(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記運転支援モードは、先行車がない場合には設定速度を維持するように走行し、先行車がある場合には設定速度を上限として先行車に追従するように車両制御を実行する先行車追従モードである、請求項1から3の何れか1項に記載の車両制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態による車両制御装置について説明する。まず、
図1及び
図2を参照して、車両制御装置の構成について説明する。
図1は車両制御装置の構成図、
図2は操作部の説明図である。
【0014】
本実施形態の車両制御装置100は、車両1(
図3参照)に搭載されており、運転者によって選択された運転支援モードに応じて、所定の運転支援制御を実行するように構成されている。
【0015】
本実施形態では、運転支援モードには、先行車追従モード,速度制限モードが含まれる。先行車追従モードは、先行車がない場合には設定車速を維持するように走行し、先行車がある場合には設定車速を上限として先行車に追従するように車両制御を実行するモードであり、車両1の速度制御及び操舵制御を実行する。この速度制御では、車両制御装置100は、エンジン制御システム40を介してエンジン出力を自動制御し、ブレーキ制御システム42を介して制動力を自動制御する。また、操舵制御では、車両制御装置100は、ステアリング制御システムを介してステアリングホイールによる操舵角を自動制御する。
【0016】
また、速度制限モードは、車両1の速度が設定車速を超えないように車両制御(速度制御)を実行するモードである。このモードでは、運転者がアクセルペダルを操作することにより、アクセルペダルの踏込量に応じてエンジン出力が制御される。しかし、車両制御装置100は、車両1の速度が設定速度を超える場合には、アクセルペダルの踏込量にかかわらず、車両1の速度を設定速度に制限する。この場合、車両制御装置100は、エンジン制御システム40を介してエンジン出力を絞り、必要に応じてブレーキ制御システム42を介して制動力を付与する。
【0017】
図1に示すように、車両制御装置100は、制御ユニット(ECU)10と、各種のセンサ/入出力部と、所定の車両システムを含む。センサ/入出力部には、車外撮像用のカメラ20,車両前方及び後方の他車両を検出するレーダ装置22,車両1の速度を検出する車速センサ23,運転支援制御に関するユーザ入力を行うための操作部24,ナビゲーション装置26,速度超過警報操作部27,運転者に情報を提示する表示部28,スピーカ29,その他のセンサ等が含まれる。車両システムには、エンジン制御システム40,ブレーキ制御システム42が含まれる。
【0018】
ECU10は、CPU,各種プログラム及びデータを記憶するメモリ11,入出力装置等を備えたコンピュータにより構成される。ECU10は、各種の機能を含み、例えば、制御部10a,制限速度認識部10bとしての機能を備えている。
【0019】
ECU10(制御部10a)は、運転支援モードの作動中において、外部から受け取った信号に基づいて、所定の情報を表示部28に表示すると共に、車両システム(エンジン制御システム40,ブレーキ制御システム42等)に対して、それぞれ要求信号を出力して車両制御処理を実行する。メモリ11に記憶されるデータには、運転支援モードの実行中に速度制御のために用いられる設定速度、制限速度認識部10bが取得した制限速度、及び、運転者が速度超過警報操作部27を介して設定可能な調整速度が含まれる。
【0020】
また、ECU10(制御部10a)は、車速センサ23が検出した車両1の現在車速をモニタし、現在車速が閾値速度を超えた場合にスピーカ29(報知部)から速度超過警報を発生させる速度超過警報処理を実行する。また、スピーカ29に加えて、ナビゲーション装置26や表示部28等が有するディスプレイに速度超過警報を表示させてもよい。
【0021】
