(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、簡単かつ確実に、安定した締結状態を得ることができる締結
具及びそれらを用いた振動部材の保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、締結部材と被締結部材とを締結する締結具であって、前記締結部材に取り付けられる取付部と、前記取付部に設けられ、前記被締結部材に設けた被締結孔に挿入して貫通する挿通部と、前記取付部に設けられ、前記挿通部が前記被締結孔に挿入された挿入状態において、前記被締結部材
を挿入方向に弾性支持する挿入方向弾性支持部と、前記挿通部に設けられ、前記挿入状態において、前記挿通部の脱出方向に前記被締結部材を弾性支持する脱出方向弾性支持部とで構成し
、前記脱出方向弾性支持部は、前記挿通部の先端から基端に向かって前記挿通部から前記挿通部の一側に張り出した脱出方向弾性支持部本体と、記脱出方向弾性支持部本体の先端から前記挿通部の側に後退して前記取付部の側に屈曲しており、前記挿入状態において前記被締結孔に係合する係合部とを備え、前記脱出方向弾性支持部は、前記係合部の先端から前記挿通部の側とは反対側に突出した突出部を更に備え、前記取付部には、挿通孔が設けられ、前記脱出方向弾性支持部は、前記突出部から前記挿通孔を貫通して前記取付部の裏側に突出した操作アームを更に備えたことを特徴とする。
【0008】
上述の弾性支持するとは、弾性力が作用した状態で支持することのみならず、弾性支持部が接触している状態を含むものとする。また、弾性支持とは、鉛直方向に支持することだけでなく、弾性力が作用する状態で、例えば、奥行き方向及び幅方向の少なくとも一方の水平方向に支持すること、すなわち三次元のいずれの方向に支持することを含むものとする。
【0009】
上述の挿入方向は、例えば、被締結孔に対して下から挿
通部を挿入する場合における下から上に向かう方向であり、被締結孔に挿
通部を挿入する方向であれば上下左右いずれの方向であってもよく、上述の脱出方向は、被締結孔に挿入された挿
通部が脱出する方向であり、挿入方向の逆方向となる。
【0010】
上述の挿通部の一側とは、例えば、板状の挿通部の場合における面外方向、つまり面に対して交差する方向の一方を意味している。
上述の前記挿通部から前記挿通部の一側に張り出した脱出方向弾性支持部本体は、挿通部から徐々に一側に張り出す態様や、側面視矩形状に張り出す態様、あるいは側面視階段状に張り出す態様の脱出方向弾性支持部本体などを含むものとする。
上記挿通部の側とは反対側は、仮に挿通部を上面側とすると底面側あるいは科面側を意味している。
【0011】
この発明により、簡単かつ確実に、安定した締結状態を得ることができる。
詳述すると、前記取付部に前記締結部材を取り付け、前記被締結部材に設けた被締結孔に挿通部を挿入して貫通するだけで、締結部材と被締結部材とを締結できるため、簡単かつ確実に締結できる。
【0012】
また、前記挿通部が前記被締結孔に挿入された挿入状態において、挿入方向弾性支持部で前記被締結部材
を挿入方向に弾性支持するとともに、脱出方向弾性支持部で脱出方向に弾性支持するため、つまり挿入方向弾性支持部及び脱出方向弾性支持部で前記被締結部材を前記挿入方向と前記脱出方向の両方向から弾性支持するため、例えば、振動する被締結部材に対して締結部材を締結する場合であっても、被締結部材の振動を弾性支持する挿入方向弾性支持部及び脱出方向弾性支持部で緩衝でき、つまり振動を減衰するため、締結部材が振動して損傷したり、締結具や締結部材などの振動による振動音が生じたりすることもなく、さらには、締結具自体が破損して、締結状態が意図せずに解消されることなく、安定した締結状態を得ることができる。
【0013】
つまり、被締結部材の振動を弾性支持する挿入方向弾性支持部及び脱出方向弾性支持部によって振動を減衰するため、締結具のみならず締結部材や被締結部材の耐久性の向上と、騒音の低減とを両立することができる。
【0014】
また、締結部材や被締結部材の強度によらず、例えば、ボルトとナットによる締結方法などのようにボルトとナットの支圧によって締結部材や被締結部材が損傷することもなく、安定した締結状態を得ることができる。
【0015】
また、前記脱出方向弾性支持部は、前記挿通部の先端から基端に向かって前記挿通部から前記挿通部の一側に張り出した脱出方向弾性支持部本体と、前記脱出方向弾性支持部本体の先端から前記挿通部の側に後退して前記取付部の側に屈曲しており、前記挿入状態において前記被締結孔に係合する係合部とを備えること
により、締結状態の被締結部材が挿通部の一側の方向に沿った方向にがたつくことを抑制でき、より安定した締結状態を得ることができる。
【0016】
詳述すると、脱出方向弾性支持部本体の先端から挿通部側に後退して取付部側に屈曲しており、前記挿入状態において被締結孔に係合する係合部を備えるため、係合部における取付部側に屈曲した部分(以後、係合部本体と呼ぶ)が被締結孔の内周面に当接することによって、締結状態の被締結部材を挿通部の一側に弾性支持することができ、これにより、締結状態の被締結部材が挿通部の一側の方向に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0017】
また、係合部が脱出方向弾性支持部本体の先端から挿通部側に後退している部分(以後、後退部分と呼ぶ)を有するため、脱出方向弾性支持部は、脱出方向弾性支持部本体の先端によって、被締結部材を脱出方向に弾性支持することができる。
【0018】
また、脱出方向弾性支持部本体は、挿通部の先端から基端に向かって挿通部から挿通部の一側に張り出しているため、挿通部の一側に対する反対側に弾性的に変位可能であり、このような脱出方向弾性支持部本体の先端に設けられた係合部は、脱出方向弾性支持部本体によって挿通部の一側に対する反対側に弾性的に変位可能であるため、例えば被締結孔の径が小さくなるような寸法誤差がある場合でも、係合部の弾性的な変位によって被締結孔の寸法誤差を吸収でき、締結状態の被締結部材が挿通部の一側の方向に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0019】
ま
た、前記脱出方向弾性支持部は、前記係合部の先端から前記挿通部の側とは反対側に突出した突出部を更に備えること
により、脱出方向弾性支持部は、係合部の先端から挿通部側とは反対側に突出した突出部を備えるため、被締結部材が係合部から抜けること、すなわち、被締結部材が係合部の先端の下側に潜り込むことを抑制できる。
【0020】
ま
た、前記取付部には、挿通孔が設けられ、前記脱出方向弾性支持部は、前記突出部から前記挿通孔を貫通して前記取付部の裏側に突出した操作アームを更に備えること
により、脱出方向弾性支持部は、突出部から挿通孔を貫通して取付部の裏側に突出した操作アームを備えるため、利用者が操作アームを挿通部側に移動させることによって、脱出方向弾性支持部本体を挿通部側に強制的に倒すことでき、これにより、容易に、挿通部を被締結孔に貫通させたり、挿通部を被締結孔から外すことができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記脱出方向弾性支持部は、前記挿通部の一側に張り出しており、前記挿通部に設けられ、前記挿入状態において、前記被締結部材を、前記挿通部の前記一側の方向に交差する側方に弾性支持する側方弾性支持部を更に備えることができる。
【0022】
この発明により、挿通部に設けられ、前記挿入状態において、被締結部材を、挿通部の一側の方向に交差する側方に弾性支持する側方弾性支持部を備えるため、締結状態の被締結部材が挿通部の側方に沿った方向にがたつくことを抑制でき、より安定した締結状態を得ることができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記側方弾性支持部は、前記挿通部の先端から基端に向かって前記挿通部から前記挿通部の前記側方に張り出した側方弾性支持部本体と、前記側方弾性支持部本体の先端から前記挿通部の側に後退して前記取付部の側に屈曲しており、前記挿入状態において前記被締結孔に係合する係合部とを備えることができる。
