【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例においては下記の略号を使用する。
Boc:tert−ブトキシカルボニル
Bn:ベンジル
COMU:{{[(1−シアノ−2−エトキシ−2−オキソエチリデン)アミノ]オキシ}−4−モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウム ヘキサフルオロリン酸塩
DME:1,2−ジメトキシエタン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
DIPEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン
HATU:O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロリン酸塩
Me:メチル
TFA:2,2,2−トリフルオロ酢酸
化合物名はCambridge社のChemBioDraw Ultra ver.12.0.3を用い命名した。
以下の製造例中の「室温」は通常約10℃から約35℃を示す。%は特記しない限り重量パーセントを示す。
【0061】
製造例(1)
【0062】
【化14】
【0063】
(1)tert−ブチル (2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)カーバメイト
【0064】
【化15】
【0065】
アルゴン雰囲気下、3−フルオロニトロベンゼン(3.21mL)にエチレンジアミン(25.0mL)を加え、100℃で24時間撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣のジクロロメタン(50mL)溶液にトリエチルアミン(4.60mL)および二炭酸ジ−tert−ブチル(6.55g)を加え、室温で2時間撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/4→1/3)で精製し、tert−ブチル (2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(5.31g)を得た。
【0066】
(2)tert−ブチル (2−((3−アミノフェニル)(ベンジル)アミノ)エチル)カーバメイト
【0067】
【化16】
【0068】
(i)アルゴン雰囲気下、tert−ブチル (2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(4.46g)のジクロロメタン(30.0mL)溶液に50wt%水酸化ナトリウム水溶液(10.0mL)、ベンジルブロミド(2.84mL)およびテトラブチルアンモニウムヨージド(587.0mg)を加え、室温で48時間撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/6→1/4)で精製し、tert−ブチル (2−(ベンジル(3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(4.62g)を得た。
(ii)アルゴン雰囲気下、tert−ブチル (2−(ベンジル(3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)カーバメイトのエタノール(50.0mL)および水(20.0mL)混合懸濁液に塩化アンモニウム(6.69g)および鉄粉(4.86g)を加え、2時間加熱還流した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をアミンシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム/酢酸エチル=2/1)で精製し、tert−ブチル (2−((3−アミノフェニル)(ベンジル)アミノ)エチル)カーバメイト(4.58g)を得た。
【0069】
(3)tert−ブチル (2−((ベンジル)(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト
【0070】
【化17】
【0071】
アルゴン雰囲気下、tert−ブチル (2−((3−アミノフェニル)(ベンジル)アミノ)エチル)カーバメイト(1.59g)のジクロロメタン(20.0mL)溶液にピリジン(413μL)および5−ブロモ−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(1.33g)を加え、室温で終夜撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/2)で精製し、tert−ブチル (2−((ベンジル)(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(2.53g)を得た。
【0072】
(4)3’−(N−(3−((2−アミノエチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド 二塩酸塩
【0073】
【化18】
【0074】
(i)アルゴン雰囲気下、tert−ブチル (2−((ベンジル)(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(4.66g)のDME(80.0mL)溶液に3−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニルボロン酸(3.56g)、炭酸ナトリウム(1.80g)、水(8.0mL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(463.2mg)を加え、終夜加熱還流した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=7/5→1/1)で精製し、tert−ブチル (2−((ベンジル)(3−(3’−N,N−ジメチルアミノカルボニル−4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(4.85g)を得た。
(ii)tert−ブチル (2−(ベンジル(3−(3’−N,N−ジメチルアミノカルボニル−4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(1.50g)のメタノール(30.0mL)溶液に水酸化パラジウム(221.0mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、tert−ブチル (2−((3−(3’−(ジメチルアミノカルバモイル)−4−メトキシ[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(950.0mg)を得た。
(iii)tert−ブチル (2−((3−(3’−(ジメチルアミノカルバモイル)−4−メトキシ[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(203.0mg)に10%塩化水素−メタノール溶液(4.0mL)を加え、50℃で2時間撹拌した。この反応液を濃縮、乾燥することにより、3’−(N−(3−((2−アミノエチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド 二塩酸塩(187.0mg)を得た。
