(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
紫外線照射によって二酸化チタンの表面に生成したOHラジカルに接触させて生鮮農産物から発生した有害なエチレンを無害なエタンと水に改質し、庫内の生鮮農産物の鮮度を長期間保持させる庫内設置型の鮮度保持装置であって、
送風ファンの稼働により空気を吸入する一方の吸気口と、空気を排出する他方の排気口とを備えた筐体内に、
該筐体中の前記吸気口から排気口へと通過する通風路を遮るように二酸化チタンが空気に接触可能に露出した通気可能な平板状のフィルタを配設し、
該フィルタの空気吸入側表面に沿って20mm〜30mmの距離に254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管を配設し、
該紫外線発光管から15mm〜35mmの間隔を置いて、前記フィルタの空気吸入側表面から20mm〜30mmの距離で平行に300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管を、254nmの波長の紫外線を照射可能な前記紫外線発光管の両側に夫々1本配設したことを特徴とする生鮮農産物の鮮度保持装置。
中央の254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管と、その両側の300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管とを1単位の紫外線発光管ユニットとし、該紫外線発光管ユニットを一つの筐体内に複数設置したことを特徴とする請求項1に記載の生鮮農産物の鮮度保持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の装置を実施にあたって、エチレンは改質できるものの紫外線の照射によって装置内の保水体やプラスチック製の部品の劣化が進んで製品寿命が短くなるという問題と、OHラジカルの発生に必要な水を噴霧器等で強制的に供給しなければならないという問題とが残されていた。
そこで本発明は、紫外線と二酸化チタンを用いてOHラジカルを発生させ、そのOHラジカルに庫内の空気中の有害なエチレンを改質して無害化することで庫内の生鮮農産物の鮮度を保持可能としつつ、噴霧器等の水の供給装置を使用せずに水を空気中の湿気から得ると共に照射する紫外線によって装置内の部品の劣化や損傷を起こすことなく長期間使用できる寿命の長い鮮度保持装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の生鮮農産物の鮮度保持装置は、紫外線照射によって二酸化チタンの表面に生成したOHラジカルに接触させて生鮮農産物から発生した有害なエチレンを無害なエタンと水に改質し、庫内の生鮮農産物の鮮度を長期間保持させる庫内設置型の鮮度保持装置であって、送風ファンの稼働により空気を吸入する一方の吸気口と、空気を排出する他方の排気口とを備えた筐体内に、該筐体中の前記吸気口から排気口へと通過する通風路を遮るように二酸化チタンが空気に接触可能に露出した通気可能な平板状のフィルタを配設し、該フィルタの空気吸入側表面に沿って20mm〜30mmの距離に254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管を配設し、該紫外線
発光管から15mm〜35mmの間隔を置いて前記フィルタの空気吸入側表面から20mm〜30mmの距離で平行に300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管を、
254nmの波長の紫外線を照射可能な前記紫外線発光管の両側に両側に夫々1本配設したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記中央の254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管と、その両側の300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管とを1単位の紫外線発光管ユニットとし、該紫外線発光管ユニットを一つの筐体内に複数設置したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記各紫外線発光管の空気吸入側近傍に、各紫外線発光管の空気吸入側の外周面を覆う反射板を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記筐体の排気口及び吸気口に、開口部を通気可能に遮断する防護フィルタを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