また、ECU10(制限速度認識部10b)は、カメラ20により撮像された画像データを画像分析することにより、画像内の速度標識が示す制限速度(標識速度)を取得する制限速度認識処理を実行する。カメラ20は、車両1の前方を撮像し、撮像した画像データをECU10へ送信する。なお、制限速度認識部10bは、カメラ20を構成要素として含んでもよい。
【0022】
レーダ22は、車両1の前方及び後方に向けて電波(送信波)を送信し、その反射波を受信する。そして、レーダ22は、送信波及び反射波に基づいて、車両1の前方及び後方に存在する他車両と車両1との間の車間距離に関する測定データ、及び、他車両の相対速度に関する測定データを含む信号を出力する。なお、レーダ22の代わりに及び/又はレーダ22に代えて、レーザレーダ,ソナー等のセンサを用いてもよい。
【0023】
操作部24は、車両1のステアリングホイールに設けられており、複数のスイッチを備えている。
図2に示すように、操作部24は、運転支援モードの起動スイッチであるオンスイッチ24a,24b、停止スイッチであるオフスイッチ24c、キャンセルスイッチ24d、速度設定スイッチ24e,24f、リジューム(再開)スイッチ24gを備えている。
【0024】
オンスイッチ24aの操作(押下)により、先行車追従モードが起動される。また、オンスイッチ24bの操作により、速度制限モードが起動される。各運転支援モードの作動状態は、アクティブ状態とスタンバイ状態を含む。アクティブ状態では、エンジン制御システム40,ブレーキ制御システム42を介して車両挙動を変更する制御(速度制御)が実行される。スタンバイ状態は、車両挙動変更制御が一時的に不作動にされた状態である。
【0025】
オフスイッチ24cの操作により、アクティブ状態及びスタンバイ状態にかかわらず、現在作動中の運転支援モードが作動停止となる。運転支援モードの作動中には、ECU10のメモリ11に記憶された設定速度が用いられるが、オフスイッチ24cの操作により、メモリ11に記憶された設定速度がクリア(消去)される。
キャンセルスイッチ24dの操作により、運転支援モードは、アクティブ状態からスタンバイ状態に切り替えられる。
【0026】
速度設定スイッチ24eの操作により、設定速度を現在値から増加させることができる。また、速度設定スイッチ24fの操作により、設定速度を現在値から減少させることができる。運転者によって設定速度が入力されると、設定速度はECU10のメモリ11に記憶される。例えば、運転者は、オンスイッチ24a,24bを押下した後、速度設定スイッチ24e,24fのいずれかを押下することにより、車両1の現在車速を設定速度として入力することができる。更に、設定速度がメモリ11に記憶された状態で、速度設定スイッチ24e,24fを操作することにより、設定速度を増減させることができる。
【0027】
なお、速度設定スイッチ24e,24fの操作により設定可能な速度範囲を安全性確保のため制限してもよい。例えば、設定可能な速度範囲の上限値を、調整制限速度(=制限速度+調整速度)以下に制限することができる。これにより、運転者が速度設定スイッチを操作しても、ECU10は、調整制限速度を超える速度設定を無効(禁止)とする。
【0028】
リジュームスイッチ24gは、基本的な操作機能として、運転支援モードがスタンバイ状態であるときに操作されることにより、ECU10のメモリ11に記憶されている設定速度を用いて、作動中の運転支援モードを再開(アクティブ状態)させるために用いられる。
【0029】
ナビゲーション装置26は、GPS等を用いて車両1の現在位置を取得し、記憶しているマップ情報又は外部ソースのマップ情報に基づいて、マップ上における車両1の位置を特定することができる。また、ナビゲーション装置26は、マップ上の現在位置から、車両1が走行している走行路の制限速度(標識速度)を取得することもできる。よって、制限速度認識部として、ナビゲーション装置26を用いてもよい。
【0030】
