(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複合材料層を複数積層して形成され、前記第2の金属部材と前記湾曲部との間に設けられた追加積層体をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の複合材料翼。
前記湾曲部の下部において前記第2の金属部材に設けられ、前記複合材料層の損傷を検出するセンサをさらに備えることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の複合材料翼。
強化繊維に樹脂が含浸された複合材料層を翼厚方向に積層して形成され、基端側に設けられる翼根部と、前記翼根部の先端側から延びる翼形部とを備えた複合材料翼の製造方法であって、
前記翼根部となる前記複合材料層を複数積層する積層ステップと、
前記翼根部を成形する硬化ステップと、
前記翼根部に金属部材を固定する組立ステップと、
を備え、
前記翼根部は、本体部と、前記本体部から前記翼厚方向の外側に向かって湾曲する湾曲部と、前記湾曲部から前記翼厚方向の外側に向かって延びる固定部とを有し、
前記組立ステップは、前記金属部材を前記翼根部の表面層に配置すると共に、前記金属部材を締結具によって前記固定部に取り付けることを特徴とする複合材料翼の製造方法。
前記積層ステップの後、前記硬化ステップの前に、前記第2の金属部材の表面形状に沿った板状部材を前記翼根部の前記湾曲部の下部に配置し、前記板状部材の上に、前記複合材料層を複数積層した追加積層体を形成する追加積層ステップをさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の複合材料翼の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の複合材料翼では、追加積層される複合材料層の止端を、複合材料翼に生じる引張応力と圧縮応力とが切り替わる遷移エリアに位置するように形成している。その結果、複合材料層の止端において強化繊維が存在せず樹脂のみが存在するプライドロップに生じる応力が低減される。しかしながら、複合材料層の層間せん断応力については考慮されていない。そのため、層間せん断応力が高まる領域においてはプライドロップに破損が生じるリスクがあり、翼根部の強度低下を抑制可能な複合材料翼の実現が求められる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、翼根部の強度低下を抑制可能な複合材料翼及び複合材料翼の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、強化繊維に樹脂が含浸された複合材料層を翼厚方向に積層して形成された複合材料翼であって、基端側に設けられる翼根部と、前記翼根部の先端側から延びる翼形部と、前記翼根部に設けられた金属部材と、前記翼根部と前記金属部材とを締結する締結具と、を備え、前記翼根部は、本体部と、前記本体部から前記翼厚方向の外側に向かって湾曲する湾曲部と、前記湾曲部から前記翼厚方向の外側に向かって延びる固定部とを有し、前記金属部材は、前記翼根部の表面層に沿った内面と、前記翼厚方向の外側に広がる方向に傾斜した外面とを有し、前記締結具によって前記固定部に固定されることを特徴とする。
【0007】
この構成により、翼根部の表面層に、翼厚方向の外側に広がる方向に傾斜した外面を有する金属部材を取り付けることで、翼根部を翼形部より外側に広げたダブテール形状とする必要がなくなる。すなわち、金属部材の外面が、このダブテール形状を満たすことになる。そのため、翼根部を翼厚方向の外側に広げ、かつ、広げた分だけ複合材料層の追加積層を行う必要がない。それにより、追加積層によるプライドロップの領域を発生させることなく、翼根部を形成することができる。したがって、本発明によれば、翼根部の強度低下を抑制可能な複合材料翼を提供することができる。
【0008】
また、前記翼根部を形成する前記複合材料層は、前記翼形部から連続して延在することが好ましい。
【0009】
この構成により、複合材料層の追加積層を行うことなく翼根部が形成されるため、追加積層によるプライドロップの領域を発生させないようにして、翼根部の強度低下を抑制することができる。
