(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
食品などのオートメーション化された工場では、製造ラインで製造された製品をコンベア等の搬送装置により包装ラインに搬送して、包装した製品を出荷しているが、その間に製品の品質検査を行なっている。
【0003】
この品質検査のうち、製品に混入した金属の検出を行なうものとして、金属検出装置が従来から用いられている。金属検出装置は、基本的に被検査物が通過する領域(例えばコンベア上)に検査用の磁界を発生させ、その領域を通過する製品内の混入金属による磁界の変化を、コイルやホール素子等の磁気センサを用いて検出している。
【0004】
このように、物品の製造現場において厳重な異物検査を行なっていても、スーパーマーケット(以下、スーパーと記す)やコンビニエンスストア(以下、コンビニと記す)などでは、陳列商品を客が自由に触れて選択できるシステムを採用しているため、針等の金属を故意に商品に混入させることが可能であり、このような金属混入商品が販売されてしまうと、それを購入した客に被害をあたえることになり、店の信用を大きく落すことになる。
【0005】
このため、スーパーやコンビニなどでは、客が購買するつもりでレジに持ち込んだ商品の清算をする際に、商品に金属の異物が混入していないかを検査できる金属検出装置を導入することが検討されている。
【0006】
スーパーやコンビニなどで採用可能な金属検出装置として、特許文献1には、レジのカウンタ台にフラット型の金属検出装置を用いた例が示されている。
【0007】
この特許文献1に開示された金属検出装置は、レジのカウンタ台の上面に、物品を載置する上板121が支持され、上板121の下面側に固定された矩形のヘッドフレーム122の最も外周に送信コイル123が巻かれ、その送信コイルの123の内側に同一口径の2つの受信コイル124、125が横並びに配置され、送信コイルが123が発生する磁束が、受信コイル124、125にほぼ等量鎖交するようにしている。
【0008】
したがって、上板121の上に乗せた商品に金属が混入していると、その金属が与える磁界への影響で、2つの受信コイル124、125の鎖交磁束に差が生じ、この磁束の差を検出することで、商品に金属が混入しているか否かを判定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記構成の金属検出装置では、上板121の上に置かれた商品に混入している金属の位置と2つの受信センサの位置が検査時に固定されるため、例えば2つの受信コイルの境界近傍に混入金属があると、その混入金属が両受信コイルの鎖交磁束に与える影響がほぼ同じとなり、その差が小さくなって混入金属を検出できない場合が発生する。また、例えば二つの混入金属の一方が、一方の受信コイルの鎖交磁束と交わる位置にあり、二つの混入金属の他方が、他方の受信コイルの鎖交磁束と交わる位置にあり、両混入金属がそれぞれの鎖交磁束に与える影響がほぼ等しい場合にも、両受信コイルの鎖交磁束の差が小さくなり、混入金属を検出できない場合が発生する。また、同じ金属が混入している場合であっても、上板121に対する商品の載置位置、向き、姿勢等により、混入金属に対する検出感度が大きく変化してしまい、混入金属を検出できない場合が発生する。
【0011】
また、店員が検査対象の商品を持って上板121の上を通過させて、検査することもできるが、この場合、上板121に対する商品の通過高さ、姿勢、速度等がまちまちとなり、正確な検査が行なえない。
【0012】
このため、製造ラインで用いられているような物品搬送型の金属検出装置の構造を採用することも考えられるが、物品搬送型の金属検出装置をレジのカウンタ等に設置することはスペースや作業性の問題で困難である。
【0013】
本発明は、この課題を解決して、限られたスペースで且つ簡単な作業で、物品の混入金属の検出を高感度に行なえる金属検出装置および金属検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の金属検出装置は、
検査対象の物品を載置するための載置台(21)と、
前記載置台の前記物品が載置される所定広さの上面側領域から該上面側領域と重なる前記載置台の下面側領域に渡って検査用の磁界を発生する磁界発生手段(42、60)と、