、筐体内で、空気に接触可能に露出した平板状のフィルタの二酸化チタンに表面に送風ファンで吹き付けられた空気中の水分が補足されて付着し、該フィルタの表面に対して、20mm〜30mmの距離に配設した254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管と、該紫外線発光管から15mm〜35mmの間隔を置いた両側に前記フィルタの吸入側表面から20mm〜30mmの距離に配設した300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管とによって、フィルタの二酸化チタンの表面の付着した水に対して254nmの波長と300nm〜400nmの波長の紫外線を3方向から同時に照射し、その紫外線の化学的作用と二酸化チタンの光触媒作用とによって二酸化チタンの表面に確実にOHラジカルを生成させることが可能となる。
そして、送風ファンの稼働中の前記フィルタの表面への水分の供給については、空気の接触面積が大きな通気可能な平板状としたフィルタと、空中に露出した超親水性を有する二酸化チタンとの組み合わせによって、湿気を含む空気の接触面積を増大させてその湿気で二酸化チタン4を濡らし、装置の複雑化と故障の原因となる噴霧器等の水分の供給装置を使用することなく、又水分を供給するための電力を消費することなくOHラジカルの生成に必要な水を二酸化チタン4の表面に得ることが可能となる。
【0012】
そして、送風ファンで送られたエチレンを含んだ空気が前記フィルタの表面及び通気路内に露出した二酸化チタンの表面を擦るように通過して行く過程で、二酸化チタンの表面の付着した水中のOHラジカルにエチレンが接触し、有害なエチレンがOHラジカルの作用で無害なエタンと水に改質される。
この結果、筐体の吸入口から吸入されたエチレンを含んだ空気はエチレンの減じられた空気となって排出口から排出され続けて庫内の空気循環が繰り返され、庫内で保存されている生鮮農産物から常時発生されるエチレンの空気中の濃度の増加が抑えられ、生鮮農産物の鮮度が長期間保持されることとなる。
【0013】
そしてその際、254nmの波長の紫外線発光管が発する紫外線は化学的作用が強く、近い距離にあるフィルタやプラスチック製の各種部品を劣化させるおそれがあるが、本発明では254nmの波長の紫外線発光管は1本とし、且つその254nmの波長の紫外線発光管はフィルタまでの距離は20mm以上に離してフィルタの劣化を抑え、且つ筐体内の中央に配したことで筐体内の各種部品までの距離を大きく引き離して筐体内の部品の劣化を抑えることとが可能となる。
同時に、中央に配した波長が短く化学的作用の大きい254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管の両側にそれより波長が長く化学的作用の小さい300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管にあってもフィルタまでの距離を20mm以上に離したことでフィルタの劣化を抑えることが可能となる。
一方、波長300nm〜400nmの紫外線発光管は中央の波長254nmの紫外線発光管から15mm〜35mmの距離に配したことで、全体で3本の紫外線発光管により二酸化チタンの表面の水の中に確実にOHラジカルの生成が可能となる。
即ち、エチレンの改質を効率良く確実に行いつつ、フィルタや筐体内の各種部品の紫外線による劣化を抑制して鮮度保持装置の使用寿命を大幅に延ばすことが可能となった。
【0014】
又、その際、オゾンの発生が殆どない300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管に対してオゾンを発生させるおそれのある254nmの波長の紫外線発光管が少ない2対1の本数の組み合わせたことで、有害なオゾンの発生が抑えられる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、3本の前記紫外線発光管を1単位の紫外線発光管ユニットとし、該紫外線発光管ユニットを一つの筐体内に複数設置可能としたものであり、庫内空間の規模に応じた紫外線発光管ユニットの数の増減が可能となり、庫内空間の規模に適した装置が提供可能となる。
【0016】
請求項3記載の発明は、前記各紫外線発光管の空気吸入側近傍に外周面を覆う反射板を各紫外線発光管に対して夫々設けたことで、通風路の通風を阻害させず、通風量を保持させつつ各紫外線発光管の空気吸入側に照射される紫外線をフィルタ側へ反射させてフィルタに対してより多くの紫外線を照射させることが可能となる。