速度超過警報操作部27は、インスツルメンツパネル等に配置されており、速度超過警報処理を作動/不作動とするためのオンオフスイッチ27aと、調整速度を設定するための調整速度設定スイッチ27bとを備えている。運転者は、所定範囲(例えば、−10〜10km/h)で調整速度を設定することができる。ECU10(制御部10a)は、制限速度に調整速度を加算して調整制限速度を算出する。例えば、運転者がアクセルペダルを踏みこんだ時、車両1の速度が制限速度(標識速度)をわずかに超過する場合があるが、このときに速度超過警報処理によって警報が発生すると、運転者は煩わしさを感じる。よって、本実施形態では、このような不必要な警報の発生を防ぐため、制限速度に調整速度を加算した調整制限速度を閾値速度として設定可能となっている。
【0031】
表示部28は、インスツルメンツパネル等に配置されており、作動状況表示欄28a,設定速度表示欄28b,制限速度表示欄28cを含む(
図4参照)。
図4には、理解の容易のため1つの作動状況表示欄28aのみが表示されているが、複数の運転支援モードのそれぞれに対応して作動状況表示欄を設けることができる。
【0032】
作動状況表示欄28aは、運転支援モードの作動状況を示す。作動状況表示欄28aには、運転支援モードの実行状態が「ブランク(オフ)」、「アクティブ」、「スタンバイ」のいずれかで表示される。
設定速度表示欄28bは、ECU10のメモリ11に記憶されている設定速度(例えば、「80」)を表示する。なお、設定速度がメモリ11に記憶されていない場合は、設定速度表示欄28bには、「ブランク(−−−)」が表示される。
制限速度表示欄28cは、取得された制限速度(例えば、「50」)を表示する。なお、制限速度が取得されていない場合は、制限速度表示欄28cには、「ブランク」が表示される。
【0033】
次に、
図3〜
図9を参照して、本実施形態による操作部の各種操作について説明する。
図3は制限速度取得時の説明図、
図4はリジュームスイッチ操作時(スタンバイ状態;メモリ記憶有り)の説明図、
図5はリジュームスイッチ操作時(スタンバイ状態;メモリ記憶無し)の説明図、
図6はリジュームスイッチ操作時(アクティブ状態)の説明図、
図7はキャンセルスイッチ操作時の説明図、
図8は制限速度取得時の説明図、
図9はリジュームスイッチ操作時(アクティブ状態)の説明図である。
【0034】
調整速度は、速度超過警報処理のために運転者によって設定されるが、本実施形態では、運転支援モードによる車両制御処理においても利用される。
先ず、
図3〜
図7を参照し、調整速度がゼロ(ΔV=0)の場合について説明する。よって、調整制限速度(=制限速度+調整速度)は、制限速度と同じである(調整制限速度=制限速度)。なお、速度超過警報操作部27のオンオフスイッチ27aがオフ状態においても、調整速度がゼロとなる。
【0035】
図3は、制限速度が時速80kmの走行路3を、車両1が時速80km(V=80)で走行している状況を示している。車両1は、速度標識5の手前の位置Aにおいて、走行路3付近に設置された速度標識5(制限速度「50km/h」)を検出している。その後、車両1は速度標識5の側方(位置B)を通過し、制限速度が時速50kmの区間に進入している(位置C)。また、運転支援モードとして、先行車追従モード又は速度制限モードが選択されている。先行車追従モードによる速度制御では、車両1の自動的な増減速が実行される。一方、速度制限モードによる速度制御では、車両1の自動的な減速のみが実行され、運転者はアクセルペダルを操作することにより車両1を増速させることができる。
【0036】
図4の例では、位置Aにおいて、車両1の表示部28には
図4(a)のように表示されている。このとき、運転支援モードはスタンバイ状態(「スタンバイ」)であり、設定速度は時速80km(「80km/h」)である。また、速度標識5が検出されているので、制限速度は時速50km(「50」)である。
【0037】
運転者が位置Bにおいて、リジュームスイッチ24gを操作(押下)すると、リジュームスイッチ24gの操作機能(従来と同様)が実行される。即ち、
