(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の接着シートを、添付の図面を参照し、実施形態を示して説明する。
図1は、本発明の一実施形態の熱硬化性接着シート1を模式的に示す断面図である。
本実施形態の熱硬化性接着シート1は、粘着剤3と、未硬化の熱硬化性樹脂の粒子5とから構成される。粒子5は、粘着剤3に分散している。
【0010】
熱硬化性接着シート1の一方の表面(以下、「第一面」ともいう。)1aにおいては、粒子5が部分的に粘着剤3から突出している。これにより、第一面1aは凹凸のある形状になっている。
熱硬化性接着シート1の第一面1a側とは反対側の表面(以下、「第二面」ともいう。)1bにおいては、粒子5は粘着剤3から突出しておらず、第二面1bは平坦な形状になっている。
つまり、熱硬化性接着シート1の第一面1aは粒子5の露出が多くて粘着剤3の露出が少なく、第二面1bは粘着剤3の露出が多い構成となっている。
【0011】
熱硬化性接着シート1の第二面1bは、粘着剤3の露出が多いため、粘着性(タック)を有し、例えば接着対象の部材に常温で貼付可能となっている。これに対し、第一面1aは、粒子5の露出が多くて粘着剤3の露出が少ないため、常温では、粘着性を有さないタックフリーであり、人間の手、切断具、貼り付け器具等が接触したときに付着しにくくなっている。
【0012】
<粘着剤>
粘着剤3としては、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、アクリロニトリルブタジエン共重合体(ニトリルゴム)系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。また、粘着剤3は、どのような形態を有している粘着剤であってもよく、例えば、溶剤型粘着剤、熱溶融型粘着剤(ホットメルト型粘着剤)等が挙げられる。
【0013】
ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、多硫系合成ゴム、ウレタンゴム、ふっ素ゴム、シリコーンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム成分をベースポリマーとして含むゴム系粘着剤等が挙げられる。これらの粘着剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0014】
ゴム系粘着剤としては、ベースポリマーがアクリルゴムであるアクリルゴム系粘着剤が好ましい。
アクリルゴム系粘着剤におけるアクリルゴムとしては、特に制限されないが、主構成単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含有するアクリル系重合体が好ましい。
「主構成単位」とは、重合体を構成する構成単位(単量体単位)のうち主たるものを意味する。
「(メタ)アクリル酸アルキルエステル」は、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの総称である。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0016】
アクリル系重合体中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の割合は、アクリル系重合体を構成する構成単位の全モル数に対して、50モル%以上が好ましく、70〜99モル%がより好ましく、90〜98モル%がさらに好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位の割合が50モル%以上であれば、アクリル系重合体としての特性(粘着性など)が発現しやすい。
【0017】
アクリル系重合体は、架橋性官能基含有モノマー単位をさらに含有してもよい。これにより、アクリル系重合体が架橋点を有するものとなる。
架橋性官能基は、架橋点となる官能基であり、例えばカルボキシ基、カルボン酸無水物残基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、シアノ基、窒素原子含有環式基等が挙げられる。
【0018】
架橋性官能基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合が可能であり、且つ架橋性官能基を有しているものであれば特に制限されない。