【0075】
(5)4’−メトキシ−N,N−ジメチル−3’−(N−(3−((2−(4−メチルベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド
【0076】
【化19】
【0077】
アルゴン雰囲気下、3’−(N−(3−((2−アミノエチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド 二塩酸塩(41.2mg)のピリジン(1.50mL)溶液に4−トルオイルクロリド(45.7μL)を加え、室温で終夜撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を1規定塩酸および飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=2/1→1/0)で精製し、4’−メトキシ−N,N−ジメチル−3’−(N−(3−((2−(4−メチルベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(19.5mg)を得た。
【0078】
以下の表1〜4の化合物についても、同様に対応するR基を有するカルボン酸から合成を行った。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
製造例(2)
【0084】
【化20】
【0085】
(1)N−(3−((2−アミノエチル)(ベンジル)アミノ)フェニル)−5−ブロモ−2−メトキシベンゼンスルホンアミド
【0086】
【化21】
【0087】
アルゴン雰囲気下、tert−ブチル (2−((ベンジル)(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)カーバメイト(3.04g)のジクロロメタン(51.0mL)溶液にTFA(7.89mL)を氷冷下加え、室温に昇温し終夜撹拌した。この反応液を濃縮し、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を濃縮し、乾燥することでN−(3−((2−アミノエチル)(ベンジル)アミノ)フェニル)−5−ブロモ−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(2.78g)を得た。
【0088】
(2)N−(2−(ベンジル(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド
【0089】
【化22】
【0090】
アルゴン雰囲気下、3−トルイル酸(880.0mg)のDMF(27.0mL)溶液に、DIPEA(1.88mL)、COMU(2.77g)、N−(3−((2−アミノエチル)(ベンジル)アミノ)フェニル)−5−ブロモ−2−メトキシベンゼンスルホンアミド(2.64g)を氷冷下加え、室温に昇温し終夜撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/9→3/7)で精製し、N−(2−(ベンジル(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド(3.22g)を得た。
【0091】
(3)N−(2−((3−(4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド
【0092】
【化23】
【0093】
(i)アルゴン雰囲気下、N−(2−(ベンジル(3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド(50.0mg)のDME(3.3mL)溶液にフェニルボロン酸(12.0mg)、炭酸ナトリウム(14.7mg)、水(660μL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(4.7mg)を加え、終夜加熱還流した。この反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=3/7→4/6)で精製し、N−(2−(ベンジル(3−(4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド(48.0mg)を得た。
(ii)N−(2−(ベンジル(3−(4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド(34.0mg)のTHF(2.0mL)溶液に水酸化パラジウム(8.0mg)を加え、水素雰囲気下、室温で終夜撹拌した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=4/1→1/0)で精製し、N−(2−((3−(4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−イルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−3−メチルベンズアミド(24.0mg)を得た。
【0094】
以下の表5の化合物についても、同様に対応するR基を有するボロン酸から合成を行った。
【0095】
【表5】
【0096】
製造例(3)
【0097】
【化24】
【0098】
(1)3−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルプロパンアミド
【0099】
【化25】
【0100】
アルゴン雰囲気下、3−(4−メトキシフェニル)プロピオン酸(900.0mg)のジクロロメタン(20.0mL)溶液に、ジメチルアミン塩酸塩(3.80g)、ジイソプロピルエチルアミン(1.7mL)およびHATU(4.05g)を加え、室温で終夜攪拌した。この反応液に、純水を加え、クロロホルム抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1)で精製し、3−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルプロパンアミド(1.00g)を得た。
【0101】
(2)5−(3−(ジメチルアミノ)−3−オキソプロピル)−2−メトキシベンゼン−1−スルホニルクロリド
【0102】
【化26】
【0103】
アルゴン雰囲気下、塩化スルホン酸(332μL)に3−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルプロパンアミド(207.0mg)のジクロロメタン(1.0mL)溶液をゆっくりと滴下し、氷冷下で30分間攪拌した。その後反応液を室温まで昇温し、終夜攪拌した。この反応液を氷に流し込み、1時間攪拌した。生じた白色固体を濾取し、冷水で洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥し、5−(3−(ジメチルアミノ)−3−オキソプロピル)−2−メトキシベンゼン−1−スルホニルクロリド(245.0mg)を得た。
【0104】
(3)N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド
【0105】
【化27】
【0106】
(i)アルゴン雰囲気下、3−フルオロニトロベンゼン(2.20mL)にエチレンジアミン(15.0mL)を加え、100℃で24時間撹拌した。この反応液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮することでN−(3−ニトロフェニル)−1,2−エチレンジアミン(3.44g)を得た。
(ii)アルゴン雰囲気下、2−ジメチルアミノ安息香酸(900.0mg)のジクロロメタン(20.0mL)溶液に、N−(3−ニトロフェニル)−1,2−エチレンジアミン(987.2mg)、トリエチルアミン(1.49mL)およびHATU(2.49g)を加え、室温で終夜攪拌した。この反応液に、純水を加え、クロロホルム抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1→3/1)で精製し、2−(ジメチルアミノ)−N−(2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)ベンズアミド(1.40g)を得た。
(iii)2−(ジメチルアミノ)−N−(2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)ベンズアミド(1.40g)のメタノール(20.0mL)溶液に10%パラジウム/炭素(320.0mg)を加え、水素雰囲気下、室温で24時間攪拌した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド(1.20g)を得た。
【0107】
(4)2−(ジメチルアミノ)−N−(2−((3−(5−(3−(ジメチルアミノ)−3−オキソプロピル)−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)ベンズアミド
【0108】
【化28】
【0109】
アルゴン雰囲気下、N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド(10.0mg)のピリジン(1.0mL)溶液に5−(3−(ジメチルアミノ)−3−オキソプロピル)−2−メトキシベンゼン−1−スルホニルクロリド(9.70mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、2−(ジメチルアミノ)−N−(2−((3−(5−(3−(ジメチルアミノ)−3−オキソプロピル)−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)ベンズアミド(15.0mg)を得た。
【0110】
製造例(4)
【0111】
【化29】
【0112】
(1)N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−メトキシベンズアミド
【0113】
【化30】
【0114】
(i)アルゴン雰囲気下、2−メトキシ安息香酸(501.0mg)のジクロロメタン(5.0mL)溶液に、N−(3−ニトロフェニル)−1,2−エチレンジアミン(500.0mg)、トリエチルアミン(1.43mL)およびHATU(3.10g)を加え、室温で終夜攪拌した。この反応液に、純水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1→3/1)で精製し、2−メトキシ−N−(2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)ベンズアミド(550.0mg)を得た。
(ii)2−メトキシ−N−(2−((3−ニトロフェニル)アミノ)エチル)ベンズアミド(550.0mg)のメタノール(110.0mL)溶液に10%パラジウム/炭素(30.0mg)を加え、水素雰囲気下、室温で24時間攪拌した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−メトキシベンズアミド(492.4mg)を得た。
【0115】
(2)N−(2−((3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−2−メトキシベンズアミド
【0116】
【化31】
【0117】
アルゴン雰囲気下、N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−メトキシベンズアミド(192.2mg)のピリジン(2.0mL)溶液に5−ブロモ−2−メトキシベンゼンスルホニルクロリド(230.3mg)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を濃縮後、残渣に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/2)で精製し、N−(2−((3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−2−メトキシベンズアミド(304.0mg)を得た。
【0118】
(3)4’−メトキシ−3’−(N−(3−((2−(2−メトキシベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキサミド
【0119】
【化32】
【0120】
アルゴン雰囲気下、N−(2−((3−(5−ブロモ−2−メトキシフェニルスルホンアミド)フェニル)アミノ)エチル)−2−メトキシベンズアミド(53.0mg)のDME(3.0mL)溶液に4−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニルボロン酸(29.0mg)、炭酸ナトリウム(29.0mg)、水(150.0μL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(6.0mg)を加え、終夜加熱還流した。この反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、4’−メトキシ−3’−(N−(3−((2−(2−メトキシベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−4−カルボキサミド(58.0mg)を得た。
【0121】
製造例(5)
【0122】
【化33】
【0123】
(1)3’−(ジメチルカルバモイル)−4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−スルホニルクロリド
【0124】
【化34】
【0125】
(i)アルゴン雰囲気下、4−ブロモアニソール(1.0mL)のDME(20.0mL)溶液に3−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニルボロン酸(1.60g)、炭酸ナトリウム(1.80g)、水(2.0mL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(250.0mg)を加え、終夜加熱還流した。この反応液をセライト濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣に純水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/2→1/1)で精製し、4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(1.72g)を得た。
