(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記下地一体型の外壁パネルは、クレーン等で吊り上げて建物躯体のパネル取付け面まで運ばれる。その際、クレーン作業による繊細な調整が難しく、先行して取付けられている外壁パネルとの嵌合が困難であり、外壁パネル間の横目地嵌合部が損傷する可能性がある。また、建物躯体に取付けられた外壁パネルは外壁面材のある屋外側が重いため、外壁パネルの上部が建物躯体から離れる姿勢に傾斜することがある。
【0007】
一般的に外壁パネルは、その上端部に取付けた接合金物を介して建物躯体に取付けられる。詳しくは、前記接合金物には面外方向に長いルーズ孔からなる締付用貫通孔が設けられており、建物躯体側に設けられた締付用ボルトを前記締付用貫通孔に挿通し、その締付用ボルトにナットを螺着することで、外壁パネルは建物躯体に固定される。前記締付用貫通孔がルーズ孔であるのは、外壁パネルの上端部の面外方向位置を調整して、前述のように傾斜姿勢で取付けられている外壁パネルの姿勢を矯正するためである。
【0008】
外壁パネルの重量が軽量である場合は、外壁パネルの取付け位置を人手によって比較的簡単に調整することができるが、複数枚の外壁面材を下地フレームに取付けて大判化された下地一体型の外壁パネルの場合は、重量が非常に重いため上記調整が容易でない。このため、調整が不十分なまま外壁パネルが取付けられる可能性がある。例えば、外壁面材を上下に4枚並べた下地一体型の外壁パネルは、総重量が600kg程度になる。
【0009】
この発明の目的は、建物躯体に取付けられた外壁パネルの屋外方向への傾斜を容易に調整することができて、外壁パネルを建物躯体に精度良く取付けることが可能であり、しかも下地一体型の外壁パネルの施工時における上下の外壁パネル間の横目地嵌合部が損傷する可能性を低減することができ、かつ施工スピードを向上させることができる外壁パネルの取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、建物躯体に外壁パネルを取付ける外壁パネルの取付構造であって、
前記建物躯体に固定される躯体側接合金物と、前記外壁パネルの上端部または下端部に固定されるパネル側接合金物と、前記躯体側接合金物と前記パネル側接合金物とを互いに結合する結合手段と、前記建物躯体に取付けられた前記外壁パネルの傾きを調整する傾き調整手段とを備え、
前記結合手段と前記傾き調整手段とが前記建物躯体の屋外方向に前後に並んで配置されてい
る。
【0011】
この外壁パネルの取付構造によると、結合手段によってパネル側接合金物と躯体側接合金物を仮留めし、その状態で、傾き調整手段によって、建物躯体の外壁パネル取付け面に対する外壁パネルの屋外方向の傾きを調整する。結合手段とは別に傾き調整手段を設けることで、上記のように、外壁パネルの重量が建物躯体に預けられた状態で、外壁パネルの屋外方向の傾きを調整することができる。このため、外壁パネルを建物躯体に固定する際に人手で外壁パネルの屋外方向の傾きを調整する従来の施工方法と比べ、傾き調整作業が容易であり、かつ建物躯体に外壁パネルを精度良く取付けることができる。
【0012】
結合手段と傾き調整手段とが建物躯体の屋外方向に前後に並んで配置されているため、パネル側接合金物および躯体側接合金物の横幅方向の寸法をコンパクトにすることができる。また、結合手段と傾き調整手段とが建物躯体の屋外方向に前後に並んで配置されていると、パネル側接合金物と躯体側接合金物との結合作業、および外壁パネルの傾き調整作業を同じ場所で行うことができ、作業能率が良い。
【0013】