このような架橋性官能基含有モノマー(特に、アクリル系重合体に熱架橋する架橋点を導入させるための熱架橋性官能基含有モノマー)としては、各種の官能基含有モノマー成分から適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イソクロトン酸等のカルボキシ基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イコタン酸等のカルボン酸無水物残基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル[例えば(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル等]、ビニルアルコール、アリルアルコール等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等のアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル等のエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、N−メチルビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−(メタ)アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環を有するモノマー;等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
架橋性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸等のカルボキシ基含有モノマー、カルボン酸無水物残基含有モノマー又はエポキシ基含有モノマーが好ましい。
【0019】
アクリル系重合体中の架橋性官能基含有モノマー単位(特に熱架橋性官能基含有モノマー単位)の割合は、アクリル系重合体を構成する構成単位の全モル数に対して、1〜30モル%が好ましく、1〜20モル%がより好ましく、2〜10モル%がさらに好ましい。
【0020】
アクリル系重合体は、必要に応じて、例えばアクリル系重合体の凝集力を高めるために、他の共重合性モノマー単位をさらに含有してもよい。
他の共重合性モノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び架橋性官能基含有モノマー以外のモノマーであり、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、シクロペンチルジ(メタ)アクリレート等]、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の非芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニル等]、(メタ)アクリル酸アリールオキシアルキルエステル[(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等]、(メタ)アクリル酸アリールアルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルエステル等]等の芳香族性環含有(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のオレフィン系モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシ基含有モノマー;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー;等が挙げられる。
【0021】
アクリル系重合体の質量平均分子量(Mw)は、1000〜300万が好ましく、1万〜150万が特に好ましい。Mwが前記範囲の下限値以上であれば、Mwが前記範囲の下限値以上であれば、タック性(粘着性)に優れ、上限値以下であれば、シート、フィルム状での強度に優れ、接着シートの取り扱い性が良好になる。アクリル系重合体のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算で測定される。
アクリル系重合体のガラス転移温度は、熱硬化性接着シート1の第二面1bだけに粘着性を発現させる点で、−100℃〜50℃が好ましく、−50℃〜40℃が特に好ましい。
【0022】
アクリル系粘着剤は、アクリル系重合体を主成分又はベースポリマーとして含む。
アクリル系粘着剤におけるアクリル系重合体としては、特に制限されないが、主構成単位として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単位を含有するものが好ましい。かかるアクリル系重合体としては、アクリルゴム系粘着剤の説明で挙げたものと同様のものが挙げられる。ただしアクリル系粘着剤におけるアクリル系重合体はアクリルゴムではない。
【0023】
粘着剤3には、主成分又はベースポリマーである重合体の他、必要に応じて、例えば、粘着付与樹脂、充填剤、難燃剤、老化防止剤、帯電防止剤、軟化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、可塑剤、界面活性剤等の公知の添加剤等が含まれていてもよい。
【0024】
粘着剤3は、常温でタックのあるものが好ましい。
粘着剤3には、粘着性を損なわない程度に、熱硬化性樹脂が含まれていてもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、キシレン樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、イソシアナート樹脂、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、ナジイミド樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらは単独で用いる他、適宜混合したり、酸無水物、ポリアミン、イソシアネート、イミダゾール類等の硬化剤を併用したり、有機過酸化物等の反応促進剤を添加してもよい。
