(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エリスリトールを主成分として含む甘味料に、エリスリトール100質量部当たり、D−プシコースを0.3〜3.4質量部添加すること特徴とする、エリスリトールを主成分として含む甘味料の味質改善方法。
【背景技術】
【0002】
砂糖は味質に優れた甘味料であり、飲食品の主要な甘味料として多用されているが、近年、砂糖の過剰摂取が肥満や生活習慣病の原因となることが指摘されている。このような背景から、肥満や生活習慣病の回避を意図した、砂糖に代わる低カロリー甘味料の開発が活発に行われている。
【0003】
糖アルコール、特にエリスリトールは、カロリーが非常に低い甘味料として、砂糖の代わりに多くの飲食品に使用されている。しかしながら、エリスリトールは、砂糖と比較すると食した時の前半の味切れが速すぎる、特有の苦味が後味として残るという欠点がある。消費者は、砂糖や果糖ブドウ糖液糖を使用した、いわゆるレギュラー品の味に長年慣れ親しんでおり、エリスリトール単独の使用では甘味質の点で満足できるものではない。また、エリスリトールの甘味度は砂糖の約70%であり、砂糖の代替甘味料として使用する場合、その使用量は砂糖よりも多くなるが、エリスリトールには多量に摂取すると下痢を起こすという欠点もある。
【0004】
一方、砂糖の数百倍以上の甘味度を持つ高甘味度甘味料は、少量の添加で甘味を発現させることが可能であり、その甘味特性を生かしてエリスリトールの甘味質の改善に使用されている。例えば、特許文献1には、エリスリトールと共に、アセスルファムカリウムとアスパルテームを併用することによって、高い甘味強度とショ糖類似の味質を備えさせ得ることが開示されている。しかしながら、特許文献1の技術でも、砂糖や果糖ブドウ糖液糖の味質に慣れ親しんだ消費者の嗜好を満足するには至っていない。
【0005】
また、高甘味度甘味料の中でも、ステビアは、天然由来であり、しかも甘味の立ち上がりが遅く、エリスリトールの欠点である味切れが速すぎる点を補完できるため、エリスリトールと併用されることが多い。しかしながら、ステビアは、エリスリトールと同様、特有の苦味を有するので、両者を併用しても苦味の問題は依然として残っており、消費者の嗜好を満足できていない。
【0006】
また、従来、D−プシコースやD−タガトース等の自然界に僅かにしか存在しない希少糖をエリスリトールと併用し、甘味質を改善することも試みられている(例えば、特許文献2〜4)。
【0007】
特許文献2には、1以上の非栄養性甘味料、糖アルコール、及びD−タガトースを、ダイエット飲料に含める工程を含む、ダイエット飲料の味を改善する方法が開示されている。即ち、特許文献2では、糖アルコール及び高甘味度甘味料を含む甘味料に、更にD−タガトースを添加することにより、エリスリトールや高甘味度甘味料の味質を改善している。しかしながら、D−タガトースはD−プシコースと同等の甘味度を有するが、そのエネルギーは約1.5キロカロリーであり、低カロリーではあるものの、ゼロカロリーではない。また、D−タガトースのエリスリトールに対する味質改善効果は必ずしも十分ではなく、その効果を発揮するためにエリスリトールに対する使用比率を高くする必要がある。例えば、特許文献2では、D−タガトースを、エリスリトール及び高甘味度甘味料を含む飲料中に0.1%以上添加しているが、エリスリトールに対するD−タガトースの使用比率は約2である。つまり、特許文献2では、エリスリトールを主成分とする甘味料に対して甘味質を改善する技術を開示するものではない。
【0008】
特許文献3には、主成分として含有するD−プシコースと、糖アルコールおよび/または高甘味度甘味料からなる味質の改良されたD−プシコース含有低カロリー甘味料が開示されている。特許文献3では、D−プシコースの持つ甘味の立ち上がりの遅さや多量使用による味の重たさ等の問題点を改良するために、D−プシコースに糖アルコール及び又は高甘味度甘味料を添加している。即ち、特許文献3では、D−プシコースを甘味料の主成分として使用する場合は、その使用量に制限を設け、不足する甘味を他の甘味料で補うという手法がとられており、エリスリトールを主成分とする甘味料に対して甘味質を改善する技術を開示するものではない。
【0009】