例えば外壁パネルが前記下地一体型の外壁パネルであり、クレーンで吊り上げて躯体建物の外壁パネル取付け箇所まで移送する場合、クレーンで吊りこまれた外壁パネルを躯体側接合金物とパネル側接合金物とで外壁パネルを仮留めしてから、この仮留め状態の外壁パネルをクレーンから外し、その後、外壁パネルの位置、高さ、傾き等を調整して建物躯体に固定すると良い。この施工方法であると、クレーン作業と外壁パネルの調整作業が別々に行えるため、施工スピードを向上させることができる。
【0014】
また外壁パネルが前記下地一体型の外壁パネルである場合、躯体側接合金物とパネル側接合金物とで外壁パネルを仮留めする位置を、躯体建物の外壁パネル取付け面における外壁パネル取付位置よりも少し高くしておくと良い。このように外壁パネルを仮留めする位置が定められていると、仮留め状態の外壁パネルをゆっくり下降させて、この外壁パネルの下端部をすでに躯体建物に固定されている下段の外壁パネルの上端部に嵌合させることができる。これにより、上下の外壁パネル間の横目地嵌合部が損傷する可能性を低減することができる。
【0015】
前記構成において、前記パネル側接合金物は、前記外壁パネルの上端部または下端部に固定されるパネル側接合金物本体と、このパネル側接合金物本体に対して前記外壁パネルの取付け位置が調整可能な位置調整用部材とを有し、前記結合手段は、前記位置調整用部材と前記パネル側接合金物本体と前記躯体側接合金物とを結合するものであり、かつ前記傾き調整手段は、前記躯体側接合金物に取付けられた前記位置調整用部材の屋外方向への傾きを調整するもの
である。
この構成であると、パネル側接合金物本体に対して位置調整用部材を外壁パネルの屋外方向および横幅方向の位置に調整することによって、建物躯体に対する外壁パネルの屋外方向および横幅方向の位置を調整することができる。
【0016】
また、前記結合手段は、前記傾き調整手段よりも前記建物躯体の屋外側に位置し、かつ前記躯体側接合金物に対する前記位置調整用部材の高さ位置を調整可能な状態で、前記位置調整用部材と前記パネル側接合金物本体と前記躯体側接合金物とを結合するものであってもよい。
この構成であると、躯体側接合金物に対する位置調整用部材の高さ位置を調整することによって、建物躯体に取付けられた外壁パネルの高さ位置を調整することができる。
【0017】
より好ましくは、前記結合手段は、前記躯体側接合金物から上方に突出し、前記位置調整用部材に設けられた締付用貫通孔に挿通される締付用ボルトと、この締付用ボルトが前記締付用貫通孔よりも突出した部分に螺着される締付用ナットとを有し、
前記傾き調整手段は、前記躯体側接合金物から上方に突出し、前記位置調整用部材に設けられた傾き調整用貫通孔に挿通される傾き調整用ボルトと、この傾き調整用ボルトが前記傾き調整用貫通孔よりも突出した部分に螺着される傾き調整用ナットとを有し、
前記結合手段および前記傾き調整手段の他に、前記パネル側接合金物本体に設けられた上下方向に貫通する高さ調整用ボルト孔に上方から螺合し、下端部が前記躯体側接合金物の上面に当接する高さ調整用ボルトとを備えるとよい。
【0018】
この場合、締付用ボルトを締付用貫通孔に挿通し、この締付用ボルトの締付用貫通孔よりも突出した部分に締付用ナットを螺着し、この状態で締付用ナットを位置調整用部材の上面に当接させて締め付けることにより、躯体側接合金物とパネル側接合金物とを互いに結合することができる。
また、傾き調整用ボルトを傾き調整用貫通孔に挿通し、この傾き調整用ボルトの傾き調整用貫通孔よりも突出した部分に傾き調整用ナットを螺着し、この状態で傾き調整用ナットを位置調整用部材の上面に当接させ、そのときの傾き調整用ボルトの傾き調整用ボルトに対する螺着位置を調整することにより、外壁パネルの屋外方向の傾きを調整することができる。
