)が求められるだけでなく、真空バッグの内側における軟化したマトリクス樹脂の漏洩を防止する性能(マトリクス樹脂シール性)が求められる。そこで、内側シール溝25bには、直立リップ部262を有するシール部材26Aまたは26Bを配置する。
【0092】
これらシール部材26においては、押しつぶされた直立リップ部262により、真空バッグの外側の高圧を良好にシールする(良好な圧力シール性を実現する)ことができる。しかも、直立リップ部262の周辺には、可動領域または上面凹部266が設けられていないので、傾斜リップ部265のように傾斜することが無い。それゆえ、真空バッグの内側で生じる軟化したマトリクス樹脂を直立リップ部262により良好に塞き止る(良好なマトリクス樹脂シール性を実現する)ことができる。しかも、前記の通り、上面凹部266等を有していないので、シール部材26の外周の凹部にマトリクス樹脂が溜まるおそれを回避することができる。
【0093】
[シール部材の端部構成]
次に、前記構成のシール構造において、シール部材26の端部の好ましい構成について、
図6(A)および
図6(B)に加えて、
図8(A)〜
図9(D)を参照して具体的に説明する。
【0094】
本開示に係るシール構造では、シール溝25に挿入されるシール部材26は、環状ではなく有端で線状のものである。前記の通り、シール部材26の横断面方向については、リップ部262または265、中空部263、凹部264または266(
図7(A)〜
図7(F)参照)により大きな荷重を加えることなく当該シール部材26を圧縮してシール状態を形成できる。これに対して、長手方向については、オートクレーブ時の加熱により生ずる長手方向の膨張(線膨張)を、シール部材26の両端部で容易に調整することができる。
【0095】
具体的には、例えば、
図6(A)および
図6(B)に示すように、シール端部押さえ部材27によりシール部材26の両端部が露出しないように押さえ付けるだけで、当該シール部材26の線膨張を調整することができる。このとき、シール溝25は、その端部がセグメント端面24に達する直線状であってもよいが、
図6(A)または
図6(B)に示すように、シール溝25の両端部をセグメント端部表面22に向けて折り曲げた形状に形成することが好ましい。これにより、シール溝25の端部開口は、第一セグメント20のセグメント端部表面22に露出することになるので、セグメント端部表面22にシール端部押さえ部材27を設けることができる。
【0096】
第一セグメント20のセグメント端面24は、固定部材16を介してサポートリング12に固定されるので、セグメント端面24にシール端部押さえ部材27が設けられると、マンドレル11の組立時における第一セグメント20の移動、あるいは、第一セグメント20のサポートリング12への固定に影響を及ぼす可能性がある。これに対して、セグメント端部表面22にシール端部押さえ部材27を設けることで、マンドレル11の組立に対する影響を回避することができる。
【0097】
さらに、
図6(A)および
図6(B)に示すように、セグメント端部表面22には、真空バッグを構成するバギングフィルム52の縁部が達している。セグメント端部表面22にシール部材26の端部が達していれば、シール部材26の端部の上側もバギングフィルム52で覆い、その上からシール端部押さえ部材27でシール部材26の端部を押さえ付けることができる。
【0098】
シール端部押さえ部材27の具体的な構成は特に限定されないが、
図6(A)および
図6(B)、並びに、
図8(B)に示すように、剛性を有する板状の部材であり、第一セグメント20のセグメント端部表面22に公知の締結部材28(ボルト等)により固定される構成であればよい。シール端部押さえ部材27が剛性を有していれば、当該シール端部押さえ部材27の両端部ではなく一方の端部のみで締結部材28により固定することで、シール部材26の端部が露出しないように押さえ付けることができる。これにより、
図6(A),
図6(B)および
図8(A)に示すように、シール溝25から見てセグメント端面24側に締結部材挿入孔29(
図8(A)のみ図示)を設けることができる。そのため、バギングフィルム52に締結部材28用の開口部等を設ける必要がなくなり、真空バッグにおける真空度の低下のおそれを回避することができる。
【0099】
ここで、シール部材26の横断面は、前記の通り、リップ部262または265、中空部263、凹部264または266等を有している(
図7(A)〜
図7(F)参照)。そのため、シール溝25内にシール部材26が挿入されていても、セグメント端部表面22に露出するシール溝25の端部開口とシール部材26の端部との間には必然的に隙間が生じる。それゆえ、
図6(A)または
図6(B)に示すように、シール溝25の端部開口およびシール部材26の端部を覆うように接着部材54(タッキーテープ等)で被覆してから、シール端部押さえ部材27により押さえ付ければよい。
【0100】
特に、シール溝25が複数本設けられ、複数本のシール部材26を用いる場合、接着部材54によりこれらシール部材26の端部を覆うことで、複数本のシール部材26の端部同士をつないで単一のシール部材のように形成することができる。これにより、隣接するセグメント20および30同士の間においてより一層良好かつ安定したシール状態を実現することができる。
【0101】
なお、前記の通り、接着部材53は、バギングフィルム52の周縁部全体を密閉しているが、この接着部材53は、シール部材26の端部を被覆する接着部材54に接続する必要がある。これにより、接着部材53および54とシール部材26とによって密閉された真空バッグが形成される。