(ii)アルゴン雰囲気下、塩化スルホン酸(870μL)に4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(1.10g)のジクロロメタン(4.0mL)溶液をゆっくりと滴下し、氷冷下で10分間攪拌した。反応液を室温まで昇温し、2時間攪拌した後、塩化チオニル(950μL)、DMF(1.70mL)を加え、室温で終夜撹拌した。反応液を氷に流し込み、1時間攪拌した後、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1→1/0)で精製し、3’−(ジメチルカルバモイル)−4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−スルホニルクロリド(1.40g)を得た。
【0126】
(2)3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド
【0127】
【化35】
【0128】
アルゴン雰囲気下、3’−(ジメチルカルバモイル)−4−メトキシ−[1,1’−ビフェニル]−3−スルホニルクロリド(236.0mg)のジクロロメタン(4.0mL)溶液にN−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド(210.0mg)、DIPEA(350μL)を加え、室温で終夜撹拌した。この反応液に、純水を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(113.0mg)を得た。
【0129】
(3)3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−ヒドロキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド
【0130】
【化36】
【0131】
アルゴン雰囲気下、3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(53.0mg)のジクロロメタン(2.0mL)溶液に1.0M三臭化ホウ素ジクロロメタン溶液(1.6mL)を氷冷下で加え、3時間撹拌した。この反応液に、氷冷下で飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル)で精製し、3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−ヒドロキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(63.0mg)を得た。
【0132】
【表6】
【0133】
製造例(6)
【0134】
【化37】
【0135】
(1)3−(クロロスルホニル)−4−メトキシ安息香酸
【0136】
【化38】
【0137】
アルゴン雰囲気下、塩化スルホン酸(2.20mL)に4−メトキシ安息香酸(1.00g)をゆっくりと氷冷下加え、10分間攪拌した。その後反応液を65℃まで昇温し、2時間攪拌した。放冷後、この反応液を氷に流し込み、1時間攪拌した。生じた白色固体を濾取し、冷水で洗浄した。得られた固体を真空下で乾燥し、3−(クロロスルホニル)−4−メトキシ安息香酸(966.0mg)を得た。
【0138】
(2)3−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4−メトキシ安息香酸
【0139】
【化39】
【0140】
アルゴン雰囲気下、N−(2−((3−アミノフェニル)アミノ)エチル)−2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド(307.0mg)のジクロロメタン(10.0mL)溶液にピリジン(3.0mL)および3−(クロロスルホニル)−4−メトキシ安息香酸(350.0mg)を加え、室温で終夜撹拌した。この反応液に1.0M塩酸を加え、クロロホルムで抽出した。有機層に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、生成物を水層に抽出した。水層に1.0M塩酸を加え中和し、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮することで3−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4−メトキシ安息香酸(470.0mg)を得た。
【0141】
(3)3−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4−メトキシ−N−(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)ベンズアミド
【0142】
【化40】
【0143】
アルゴン雰囲気下、3−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4−メトキシ安息香酸(15.6mg)のジクロロメタン(3.0mL)溶液に、2−メトキシ−5−ニトロアニリン(6.1mg)、トリエチルアミン(10.0μL)およびHATU(32.2mg)を加え、室温で終夜攪拌した。この反応液に、純水を加え、クロロホルム抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、濾過し、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル/ヘキサン=1/1→3/1)で精製し、3−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4−メトキシ−N−(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)ベンズアミド(10.4mg)を得た。
【0144】
【表7】
【0145】
製造例(7)
【0146】
【化41】
【0147】
(1)3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド 二塩酸塩
【0148】
【化42】
【0149】
3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(86.3mg)のメタノール(3.0mL)溶液に10%塩酸含有メタノール(300μL)を加え、室温で撹拌した。この反応液を濃縮し、残渣に酢酸エチルを加えることで白色懸濁液を得た。得られた懸濁液を濾過後、残渣を酢酸エチルで洗浄し、室温で乾燥させることで3’−(N−(3−((2−(2−(ジメチルアミノ)ベンズアミド)エチル)アミノ)フェニル)スルファモイル)−4’−メトキシ−N,N−ジメチル−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド 二塩酸塩(67.9mg)を得た。
融点:132.0〜133.0℃(dec.)
