(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定装置は、前記冷媒の温度の変化量が、前記循環装置が作動を開始してから所定の期間が経過するまでの間に所定の閾値以上にならない場合に、前記外部ヒータが稼働していないと判定することを特徴とする請求項1に記載の外部ヒータ稼働判定システム。
前記判定装置は、前記循環装置が作動を開始した後、前記冷媒の温度の変化量が上昇して第一の閾値以上になり、その後、第二の閾値未満に低下した場合に、前記外部ヒータが稼働していると判定することを特徴とする請求項3に記載の外部ヒータ稼働判定システム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る外部ヒータ稼働判定システム及び車両用制御システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
なお、以下では、車両がプラグインハイブリッド電気自動車であり、外部ヒータがブロックヒータであり、装着された外部ヒータによる加熱の対象である第一装置がエンジンであり、第一装置とは別体の装置であって冷媒による冷却の対象となる第二装置がパワーコントロールユニット(Power Control Unit。以下、PCUという。)であり、エンジンが車両の前方、PCUが車両の後方にある場合の実施形態について説明する。そして、その後で、本発明の適用範囲の拡張等について説明する。
【0026】
[外部ヒータ稼働判定システム]
以下、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システムについて説明する。
図1に示すように、外部ヒータ稼働判定システム1は、車両10内に設けられた、ブロックヒータHが装着されたエンジン2と、冷媒3による冷却の対象となるPCU4と、冷媒3が内部を循環する循環経路5と、冷媒3を循環経路5内で循環させる電動ポンプ6と、冷媒3の温度を検出する冷媒温度センサ7と、判定装置8とを備えて構成されている。
【0027】
車両10内には、この他、発電機を兼ねるモータ11や、冷媒3等を冷却するためのラジエータ12等が車両前方に配置され、リチウムイオン電池等で構成され車両10の走行等に必要となる電気エネルギーを蓄電するバッテリ13や、車両10の停車時に図示しない外部充電設備に接続されてバッテリ13を充電する車載充電器14等が車両後方に配置されている。
【0028】
エンジン2や電動ポンプ6の構成等については公知であり、説明を省略する。なお、電動ポンプ6は、エンジン2の稼働前は停止しており、後述するようにユーザによりReady−ON操作が行われてエンジン2が稼働すると作動を開始するようになっている(後述する
図4や
図6参照)。また、電動ポンプ6の作動、停止は、ブロックヒータHの稼働とは無関係に行われる。
【0029】
また、よく知られているように、ブロックヒータHは、エンジン2の下側等の所定の位置に装着され、車両10の停車中に外部コンセントに接続されると発熱して、エンジン2を加熱するものである。車両10を発進させる際には、ブロックヒータHが外部コンセントから取り外される。このように、ブロックヒータHによるエンジン2の加熱は車両10の停車中に行われる。
【0030】
PCU4は、モータ11を駆動させるためのバッテリ3の出力制御等を行う電装機器であり、バッテリ13の電圧を昇圧させる昇圧コンバータや、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ等を備えて構成されている。そして、PCU4は作動中に発熱するため、
図2に示すように、PCU4の内部には、冷媒3が流れる配管(循環経路5の一部を構成する。)がそれらを効果的に冷却するように配設されている。そして、PCU4の外部の循環経路5内を流れてきた冷媒3が、PCU4に設けられた冷媒入口41から流入し、冷媒出口42から流出して外部の循環経路5に流れ込むようになっている。
【0031】
また、PCU4内には、通常、PCU4内を流れる冷媒3の温度を検出する冷媒温度センサが複数(又は単数)設けられているが、本実施形態では、そのうち、冷媒入口41に最も近い冷媒温度センサが上記の冷媒温度センサ7として用いられるようになっている。そのため、本実施形態では、冷媒温度センサ7で、PCU4に流入する冷媒3の温度Tが検出される。
【0032】
この冷媒温度センサ7により検出された冷媒3の温度Tの情報は、もともとPCU4自体で用いられるものであるが、本実施形態では、冷媒3の温度Tの情報が判定装置8にも送信され、判定装置8における後述する判定処理に用いられるようになっている。なお、
図1では、判定装置8をPCU4とは別体の装置として記載したが、判定装置8をPCU4内に構築するように構成してもよく、また、図示しないエンジンコントロールユニット(ECU)等に構築したり、あるいは他のコントロールユニットとは別体のコントロールユニット等として構成することも可能である。
【0033】
一方、本実施形態では、冷媒3として冷却水3が用いられる場合が想定されているが、冷媒3は、冷却油や冷却用のガス等の他の冷媒であってもよい。また、本実施形態では、冷媒3の循環経路5として、PCU4を冷却するためにもともと車両10に配設されている冷媒の循環経路が使用されている。
【0034】
この場合、冷媒3は、上記のようにPCU4内を循環して流れるとともに、循環経路5を介してエンジンルーム15内に引き込まれ、ラジエータ12によって冷却される。その際、上記のように車両10の停車中にブロックヒータHが稼働していると、エンジン2やエンジンルーム15内の温度が高くなるため、循環経路5内の冷媒3はエンジンルーム15内で温められて温度が上昇する。しかし、ブロックヒータHの熱はエンジンルーム15外には届かず、少なくとも車両後方のPCU4までは届かないため、循環経路5内の冷媒3は、エンジンルーム15外の部分(少なくともPCU4の部分)では温度は上昇せず、外気温と同じ(あるいはほぼ同じ)温度になっている。
なお、冷媒3の循環経路5として、必ずしも本実施形態のようにPCU4の冷却用の循環経路を用いる必要はない。
【0035】
そして、本発明では、冷媒温度センサ7(温度検出装置)は、循環経路5内を冷媒3が循環していなければ、ブロックヒータH(外部ヒータ)が稼働しても当該循環経路5における当該冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tは上昇せず、循環経路5内を冷媒3が循環していれば、当該冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが変化するように配置されている。以下、具体的に説明する。
【0036】
[判定装置における判定処理について]
次に、外部ヒータ稼働判定システム1の判定装置8における判定処理について、具体的に説明する。本実施形態では、判定装置8は、循環経路5内での冷媒3の循環に伴って冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが変化する際の循環後の温度Tの変化量ΔTに基づいて判定処理を行うようになっている。