特許文献4には、D−プシコース及びエリスリトールを含み、更に1種以上の可食性成分を含む組成物、及び該組成物を含む飲食品が開示されている。特許文献4では、甘味を必要とする食品に、D−プシコースとエリスリトールをほぼ同比率にして、高濃度のD−プシコースを使用することで食品の味質が顕著に改善されることを開示しているに過ぎず、特許文献3と同様、エリスリトールを主成分とする甘味料に対して甘味質を改善する技術を開示するものではない。
【0010】
このように、エリスリトールを主成分として含む甘味料において、苦味を抑制し、且つ後味を良好にする味質改善技術が切望されているものの、従来技術では依然として満足できるものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、エリスリトールを主成分として含みながらも、苦味が抑制され、良好な後味を呈する甘味料組成物、及び該甘味料組成物を含む可食性製品又は口腔ケア製品を提供することである。また、本発明の他の目的は、エリスリトールを主成分とし、更に高甘味度甘味料(特にステビア)を含みながらも、苦味が抑制され、良好な後味を呈する甘味料組成物、及び該甘味料組成物を含む可食性製品又は口腔ケア製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、エリスリトールを主成分として含む甘味料組成物において、エリスリトール100質量部当たり0.27〜7質量部という微量のD−プシコースを併用することによって、エリスリトールの欠点である苦味や後味の悪さが克服され、味質が劇的に改善されることを見出した。更に、エリスリトールを主成分とし、更に高甘味度甘味料(特にステビア)を含む甘味料組成物において、前記比率で微量のD−プシコースを併用することによって、従来技術では克服できなかった苦味を抑制して、良好な後味を呈させ得ることをも見出した。
【0014】
本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. エリスリトールを主成分として含み、且つエリスリトール100質量部当たり、D−プシコースを0.27〜7質量部含有することを特徴とする、甘味料組成物。
項2. 更に、高甘味度甘味料を含む、項1に記載の甘味料組成物。
項3. 高甘味度甘味料が、ステビア及び/又はその甘味成分である、項2に記載の甘味料組成物。
項4. エリスリトールが1〜8質量%となるように可食性製品に添加して使用される、項1〜3のいずれかに記載の甘味料組成物。
項5. 項1〜4のいずれかに記載の甘味料組成物を含む、可食性製品。
項6. 飲食品である、項5に記載の可食性製品。
項7. 項1〜4のいずれかに記載の甘味料組成物を含む、口腔用ケア製品。
項8. エリスリトールを主成分として含む甘味料に、エリスリトール100質量部当たり、D−プシコースを0.27〜7質量部添加すること特徴とする、エリスリトールを主成分として含む甘味料の味質改善方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エリスリトールを主成分として含む甘味料組成物において、苦味を抑制し、良好な後味を呈させることができ、エリスリトールの不快な味質を改善することができる。また、本発明では、エリスリトールを主成分として含む甘味料組成物の味質の改善は、可食精製品中では甘味閾値濃度になる微量のD−プシコースを添加することによって実現されているため、該甘味料組成物にプシコース自身の味質の影響を与えることなく、主成分として含まれるエリスリトールの味質を改善でき、新たなノンカロリー甘味料及びそれを含む飲食品を提供することが可能になる。
【0016】
更に、本発明によれば、エリスリトールを主成分とし、更に高甘味度甘味料を含む甘味料組成物に対しても、苦味を抑制し、良好な後味を呈させることができるので、エリスリトールと高甘味度甘味料に基づく優れた甘味特性を生かしつつ、エリスリトールと高甘味度甘味料の呈味の欠点を補うことも可能になっており、より一層優れた呈味を呈するノンカロリー甘味料及びそれを含む飲食品を提供することも可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.甘味料組成物
本発明の甘味料組成物は、エリスリトールを主成分として含み、且つエリスリトール100質量部当たり、D−プシコースを0.27〜7質量部含有することを特徴とする。以下、本発明の甘味料組成物について詳述する。
【0018】
(エリスリトール)