粘着性を付与するため、常温液状の上記の熱硬化樹脂を含有させてもよい。
粘着剤3の主成分又はベースポリマーである重合体と熱硬化性樹脂との質量比は、重合体/熱硬化性樹脂=100/0〜20/80が好ましく、100〜50/50が特に好ましい。
【0025】
<未硬化の熱硬化性樹脂の粒子>
粒子5は、未硬化の熱硬化性樹脂からなる。
「未硬化の熱硬化性樹脂」とは、いわゆるBステージ以前の状態の熱硬化性樹脂をさす。具体的には、加熱により流動状態を経由して硬化にいたることのできる状態の熱硬化性樹脂をいう。つまり未硬化の熱硬化性樹脂は、融点を有しており、融点以上の温度に加熱すると溶融物となり、さらに加熱することで硬化物となる。
したがって、熱硬化性接着シート1を、粒子5を構成する未硬化の熱硬化性樹脂の融点以上の温度に加熱すると、粒子5が溶融して流動状態となる。流動状態となった未硬化の熱硬化性樹脂と粘着剤3とが混和し、熱硬化性樹脂シート1が通常の熱硬化性接着剤と同様の性状を示すようになる。また、第一面1aにもタックが発現する。その後、さらに加熱を行うことで、熱硬化性接着シート1が硬化する。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いる他、適宜混合したり、酸無水物、ポリアミン、イソシアネート、イミダゾール類等の硬化剤を併用したり、有機過酸化物等の反応促進剤を添加してもよい。
エポキシ樹脂は、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ナフタレン型、ビフェニル型、ジシクロペンタジエン型のものが特に好ましい。
フェノール樹脂としては、具体的にはアルキルフェノール型、p−フェニルフェノール型、ビスフェノールA型等のノボラックフェノール樹脂およびレゾールフェノール樹脂が好ましい。
イミド樹脂としては、アミドイミド樹脂、マレイミド樹脂、ナジイミド樹脂が好ましい。
【0027】
熱硬化性樹脂としては、その熱硬化性樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融させたときに、粘着剤3と相溶するものが好ましい。これにより、熱硬化性接着シート1を熱硬化性樹脂の融点以上の温度に加熱したときに、粒子5が溶融する。粒子5が溶融することで、第一面1aにもタックが発現する。また、溶融した熱硬化性樹脂と粘着剤3とが相溶して均一な組成物となり、硬化させたときに優れた接着強度が得られやすい。
【0028】
熱硬化性樹脂の融点以上の温度に加熱したときに相溶する、熱硬化性樹脂と粘着剤との具体的な組み合わせとしては、例えば以下の組み合わせが挙げられる。
【0029】
粒子5の形状は特に限定されず、例えば球状、真球状、無定形、針状、繊維状、板状などでもよい。これらは2種類以上組み合わせて使用してもよい。
粒子5の平均粒子径に関しても特に制限はないが、0.01μm〜200μmのものが、シート両面間の貼付特性を制御しやすく好適である。
【0030】
熱硬化性接着シート1中、粘着剤3の100質量部に対する粒子5の割合は、60〜400質量部が好ましく、100〜300質量部がより好ましい。粒子5の割合が60質量部未満であれば、第一面1aに占める粒子5の割合が少なくなり、第二面1bだけでなく第一面1aにもタックが発現するおそれがある。また、熱硬化性接着シートの硬化性が不充分になり、熱硬化後に、熱硬化性接着シートを用いて接着した部材の間(例えば金属部品と摩擦材との間)で剥離が生じるおそれがある。粒子5の割合が400重量部より多いと、シート化が困難になる。
熱硬化性接着シート1全体に対する粒子5の割合は、25〜95体積%であることが好ましく、30〜80体積%がより好ましい。粒子5の割合が25体積%未満であれば、第一面1aに占める粒子5の割合が少なくなり、第二面1bだけでなく第一面1aにもタックが発現するおそれがある。第一面1aにもタックが発現すると、熱硬化性接着シートの硬化性が不充分になり、熱硬化後に、熱硬化性接着シートを用いて接着した部材の間(例えば金属部品と摩擦材との間)で剥離が生じるおそれがある。一方、粒子5の割合が95体積%より多いと、シート化が困難になる。
【0031】
熱硬化性接着シート1の厚さは、特に限定されず、用途等に応じて適宜設定できる。例えば1〜2000μm程度とすることができる。
【0032】
<熱硬化性接着シートの製造方法>
熱硬化性接着シート1の製造方法としては、例えば、以下の工程を有する製造方法が挙げられる。
基材上に、粘着剤3と、未硬化の熱硬化性樹脂の粒子5と、粘着剤3を溶解し、粒子5を溶解しない溶剤とを含む液状の熱硬化性接着剤組成物を塗布し、乾燥させて熱硬化性接着シート1を形成する工程(以下、「工程(α1)」ともいう。)。
【0033】