【0037】
本実施形態では、ブロックヒータHが稼働していれば、車両10がソーク状態(エンジン2もモータ11も停止され車両10が十分に長い時間放置(停車)された状態)であり冷媒3が循環していない状態であれば、
図3(A)に示すように、エンジンルーム15内の循環経路5内の冷媒3(図中の斜線参照)はブロックヒータHで温められたエンジン2等の熱で温度が高くなるが、PCU4側の循環経路5内の冷媒3の温度(冷媒温度センサ7で検出される温度T)は外気温と同程度に低くなっている。
【0038】
そして、この状態で、ユーザによりReady−ON操作が行われて電動ポンプ6が作動して冷媒3が循環経路5内を循環し始めると、もともと低い温度の冷媒3があったPCU4内に、
図3(B)に示すようにエンジン2等やエンジンルーム15内で温められた冷媒3(図中の斜線参照。なお、以下、「エンジン2等やエンジンルーム15内」をまとめて「エンジンルーム15内」という。)が流入するため、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが急激に上昇する。
【0039】
一方、ブロックヒータHが稼働していなければ、エンジンルーム15内で冷媒3が温められていないため、冷媒3が循環してもこのようなPCU4内の冷媒3の温度Tの急激な上昇は生じない。そこで、本実施形態では、判定装置8は、これらの現象を利用して、判定処理を行うようになっている。
【0040】
以下では、便宜的に、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔTに基づいて、ブロックヒータHが稼働していることを判定する場合(構成例1)と、ブロックヒータHが稼働していないことを判定する場合(構成例2)とを分けて説明する。
【0041】
[構成例1]
まず、構成例1について、
図4のグラフや
図5のフローチャート等に基づいて具体的に説明する。
図4は、ユーザによりReady−ON操作が行われる(時刻ta参照)前後における、PCU4内の循環経路5の冷媒3の温度Tの時間的な推移と、エンジンルーム15内の循環経路5の冷媒3の温度の時間的な推移とを表すグラフである。なお、
図4では、エンジンルーム15内の循環経路5の冷媒3の温度の代わりに、エンジン2に取り付けられた図示しない温度センサで測定されるエンジンの冷却水の温度(E/G水温)が記載されている。また、
図4では、Ready−ON/OFFやブロックヒータHのON/OFF、電動ポンプ6のON/OFF(すなわち作動/停止)のタイミングもあわせて記載されている。
【0042】
ブロックヒータHは、前述したように、車両10の停車中に外部コンセントに接続されてONされると発熱するため、エンジン2の冷却水が加熱されてエンジン2が加熱し、エンジンルーム15内の部分の循環経路5内の冷媒3の温度(
図4ではE/G水温で代用)が上昇する。そして、ブロックヒータHによる加熱量とエンジン2からの放熱量とが同程度になったところでエンジン2の温度が略一定になる。
【0043】
しかし、ユーザがReady−ON操作を行ったり車両10のソーク中に車載充電器14(
図1参照)を介したバッテリ13の充電が行わたりしなければPCU4は作動しないため、PCU4の温度は上昇せず、外気温と同じ(あるいはほぼ同じ。以下も同様。)温度になっている。また、電動ポンプ6が作動しなければ冷媒3は循環経路5内を循環しないため、上記のようにエンジン2に取り付けられたブロックヒータHが車両10のソーク中に稼働して発熱しても、PCU4内の冷媒3の温度Tが外気温と同じ温度であり温度が低いままの状態は変わらない。
【0044】
このようにして、本実施形態では、車両10のソーク中にブロックヒータHが稼働している場合、エンジンルーム15内の循環経路5では冷媒3の温度が高くなるが、循環経路5におけるPCU4の部分では冷媒3の温度Tは外気温と同程度に低い温度であるような冷媒3の温度分布、すなわち前述した
図3(A)に示した温度分布が形成される。そして、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔTに基づいてブロックヒータHが稼働していることを判定する判定処理を行うためには、車両10のソーク中にこのような冷媒3の温度分布が生じていることが前提となる。
【0045】
そして、このような温度分布が生じるためには、少なくとも、作動中に温度が高くなるPCU4が作動を停止してから長時間が経過しており、PCU4の温度が十分に低下していることが必要になる。すなわち、PCU4の作動が停止しても、PCU4の温度が高いと、エンジンルーム15内だけでなくPCU4の内部の冷媒3も温かい状態のままであるため、上記のような冷媒3の温度分布が生じなくなり、あるいは温度分布が生じてもその温度差が僅かになり、上記の判定処理を行うことが困難になる。
【0046】
また、PCU4の温度が十分に低下したとしても、前述したように車載充電器14を介したバッテリ13の充電が行われる等して車両10のソーク中に電動ポンプ6が作動し、冷媒3が循環経路5内を循環してしまうと、PCU4の温度が十分に低下していても、ブロックヒータHの熱で温められたエンジンルーム15内の冷媒3が循環経路5内を循環してしまい、冷たい冷媒3と混ざり合う。そのため、循環経路5内の冷媒3の温度が循環経路5のどの部分でもあまり変わらない状態になってしまう。すなわち、上記のような冷媒3の温度分布が生じない状態になってしまい、この場合も上記の判定処理を行うことが困難になる。
【0047】
そこで、本実施形態では、判定装置8は、ユーザによりReady−ON操作がなされると(
図5のステップS1。
図4のグラフでは時刻ta)、それまでのPCU4や電動ポンプ6の作動や停止の履歴を参照する等して、Ready−ON操作がなされるまでにPCU4と電動ポンプ6がいずれも停止されていた状態の継続時間Δt(
図4参照)が所定時間t1以上継続しているか否かを判断するようになっている(ステップS2)。
【0048】
なお、例えば、継続時間Δtを図示しないタイマーで計測するように構成することも可能である。この場合、車両10のソーク中にタイマーを作動させ、PCU4や電動ポンプ6が作動するごとにタイマーをリセットするようにすれば、タイマーで計測される時間が、PCU4と電動ポンプ6がいずれも停止されていた状態の継続時間Δtを表すことになる。
【0049】
ここで、上記の所定時間t1は、PCU4の作動が停止してから温度が十分に下がった状態になるまでに要する時間(PCU4の構成等によって異なる。)や、ブロックヒータHでエンジン2を加熱した状態で(PCU4は停止している。)電動ポンプ6を作動させて循環経路5内の冷媒3を混ざり合わせた後、電動ポンプ6の作動を停止させてから上記の温度分布が生じる状態になるまで(PCU4の部分の冷媒3の温度Tが十分に低下するまで)の時間(電動ポンプ6の性能や循環経路5の構成等によって異なる。)等に基づいて、予め設定される。