この結果、通風フィルタに対してより多くのOHラジカルを生成させ、有害なエチレンを、そのOHラジカルの作用でより効率良く改質させること可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記筐体の排気口及び吸気口を通気可能に遮断する防護フィルタを設けることで、埃、ゴミ、虫等の異物の筐体1内への侵入を防止し、ゴミや紫外線による虫の死骸等が筐体1の底に溜まるのを防止できるようになる。
又、排気口1b側では外部からの接触や衝撃による脆く崩れやすい二酸化チタン4を含むフィルタ3の損傷を防止可能ともなるので、長く使用し続けるためのクリーニングや補修等のメンテナンスが楽になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の生鮮農産物の鮮度保持装置を、以下図面を参照しつつ説明する。
本発明は野菜果物等の生鮮農産物から発生した有害なエチレンを庫内の空気中から除去するため、
図4に示すように、生鮮農産物15を収蔵する保冷庫等の庫14内に設置する鮮度保持装置である。
該
図4は、本発明の生鮮農産物15からは有害なエチレンE(黒塗り矢印で示す)が発生して庫内空間Sの空気中に放出され、該エチレンEが庫14内を周回する循環気流K(線矢印で示す)に運ばれて、該循環気流Kが通過する天井下の鮮度保持装置内を通過し、その際、エチレンE(黒塗り矢印で示す)がエタンe(白抜き矢印で示す)に改質して庫14内に排出される様子を示している。
なお、
図4では庫14内の生鮮農産物15の保管の邪魔にならない天井に本発明の鮮度保持装置を設置した態様を示しているが、該鮮度保持装置は庫内空間S中に循環気流Kを発生させるに適した場所に設置することが好ましく、壁面上部等の生鮮農産物15の保管に邪魔にならない場所であれば何処にでも設置することができる。
【0020】
本発明の鮮度保持装置は、
図1及び
図2に示すように、空気を吸入する一方の吸気口1aと、吸った空気を排出する他方の排気口1bとを備えた筐体1内に、該筐体1の吸気口1aに装着した送風ファン2と、該筐体1中の吸気口1aから排気口1bへと通過する通風路を遮るように排気口1b側に配着した通気可能な平板状のフィルタ3と、前記筐体1の中央の前記フィルタ3の空気吸入側の表面3aに沿った254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管5とその紫外線発光管5の両側の300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管6とを備える。
そして、本発明の鮮度保持装置を庫14内の天井等に固定するため、前記筐体1にボルト、ナット等による天井への取付け部(図示省略)を設ける。
【0021】
前記送風ファン2はプロペラをモータ7で回転させて送風するタイプのものを使用することができ、
図1及び
図2に示すように、一機又は複数機の送風ファン2を前記筐体1の吸気口1aを仕切るように設ける。
前記送風ファン2を稼働させるためのモータ7は、モータ用配線8を介して電源線10に接続する。
そして、該送風ファン2の稼働により、庫14内の空気が吸気口1aから筐体1内に吸入され、前記フィルタ3に吹き付けるように送風された空気はフィルタ3内を通過して排気口1bから庫14外に排出されることとなる。
【0022】
又、前記フィルタ3は、
図1及び
図2に示すように、矩形の平板状を成し、
図5に示すように、二酸化チタン4の粒子間の隙間を通って空気が表側から裏側に通過可能な通気路Fを形成し、表面及び通気路Fに臨んで前記二酸化チタン4が空気に接触可能に露出させたものを使用し、
図1及び
図2に示すように、前記筐体1の排気口1bを仕切るように前記筐体1の中に配設する。
該フィルタ3は前記送風ファン2によって吸気口1aから筐体1内に送風された空気はフィルタ3の通気路Fを通過し、その通過する過程で空気中のエチレンEがフィルタ3に補足されることとなる。
【0023】
なお、前記筐体1の排気口1b及び吸気口1aには、
図1に示すように、通風性の優れた布製の防護フィルタ16、17や金属製の網を設けて開口部を通気可能に遮断することで、埃、ゴミ、虫の前記筐体1内への侵入を阻止し、ゴミや紫外線による虫の死骸等が筐体1の底に溜まるのを防止することが可能となる。
又、排気口1b側では外部からの接触や衝撃による二酸化チタン4を含むフィルタ3の損傷を防ぐこともできる。
【0024】
前記フィルタ3内の二酸化チタン4の粒子は超親水性を有し、且つ化学的作用を行う光触媒としての機能を備え、その粒子の露出した表面は通風路Fを通る空気に含まれた湿気が当って濡れた状態となる。
そして、
図5に示すように、その二酸化チタン4の粒子の表面を濡らした水wに紫外線発光管5、6から紫外線Aが照射されると、電子が励起され、水分子が酸素と水素イオンに分解されてOHラジカルが生成される。
そして、空気中のエチレンEが二酸化チタン4の表面の水分中に生成したOHラジカルに接触すると、無害なエタンeと水wに改質することとなる。
なお、エチレンEを改質させるためのOHラジカルは水分中に生成されるが、エチレンEを改質した際に発生する水wも二酸化チタン4の粒子の表面に付着して、この水wにもOHラジカルが生成される。
又、フィルタ3は平板状としたことで、湿気を含む空気の接触面積を増大させ、電力消費と装置の複雑化及び故障の原因となる噴霧器等の水分の供給装置を使用することなく必要な水を効率良く二酸化チタン4の表面に得ることが可能となる。
【0025】
上記の如く前記フィルタ3によってエチレンEが除去された空気は、送風ファン2の稼働で排気口1bから前記筐体1外に排出される。
なお、該送風ファン2は、筐体1中の吸気口1aから吸入して排気口1bから排出させることで庫14内に一定方向への空気の流れを作り、庫14内の全体の空気を、エチレンの濃度を希釈させつつ大きく循環させ、生鮮農産物15から放出されたエチレン濃度の高い空気を発生源である生鮮農産物15から早く遠ざける機能も果たす。
【0026】
次に、本発明に使用する2種類の紫外線発光管5、6について詳述する。
前記各紫外線発光管5、6は、
図2及び
図3に示すように、いずれもフィルタ3に沿って該フィルタ3の空気吸入側の表面3aから20mm〜30mmの距離に配設し、その際、各紫外線発光管5同士は15mm〜35mmの間隔を置いて平行に各台座12上に直立させて固定する。
前記中央の254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管5とその両側の300nm〜400nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管6はいずれも細長棒状の蛍光灯タイプの紫外線発光管を使用することができる。
【0027】
そして、
図2に示すように、前記各紫外線発光管5、に電力を供給するために、波長254nmの紫外線発光管5と2本の波長300nm〜400nmの紫外線発光管6には、夫々紫外線管用配線9を設け、該紫外線管用配線9は電源線10に接続する。
なお、
図1中の符号11は、送風ファン2のモータ用配線8と、紫外線管用配線9をそれぞれ分岐させて夫々に接続する分電部11である。
【0028】
紫外線は、波長315nm〜380nmのものはUV−Aタイプと呼ばれ、波長200nm〜280nmのものはUV−Cタイプと呼ばれ、両者は異なる近紫外線領域の紫外線であり、前記UV−Cタイプの紫外線は化学的作用が強く、装置内の樹脂製品を急速に劣化させるが、UV−Aタイプの紫外線は化学的作用が弱く、装置内の樹脂製品を劣化させる力は弱い。
なお、遠紫外線領域の波長が10nm〜200nm以下のVUVタイプ紫外線は化学的作用が大変強く、装置内の樹脂製品を急激に劣化させ、又、オゾンを発生させるので本発明には使用を控える。
一般的に販売されている蛍光灯タイプのUV−Aタイプの紫外線を発光させる紫外線発光管6は、波長が370nmで最も強いピークとなり、その前後で減衰し、300nm〜400nm範囲の幅を持った波長の紫外線を含んでおり、これが使用できる。
【0029】
本発明では、上記UV−Aタイプの波長300nm〜400nmの紫外線発光管6は40ワットのものを使用し、これに対してUV−Cタイプの波長254nmの紫外線発光管5は8ワットと小さいワット数のものを使用するが、波長254nmの紫外線の方が化学的作用は強く、フィルタ3の空気吸入側の表面3aから20mm〜30mmの距離においてはどちらの紫外線発光管による照射でもOHラジカルの生成が可能となる。
【0030】
本発明では、波長254nmの紫外線発光管5と波長300nm〜400nmの紫外線発光管6はフィルタ3の表面3aにOHラジカルの生成を可能とするため下記の如き位置関係とする。
【0031】
紫外線は空気中の水蒸気により短距離でも急激に弱められ、その距離が30mm以上の長い距離では、フィルタ3にOHラジカルを生成させる能力が殆どなくなる。
図7は1本の波長254nmの紫外線発光管5の照射距離によって紫外線照射度が急激に減衰して行くことを示すグラフ図である。
【0032】
該
図7のグラフに示される如く、照射距離が5cmを超えると急に紫外線照射度が弱くなる。
そして、照射距離が15cmを超えると、紫外線照射度はほぼ「0」に等しくなってしまう。
従って、本発明では、フィルタ3の二酸化チタン4に対してOHラジカルを生成可能とする紫外線照射度は0.8以上の値が期待できる30mm以内の距離で照射させることとした。
但し、15mmよりも近すぎると紫外線の照射でフィルタ3が劣化を起こすので、フィルタ3の表面3aからの距離を20mm〜30mmとした。
