特許第6746142号(P6746142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6746142光検査システム及び画像処理アルゴリズム設定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746142
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】光検査システム及び画像処理アルゴリズム設定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20200817BHJP
【FI】
   G01N23/04
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-529884(P2017-529884)
(86)(22)【出願日】2016年7月15日
(86)【国際出願番号】JP2016071030
(87)【国際公開番号】WO2017014194
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-143161(P2015-143161)
(32)【優先日】2015年7月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000147833
【氏名又は名称】株式会社イシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】樽本 祥憲
(72)【発明者】
【氏名】栖原 一浩
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−137387(JP,A)
【文献】 米国特許第07012256(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
G01N 21/84−21/958
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に光を照射する光照射部と、
前記物品を透過した光を検出する光検出部と、
前記光検出部から出力された信号に基づいて光透過画像を生成し、前記光透過画像に画像処理を施して処理画像を生成し、前記処理画像に基づいて前記物品の検査を行う検査部と、
査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムを取得しオペレータによって前記検査条件として第1検査条件が指定された場合に、前記複数の画像処理アルゴリズムから、前記第1検査条件に対応する複数の第1画像処理アルゴリズムを提示し、更に前記オペレータによって前記検査条件として第2検査条件が指定された場合に、前記複数の第1画像処理アルゴリズムから、前記第2検査条件に対応する少なくとも1つの第2画像処理アルゴリズムを提示するアルゴリズム提示部と、
前記アルゴリズム提示部によって提示された前記少なくとも1つの第2画像処理アルゴリズムのうち、前記オペレータによって選択された第2画像処理アルゴリズムを設定するアルゴリズム設定部と、を備え、
前記検査部は、前記アルゴリズム設定部によって設定された前記第2画像処理アルゴリズムに基づいて前記光透過画像に前記画像処理を施して前記処理画像を生成する、光検査システム。
【請求項2】
前記検査条件は、前記物品の種類、前記物品に含まれ得る異物の種類、前記光透過画像における濃淡、及び前記光照射部の光照射出力の少なくとも1つを含む、請求項1記載の光検査システム。
【請求項3】
前記物品の種類は、前記物品の材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含む、請求項2記載の光検査システム。
【請求項4】
前記異物の種類は、前記異物の材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含む、請求項2又は3記載の光検査システム。
【請求項5】
前記処理画像を表示する表示部を更に備える、請求項1〜4のいずれか一項記載の光検査システム。
【請求項6】
光検査システムにおいて実施される画像処理アルゴリズム設定方法であって、
査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムを取得しオペレータによって前記検査条件として第1検査条件が指定された場合に、前記複数の画像処理アルゴリズムから、前記第1検査条件に対応する複数の第1画像処理アルゴリズムを提示し、更に前記オペレータによって前記検査条件として第2検査条件が指定された場合に、前記複数の第1画像処理アルゴリズムから、前記第2検査条件に対応する少なくとも1つの第2画像処理アルゴリズムを提示するステップと、
提示された前記少なくとも1つの第2画像処理アルゴリズムのうち、前記オペレータによって選択された第2画像処理アルゴリズムを設定するステップと、を含む、画像処理アルゴリズム設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光検査システム及び画像処理アルゴリズム設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を透過した光(X線、近赤外線、その他の電磁波)を検出することで光透過画像を生成し、当該光透過画像に画像処理を施すことで物品の検査を行う光検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−137387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような光検査装置においては、予め設定された画像処理アルゴリズムに基づいて光透過画像に画像処理が施される。しかし、物品の種類等の検査条件は多種多様であるため、予め設定された画像処理アルゴリズムに基づく画像処理では、物品の検査を適切に行うことができない場合がある。