本発明の甘味料組成物では、エリスリトールを主成分として含む。本発明において「エリスリトールを主成分として含む」とは、本発明の甘味料組成物に含まれる全甘味料成分の内、エリスリトールが占める比率が最も高いことを意味し、具体的には、本発明の甘味料組成物に含まれる甘味料成分の総量100質量部当たり、エリスリトールが90質量部以上、好ましくは95〜99質量部、更に好ましくは96〜98質量部となる比率を占めていることが挙げられる。
【0019】
また、本発明の甘味料組成物におけるエリスリトールの含有量については、該甘味料組成物の形状に応じて適宜設定されるが、例えば10〜99質量%が挙げられる。より具体的には、本発明の甘味料組成物が液状である場合には、エリスリトールの含有量として、通常20〜99質量%、好ましくは50〜95質量%が挙げられる。また、本発明の甘味料組成物が固形状である場合には、エリスリトールの含有量として、通常20〜99質量%、好ましくは50〜95質量%が挙げられる。
【0020】
(D−プシコース)
本発明の甘味料組成物は、主成分として含まれるエリスリトール100質量部当たり0.3〜3.4質量部のD−プシコースを含有する。このように微量のD−プシコースを併用することによって、エリスリトールの欠点である苦味や後味の悪さを改善し、優れた味質を呈することが可能になる。
【0021】
本発明で使用されるD−プシコースは、天然物から精製したもの、酵素学的手法によって製造したもの、化学合成によって製造したもの等のいずれを使用してもよいが、製造簡易性の観点から、酵素学的手法によって製造したものを好適に使用できる。また、本発明に使用されるD−プシコースは、完全に精製されたものでものであっても、また少量の不純物を含むものであってもよい。
【0022】
酵素学的手法によってD−プシコースを製造する方法としては、例えば、エピメラーゼを用いて、D−フラクトースの3位をエピマー化する方法(例えば、特開平6−125776号公報参照)が挙げられる。また、酵素的手法によってD−フラクトースの3位をエピマー化してD−プシコースを生成させた後に、必要に応じて、除蛋白、脱色、脱塩等の方法で精製処理の教示、更に濃縮してシラップ状のD−プシコース製品を得ることができる。また、該シラップ状のD−プシコース製品を更にカラムクロマトグラフィーに供して分画、精製することにより、99%以上の高純度の精製品も得ることができる。
【0023】
また、本発明では、D−プシコースとして市販品を購入して使用することもできる。D−プシコースの市販品は、例えば、和光純薬工業株式会社から取得することができる。
【0024】
本発明の甘味料組成物において、D−プシコースは、エリスリトール100質量部当たり0.27〜7質量部の比率で含まれる。本発明の甘味料組成物におけるD−プシコース含量は極めて微量であるため、本発明の甘味料組成物を砂糖換算甘味濃度が2〜15質量%となるように可食性製品又は口腔ケア製品に添加した場合、D−プシコースの濃度は、それ単独では甘味を呈しない濃度(甘味閾値濃度)未満になるが、かかる微量のD−プシコースによって、エリスリトールを主成分とする甘味料組成物の苦味を抑制し、良好な後味を備えさせることが可能になる。
【0025】
D−プシコースは、前述するような甘味閾値濃度未満という微量での使用によってエリスリトールの味質を改善できるが、ブドウ糖にはそのような効果は認められない。また、果糖は、D−プシコースのエピマーであり、甘味度はD−プシコースの約2倍であるが、甘味閾値濃度未満という微量での使用ではエリスリトールの味質を殆ど改善できない。また、タガトースは、D−プシコースと同様の希少糖に分類されるが、前述するような甘味閾値濃度未満という微量の使用では、エリスリトールの味質を殆ど改善できない。即ち、エリスリトールを主成分とする甘味料組成物の苦みや後味の悪さの改善は、他の甘味料を甘味閾値濃度未満で添加しても実現できず、D−プシコースを選択し、これを甘味閾値濃度未満という微量で添加することが重要である。
【0026】
本発明の甘味料組成物において、苦みの抑制、及び良好な後味をより一層効果的に実現するという観点から、エリスリトール100質量部当たりのD−プシコースの比率として、好ましくは0.36〜3.5質量部、更に好ましくは0.5〜3.0質量部となる比率が挙げられる。
【0027】
(他の甘味料)
本発明の甘味料組成物には、エリスリトール及びD−プシコースに加えて、必要に応じて、他の甘味料成分が含まれていてもよい。
【0028】