【0050】
そして、判定装置8は、上記の状態の継続時間Δtが所定時間t1に満たなければ(ステップS2:No)、上記のように判定処理を行うことが困難な状態になっている可能性が高く、判定処理を行っても適正に処理を行うことができなかったり、あるいは実際にはブロックヒータHが稼働していないにもかかわらずブロックヒータHが稼働していると誤判定してしまう可能性がある。そのため、この場合は、この時点で判定処理を終了する(判定処理を行わない。)。また、判定装置8は、上記の状態の継続時間Δtが所定時間t1以上である場合には(ステップS2:Yes)、判定処理を開始するようになっている。
【0051】
ユーザによりReady−ON操作がなされてから実際に車両10がReady−ONの状態になって電動ポンプ6等が作動を開始するまでに、通常、1秒程度時間が掛かり、その間に車両10内の各電子制御ユニット等で初期動作が行われる。そして、例えば、PCU4の電子制御ユニットは、初期動作において電動ポンプ6や冷媒温度センサ7等が正常に動作するか等のチェックを行う。
【0052】
そして、判定装置8も、この間に、必要に応じて、判定処理に必要な装置等が動作を正常に行うか等のチェックを行ったり各電子制御ユニット等から必要な情報を入手したりするように構成することが可能である。なお、図示を省略するが、判定装置8は、他の電子制御ユニットのチェックの結果や自己のチェックの結果等に基づいて、何らかの異常が発生していて判定処理を正常に行うことができない場合等には、判定処理を停止するように構成される。
【0053】
また、PCU4の電子制御ユニットは、初期動作が完了して異常がなければ冷媒温度センサ7を作動させるとともに、電動ポンプ6を作動させる(ステップS3。
図4の時刻tb参照)。そのため、冷媒3が循環経路5内を循環し始める。判定装置8は、電動ポンプ6が作動を開始する直前に、あるいは作動を開始した時点で、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度T(初期温度T0)を記録する。
【0054】
そして、冷媒3が循環経路5内を循環すると、循環開始時点では、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度は外気温程度に低い値であるが、
図3(B)に示したようにエンジンルーム15内で温められた冷媒3がPCU4内に流入すると冷媒3の温度Tが急激に上昇する。そして、冷媒3がさらに循環すると、PCU4内に流入した温かい冷媒3がPCU4から流出し、PCU4内にはそれよりも温度が低い冷媒3(すなわちエンジンルーム15で温められていない冷媒3)が流入する。
【0055】
そのため、
図4に示すように、PCU4の冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tは、電動ポンプ6の作動後、一旦上昇した後、低下するという脈動を生じるようになる。本実施形態では、判定装置8は、このように、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tに生じる脈動を、ブロックヒータHが稼働していることを判定する判定処理における要件の1つとするように構成されている。
【0056】
具体的には、判定装置8は、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔT(すなわち冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tと上記の初期温度T0との差)が増加して第一の閾値ΔT1以上になり(ステップS6:Yes)、その後、一旦上昇した冷媒3の温度Tが低下して、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第二の閾値ΔT2未満になった場合に(ステップS7:Yes)、後述するステップS10以下の各判断処理を行い、上記の条件を満たさない場合は判定処理を終了するようになっている。
【0057】
一方、本実施形態では、ブロックヒータHが稼働している場合にのみ冷媒3の温度Tの変化が上記の条件を満たすようにするために(すなわち、ブロックヒータHが稼働していない場合には冷媒3の温度Tの変化が上記の条件を満たさないようにするために)、ステップS6、S7等の判断処理を行うに際して時間制限が設けられるようになっている。
【0058】
具体的には、上記のように電動ポンプ6が作動すると(ステップS3)、判定装置8は、タイマーをリセットして、電動ポンプ6が作動を開始してからの経過時間Δτの計測を開始するようになっている(ステップS4)。なお、経過時間Δτの計測は、電動ポンプ6の作動開始を起点とする代わりにユーザがReady−ON操作を行った時点から開始するように構成してもよい(上記のようにそれらの間には1秒程度の一定の時間差があるだけである。)。
【0059】
そして、
図3(A)に示した状態で、電動ポンプ6が作動を開始して冷媒3の循環が始まっても、エンジンルーム内で温められた冷媒3(図中の斜線参照)がPCU4内の冷媒温度センサ7に到達しない間に、冷媒温度センサ7が検出する冷媒3の温度Tの変化量ΔTが何らかの原因で上記の各条件を満たしたとしても(ステップS6、S7:Yes)、それはブロックヒータHの稼働に起因するものではない。そのため、その間に冷媒3の温度Tの変化量ΔTが上記の各条件を満たしたこと(ステップS6、S7:Yes)をもってブロックヒータHが稼働していると判定すると、誤判定が生じる。
【0060】
そこで、本実施形態では、判定装置8は、このような誤判定を避けるために、上記の経過時間Δτ(すなわち電動ポンプ6が作動を開始してからの経過時間Δτ)が、所定の経過時間Δτ1が経過するまではステップS6、S7の判断処理を行わず(ステップS5:No)、所定の経過時間Δτ1が経過した時点で(ステップS5:Yes)ステップS6以降の各処理を行うようになっている。
【0061】
上記の所定の経過時間Δτ1(ステップS5。
図4参照)は、例えば、
図3(A)の状態で電動ポンプ6が作動を開始してからエンジンルーム15内で温められた冷媒3がPCU4内の冷媒温度センサ7に到達するまでの最短時間に設定される。このように構成すれば、上記のような誤判定が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のステップS6の判断処理にも、時間制限が設けられている(ステップS8)。すなわち、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第一の閾値ΔT1以上になるか否かの判断処理についても、時間制限が設けられている。
【0063】