【0024】
上述の前記挿通部の前記側方に張り出した側方弾性支持部本体は、挿通部から徐々に側方に張り出す態様や、側面視矩形状に張り出す態様、あるいは側面視階段状に張り出す態様の側方弾性支持部本体などを含むものとする。
【0025】
この発明により、側方弾性支持部本体の先端から挿通部側に後退して取付部側に屈曲しており、前記挿入状態において被締結孔に係合する係合部を備えるため、係合部における取付部側に屈曲した部分が被締結孔の内側面に当接することによって、締結状態の被締結部材を挿通部の側方に弾性支持することができ、これにより、締結状態の被締結部材を挿通部の側方に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0026】
また、係合部が側方弾性支持部本体の先端から挿通部側に後退している部分を有するため、側方弾性支持部は、側方弾性支持部本体の先端によって、被締結部材を脱出方向に弾性支持することができる。
【0027】
また、側方弾性支持部本体は、挿通部の先端から基端に向かって挿通部から挿通部の側方に張り出しているため、挿通部の前記側方とは反対側に弾性的に変位可能であり、このような側方弾性支持部本体の先端に設けられた係合部は、側方弾性支持部本体によって挿通部の前記側方とは反対側に弾性的に変位可能であるため、例えば被締結孔の径が小さくなるような寸法誤差がある場合でも、係合部の弾性的な変位によって被締結孔の寸法誤差を吸収でき、締結状態の被締結部材が挿通部の側方に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記挿入方向弾性支持部による前記挿入方向の弾性支持力と、前記脱出方向弾性支持部による前記脱出方向の弾性支持力とが均衡するように設定することができる。
上述の弾性支持力が均衡するとは、反対方向に作用する挿入方向の弾性支持力と前記脱出方向の弾性支持力とが同程度であることのみならず、上下方向に弾性支持する場合に、挿入方向の弾性支持力と前記脱出方向の弾性支持力との一方に被締結部材の自重が作用する場合、自重が作用した弾性支持力と作用していない弾性支持力とが均衡する状態を含むものとする。
【0029】
この発明により、挿入方向弾性支持部及び脱出方向弾性支持部によって前記被締結部材に対して挿入方向と脱出方向の両方向から均等に弾性支持力が作用するため、挿入方向及び脱出方向の振動を確実に緩衝して、安定した締結状態を得ることができる。
【0030】
またこの発明の態様として、少なくとも前記挿入方向弾性支持部を複数設けることができる。
この発明により、被締結部材を、挿入方向の複数箇所で弾性支持することができるため、より安定した締結状態を得ることができる。
【0031】
またこの発明の態様として、弾性を有する金属製板材で構成するとともに、前記挿入方向弾性支持部及び前記挿通部を前記取付部に対して折曲げて構成し、前記脱出方向弾性支持部を、前記挿通部に対して折曲げて構成することができる。
【0032】
上述の折曲げは、スリットによって所望の形状に形成された部分を曲げによって立ち上げ、長手方向に湾曲させて曲げる態様、あるいは折り返すような態様を含むものとする。
この発明により、耐久性があり、前記挿入方向弾性支持部、前記挿通部、前記取付部及び前記脱出方向弾性支持部を一体的に備えた締結具を容易に構成することができる。
【0033】
またこの発明は、前記締結部材及び前記被締結部材を板材で構成するとともに、上述の締結具で、前記締結部材及び前記被締結部材を締結した締結構造であることを特徴とする。上記板材は、平板状の板材のみならず、立体加工された板材も含むものとする。
この発明により、板材で構成した前記締結部材及び前記被締結部材を、より簡単かつ確実に安定して締結することができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記締結部材及び前記被締結部材を種類の異なる金属製板材で構成することができる。
この発明により、いわゆる異種金属の板材で構成した前記締結部材及び前記被締結部材を、より簡単かつ確実に安定して締結することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記締結部材及び前記被締結部材のうち少なくとも一方を、直交する第一方向及び第二方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成されたアルミニウム合金板で構成し、前記コルゲート形状を、それぞれが前記第一方向に沿って延びる隆起部と谷部とが前記第二方向に交互に繰り返され、前記隆起部は、前記第一方向に沿って、第一起立部と第二起立部とが前記谷部から立上って交互に配列され、前記谷部は、前記第一方向に沿って、平坦部と凹部とが交互に配列され、前記第一起立部は、前記谷部から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、前記側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、前記第一起立部は内曲しており、前記第一起立部の基端部よりも先端部のほうが幅広になり、前記第二起立部は、平坦部からそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部とで構成され、前記第一起立部及び前記凹部、並びに前記第二起立部及び平坦部が、前記第二方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成することができる。
この発明により、被締結部材と締結部材のうち少なくとも一方の加工性が向上するため、所望の形状で形成することができる。
【0036】
またこの発明は、振動する振動部材の保護構造であって、対向するように組み合わせて前記振動部材を囲繞する第1カバー部材及び第2カバー部材とを備え、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材のうち一方を前記締結部材とするとともに、他方を前記被締結部材とし、上述の締結具で、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材を締結したことを特徴とする。
【0037】
上記振動部材は、例えば、自動車等のエンジン本体や、エンジンに装着された部分における排気管(特にエキマニ)や触媒部分、あるいは車体を構成するフレーム等とすることができる。
この発明により、締結具で簡単かつ確実に締結した第1カバー部材及び第2カバー部材とで振動部材を囲繞して保護することができる。
【0038】
またこの発明の態様として、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材のいずれかを前記振動部材に固定することができる。
この発明により、第1カバー部材及び第2カバー部材のうち一方のみを振動部材に固定するとともに、第1カバー部材及び第2カバー部材を締結具で締結しているため、振動部材に固定された一方の部材に伝達された振動部材の振動が締結具で緩衝されるため、他方の部材に振動が伝達することを抑制しながら、第1カバー部材及び第2カバー部材の両方を振動部材に固定することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材のいずれかを前記振動部材に固定する固定治具を備え、該固定治具を、前記振動部材に対して長手方向に固定しない固定治具で構成することができる。
【0040】
この発明により、例えば、振動部材が熱膨張する場合であっても、振動部材熱膨張の影響を、長手方向に固定しない固定治具で吸収するため、固定治具を介して、締結具で締結された前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材を前記振動部材に安定して固定することができる。
【0041】