なお、フィルタ3に対して、接するほど距離が近すぎると、フィルタ3の254nmの紫外線発光管5の近接した部分では通風性が悪くなる場合があり、そのためには通風性が阻害されない程度の位置まで離した方が好ましい。
【0033】
そして、254nmよりも化学的作用の弱い波長300nm〜400nmの紫外線発光管6は、波長254nmの紫外線発光管5の両側に15mm〜35mmの間隔を置いて、いずれも前記フィルタ3の吸入側の表面3aから30mmの位置に平行に配着する。
但し、各紫外線発光管5、6は相互に接するほどに距離が小さいと相互の隙間が閉じて通風性が悪くなるので、通風性が阻害されない程度の15mm以上に離すこととした。
又、各紫外線発光管5、6は相互に大きく離すと、フィルタ3の表面3aに対する各紫外線発光管5、6の照射による化学的作用を起こさせることができない離れた場所が生じるので十分な照射が可能となる程度の35mm以内に近づけることとした。
【0034】
そして、化学的作用の大きい波長254nmの紫外線発光管5は筐体1の中央に配したので、その紫外線発光管5から周囲の部品までの距離は、波長300nm〜400nmの紫外線発光管6の管径30mmと両者の間隔15mmを加えた分の距離の45mm以上は離すことができる。
この距離は、前記
図7に示されるように、紫外線照射度が「0」に等しくなる照射距離である15cmを大きく超えたものなので、強い化学的作用がある紫外線の影響を殆ど受けることなく、製品の劣化による寿命の短命化を防止できる。
【0035】
前記フィルタ3に対しては、
図2に示す平面視において、フィルタ3の表面3aに対して波長300nm〜400nmの紫外線発光管6と波長254nmの紫外線発光管5が例えば同じ30mm離れて並ばせると、前記
図7に示すように、最短距離で夫々紫外線照射度は0.8となり、又、波長300nm〜400nmの紫外線発光管6と波長254nmの紫外線発光管5との中間に当るフィルタ3の表面3aでは各紫外線発光管5、6からは距離は離れて各個別の紫外線発光管5、6の紫外線照射度は低下するが、波長300nm〜400nmの紫外線と波長254nmの紫外線とが重なり合って照射され、それらを合計して紫外線照射度は0.8程度の紫外線照射度が得られるものとなる。
この結果、フィルタ3の表面3aのどの部分でも万遍なく同程度の紫外線照射度が得られることとなる。
【0036】
次に、本発明では、空気中のエチレンEを紫外線によって二酸化チタン4の表面の水分中に生成したOHラジカルに接触させて、無害なエタンeと水wに改質させるものであるが、その原理を説明する。
図5の符号のEはエチレン、eはエタン、wは水、Aは紫外線、Fは通気路、3はフィルタ、4は二酸化チタンの粒子を示すものである。
【0037】
該
図5に示すように、二酸化チタン4の表面に波長254nm又は300nm〜400nmの紫外線発光管5、6で紫外線Aを照射すると、その紫外線Aのエネルギーにより水分子wからOHラジカルができる。
この時、「O」と「OH」の解離エネルギーは4.8eVであり、この解離エネルギーを持つ紫外線の波長はλ=254nmである。又、波長はλ=300〜400nmの紫外線発光管6での解離エネルギーは3.2eVである。
そして、水(H
2O)から分離され生成されたOHラジカルはエチレン(C
2H
4)に結合する。
そのOHラジカルとエチレンC
2H
4の反応で、エタン(C
2H
3)と水(H
2O)が生成される。
この反応を次の化1の化学式で示す。
【0039】
以上のようにエチレン(C
2H
4)をエタン(C
2H
3)と水(H
2O)に改質するが、その際に生成されるOHラジカルの寿命は1/10
6秒と極めて瞬間のものである。しかし、本発明では紫外線を照射し続ける限り継続的に生成され続けて、OHラジカルが常に二酸化チタン4の表面に付着した水分中に存在する状態となる。
【0040】
更に、二酸化チタン4の表面は超親水性を有し、湿度変化で含有量が変わる空気中の水wが付着して濡れた状態となる。
二酸化チタン4の表面へ紫外線発光管5、6から紫外線Aが照射されると光触媒作用によってフィルタ3内の二酸化チタン4の粒子表面の水w中にOHラジカルが生成される。
該二酸化チタン4の粒子表面の水wに対して、吸気口1aから通気ファン2で吸入した空気が流れて、空気中に含まれるエチレンEが二酸化チタン4表面のOHラジカルに接触すると、紫外線照射エネルギーと二酸化チタン4の光触媒作用とによって効果的にエチレンEがエタンeと水wに改質されることとなる。
【0041】
そして、本発明ではエチレンEを含んだ空気はフィルタ3を通過して抜けていくが、その際、平板状のフィルタ3の通気路Fに露出した二酸化チタン4は表面積が大きく、且つ空気は狭い通気路Fを通過するので空気中のエチレンEの接触機会は大きなものとなる。