さらに、高さ調整用ボルト孔に高さ調整用ボルトを上方から螺合させ、その下端を躯体側接合金物の上面に当接させておき、この高さ調整用ボルトの高さ調整用ボルト孔に対するねじ込み量を調整することにより、建物躯体に対する外壁パネルの高さを調整することができる。
【0019】
この発明において、前記外壁パネルの上端部において互いに横幅方向位置が異なる複数箇所に前記パネル側接合金物が固定され、これら複数箇所の前記パネル側接合金物に対応する前記建物躯体の複数箇所に前記躯体側接合金物が固定されていてもよい。
この場合、外壁パネルが上端部で建物躯体に固定される。外壁パネルの上端部を複数箇所で固定すると、パネル側接合金物および躯体側接合金物にあまり剛性が高くない金物を使用しても、外壁パネルの屋外方向への傾きを一定に保持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建物躯体に取付けられた外壁パネルの屋外方向への傾斜を容易に調整することができて、外壁パネルを建物躯体に精度良く取付けることが可能であり、しかも下地一体型の外壁パネルの施工時における上下の外壁パネル間の横目地嵌合部が損傷する可能性を低減することができ、かつ施工スピードを向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。
図1は、この発明の一実施形態にかかる外壁パネルの取付構造の断面図に部分拡大図を加えた図である。この外壁パネルの取付構造は、例えば物流施設となる倉庫やコンビニエンスストア等の鉄骨系建物に適用される。使用される外壁パネル1は、建物躯体50に外壁面材を取付けるための下地となる下地フレーム2に複数枚の外壁面材3を上下に並べて取付けた下地一体型の外壁パネルである。図の例では、外壁面材3が上下4段に並べられている。
【0023】
図2は外壁パネル1を屋内側から見た斜視図、
図3は屋内側から見た正面図である。外壁パネル1の前記下地フレーム2は、外壁面材3の横幅方向に延びる横架材である上下の親胴縁4,5と、これら上下の親胴縁4,5を連結する上下方向に延びる複数本の縦胴縁6とで形成される。各縦胴縁6は、横幅方向に間隔を開けて配置されている。親胴縁4,5および縦胴縁6は例えば角パイプからなる。親胴縁4,5と縦胴縁6とは、一部を除き例えば溶接により接合されている。複数本の縦胴縁6のうち、左右一方端(
図3の左端)に位置する縦胴縁6Aは、上端部が上側の親胴縁4よりも上方に突出し、下端部が下側の親胴縁5よりも上方に位置している。なお、以下の説明で、外壁面材3の横幅方向を「左右方向」と記載する場合がある。
【0024】
各外壁面材3は、下地フレーム2の各縦胴縁6に組み付けられる。その組付け状態において、外壁面材3の左端は正面視で左端の親胴縁6Aの一部に重なり、かつ外壁面材3の右端は右端の親胴縁6Bよりも右側に突出している。左端の縦胴縁6Aと下側の親胴縁5とはL形金物7を介して互いに接合されている。
【0025】
外壁面材3としては、例えば
図4に示すように、ロックウール等の不燃断熱材10を鋼板11,12で挟み込んだ金属サンドイッチパネルが用いられる。2枚の外壁面材3を上下に並べた場合、
図5のように、上段に位置する外壁面材3の下端部と下段に位置する外壁面材3の上端部とが、互いに凹凸形状として噛み合うことで、水密性および耐火性能を満たすようにされている。
【0026】
図2および
図3に示すように、上側の親胴縁4には、4箇所にパネル側接合金物本体20A,20Bが設けられている。パネル側接合金物本体20Aは上側の親胴縁4の左右両端間をほぼ等分に3分割する2箇所に配置され、パネル側接合金物本体20Bは上側の親胴縁4の左右両端部に配置されている。これらのパネル側接合金物本体20A,20Bは、それぞれ後述する位置調整用部材25A,25Bと共にパネル側接合金物26A,26Bを構成する(