【0010】
また、前記翼根部に締結具によって取り付けられ、前記翼根部の前記金属部材が当接する面とは異なる面に当接する第2の金属部材をさらに備えることが好ましい。
【0011】
この構成により、複合材料翼に遠心力が作用した際に、翼根部に変形が生じることを、より良好に抑制できる。
【0012】
また、前記第2の金属部材は、前記固定部の前記基端側の面に当接し、前記固定部に前記金属部材と共に締結具によって取り付けられることが好ましい。
【0013】
この構成により、金属部材と第2の金属部材とによって翼根部を挟み込むことになるため、複合材料翼に遠心力が作用した際に、翼根部に変形が生じることを、さらに良好に抑制できる。また、第2の金属部材を金属部材と共に締結具によって固定部に取り付けることで、固定部に形成される締結具用の締結孔を少なくし、翼根部の強度低下を抑制できる。
【0014】
また、前記複合材料層を複数積層して形成され、前記第2の金属部材と前記湾曲部との間に設けられた追加積層体をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成により、第2の金属部材の大きさを低減し、複合材料翼の軽量化を図ることができる。
【0016】
また、前記追加積層体は、強化繊維が長手方向および前記翼厚方向と直交する方向に沿って延在することが好ましい。
【0017】
この構成により、追加積層体の複合材料層を湾曲部と第2の金属部材との間に、隙間なく充填することができる。
【0018】
また、前記湾曲部に設けられ、前記複合材料層の損傷を検出するセンサをさらに備えることが好ましい。
【0019】
この構成により、複合材料翼に対して遠心力が作用した際に、特に応力が高まりやすく、過大な引張荷重の作用や長期運転によって損傷が発生しやすい翼根部の湾曲部近傍の損傷を、リアルタイムで検出することができる。
【0020】
また、前記湾曲部の下部において前記第2の金属部材に設けられ、前記複合材料層の損傷を検出するセンサをさらに備えることが好ましい。
【0021】
この構成により、第2の金属部材を設ける場合にも、特に応力が高まりやすい翼根部の湾曲部近傍の損傷を、速やかに検出することができる。
【0022】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、強化繊維に樹脂が含浸された複合材料層を翼厚方向に積層して形成され、基端側に設けられる翼根部と、前記翼根部の先端側から延びる翼形部とを備えた複合材料翼の製造方法であって、前記翼根部となる前記複合材料層を複数積層する積層ステップと、前記翼根部を成形する硬化ステップと、前記翼根部に金属部材を固定する組立ステップと、を備え、前記翼根部は、本体部と、前記本体部から前記翼厚方向の外側に向かって湾曲する湾曲部と、前記湾曲部から前記翼厚方向の外側に向かって延びる固定部とを有し、前記組立ステップは、前記金属部材を前記翼根部の表面層に当接させ、締結具によって前記固定部に取り付けることを特徴とする。
【0023】
この構成により、翼根部の表面層に、翼厚方向の外側に広がる方向に傾斜した外面を有する金属部材を取り付けることで、翼根部を翼形部より外側に広げたダブテール形状とする必要がなくなる。すなわち、金属部材の外面が、このダブテール形状を満たすことになる。そのため、翼根部を翼厚方向の外側に広げ、かつ、広げた分だけ複合材料層の追加積層を行う必要がない。それにより、追加積層によるプライドロップの領域を発生させることなく、翼根部を形成することができる。したがって、本発明によれば、翼根部の強度低下を抑制可能な複合材料翼の製造方法を提供することができる。
【0024】
また、前記組立ステップは、第2の金属部材を前記固定部の基端側の面に当接させ、前記金属部材および前記第2の金属部材を前記締結具によって前記固定部に取り付けることが好ましい。
【0025】
この構成により、金属部材と第2の金属部材とによって翼根部を挟み込むことになるため、複合材料翼に遠心力が作用した際に、翼根部に変形が生じることを、さらに良好に抑制できる。また、第2の金属部材を金属部材と共に締結具によって固定部に取り付けることで、固定部に形成される締結具用の締結孔を少なくし、翼根部の強度低下を抑制できる。