前記載置台の前記下面側領域内に配置され、該下面側領域より狭い感応範囲の磁界を検出する磁気センサ(43)と、
前記磁気センサの位置を、該磁気センサの前記感応範囲が前記載置台の前記下面側領域全域をカバーするように第1の静止位置から第2の静止位置まで移動させる走査手段(34、41c、51、52、55)とを備え、
前記載置台の前記下面側領域全域をカバーするように移動した前記磁気センサにより検出される磁界の変化に基づいて、前記載置台に載置された物品に混入する金属を検出する
ものであり、
前記走査手段は、前記磁気センサを、前記下面側領域内で直進往復移動または回動往復移動するように構成され、
前記磁界発生手段は、前記走査手段による前記磁気センサの移動方向の切替えと連動させて、検査用の磁界についての検査条件を変更することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項
2の金属検出装置は、請求項1
に記載の金属検出装置において、
前記載置台の前記上面側領域に物品が載置されたことを検知する物品検知手段(70)を有し、
前記走査手段は、前記物品検知手段により前記載置台の前記上面側領域に物品が載置されたことが検知される毎に、前記磁気センサの移動を開始させることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項
3の金属検出方法は、
検査対象の物品を載置するための載置台(21)の所定広さの上面側領域から該上面側領域と重なる前記載置台の下面側領域に渡って検査用の磁界を発生する段階と、
前記載置台の前記下面側領域内に配置され、該下面側領域より狭い感応範囲の磁界を検出するための磁気センサ(43)の位置を、該磁気センサの前記感応範囲が前記載置台の前記下面側領域全域をカバーするように第1の静止位置から第2の静止位置まで移動させる段階と
を含み、
前記載置台の前記下面側領域全域をカバーするように移動した前記磁気センサにより検出される磁界の変化に基づいて、前記載置台に載置された物品に混入する金属を検出する
ものであり、
前記磁気センサを、前記下面側領域内で直進往復移動または回動往復移動させるとともに、該磁気センサの移動方向の切替えと連動させて、検査用の磁界についての検査条件を変更することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項
4の金属検出方法は、請求項
3に記載の金属検出方法において、
前記載置台の前記上面側領域に物品が載置されたことを検知する段階を含み、
前記載置台の前記上面側領域に物品が載置されたことが検知される毎に、前記磁気センサの移動を開始させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明では、載置台の物品が載置される所定広さの上面側領域およびその上面側領域と重なる下面側領域に渡って検査用の磁界を発生させ、載置台の下面側領域内に配置された磁気センサを、載置台の下面側領域内を移動させて下面側領域全域の磁界の変化を求め、載置台に載置された物品に混入する金属を検出している。
【0021】
このため、載置台に置かれた物品に混入している金属の位置と磁気センサとの相対位置が必ず変化するので、混入金属の位置によらず、高い感度で検出できる。
【0022】
また、物品自体を搬送しなくて済み、レジのカウンタ等に設置しても、スペースや作業性の問題は発生しない。
【0023】
また、載置台の下側領域内での磁気センサの移動方向の切替えと連動して、検査用の磁界についての検査条件を変更するようにしたものでは、一つの物品に対して複数の異なる検査条件で検査を行なうことができ、より精度の高い検査が行なえる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した金属検出装置20の機構的な構成を示す一部を分解した図、
図2は、電気的な構成を示す機能ブロック図である。
【0026】
図1に示しているように、この金属検出装置20は、載置台21、ケース30、ヘッド40を有している。物品を載置するための載置台21は、略矩形の平板状で、磁束を少ないロスで通過させる非金属(例えば合成樹脂)で形成され、例えばその四隅がケース30の上面側にネジ(非金属)等により固定できるようになっている。
【0027】