本発明の甘味料組成物に配合可能な他の甘味料成分としては、飲食品、経口医薬品、口腔用組成物等において、甘味料として一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、高甘味度甘味料、砂糖、ブドウ糖、果糖、異性化糖、トレハロース、タガトース、エリスリトール以外の糖アルコール等が挙げられる。これらの他の甘味料成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらの甘味料成分の中でも、本発明による味質の改善効果、消費者のカロリー制限志向等の観点から、高甘味度甘味料が好ましい。高甘味度甘味料としては、天然由来であっても、人工的に合成されたものであってもよい。天然由来の高甘味度甘味料としては、例えば、ステビア、羅漢果、クズウコン科の植物Thaumatococcus daniellii等の植物抽出物、これらに含まれる甘味成分等が挙げられる。ステビア抽出物に含まれる甘味成分としては、具体的には、ステビオシド、レバウディオサイドA等が挙げられる。羅漢果抽出物に含まれる甘味成分としては、具体的には、モグロシドV等が挙げられる。Thaumatococcus daniellii抽出物に含まれる甘味成分としては、具体的には、ソーマチンが挙げられる。
また、人工の高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース(登録商標)、サッカリン、ネオテーム等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
これらの高甘味度甘味料の中でも、消費者の志向の観点からは天然由来であることが好ましく、とりわけステビア及び/又はその甘味成分が好適である。ステビア及び/又はその甘味成分は、甘味の立ち上がりが遅いため、エリスリトールの甘味質の欠点である低い持続性をより一層効果的に補完できるという利点がある反面、エリスリトールと同様に苦味があり、エリスリトールと併用すると苦味が増強されるという欠点がある。これに対して、本発明の甘味料組成物によれば、エリスリトールとステビア及び/又はその甘味成分とを併用した場合に生じる苦味を十分に抑制でき、格段に優れた味質を実現することが可能になる。
【0031】
本発明の甘味料組成物に高甘味度甘味料を配合する場合、その含有量については、使用する高甘味度甘味料の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、エリスリトール100質量部当たり、0.2質量部以上、好ましくは0.5〜2質量部、更に好ましくは0.6〜1質量部となる比率が挙げられる。
【0032】
(その他の成分)
本発明の甘味料組成物は、エリスリトール、D−プシコース、必要に応じて添加される他の甘味料に加えて、呈味成分、増量剤、賦形剤、希釈剤、担体、香料、防腐剤、酸化防止剤等の各種添加剤を必要に応じて含んでいてもよい。
【0033】
(形状及び用途)
本発明の甘味料組成物の形状については、特に制限されず、粉末状、顆粒状、錠剤状等の固形状であってもよく、水溶液状、乳化液状、懸濁液状等の液状であってもよい。
【0034】
本発明の甘味料組成物は、甘味を必要とする可食性製品や口腔ケア製品に対して甘味料として添加して使用される。本発明の甘味料組成物は、単独で甘味料として使用してもよく、従来使用される甘味料と併用してもよい。例えば、砂糖や果糖等のカロリーを有する甘味料の一部代替として使用した場合、カロリー低下が図れると共に、他の甘味料との併用による甘味の多様化が図れ、消費者の嗜好性の多様化に対応させることもできる。
【0035】
本発明の甘味料組成物が添加される可食性製品としては、経口的に摂取又は服用される製品であることを限度として、その種類については特に制限されないが、例えば、飲食品、経口医薬品等が挙げられる。
【0036】
本発明の甘味料組成物が添加される飲食品としては、具体的には、醤油、粉末醤油、味噌、粉末味噌、もろみ、ひしお、フリカケ、マヨネーズ、ドレッシング、食酢、三杯酢、粉末すし酢、中華の素、天つゆ、麺つゆ、ソース、ケチャップ、焼き肉のタレ、カレールウ、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガー等の調味料;んべい、あられ、おこし、餅類、まんじゅう、ういろう、あん類、羊羹、水羊羹、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉等の和菓子;パン、ビスケット、クラッカー、クッキー、パイ、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、ワッフル、スポンジケーキ、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、キャンディー等の洋菓子;アイスクリーム、シャーベット等の氷菓子;果実のシロップ漬、氷蜜等のシロップ類;フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト等のペースト類;ジャム、マーマレード、シロップ漬、糖菓等の果実、野菜の加工食品類;パン類、麺類、米飯類、人造肉等の穀類加工食品類;福神漬、べったら漬、千枚漬、らっきょう漬等の漬物類;たくあん漬の素、白菜漬の素等の漬物の素類;ハム、ソーセージ等の畜産製品類;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷら等の魚肉製品;ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、ふぐのみりん干し等の珍味類;のり、山菜、するめ、小魚、貝等で製造される佃煮類;煮豆、ポテトサラダ、コンブ巻等の惣菜食品;乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜等の瓶詰め又は缶詰類;合成酒、果実酒、洋酒、リキュール等の酒類;コーヒー、ココア、ジュース、炭酸飲料、スポーツ飲料、果汁飲料、乳性飲料、乳酸飲料、乳酸菌飲料、茶系飲料、栄養ドリンク等の飲料;プリンミックス、ホットケーキミックス等のプレミックス粉類;即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープ等即席飲食品;粉末剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等のサプリメント等が挙げられる。これらの飲食品の中でも、飲料、とりわけコーラ等の炭酸飲料;スポーツ飲料、果汁飲料、乳性飲料、茶系飲料等の清涼飲料は、低カロリー化が求められており、本発明の甘味料組成物における添加対象として特に好適である。
【0037】
本発明の甘味料組成物が添加される経口医薬品としては、例えば、糖衣錠が挙げられる。糖衣錠は、薬品の味や臭いを表面の糖衣層で隠蔽しているため服用が容易で外観にも優れており、しかも防湿効果もあるため、固形製剤等の医薬品として広く用いられている。糖衣錠の製造は、一般にショ糖溶液を錠剤に塗布して乾燥させる工程を繰り返して糖衣層の形成を終了させ、錠剤の形状を楕円状に整えてからワックスを塗布し、艶出しを行って糖衣錠とするものである。一般に糖衣用ショ糖溶液としては、基剤となるショ糖に、糖衣錠の糖衣層の強度を高めるために結合剤としてゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドンなどを添加したものが使用されている。また必要に応じてタルク、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウムなどの粉剤が添加されている。
【0038】
また、本発明の甘味料組成物が添加される経口医薬品の他の例として、バリウム等の苦味を伴う成分を含む内服薬が挙げられる。このような苦みを伴う内服薬に対して、本発明の甘味料組成物を添加することにより、甘味によって当該苦味をマスキングし、服用し易くすることができる。
【0039】
本発明の甘味料組成物が添加される口腔ケア製品としては、チューインガム、キャンディー、錠菓、フィルム菓子、練り歯磨き剤、液状歯磨き剤、洗口剤等が挙げられる。なお、本明細書において、「口腔ケア製品」とは、口中で咀嚼したり、含嗽したりする製品を指し、該口腔ケア製品には、飲食品や経口医薬品として分類される製品も含まれ得る。
【0040】
本発明の甘味料組成物を可食性製品又は口腔ケア製品に添加する場合、その添加濃度については、添加対象となる製品の種類や付与すべき甘味度等に応じて適宜設定されるが、具体的には、可食性製品又は口腔ケア製品に対して、砂糖換算甘味濃度で2〜15重量%に相当する甘味を付与できる濃度が挙げられる。ここで、砂糖換算甘味濃度とは、甘味料組成物によって付与される甘味度と等しい甘さに調整するために必要とされる砂糖の濃度を指す。また、砂糖換算甘味濃度の算出において、砂糖に対するエリスリトールの甘味度は0.7、砂糖に対するD−プシコースの甘味度は0.7、砂糖に対するステビアの甘味度は350として換算される。