上記のように、ユーザがReady−ON操作を行って車両10がReady−ON状態になると、PCU4が作動して発熱するため、ブロックヒータHが稼働していなくても循環経路5内を循環する冷媒3の温度Tは上昇していく(なお、冷媒3はPCU4等により加熱されるがラジエータ12等で放熱するため、やがて略一定の温度に収束する。)。そして、このように冷媒3の温度Tが上昇すると、いずれかの時点で冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第一の閾値ΔT1以上(ステップS6:Yes)になる可能性があり、これをもってブロックヒータHが稼働していると判定すると誤判定が生じる。
【0064】
本実施形態では、このような誤判定を避けるため、判定装置8は、上記のように電動ポンプ6の作動開始からの経過時間Δτが、所定の経過時間Δτ1になった後(ステップS5:Yes)、所定の経過時間τ2が経過するまでの間に、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが閾値ΔT1以上にならない場合には(ステップS6:No)、経過時間Δτが所定の経過時間τ2になった時点で(ステップS8:Yes)判定処理を終了するようになっている。
【0065】
この場合、経過時間Δτ2(ステップS8、
図4参照)は、例えば
図3(A)に示した状態で、電動ポンプ6が作動を開始してから、エンジンルーム15内でブロックヒータの熱により温度が上昇した冷媒3がPCU4の冷媒温度センサ7に到達するまでの最大の時間(すなわち例えば温度が上昇している冷媒3のうち冷媒温度センサ7から最も遠い位置の冷媒3が冷媒温度センサ7に到達するまでの時間)より長い適宜の時間に設定される。予め実験を行う等して決められる。
【0066】
また、上記の第一の閾値ΔT1(ステップS6、
図4参照)は、例えば、ブロックヒータHを稼働させない状態で上記の経過時間Δτ2以内に冷媒3の温度Tが上昇し得る最大の変化量ΔTを予め実験により(あるいは演算等により)割り出しておき、それより大きな値に予め設定される。なお、前述したようにPCU4が作動すると発熱するためブロックヒータHが稼働していなくても冷媒3の温度Tは上昇する。すなわち、第一の閾値ΔT1は、ブロックヒータHが稼働している場合にのみ冷媒3の温度Tの変化量ΔTが経過時間Δτ2内にこの第一の閾値ΔT以上になる、そのような冷媒3の温度Tの変化量ΔTとして設定される。
【0067】
そして、上記の経過時間Δτ2が経過して(ステップS8:Yes)、エンジンルーム15内で温められた冷媒3がPCU4内の冷媒温度センサ7の位置を通り過ぎたはずであるにもかかわらず、冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第一の閾値ΔT1以上にならない場合(ステップS6:No)、それはブロックヒータHが稼働していないからであると判定できる。このように、経過時間Δτ2や第一の閾値ΔT1を上記のように設定することで、ブロックヒータHが稼働している可能性がある場合とその可能性がない場合(すなわちブロックヒータHが稼働していない場合)とを的確に切り分けることが可能となる。
【0068】
そして、この構成例1では、判定装置8は、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第一の閾値ΔT1以上にならない状態(ステップS6:No)が経過時間Δτ2以上継続した場合は(ステップS8:Yes)、ブロックヒータHが稼働していると判定しないようになっている(この場合、ブロックヒータHが稼働していないとも判定しない。)。
【0069】
本実施形態では、さらに、上記のステップS7の判断処理にも、時間制限が設けられている(ステップS9)。すなわち、判定装置8は、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが所定の第一の閾値ΔT1以上になった後(ステップS6:Yes)、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが所定の第二の閾値ΔT2未満にならない状態(ステップS7:No)が所定の経過時間Δτ3以上続いた場合も(ステップS9:Yes)、その時点で判定処理を終了するようになっている。第二の閾値ΔT2は、第一の閾値ΔT1と同じ値であってもよい。
【0070】
この場合、上記の経過時間Δτ3や第二の閾値ΔT2(ステップS8、S9、
図4参照)は、一旦上昇した冷媒3の温度Tが低下し、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが十分に小さくなって脈動が生じたことを判定することができるように、予め実験等を行って適宜の値に設定される。
【0071】
上記の経過時間Δτ3が経過しても、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第二の閾値ΔT2未満に下がらない場合(ステップS7:No、ステップS9:Yes)は、電動ポンプ6は正常に作動しているため(電動ポンプ6が正常に作動しない場合にはそもそも判定装置8は判定処理を行わない。)、循環経路5が詰まる等の何らかの異常が生じている可能性がある。そして、このような場合に、無理に判定処理を継続しても適切な判定結果は得られない可能性が高い。
【0072】
そのため、判定装置8は、冷媒3の温度Tが一旦上昇した後、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第二の閾値ΔT2未満に低下しない状態(ステップS7:No)が経過時間Δτ3以上継続した場合は(ステップS9:Yes)、ブロックヒータHが稼働していると判定しないようになっている(この場合、ブロックヒータHが稼働していないとも判定しない。)。
【0073】
本実施形態では、以上のようにして、判定装置8は、経過時間Δτの制限(Δτ2、Δτ3)の下で、一旦第一の閾値ΔT1以上(ステップS6:Yes)に増加した冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第二の閾値ΔT2未満に低下した場合(ステップS7:Yes。すなわち冷媒3の温度Tの脈動があった場合)にのみ、ステップS10以下の各処理に移行するようになっている。
【0074】
一方、ブロックヒータHが稼働していることを判定する場合のもう1つの要件として、本実施形態では、判定装置8は、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが、上記の第一の閾値ΔT1以上(ステップS6:Yes)になった後、第二の閾値ΔT2未満(ステップS7:Yes)に低下するまでの期間内に、第一の閾値ΔT1等より大きな値に設定された第三の閾値ΔT3(
図4参照)以上になった場合に(ステップS10:Yes)、最終的に、ブロックヒータHが稼働していると判定するようになっている(ステップS11)。
【0075】