載置台21の上面のほぼ中央には、物品を載置する際の目安としての中心位置を表すマーク(図では小さい円形)22が示され、また、物品を載置するための領域全体を表す領域枠23が示されている。これらのマーク22や領域枠23の表示形態はこの実施例に限らず任意であり、マーク22の形状を円形以外の例えば十字、三角、四角で表してもよく、領域枠23についても、線で枠を表すだけでなく、色の違い、模様の違いなどで領域を区別できるようにしてもよい。
【0028】
また、載置台21の上面の一端側には、押しボタンスイッチなどからなる操作部24と表示部25が設けられている。この表示部25には、混入金属の有無を光で報知するために、例えばLED等の発光器が含まれているものとする。なお、ここでは、操作部24や表示部25を載置台21の縁部に設けているが、検査用の磁界に対する影響が無視できない場合には、操作部24や表示部25を載置台21から十分離間した位置に別途設けてもよい。
【0029】
ケース30は、載置台21と同様に非金属製で、前板30a、後板30b、側板30c、30d、底板30eにより、載置台21と外形がほぼ等しい有底の矩形箱状に形成され、その開口された上面側が載置台21で塞がれる構造となっている。ケース30の内部は、両端が側板30c、30dに接合された仕切板31により奥行きが大きい空間32と小さい空間33に分割され、空間32にはヘッド40が支持され、空間33には、ヘッド40を移動させるための駆動源としてのモータ51やその他の電子回路等が収容されている。
【0030】
また、前記した載置台21の上面の領域枠23は、空間32の外縁にほぼ一致するように表示されており、操作部24および表示部25は、空間33と重なり合う位置に設けられている。ここでは、空間33に収容されるモータ51やその他の電子回路等が、検査用の磁界に与える影響が少ないものとして説明するが、前記した操作部24や表示部25と同様に、検査用の磁界に与える影響が無視できない場合には、この空間33およびそれに収容されるモータ51やその他の電子回路等を、ヘッドが移動する空間32から十分離間した位置に別途設けてもよい。
【0031】
側板30c、30dの内壁側で空間32の両側部を形成する部分には、ヘッド40の両端を上下から僅かに隙間のある状態で挟んで、ヘッド40の水平移動をガイドする溝状のガイド部34が設けられている。
【0032】
ヘッド40の基板41は、例えば合成樹脂等の非金属製で横長矩形の略平板状に形成され、その両端は、前記ガイド部34により上下から挟まれていて、短辺方向沿ってスライド移動できる状態で支持されている。
【0033】
基板41の上面側の外縁には、後述する信号発生器60とともにこの実施形態の磁界発生手段を構成する送信コイル42が長方形枠状に巻かれ、送信コイル42の内側には、複数(図では8個)の磁気センサ43、43、…、43が、ヘッド40の長手方向にほぼ等間隔に並んで配置されている。
【0034】
送信コイル42は、載置台21の上面側で物品が載置される上面側領域(領域枠23の内側)と、載置台21の下面側で上面側領域と重なる下面側領域(この例では、前記空間32と重なる領域)に渡って検査用の磁界を発生させるためのものであり、後述する信号発生器60から供給される信号(交流、直流、交流+直流のいずれか)により励磁されて、検査用の磁界を発生させる。以下の説明では、磁界発生手段が、送信コイル42と信号発生器60で構成される例を示すが、永久磁石を用いてもよく、永久磁石とコイル(信号発生器も含む)を併用してもよい。
【0035】
また、ここでは送信コイル42の長さは、上面側領域や下面側領域の長さにほぼ等しく、幅は上面側領域や下面側領域の幅より格段に狭くなっていて検査用の磁界の発生範囲もその分狭くなっているが、ヘッド40の幅方向への移動により、検査用の磁界を上面側領域や下面側領域全体に発生できるようになっている。後述するように、送信コイル42として上面側領域や下面側領域とほぼ同じ大きさのものを固定式で設けてもよい。ただし、その場合、所望の強さの磁界(つまり所望の磁束密度)を得るために必要な信号電力が増大する。
【0036】
一方、磁気センサ43は、載置台21の下面側領域内に配置され、磁界発生手段が発生する磁界を検出するためのものであり、この実施形態では、
図2および後述する