またこの発明の態様として、前記第1カバー部材及び前記第2カバー部材のうち少なくとも一方を、直交する第一方向及び第二方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成されたアルミニウム合金板で構成し、前記コルゲート形状を、それぞれが前記第一方向に沿って延びる隆起部と谷部とが前記第二方向に交互に繰り返され、前記隆起部は、前記第一方向に沿って、第一起立部と第二起立部とが前記谷部から立上って交互に配列され、前記谷部は、前記第一方向に沿って、平坦部と凹部とが交互に配列され、前記第一起立部は、前記谷部から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、前記側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、前記第一起立部は内曲しており、前記第一起立部の基端部よりも先端部のほうが幅広になり、前記第二起立部は、平坦部からそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部とで構成され、前記第一起立部及び前記凹部、並びに前記第二起立部及び平坦部が、前記第二方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成することができる。
この発明により、カバー部材の加工性が向上するため、振動部材の形状に応じた形状に加工したカバー部材を締結具で簡単かつ確実に締結でき、確実に振動部材を囲繞して保護することができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明により、簡単かつ確実に、安定した締結状態を得ることができる締結
具及びそれらを用いた振動部材の保護構造を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【0045】
図1は本実施形態の締結クリップ10の斜視図を示し、
図2及び
図3は締結クリップ10の説明図を示し、
図4は締結クリップ10を構成する加工板材20の平面図を示している。なお、
図2(a)は締結クリップ10のA−A断面図(
図1)を示し、
図2(b)は締結クリップ10のB−B断面図(
図1)を示し、
図3は締結クリップ10のC−C断面図(
図1)を示している。
【0046】
また、
図5はコルゲートシート40に締結クリップ10を取り付けたクリップ付締結板30の説明図を示し、
図6及び
図7はクリップ付締結板30を被締結板50に締結した締結構造1の説明図を示している。
【0047】
なお、
図6(a)は締結構造1を
図2(a)と同じ断面で切断した場合の断面図を示し、
図6(b)は締結構造1を
図2(b)と同じ断面で切断した場合の断面図を示し、
図7は締結構造1を
図3と同じ断面で切断した場合の断面図を示している。また、
図6及び
図7において、クリップ付締結板30を構成するコルゲートシート40は平板状で図示している。
【0048】
締結クリップ10は、基台となる取付部11と、取付部11に立設された挿入部13と、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13の一側に徐々に張り出した先端側弾性支持片14と、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13の両側方に徐々に張り出した2個の側方弾性支持片16と、挿入部13の両側方に配置し、取付部11の一端から他方に向かって斜め方向に立ち上がった2個の基端側弾性支持片12とで構成した締結具である。締結クリップ10は、弾性を有する金属材料(例えばステンレスバネ鋼)で形成している。
【0049】
取付部11は、奥行き方向L(
図1において右下から左上に向かう方向)より幅方向W(
図1において左下から右上に向かう方向)が長い平面視矩形の平板状であり、取付部11の幅方向Wの中央であって奥行き方向Lの奥側(
図1において左上側)に挿入部13を設け、挿入部13の幅方向Wの両側に基端側弾性支持片12をそれぞれ設けている。なお、取付部11は、幅方向Wが長い平面視矩形の平板状のみならず、正方形など適宜の形状とすることができる。
【0050】
取付部11には、基端側弾性支持片12よりも幅方向Wの外側であって奥行き方向Lの中央に、後述するコルゲートシート40などの締結部材に取り付けるための取付孔15をそれぞれ設けており、幅方向Wの中央であって挿入部13よりも奥行き方向Lの手前側(
図1において右下側)に、後述する操作アーム144を挿通するための挿通孔17を設けている。なお、操作アーム144及び挿通孔17は、幅方向Wの中央のみならず、中央より幅方向Wにずれた位置に設けてもよい。
【0051】
挿入部13は、正面視矩形の平板状であり、取付部11の幅方向Wの中央であって奥行き方向Lの奥側に立設されており、幅方向Wに沿って配置している。先端側弾性支持片14は、挿入部13と同じ幅方向Wの幅及び同じ板厚を有する正面視略矩形の板状であり、挿入部13の先端から延設されており、挿入部13の先端(
図2において上方)から基端(
図2において下方)に向かって挿入部13よりも奥行き方向Lの手間側(即ち挿入部13の一側)に徐々に張り出している。
【0052】
2個の側方弾性支持片16は、挿入部13と同じ板厚を有する幅細の板形状であり、挿入部13の先端から延設されており、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13よりも幅方向Wの両側方に徐々に張り出している。
【0053】
なお、挿入部13の上端には、側方弾性支持片16に幅に対応する略平坦部分を設けているが、側面視円弧状に形成してもよいし、挿入部13に対して先端側弾性支持片14を折り返して鋭角状に形成してもよい。
【0054】
先端側弾性支持片14は、挿入部13の先端から延設された支持片本体141と、支持片本体141の先端から延設された係合部142と、係合部142の先端から延設された突出部143と、突出部143の先端から延設された操作アーム144とで構成している。
【0055】
支持片本体141は、挿入部13の先端から延設されており、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13よりも幅方向Wの手前側に徐々に張り出している。係合部142は、支持片本体141の先端から延設され、挿入部13側に向かって後退した後退部分142aと、後退部分142aの先端から取付部11側に屈曲した係合部本体142bとで構成している。突出部143は、係合部142の先端(即ち係合部本体142bの先端)から延設され、挿入部13よりも奥行き方向Lの手前側に向かって取付部11に対して略平行に突出しており、支持片本体141の先端141aよりも奥行き方向Lの手前側に突出している。操作アーム144は、突出部143の先端の幅方向Wの中央から延設され、挿通孔17を貫通して取付部11の裏側に突出している。
【0056】
挿入部13、支持片本体141、係合部142及び突出部143は、幅方向Wの幅を同幅で形成し、取付部11の幅方向Wの長さの1/4程度の幅で形成しているが、これに限定されず、適宜の幅で形成すればよい。
【0057】
係合部142の後退部分142aは、奥行き方向Lの長さを支持片本体141の先端141aと挿入部13の内面との間隔の1/2程度の長さで形成されている。また、係合部142の後退部分142aは、後述する被締結板50に設けた被締結孔51の奥行き方向Lの長さより短く形成している。
【0058】
係合部142の係合部本体142bは、上下方向の長さを後述する被締結板50の板厚よりも厚い長さで且つ係合部本体142bが取付部11に接触しない程度の長さで形成している。操作アーム144は、幅方向Wの幅を突出部143の幅方向Wの幅の1/5程度の幅で形成している。突出部143は、奥行き方向Lの長さを後退部分142aの奥行き方向Lの長さよりも長く形成することによって、支持片本体141の先端141aよりも奥行き方向Lの手前側に突出している。
【0059】
このように構成した挿入部13と先端側弾性支持片14の支持片本体141とで、
図2(a)に示すように、取付部11から立ち上がる断面略逆レ字状を構成している。支持片本体141は、弾性を有する金属材料で形成しているため、挿入部13に対して近接する方向に押されると、弾性復帰力によって近接方向とは反対方向に付勢する付勢力を発生する。また、このように構成した係合部142と突出部143とで、