基材上に前記熱硬化性接着剤組成物を塗布し、乾燥させると、熱硬化性接着剤組成物の塗膜が形成される。この塗膜の基材側の面(ベース面)は、ベース面に接触する基材によって粒子5の突出が抑えられているため、第二面1bとなる。塗膜のベース面と反対側の面(エア面)は、塗布直後は平坦な状態でも、乾燥時に、塗膜の粘着剤溶液部分の体積が減り、その一方で粒子5部分の体積は変化しないため、粒子5が次第に突出してゆき、第一面1aとなる。
【0034】
[熱硬化性接着剤組成物]
熱硬化性接着剤組成物における溶剤は、粘着剤3を溶解し、粒子5を溶解しないものであれば特に限定されず、粘着剤3、粒子5それぞれの材質に応じて公知の溶剤のなかから適宜選択できる。
粘着剤3、未硬化の熱硬化性樹脂の粒子5はそれぞれ前記と同じである。
工程(α1)を有する製造方法により熱硬化性接着シート1を製造する場合、粒子5を構成する未硬化の熱硬化性樹脂としては、工程(α1)で乾燥(溶剤を除去)する際の温度では溶融しないものが用いられる。具体的には、融点が溶剤の沸点よりも高い熱硬化性樹脂が用いられる。
【0035】
[基材]
基材としては、例えば剥離フィルム、剥離紙、その他の紙、不織布等が挙げられる。剥離フィルム、剥離紙としては、接着シートの特性を損なうものでなく、容易に剥離できるものであれば、いずれのものも使用できる。
剥離フィルムとしては、例えば樹脂フィルム、樹脂フィルムにシリコーン等の離型剤で剥離処理を施したもの等が挙げられ、剥離処理を施したものが好ましい。具体的には、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、シリコーン等で離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
剥離紙としては、例えば樹脂コート紙、紙にシリコーン等の離型剤で剥離処理を施したもの等が挙げられる。剥離紙として具体的には、ポリエチレンコート紙、ポリプロピレンコート紙、シリコーン離型紙等が挙げられる。
基材の厚さは、樹脂フィルムを母材に用いた剥離フィルムの場合は、10〜100μmが好ましく、紙を母材に用いた剥離紙の場合は、50〜200μmが好ましい。
【0036】
[工程(α1)]
工程(α1)では、基材上に、前記熱硬化性接着剤組成物を塗布し、乾燥させる。
塗布、乾燥はそれぞれ公知の方法により行うことができる。
例えば塗布方法としては、通常の塗工方式や印刷方式が挙げられる。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。
乾燥方法としては、加熱方式、蒸気圧方式等が挙げられる。加熱方式としては、熱方式、赤外線方式、ランプ方式等が挙げられる。蒸気圧方式としては、真空方式、凍結乾燥方式、超臨海方式等が挙げられる。加熱方式によって、溶剤を加熱乾燥する際の乾燥条件は特に制限はないが、60〜150℃の範囲で、使用する溶剤によって適宜調整することが望ましい。60℃よりも低温であると接着シート中に溶剤が残り易く、また溶剤の揮発に伴って塗布した熱硬化性接着剤組成物の温度が低下して結露が起こり、樹脂成分が相分離、あるいは析出する場合があるため好ましくない。150℃よりも高温であると、未硬化の熱硬化性樹脂の溶融および硬化が進行したり、急な温度上昇によって塗膜が荒れるため好ましくない。乾燥時間についても特に制限は無いが、実用性を考慮すると1〜10分の処理が好ましい。
【0037】
上記のようにして、熱硬化性接着シート1の第二面1bに基材が積層した積層体が得られる。
得られた積層体は、ロール状に巻き取ってもよい。熱硬化性接着シート1の第一面1aにタックがないため、第一面1aにさらに保護フィルムを設けなくても、第二面1bに基材が積層しただけの状態で熱硬化性接着シート1を巻き取ることが可能である。
工程(α1)の後、必要に応じて、前記積層体から基材を取り除く工程、前記積層体または熱硬化性接着シート1を切断する工程等を行ってもよい。
乾燥後の熱硬化性接着シート1には、基材側とは反対側に、セパレータ(保護層)として剥離フィルムまたは剥離紙を積層、ロール状に巻き取ることも可能である。剥離フィルムまたは剥離紙としては、前述に示した基材として使用できるものが好ましい。セパレータを有する基材付き熱硬化性接着シートを使用する際には、セパレータのみを剥離した後、熱硬化性接着シート1を基材から剥離して使用する。
【0038】
<作用効果>
熱硬化性接着シート1にあっては、粘着剤3に未硬化の熱硬化性樹脂の粒子5が分散し、分散した粒子5が、熱硬化性接着シート1の一方の表面において部分的に突出している。つまり、一方の面(第一面1a)は粒子5の露出が多くて粘着剤3の露出が少なく、他方の面(第二面1b)は粘着剤3の露出が多い構成となっている。
そのため、単層構造でありながら、第一面1aと第二面1bとで性状が異なる。具体的には、粘着剤3の露出が多い第二面1bは粘着性(タック)を有し、接着対象に対して常温貼付が可能である。対して第一面1aは粘着性を有さない。つまり第一面1aは、粘着剤3の露出が少なく、また、突出した粒子5によって、露出した粘着剤3と、人間の手、切断具、貼り付け器具等との密着が阻害される。そのため、人間の手、切断具、貼り付け器具等を第一面1aと接触させたときに、それらに第一面1aが付着しにくい。