この判断処理(ステップS10)は、上記のように冷媒3の温度Tに脈動が生じたとしても、それがブロックヒータHの稼働によるものでない場合を除外するための処理である。そして、この場合、上記の第三の閾値ΔT3は、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが、ブロックヒータHが通常の使用状態で使用されて稼働している場合には到達し得るが、それ以外の場合には到達し得ないような値に設定される。
【0076】
このように構成すれば、判定装置8は、冷媒3の温度Tに脈動がブロックヒータHの稼働以外の原因で生じたために冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第三の閾値ΔT3以上にならない場合は(ステップS10:No)、ブロックヒータHが稼働していると判定しないようにすることができる。この場合は、判定処理を終了する。
【0077】
また、判定装置8は、冷媒3の温度Tに脈動がブロックヒータHの稼働によって生じたため冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第三の閾値ΔT3以上であった場合は(ステップS10:Yes)、それを的確に判別して、ブロックヒータHが稼働していると的確に判定することが可能となる(ステップS11)。
【0078】
以上のように構成することで、判定装置8は、ブロックヒータHが稼働していない場合に稼働していると誤判定することなく、ブロックヒータHが稼働している場合にはブロックヒータHが稼働していると的確に判定することが可能となる。
【0079】
[構成例2]
上記の構成例1では、判定装置8が冷媒3の温度Tの変化量ΔTに基づいてブロックヒータHが稼働していることを的確に判定する場合について説明したが、それと同様にして、判定装置8が冷媒3の温度Tの変化量ΔTに基づいてブロックヒータHが稼働していないことを的確に判定するように構成することができる。
【0080】
この場合、車両10のソーク中にブロックヒータHが稼働していなければ、
図3(A)、(B)に示したような冷媒3の循環経路5内での温度分布は生じず、冷媒3の温度は、循環経路5内の全域にわたって(多少の温度差はあるとしても)外気温に等しい(あるいはほぼ等しい。以下同様。)温度になっている。
【0081】
そのため、この状態でユーザによりReady−ON操作が行われて電動ポンプ6が作動すると、
図4に示したブロックヒータHが稼働している場合のように冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが急激に上昇することはなく、検出される冷媒3の温度Tが一定の状態(すなわち外気温に等しい温度が検出される状態)が続く。そして、前述したように、PCU4が作動を開始すると発熱するため、
図6に示すように、ブロックヒータHが稼働していなくても冷媒3の温度Tは徐々に上昇していく。
【0082】
そして、このような状況において、ブロックヒータHが稼働していないことを判定する指標として、例えば、構成例1(
図5参照)のステップS6の判断処理における第一の閾値ΔT1と、その判断処理の時間制限に関わる経過時間Δτ2(ステップS8参照)を用いるように構成することが可能である。
【0083】
そのように構成した場合の判定処理のフローチャートの例を
図7に示す。なお、この場合、ステップS1〜S6、S8は上記の構成例1の場合と同様に構成することができる。また、この構成例2の場合、判定装置8は、ブロックヒータHが稼働していないことを判定するため、
図5に示したブロックヒータHが稼働していることを判定するためのステップS7やステップS9〜S11の各処理は行われない。
【0084】
上記の構成例1で説明したように、ステップS8の判断処理における経過時間Δτ2(
図6参照)は、例えば、電動ポンプ6が作動を開始してから、エンジンルーム15内の循環経路5内にあった冷媒3がPCU4の冷媒温度センサ7に到達するまでの最大の時間(すなわち例えばエンジンルーム15内の循環経路5内の冷媒3のうち冷媒温度センサ7から最も遠い位置の冷媒3が冷媒温度センサ7に到達するまでの時間)より長い適宜の時間に設定される。
【0085】
また、ステップS6の判断処理における第一の閾値ΔT1(
図6参照)は、例えば、ブロックヒータHを稼働させない状態で上記の経過時間Δτ2以内に冷媒3の温度Tが上昇し得る最大の変化量ΔTを予め実験により(あるいは演算等により)割り出しておき、それより大きな値に予め設定される。
【0086】
このように構成すると、電動ポンプ6の作動開始時にエンジンルーム15内にあった全ての冷媒3は、上記の経過時間Δτ2が経過した時点で(ステップS8:Yes)、PCU4内の冷媒温度センサ7の位置を通り過ぎたはずであるが、その間に冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第一の閾値ΔT1以上にならなければ(ステップS6:No)、冷媒3はブロックヒータHによって温められておらず、ブロックヒータHが稼働していないと判定できる。
【0087】
そのため、この構成例2の場合、判定装置8は、
図7に示すように、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが第一の閾値ΔT1以上にならない状態(ステップS6:No)が経過時間Δτ2以上継続した場合に(ステップS8:Yes)、ブロックヒータHが稼働していないと判定するようになっている(ステップS12)。
【0088】
以上のように構成することで、判定装置8は、ブロックヒータHが稼働している場合に稼働していないと誤判定することなく、ブロックヒータHが稼働していない場合には確実にブロックヒータHが稼働していないと判定することが可能となる。
【0089】
なお、構成例2において、上記のようにステップS1〜S6、S8の各処理を構成例1と同様に構成する必要はなく、循環経路5内での冷媒3の循環に伴って冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが変化する際の冷媒3の温度Tの変化量ΔTに基づいてブロックヒータHが稼働していないことを判定することが可能な処理であれば、判定装置8で他の構成の判定処理を行うように構成することも可能である。
【0090】
[構成例3]
一方、上記のように、構成例2におけるステップS1〜S6、S8の各処理を上記のように構成例1と同様に構成する場合、例えば、構成例1と構成例2とを
図8に示すような1つのフローチャートにまとめて、判定装置8における1つの判定処理の中で、ブロックヒータHは稼働している場合はブロックヒータHが稼働していると判定し、ブロックヒータHは稼働していない場合はブロックヒータHが稼働していないと判定するように構成することも可能である。
【0091】
なお、この場合、ステップS9の判断処理でYesと判断された場合や、ステップS10の判断処理でNoと判断された場合には、ブロックヒータHが稼働しているのか稼働していないのかは不明ということになる。
【0092】