図4(b)に示すように、設定速度が時速80kmに維持されたまま、運転支援モードの作動状態がスタンバイ状態からアクティブ状態に切り替えられる。したがって、作動状況表示欄28aには「アクティブ」が表示される(位置C)。車両制御装置100は、設定速度を目標速度として、エンジンシステム40,ブレーキシステム42を介して速度制御を実行する。この場合、車両1の速度は、時速80kmから時速50kmまで減速される。このように、リジュームスイッチの従来の操作機能は変わっていないので、運転者は、誤操作することなく、従来と同様に操作することができる。
【0038】
図5の例では、位置Aにおいて、車両1の表示部28には
図5(a)のように表示されている。このとき、運転支援モードはスタンバイ状態(「スタンバイ」)であり、制限速度は時速50km(「50」)である。しかし、メモリ11内に設定速度が記憶されておらず、設定速度表示欄28bにはブランク(「−−−」)が表示される。
【0039】
運転者が位置Bにおいて、リジュームスイッチ24gを操作(押下)すると、
図5(b)に示すように、設定速度は調整制限速度(時速50km)によって置き換えられ、設定速度表示欄28bには、「50」(時速50km)と表示される(位置C)。即ち、運転者は、スタンバイ状態において、メモリ11内に設定速度が記憶されていない場合は、リジュームスイッチ24gを操作することにより、調整制限速度を設定速度として設定することができる。ただし、運転支援モードの作動状態はスタンバイ状態に維持されたままである。運転者は、運転支援モードをアクティブ状態にしたい場合、
図4を参照して説明したように、再度、リジュームスイッチ24gを操作すればよい。
【0040】
従来、
図5(a)に示す状況でリジュームスイッチを操作しても、無効操作となるだけであった。しかし、本実施形態では、運転者は、リジュームスイッチ24gの操作により、設定速度に制限速度を簡易に入力することができる。したがって、従来のように速度設定スイッチ24e,24fを操作する必要がないので、操作を簡単化することができる。
【0041】
図6の例では、位置Aにおいて、車両1の表示部28には
図6(a)のように表示されている。このとき、運転支援モードはアクティブ状態(「アクティブ」)であり、設定速度は時速80km(「80km/h」)であり、制限速度は時速50km(「50」)である。
【0042】
運転者が位置Bにおいて、リジュームスイッチ24gを操作(押下)すると、
図6(b)に示すように、設定速度は調整制限速度(時速50km)に置き換えられ、設定速度表示欄28bには、「50km/h」と表示される(位置C)。即ち、運転者は、アクティブ状態において、リジュームスイッチ24gを操作することにより、調整制限速度を設定速度として設定することができる。車両制御装置100は、新たに設定された設定速度を目標速度として、エンジンシステム40,ブレーキシステム42を介して速度制御を実行する。この場合、車両1の速度は、時速80kmから時速50kmまで減速される。
【0043】
このように、リジュームスイッチ24gは、従来の操作機能(設定速度表示欄28bに表示された設定速度を用いて、運転支援モードの作動状態をスタンバイ状態からアクティブ状態に切り替える)に加えて、別の操作機能(アクティブ状態において設定速度を調整制限速度で書き換える)を兼ねる。これにより、操作部28に追加のスイッチを設けることなく、運転者は、既存のリジュームスイッチ24gを用いて簡易に操作することができる。
【0044】
図7の例では、位置Aにおいて、車両1の表示部28には
図7(a)のように表示されている。このとき、運転支援モードはアクティブ状態(「アクティブ」)であり、設定速度は時速80km(「80km/h」)であり、制限速度は時速50km(「50」)である。
【0045】
運転者が位置Bにおいて、キャンセルスイッチ24dを操作(押下)すると、
図7(b)に示すように、運転支援モードはアクティブ状態からスタンバイ状態に切り替えられるので、作動状況表示欄28aには「スタンバイ」と表示される(位置C)。更に、本実施形態では、設定速度が調整制限速度(時速50km)に置き換えられ、設定速度表示欄28bには、「50」(時速50km)と表示される。車両制御装置100は、運転支援モードがスタンバイ状態に切り替えられたので、速度制御を実行しない。この場合、運転者は、例えばブレーキペダルを操作して又はエンジンブレーキを利用して、車両1を時速80kmから時速50kmまで減速させることになる。