【0026】
また、前記積層ステップの後、前記硬化ステップの前に、前記第2の金属部材の表面形状に沿った板状部材を前記翼根部の前記湾曲部の下部に配置し、前記板状部材の上に、前記複合材料層を複数積層した追加積層体を形成する追加積層ステップをさらに備えることが好ましい。
【0027】
この構成により、第2の金属部材の大きさを低減し、複合材料翼の軽量化を図ることができる。また、第2の金属部材の表面形状に沿った板状部材を用いることで、追加積層体の形状を第2の金属部材の表面形状に容易にあわせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明にかかる複合材料翼および複合材料翼の製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる複合材料翼の概略を示す模式図である。第1実施形態にかかる複合材料翼100は、ガスタービンの動翼である。複合材料翼100が用いられるガスタービンは、例えば航空機用のエンジンに用いられるものであるが、例えば発電用のガスタービンなど、任意の用途に用いられるものであってよい。
【0031】
図1に示すように、複合材料翼100は、先端100aから基端100bまで延在している。複合材料翼100は、基端100b側においてタービンディスク2に取付けられている。ここで、
図1に示す方向Zは、複合材料翼100が延在する方向、すなわち先端100aから基端100bまでに沿った方向である。方向Zは、複合材料翼100の長手方向である。また、方向Zは、タービンディスク2の径方向(放射方向)に相当する。方向Yは、方向Zに直交する方向であって、タービンディスク2の軸方向に沿った方向である。方向Xは、方向Y及び方向Zに直交する方向であり、タービンディスク2の周方向接線に沿った方向である。
【0032】
複合材料翼100は、翼形部10と翼根部11とを有する。翼形部10は、タービンディスク2の回転に伴ってガスタービン内を流れるガスを圧縮する翼である。翼形部10は、先端100aから翼形端部10aまで複合材料翼100の方向Z(長手方向)に沿って捻じれながら延びる。翼根部11は、翼形部10の末端である翼形端部10aに設けられる。言い換えると、翼形部10は、翼根部11の先端100a側から方向Zに沿って延在する。
【0033】
図2は、複合材料翼を方向Yから見た断面図である。複合材料翼100は、上記翼形部10および翼根部11が、複合材料層20を翼厚方向に沿って複数積層した積層体により構成される。「翼厚方向」は、翼形部10の翼根部11に対する付根部分である翼形端部10aにおける複合材料翼100の翼厚方向であり、方向X(
図2の左右方向)を意味する。以下、翼厚方向を方向Xと称して説明する。また、以下の説明では、方向Xにおける複合材料翼100の表面側を「外側」と称する。
【0034】
図3は、複合材料層の構成を示す模式図である。複合材料層20は、強化繊維21に樹脂22を含浸させた複合材の層である。各複合材料層20は、
図3に示すように、強化繊維21が方向Zに沿って複数設けられており、強化繊維21の周囲に樹脂22が充填されている。複合材料層20は、隣接する(積層された)複合材料層20と、樹脂22同士が接着することで、樹脂22の部分が他の複合材料層20と一体化している。そのため、複合材料層20は、強化繊維21と、強化繊維21の周囲の樹脂22とが存在する層である。なお、複合材料層20は、
図3に示した強化繊維21とは異なる方向に延在する他の強化繊維を有してもよい。その場合、他の強化繊維は、強化繊維21に対して織り込まれてもよい。なお、
図2においては、模式的に、複合材料層20を中心線L1の片側において4層ずつ記載している。
【0035】
第1実施形態において、強化繊維21は、炭素繊維が用いられた炭素繊維強化プラスチックス(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)である。ただし、強化繊維21は、炭素繊維に限定されず、その他のプラスチック繊維、ガラス繊維又は金属繊維でもよい。また、樹脂22は、例えば熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。なお、樹脂22は、これらに限定されず、その他の樹脂を用いてもよい。