ステップS9の判断処理でYesと判断された場合を考察すると、前述したように、この場合、電動ポンプ6は正常に作動しているが、循環経路5が詰まる等の何らかの異常が生じているために、第一の閾値ΔT1以上(ステップS6:Yes)に一旦増加した冷媒3の温度Tの変化量ΔTが低下しなくなっている可能性がある。
【0093】
そのため、このような場合には、ブロックヒータHの稼働の有無の判定を続行するよりも、寧ろその異常に対処することの方が優先されると考えられるため、例えば、異常の発生の有無や原因等を検証する処理や異常に対処する処理等の別の処理に自動的に移行したり、あるいは、ユーザに対して異常が発生している可能性があることを表示や音声等で警告する等の処理を行うように構成することが可能である。
【0094】
また、ステップS10の判断処理でNoと判断された場合を考察すると、一旦第一の閾値Δ1以上(ステップS6:Yes)に増加した冷媒3の温度Tの変化量ΔTが低下して第二の閾値ΔT2未満まで下がり(ステップS7:Yes)、冷媒3の温度Tに脈動が生じたが、その間、温度Tの変化量ΔTが、第一の閾値ΔT1等より大きな値に設定された第三の閾値ΔT3以上になることがなかった場合である(ステップS10:No)。
【0095】
この場合、前述したように、第三の閾値ΔT3は、冷媒3の温度Tの変化量ΔTが、ブロックヒータHが通常の使用状態で使用されて稼働している場合には到達し得るが、それ以外の場合には到達し得ないような値に設定される。そのため、上記の結果(ステップS10におけるNo判定)は、上記の冷媒3の温度Tの脈動がブロックヒータHの稼働によるものではなく他の原因で生じている、あるいは、冷媒3の温度Tの脈動はブロックヒータHの稼働によるものであるが、ブロックヒータHの使用状態が通常の使用状態ではない(ブロックヒータHがエンジン2に適切に取り付けられていない、ブロックヒータHは稼働しているが発熱量が通常より小さい、ブロックヒータHに供給する電力が小さ過ぎる等)など種々の原因が考えられる。
【0096】
しかし、いずれにせよ、このようにブロックヒータHが稼働しているか否かが不明な場合に冷媒3の温度Tに脈動があったからといってブロックヒータHが稼働していると判定すると、実際にはブロックヒータHは稼働しておらず、誤判定という結果になりかねない。そのため、このような場合には、ブロックヒータHが稼働しているとも稼働していないとも判定しない(すなわち判定不能とする)ように構成することが望ましい。
【0097】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1によれば、冷媒温度センサ7は、循環経路5内を冷媒3が循環していなければ、ブロックヒータHが稼働しても当該循環経路5における当該冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tは上昇せず、循環経路5内を冷媒3が循環していれば、当該冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが変化するように配置されている。そして、判定装置8は、循環経路5内での冷媒3の循環に伴って冷媒温度センサ7で検出される冷媒3の温度Tが変化する際の循環後の温度Tの変化量ΔTに基づいて、ブロックヒータHが稼働していること(上記の構成例1参照)やブロックヒータHが稼働していないこと(上記の構成例2参照)、あるいはその両方(上記の構成例3参照)を判定するように構成した。
【0098】
そのため、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV)やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)のように車両10がReady−ONの状態になった時点でエンジン2が始動されずエンジン2の冷却水の循環が始まらない車両であっても、車両10がReady−ONの状態になればPCU4の冷媒3の循環は開始される。そのため、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1では、上記の判定処理を、車両10がReady−ONの状態になった時点で行うことができる。
【0099】
そして、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1では、上記のように、ブロックヒータHが稼働していればその近傍(第一装置の近傍)の循環経路5内で局所的に温められた冷媒3が、循環が開始されて冷媒温度センサ7の所を最初に通過する際の温度Tの変化量ΔTを検出することでブロックヒータHが稼働していることや稼働していないこと(あるいはその両方)が判定される。そして、その判定は、冷媒3の循環が開始されてから(すなわちReady−ONされてから)数秒〜十数秒(あるいは数十秒)程度で行うことができる。そのため、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1によれば、冷媒3の循環が開始されてから短時間で判定処理を行うことが可能となる。
【0100】
また、仮に冷媒としてエンジン2の冷却水を用いた場合、エンジン2の冷却水がブロックヒータHで温められると、冷却水が循環経路内で全体的に温められてしまい、循環経路の各部分での冷却水の温度分布に差がつきにくくなり、本実施形態のように冷媒3の温度Tの変化量ΔTを監視しても、循環を開始した冷却水の温度に変化がなく、あるいは変化があっても僅かであり、ブロックヒータHが稼働しているか否かを的確に判定することが困難である。
【0101】
しかし、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1のように、冷媒としてPCU4を冷却するための冷媒3を用いれば、稼働中のブロックヒータHの熱によりエンジンルーム15内の循環経路5内の冷媒3の温度が上昇するが、循環経路5のうちPCU4の部分では冷媒3の温度Tは上昇しない。そのため、循環経路5内の冷媒3に温度分布が生じるため、冷媒3の循環が開始すると、冷媒3の温度Tの変化が有効に生じるようになる。そのため、有効に検出される冷媒3の温度Tの変化量ΔTに基づいて、ブロックヒータHが稼働していること、ブロックヒータHが稼働していないこと、あるいはその両方を的確に判定することが可能となる。
【0102】
なお、前述した所定の経過時間Δτ1、Δτ2、Δτ3は、エンジンルーム15からPCU4までの循環経路5の長さや形状、循環経路5内での冷媒3の循環速度等によって決まる。そのため、所定の経過時間Δτ1等は、基本的に、エンジン2や循環経路5の構造等が同じ車種ごとに予め決められる。また、上記の第一の閾値ΔT1〜第三の閾値ΔT3等を外気温に依存して変えるように(すなわち外気温の関数とするように)構成することも可能である。
【0103】
[本発明の適用範囲の拡張等について]
以下、本発明の適用範囲の拡張等について説明する。
上記の実施形態では、車両10がプラグインハイブリッド電気自動車であることを前提に説明したが、その場合に限定されず、循環経路5が上記のような構成を有するものであればハイブリッド電気自動車や電気自動車、燃料電池自動車等でもよく、また、上記のような循環経路5を有するものであればガソリン車であってもよい。