【0046】
このように、キャンセルスイッチ24dは、従来の操作機能(運転支援モードの作動状態をアクティブ状態からスタンバイ状態に切り替える)に加えて、別の操作機能(設定速度を調整制限速度で書き換える)を兼ねる。これにより、運転支援モードを再開する際には、既に設定速度が調整制限速度に設定されているので、運転者は、運転支援モードの再開時に設定速度を入力し直す必要がなくなる。
【0047】
次に、
図8及び
図9を参照し、調整速度が10km/h(ΔV=10)の場合について説明する。
図8は、運転支援モードがアクティブ状態(設定速度=時速55km)で、車両1が走行路3を走行している状況を示している。なお、調整速度は10km/h(ΔV=10)に予め設定されているものとする。よって、調整制限速度は、60km/h(制限速度50km/h+調整速度10km/h)である。
【0048】
車両1は、位置Aにおいて、時速55km(V=55)で走行しており、速度標識5(制限速度=50km/h)を検出している。よって、位置Aでは、表示部28には、
図9(a)に示すように表示される。
【0049】
運転者が位置Bにおいて、リジュームスイッチ24gを操作すると、位置Cにおいて、表示部28には、
図9(b)に示すように表示される。即ち、リジュームスイッチ24gの操作により、設定速度が調整制限速度で書き換えられる。よって、設定速度表示欄28bには、「60km/h」が表示される。したがって、車両1では、設定速度60km/hで速度制御が実行されるので、先行車追従モードでは、位置Cでの車両1の速度は時速60kmとなる(V=60)。なお、速度制限モードの場合は、時速55kmが維持される。
【0050】
次に、
図10及び
図11を参照して、本実施形態による運転支援モードにおける車両制御処理の流れについて説明する。
図10及び
図11は車両制御処理の処理フローである。
ECU10(制御部10a)は、
図10及び
図11の処理フローを所定時間毎に繰り返し実行する。なお、ECU10(制限速度認識部10b)は、別の処理により、制限速度認識処理を実行し、メモリ11に制限速度を記憶する。
【0051】
まず、処理が開始されると、ECU10は、制限速度(標識速度)が取得されているか否かを判定する(S10)。制限速度がメモリ11に記憶されていない場合(S10;No)、ECU10は、制限速度を用いない通常の処理を実行し(S11)、処理を終了する。一方、制限速度がメモリ11に記憶されている場合(S10;Yes)、ECU10は、選択されている運転支援モードがアクティブ状態であるか、スタンバイ状態であるかを判定する(S12)。
【0052】
運転支援モードがアクティブ状態の場合(S12;Yes)、ECU10は、キャンセルスイッチ24dが操作されたか否かを判定する(S13)。ECU10は、キャンセルスイッチ24dが操作された場合(S13;Yes)、運転支援モードをアクティブ状態からスタンバイ状態に切り替え(S14)、メモリ11内の設定速度を調整制限速度で書き換え(S15)、処理を終了する。ステップS12−S15は、
図7の例に相当する。
【0053】
一方、キャンセルスイッチ24dが操作されていない場合(S13;No)、ECU10は、リジュームスイッチ24gが操作されたか否かを判定する(S16)。リジュームスイッチ24gが操作されたか場合(S16;Yes)、ECU10は、自動停止中であるか否かを判定する(S17)。
【0054】
なお、自動停止とは、先行車追従モードにおいて、車両1の前方の先行車が停止したため、車両1も停止した状態である。自動停止中において、ECU10は、車両1のエンジン制御システム40及びブレーキ制御システム42に対して、車両1を停止状態に維持するように要求信号を出力する。
【0055】
運転支援モードがアクティブ状態であって、自動停止中でない状態でリジュームスイッチ24gが操作された場合(S17;No)、ECU10は、メモリ11内の設定速度を調整制限速度で書き換え(S19)、処理を終了する。ステップS12−S19は、