図2(a)に示すように、挿入部13側に凸出した断面コ字状を構成している。
【0060】
2個の側方弾性支持片16はそれぞれ、挿入部13の先端から延設された側方支持片本体161と、側方支持片本体161の先端から延設された側方係合部162とで構成している。
側方支持片本体161は、挿入部13の先端から側方に延設され、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13よりも幅方向Wの外側(即ち挿入部13の側方)に徐々に張り出している。側方支持片本体161は、弾性を有する金属材料で形成されているため、挿入部13に対して近接する方向に押されると、弾性復帰力によって近接方向とは反対方向に付勢する付勢力を発生する。側方係合部162は、側方支持片本体161の先端から延設され、挿入部13側に向かって後退した側方後退部分162aと、側方後退部分162aの先端から取付部11側に屈曲した側方係合部本体162bとで構成している。
【0061】
側方弾性支持片16の側方支持片本体161の先端161aは、先端側弾性支持片14の支持片本体141の先端141aの高さと同じ高さに配置しているため、側方弾性支持片16の側方係合部162は、先端側弾性支持片14の係合部142の高さと同じ高さに配置している。また、側方弾性支持片16の側方支持片先端部16aは、先端側弾性支持片14の突出部143よりも取付部11側に突出している。
【0062】
このように構成した挿入部13の側方の辺と側方弾性支持片16の側方支持片本体161とで、
図3に示すように、取付部11から立ち上がる断面逆レ字状を構成している。側方支持片本体161は、弾性を有する金属材料で形成しているため、挿入部13に対して近接する方向に押されると、弾性復帰力によって近接方向とは反対方向に付勢する付勢力を発生する。また、このように構成した側方係合部162は、
図3に示すように、挿入部13側に凸出した断面逆L字状を構成している。
【0063】
2個の基端側弾性支持片12は、取付部11において挿入部13より幅方向Wの両外側に隣接して配置されており、
図2(b)に示すように、奥行き方向Lの手前側で取付部11から立ち上がってから奥側に向かって、側面視略凸状となる長手方向に湾曲するように形成している。
【0064】
なお、このように形成した基端側弾性支持片12の先端12aは、挿入部13よりも奥行き方向Lの奥側に位置するとともに、先端側弾性支持片14の突出部143よりも高い位置となる。
【0065】
基端側弾性支持片12は、幅方向Wの幅を挿入部13及び先端側弾性支持片14の幅方向Wの長さの半分の長さで形成している。基端側弾性支持片12は弾性を有する金属材料で形成しているため、取付部11に対して接近する方向に押されると、弾性復帰力によって接近方向とは反対方向に付勢する付勢力を発揮するが、先端側弾性支持片14よりも半分の幅で形成した基端側弾性支持片12の付勢力は、先端側弾性支持片14の付勢力の半分程度で反対方向であるが、基端側弾性支持片12を2個備えているため、2個の基端側弾性支持片12の付勢力の合力が先端側弾性支持片14の付勢力と略均衡している。
【0066】
このように構成した締結クリップ10は、所定形状に加工した金属製薄板状の加工板材20を曲げ加工して形成している。加工板材20は、
図4に示すように、取付部11を構成する取付部構成部分21と、基端側弾性支持片12を構成する2個の基端側弾性支持片構成部分22と、挿入部13を構成する挿入部構成部分23と、先端側弾性支持片14を構成する先端側弾性支持片構成部分24と、側方弾性支持片16を構成する2個の側方弾性支持片構成部分25とで一体構成している。
【0067】
取付部構成部分21は、奥行き方向Lよりも幅方向Wが長い平面視略長方形の平板状である。取付部構成部分21には、奥行き方向Lの中央であって幅方向Wの両端付近に、取付孔15をそれぞれ設けており、幅方向Wの中央であって奥行き方向Lの中央付近に、挿通孔17を設けている。
【0068】
取付部構成部分21の一方の長辺21aの中央から挿入部構成部分23が奥行き方向Lの奥側に突出しており、他方の長辺21aの中央側において、幅方向Wに所定間隔を隔てて、2個の基端側弾性支持片構成部分22が所定形状のスリット22aによって形成されている。
【0069】
2個の基端側弾性支持片構成部分22の間隔は、挿入部構成部分23の幅方向Wの幅よりも広く(例えばわずかに広く)設定しており、取付部構成部分21において、挿入部構成部分23の両際には所定長さのスリット23aを設けている。
【0070】
挿入部構成部分23の取付部構成部分21側とは反対側には、先端側弾性支持片構成部分24が連続して設けられている。また、挿入部構成部分23と先端側弾性支持片構成部分24との境界部分R1の幅方向Wの両側にはそれぞれ、側方弾性支持片構成部分25が幅方向Wに突出するように連続して設けられている。
【0071】
先端側弾性支持片構成部分24は、支持片本体141を構成する支持片本体構成部分241と、係合部142を構成する係合部構成部分242と、突出部143を構成する突出部構成部分243と、操作アーム144を構成する操作アーム構成部分244とで一体構成している。
【0072】
支持片本体構成部分241は、挿入部構成部分23の取付部構成部分21側とは反対側に、挿入部構成部分23と同じ幅方向Wの幅で連続して設けられている。係合部構成部分242は、支持片本体241の挿入部構成部分23側とは反対側に、支持片本体241と同じ幅方向Wの幅で連続して設けられている。
【0073】
係合部構成部分242は、後退部分142aを構成する後退部分構成部分242aと、係合部本体142bを構成する係合部本体構成部分242bとで構成している。後退部分構成部分242aは、支持片本体構成部分241の挿入部構成部分23側とは反対側に連続して設けられており、係合部本体構成部分242bは、後退部分構成部分242aの支持片本体構成部分241側とは反対側に連続して設けられている。
【0074】
突出部構成部分243は、係合部構成部分242の支持片本体241側とは反対側に、係合部構成部分242と同じ幅方向Wの幅で連続して設けられている。操作アーム構成部分244は、突出部構成部分243の係合部構成部分242側とは反対側に、突出部構成部分243よりも細い幅方向Wの幅で連続して設けられている。突出部構成部分243における操作アーム構成部分244の両際にはそれぞれ、所定長さのスリット244aが設けられている。
【0075】
挿入部構成部分23、支持片本体構成部分241、係合部構成部分242及び突出部構成部分243は、幅方向Wの幅を取付部構成部分21の幅方向Wの幅の1/4程度の幅で形成している。基端側弾性支持片構成部分22は、幅方向Wの幅を挿入部構成部分23の幅方向Wの幅の半分の幅、つまり取付部構成部分21の幅方向Wの幅の1/8程度の幅で形成している。
【0076】
基端側弾性支持片構成部分22は、奥行き方向Lの長さを挿入部構成部分23の奥行き方向Lの長さよりも短い長さ(例えばひとまわり短い長さ)で形成し、挿入部構成部分23、支持片本体構成部分241、係合部構成部分242及び突出部構成部分の各々の奥行き方向Lの長さを足し合わせた長さの約半分程度の長さで形成している。操作アーム構成部分244は、幅方向Wの幅を突出部構成部分243の幅方向Wの幅の1/5程度で形成し、奥行き方向Lの長さを適宜長さで形成している。
【0077】
側方弾性支持片構成部分25は、側方支持片本体161を構成する支持片本体構成部分251と、側方係合部162を構成する係合部構成部分252とで一体構成している。支持片本体構成部分251は、挿入部構成部分23と先端側弾性支持片構成部分24との境界部分R1の幅方向Wの両側に、幅方向Wに突出するように連続して設けられている。係合部構成部分252は、支持片本体構成部分251の境界部分R1側とは反対側に、支持片本体構成部分251と同じ奥行き方向Lの幅で連続して設けられている。
【0078】