【0036】
ここで、タービンディスク2は、
図1に示すように、周方向に沿って互いに間隔を空けて形成された複数の溝部2aを有している。複合材料翼100は、翼根部11において溝部2a内に取付けられることにより、タービンディスク2に取付け及び固定される。そして、複合材料翼100は、
図2に示すように、タービンディスク2の溝部2aに取り付けられた際に、翼根部11と溝部2aとの間に介在する金属部材30と、金属部材30を翼根部11に締結するボルト40(締結具)とを備えている。以下、複合材料翼100を溝部2aに取り付けるための翼根部11および金属部材30の構成について、
図2を参照しながら、より詳細に説明する。
【0037】
(翼根部11)
第1実施形態において、翼根部11は、複数の複合材料層20を翼形部10と共有している。すなわち、翼根部11を構成する各複合材料層20は、翼形部10から連続的に延在する。また、第1実施形態において、翼根部11は、
図2に示すように、方向Xにおいて中心線L1に対して略対称な形状に形成される。以下の説明では、適宜、翼根部11の中心線L1に対して図中左側に配置される部分を翼根部11Aと称し、翼根部11の中心線L1に対して図中右側に配置される部分を翼根部11Bと称する。
【0038】
翼根部11A、11Bは、本体部111と、湾曲部112と、固定部113とを有している。本体部111は、翼形部10から連続して方向Zに延在する。湾曲部112は、本体部111の基端100b側から、方向Xの外側に向かって湾曲する。第1実施形態において、湾曲部112は、本体部111に対して概ね90°程度の角度をなす位置まで湾曲する。固定部113は、湾曲部112の本体部111とは反対側から、さらに、方向Xの外側に向かって延びる部分である。したがって、第1実施形態において、翼根部11A、11Bは、方向Yからみた断面上で略L字形状を呈する。そのため、翼根部11A、11Bを中心線L1で一体化させた翼根部11は、方向Yからみた断面上で略T字形状を呈することになる。また、翼根部11A、11Bの固定部113には、後述するボルト40を挿通可能な締結孔113aが、各複合材料層20を貫通して形成されている。締結孔113aは、固定部113に、方向Yに沿って互いに間隔を空けて複数形成される。
【0039】
(金属部材30)
金属部材30は、金属材料により形成される。金属部材30は、翼根部11Aと溝部2aとの間および翼根部11Bと溝部2aとの間に、1つずつ設けられる。金属部材30は、内面31が翼根部11(11A、11B)の表面層20aの表面形状に沿った形状を呈している。そのため、金属部材30は、内面31が、本体部111、湾曲部112および固定部113と同様に、方向Yからみた断面上で略L字形状を呈する。また、金属部材30は、外面32が、溝部2aの側面形状に沿った形状を呈している。第1実施形態において、溝部2aは、
図2に示すように、タービンディスク2の外周面から方向Zに延びる側面2bと、側面2bから方向Xにおいて外側に広がる方向に延びる傾斜面2cとを有している。そのため、金属部材30の外面32は、側面2bに当接可能に形成された側面32aと、傾斜面2cに当接可能となるように方向Xの外側に広がる方向に延びる傾斜面32bとを有する。また、金属部材30は、翼根部11A、11Bの固定部113に形成された締結孔113aと対応する位置に、後述するボルト40を締結可能な締結孔30aが複数形成されている。
【0040】
(翼根部11と金属部材30との固定)
翼根部11と金属部材30とは、締結具としてのボルト40によって固定される。上述したように、翼根部11A、11Bの固定部113に形成された締結孔113aと、各金属部材30に形成された締結孔30aとに、ボルト40が締結されることにより、翼根部11A、11Bと各金属部材30とが固定される。
【0041】
(損傷検出センサ)
また、第1実施形態において、翼根部11A、11Bの湾曲部112には、損傷検出センサ50が取り付けられている。損傷検出センサ50は、例えば、薄膜UT(Ultrasonic Testing:超音波探傷試験)センサであり、湾曲部112の近傍において、各複合材料層20内の損傷の有無を検出可能なセンサである。なお、損傷検出センサ50は、各複合材料層20内の損傷の有無を検出可能なセンサであり、溝部2a内で湾曲部112に取り付けることさえできれば、いかなるセンサであってもよい。