図6の例に相当する。
【0056】
一方、運転支援モードがアクティブ状態であって、自動停止中にリジュームスイッチ24gが操作された場合(S17;Yes)、ECU10は、車両1の停止状態を解除して、発進を許可し(S18)、処理を終了する。このとき、ECU10は、停止状態を維持する要求信号に代えて、先行車を追従するための要求信号をエンジン制御システム40(及びブレーキ制御システム42)へ出力する。これにより、運転支援モード(先行車追従制御)が再開される。
【0057】
なお、自動停止中において、停止していた先行車が発進した場合、自動的に先行車を追従するように車両1を発進させてもよい。しかし、本実施形態では、安全性を高めるため、自動停止中に車両1の運転者が先行車の発進を認識した状態(即ち、リジュームスイッチ24gの操作)で車両1を発進させている。
【0058】
一方、運転支援モードがスタンバイ状態の場合(S12;No)、ECU10は、メモリ11に設定速度が格納されているか否かを判定し(S20)、設定速度が格納されていた場合(S20;Yes)、リジュームスイッチ24gが操作されたか否かを判定する(S21)。運転支援モードがスタンバイ状態であって、設定速度がメモリ11に記憶されている状態でリジュームスイッチ24gが操作された場合(S21;Yes)、ECU10は、メモリ11内に格納されている設定速度を維持したまま、運転支援モードをスタンバイ状態からアクティブ状態に切り替え(S22)、処理を終了する。ステップS12−S22は、
図4の例に相当する。
【0059】
また、リジュームスイッチ24gが操作されていない場合(S21;No)、ECU10は、キャンセルスイッチ24dの操作(S13)により設定速度が調整制限速度に書き換えられてから(S15)、所定時間(例えば、3〜10秒)が経過したか否かを判定する(S23)。所定時間以内である場合(S23;Yes)、ECU10は、速度設定スイッチ24e又は24fが操作されたか否かを判定する(S24)。
【0060】
キャンセルスイッチ24dの操作から所定時間以内にどちらかの速度設定スイッチが操作された場合(S24;Yes)、ECU10は、リジュームスイッチ24gが操作された場合(S21)と同様に、運転支援モードをスタンバイ状態からアクティブ状態に切り替え(S22)、処理を終了する。
【0061】
本実施形態では、キャンセルスイッチ24dによって、一旦、運転支援モードをスタンバ状態に切り替えた後、アクティブ状態に復帰させる場合は、運転者はリジュームスイッチ24gを操作すればよい。そして、復帰時には、制限速度を設定速度として運転支援モードを再開することができる。また、本実施形態では、所定時間以内であれば、リジュームスイッチ24gに加えて、速度設定スイッチ24e及び24fを、運転支援モードをアクティブ状態に復帰させるために用いることができる。
【0062】
一方、所定時間が経過した場合(S23;No)、速度設定スイッチ24e及び24fは、通常の操作機能に用いられる。即ち、速度設定スイッチ24e又は24fが操作されると(S25;Yes)、ECU10は、メモリ11に記憶された設定速度を、速度設定スイッチ24e又は24fの操作にしたがって変更し(S26)、処理を終了する。
【0063】
一方、設定速度がメモリ11に格納されていない場合(S20;No)、ECU10は、リジュームスイッチ24gが操作されたか否かを判定する(S28)。運転支援モードがスタンバイ状態であって、設定速度がメモリ11に記憶されていない状態でリジュームスイッチ24gが操作された場合(S28;Yes)、ECU10は、メモリ11内の設定速度を調整制限速度で書き換え(S29)、処理を終了する。このとき、運転支援モードはスタンバイ状態に維持される。ステップS12−S29は、
図5の例に相当する。
【0064】
なお、本実施形態では、以下に説明するように、ステップS15,S19,29により、調整制限速度によって書き換えられた設定速度は、調整制限速度の変化に連動して変更される。
【0065】
次に、