係合部構成部分252は、側方後退部分162aを構成する後退部分構成部分252aと、側方係合部本体162bを構成する係合部本体構成部分252bとで構成している。後退部分構成部分252aは、支持片本体構成部分251の境界部分R1側とは反対側に連続して設けられており、係合部本体構成部分252bは、後退部分構成部分252aの支持片本体構成部分251側とは反対側に連続して設けられている。
【0079】
側方弾性支持片構成部分25は、奥行き方向Lの幅を適宜幅の幅細で形成している。支持片本体構成部分251は、幅方向Wの長さを支持片本体構成部分241の奥行き方向Lの長さと同程度の長さで形成し、後退部分構成部分252aは、幅方向Wの長さを後退部分構成部分242aの奥行き方向Lの長さと同程度の長さで形成し、係合部本体構成部分252bは、幅方向Wの長さを係合部本体構成部分242bの奥行き方向Lの長さよりも長く形成している。
【0080】
このように構成した加工板材20において、スリット22aの先端同士を結ぶ架空の折曲げ線S1で、基端側弾性支持片構成部分22を略直角状に谷折りするとともに、奥側に向かって折り曲げるとともに、長手方向に湾曲させて、上向きに凸な側面視略円弧状の基端側弾性支持片12を形成する。
【0081】
そして、スリット23aの先端同士を結ぶ架空の折曲げ線S2と、2個の側方弾性支持片構成部分25の挿入部構成部分23側の長辺同士を結ぶ架空の折曲げ線S3とでそれぞれ、挿入部構成部分23を略直角状に谷折りして挿入部13を形成する。
【0082】
さらに、2個の側方弾性支持片構成部分25の先端側弾性支持片構成部分24側の長辺同士を結ぶ架空の折曲げ線S4で、支持片本体構成部分241を鈍角状に谷折りして、支持片本体141を形成する。
【0083】
そして、支持片本体構成部分241と係合部構成部分242との境界部分である架空の折曲げ線S5で係合部構成部分242を鋭角状に谷折りするとともに、後退部分構成部分242aと係合部本体構成部分242bとの境界部分である架空の折曲げ線S6で係合部構成部分242を略直角状に山折りして、係合部142を形成する。
【0084】
さらに、係合部構成部分242と突出部構成部分243との境界部分である架空の折曲げ線S7で、突出部構成部分243を略直角状に山折りして突出部143を形成する。さらに、突出部構成部分243と操作アーム構成部分244との境界部分である架空の折曲げ線S8で、操作アーム構成部分244を略直角に谷折りして操作アーム144を形成する。そして、このように形成した操作アーム144を、挿通孔17に貫通させて取付部構成部分21の裏側に突出させる。このように、先端側弾性支持片14を形成する。
【0085】
さらに、支持片本体構成部分251と挿入部構成部分23及び先端側弾性支持片構成部分24との境界部分R2よりも支持片本体構成部分251側にずれた位置にある架空の折曲げ線S9で、支持片本体構成部分251を鈍角状に谷折りして、側方支持片本体161を形成する。
【0086】
そして、支持片本体構成部分251と係合部構成部分252との境界部分である架空の折曲げ線S10とで係合部構成部分252を鋭角状に谷折りするとともに、後退部分構成部分252aと係合部本体構成部分252bとの境界部分である架空の折曲げ線S11で係合部構成部分242を略直角状に山折りして、側方係合部162を形成する。このように側方弾性支持片16を形成する。
【0087】
このように構成した締結クリップ10は、例えば
図5に示すようなコルゲートシート40に取り付けてクリップ付締結板30を構成する。コルゲートシート40は、
図5(b),(c)に示すように、隆起部41と谷部42とが交互に連続してX方向に連なるとともに、Y方向において、各隆起部41と谷部42との高さがそれぞれ、
図5(d)に示すように、一定間隔で頂部(41a,42a)と底部(41b,42b)とを繰り返して形成されたコルゲート形状のアルミ板である。
【0088】
なお、隆起部41と谷部42とは、X方向において、等間隔で幅広と幅狭とを一定間隔毎に交互に繰り返して上記コルゲート形状を形成している。
さらに詳述すると、コルゲートシート40のコルゲート形状は、それぞれがY方向に沿って延びる隆起部41と谷部42とがX方向に交互に繰り返されている。
【0089】
隆起部41は、Y方向に沿って、頂部41aと底部41bとが谷部42から立上って交互に配列され、谷部42は、Y方向に沿って、頂部である平坦部42aと底部である凹部42bとが交互に配列されている。
【0090】
頂部41aは、谷部42から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部とで構成するとともに、頂部41aは内曲しており、頂部41aの基端部よりも先端部のほうが幅広になる。
【0091】
底部41bは、平坦部42aからそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部42bとで構成され、頂部41a及び凹部42b、並びに底部41b及び平坦部42aが、X方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成している。
【0092】
例えば、コルゲートシート40に締結クリップ10を取付けてクリップ付締結板30を構成するためには、取り付け箇所の隆起部41と谷部42とを押しつぶして略平板状とし、その取り付け箇所に操作アーム144を挿通させるための挿通孔40a(
図6(a)参照)を設けるとともに、締結クリップ10の取付部11の取付孔15にカシメ部材でカシメて取り付ける。
【0093】
このように構成したクリップ付締結板30を、被締結板50に締結させて締結構造1を構成するには、
図6及び
図7に示すように、被締結板50に設けた被締結孔51に、挿入部13、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を挿通させる。また、被締結板50は、所定の強度を有するSUS製の薄板材で構成している。
【0094】
なお、被締結孔51は、奥行き方向Lの幅(
図6(a)において左右方向の幅)を支持片本体141の先端141aと挿入部13の背面との間隔よりも短い長さ(
図6(a)では挿入部13と係合部本体142bの各々の外面の間隔と同程度の長さ)で形成し、幅方向Wの幅(
図7において左右方向の幅)を2個の側方弾性支持片16の側方係合部本体162bの各々の外面の間隔と同程度の長さで形成している。
【0095】
これにより、挿入部13、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を被締結板50の被締結孔51に挿通させると、被締結板50は、先端側弾性支持片14の係合部142と突出部143とで構成された断面コ字部分に嵌合するとともに、側方弾性支持片16の側方係合部162に係合する。
【0096】
被締結板50が先端側弾性支持片14の断面コ字部分に嵌合した状態では、
図6(a)に示すように、先端側弾性支持片14の支持片本体141が被締結孔51を貫通して被締結板50の上面側に配置し、支持片本体141の先端141aが被締結孔51よりも奥行き方向Lの手前側(
図6において右側)に突出するとともに、先端側弾性支持片14の突出部143は被締結孔51に挿入されずに被締結板50の底面側に配置し、突出部143の先端143aが被締結孔51よりも奥行き方向Lの手前側に突出している。
これにより、被締結板50の上下方向の変位が支持片本体141の先端141aと突出部143との間隔の範囲内に制限される。
【0097】
さらに、挿入部13に対して近接方向に弾性変位可能な支持片本体141の先端に設けられた係合部142の係合部本体142bが被締結孔51の内周面に当接することで、被締結板50を奥行き方向Lの外側に弾性支持する。これにより、締結状態の被締結板50の奥行き方向Lの変位を制限でき、締結状態の被締結板50が奥行き方向Lにぐらつくことを抑制できる。
【0098】