元素分析:Anal.Calcd for C
33H
37N
5O
5S
1・2HCl・2.5H
2O:C,54.02;H,6.04;N,9.55, found:C,53.88;H,6.10;N,9.42.
【0150】
試験例1
OX2Rに対する作動活性評価
チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株であるCHO細胞にNAFT−ルシフェラーゼ遺伝子およびヒトOX2R遺伝子を恒常的に発現させた細胞株(CHOOX2R)を樹立した。それらの細胞を96ウェルマルチプレート中に10,000個/ウェルで播種し、5% FBS(サーモサイエンティフィック)添加DMEM培地(シグマアルドリッチ)で48時間培養した。培地を除去後、5μM Fura−2AM(ケイマンケミカル)を含むアッセイ用緩衝液(20mM HEPES(シグマアルドリッチ)、Hanks’ balanced salt solution(ギブコ)、0.1% BSA(シグマアルドリッチ)、2.5mM プロベネシド酸(和光純薬工業))を100μL添加し、60分間インキュベートした。Fura−2AMを含む緩衝液を除去した後、アッセイ用緩衝液75μLを添加した。そこに被験化合物を含むアッセイ用緩衝液25μLを添加し、反応を開始した。反応による細胞内カルシウムイオン濃度の変化は、FDSS7000(浜松ホトニクス)を用いて、340、380nmの二波長励起による蛍光強度比を測定することにより測定した。なお、被験化合物は10mMとなるようにDMSOに溶解し、最終濃度が10
−7Mから10
−5Mとなるようにアッセイ用緩衝液で希釈した(DMSOの最終濃度は1%)。表8および表9に各化合物の作動活性値を示した。
【0151】
【表8】
【0152】
【表9】
【0153】
(ここで、表8および表9のResponseとは、オレキシン−Aをフルアゴニスト(作動活性の最大値:100%)として、それぞれ0.1μM、1.0μM、10μMで被験化合物を評価した際の作動活性値をオレキシン−Aの作動活性値で割った値を示す。)
【0154】
試験例2
本発明化合物の野生型マウスへの明期脳室内投与による覚醒効果
実験動物は、C57BL/6系統のWTマウス、negative controlとしてオレキシン受容体欠損マウス(DKOマウス)(いずれも雄)を用いた。9週齢前後(±1週間)で、イソフルラン麻酔下で、脳波用電極の頭蓋骨への埋め込み(Bregma:X=1.5;Y=0.6,Lambda:X=1.5;Y=0)、筋電図用電極の僧帽筋への挿入手術を行った。脳室内投与を行うマウスには側脳室へのカニューラ埋め込みも行った(Bregma:X=−0.9;Y=−0.3)。その2週間後から投与、脳波測定を開始した。実験は、明期の始まりを9時(ZT0)、暗期の始まりを21時(ZT12)とする明暗サイクル環境下で行った。
WTマウスに対して、ZT6に、イソフルラン麻酔下で、マイクロシリンジポンプを用い被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩))(32nmol,130nmol,260nmol;生理食塩水に溶解)6μLを0.6μL/minの流速でカニューラを通して側脳室に注入し、その後の脳波筋電図を測定した。投与はコントロールの生理食塩水から始め、次に低濃度の被験化合物から投与を行った。それぞれ、投与後一日を回復期間とした。DKOマウスでも同様の手順で6μLの生理食塩水、被験化合物(260nmol)の脳室内投与を行い、その後の脳波筋電図を測定した。
結果を
図1に示す。