図9、
図10参照)。
【0027】
図6は
図3のa部の拡大正面図、平面図、および側面図であり、上側の親胴縁4におけるパネル側接合金物本体20Aの取付け部を示している。パネル側接合金物本体20Aは、側面視で上下逆向きのL字形の金物である。垂直部20aAと上側の親胴縁4の屋内側の面とが溶接等により固定され、水平部20bAが屋内側に突出している。この水平部20bAには、上下に貫通する平面視形状が正方形の位置調整用貫通孔21Aと、高さ調整用ボルト孔22とが設けられている。正方形である位置調整用貫通孔21Aの各辺は、外壁パネル1の屋外方向および横幅方向に沿っている。
【0028】
図7は
図3のb部の拡大正面図、平面図、および側面図であり、上側の親胴縁4における前記パネル側接合金物本体20Bの取付け部を示している。パネル側接合金物本体20Bも、パネル側接合金物本体20Aと同様の側面視で上下逆向きのL字形の金物であって、垂直部20aBと上側の親胴縁4の屋内側の面とが溶接等により固定され、水平部20bBが屋内側に突出している。パネル側接合金物本体20Bは、パネル側接合金物本体20Aよりも左右方向(
図6(A),
図7(A)の左右方向)の幅が狭く、位置調整用貫通孔21Aと同様の位置調整用貫通孔21Bのみが設けられている。
【0029】
また、
図6、
図7において、上側の親胴縁4の上面には、この上側の親胴縁4に固定されたパネル側接合金物本体20A、20Bと対応する左右位置にピン取付板23が固定されている。このピン取付板23には、上方に突出するダボピン23aがねじで取付けられている。ダボピン23aの先端は先細り形状となっている。
図8は
図3のc部の拡大正面図、および底面図である。同図に示すように、下側の親胴縁5の下面における4箇所には、ダボピン23aを差込み可能なピン孔24aを有するダボピン受け板24が取付けられている。
【0030】
なお、上記ダボピン23aおよびピン孔24aは、外壁パネル1を上下に並べて建物躯体50に取付ける場合に、下段の外壁パネル1に設けられたダボピン23aと上段の外壁パネル1に設けられたピン孔24aとが嵌合する。よって、上段に位置する外壁パネル1が存在しない最上段の外壁パネル1については、ダボピン23aを設けなくてもよい。また、下段に位置する外壁パネル1が存在しない最下段の外壁パネル1については、ダボピン受け板24を設けなくてもよい。
【0031】
図9(A)は
図3のa部における上側の親胴縁4と建物躯体50との結合部の分解状態の斜視図、
図9(B)は同結合部の結合状態の斜視図である。
先に説明したように、パネル側接合金物26Aは、パネル側接合金物本体20Aと位置調整用部材25Aとで構成する。位置調整用部材25Aは矩形の1つの角部が切欠かれた板材であって、外壁パネル1の屋外方向に沿って屋外側に位置する1つの締付用貫通孔27Aと、屋内側に位置する2つの傾き調整用貫通孔28Aとを有する。この位置調整用部材25Aは、パネル側接合金物本体20Aの上に重ねて使用される。位置調整用部材25Aの締付用貫通孔27Aとパネル側接合金物本体20Aの位置調整用貫通孔21Aとの水平位置を揃えた状態で躯体側接合金物30Aと結合される。
【0032】
建物躯体50には、パネル側接合金物26Aの取付け位置と対応する位置に躯体側接合金物30Aが固定されている。この躯体側接合金物30Aには、屋外側に配置され上方に突出する1つの締付用ボルト31Aと、屋内側に配置され上方に突出する2つの傾き調整用ボルト32Aとが設けられている。これら締付用ボルト31Aと傾き調整用ボルト32Aは、位置調整用部材25Aの締付用貫通孔27Aと傾き調整用貫通孔28Aにそれぞれ挿通可能である。締付用ボルト31Aの直径は、前記位置調整用貫通孔21Aの一辺の長さよりも小さい。このため、外壁パネル1は、位置調整用貫通孔21Aに締付用ボルト31Aが挿通された状態で屋外方向および横幅方向の動きが許容される。