【0005】
そこで、本開示の一形態は、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に設定することができる光検査システム及び画像処理アルゴリズム設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る光検査システムは、物品に光を照射する光照射部と、物品を透過した光を検出する光検出部と、光検出部から出力された信号に基づいて光透過画像を生成し、光透過画像に画像処理を施して処理画像を生成し、処理画像に基づいて物品の検査を行う検査部と、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって指定された検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを提示するアルゴリズム提示部と、アルゴリズム提示部によって提示された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって選択された画像処理アルゴリズムを設定するアルゴリズム設定部と、を備え、検査部は、アルゴリズム設定部によって設定された画像処理アルゴリズムに基づいて光透過画像に画像処理を施して処理画像を生成する。
【0007】
この光検査システムでは、オペレータによって検査条件が指定されると、当該検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムが提示される。これにより、オペレータは、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に選択することができる。そして、オペレータによって画像処理アルゴリズムが選択されると、当該画像処理アルゴリズムが設定されて、当該画像処理アルゴリズムに基づいて光透過画像に画像処理が施される。これにより、物品の検査を適切に行うことができる。よって、この光検査システムによれば、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に設定することができる。
【0008】
本開示の一形態に係る光検査システムでは、検査条件は、物品の種類、物品に含まれ得る異物の種類、光透過画像における濃淡、及び光照射部の光照射出力の少なくとも1つを含んでもよい。更に、物品の種類は、物品の材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含んでもよい。また、異物の種類は、異物の材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含んでもよい。これらを指標として複数の画像処理アルゴリズムが分類されることで、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムが提示され易くなる。
【0009】
本開示の一形態に係る光検査システムは、処理画像を表示する表示部を更に備えてもよい。これにより、オペレータは、提示された画像処理アルゴリズムに基づいて光透過画像に画像処理を施した場合の効果を予め確認することができ、その結果、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムを精度良く選択することができる。
【0010】
本開示の一形態に係る画像処理アルゴリズム設定方法は、光検査システムにおいて実施される画像処理アルゴリズム設定方法であって、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって指定された検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを提示するステップと、提示された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって選択された画像処理アルゴリズムを設定するステップと、を含む。
【0011】
この画像処理アルゴリズム設定方法によれば、上述した光検査システムと同様の理由により、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一形態によれば、物品の検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に設定することができる光検査システム及び画像処理アルゴリズム設定方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の実施形態に係るX線検査装置の外観を示す斜視図である。
図2図2は、図1のX線検査装置のシールドボックス内の構成を示す斜視図である。
図3図3は、図1のX線検査装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図4図4は、図1のX線検査装置において用いられる画像処理アルゴリズムの一例を示す図である。
図5図5は、図1のX線検査装置において実施される画像処理アルゴリズム設定方法を示すフローチャートである。
図6図6の(a)及び(b)は、提示された画像処理アルゴリズムに基づいて生成された処理画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、X線検査装置(光検査システム)1は、シールドボックス3と、コンベア5と、X線照射器(光照射部)7と、X線ラインセンサ(光検出部)9と、モニタ(表示部)11と、を備えている。X線検査装置1は、食品等の物品Gの生産ラインに設置され、物品Gに含まれる異物の有無を検査する。