図6(A)または
図6(B)に示す模式的な断面では、接着部材54のみ図示されるが、この接着部材54に接着部材53が接続されていることを示すために、接着部材53(符号53)を括弧書きで併記している。
【0102】
次に、
図6(B)または
図8(A),
図8(B)に示すように、シール溝25として外側シール溝25aおよび内側シール溝25bが設けられ、シール部材26として第一シール部材26aおよび第二シール部材26bが用いられる構成を例に挙げて、シール端部押さえ部材27によるシール部材26の端部調整の一例を説明する。
【0103】
まず、
図9(A)に模式的に示すように、第一セグメント20のセグメント側面23に形成される外側シール溝25aに第一シール部材26aが挿入され、内側シール溝25bに第二シール部材26bが挿入されているとする。第一シール部材26aおよび第二シール部材26bの両端部は、いずれも、セグメント端部表面22に位置する外側シール溝25aおよび内側シール溝25bの端部開口から露出している。なお、セグメント表面21には、プリプレグ50が積層されカールプレート51が重ねられている。
【0104】
次に、
図9(B)に示すように、外側シール溝25aおよび内側シール溝25bの端部開口から露出する第一シール部材26aおよび第二シール部材26bの両端部を、セグメント端部表面22から数mm程度の長さに切断する。その後、
図9(C)に示すように、第一シール部材26aおよび第二シール部材26bのそれぞれの端部をつなぐように、接着部材54で端部開口を覆う。これにより、第一シール部材26aおよび第二シール部材26bをそれぞれ1本につないだ単一のシール部材が構成されているとみなすことができる。この単一のシール部材は、見かけ上、環状構造を有している。
【0105】
さらにその後、
図9(D)に示すように、第一セグメント20のセグメント表面21(マンドレル11の外周面に形成されたプリプレグ50およびその上に重ねられたカールプレート51)を覆うようにバギングフィルム52を被せ、このバギングフィルム52の上からシール端部押さえ部材27を取り付ける。これにより、第一シール部材26aおよび第二シール部材26bの両端部をつないだ接着部材54をバギングフィルム52の上からシール端部押さえ部材27で押さえ付けることになる。それゆえ、オートクレーブ中であっても、第一シール部材26aおよび第二シール部材26bの両端部がセグメント端部表面22から露出するおそれを有効に回避することができる。
【0106】
なお、
図9(D)では、バギングフィルム52の周縁部を接着する接着部材53、並びに、シール端部押さえ部材27を固定する締結部材28(
図6(B)参照)の図示については、説明の便宜上、省略している。また、シール溝25の端部開口を覆う接着部材54は、
図9(C)または
図9(D)に例示する構成に限定されず、
図6(B)に模式的に示すように、第一シール部材26aおよび第二シール部材26bのそれぞれの端部をつなぐことなく、外側シール溝25aの端部開口のみを独立した接着部材54で覆い、内側シール溝25bの端部開口のみを独立した接着部材54で覆ってもよい。
【0107】
[変形例]
本開示に係るシール構造が適用される成形型は、本実施の形態で例示したような、6個のセグメント20および30で構成されるマンドレル11を備える成形型10(
図1(A)〜
図4参照)に限定されない。本開示における成形型は、中空状の複合材料構造物の内側に位置し、複数のセグメントにより構成され、隣接するセグメント同士の側面が互いに結合されることにより、単一の構造体として保持される構成であればよい。
【0108】
成形型の具体的な形状は、前述したような円筒状(全体的に径がほぼ同じ中空状)に限定されず、円錐筒状(一端から他端に向かって径が減少していく中空状)であってもよいし、円錐台筒状(両端それぞれの径が異なり、中間の径が徐々に変化する中空状)であってもよい。本開示に係るシール構造は、当該構成の成形型を構成する、隣接する前記セグメント同士の側面に設けられればよい。また、個々のセグメントも矩形平板状に限定されず、単一の構造体としてのマンドレル11を構成することが可能であれば、さまざまな形状を採用することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、マンドレル11は、3個の第一セグメント20と3個の第二セグメント30から構成されているが(
図1(B)参照)、マンドレル11の構成もこれに限定されない。例えば、セグメントの個数は、5個以下であってもよいし7個以上であってもよい。また、セグメントの種類は、第一セグメント20および第二セグメント30の2種類に限定されず、これらセグメント20および30以外の種類のセグメントが含まれてもよいし、セグメント20および30とは異なる種類のセグメントが2種類以上用いられてもよいし、1種類のみのセグメントでマンドレル11が構成されてもよい。
【0110】
また、本実施の形態では、シール溝は、水平方向に面するか水平方向から上側に傾斜して面するセグメント側面23を有する第一セグメント20に設けられているが、本開示はこれに限定されない。シール溝は、第二セグメント30のセグメント側面33に設けられてもよいし、セグメント側面23およびセグメント側面33の双方に設けられてもよい。すなわち、本実施の形態では、複数のセグメントには、その側面にシール溝が設けられているものと、シール溝がもうけられていないものとが含まれているが、全てのセグメントにシール溝が設けられてもよい。