図12を参照して、本実施形態の速度超過警報処理の流れについて説明する。
図12は速度超過警報処理の処理フローである。
ECU10(制御部10a)は、
図12の処理フローを所定時間毎に繰り返し実行する。なお、ECU10(制御部10a)は、別の処理により、常時、レーダ22の測定データから先行車の有無、車間距離、相対速度を算出して、これらのデータをメモリ11に所定期間分だけ記憶している。
【0066】
速度超過警報処理は、速度超過警報操作部27のオンオフスイッチ27aがオン状態である場合において、運転支援モードがオフ状態(停止状態)のときに作動するように構成されている。なお、調整制限速度は、メモリ11に記憶された制限速度及び調整速度から既に算出されている。
【0067】
まず、処理が開始されると、ECU10は、速度超過警報操作部27のオンオフスイッチ27aがオン状態であるか否かを判定する(S30)。オフ状態である場合(S30;No)、ECU10は、処理を終了する。この場合、調整速度は、運転支援モードにおける車両制御処理に用いられない。
【0068】
一方、オン状態である場合(S30;Yes)、ECU10は、運転支援モードが作動中(スタンバイ状態含む)であるか否かを判定する(S31)。運転支援モードが作動中の場合(S31;Yes)、ECU10は、調整速度設定スイッチ27bの設定操作によって設定される調整速度がメモリ11に格納されているか否かを判定する(S32)。調整速度が記憶されていない場合(S32;No)、ECU10は、調整速度をゼロにして、処理を終了する。
【0069】
一方、調整速度が記憶されている場合(S32;Yes)、ECU10は、先行車と車両1の車間距離の時間変化を判定する(S33)。
【0070】
この判定では、先行車との車間距離が減少しているか否かが判定される。具体的には、先行車との車間距離が、車両1の現在車速に応じて設定された基準車間距離より短く、且つ、時間的に減少しているか否かが判定される。
【0071】
車間距離が減少していない場合(S33;No)、ECU10は、処理を終了する。一方、車間距離が減少している場合(S33;Yes)、ECU10は、車間距離の時間的な減少度(m/s)を算出し、メモリ11に格納された所定のテーブル(減少度と速度減少分との関係を示す)から、算出した減少度に対応する速度減少分を読み取り、読み取った速度減少分だけ調整速度及び調整制限速度を減少させる(S34)。例えば、減少度が1m/sの場合、調整速度及び調整制限速度が2km/hだけ減算される。なお、メモリ11に格納された調整速度の値は、運転者が調整速度設定スイッチ27bで設定操作を行わない限り変化しない。
【0072】
次に、ECU10は、調整制限速度に連動して設定した設定速度を、新たに算出した調整制限速度によって書き換え(S35)、処理を終了する。これにより、先行車との車間距離の変動に応答して、調整制限速度に連動した設定速度も変更される。
【0073】
一方、運転支援モードが停止中(オフ状態)である場合(S31;No)、ECU10は、車両1の現在車速が調整制限速度よりも大きいか否かを判定する(S36)。現在車速が調整制限速度よりも大きい場合(S36;Yes)、ECU10は、スピーカ29から速度超過警報を発生させるが(S37)、現在車速が調整制限速度以下の場合(S36;No)、処理を終了する。
【0074】
上記実施形態を以下のように改変してもよい。
上記実施形態において、先行車追従モード及び速度制限モードは、設定可能な設定速度は1つであるが、それぞれ別の速度制御処理(以下、先行車追従モードの速度制御処理を「第1速度制御処理」、速度制限モードの速度制御処理を「第2速度制御処理」という)を備えている。しかし、先行車追従モードが、第1速度制御処理に加えて第2速度制御処理を含み、それぞれで別の設定速度が用いられてもよい。よって、ECU10は、先行車追従モードでは、第1設定速度(第1速度制御処理用)と、第2設定速度(第2速度制御処理用)とをメモリ11に記憶することができる。したがって、先行車追従モードにおいて、第1設定速度以下で先行車を追従する場合であっても、車両1の速度が第2設定速度を超えないように第2速度制御処理が実行される。