【0016】
シールドボックス3は、コンベア5、X線照射器7及びX線ラインセンサ9を収容している。シールドボックス3の両側面には、一対の開口部3aが設けられている。各開口部3aは、例えば鉛を含むゴムからなる遮蔽カーテン(図示省略)によって塞がれている。これにより、各開口部3aを介してシールドボックス3外にX線が漏洩することが抑制されている。
【0017】
コンベア5は、一対の開口部3a間に掛け渡されるように、シールドボックス3内に配置されている。コンベア5は、コンベアモータ(図示省略)によって無端状のベルト5aを回転させることで、ベルト5a上に載置された物品Gを搬送する。これにより、物品Gは、一方の開口部3aを介してシールドボックス3内に搬入され、他方の開口部3aを介してシールドボックス3外に搬出される。
【0018】
X線照射器7は、ベルト5aの上方に位置するように、シールドボックス3内に配置されている。X線照射器7は、ベルト5aの幅方向に沿ってベルト5aを横切るようにX線を照射する。これにより、X線照射器7は、コンベア5によって搬送される物品GにX線を照射する。
【0019】
X線ラインセンサ9は、ベルト5aの下方に位置するように、シールドボックス3内に配置されている。X線ラインセンサ9は、ベルト5aの幅方向に沿って一列に配置された複数の画素センサ9aを有している。これにより、X線ラインセンサ9は、コンベア5によって搬送される物品Gを透過したX線を検出する。
【0020】
モニタ11は、例えば液晶ディスプレイであり、処理画像等の各種情報を表示する。モニタ11は、タッチパネル機能を有しており、オペレータによる各種条件の入力等を受け付けるインタフェースとして機能する。
【0021】
図3に示されるように、X線検査装置1は、制御部20を更に備えている。制御部20は、検査部21と、アルゴリズム提示部23と、アルゴリズム設定部25と、を有している。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等によって構成されており、検査部21、アルゴリズム提示部23及びアルゴリズム設定部25は、制御部20において、機能ブロックとして構成される。
【0022】
検査部21は、X線ラインセンサ9から出力された信号に基づいて物品GのX線透過画像(光透過画像)を生成し、当該X線透過画像に画像処理を施して処理画像を生成する。検査部21は、生成した処理画像に基づいて、物品Gに含まれる異物の有無を検査する。処理画像を生成する際には、検査部21は、予め設定された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムに基づいてX線透過画像に画像処理を施すことができる。
【0023】
ここで、画像処理アルゴリズムについて説明する。画像処理アルゴリズムとは、X線透過画像に施す画像処理の処理手順を示す型であり、例えば、1つの画像処理フィルタ、又は、複数の画像処理フィルタの組み合わせによって構成される。図4に示される画像処理アルゴリズムの一例では、フィルタC1,C2によって、異物を含む物品GのX線透過画像が縮小されて画像1が生成される。続いて、フィルタF1〜F5によって、画像1から異物像が除去されて画像2が生成される。その一方で、フィルタF6,F7によって、画像1において異物像が強調されて画像3が生成される。続いて、Subtractionにおいて、画像2と画像3との差分が求められ、異物像が抽出された処理画像が生成される。
【0024】
アルゴリズム提示部23は、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムを、インターネット等の通信網を介して取得することができる。アルゴリズム提示部23は、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって指定された検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを提示する。なお、オペレータによる検査条件の指定は、インタフェースとして機能するモニタ11を介して行われる。
【0025】
アルゴリズム設定部25は、アルゴリズム提示部23によって提示された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって選択された画像処理アルゴリズムを設定する。つまり、アルゴリズム設定部25は、予め設定された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムに加え(又は、予め設定された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムに代えて)、オペレータによって選択された画像処理アルゴリズムを検査部21が用いるように設定する。なお、オペレータによる画像処理アルゴリズムの選択は、インタフェースとして機能するモニタ11を介して行われる。
【0026】
ここで、検査条件について説明する。検査条件とは、物品Gの検査(物品Gに含まれる異物の有無の検査等)を行うための各種条件であり、物品Gの種類、物品Gに含まれ得る異物(つまり、検出すべき異物)の種類、X線透過画像における濃淡、及びX線照射器7のX線照射出力(光照射出力)の少なくとも1つを含んでいる。物品Gの種類は、物品Gの材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含んでいる。物品Gに含まれ得る異物の種類は、異物の材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含んでいる。光透過画像における濃淡は、物品像と異物像との濃淡値の差、背景と異物像との濃淡値の差、及びその両方の少なくとも1つを含んでいる。