又、その際、紫外線は一つの通気路Fに対して3本の紫外線発光管5、6で3方向から同時に紫外線が照射され、更に乱反射して受光面側の通気路F内を照射することが可能となる。
【0042】
1本の紫外線発光管に接近した位置ではフィルタ3は筋状に強く照射され、その筋状部分への他の2本からの照射は離れた位置からなので弱い照射となる。
又、2本の紫外線発光管の中間の位置ではフィルタ3はいずれの紫外線発光管からも離れた位置に当たるので弱く照射されるが、その位置では両側の紫外線発光管かから同時に照射されるので合計では強く照射されることになる。
このため、通風フィルタ3の表面3aのどの位置においても3本の紫外線発光管から同時に照射され、フィルタ3の表面3aのどの位置においても、OHラジカルが生成されるのに有効な照射が得られることとなる。
【0043】
また、紫外線発光管5、6から紫外線が照射されると、通気路Fを進んでフィルタ3の内部の二酸化チタン4を励起させ、フィルタ3の表面3aと、通気路Fに面した内部に至るまで幅広くOHラジカルを生成させる。
そして、本発明では、紫外線照射エネルギーと二酸化チタン4の光触媒作用とによってフィルタ3に多量のOHラジカルが生成され、その多量のOHラジカルに対して空気中のエチレンEが接触し、その結果、空気中のエチレンEが確実にエタンeと水wに改質されることなる。
【0044】
以上エチレンEの改質の原理を説明したが、本発明では更に次の如き形態が可能である。
例えば、
図6に示すように、各紫外線発光管5、6の空気吸入側の表面3aの近傍に、各紫外線発光管5、6の通風フィルタ3側を避けて空気吸入側の外周面を覆う反射板13を設けた形態が可能である。
この形態では、各紫外線発光管5、6の通風ファン2に照射される紫外線を反射させて通風フィルタ3の表面3aに向け反射できるので紫外線の照射効率が良くなる。
【0045】
又、
図3に示すように、台座12上に直立させた中央の波長254nmの紫外線発光管5と、その両側の紫外線発光管6とを1単位の紫外線発光管ユニットUとし、該紫外線発光管ユニットUを一つの筐体1内に複数設置する形態が可能である。
なお、
図1に示す装置の形態は一つの紫外線発光管ユニットUを用いた態様を示すが、大型保存庫に使用する場合等では紫外線の照射能力を高めるに一つの筐体1内に、複数の紫外線発光管ユニットUを組み込むことで対応可能となる。
【実施例1】
【0046】
次に本発明の実施例を示す。
図1及び2に示すように、筐体1は、縦横30cm、奥行き20cmのステンレス製としし、一方に空気を吸入する縦横20cmの吸気口1aと、他方に吸った空気を排出する縦横20cmの排気口1bとを備えた箱状のものを用いた。
そして、該筐体1の吸気口1aに装着は径が10cmのプロペラを上下に2機の送風ファン2を装着した。
又、該筐体1中の吸気口1aから排気口1bへと通過する通風路を遮るように排気口1b側には縦横20cmm、厚さ15mmの空気に接触可能に露出した二酸化チタン4を有する通気可能な平板上のフィルタ3を配設した。
【0047】
そして、前記筐体1の中央には前記フィルタ3の空気吸入側の表面3aに沿って254nmの波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管5を配設し、その紫外線発光管5の両側に波長の紫外線を照射可能な紫外線発光管6を配設した。
前記フィルタ3の表面全面に一定の紫外線照射度を得られるように、前記紫外線発光管は、長さが200mm、直径が30mmの蛍光灯タイプの蛍光灯タイプの紫外線発光管5、6を使用し、そのうち両外側の波長300nm〜400nmの紫外線発光管6のワット数は40ワットのものを使用し中央の波長254nmの紫外線発光管5は8ワットのものを用いた。
そして、上記本発明の鮮度保持装置を、
図4に示すように、庫内の天井に吊設した
【0048】
(実験例1)
保冷庫に見立てた112リットルのアクリル製の密封容器内にエチレンを130ppm注入して、本発明の実施例1の態様の装置を設置した場合と設置しない場合とについてエチレンの時間的な減衰状態を観察した。
その実験結果を、
図8に示す。
【0049】
該
図8の中の「装置あり」は密封容器内に本発明の鮮度保持装置を入れて得たデータであり、「装置なし」は本装置を入れないで得たデータである。
エチレンは自然減衰で25分に、45ppm減少している。これはエチレンの改質によるものではなく、壁面等に吸着されて減少したものと思われるが、それでも60分たって65ppmのエチレンが残されてしまう。
これに対して、本発明の装置を入れた場合には、エチレンは25分に130ppm全て減少した。
これにより本発明の装置の優れたエチレンの改質効果が確認できた。