【0033】
建物躯体50に外壁パネル1を取付けた状態では、
図9(B)のように、パネル側接合金物26Aと躯体側接合金物30Aとが互いに固定される。その固定には、1つの締付用ボルト31Aと2つの傾き調整用ボルト32Aの他に、1つの締付用ナット33Aと、2つの傾き調整用ナット34Aと、高さ調整用ボルト35とが用いられる。高さ調整用ボルト35は、先端面が球面等の凸面状に形成されたボルトである。
【0034】
パネル側接合金物26Aと躯体側接合金物30Aとの固定方法について説明する。
図9(A)のように、躯体側接合金物30Aの上方にパネル側接合金物本体20Aの水平部20bAと位置調整用部材25Aとを順に重ねて配置する。締付用ボルト31Aをパネル側接合金物本体20Aの位置調整用貫通孔21Aと位置調整用部材25Aの締付用貫通孔27Aに挿通させると共に、傾き調整用ボルト32Aを位置調整用部材25Aの傾き調整用貫通孔28Aに挿通させる。
【0035】
この状態で、締付用ボルト31Aが締付用貫通孔27Aから突出した部分に締付用ナット33Aを螺着し、この締付用ナット33Aを位置調整用部材25Aの上面に当接させる。また、パネル側接合金物本体20Aの高さ調整用ボルト孔22に高さ調整用ボルト35を上方から螺合させ、その下端部を躯体側接合金物30Aの上面に当接させる。そして、締付用ナット33Aと高さ調整用ボルト35の締め込みを調整することにより、建物躯体50に取付けられた外壁パネル1の高さ位置を調整する。
【0036】
具体的には、締付用ナット33Aを緩めながら、高さ調整用ボルト35を締めると、高さ調整用ボルト35が躯体側接合金物30Aを押し下げるように作用するため、相対的に外壁パネル1が持ち上げられて高さ位置が高くなる。逆に、高さ調整用ボルト35を緩めながら、締付用ナット33Aを締めることにより、外壁パネル1の高さ位置が低くなる。
【0037】
このように外壁パネル1の高さ位置を調節する場合、位置調整用部材25Aと躯体側接合金物30Aとの間、およびパネル側接合金物本体20Aと躯体側接合金物30Aとの間に、それぞれの上下間隔に応じた厚さとなるようにスペーサー36を配置してもよい。その際、スペーサー36のU字溝36a内に締付用ボルト31Aおよび高さ調整用ボルト35をそれぞれ位置させる。その後、締付用ナット33Aを締め付けることで、パネル側接合金物26Aと躯体側接合金物30Aとが結合される。正確には、パネル側接合金物本体20Aと位置調整用部材25Aと躯体側接合金物30Aとが結合される。
【0038】
上記パネル側接合金物26Aと躯体側接合金物30Aとの結合時に、位置調整用貫通孔21A内に締付用ボルト31Aが挿通した状態で外壁パネル1を屋外方向および横幅方向へと調整することによって、建物躯体50に取付けられた外壁パネル1の屋外方向および横幅方向の位置を調整することができる。
【0039】
また、傾き調整用ボルト32Aが傾き調整用貫通孔28Aから突出した部分に傾き調整用ナット34Aを螺着させ、この傾き調整用ナット34Aを位置調整用部材25Aの上面に当接させる。これにより、締付用貫通孔27Aの位置を中心とする位置調整用部材25Aの上下回動が拘束されて、位置調整用部材25Aが一定姿勢に保持される。この例の場合、外壁パネル1は外壁面材3のある屋外側が重いため、位置調整用部材25Aの屋内側端を上向きに回動させるモーメントが作用している。傾き調整用ナット34Aによって前記モーメントによる位置調整用部材25Aの回動が拘束されることで、外壁パネル1の屋外方向への傾きが一定に保たれる。
【0040】