【0027】
アルゴリズム提示部23によって取得される複数の画像処理アルゴリズムは、上述したような検査条件を指標として分類されている。例えば、「物品Gの種類が肉である」という検査条件には、物品Gの種類が肉である場合の検査に適した画像処理アルゴリズムが対応付けられる。「異物の種類が金属である」という検査条件には、異物の種類が金属である場合の検査に適した画像処理アルゴリズムが対応付けられる。「物品像と異物像との濃淡値の差が所定値(例えば、濃淡を255階調に分けたうちの20)以上の値である」という検査条件には、物品像と異物像との濃淡値の差が所定値(例えば、濃淡を255階調に分けたうちの20)以上の値である場合の検査に適した画像処理アルゴリズムが対応付けられる。「X線照射器7のX線照射出力が所定値(例えば、75kV)以上の値である」という検査条件には、X線照射器7のX線照射出力が所定値(例えば、75kV)以上の値である場合の検査に適した画像処理アルゴリズムが対応付けられる。
【0028】
次に、X線検査装置1において実施される画像処理アルゴリズム設定方法について、図5に示されるフローチャートを参照しつつ説明する。ここでは、物品Gが「ブロック肉」であり、検出すべき異物が「直径0.5mm、長さ2mm程度のSUS(ステンレス鋼)線」である場合について説明する。
【0029】
まず、オペレータによって、「物品Gの種類がブロック肉である」という検査条件が指定されると(ステップS01)、アルゴリズム提示部23が、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって指定された検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを提示する(ステップS02)。例えば、10個の画像処理アルゴリズムが提示され、モニタ11に表示される。
【0030】
続いて、検査条件の更なる指定があり(ステップS03)、オペレータによって、「異物の種類がSUS線である」という検査条件が指定されると(ステップS01)、アルゴリズム提示部23が、先に提示した複数の画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって指定された検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを提示する(ステップS02)。例えば、提示された10個の画像処理アルゴリズムが絞り込まれて、5個の画像処理アルゴリズムが提示され、モニタ11に表示される。
【0031】
続いて、検査条件の更なる指定があり(ステップS03)、オペレータによって、「異物の大きさとして、直径が0.5mmであり、長さが2mmである」という検査条件が指定されると(ステップS01)、アルゴリズム提示部23が、先に提示した複数の画像処理アルゴリズムのうち、オペレータによって指定された検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムを提示する(ステップS02)。例えば、提示された5個の画像処理アルゴリズムが絞り込まれて、2個の画像処理アルゴリズムA1,A2が提示され、モニタ11に表示される。
【0032】
続いて、検査条件の更なる指定がなくなると(ステップS03)、オペレータによって、アルゴリズム提示部23によって提示された2個の画像処理アルゴリズムA1,A2の試用が要求される(ステップS04)。なお、オペレータによる試用の要求は、インタフェースとして機能するモニタ11を介して行われる。
【0033】
2個の画像処理アルゴリズムA1,A2の試用においては、複数の異物テストピースP1〜P5(P1:「直径1.0mm、長さ2mmのSUS線」、P2:「直径0.8mm、長さ2mmのSUS線」、P3:「直径0.6mm、長さ2mmのSUS線」、P4:「直径0.5mm、長さ2mmのSUS線」、P5:「直径0.4mm、長さ2mmのSUS線」)が貼り付けられたブロック肉がテストサンプルとして準備され、X線検査装置1において、画像処理アルゴリズムA1,A2に基づく検査が実施される。
【0034】
具体的には、検査部21が、画像処理アルゴリズムA1に基づいて、テストサンプルのX線透過画像に画像処理を施して処理画像を生成し、当該処理画像に基づいて、物品Gに含まれる異物の有無を検査する。当該処理画像を含む検査結果は、図6の(a)に示されるように、モニタ11に表示される。図6の(a)には、検査結果として、全ての異物テストピースP1〜P5が検出されたことが示されている。
【0035】
同様に、検査部21が、画像処理アルゴリズムA2に基づいて、テストサンプルのX線透過画像に画像処理を施して処理画像を生成し、当該処理画像に基づいて、物品Gに含まれる異物の有無を検査する。当該処理画像を含む検査結果は、図6の(b)に示されるように、モニタ11に表示される。図6の(b)には、検査結果として、異物テストピースP1〜P3が検出されたものの、異物テストピースP4〜P5が検出されなかったことが示されている。
【0036】
なお、検査部21は、アルゴリズム提示部23によって提示された複数の画像処理アルゴリズムのそれぞれに基づいて生成した処理画像のそれぞれについて、評価値E(例えば、E=k1×「異物像の位置での反応強さ」+k2×「異物像の無い位置での反応弱さ」)を算出し、当該複数の画像処理アルゴリズムを評価値Eの高い順にモニタ11に表示させてもよい。また、異物テストピースが貼り付けられていない物品GのX線透過画像を生成し、当該X線透過画像に、異物像に相当する像を貼り付けることで、テストサンプルのX線透過画像として用いてもよい。なお、評価値Eの算出は、姿勢、内容物の偏り等によるばらつきの影響を排除するために、物品を複数回(例えば、5回)流して算出される評価値Eの平均をとってもよい。