【0039】
第二面1bが粘着性を有するため、熱硬化性接着シート1の第二面1bを、接着対象の部材(被着材)に常温で貼付(仮貼り)することができる。
第一面1aが粘着性を有さないため、第一面1aに人間の手、切断具、貼り付け器具等が付着しにくく、熱硬化性接着シート1からの基材(剥離フィルム等)の剥離、熱硬化性接着シート1の切断、熱硬化性接着シート1の仮貼り等の作業を行いやすい。また、仮貼りした熱硬化性接着シート1(および被着材)の取り扱い性も良好である。
また、粒子5が未硬化の熱硬化性樹脂であるため、熱硬化性接着シート1を、熱硬化性樹脂の融点以上に加熱すれば、粒子5が溶融し、熱硬化性接着シート1が通常の熱硬化性接着剤と同様の性状を示し、他の部材との接着が可能となる。特に、溶融した熱硬化性樹脂と粘着剤3とが相溶する場合、融点以上に加熱したときに熱硬化性樹脂と粘着剤3とが均一な組成物となり、これを硬化させたときに優れた接着強度が得られやすい。
また、熱硬化性樹脂の融点以上に加熱したときの熱硬化性接着シート1の粘性は低い。そのため、金属部品と摩擦材とを接着する際には、摩擦材を構成する繊維質間に前記組成物が浸透してアンカー効果を発現し、強力な接着強度を示すことができる。
【0040】
また、前記工程(α1)を有する製造方法にあっては、熱硬化性接着剤組成物中の粒子5が固形フィラーとして機能する。これにより熱硬化性接着剤組成物(塗料)に適度な粘性が付与され、厚い塗膜を形成することが可能となる。
粒子5以外の固形フィラーを用いた場合、厚い塗膜を形成することはできるが、熱硬化性接着シート1の接着力が低くなる問題がある。固形フィラーを含有させない場合、溶剤を多く入れると厚く塗れない問題があり、溶剤を少なくすると均一に塗れないか、又は全く塗れなくなる問題がある。
熱硬化性接着シート1を厚く構成できるため、貼り付け器具又は人の手による取り扱いが容易となる、コア材なし、支持体なしでも扱える等の利点も得られる。
【0041】
<用途>
熱硬化性接着シート1の用途は、特に限定されず、従来、熱硬化性接着シート(シート状の熱硬化性接着剤)が使用されている各種の用途に使用できる。
上述の効果を奏することから、熱硬化性接着シート1の用途としては、熱硬化させる前に、常温で仮貼りを行うプロセスが好適である。
熱硬化性接着シート1を用いて、常温で仮貼りを行うプロセスの一例として、下記の積層体の製造方法が挙げられる。
【0042】
第一の被着材と第二の被着材とが接着された積層体の製造方法であって、
常温下、熱硬化性接着シート1の第二面1b(粒子5が粘着剤3から突出している側とは反対側の表面)を、第一の被着材の表面に貼付する工程(1)と、
前記工程(1)の後、前記熱硬化性接着シートの第一面1a(粒子5が粘着剤3から突出している側の表面)に第二の被着材を接触させ、粒子5を構成する未硬化の熱硬化性樹脂の融点以上の温度に加熱し、硬化させる工程(2)と、
を有する積層体の製造方法。
【0043】
第一の被着材、第二の被着材はそれぞれ同じものでもよく異なるものであってもよい。
具体例としては、第一の被着材が自動車のドラムブレーキにおける金属部品で、第二の被着材が摩擦材である例が挙げられる。
【0044】
以上、本発明の接着シートについて、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、本発明の接着シートは、一方の表面が粘着性を有し、他方の表面が粘着性を有さないものであれば、熱硬化性接着シート1に限定されない。例えば熱硬化性でなくてもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
以下の各例で用いた材料を以下に示す。
【0046】
(未硬化の熱硬化性樹脂)
マレイミド樹脂:比重=1.4、融点(Tm)=160℃、平均粒子径6μm。
マレイミド樹脂:比重=1.4、Tm=160℃、平均粒子径70μm。
フェノール樹脂:レゾールフェノール樹脂、比重=1.2、Tm=135℃。
【0047】
(粘着剤主成分)
アクリルゴムA:エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体、単独で常温タックあり、ガラス転移温度(Tg)=0℃、重量平均分子量(Mw)=110×10
4。
アクリルゴムB:エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体、単独で常温タックあり、Tg=15℃、Mw=85×10
4。
アクリルゴムC:エポキシ基含有アクリル酸エステル共重合体、単独で常温タックあり、Tg=15℃、Mw=35×10
4。
アクリルゴムD:ヒドロキシル基およびカルボキシル基含有アクリル酸エステル共重合体、単独で常温タックあり、Tg=5℃、Mw=70×10
4。
アクリルゴムE:ヒドロキシル基含有アクリル酸エステル共重合体、単独で常温タックあり、Tg=−40℃、Mw=80×10
4。
ニトリルゴムF:アクリロニトリルブタジエン共重合体、単独で常温タックあり、Tg=−30℃、Mw=50×10