位置調整用部材25Aの傾き調整用貫通孔28Aがある箇所は、躯体側接合金物30Aの上面から浮き上がった状態になっており、傾き調整用ナット34Aの締込み量を調整することで、外壁パネル1の屋外方向の傾きを調整することができる。具体的には、傾き調整用ナット34Aを強く締め込むと、位置調整用部材25Aの傾き調整用貫通孔28Aがある箇所と躯体側接合金物30Aとの距離が短くなる。それによってパネル側接合金物26Aが締付用貫通孔27Aの位置を支点にして、パネル側接合金物本体20Aの水平部20bAが上がる側に回動する。その結果、外壁パネル1の下端部が屋外側へ変位するように外壁パネル1の姿勢が調整される。逆に、傾き調整用ナット34Aの締込みを緩めると、外壁パネル1の下端部が屋内側へ変位するように外壁パネル1の姿勢が調整される。
【0041】
上記のようにして建物躯体50に取付けられた外壁パネル1の屋外方向の位置、横幅方向の位置、および高さ位置を調整する。外壁パネル1の取付け位置を調整した後、
図9(B)のように、パネル側接合金物本体20A、位置調整用部材25A、躯体側接合金物30A、およびスペーサー36を、所定の溶接個所37Aで溶接により接合する。これにより、
図3のa部における建物躯体50への外壁パネル1の取付けが完了する。
【0042】
図10(A)は
図3のb部における上側の親胴縁4と建物躯体50との結合部の分解状態の斜視図、
図10(B)は同結合部の結合状態の斜視図である。
先に説明したように、パネル側接合金物26Bは、パネル側接合金物本体20Bと位置調整用部材25Bとで構成する。位置調整用部材25Bは矩形の板材であって、外壁パネル1の屋外方向に沿って屋外側に位置する1つの締付用貫通孔27Bと、屋内側に位置する1つの傾き調整用貫通孔28Bとを有する。この位置調整用部材25Bは、パネル側接合金物本体20Bの上に重ねて使用される。締付用貫通孔27Bとパネル側接合金物本体20Bの位置調整用貫通孔21Bとの水平位置を揃えた状態で躯体側接合金物30Bと結合される。
【0043】
建物躯体50には、パネル側接合金物26Bの取付け位置と対応する位置に躯体側接合金物30Bが固定されている。この躯体側接合金物30Bには、屋外側に配置され上方に突出する1つの締付用ボルト31Bと、屋内側に配置され上方に突出する1つの傾き調整用ボルト32Bとが設けられている。これら締付用ボルト31Bと傾き調整用ボルト32Bは、位置調整用部材25Bの前記締付用貫通孔27Bと傾き調整用貫通孔28Bにそれぞれ挿通可能である。締付用ボルト31Bの直径は、前記位置調整用貫通孔21Bの一辺の長さよりも小さい。このため、外壁パネル1は、位置調整用貫通孔21Bに締付用ボルト31Bが挿通された状態で屋外方向および横幅方向にある程度の動きが許容される。
【0044】
建物躯体50に外壁パネル1を取付けた状態では、
図10(B)のように、パネル側接合金物26Bと躯体側接合金物30Bとが互いに固定される。その固定には、1つの締付用ボルト31Bおよび1つの傾き調整用ボルト32Bの他に、1つの締付用ナット33Bと、1つの傾き調整用ナット34Bとが用いられる。
【0045】
パネル側接合金物26Bと躯体側接合金物30Bとの固定方法は、前述したパネル側接合金物26Aと躯体側接合金物30Aとの固定方法と同じであるので、説明を省略する。建物躯体50に取付けられた外壁パネル1の高さ位置の調整は、
図3のa部でのみ行い、b部では行わない。また、外壁パネル1の屋外方向の傾きを調整する方法も、前記と同様であるので、説明を省略する。
【0046】
図9、