【0037】
以上の試用の結果、検査に適した画像処理アルゴリズムとして画像処理アルゴリズムA1がオペレータによって選択されると(ステップS05)、アルゴリズム設定部25が、アルゴリズム提示部23によって提示された2個の画像処理アルゴリズムA1,A2のうち、オペレータによって選択された画像処理アルゴリズムA1を設定する(ステップS05)。つまり、アルゴリズム設定部25は、予め設定された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムに加え(又は、予め設定された少なくとも1つの画像処理アルゴリズムに代えて)、オペレータによって選択された画像処理アルゴリズムA1を検査部21が用いるように設定する。
【0038】
これにより、検査部21は、実際の検査において、アルゴリズム設定部25によって設定された画像処理アルゴリズムA1に基づいてX線透過画像に画像処理を施して処理画像を生成し、生成した処理画像に基づいて、物品Gに含まれる異物の有無を検査することができる。このとき、モニタ11は、当該処理画像を含む検査結果を表示することができる。
【0039】
以上説明したように、X線検査装置1では、オペレータによって検査条件が指定されると、当該検査条件に対応する少なくとも1つの画像処理アルゴリズムが提示される。これにより、オペレータは、物品Gの検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に選択することができる。そして、オペレータによって画像処理アルゴリズムが選択されると、当該画像処理アルゴリズムが設定されて、当該画像処理アルゴリズムに基づいてX線透過画像に画像処理が施される。これにより、多くの種類の画像処理アルゴリズムを予め設定しておかなくても、物品Gの検査を適切に行うことができる。よって、X線検査装置1(及びX線検査装置1において実施される画像処理アルゴリズム設定方法)によれば、物品Gの検査に適した画像処理アルゴリズムを容易に設定することができる。
【0040】
また、X線検査装置1では、検査条件が、物品Gの種類、物品Gに含まれ得る異物の種類、X線透過画像における濃淡、及びX線照射器7のX線照射出力の少なくとも1つを含んでいる。更に、物品Gの種類は、物品Gの材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含んでいる。また、異物の種類は、異物の材料、形状及び大きさの少なくとも1つの種類を含んでいる。これらを指標として複数の画像処理アルゴリズムが分類されることで、物品Gの検査に適した画像処理アルゴリズムが提示され易くなる。
【0041】
また、X線検査装置1では、モニタ11が、処理画像を含む検査結果を表示する。これにより、オペレータは、提示された画像処理アルゴリズムに基づいてX線透過画像に画像処理を施した場合の効果を予め確認することができ、その結果、物品Gの検査に適した画像処理アルゴリズムを精度良く選択することができる。
【0042】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の一形態は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0043】
例えば、本開示の一形態は、X線検査装置に限定されず、電磁波を利用して物品の検査を行う光検査装置であればよい。つまり、本開示の一形態において、光とは、X線、近赤外線、その他の電磁波である。また、本開示の一形態は、物品に含まれる異物の有無を検査するものに限定されず、フィルム包装材等のパッケージ内に食品等の内容物を収容して出荷するような物品において、パッケージの封止部への内容物の噛み込み、パッケージ内での内容物の破損、パッケージ内への異物の混入等を検査するものであってもよい。また、物品の種類は肉に限定されず、様々な物品を検査対象とすることができる。同様に、異物の種類は金属に限定されず、様々な異物を検査対象とすることができる。
【0044】
検査部、アルゴリズム提示部及びアルゴリズム設定部は、機能ブロックとして構成されるものに限定されず、ハード構成として構成されていてもよい。また、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムは、光検査装置内に設けられた内部メモリに保存されてもよいし、光検査装置外に設けられた外部メモリに保存されてもよい。また、検査条件を指標として分類された複数の画像処理アルゴリズムは、インターネット等の通信網を介して光検査装置に提供される態様に限定されず、メモリカード等の記憶媒体を介して光検査装置に提供されてもよい。つまり、本開示の一形態は、上述したように、光検査システムが光検査装置のみから構成されている場合に限定されず、光検査システムが、光検査装置と、電気通信回線(例えば、インターネット等の通信網)を介して当該光検査装置と接続された外部装置(例えば、光検査装置外に設けられた外部メモリ)と、を備えて構成されている場合も含む。
【符号の説明】
【0045】
1…X線検査装置(光検査システム)、7…X線照射器(光照射部)、9…X線ラインセンサ(光検出部)、11…モニタ(表示部)、21…検査部、23…アルゴリズム提示部、25…アルゴリズム設定部、G…物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6