【0104】
また、上記の実施形態では、外部ヒータがブロックヒータHである場合について説明したが、外部ヒータは、車両10内のいずれかの装置(第一装置)に装着されて当該装置を加熱するためのものであり、車両10の製造段階では当該装置に装着されておらず(すなわち後付け(外付け)であり)、かつ、車両10内の各電子制御ユニット等ではその稼働や停止を制御することは勿論、稼働や停止を検出することができないものであればよく、ブロックヒータ以外の形態のヒータであってもよい。
【0105】
さらに、上記の実施形態では、外部ヒータが装着される第一装置がエンジン2である場合について説明したが、第一装置は、車両10のソーク中に予熱されるもの(あるいは予熱されることが想定されるもの)であり、かつ、第一装置に装着された外部ヒータが稼働することで発生する熱により第一装置を冷却するための冷媒3の循環経路5の一部の冷媒3の温度が上昇するものであればよく、例えば、バッテリやモータ(ハイブリッド電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車等のモータ)等であってもよい。また、第一装置(例えばエンジン2)は、上記の実施形態のように車両10の前方に配置されている必要はなく、車両10の後方等に配置されていてもよい。
【0106】
また、上記の実施形態では、第一装置とは別体の装置であって冷媒3による冷却の対象となる第二装置がパワーコントロールユニット(PCU4)である場合について説明したが、第二装置は、このような条件を満たし、かつ、その冷媒3の循環経路5が上記の構成を有するものであればよく、例えば、第一装置(例えばエンジン2)から離れた位置にある水冷式のバッテリや電動四輪駆動車のリアインバータやリアモータ等であってもよい。なお、それらを冷却するための冷媒3がReady−ONの時点では循環しない場合(あるいは循環しない可能性がある場合)は、判定装置8で判定処理を行う数秒から十数秒(あるいは数十秒)の間だけ冷媒3を循環させるように構成すればよい。
【0107】
また、上記の実施形態では、冷媒3の温度Tを検出する温度検出装置として、PCU4内に設けられた冷媒温度センサのうちPCU4の冷媒入口41(
図2参照)に最も近い冷媒温度センサ7を用いる場合について説明したが、PCU4内に設けられた冷媒温度センサのうちの別の冷媒温度センサを用いるように構成してもよく、また、冷媒温度センサ7をPCU4外の循環経路5の部分に設けるように構成することも可能である。なお、その場合、冷媒温度センサ7がエンジン2やブロックヒータH等の発熱する装置の近傍にあるとその熱の影響を受けてしまう場合があるため、エンジン2やブロックヒータH等の発熱体の熱の影響を直接受けない位置に設けることが望ましい。
【0108】
[外部ヒータ稼働判定システム1の判定結果の他のシステムへの適用について]
ところで、上記の実施形態における構成例1(
図5等参照)や構成例3(
図8等参照)では、前述したように、エンジン2に取り付けられたブロックヒータHが稼働している場合には、判定装置8はそれを検出してブロックヒータHが稼働していると的確に判定することができる。
【0109】
そして、ブロックヒータHが稼働しているということは、ブロックヒータHが外部コンセントに接続されているということを意味しているため、Ready−ONされた車両10がその状態のまま発進してしまうと重大な問題が生じ得る。そのため、例えば、このように判定装置8によりブロックヒータHが稼働していると判定された場合には、運転者がアクセルペダルを踏み込んでも車両10が発進しないようにする車両10の発進の抑制制御を行うように構成することが可能である。
【0110】
この場合、図示を省略するが、例えば、判定装置8は、ブロックヒータHが稼働していると判定した場合、それを表す信号等(すなわち判定結果)を、車両10のエンジンやモータの動作等を制御する電子制御システムに送信する。そして、電子制御システムは、この信号等を受信した場合には、アクセル開度を検出するアクセル開度検出手段からアクセルペダルが踏み込まれたことを表すアクセル開度の信号が送信されてきても、それに応じたエンジンやモータ等の制御を行わず、車両10を停止したままとする制御(すなわち発進抑制制御)を行うように構成することが可能である。なお、この場合、例えば、ブロックヒータHが外部コンセントに接続されたままであることを運転者に警告する等の処理が行われる。
【0111】
このように、外部ヒータ稼働判定システム1の判定装置8によりブロックヒータHが稼働していると判定された場合に、例えばその情報を車両10の発進抑制制御に用いるように構成することが可能である。
【0112】
[エンジンやその近傍に取り付けられた複数の温度センサの故障判定への適用]
また、上記の実施形態のように、エンジン2にブロックヒータHが装着されている場合、ブロックヒータHが稼働していると、その熱が、エンジン2やその近傍に取り付けられた複数の温度センサの故障判定に影響を与える場合がある。なお、この場合の温度センサは、エンジン2の制御等に用いられるものであり、前述した第二装置を冷却させるための冷媒3の温度Tを検出する冷媒温度センサ7とは異なる。
【0113】
すなわち、例えば
図9に示すように、車両10に搭載されたエンジン2やトランスミッション16等の制御を行う車両用制御システム100には、少なくとも電子制御システム101や、電子制御システム101と一体的に形成された(あるいは電子制御システム101とは別体の)温度センサ故障判定装置102が設けられている。そして、エンジン2やその近傍に取り付けられた複数の温度センサS1、S2から出力された温度Te1、Te2のデータが電子制御システム101や温度センサ故障判定装置102にそれぞれ入力されるようになっている。
【0114】
また、エンジン2には、外部ヒータであるブロックヒータHが装着されている。そして、温度センサ故障判定装置102は、エンジン2の近傍に取り付けられた複数の温度センサS1、S2に故障が生じているか否かの判定を行うようになっている。なお、温度センサは3つ以上であってもよい。また、
図9では、温度センサS1、S2がエンジン2に直結されたトランスミッション16に取り付けられている例が示されているが、これに限定されない。
【0115】
この場合、ブロックヒータHが稼働していなければ、車両10が停車した後、ソーク中にエンジン2等の温度が低下していくため、仮にソーク中に温度センサS1、S2を作動させたとすると、
図10に示すように、温度センサS1、S2で検出される温度Te1、Te2は、エンジン2等の温度低下に従って徐々に下がっていく。
【0116】
そして、ソーク時間が例えば6時間以上になり十分に長くなると、エンジン2等の温度が外気温程度まで下がるため、温度センサS1、S2が正常であれば、その時点(すなわち十分なソーク時間が経過した時点。