【0041】
本発明の甘味料組成物の可食性製品又は口腔ケア製品への添加量として、より具体的には、可食性製品又は口腔ケア製品中でエリスリトール濃度が1〜8質量%、好ましくは2〜8質量%、更に好ましくは2〜7質量%となる量が挙げられる。
【0042】
本発明の甘味料組成物を前述する添加量で可食性製品又は口腔ケア製品に添加すると、該製品中でエリスリトールは単独で甘味を呈する濃度になるが、D−プシコースは単独では甘味を呈しない甘味閾値濃度以下になる。このように単独で甘味を呈する濃度のエリスリトールと単独で甘味を呈しない濃度のD−プシコースとの相互作用によって、苦味が抑制され後味が良好な甘味を可食性製品又は口腔ケア製品に付与することが可能になる。
【0043】
2.エリスリトールを主成分とする甘味料の味質改善方法
本発明の味質改善方法は、エリスリトールを主成分として含む甘味料の味質改善方法であって、エリスリトール100質量部当たり、D−プシコースを0.3〜3.4質量部添加することを特徴とする。本発明の味質改善方法において、エリスリトールを主成分として含む甘味料におけるエリスリトールの含有量、エリスリトールを主成分として含む甘味料において必要に応じて含んでいてもよい他の甘味料の種類、D−プシコースの好ましい含有量、エリスリトールを主成分として含む甘味料の形状等については、前記「1.甘味料組成物」に記載の通りである。
【0044】
また、本発明の味質改善方法において、エリスリトールを主成分として含む甘味料に、更にステビア及び/又はその甘味成分が含まれている場合には、エリスリトールとステビア及び/又はその甘味成分との併用により生じる苦味を効果的に抑制できるので、該味質改善方法は苦み抑制方法として実施することもできる。
【実施例】
【0045】
以下に、参考例及び実施例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
参考例1:D−プシコースの甘味閾値濃度の測定
宇都宮大学教育学部紀要、第63号、第1部(平成25年3月)に記載の方法に準じて、D−プシコースの甘味閾値濃度の測定を行った。具体的な試験方法は、以下の通りである。
【0047】
先ず、D―プシコースの濃度を段階的に0.1質量%から1.0質量%まで10段階に高めた水溶液を検査液として準備した。次いで、訓練された9名のパネラー(表1中、A〜Iと表記)に試飲させて甘味を感じる最低濃度を回答させ、その濃度の平均値を甘味度閾値とした。
【0048】
得られた結果を表1に示す。この結果から、D−プシコースの甘味閾値濃度は約0.5%であることが分かった。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例1:D−プシコースによるエリスリトール(低濃度)の味質改善効果の評価
15質量%のエリスリトール水溶液の一部をD−プシコースに置換してD−プシコース濃度を段階的に0〜0.2%に高めた甘味料水溶液を調製した。これらの甘味料水溶液は、いずれも、砂糖換算甘味濃度が10質量%に統一されている。
【0051】
これらの甘味料水溶液に、D−プシコース濃度の低い方から順に0〜5の順位付けをした。これを訓練された9名のパネラー(表3中、A〜Iと表記)で味質評価を行い、味質改善効果が発現するプシコース濃度順位を決定した。
【0052】
甘味料水溶液の組成、D−プシコース濃度順位、及び評価結果を表2に示す。また、各パネラーの評価結果の内訳を表3に示す。表2及び3に示すように、エリスリトール100質量部当たりD−プシコースを0.27質量部以上含有させることによりエリスリトールの苦味が抑制され、後味が良好になっており、その味質が改善されていることが分かった。この場合のD−プシコースの濃度は、D−プシコースの甘味閾値濃度(0.5質量%)よりも遥かに低い濃度であった。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
実施例2:D−プシコースによるエリスリトール(高濃度)の味質改善効果の評価
22質量%のエリスリトール水溶液の一部をD−プシコースに置換してD−プシコース濃度を段階的に0〜0.2%に高めた甘味料水溶液を調製した。これらの甘味料水溶液は、いずれも、砂糖換算甘味濃度が15質量%に統一されている。
【0056】
これらの甘味料水溶液に、D−プシコース濃度の低い方から順に0〜6の順位付けをした。これを訓練された10名のパネラー(表5中、A〜Jと表記)で味質評価を行い、味質改善効果が発現するプシコース濃度順位を決定した。