図4に示しているように、強磁性体(例えばアモルファス磁性体)のコア43aの両端に、一対の受信コイル43b、43cを、間隔を開けて巻いて差動接続して構成されたものを用いている。この磁気センサ43の受信コイル43b、43cのコイル長さおよびコイル径は、磁界に対する感応範囲を決めるものであり、その感応範囲は載置台21の下面側領域に比べて格段に小さいので、載置台21の下面側領域全体に対して局所的に磁界の変化を検出できる。磁界検出手段として、この磁気センサ43を一つだけ用いて、載置台21の下面側領域全域をカバーするためには、磁気センサ43を2次元的に走査する必要があり、これでは検査時間が長くなる。
【0037】
そのため、この実施形態では、複数(図では8個)の磁気センサ43を下面側領域の長手方向に一定間隔で並べて、幅方向に移動させることで、一次元の走査(直線的移動)で下面側領域全域をカバーできるようにしている。ただし、これら複数の磁気センサ43の感応範囲を合わせても下面側領域より狭く設定されている。
【0038】
また、ここでは、ヘッド40の限られた長辺寸法内に多くの磁気センサを配置して、異物金属に対する検出分解能を高められるように、一対の受信コイル43b、43cの並び方向(コア43aの長手方向)を磁気センサ43の並び方向(ヘッド40の長手方向)に直交させているが、後述するように、一対の受信コイルの並び方向に対して磁気センサの並び方向を90度以外(非直交)の角度にしたり、磁気センサを複数列に並べてもよい。
【0039】
ヘッド40の基板41の長手方向の中間部には、内周にネジ溝が形成されたネジ穴41aが基板41の長手方向と直交する方向に貫通形成され、このネジ穴41aには、非金属製で外周にネジ溝が形成された駆動軸52が螺合した状態で挿通されている。駆動軸52の一端側は仕切板31側でモータ51に連結され、他端側はケース30の後板30bに回転自在に支持されている。したがって、例えばモータ51が正転駆動されて駆動軸52が正転すれば、ヘッド40が仕切板31方向に移動し、モータ51が逆転駆動されて駆動軸52が逆転すれば、ヘッド40が後板30b方向に移動する。なお、モータ51は、磁気センサ43が検出する磁界に影響を与えない構造(例えば磁気的にシールドされたもの)とする。
【0040】
つまり、この実施形態では、上記ガイド部34、ネジ穴41a、モータ51、駆動軸52を含む走査手段により、複数の磁気センサ43、43、…、43を、載置台21の下面側領域内で直線的に往復走査させて、下面側領域全体をカバーしている。上記走査手段は、ヘッド40のネジ穴41aに螺合された駆動軸52をモータ51の回転力で回転させてヘッド40を直進往復走査させる構造であるが、上記以外の種々の構造が可能である。
【0041】
例えば、モータの駆動により周回駆動される一対の無端ベルトにヘッド40の両端を支持させて、無端ベルトの駆動方向を切り替えることで、ヘッド40を一定の範囲内で直進往復走査させたり、ヘッド40を、その中心部または一端側を中心に一定の角度範囲内で往復回動させる構造や、連続的に一定方向に回転させる構造であってもよい。また、駆動源として磁界に影響を与えやすいモータ51の代わりに、空気の圧力で駆動するシリンダを用い、そのシリンダの軸を突出あるいは引き込むように駆動して、ヘッド40を直進往復移動あるいは回動往復移動させる構造も採用でき、磁気作用を用いない超音波モータ等を用いて、駆動軸52を回転させる構造や、ヘッド40を直接移動させる構造も採用できる。
【0042】
ヘッド40の送信コイル42と複数の磁気センサ43、43、…、43の配線は、図示しないフレキシブルケーブルを介して、例えば空間33内の回路基板(図示せず)に接続される。
【0043】
図2に示しているように、この金属検出装置20は、モータ51を駆動する走査制御部55、送信コイル42に検査用の磁界を発生させるための信号を供給する信号発生器60、各磁気センサ43の並列接続出力を差動入力端子で受ける差動増幅器61、差動増幅器61の出力を信号発生器60の出力信号により同期検波する検波回路62、検波回路62の出力と予め設定されたしきい値とを比較して、混入金属の有無を判定する判定手段63、判定手段63の判定結果を報知する報知手段64を有している。報知手段64は、混入金属有りと判定された場合、表示部25に対して例えば赤い光を表示させるとともに、図示しないブザーにより音を発生させてこれを報知する。