図10のtc参照)で温度センサS1、S2により検出される温度Te1、Te2も外気温程度になり、ほぼ同じ温度になるはずである。また、逆にこの時点で温度センサS1、S2により検出される温度Te1、Te2に有意な差があれば、温度センサS1、S2のいずれか(あるいは両方)に故障が生じていると考えられる。
【0117】
この構成例では、車両用制御システム100の温度センサ故障判定装置102は、これを利用して温度センサS1、S2のいずれかに故障が生じているか否かを判定するようになっている。具体的には、温度センサ故障判定装置102は、判定閾値ΔTeを有しており、ソーク時間が所定時間以上である場合に温度センサS1、S2に温度Te1、Te2を検出させ、温度センサS1、S2からそれぞれ出力された温度Te1、Te2の差分の絶対値|Te1−Te2|が判定閾値ΔTeを超えている場合に、温度センサS1、S2のいずれかに故障が生じていると判定するように構成されている。
【0118】
そして、上記のように、ブロックヒータHが稼働していない場合は、正常な(すなわち故障を生じていない)温度センサS1、S2から出力される温度Te1、Te2は、十分なソーク時間の経過後にはほぼ同じ温度になるため、それらの差分の絶対値|Te1−Te2|はほぼ0になる。また、故障が生じていればそれらの差分の絶対値|Te1−Te2|は0とは有意に異なる値になる。そのため、上記の判定閾値ΔTeは0に近い小さな値に設定することができる。
【0119】
しかし、ブロックヒータHが稼働していると、エンジン2に近い位置に取り付けられている温度センサS1の部分が、ブロックヒータHの熱で温められるため、
図10に1点鎖線で示すように、温度センサS1から出力される温度Te1は、十分なソーク時間が経過しても外気温程度まで下がらなくなる。一方、エンジン2から遠い位置に取り付けられている温度センサS2が出力する温度Te2は、十分なソーク時間が経過すると外気温に近い温度まで低下する。
【0120】
このように、ブロックヒータHが稼働している場合には、温度センサS1、S2がともに正常であったとしても、温度センサS1、S2から出力される温度Te1、Te2の差分の絶対値|Te1−Te2|はほぼ0にはならず、ある程度の大きさが生じる。そのため、
図10に示すように、ブロックヒータHが稼働している場合には、判定閾値ΔTe
*を、ブロックヒータHが稼働していない場合の判定閾値ΔTeよりも大きくしなければならない。
【0121】
車両10が、上記の実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1を備えない場合、温度センサ故障判定装置102は、エンジン2にブロックヒータHが取り付けられているか否かが分からず、ブロックヒータHが稼働しているか否かも分からないため、温度センサS1、S2の故障判定を行う際の判定閾値として上記の判定閾値ΔTeを用いることができず、判定閾値ΔTe
*を用いるしかない。
図10のグラフから分かるように、ブロックヒータHが稼働している際に小さな判定閾値ΔTeを用いると、仮に温度センサS1、S2がともに正常であっても差分の絶対値|Te1−Te2|が判定閾値ΔTeを超えるため、温度センサS1、S2のいずれかが故障していると誤判定してしまうためである。
【0122】
しかし、判定閾値として大きな判定閾値ΔTe
*しか用いることができないと、例えば温度センサS1に故障が生じており、ブロックヒータHが稼働していない状況で、
図10に2点鎖線で示すように、十分なソーク時間が経過しても温度センサS1から出力される温度Te1が外気温程度まで下がらない状態になっている場合でも、差分の絶対値|Te1−Te2|が判定閾値ΔTe
*を超えなければ温度センサ故障判定装置102は温度センサS1、S2のいずれかが故障しているとは判定しないため、温度センサS1に故障が生じていることを検出することができなくなってしまう。
【0123】
そのため、ブロックヒータHが稼働している場合は大きな判定閾値ΔTe
*を用いらざるを得ないが、少なくともブロックヒータHが稼働していない場合には、小さな判定閾値ΔTeを用いて、温度センサS1、S2に故障が生じているか否かの判定をより精度良く(すなわち
図10の2点鎖線のような現象(この場合は温度センサS1の故障)が生じていることを見落とすことなく)行うように構成することが望ましい。
【0124】
一方、上記の実施形態で説明したように、外部ヒータ稼働判定システム1を前述した構成例2(
図7等参照)や構成例3(
図8等参照)のように構成すれば、外部ヒータ稼働判定システム1の判定装置8は、ブロックヒータHが稼働していない場合には、ブロックヒータHが稼働していないことを的確に判定することができる。
【0125】
そのため、例えば、外部ヒータ稼働判定システム1の判定装置8から車両用制御システム100の温度センサ故障判定装置102に判定結果(すなわちブロックヒータHが稼働しているという判定結果やブロックヒータHが稼働していないという判定結果等)を送信するように構成し、温度センサ故障判定装置102は、ブロックヒータHが稼働していないと判定装置8が判定した場合には、ブロックヒータHが稼働している場合に用いられる大きな判定閾値ΔTe
*ではなく、小さな判定閾値ΔTeを用いて温度センサS1、S2に故障が生じているか否かの判定を行うように構成することができる。
【0126】
そして、このように構成すれば、少なくともブロックヒータHが稼働していない場合には、温度センサ故障判定装置102は、小さな判定閾値ΔTeを用いて温度センサS1、S2に故障が生じているか否かの判定を行うことが可能となり、温度センサS1、S2のいずれかに故障が生じている場合は、それを適切かつ鋭敏に判定して検出することが可能となる。
【0127】
そして、上記のように、本実施形態に係る外部ヒータ稼働判定システム1によれば、冷媒3の循環が開始されてから(すなわちReady−ONされてから)短時間で、ブロックヒータHが稼働していないか否かを判定することができる。そのため、その判定結果を利用して温度センサS1、S2に故障が生じているか否かの判定を行う上記の車両用制御システム100における判定も、Ready−ONされてから短時間で行うことが可能となる。
【0128】
なお、外部ヒータ稼働判定システム1の判定装置8を構成例3のように構成する場合、例えば
図8のフローチャートのステップS9でYes判定が行われたりステップS10でNo判定が行われると、ブロックヒータHが稼働しているか稼働していないかが不明な状態になる。そして、このような場合には、実際に温度センサS1、S2が取り付けられた各位置に温度差が生じている可能性があり、温度センサS1、S2がともに正常であっても温度センサS1、S2により検出される温度Te1、Te2に有意な差がある可能性がある。そのため、上記のようにブロックヒータHが稼働しているか稼働していないかが不明な場合は、大きな判定閾値ΔTe
*を用いて故障判定を行うように構成される。
【0129】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。