【0042】
次に、第1実施形態にかかる複合材料翼の製造方法について説明する。
図4は、第1実施形態にかかる複合材料翼の製造方法の手順を示す説明図である。第1実施形態にかかる複合材料翼の製造方法は、積層ステップS10と、型合わせステップS20と、硬化ステップS30と、組立ステップS40とを備える。
【0043】
積層ステップS10は、翼根部11となる複合材料層20を複数積層するステップである。第1実施形態では、翼形部10と翼根部11とで各複合材料層20が連続的に延在するため、積層ステップS10は、翼形部10および翼根部11となる複合材料層20を複数積層するステップであるといえる。なお、積層ステップS10において、複合材料層20は、樹脂22が未硬化の状態、すなわちプリプレグである。
【0044】
積層ステップS10では、翼形部10および翼根部11となる積層体100A、100Bを半分ずつ形成する。積層ステップS10では、まず、基台1上に複数の複合材料層20を積層し、積層体100Aを形成する。このとき、基台1を予め略L字型の表面形状としておくことで、積層体100Aの翼根部11となる部分に、本体部111と、湾曲部112と、固定部113とを形成することができる。また、各複合材料層20は、積層された状態で固定部113に締結孔113aが形成されるように、対応した位置に予め孔部が形成されている。なお、締結孔113aは、後述する硬化ステップS30の後に、固定部113に加工を施して形成されるものであってもよい。同様に、他の基台1上に複数の複合材料層20を積層し、上記翼根部11Bを含む積層体100B(ステップS20参照)を形成する。
【0045】
次に、型合わせステップS20として、半分ずつ形成された積層体100Aと積層体100Bとを型合わせさせる。型合わせステップS20が終了すると、硬化ステップS30を行う。硬化ステップS30は、型合わせさせた積層体100Aと積層体100Bとにおいて未硬化の樹脂22を硬化させることにより、複合材料翼100を成形するステップである。硬化ステップS30では、例えば、複合材料翼100の未硬化体をバギング材150で覆って真空引きした後、オートクレーブ炉内で加圧及び加熱することで、樹脂22を硬化させる。これにより、翼形部10および翼根部11の硬化体が成形される。なお、硬化ステップS30では、樹脂22を硬化させて翼形部10および翼根部11の硬化体を成形するものであれば、その成形方法はこれに限られない。
【0046】
次に、組立ステップS40を行う。組立ステップS40は、金属部材30を固定部113に取り付けるステップである。より詳細には、
図4に実線矢印で示すように、硬化ステップS30で成形した翼根部11A、11Bの表面層20aに、金属部材30の内面31を当接させる。次に、
図4に破線矢印で示すように、固定部113の各締結孔113aおよび金属部材30の各締結孔30aにボルト40を締結する。それにより、翼根部11A、11Bと金属部材30とが固定され、複合材料翼100が製造される。なお、損傷検出センサ50は、組立ステップS40の後に湾曲部112に取り付けてもよいし、硬化ステップS30の後に湾曲部112に取り付けてもよい。このようにして製造された複合材料翼100は、タービンディスク2の溝部2aに、溝部2aの延在方向である方向Yに沿って挿入することで、タービンディスク2に取り付けることができる。
【0047】
以上説明したように、第1実施形態にかかる複合材料翼100および複合材料翼の製造方法は、翼根部11の表面層20aに、方向X(翼厚方向)の外側に広がる方向に傾斜した外面32を有する金属部材30を取り付けることで、翼根部11を翼形部10より外側に広げたダブテール形状とする必要がなくなる。すなわち、金属部材30の外面32が、このダブテール形状を満たすことになる。複合材料翼100がタービンディスク2の溝部2aに取り付けられた状態では、金属部材30が溝部2aと翼根部11の表面層20aとの間に介在し、金属部材30の傾斜面32bと溝部2aの傾斜面2cとが当接することで、複合材料翼100が溝部2aから抜け出ることが抑制される。そのため、翼根部11を方向Xの外側に広げ、かつ、広げた分だけ複合材料層20の追加積層を行う必要がない。それにより、追加積層によるプライドロップの領域(樹脂22のみが存在する領域)を発生させることなく、翼根部11を形成することができる。したがって、第1実施形態にかかる複合材料翼100および複合材料翼の製造方法によれば、翼根部11の強度低下を抑制可能な複合材料翼100を提供することができる。