4。
【0048】
(粘着剤副成分)
フェノール樹脂G:レゾールフェノール樹脂、比重=1.1。
エポキシ樹脂H:ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
液状エポキシ樹脂I:ビスフェノールA型エポキシ樹脂。
【0049】
(硬化促進剤)
イミダゾール化合物:比重=1.2、Tm=195℃。
(溶剤)
メチルエチルケトン(MEK):沸点=79.5℃。
トルエン(TOL):沸点=110.6℃。
【0050】
(実施例1)
アクリルゴムA100質量部を、メチルエチルケトン600質量部に溶解した溶液へ、平均粒子径6μmの未硬化のマレイミド樹脂200質量部を混合して液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
次に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、上記熱硬化性接着剤組成物を、乾燥後の厚さが100μmになるように塗布し、熱風循環型乾燥機中にて脱溶剤して熱硬化性接着シートを形成した。これにより、PETフィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
得られた熱硬化性接着シートについて以下の評価を行った。
【0051】
(タック特性)
上記で得られた熱硬化性接着シートの表面を確認したところ、PETフィルムが積層していない側の表面は、粒状のマレイミド樹脂が多数突出しており、粘着性を有しておらず、指先で接触しても指先に付着することはなかった。一方、PETフィルムが積層している側の表面は平坦で、粘着性を有しており、指先で接触すると指先に付着することが確認された。
以下、粘着シートの一方の表面が粘着性を有し、他方の表面が粘着性を有さない場合を○、そうでない場合(両面が粘着性を有する、または両面が粘着性を有さない)を×とした。
【0052】
(接着強度特性)
次に、上記で得られたPETフィルム付き熱硬化性接着シートをPETフィルムから剥離し、熱硬化性接着シートのPETフィルムに接触していた面を、接着面積が20mm幅×5mm長となるように、平板に常温で貼り付けた後、接着剤のもう一方の面に同素材の平板を配置し、0.5MPaで圧締しながら、210℃で30分間熱処理をし、積層体を作製した。平板としては、冷間圧延鋼板(FPCC板、20mm幅×30mm長と90mm長、厚さ1.6mm)を用いた。
得られた積層体について、接着強度の測定を次の通り行った。
25℃環境下で、得られた積層体の熱硬化性接着シートを平板に対してせん断方向に引張った時の強度(常温せん断強度)を測定した。測定時の被着体−引張試験機のチャック間距離は約80mm、引張速度は50mm/分とした。測定には(株)今田製作所製の剪断力試験機SL5000を使用した。常温せん断強度が3.5MPa以上のものを○とした。
また、同様の強度測定を、平板を150℃から300℃まで50℃ごとに加熱させて行った。該150℃から300℃の各温度における加熱時間は3分間である。そして、150〜300℃の各測定温度における強度(耐熱せん断強度)のうち、1MPa以上を示したときの測定温度を確認した。
その結果、25℃環境下での強度が3.5MPa以上、200℃でのせん断強度が1MPa以上であり、実用上充分な接着強度を有していることが確認された。
【0053】
(熱硬化性接着シートの硬化後の状態)
上記で得られたPETフィルム付き熱硬化性接着シートをPETフィルムから剥離し、熱硬化性接着シートのPETフィルムに接触していた面を、接着面積が20mm×20mmとなるように、平板に常温で貼り付けた後、210℃で30分間熱処理をし、熱硬化性接着シート断面、表面(第一面1a)を光学顕微鏡で確認した。平板としては、冷間圧延鋼板(FPCC板、20mm幅×30mm長、厚さ1.6mm)を用いた。硬化後の熱硬化性接着シートにおいて、粒状の熱硬化性樹脂が確認できなければ○とした。
その結果、粒状のマレイミド樹脂は確認することができず、硬化後の熱硬化性接着シート内ではアクリルゴムとマレイミド樹脂が均一に相溶していることが確認できた。
【0054】
(接着剤の浸透性)
上記で得られたPETフィルム付き熱硬化性接着シートをPETフィルムから剥離し、熱硬化性接着シートのPETフィルムに接触していた面を、接着面積が10mm×10mmとなるように、平板に常温で貼り付けた。その後、熱硬化性接着シートの表面(第一面1a)に、20mm×20mm×0.7mmの酸化アクリル繊維からなる不織布を載せて、上部温度210℃、下部温度210℃で0.5MPa、3分間、熱プレスし、積層体を得た。その後、得られた積層体を切断して断面を光学顕微鏡で確認した。粒状の熱硬化性樹脂を確認することができず、溶解した熱硬化性接着シートの一部が不織布に浸透していることが確認できれば、○とした。
その結果、粒状のマレイミド樹脂は確認することができず、また、溶解した熱硬化性接着シートの一部が不織布に浸透していることが確認された。
【0055】
(実施例2)