【0044】
走査制御部55は、例えば、操作部24の操作で出力される検査指示信号を受けてモータ51を駆動し、ヘット40を走査させる。なお、この検査指示信号は、後述する物品検知手段70から出力される場合もある。
【0045】
また、図示していないが、ケース30内には、ヘッド40の前端が仕切板31の内壁にほぼ接する位置(第1の静止位置)まできたこと、ヘッド40の後端が後板30bの内壁にほぼ接する位置(第2の静止位置)まできたことを、例えば光学的に検出するセンサが設けられており、走査制御部65は、例えば
図3の(a)に示すように、第1の静止位置を走査スタート位置とし、検査指示信号を受けると、ヘッド40を第1の静止位置から第2の静止位置までほぼ一定速度で移動させて停止させ、さらに第2の静止位置から第1の静止位置までほぼ一定速度で移動させて停止するという動作を繰り返すことになる。
【0046】
なお、ここでは、載置台21に置かれた物品に対する検査を行なうための検査指示信号が出力される毎に、ヘッド40を2つの静止位置の間を1往復させることで、ヘッド走査方向の違いに伴う混入金属に対する検出漏れを防ぐようにしているが、
図3の(b)のように、載置台21に置かれた物品に対する検査を行なうための検査指示信号が出力される毎に、ヘッド40を一方の静止位置から他方の静止位置まで走査(片道走査)させるように構成すれば検査効率を高めることができる。
【0047】
次に、ヘッド40の磁気センサ43が検出する磁界の変化について簡単に説明する。
検査対象の物品に混入金属が無い場合、送信コイル42によって発生する磁束は、二つの受信コイル43b、43cにほぼ等量交わるので、受信コイル43b、43cの出力端子からは、コイル同士の接続点を基準にして、ほぼ振幅と位相が等しい信号が出力され、差動増幅器61の入力および出力はほぼゼロとなり、検波出力もほぼゼロとなる。
【0048】
一方、混入金属を含む物品が載置台21に置かれて、例えば操作部24の操作で検査指示信号が出力されると、走査制御部55によりヘッド40が走査され、
図4に示すように、混入金属の位置が、磁気センサ43のコア43aの一端側の受信コイル43bの近傍位置Aに来ると、その混入金属により受信コイル43bに鎖交する磁束への影響が大きくなり(混入金属が鉄金属の場合は鎖交磁束増加、非鉄金属の場合は鎖交磁束減少)、他方の受信コイル43cに鎖交する磁束への影響が小さいので、差動増幅器61の出力には、一方の受信コイル43bが受けた磁界変化に相応する所定量分ΔEの振幅の信号が現れることになる。
【0049】
また、ヘッド40がさらに走査されて、混入金属の位置が両受信コイル43b、43cのほぼ中間位置Bになると、混入金属による両受信コイル43b、43cに鎖交する磁束への影響がほぼ等しくなり、一方の受信コイル43bの出力が例えば+側に前記所定量分ΔE変化し、他方の受信コイルの出力が−側にほぼ前記所定量分ΔE変化するので、その差分を求める差動増幅器61の出力には両受信コイル43b、43cの磁界変化に相応する所定量分のほぼ2倍の振幅2ΔEとなる信号が出力される。
【0050】
また、ヘッド40がさらに走査されて、混入金属の位置が、磁気センサ43のコア43aの他端側の受信コイル43cの近傍位置Cにくると、位置Aの場合と逆に、混入金属により受信コイル43cに鎖交する磁束への影響が大きくなり、受信コイル43bに鎖交する磁束への影響が小さいので、差動増幅器61の出力には、受信コイル43cが受けた磁界変化に相応する所定量分ΔEの振幅の信号が現れることになる。
【0051】
したがって、ヘッド40が混入金属の下側を通過する際に、例えば
図5のような検波出力波形が現れる。判定手段63は、検査指示信号を受けてから、ヘッド40の走査が完了するまでの間に入力される検波出力を所定のしきい値Rと比較することで、混入金属の有無を判定する。
【0052】
この判定結果は、報知手段64に出力され、混入金属が有りと判定された場合、表示部25に対してこれを報知する表示(例えば異物有りで赤表示、異物無しで緑表示)を行ない、ブザー音を発生させる。
【0053】