【0048】
そして、翼根部11の固定部113に金属部材30をボルト40(締結具)によって固定することで、翼根部11が溝部2aから抜け出ることを抑制できる。
【0049】
また、複合材料翼100に遠心力Fが作用した際、翼根部11が先端100a側(
図2の上側)に引っ張られるため、翼根部11は、本体部111に対する湾曲部112の角度が鈍角になる方向に変形しようする(湾曲部112が溝部2aに接近する方向に移動しようとする)。複合材料翼100は、翼根部11の表面層20aと溝部2aとの間に金属部材30を介在させるため、この翼根部11の変形を抑制することができる。さらに、翼根部11A、11Bが略L字型形状を呈し、中心線L1に対して互いに向かいあって配置されるため、複合材料翼100に遠心力Fが作用した際に、翼根部11A、11Bが互いの移動を規制しあうことになる。それによっても、翼根部11に変形が生じることが抑制される。
【0050】
また、翼根部11の表面層20aと溝部2aとの間に金属部材30を介在させることで、金属材料により形成される翼をタービンディスク2の溝部2aに取り付けた場合と同様に、複合材料翼100をタービンディスク2に安定的に取り付けることができる。さらに、溝部2aと金属部材30とが摺動したとしても、摺動面が金属面となることから、金属材料により形成される翼と同様に取り扱うことができる。
【0051】
また、複合材料翼100に遠心力Fが作用した際、金属部材30の傾斜面32bが溝部2aの傾斜面2cから力を受けることで、2つの金属部材30に挟み込まれた翼根部11には、2つの金属部材30から圧縮力が作用することになる。その結果、例えば金属部材30が傾斜面32bを有さない場合に比べて、翼根部11に対する金属部材30からの面圧が大きくなり、翼根部11と2つの金属部材30とが一体的な部材(ダブテール部)として機能して遠心力Fを受ける。それにより、遠心力Fのうち、金属部材30が負担する分力を大きくし、一方で翼根部11が負担する分力を小さくすることができる。したがって、複合材料翼100は、より大きな遠心力Fに耐えることが可能となる。
【0052】
また、翼根部11を形成する複合材料層20は、翼形部10から連続して延在することが好ましい。
【0053】
この構成により、複合材料層20の追加積層を行うことなく翼根部11が形成されるため、追加積層によるプライドロップの領域を発生させないようにして、翼根部11の強度低下を抑制することができる。
【0054】
また、湾曲部112に設けられ、複合材料層20の損傷を検出する損傷検出センサ50をさらに備える。
【0055】
この構成により、複合材料翼100に対する遠心力Fが作用した際に、特に応力が高まりやすく、過大な引張荷重の作用や長期運転によって損傷が発生しやすい翼根部11の湾曲部112近傍の損傷を、リアルタイムで検出することができる。そのため、複合材料翼100をタービンディスク2に取り付けたまま、複合材料翼100の寿命判定を行うことが可能となり、検査工程を省略することができる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる複合材料翼200について説明する。
図5は、第2実施形態にかかる複合材料翼を方向Yから見た断面図である。第2実施形態にかかる複合材料翼200は、複合材料翼100の構成に加えて、第2の金属部材60を備えている。複合材料翼200の他の構成は、複合材料翼100と同様であるため、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0057】
第2の金属部材60は、翼根部11において、金属部材30が当接する表面層20aとは異なる面に当接する。第2実施形態において、第2の金属部材60は、