なお、係合部142の先端に突出部143が設けられ、被締結板50を後退部分142aと突出部143との間に配置しているため、被締結板50が係合部142の下側に潜り込むことを防止できる。さらに、突出部143の先端は、支持片本体141の先端よりも奥行き方向Lの手前側に突出しているため、一層、被締結板50が係合部142の下側に潜り込むことを防止できる。これにより、被締結板50を先端側弾性支持片14の断面コ字部分に安定的に嵌合させることができる。
【0099】
また、被締結板50が側方弾性支持片16の側方係合部162に係合した状態では、
図7に示すように、側方弾性支持片16の側方支持片本体161が被締結孔51を貫通して被締結板50の上面側に配置し、側方支持片本体161の先端161aが被締結孔51よりも幅方向Wの外側に突出するとともに、側方係合部162の側方係合部本体162bが被締結孔51内に挿通している。
【0100】
これにより、被締結板50の上方向の変位が側方支持片本体161の先端161aによって制限される。さらに、挿入部13に対して近接方向に弾性変位可能な側方支持片本体161の先端に設けられた側方係合部162の側方係合部本体162bが被締結孔51の内側面に当接することで、被締結板50を横幅方向Wの外側に弾性支持する。これにより、締結状態の被締結板50の幅方向Wの変位を制限でき、締結状態の被締結板50が幅方向Wにぐらつくことを抑制できる。
【0101】
なお、側方弾性支持片16の側方支持片先端部16aは、突出部143よりも下側に突出しているため(
図6(a)参照)、被締結板50が先端側弾性支持片14の断面コ字部分に嵌合している限り、被締結板50が側方弾性支持片16の側方支持片先端部16aの下側に潜り込むことは無く、側方弾性支持片16の側方係合部162と被締結板50との係合は維持される。
【0102】
また、被締結板50が先端側弾性支持片14の断面コ字部分に嵌合した状態では、
図6(b)に示しように、基端側弾性支持片12の先端12aが被締結板50の底面に当接する。
【0103】
なお、締結前の締結クリップ10における基端側弾性支持片12の先端12aは、先端側弾性支持片14の支持片本体141の先端141aより高い位置となるため、
図6及び
図7に示す締結状態において、先端12aが底面に当接する基端側弾性支持片12は、被締結板50を底面側から付勢状態で弾性支持して、被締結板50の上面を支持片本体141の先端141aに押し付け、先端141aが上面に当接する支持片本体141は、被締結板50を上面側から付勢状態で弾性支持する。
【0104】
したがって、締結状態の被締結板50は、クリップ付締結板30の締結クリップ10の基端側弾性支持片12及び先端側弾性支持片14によって、上下方向から挟み込むように弾性支持されている。
【0105】
なお、被締結板50の被締結孔51に、挿入部13、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を挿通させるとき、挿入部13、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を被締結孔51に圧入して挿通させてもよいが、コルゲートシート40の底面から突出している操作アーム144を手動で挿入部13側に倒した状態で、挿入部13、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を被締結孔51に挿通させてもよい。
【0106】
このように操作アーム144を手動で挿入部13側に倒した状態では、先端側弾性支持片14の支持片本体141の先端141aと挿入部13の背面(奥行き方向Lに奥側の面)との間隔が縮まるため、先端側弾性支持片14が被締結孔51を挿通し易くなる。
この場合は、被締結孔51が先端側弾性支持片14の断面コ字部分に配置したときに、操作アーム144の倒し操作を解除すると、被締結板50を断面コ字部分に嵌合させることができる。
【0107】
また、先端側弾性支持片14の断面コ字部分に嵌合した被締結板50を断面コ字部分から外すときも、操作アーム144を挿入部13側に倒すことで、被締結板50を断面コ字部分から容易に外すことができる。
【0108】
上述のように、コルゲートシート40と被締結板50とを締結する締結クリップ10を、コルゲートシート40に取り付けられる取付部11と、取付部11に設けられ、被締結板50に設けた被締結孔51に挿入して貫通する挿入部13と、挿入部13が被締結孔51に下から上に向かって挿入された挿入状態において、被締結板50を挿入方向(下から上に向かう方向)に弾性支持する基端側弾性支持片12と、挿入部13に設けられ、挿入状態において、挿入部13の脱出方向(上から下に向かう方向)に被締結板50を弾性支持する先端側弾性支持片14とで構成し、板材で構成するコルゲートシート40及び被締結板50を締結クリップ10で締結した締結構造1は、簡単かつ確実に、安定した締結状態を得ることができる。
【0109】
詳述すると、取付部11にコルゲートシート40を取り付け、被締結板50に設けた被締結孔51に挿入部13を挿入して貫通するだけで、コルゲートシート40と被締結板50とを締結できるため、簡単かつ確実に締結できる。
【0110】
また、挿入部13が被締結孔51に挿入された挿入状態において、基端側弾性支持片12で被締結板50を挿入方向に弾性支持するとともに、先端側弾性支持片14で被締結板50を脱出方向に弾性支持するため、つまり基端側弾性支持片12及び先端側弾性支持片14で被締結板50を挿入方向と脱出方向の両方向から弾性支持するため、例えば、振動する被締結板50に対してクリップ付締結板30を締結する場合であっても、被締結板50の振動を弾性支持する基端側弾性支持片12及び先端側弾性支持片14で緩衝でき、つまり振動を減衰するため、コルゲートシート40が振動して損傷したり、締結クリップ10やコルゲートシート40あるいは被締結板50などの振動による振動音が生じたりすることなく、さらには、締結クリップ10自体が破損して、被締結板50とクリップ付締結板30との締結状態が意図せずに解消されることもなく、安定した締結状態を得ることができる。
した締結状態を得ることができる。
【0111】
つまり、被締結板50の振動を弾性支持する基端側弾性支持片12及び先端側弾性支持片14によって振動を減衰するため、締結クリップ10のみならずコルゲートシート40や被締結板50の耐久性の向上と、騒音の低減とを両立することができる。
【0112】
さらにまた、被締結板50やコルゲートシート40の強度によらず、例えば、ボルトとナットによる締結方法などのようにボルトとナットの支圧によって被締結板50やコルゲートシート40が損傷することもなく、安定した締結状態を得ることができる。
【0113】
また、先端側弾性支持片14は、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13から挿入部13の一側に徐々に張り出した支持片本体141と、支持片本体141の先端から挿入部13側に後退して取付部11側に屈曲しており、挿入状態において被締結孔51に係合する係合部142とを備えるため、締結状態の被締結板50が挿入部13の一側の方向に沿った方向にがたつくことを抑制でき、より安定した締結状態を得ることができる。
【0114】
詳述すると、係合部142における取付部11側に屈曲した部分(係合部本体142b)が被締結孔51の内周面に当接することによって、締結状態の被締結板50を挿入部13の一側に弾性支持することができ、これにより、締結状態の被締結板50が挿入部13の一側の方向に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0115】
また、係合部142が支持片本体141の先端から挿入部13側に後退している部分(後退部分142a)を有するため、先端側弾性支持片14は、支持片本体141の先端によって、被締結板50を脱出方向に弾性支持することができる。
【0116】
また、支持片本体141は、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13から挿入部13の一側に徐々に張り出しているため、挿入部13の一側に対する反対側に弾性的に変位可能であり、このような支持片本体141の先端に設けられた係合部142は、挿入部13の一側に対する反対側に弾性的に変位可能であるため、例えば被締結孔51の径が小さくなるような寸法誤差がある場合でも、係合部142の弾性的な変位によって被締結孔51の寸法誤差を吸収でき、締結状態の被締結板50が挿入部13の一側の方向に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0117】