【0111】
また、本実施の形態では、第一セグメント20のみにシール溝が設けられているが、本開示はこれに限定されない。すなわち、シール溝は、隣接するセグメントの一方の側面のみに設けられてもよいし、双方の側面にシール構造が設けられてもよい。例えば、全てのセグメントにシール溝が設けられている場合には、各セグメントの両側面のうち一方のみにシール溝が設けられる構成と、両方の側面にいずれもシール溝が設けられる構成とが挙げられる。一方の側面のみにシール溝が設けられていれば、隣接するセグメントの一方の側面のみにシール溝が設けられる構成に該当し、両方の側面のいずれにもシール溝が設けられていれば、隣接するセグメントの双方の側面にシール溝が設けられる構成に該当する。
【0112】
隣接するセグメントの双方にシール溝が設けられている場合には、それぞれのシール溝の位置がずれていることが好ましい。例えば、一方のセグメントの側面に外側シール溝および第一シール部材が設けられ、他方のセグメントの側面に内側シール溝および第二シール部材が設けられている構成であってもよい。さらに、本実施の形態では、セグメントの側面に形成されるシール溝は1本(
図6(A)参照)または2本(
図6(B)参照)であり、シール溝に挿入されるシール部材は1本または2本であるが、本開示はこれに限定されない。シール溝は3本以上であり、シール部材も3本以上であってもよい。なお、シール溝が複数本設けられている場合、各シール溝の間を真空吸引するための構成(例えば、真空吸引孔等)が別途設けられてもよい。
【0113】
シール溝に挿入されるシール部材の具体的な構成は特に限定されず、前述したようにリップ部を備えるとともに、内部に中空が形成されるか外周面に凹部が形成されている構成であればよい。リップ部の具体的な形状は特に限定されず、前述した直立リップ部262であってもよいし傾斜リップ部265であってもよいし、これら以外の形状であってもよいが、いずれにしても、シール上部においてシール本体261の長手方向に沿って延伸する形状であればよい。
【0114】
凹部は少なくともシール底部に形成されていればよいが、前述したように、シール上部におけるリップ部の近傍に形成されてもよいし、図示しないがシール本体の側面に形成されてもよい。シール本体の内部に形成される中空部は、基本的には、略円形の断面となっていればよいが、楕円状の断面であってもよいし多角形状の断面であってもよい。中空部も凹部もリップ部と同様に、シール本体の内部または外周面において、シール本体261の長手方向に沿って延伸する形状であればよい。
【0115】
シール部材の横断面の幅は特に限定されず、シール上部およびシール底部がほぼ同じ幅であってもよいし(
図7(A),(C),(D)参照)、シール上部の幅がシール底部の幅よりも小さい構成であってもよいし(
図7(B)参照)、シール上部の幅がシール底部の幅よりも大きい構成であってもよい(
図7(E),(F)参照)。また、シール上部およびシール底部の間(シール本体の側面)に幅広の部分が形成されてもよいし、前述した凹部が形成されることで幅が狭くなってもよいし、シール本体の側面に突起部が形成されてもよい。
【0116】
このように、本開示に係る複合材料構造物製造用成形型のシール構造は、隣接するセグメントの少なくとも一方の側面にはシール溝が設けられ、シール溝には、セグメント同士の側面を結合することにより、当該セグメント間をシールする、有端で線状のシール部材が挿入されており、シール部材のうち、シール溝に挿入された状態で当該シール溝の底面に当接する部位をシール底部とし、当該シール底部に対向する部位をシール上部としたときに、シール上部には、シール溝にシール部材が挿入された状態で、少なくともその先端が当該シール溝の外側に突出する、リップ部が設けられているとともに、シール部材には、その内部に中空が形成されているか、または、少なくとも前記シール底部に凹部が形成されており、セグメント同士の側面が互いに結合した状態では、他方の前記セグメントの側面によってシール部材が横断面方向に押しつぶされた状態にある構成である。
【0117】
この構成によれば、シール部材が、リップ部を有するとともに中空または凹部を有しているとともに、有端の線状構成を有している。それゆえ、シール部材の横断面方向については、大きな荷重を加えることなく当該シール部材を圧縮してシール状態を形成できるとともに、長手方向については、オートクレーブ時の加熱により生ずる長手方向の膨張(線膨張)を、シール部材の両端部で容易に調整することができる。これにより、隣接するセグメント同士の間においてより一層良好かつ安定したシール状態を実現できるとともに、セグメントの移動荷重の増大を抑制または回避できるため、成形型の組立時には、隣接するセグメント間の段差を良好に調整することができる。その結果、隣接するセグメント同士の間において良好なシール状態を実現しつつ、複合材料構造物の製造の煩雑化を抑制または回避することができる。
【0118】
なお、本発明は前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲内で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態や複数の変形例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。