図10に示すように、結合手段38A(38B)は、パネル側接合金物26A(26B)と躯体側接合金物30A(30B)とを結合する締付用ボルト31A(31B)と、締付用ナット33A(33B)とで構成する。また、傾き調整手段39A(39B)は、傾き調整用ボルト32A(32B)と傾き調整用ナット34A(34B)とで構成する。これら結合手段38A(38B)と傾き調整手段39A(39B)は、建物躯体の屋外方向に前後に並んで配置されている。結合手段38A(38B)は、傾き調整手段39A(39B)よりも建物躯体の屋外側に位置している。
【0047】
この外壁パネルの取付構造によると、結合手段38A,38Bによってパネル側接合金物26A,26Bと躯体側接合金物30A,30Bとを仮留めし、その状態で、傾き調整手段39A,39Bによって外壁パネル1の屋外方向への傾きを調整する。結合手段38A,38Bとは別に傾き調整手段39A,39Bを設けたことで、上記のように、外壁パネル1の重量が建物躯体50に預けられた状態で、外壁パネル1の屋外方向の傾きを調整することができる。このため、重量が重い下地一体型の外壁パネル1であっても、外壁パネル1の屋外方向への傾きを調整する作業が容易であり、かつ建物躯体50に外壁パネル1を精度良く取付けることができる。
【0048】
結合手段38A,38Bと傾き調整手段39A,39Bとが建物躯体50の屋外方向に前後に並んで配置されているため、パネル側接合金物26A,26Bおよび躯体側接合金物30A,30Bの横幅方向の寸法をコンパクトにすることができる。また、結合手段38A,38Bと傾き調整手段39A,39Bとが建物躯体50の屋外方向に前後に並んで配置されていると、パネル側接合金物26A,26Bと躯体側接合金物30A,30Bとの結合作業、および外壁パネル1の傾き調整作業を同じ場所で行うことができ、作業能率がよい。
【0049】
次に、上記取付構造を備えた下地一体型の外壁パネル1の施工方法について説明する。
外壁パネル1は、
図11に示すように、クレーン等の揚重装置60によって吊り上げられて建物躯体(図示せず)の外壁パネル取付箇所まで運ばれる。この吊り上げられた外壁パネル1を、建物躯体に先行して取付けられている下段に位置する外壁パネル1の上部に勢いが付いたまま下ろすと、下段に位置する外壁パネル1の最上段に取付けた外壁面材3の凸部3a,3b(
図4、
図5)と、上段に位置する外壁パネル1の最下段に取付けた外壁面材3の凹部3c,3d(
図4、
図5)とがうまく嵌合せず、凸部3a,3bと凹部3c,3dに変形、損傷等が生じる可能性がある。そこで、以下に示す方法で、上段の外壁パネル1を建物躯体に取付ける。
【0050】
吊り上げられた外壁パネル1を、建物躯体50の外壁パネル取付け箇所の上方近傍まで下ろし、そこで一旦静止させる。そして、
図12のように、外壁パネル1を少し下降させて、パネル側接合金物本体20A,20Bの位置調整用貫通孔21A,21Bを躯体側接合金物30A,30Bの締付用ボルト31A,31Bに差し込む。4箇所すべて確実に差し込む。
【0051】
次に、
図13のように、上段に位置する外壁パネル1の下側の親胴縁5に設けられているピン孔24aに、下段に位置する外壁パネル1の上側の親胴縁4に設けられているダボピン23aの先端を差し込む。4箇所すべてのピン孔24aにダボピン23aを差し込むのが望ましいが、差込み可能なダボピン23aのみを差し込み、それ以外のダボピン23aはピン取付板23から外してもよい。この状態では、吊り上げられた上段に位置する外壁パネル1の最下段の外壁面材3と下段に位置する外壁パネル1の最上段の外壁面材3とが上下に離れている。
【0052】
ピン孔24aにダボピン23aを差し込み、