【0057】
甘味料水溶液の組成、D−プシコース濃度順位、及び評価結果を表4に示す。また、各パネラーの評価結果の内訳を表5に示す。これらの結果から、砂糖換算甘味濃度を15%に高めた場合であっても、エリスリトール100質量部当たりD−プシコースを0.27質量部以上含有させることで、十分にエリスリトールの苦味が抑制され、後味が良好になっており、その味質が改善されていることが確認された。更に、パネラーコメントから、砂糖換算10%の場合(実施例1)よりも味質が良好になっていることも明らかとなった。また、高濃度のエリスリトールを使用した本試験でも、その味質の改善が認められたD−プシコースの濃度は、その甘味閾値濃度(0.5質量%)よりも遥かに低かった。
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
実施例3:エリスリトール及びステビアを含む甘味料のD−プシコースによる味質改善効果の評価
7.5質量%のエリスリトール及び0.015%質量%のステビアを含む水溶液の一部をD−プシコースに置換してD−プシコース濃度を段階的に0〜0.2%に高めた甘味料水溶液を調製した。これらの甘味料水溶液は、いずれも、砂糖換算甘味濃度が10質量%に統一されている。
【0061】
これらの甘味料水溶液に、D−プシコース濃度の低い方から順に0〜3の順位付けをした。これを訓練された10名のパネラー(表7中、A〜Jと表記)で味質評価を行い、味質改善効果が発現するプシコース濃度順位を決定した。
【0062】
甘味料水溶液の組成、D−プシコース濃度順位、及び評価結果を表6に示す。また、各パネラーの評価結果の内訳を表7に示す。表6及び7の結果から、高甘味度甘味料のステビアを含むエリスリトール水溶液の場合であっても、エリスリトール100質量部当たりD−プシコースを0.27質量部以上含有させることで、苦味が十分に抑制され、優れた後味が呈されることが確認された。本試験でも、味質改善が認められたD−プシコースの濃度は、甘味閾値濃度(0.5質量%)よりも遥かに低かった。
【0063】
【表6】
【0064】
【表7】
【0065】
実施例4:エリスリトール及びステビアを含む甘味料のD−プシコースによる味質改善効果(清涼飲料における呈味)の評価
エリスリトール及びステビアからなる甘味料組成物(エリスリトール:ステビアの重量比は150:1)を調製した。また、該甘味料組成物においてエリスリトール及びステビアの一部をD−プシコースに置換した甘味料組成物を6通り調製した。これらの甘味料組成物は、D−プシコース含有量が低い順に0〜5の順位付けをした。
【0066】
各甘味料組成物を砂糖換算甘味濃度として10質量%となるように加えて清涼飲料を調製した。各清涼飲料には、クエン酸0.01質量%、クエン酸ナトリウム0.01質量%、及び香料0.1質量%が含まれており、エリスリトール、ステビア、及びD−プシコースの濃度は、表8に示す通りである。各清涼飲料を訓練された10名のパネラー(表9中、A〜Jと表記)で味質評価を行い、味質改善効果が発現するプシコース濃度順位を決定した。
【0067】
清涼飲料の組成、使用した甘味料組成物におけるD−プシコース濃度順位及び評価結果を表8に示す。また、各パネラーの評価結果の内訳を表9に示す。表8及び表9の結果から、ステビア及びエリスリトールを含む甘味料組成物を砂糖換算甘味濃度として10質量%となる濃度で添加した飲料において、エリスリトール100質量部当たりD−プシコースが0.27〜7質量部含まれている場合には、苦味が十分に抑制され、優れた後味が呈されることが確認された。本試験でも、味質改善が認められたD−プシコースの濃度は、甘味閾値濃度(0.5質量%)よりも遥かに低かった。
【0068】
【表8】
【0069】
【表9】
【0070】
実施例5:エリスリトール含有ゼリーの味質改善効果の評価
表10に示す組成で、甘味料としてエリスリトール、ステビア及び甘味閾値濃度未満のD−プシコースを含む糖質ゼロのプシコース含有ゼリーを調製した。また、比較のために、D−プシコースを添加せずに、砂糖換算甘味濃度がプシコース含有ゼリーと同じになるように設定した対照ゼリーを調製した。これらのゼリーについて、10名のパネラーによるブラインド味覚試験を行い、どちらが味質に優れているかを選択させた。
【0071】
【表10】
【0072】