また、先端側弾性支持片14は、係合部142の先端から挿入部13側とは反対側に突出した突出部143を備えるため、被締結板50が係合部142から抜けること(即ち、被締結板50が係合部142の先端の下側に潜り込むことを)を抑制できる。
【0118】
また、先端側弾性支持片14は、突出部143から挿通孔17を貫通して取付部11の裏側に突出した操作アーム144を備えるため、利用者が操作アーム144を挿入部13側に移動させることによって、支持片本体141を挿入部13側に強制的に倒すことでき、これにより、容易に、挿入部13を被締結孔51に貫通させたり、挿入部13を被締結孔51から外すことができる。
【0119】
また、挿入部13に設けられ、挿入状態において、被締結板50を、挿入部13の一側の方向に交差する側方に弾性支持する側方弾性支持片16を備えるため、締結状態の被締結板50が挿入部13の側方に沿った方向にがたつくことを抑制でき、より安定した締結状態を得ることができる。
【0120】
また、側方支持片本体161の先端から挿入部13側に後退して取付部11側に屈曲しており、挿入状態において被締結孔51に係合する側方係合部162を備えるため、側方係合部162における取付部11側に屈曲した部分(側方係合部本体162b)が被締結孔51の内側面に当接することによって、締結状態の被締結板50を挿入部13の側方に弾性支持することができ、これにより、締結状態の被締結板50を挿入部13の側方に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0121】
また、側方弾性支持片16は、側方係合部162において側方支持片本体161の先端から挿入部13側に後退している部分(側方後退部分162a)を有するため、側方支持片本体161の先端によって、被締結板50を脱出方向に弾性支持することができる。
【0122】
また、側方支持片本体161は、挿入部13の先端から基端に向かって挿入部13から挿入部13の側方に徐々に張り出しているため、挿入部13の側方とは反対側に弾性的に変位可能であり、このような側方支持片本体161の先端に設けられた側方係合部162は、挿入部13の側方とは反対側に弾性的に変位可能であるため、例えば被締結孔51の径が小さくなるような寸法誤差がある場合でも、側方係合部162の弾性的な変位によって被締結孔51の寸法誤差を吸収でき、締結状態の被締結板50が挿入部13の側方に沿った方向にがたつくことを抑制できる。
【0123】
また、2個の基端側弾性支持片12による挿入方向の弾性支持力の合力と、先端側弾性支持片14による脱出方向の弾性支持力とが均衡するように設定しているため、基端側弾性支持片12及び先端側弾性支持片14によって被締結板50に対して挿入方向と脱出方向の両方向から均等に弾性支持力が作用するため、挿入方向及び脱出方向の振動を確実に緩衝して、安定した締結状態を得ることができる。
【0124】
なお、先端側弾性支持片14の付勢力より、被締結板50を下方から弾性支持する基端側弾性支持片12の付勢力を、被締結板50の自重分大きく設定しても先端側弾性支持片14の付勢力と基端側弾性支持片12の付勢力とは均衡した状態となる。
【0125】
また、締結クリップ10に基端側弾性支持片12を2個設けているため、被締結板50を、挿入方向の複数箇所で弾性支持することができるため、より安定した締結状態を得ることができる。
【0126】
また、コルゲートシート40に取り付ける取付部11を締結クリップ10に備え、取付部11に基端側弾性支持片12を設けるとともに、挿入部13に先端側弾性支持片14を備えることにより、コルゲートシート40に締結クリップ10を容易に取り付けてクリップ付締結板30を構成することができるとともに、取付部11に設けた基端側弾性支持片12と、挿入部13に設けた先端側弾性支持片14とで、挿入方向と脱出方向の両方向から確実に被締結板50を弾性支持することができる。
【0127】
また、弾性を有する加工板材20で締結クリップ10を構成するとともに、基端側弾性支持片12及び挿入部13を取付部11に対して折曲げて構成し、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を、挿入部13に対して折曲げて構成することにより、耐久性があり、基端側弾性支持片12、挿入部13、取付部11、先端側弾性支持片14及び側方弾性支持片16を一体的に備えた締結クリップ10を容易に構成することができる。
【0128】
また、アルミ製のコルゲートシート40とSUS製の被締結板50とは種類の異なる金属製板材で構成しているが、強度や軽量化などのそれぞれに求められる要求性能を満足することができる。
【0129】
また、コルゲートシート40を、直交するX方向及びY方向にそれぞれ延びるコルゲート形状が形成されたアルミニウム合金板で構成し、コルゲート形状を、それぞれがX方向に沿って延びる隆起部41と谷部42とがY方向に交互に繰り返され、隆起部41は、X方向に沿って、第一起立部と第二起立部とが谷部42から立上って交互に配列され、谷部42は、X方向に沿って、平坦部42aと凹部42bとが交互に配列され、第一起立部は、谷部42から略逆台形状に立上がる一対の側壁と、側壁の先端が相互に連結されて形成される比較的平坦な頂部41aとで構成するとともに、第一起立部は内曲しており、第一起立部の基端部よりも先端部のほうが幅広になり、第二起立部は、平坦部42aからそれぞれ立上がる一対の側壁と、側壁の先端を相互に連結した凹状の凹部42bとで構成され、第一起立部及び凹部42b、並びに第二起立部及び平坦部42aが、Y方向に沿ってそれぞれ断続的に連なるように形成することにより、被締結板50に対して、加工性が高いコルゲートシート40を、締結クリップ10で簡単かつ確実に締結することができる。
【0130】
このような締結構造1を利用した振動部材の保護構造100について、
図8及び
図9とともに説明する。なお、
図8は振動部材の保護構造100の底面側斜視図を示し、
図9は振動部材の保護構造100の底面側からの分解斜視図を示している。
【0131】
締結構造1を利用した振動部材の保護構造100は、エキゾーストマニホールドや排気管などの振動部材200を保護する構造であり、振動部材200を保護カバー110で囲繞している。保護カバー110は、ロアカバー120と、アッパーカバー130とを締結構造1で組み付けて構成している。
【0132】
詳述すると、ロアカバー120は、例えば、所定の強度を有するSUS製の薄板状を加工した上面(
図9において底面側)が開放したカバーであり、側面121の上端に外側に広がるフランジ122を有し、長辺部分のフランジ122に、締結構造1における被締結孔51に対応する被締結孔123を、所定間隔を隔てて設けている。
【0133】
アッパーカバー130は、例えば、上述のコルゲートシート40をロアカバー120と略上下対称形状に形成した、底面側(
図9において上面側)が開放したカバーであり、側面131の下端に外側に広がるフランジ132を有し、長辺部分のフランジ132において、ロアカバー120の被締結孔123に対応する位置に締結クリップ10を設けている。
【0134】
このように構成したロアカバー120及びアッパーカバー130を組付けて構成する保護カバー110は、まず、両端に配置した金属バンド140でロアカバー120を振動部材200に対して取り付けるとともに、振動部材200に取り付けられたロアカバー120に対して、締結クリップ10の挿入部13をロアカバー120の被締結孔123に挿入してロアカバー120とアッパーカバー130とを締結して構成する。
なお、金属バンド140は、振動部材200に対してアッパーカバー130を取付けるものの、振動部材200の長手方向に対して、所定の力が作用すれば移動可能に構成している。
【0135】