実施例1において、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を10質量部加えた以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0056】
(実施例3)
実施例2において、アクリルゴムAを、アクリルゴムAとフェノール樹脂Gとを混合したアクリルゴム粘着成分(このアクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、アクリルゴムAとフェノール樹脂Gとの質量比:50/50、アクリルゴム粘着成分の比重:1.1)に変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0057】
(実施例4)
実施例3において、アクリルゴム粘着成分を、アクリルゴムAとフェノール樹脂Gとエポキシ樹脂Hとを混合したアクリルゴム粘着成分(このアクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、アクリルゴムAとフェノール樹脂Gとエポキシ樹脂Hの質量比:50/25/25、アクリルゴム粘着成分の比重:1.1)に変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0058】
(実施例5)
実施例4において、アクリルゴムAをアクリルゴムBへ変更し、エポキシ樹脂Hを液状エポキシ樹脂Iへ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た(アクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、このアクリルゴム粘着成分の比重:1.1)。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0059】
(実施例6)
実施例5において、アクリルゴムBをアクリルゴムCへ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た(アクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、このアクリルゴム粘着成分の比重:1.1)。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0060】
(実施例7)
実施例3において、アクリルゴムAをアクリルゴムDへ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た(アクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、このアクリルゴム粘着成分の比重:1.1)。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0061】
(実施例8)
実施例7において、アクリルゴム粘着成分を、アクリルゴムDとフェノール樹脂Gとエポキシ樹脂Hとを混合したアクリルゴム粘着成分(このアクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、アクリルゴムDとフェノール樹脂Gとエポキシ樹脂Hの質量比:50/25/25、アクリルゴム粘着成分の比重:1.1)へ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0062】
(実施例9)
実施例3において、アクリルゴムAをアクリルゴムEへ変更し、溶剤をメチルエチルケトンからトルエン(沸点:110.6℃)へ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た(アクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、このアクリルゴム粘着成分の比重:1.1)。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0063】
(実施例10)
実施例9において、アクリルゴム粘着成分を、アクリルゴムEとフェノール樹脂Gと液状エポキシ樹脂Iとを混合したアクリルゴム粘着成分(このアクリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、アクリルゴムEとフェノール樹脂Gと液状エポキシ樹脂Iの質量比:50/25/25、アクリルゴム粘着成分の比重:1.1)へ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0064】
(実施例11)
ニトリルゴムF100質量部を、トルエン600質量部に溶解した溶液へ、平均粒子径6μmの未硬化のマレイミド樹脂200質量部を混合して液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0065】
(実施例12)
実施例11において、硬化促進剤としてイミダゾール化合物を10重量部加えた以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0066】