マウスにとって睡眠期である明期(ZT6)に被験化合物の脳室内投与を行ったところ、WTマウスでは、コントロールの生理食塩水投与と比べて、覚醒時間が有意に増加した。また、被験化合物は用量依存的に覚醒時間を延長することが確認された。DKOマウスにおいては、生理食塩水投与後と被験化合物投与後の覚醒時間に有意な差は見られなかった。
統計処理は、コントロールおよび被験化合物(32nmol,130nmol,260nmol)投与後2時間の累積覚醒時間をANOVA-Bonfferoni法によって評価した。
【0155】
試験例3
本発明化合物の野生型マウスへの明期腹腔内投与による覚醒効果
実験動物は、C57BL/6系統のWTマウス、negative control としてオレキシン受容体欠損マウス(DKOマウス)(いずれも雄)を用いた。9週齢前後(±1週間)で、イソフルラン麻酔下で、脳波用電極の頭蓋骨への埋め込み(Bregma:X=1.5;Y=0.6,Lambda:X=1.5;Y=0)、筋電図用電極の僧帽筋への挿入手術を行った。その2週間後から投与、脳波測定を開始した。実験は、明期の始まりを9時(ZT0)、暗期の始まりを21時(ZT12)とする明暗サイクル環境下で行った。WTマウス、DKOマウスに対して、ZT6に、注射針付シリンジ(29ゲージ)を用い腹腔内に100μLのコントロール(pH、osmolality調整生理食塩水)、または被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩))(40mg/kg;生理食塩水に溶解)を注入し、その後の脳波筋電図を測定した。投与はコントロール、被験化合物の順に行い、投与後一日は回復期間とした。
結果を
図2に示す。
ZT6に被験化合物の腹腔内投与を行ったところ、WTマウスでは、コントロールである生理食塩水投与と比べて、被験化合物投与後の覚醒時間が有意に増加した。DKOマウスにおいては、生理食塩水の投与後と被験化合物投与後の覚醒時間に有意な差は見られず、明期脳室内投与と同様の結果が確認された。
統計処理は、コントロールおよび被験化合物(40mg/kg)投与後2時間の累積覚醒時間を対応のあるt検定で評価した。
【0156】
試験例4
本発明化合物のオレキシン欠損マウス(OXKOマウス)への暗期脳室内投与によるカタプレキシー抑制効果
OXKOマウスに対して、ZT10付近で、イソフルラン麻酔下で、マイクロシリンジポンプとマウスの頭蓋に埋め込んであるカニューラを連結させ、ZT15に0.6μL/minの流速で6μL注入するようにプログラムを組み、その後マウスの脳波筋電図測定を再開し、ZT15に6μLのコントロール(pH、osmolality調整生理食塩水)、または被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩))(260nmol; 生理食塩水に溶解)を、脳波筋電図測定下で自動的に投与した。投与はコントロール、被験化合物の順に行い、投与後一日は回復期間とした。また、ナルコレプシーの症状のひとつであるカタプレキシーは、ナルコレプシーモデルマウスにおいて、活動期(暗期)に多く、チョコレートを与えると増加することが知られている。そのため、今回の実験では、カタプレキシーを誘発するためにマウスにチョコレート(Hershey’s)を与えて脳波筋電図の測定を行った。
マウスにとって活動期であり、ナルコレプシーモデルマウスにおいてカタプレキシーが見られる暗期(ZT15)に、OXKOマウスに対して被験化合物の脳室内投与を行ったところ、コントロールとして行った生理食塩水の投与後ではカタプレキシーが確認されたのに対して、被験化合物の投与後はカタプレキシーが抑制された(
図3)。DKOマウスもナルコレプシーモデルマウスで、カタプレキシーが観察されるが、被験化合物投与後のカタプレキシーは抑制されなかった(
図4)。