前記実施例では、検査用の磁界として、鉄金属、非鉄金属の両方に対して感度が得られる交流磁界を用いていたが、前記したように、検査指示信号の1回の出力に対してヘッド40を往復走査させる場合、往路と復路で、検査用の磁界の種類(交流、直流等)、強さ、磁界周波数等の検査条件を切り替えることで、一つの検査条件では検出しにくい異物を検出させるようにして、検出可能な異物の種類を拡げることができる。また、1回の往復走査を1単位とするだけでなく、複数回の往復走査を1単位とし、往復走査毎に、検査条件を切り替えたり、N(Nは整数)回の往復走査に往路の走査を加えたものを1単位とし、これら2N+1の走査についてそれぞれ検査条件を変更してもよい。これらの検査条件の変更処理は、走査制御部55による信号発生器60への制御で行なうことになる。
【0054】
このように、載置台21に載置された物品に対して、磁気センサ43を走査させることで混入金属の検出を行なうようにしているから、従来装置のように物品および磁気センサ固定型のものや、物品を手で持って磁気センサ43の上を通過させる方法に比べて、確実な金属検出を行なうことができる。また、磁気センサ43の走査方向(ヘッド40の走査方向)の切替えに連動して検査用の磁界についての検査条件を変更することで、一つの検査物品に対して、複数の異なる条件での検査を行なうことができ、より精度の高い検査が可能である。
【0055】
なお、上記磁気センサ43は、一対の受信コイル43b、43cの並び方向が磁気センサ43の並び方向に直交する向きに固定していたが、
図6の(a)のように、一対の受信コイル43b、43cの並び方向を磁気センサ43の並び方向に対して例えば30度、45度等の角度を成すように傾けて並べてもよく、
図6の(b)のように、各磁気センサ43の一対の受信コイル43b、43cの並び方向を磁気センサ43の並び方向に揃え、各磁気センサ43を長手方向の位置をずらした状態で複数列に並べてもよい。このようにすれば、ヘッド40の短辺寸法をより小さくでき、ヘッド40の走査領域を拡げることができる。
【0056】
なお、ここでは、磁気センサ43を、差動接続された一対の受信コイルで構成した例を示しているが、単独の受信コイルであってもよく、またホール素子等の半導体型の素子で構成してもよい。また、磁気センサ43の走査は、前記した直進往復走査だけでなく、例えば、
図6の(a)、(b)で点線で示しているように、ヘッド40の一端側(図では上端側)、あるいは中間部を中心に回動往復走査させてもよい。また、往復走査でなく、ヘッド40を一方向(例えば時計回りに)に連続的に回転させる方式や、一方向(例えば時計回りに)に間欠的に回転させる方式も採用できる。
【0057】
また、前記実施形態では、ヘッド40に磁界発生手段としての送信コイル42と磁気センサ43を支持させているが、磁界発生手段のコイルや磁石は、固定式であってもよい。例えば載置台21の上面、内部(ともに埋込式が望ましい)、あるいは下面(埋込式、突出型のいずれでもよい)に、ヘッド走査空間より広い大きさの送信コイルを固定する。
【0058】
前記実施形態のような検査用磁界移動型の場合、
図7の(a)、(b)に示しているように、ヘッド40に設けられた送信コイルや磁石が発生する検査用磁界Fmの範囲は、載置台21の上下の領域を部分的に覆う広さに限定されていて、ヘッド40の走査により載置台21の上下の領域を全体的にカバーする。これに対し、上記した検査用磁界固定型の場合、
図8の(a)、(b)に示すように、載置台21やケース30等に固定されたコイルや磁石が発生する検査用磁界Fmの範囲は、載置台21の上下の領域全体を覆う広さを持ち、定常的に発生している。
【0059】
前記実施形態では、ヘッド40の走査を開始するための信号として、操作部24の操作によって発生する検査指示信号を用いていたが、前記したように、載置台21に対して検査対象の物品が載置されたことを検知する物品検知手段70を設けて、これを自動化することもできる。
【0060】
この物品検知手段70としては、例えば、載置台21あるいはケース30の外縁に設けたの投受光器を用いて物品による遮光を検知する方法、載置台21あるいはケース30に設けた荷重センサにより物品の荷重を検知する方法等を用いることができる。
【0061】
なお、本発明の金属検出装置および金属検出方法は、前述したスーパーやコンビニだけでなく、ハンバーガーショップのように店舗内で調理や加工を行なった商品を客に提供する際に、調理や加工段階で誤って混入した金属の異物を検出する用途にも有用である。