その結果、対照ゼリーを選択したパネラーは2名であり、プシコース含有ゼリーを選択したパネラーは8名であった。この結果から、ゼリーに添加する甘味料組成物として、エリスリトール及びステビアと共に、ゼリー中で、エリスリトール100質量部当たりD−プシコースを0.27〜7質量部含有させることで、甘味質が改善されることが分かった。
【0073】
実施例6:エリスリトール含有フルーツソースの味質改善効果の評価
表11に示す組成で、甘味料としてエリスリトール、ステビア及び甘味閾値濃度未満のD−プシコースを含む糖質ゼロのプシコース含有マンゴーソースを調製した。また、比較のために、D−プシコースを添加せずに、砂糖換算甘味濃度がプシコース含有マンゴーソースと同じになるように設定した対照マンゴーソースを調製した。これらのマンゴーソースについて、10名のパネラーによるブラインド味覚試験を行い、どちらが味質に優れているかを選択させた。
【0074】
【表11】
【0075】
その結果、対照マンゴーソースを選択したパネラーは2名であり、プシコース含有マンゴーソースを選択したパネラーは8名であった。この結果から、マンゴーソースに添加する甘味料組成物として、エリスリトール及びステビアと共に、マンゴーソース中でエリスリトール100質量部当たり0.27〜7質量部になる量のD−プシコース(甘味閾値濃度未満)を含有させることで、甘味質が改善されることが分かった。
【0076】
実施例7:エリスリトール含有コーラ飲料の味質改善効果の評価
表12に示す組成で、甘味料としてエリスリトール、ステビア及び甘味閾値濃度未満のD−プシコースを含む糖質ゼロのプシコース含有コーラ飲料を調製した。また、比較のために、D−プシコースを添加せずに、砂糖換算甘味濃度がプシコース含有コーラ飲料と同じになるように設定した対照コーラ飲料を調製した。これらのコーラ飲料について、10名のパネラーによるブラインド味覚試験を行い、どちらが味質に優れているかを選択させた。
【0077】
【表12】
【0078】
その結果、対照コーラ飲料を選択したパネラーは1名であり、プシコース含有コーラ飲料を選択したパネラーは9名であった。この結果から、コーラ飲料に添加する甘味料組成物として、エリスリトール及びステビアと共に、コーラ飲料中でエリスリトール100質量部当たり0.27〜7質量部になる量のD−プシコース(甘味閾値濃度未満)を含有させることで、甘味質が改善されることが分かった。
【0079】
実施例8:エリスリトール含有ライム風味炭酸飲料の味質改善効果の評価
表13に示す組成で、甘味料としてエリスリトール、ステビア及び甘味閾値濃度未満のプシコースを含む糖質ゼロのプシコース含有ライム風味炭酸飲料を調製した。また、比較のために、D−プシコースを添加せずに、砂糖換算甘味濃度がプシコース含有ライム風味炭酸飲料と同じになるように設定した対照ライム風味炭酸飲料を調製した。これらのライム風味炭酸飲料について、10名のパネラーによるブラインド味覚試験を行い、どちらが味質に優れているかを選択させた。
【0080】
【表13】
【0081】
その結果、対照ライム風味炭酸飲料を選択したパネラーは2名であり、プシコース含有ライム風味炭酸飲料を選択したパネラーは8名であった。この結果から、ライム風味炭酸飲料に添加する甘味料組成物において、エリスリトール及びステビアと共に、ライム風味炭酸飲料中でエリスリトール100質量部当たり0.27〜7質量部になる量のD−プシコース(甘味閾値濃度未満)を含有させることで、甘味質が改善されることが分かった。
【0082】
実施例9:エリスリトール含有果汁飲料の味質改善効果の評価
表14に示す組成で、甘味料としてエリスリトール、ステビア及び甘味閾値濃度未満のプシコースを含む糖質ゼロのプシコース含有果汁飲料を調製した。また、比較のために、プシコースを添加せずに、砂糖換算甘味濃度がプシコース含有果汁飲料と同じになるように設定した対照果汁飲料を調製した。これらの果汁飲料について、10名のパネラーによるブラインド味覚試験を行い、どちらが味質に優れているかを選択させた。
【0083】
【表14】
【0084】
その結果、対照果汁飲料を選択したパネラーは1名であり、プシコース含有果汁飲料を選択したパネラーは9名であった。この結果から、果汁飲料に添加する甘味料組成物において、エリスリトール及びステビアと共に、果汁飲料中でエリスリトール100質量部当たり0.27〜7質量部になる量のD−プシコース(甘味閾値濃度未満)を含有させることで、甘味の味質が改善されることが分かった。