統計処理は、コントロールおよび被験化合物(260nmol)投与後6時間までのカタプレキシーの累積発生回数を対応のあるt検定で評価した。覚醒状態からREM睡眠への遷移をカタプレキシーとしてカウントした(
図5)。
【0157】
試験例5
本発明化合物のオレキシン欠損マウス(OXKOマウス)への暗期腹腔内投与によるカタプレキシー抑制効果
実験動物は、オレキシン欠損マウス(OXKOマウス)、negative controlとしてオレキシン受容体欠損マウス(DKOマウス)(いずれも雄)を用いた。9週齢前後(±1週間)で、イソフルラン麻酔下で、脳波用電極の頭蓋骨への埋め込み(Bregma:X=1.5;Y=0.6,Lambda:X=1.5;Y=0)、筋電図用電極の僧帽筋への挿入手術を行った。その2週間後から投与、脳波測定を開始した。実験は、明期の始まりを9時(ZT0)、暗期の始まりを21時(ZT12)とする明暗サイクル環境下で行った。OXKOマウス、DKOマウスに対して、暗期ZT15に腹腔内にpH、osmolality調整生理食塩水、または被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩),1mg;生理食塩水に溶解)100μL(20mg/kg,40mg/kg,60mg/kg)を投与し、その後の脳波筋電図を測定した。ナルコレプシーモデルマウスにおいて、ナルコレプシー症状のひとつであるカタプレキシーは活動期(暗期)に多く、チョコレートを与えると増加することが知られている。そのため、今回の実験では、カタプレキシーを誘発するために、マウスにチョコレート(Hershey’s)を与えた。
結果を
図6,7に示す。
マウスにとって活動期であり、カタプレキシーが見られる暗期(ZT15)に、OXKOマウスに対して被験化合物の腹腔内投与を行ったところ、コントロールとして行った生理食塩水の投与後ではカタプレキシー(↓)が観察されたのに対して、被験化合物40mg/kg、60mg/kgの腹腔内投与後はカタプレキシーが有意に抑制された(
図6,7)。DKOマウスもナルコレプシーモデルでカタプレキシーが観察されるが、被験化合物投与後のカタプレキシーは抑制されなかった(
図7)。
統計処理は、生理食塩水および被験化合物(40mg/kg)投与後、3時間までのカタプレキシーの累積発生回数を対応のあるt検定で評価した。覚醒状態からREM睡眠への遷移をカタプレキシー(↓)としてカウントした。
【0158】
試験例6
本発明化合物の野生型マウスへの明期経口投与による覚醒効果
実験動物は、C57BL/6系統野生型(WT)マウス、negative controlとしてオレキシン受容体欠損マウス(DKOマウス)(いずれも雄)を用いた。9週齢前後(±1週間)で、イソフルラン麻酔下で、脳波用電極の頭蓋骨への埋め込み(Bregma:X=1.5;Y=0.6,Lambda:X=1.5;Y=0)、筋電図用電極の僧帽筋への挿入手術を行った。その2週間後から投与、脳波測定を開始した。実験は、明期の始まりを9時(ZT0)、暗期の始まりを21時(ZT12)とする明暗サイクル環境下で行った。WTマウス、DKOマウスに対して、明期のZT6に、経口投与用ガベージを用い、100μLのpH、osmolality調整生理食塩水、または被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩),100mg;生理食塩水に溶解)100μL(100mg/body)を経口投与し、その後の脳波筋電図を測定した。
結果を
図8に示す。
マウスにとって睡眠期である明期(ZT6)に被験化合物の経口投与を行ったところ、WTマウスでは、生理食塩水投与と比べて、覚醒時間が有意に増加した。
統計処理は、生理食塩水および被験化合物投与後2時間の累積覚醒時間を対応のあるt検定で評価した。