【0075】
先行車追従モードでは、第1設定速度が設定速度表示欄28bに表示され、第2設定速度は表示されない。一方、速度制限モードでは、第2設定速度が設定速度表示欄28bに表示される。
【0076】
また、この場合において、ECU10は、取得した制限速度及び調整速度に基づいて算出した調整制限速度を、第2設定速度として自動設定することができる。したがって、
図8及び
図9の例では、先行車追従モード中に、メモリ11内で第2設定速度は自動的に調整制限速度(「60km/h」)に設定され、運転者がリジュームスイッチ24gを操作すると、メモリ11内で第1設定速度が調整制限速度に設定される。よって、位置Cにおいて、設定速度表示欄28bには「60km/h」(第1設定速度)が表示される(
図9(b)参照)。
【0077】
一方、先行車追従モード中に、メモリ11内で第2設定速度は自動的に調整制限速度(「60km/h」)に設定されるが、運転者がリジュームスイッチ24gを操作しない場合には、メモリ11内の第1設定速度は変更されない。よって、位置Cにおいて、設定速度表示欄28bは「55km/h」(第1設定速度)に維持される(
図9(a)参照)。また、この場合、ECU10は、第1速度制御処理により、車両1の速度を時速55km(第1設定速度)に維持しようとする。そして、ECU10は、第2速度制御処理を実行するが、車両1の現在車速(時速55km)が第2設定速度(60km/h)以下であるので、車両1を減速する処理を行わない。
【0078】
更に、
図12において説明したように、設定速度が調整制限速度に連動するのと同様に、第1設定速度及び第2設定速度を調整制限速度に連動させることができる。
【0079】
次に、本実施形態の運転支援制御装置の作用について説明する。
本実施形態の車両制御装置100は、運転支援モードの実行中に、記憶している設定車速に応じて車両1の速度制御を実行する制御部(ECU10)と、走行路3に対する制限速度を取得する制限速度認識部(ECU10,ナビゲーション装置26)と、制限速度に付加される調整速度を設定するための調整速度設定部(調整速度設定スイッチ27b)と、車両1の速度が、制限速度に調整速度を加えた調整制限速度を超えると、警報を発生する報知部(スピーカ29)と、を備え、制御部(ECU10)は、調整制限速度を設定速度(S15,S19,S29)として記憶する。
【0080】
このように本実施形態では、運転者は、速度超過警報に関して、調整速度設定スイッチ27を用いて調整速度を設定することが可能であり、これにより、制限速度に調整速度を加えた調整制限速度を、警報発生のための閾値速度に設定することができる。この調整速度は、頻繁な警報発生を防止するための速度マージンとして設定されるものである。そして、このような調整制限速度を、運転支援モードにおける速度制御の設定速度に用いることができると好適である。そこで、本実施形態では、調整制限速度を設定速度として記憶させるように構成されている。よって、運転支援モードにおいて、制限速度ではなく、予め調整速度で調整された制限速度(調整制限速度)を用いることができる。このため、本実施形態では、運転者が運転中に設定速度を再設定しなくてもよくなるので、安全性及び操作性を向上させることができる。
【0081】
また、本実施形態では、設定車速を設定するための速度設定スイッチ24e,24fを更に備え、制御部(ECU10)は、速度設定スイッチ24e,24fによる、調整制限速度を超える設定車速の設定を禁止する。このように本実施形態では、調整制限速度を超えるような設定車速の設定が運転者によってできないようになっているので、誤設定を防止することができる。
【0082】
また、本実施形態では、制御部(ECU10)は、先行車との車間距離を算出し、車間距離が時間的に減少している場合には、調整速度を減少させる。このように本実施形態では、先行車との車間距離が縮まっている場合には、調整速度(したがって、調整制限速度)を減少させて設定速度(調整制限速度)を減少させることにより、所定の車間距離を確保することができる。