このように、振動する振動部材200の保護構造100として、対向するように組み合わせて振動部材200を囲繞するロアカバー120及びアッパーカバー130とを備え、アッパーカバー130をコルゲートシート40で構成とするとともに、ロアカバー120を被締結板50で構成し、上述の締結クリップ10で、ロアカバー120及びアッパーカバー130を締結したことにより、締結クリップ10で簡単かつ確実に締結したロアカバー120及びアッパーカバー130とで振動部材200を囲繞して保護することができる。
【0136】
また、保護カバー110を構成するロアカバー120のみを金属バンド140により固定するとともに、ロアカバー120及びアッパーカバー130を締結クリップ10で締結しているため、振動部材200に固定されたロアカバー120に伝達された振動部材200の振動が締結クリップ10で緩衝されるため、アッパーカバー130に振動が伝達することを抑制することができる。
【0137】
また、振動部材200に対して長手方向に固定しない金属バンド140でロアカバー120を振動部材200に固定することにより、振動部材200の熱膨張の影響を、長手方向に固定しない金属バンド140で吸収するため、金属バンド140を介して、締結クリップ10で締結されたロアカバー120及びアッパーカバー130を振動部材200に安定して固定することができる。
【0138】
また、ロアカバー120やアッパーカバー130の強度によらず、例えば、ボルトとナットによる締結方法などのようにボルトとナットの支圧によってロアカバー120やアッパーカバー130が損傷することもなく、安定した締結状態を得ることができる。
【0139】
なお、ロアカバー120やアッパーカバー130を上下入れ替えて保護カバー110を構成してもよい。また、
図8及び
図9においては、コルゲートシート40で構成するアッパーカバー130を、ロアカバー120と略対称形状で形成したが、アッパーカバー130を構成するコルゲートシート40は、隆起部41や谷部42によって変形加工性が高いため、振動部材200から所定の間隔を隔てて、振動部材200の形状に沿った形状で形成することもできる。
【0140】
以上、この発明の構成と前述の実施形態との対応において、
この発明の締結部材は、コルゲートシート40に対応し、
以下同様に、
被締結部材は、被締結板50に対応し、
締結具は、締結クリップ10に対応し、
挿通部は、挿入部13に対応し、
挿入方向弾性支持部は、基端側弾性支持片12に対応し、
脱出方向弾性支持部は、先端側弾性支持片14に対応し、
脱出方向弾性支持部本体は、支持片本体141に対応し、
脱出方向弾性支持部の係合部は、係合部142に対応し、
脱出方向弾性支持部の突出部は、突出部143に対応し、
側方弾性支持部は、側方弾性支持片16に対応し、
側方弾性支持部本体は、側方支持片本体161に対応し、
側方弾性支持部の係合部は、側方係合部162に対応し、
金属製板材は、加工板材20に対応し、
第一方向は、X方向に対応し、
第二方向、Y方向に対応し、
凹部は、凹部42b及び底部41bに対応し、
第一起立部は、頂部121aに対応し、
第二起立部は、底部121bに対応し、
第1カバー部材は、ロアカバー120に対応し、
第2カバー部材は、アッパーカバー130に対応し、
固定治具は、金属バンド140に対応するも、この発明は、前述の実施形態に限定されるものではない。
【0141】
例えば、上述の説明では、締結クリップ10に2つの基端側弾性支持片12を備えたが、先端側弾性支持片14による脱出方向の弾性支持力と基端側弾性支持片12による挿入方向の弾性支持力とが均衡すれば、2つに限定することなく、ひとつの基端側弾性支持片12であっても、3個以上の基端側弾性支持片12であってもよい。
【0142】
また、締結クリップ10は、両側の側方弾性支持片16、係合部142、突出部143及び操作アーム144を備えて構成したが、それらのうちの何れか1つ以上を省略して構成してもよい。例えば、
図10に示す締結クリップ10は、張出部143及び両側の側方弾性支持片16を省略して構成している。この場合も、操作アーム144は、係合部142の先端の中央に延設されている。
【0143】
また、
図11に示す締結クリップ10は、張出部143を省略して構成している。この場合、操作アーム144は、係合部142の先端の中央に延設されているとともに、基端側弾性支持片12の一方が奥行き方向Lの奥側に延びているのに対し、他方の基端側弾性支持片12は奥行き方向Lの奥側で立ち上がり、手前側に延びている。また、
図12に示す締結クリップ10は、操作アーム144及び両側の側方弾性支持片16を省略して構成している。この場合は、挿通孔17は省略されている。
【0144】
また、
図13に示す締結クリップ10は、操作アーム144を省略して構成している。この場合も、挿通孔17は省略されている。また、
図14に示す締結クリップ10は、係合部142、突出部143、操作アーム144及び両側の側方弾性支持片16を省略して構成している。この場合も、挿通孔17は省略されている。また、この場合は、先端側弾性支持片14の先端(即ち支持片本体141の先端)は基端側弾性支持片12の下側まで延設されている。なお、基端側弾性支持片12は断面略レ字状に構成するとともに、先端12aを挿入部13よりも奥行き方向Lの奥側に位置するとともに、先端側弾性支持片14の突出部143よりも高い位置となるように形成している。
【0145】
また、例えば、上述の説明では、基端側弾性支持片12は、取付部11に対して挿入部13と反対側から折曲げて構成したが、
図15(a)に示すように、取付部11に対して挿入部13のある側から折曲げて基端側弾性支持片12を構成してもよい。
【0146】
また、加工板材20において基端側弾性支持片構成部分22を折曲げ線S1で鋭角状に谷折りして直線状に延びる基端側弾性支持片12を形成したが、
図15(b)に示すように、断面円弧状となるような基端側弾性支持片12aであってもよい。
【0147】
同様に、
図15(c)に示すように、直線状の先端側弾性支持片14に対して、円弧状の先端側弾性支持片14aであってもよいし、
図15(d)に示すように、断面ジグサグ状に折り曲げた先端側弾性支持片14bであってもよい。さらにまた、図示省略するが、挿入部13に先端側弾性支持片14のみならず、反対方向の基端側弾性支持片を備えてもよい。
なお、
図15では、作図の都合上、係合部142、突出部143、操作アーム144及び側方弾性支持片16は図示省略されている。
【0148】
また、締結構造1において、コルゲートシート40に締結クリップ10を取付けてクリップ付締結板30を構成したが、スポット溶接など別の方法で、コルゲートシート40に締結クリップ10を取付けてもよく、さらには、コルゲートシート40ではなく、平板状、あるいは曲面状の板材に締結クリップ10を取付けてクリップ付締結板30を構成してもよい。
【0149】
また、上述の説明における締結構造1では、被締結板50を、締結クリップ10の基端側弾性支持片12と先端側弾性支持片14とで上下方向に弾性支持したが、上下方向の弾性支持のみならず、例えば、左右方向など、上下方向と異なる方向に弾性支持してもよい。
【0150】
さらには、締結構造1において、コルゲートシート40などの板材に締結クリップ10を取付けてクリップ付締結板30を構成したが、被締結板50に設けた被締結孔51に対応する位置に貫通孔を設けた締結部材を用い、締結部材の貫通孔と被締結孔51とが連通するように締結部材と被締結板50とを重ね、連通する貫通孔と被締結孔51とに挿入部13を挿通させて、重ねた締結部材と被締結板50とを締結クリップ10で締結する構造であってもよい。
【0151】
また、振動部材の保護構造100において、強度上の問題がなければアッパーカバー130のみならずロアカバー120もコルゲートシート40で構成してもよいし、アッパーカバー130を平板状の板材を加工してもよく、その素材についても限定されない。
【0152】
さらに、エキゾーストマニホールドや排気管以外の、例えば、自動車等のエンジン本体や、触媒部分、あるいは車体を構成するフレーム等の振動する部材を振動部材200として振動部材の保護構造100で保護してもよい。