【0159】
試験例7
本発明化合物のオレキシン神経変性マウス(オレキシン/アタキシン3マウス)への暗期腹腔内投与によるカタプレキシー抑制効果
実験動物は、オレキシン/アタキシン3マウス(Hara et al.,Neuron,30,345−54,2001)、negative controlとしてオレキシン受容体欠損マウス(DKOマウス)(いずれも雄)を用いた。15週齢前後(±1週間)で、イソフルラン麻酔下で、脳波用電極の頭蓋骨への埋め込み(Bregma:X=1.5;Y=0.6,Lambda:X=1.5;Y=0)、筋電図用電極の僧帽筋への挿入手術を行った。その2週間後から投与、脳波測定を開始した。実験は、明期の始まりを9時(ZT0)、暗期の始まりを21時(ZT12)とする明暗サイクル環境下で行った。オレキシン/アタキシン3マウス、DKOマウスに対して、暗期ZT15に腹腔内にpH、osmolality調整生理食塩水、または被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩),1mg;生理食塩水に溶解)100μL(40mg/kg)を投与し、その後の脳波筋電図を測定した。今回の実験でも、カタプレキシーを誘発するために、マウスにチョコレート(Hershey’s)を与えた。
結果を
図9,10に示す。
マウスにとって活動期であり、カタプレキシーが見られる暗期(ZT15)に、オレキシン/アタキシン3マウスに対して被験化合物の腹腔内投与を行ったところ、コントロールとして行った生理食塩水の投与後ではカタプレキシー(↓)が観察されたのに対して、被験化合物40mg/kgの腹腔内投与後は、カタプレキシーが有意に抑制された(
図9,10)。
統計処理は、生理食塩水および被験化合物(40mg/kg)投与後、3時間までのカタプレキシーの累積発生回数を対応のあるt検定で評価した。覚醒状態からREM睡眠への遷移をカタプレキシー(↓)としてカウントした。
【0160】
試験例8
オレキシン欠損マウス(OXKOマウス)への本発明化合物の連続投与による体重増加抑制効果
実験動物は、オレキシン欠損マウス(OXKOマウス)、negative controlとしてオレキシン受容体欠損マウス(DKOマウス)(いずれも雄、それぞれN=6)を用いた。24週齢前後(±1週間)のマウスを、明期の始まりを9時(ZT0)、暗期の始まりを21時(ZT12)とする明暗サイクル環境下で1週間の慣らし飼育を行い、注射によるストレスを軽減させるため一日一回針刺しの慣らしを行った。
えさは通常の飼料(オリエンタル酵母社製、脂質5.1%)で飼育した。OXKOマウス、DKOマウスに対して、暗期ZT15に腹腔内にpH、osmolality調整生理食塩水、または被験化合物(実施例7の化合物(二塩酸塩),1mg;生理食塩水に溶解)100μL(40mg/kg)を14日間投与した。3日ごとに体重、摂餌量を測定した。
結果を
図11−a〜
図11−hに示す。
OXKOマウス、DKOマウスともに、試験前の体重は有意な変化はなかった(
図11−a,
図11−e)。OXKOマウスに、実施例7の化合物40mg/kgを14日間連続投与することにより、体重増加が有意に抑制された(
図11−b、*<0.05 vs生理食塩水群 by 2 Way-ANOVA)。この効果は生理食塩水投与群では観察されなかった。さらにOXKOマウスでは一日の摂餌量(体重あたり)が有意に減少していた(
図11−c、*** <0.001 vs 生理食塩水群 by unpaired t-test)。また、実施例7の化合物40mg/kgの投与を中止すると、体重の増加が観察された(
図11−d)。以上の効果はDKOマウスでは観察されなかった(
図11−e〜
図11−h)。