図5に示すように、上面60aが、湾曲部112の基端100b側の下面112bおよび固定部113の基端100b側の下面113bに沿った形状を呈しいている。第2の金属部材60は、上面60aが下面112b、113bに当接する。また、第2の金属部材60は、上面60aから下面60bまでを貫通する複数の締結孔60cが形成されている。複数の締結孔60cは、上述した締結孔30aおよび締結孔113aに対応した位置に形成されている。つまり、第2の金属部材60が下面112b、113bに当接した状態では、締結孔30a、締結孔113aおよび締結孔60cが連続的に形成された一つの締結孔となる。
【0058】
また、第2実施形態において、第2の金属部材60の下面60bには、上述した損傷検出センサ50が取り付けられている。損傷検出センサ50は、
図5に示すように、湾曲部112の下部に設けられる。すなわち、損傷検出センサ50は、方向Xにおいて湾曲部112と重なる位置に設けられる。
【0059】
次に、第2実施形態にかかる複合材料翼の製造方法について、
図6を参照しながら説明する。
図6は、第2実施形態にかかる複合材料翼の製造方法における組立ステップを示す説明図である。第2実施形態にかかる複合材料翼の製造方法は、第1実施形態にかかる複合材料翼の製造方法における組立ステップS40に代えて、組立ステップS41を備えている。第2実施形態において、積層ステップS10、型合わせステップS20および硬化ステップS30は、
図4に示すものと同様であるため、説明を省略する。
【0060】
第2実施形態において、組立ステップS41は、
図6に実線矢印で示すように、硬化ステップS30で成形した翼根部11A、11Bの表面層20aに、金属部材30の内面31を当接させると共に、第2の金属部材60を下面112b、113bに当接させる。次に、
図6に破線矢印で示すように、締結孔30a、締結孔113aおよび締結孔60cにボルト40を締結する。それにより、翼根部11A、11Bと金属部材30および第2の金属部材60とが固定され、複合材料翼200が製造される。
【0061】
以上説明したように、第2実施形態にかかる複合材料翼200は、翼根部11にボルト40(締結具)によって取り付けられ、翼根部11の金属部材30が当接する面とは異なる面に当接する第2の金属部材60をさらに備える。
【0062】
この構成により、複合材料翼200に遠心力Fが作用した際に、翼根部11に変形が生じることを、より良好に抑制できる。
【0063】
また、第2の金属部材60は、固定部113の基端100b側の下面113bに当接し、固定部113に金属部材30と共にボルト40によって取り付けられる。
【0064】
この構成により、金属部材30と第2の金属部材60とによって翼根部11を挟み込むことになるため、複合材料翼200に遠心力Fが作用した際に、翼根部11に変形が生じることを、さらに良好に抑制できる。また、第2の金属部材60を金属部材30と共にボルト40によって固定部113に取り付けることで、固定部113に形成されるボルト40用の締結孔113aを少なくし、翼根部11の強度低下を抑制できる。
【0065】
また、湾曲部112の下部において第2の金属部材60に設けられ、複合材料層20の損傷を検出する損傷検出センサ50をさらに備える。
【0066】
この構成により、第2の金属部材60を設ける場合にも、特に応力が高まりやすい翼根部11の湾曲部112近傍の損傷を、リアルタイムに検出することができる。
【0067】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態にかかる複合材料翼300について説明する。
図7は、第3実施形態にかかる複合材料翼を方向Yから見た断面図である。第3実施形態にかかる複合材料翼300は、第2実施形態にかかる複合材料翼200の第2の金属部材60に代えて、第2の金属部材70を備えている。また、複合材料翼300は、第2実施形態にかかる複合材料翼200の構成に加えて、追加積層体80を備えている。複合材料翼300の他の構成は、複合材料翼200と同様であるため、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0068】