図14のように、パネル側接合金物本体20A,20Bの上に位置調整用部材25A,25Bを配置する。この位置調整用部材25A,25Bの締付用貫通孔27A,27Bと傾き調整用貫通孔28A,28Bに、躯体側接合金物30A,30Bの締付用ボルト31A,31Bと傾き調整用ボルト32A,32Bとを挿通する。そして、締付用ボルト31A,31Bと傾き調整用ボルト32A,32Bの突出部に締付用ナット33A,33Bと傾き調整用ナット34A,34Bとを仮留めする。
【0053】
次に、パネル側接合金物本体20Aの高さ調整用ボルト孔22に高さ調整用ボルト35(
図9)を上方から螺合させる。そして、締付用ナット33Aを緩めながら高さ調整用ボルト35を締めることにより、建物躯体50に取付けられた外壁パネル1の高さ位置を低くして、下段に位置する外壁パネル1の外壁面材3の凸部3a,3b(
図5)と上段に位置する外壁パネル1の凹部3c,3d(
図5)とを嵌合する。このとき、外壁パネル1は高さ調整用ボルト35をねじ込むゆっくりした速度で下降するため、上下の外壁パネル1間の横目地嵌合部、すなわち凸部3a,3bと凹部3c,3dに衝撃が加わらず、凸部3a,3bおよび凹部3c,3dが損傷する可能性を低減することができる。
【0054】
凸部3a,3bと凹部3c,3dとが完全に嵌合すると、先に説明したように、位置調整用部材25A,26Bと躯体側接合金物30A,30Bとの間、並びにパネル側接合金物本体20Aと躯体側接合金物30Aとの間にそれぞれスペーサー36(
図9、
図10)を配置してもよい。締付用ナット33A,33Bを締め付け、所定の溶接個所37A,37B(
図9、
図10)を溶接により接合することで、建物躯体50への外壁パネル1の取付けが完了する。
図1は、外壁パネル1の取付けが完了した状態を示している。
【0055】
この外壁パネル1は、建物躯体50に外壁面材3を取付けるための下地となる下地フレーム2と、この下地フレーム2に組み付けられた上下に並ぶ複数枚の横長形状の外壁面材3とを備えるので、複数枚の外壁面材3を纏めて建物躯体50に取付けることができる。そのため、個々の外壁パネルを1枚ずつ建物躯体50に取付ける従来の外壁パネルの取付け構造に比べて、省力化、短工期化が可能となる。外壁パネル1の下地フレーム2を建物躯体に取付ける作業は、建物躯体50の床スラブや鉄骨梁等の上から行なえるため、足場の設置が削減できる。
【0056】
また、この実施形態のように、外壁パネル1が前記下地一体型の外壁パネルであり、クレーン等の揚重装置60で吊り上げて躯体建物50の取付け箇所まで移送する場合、揚重装置60で吊りこまれた外壁パネル1を躯体側接合金物30A,30Bとパネル側接合金物26A,26Bとで仮留めする。この仮留め状態の外壁パネル1から揚重装置60を外し、その後、外壁パネル1の位置、高さ、傾き等を調整して建物躯体50に固定するとよい。この施工方法であると、外壁パネル1の移送作業と外壁パネル1の調整作業が別々に行えるため、施工スピードを向上させることができる。
【0057】
この実施形態のように、外壁パネル1の上端部に複数のパネル側接合金物26A,26Bが設けられ、これらパネル側接合金物26A,26Bの取付け位置と対応させて建物躯体50に複数の躯体側接合金物30A,30Bが設けられて、外壁パネル1の上端部が建物躯体50に固定される。外壁パネル1の上端部を複数箇所で固定すると、パネル側接合金物26A,26Bおよび躯体側接合金物30A,30Bにあまり剛性が高くない金物を使用しても、外壁パネル1の屋外方向への傾きを一定に保持することができる。
【0058】
なお、外壁パネル1の下側の親胴縁5にパネル側接合金物26A,26Bを設け、これに対応させて建物躯体50に躯体側接合金物30A,30Bを設けて、外壁パネル1の下端部が建物躯体50と固定するようにしてもよい。その場合も、外壁パネル1の屋外方向への傾きを容易に調整することが可能で、建物躯体50に外壁パネル1を精度良く取付けることができる。