(実施例13)
実施例12において、ニトリルゴムFを、ニトリルゴムFとフェノール樹脂Gとを混合したニトリルゴム粘着成分(このニトリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、ニトリルゴムFとフェノール樹脂Gとの質量比:50/50、このニトリルゴム粘着成分の比重:1.0)に変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0067】
(実施例14)
実施例13において、ニトリルゴム粘着成分を、ニトリルゴムFとフェノール樹脂Gとエポキシ樹脂Hとを混合したアクリルゴム粘着成分(このニトリルゴム粘着成分単独で常温タックあり、ニトリルゴムFとフェノール樹脂Gとエポキシ樹脂Hの質量比:50/25/25、ニトリルゴム粘着成分の比重:1.1)に変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、アクリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0068】
(実施例15)
実施例11において、未硬化のマレイミド樹脂を未硬化のフェノール樹脂200質量部に変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中に粒状のフェノール樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のフェノール樹脂の平均粒子径は20μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0069】
(実施例16)
実施例11において、未硬化のマレイミド樹脂の配合量を400質量部へ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0070】
(実施例17)
実施例11において、未硬化のマレイミド樹脂の配合量を60質量部へ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は6μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0071】
(実施例18)
実施例11において、未硬化のマレイミド樹脂を平均粒子径70μmのものへ変更した以外は同様にして、液状の熱硬化性接着剤組成物を得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中に粒状のマレイミド樹脂が分散した状態であった。熱硬化性接着剤組成物中のマレイミド樹脂の平均粒子径は70μmであった。
得られた熱硬化性接着剤組成物を実施例1における熱硬化性接着剤組成物の代わりに用いた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを作製し、同様の評価を行った。
【0072】
(比較例1)
未硬化のマレイミド樹脂を使用しない以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
上記熱硬化性接着シートのPETフィルムが積層していない側の表面、その反対側の表面をそれぞれ確認したところ、両方の表面がタックを有しており、指先で接触すると指先に付着することが確認された。
【0073】
(比較例2)
実施例1において、溶剤を変更し、未硬化のマレイミド樹脂を溶解させた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中にマレイミド樹脂が溶解した状態であった。
上記熱硬化性接着シートのPETフィルムが積層していない側の表面、その反対側の表面をそれぞれ確認したところ、両方の表面にタックがないことが確認された。
【0074】
(比較例3)
実施例15において、未硬化のフェノール樹脂を使用しない以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを得た。
上記熱硬化性接着シートのPETフィルムが積層していない側の表面、その反対側の表面をそれぞれ確認したところ、両方の表面がタックを有しており、指先で接触すると指先に付着することが確認された。
【0075】
(比較例4)
実施例15において、溶剤を変更し、未硬化のフェノール樹脂を溶解させた以外は実施例1と同様にしてPETフィルム付き熱硬化性接着シートを得た。この熱硬化性接着剤組成物は、ニトリルゴム粘着成分溶液中にフェノール樹脂が溶解した状態であった。
上記熱硬化性接着シートのPETフィルムが積層していない側の表面、その反対側の表面をそれぞれ確認したところ、両方の表面にタックがないことが確認された。
【0076】
実施例1〜18および比較例1〜4における熱硬化性接着剤組成物の組成、ならびに得られた熱硬化性接着シートの評価結果を表1〜3に示す。
なお、比較例1〜4の熱硬化性接着シートは、タック特性が×であったため、他の評価は行わなかった。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】