第2の金属部材70は、
図7に示すように、固定部113の基端100b側の下面113bに沿って延びる形状を呈した上面71aを有している。また、上面71a同士の間を延びる上面72aは、湾曲部112の基端100b側の下面112bよりも緩やかな角度で、上面71aから山型に突出した形状を呈している。そのため、第2の金属部材70を固定部113の下面113bに当接させた状態では、上面72aと湾曲部112の下面112bとの間に、方向Yに沿って延びる隙間G1が形成されることになる。また、第2の金属部材70は、第2の金属部材60と同様に、上面71aから下面70bまでを貫通する複数の締結孔70cが形成されている。
【0069】
追加積層体80は、複合材料層20を複数積層して形成された積層体である。追加積層体80は、第2の金属部材70の上面72aと湾曲部112の下面112bとの間に形成された隙間G1に設けられる。第2実施形態において、追加積層体80は、強化繊維21が方向Z(長手方向)および方向X(翼厚方向)と直交する方向Yに沿って延在する。
【0070】
次に、第3実施形態にかかる複合材料翼の製造方法について、
図8を参照しながら説明する。
図8は、第3実施形態にかかる複合材料翼の製造方法における追加積層ステップを示す説明図である。第3実施形態にかかる複合材料翼の製造方法は、第2実施形態にかかる複合材料翼の製造方法の各ステップに加えて、追加積層ステップS25をさらに備えている。
【0071】
追加積層ステップS25は、積層ステップS10および型合わせステップS20の後、硬化ステップS30の前に行われる。追加積層ステップS25は、型合わせステップS20において型合わせされた積層体100Aおよび積層体100Bに、上述した追加積層体80を追加積層するステップである。より詳細には、追加積層ステップS25では、
図8のステップS251に示すように、型合わせされた積層体100Aおよび積層体100Bの湾曲部112および固定部113の下側に、板状部材90を配置する。板状部材90は、上述した第2の金属部材70の上面71a、72aに沿った形状を呈している。そのため、板状部材90を固定部113に当接させた状態では、板状部材90と湾曲部112との間には、方向Yに沿って、上述した隙間G1と同じ形状の隙間G2が形成される。そして、
図8のステップS252に示すように、この隙間G2に、追加積層体80を積層する。このとき、追加積層体80の強化繊維21は、上述したように方向Yに沿った方向に延在させる。このように、第2の金属部材70の表面形状に沿った板状部材90を用いることで、追加積層体80の形状を第2の金属部材70の表面形状に容易にあわせることができる。
【0072】
以降、
図4に示す硬化ステップS30と同様の手法により、積層体100A、100Bおよび追加積層体80を形成し、
図6に示す組立ステップS41と同様の手順で金属部材30および第2の金属部材70を取り付ける。これにより、複合材料翼300が形成される。
【0073】
以上説明したように、第3実施形態にかかる複合材料翼300は、複合材料層20を複数積層して形成され、第2の金属部材70と湾曲部112との間に設けられた追加積層体80をさらに備える。
【0074】
この構成により、第2の金属部材70の大きさを低減し、複合材料翼300の軽量化を図ることができる。
【0075】
また、追加積層体80は、強化繊維21が方向Z(長手方向)および方向X(翼厚方向)と直交する方向Yに沿って延在する。
【0076】
この構成により、追加積層体80の複合材料層20を湾曲部112と第2の金属部材70との間に、隙間なく充填することができる。
【0077】
なお、第1実施形態から第3実施形態において、損傷検出センサ50は、省略してもよい。また、損傷検出センサ50は、固定部113に形成された締結孔113aの近傍に設けられてもよい。
【0078】
また、第2実施形態において、第2の金属部材60は、例えば、翼根部11の方向Yにおける側面に取り付けられてもよい。この場合、第2の金属部材60は、翼根部11のいずれかの位置に締結具によって固定されればよい。このような構成によっても、第2の金属部材60によって翼根部11が変形することを抑制できる。