(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746170
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】かつら用クリップ
(51)【国際特許分類】
A41G 3/00 20060101AFI20200817BHJP
F16B 2/20 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
A41G3/00 K
F16B2/20 C
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-79920(P2018-79920)
(22)【出願日】2018年4月18日
(65)【公開番号】特開2019-189952(P2019-189952A)
(43)【公開日】2019年10月31日
【審査請求日】2019年11月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507067870
【氏名又は名称】株式会社ユキ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文彦
【審査官】
遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭61−187325(JP,U)
【文献】
特開平06−116802(JP,A)
【文献】
特開2017−133119(JP,A)
【文献】
特開2011−026737(JP,A)
【文献】
特開2001−329422(JP,A)
【文献】
実開平02−022324(JP,U)
【文献】
国際公開第2007/129708(WO,A1)
【文献】
実公第007752(大正14年)(JP,Y1T)
【文献】
特開平10−337212(JP,A)
【文献】
米国特許第05137037(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0213082(US,A1)
【文献】
米国特許第04998186(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
F16B 2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の反転枠材と、
前記反転枠材の一つの辺から対辺側に向かって取付けられた複数の櫛歯と、
を備え、
複数の前記櫛歯は、頭髪を挟持した状態のときに、隣接する二本一対の前記櫛歯同士がそれぞれ交差するように形成されており、
交差した一方の前記櫛歯が、交差した他方の前記櫛歯を前記対辺に押圧することを特徴とするかつら用クリップ。
【請求項2】
前記反転枠材の左右中央より外側で交差している二本一対の前記櫛歯は、二本一対の前記櫛歯のうち前記反転枠材の左右中央側に接続されている前記櫛歯が、二本一対の前記櫛歯のうち前記反転枠材の左右中央側の前記櫛歯の外側にある前記櫛歯に対して、前記対辺と反対側に配置されるように交差されていることを特徴とする請求項1に記載のかつら用クリップ。
【請求項3】
複数の前記櫛歯は、枝部と、前記枝部の先端に形成された球状部とからなり、かつ前記枝部で交差されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のかつら用クリップ。
【請求項4】
複数の前記櫛歯は、前記枝部がクランク状に屈折又は湾曲して形成されていることを特徴とする請求項3に記載のかつら用クリップ。
【請求項5】
枠状の反転枠材と、
前記反転枠材の一つの辺から対辺側に向かって取り付けられた複数の櫛歯と、
を備え、
複数の前記櫛歯は、枝部と、前記枝部の先端に形成された球状部とからなり、頭髪を挟持した状態のときに、隣接する二本一対の前記櫛歯同士がそれぞれ前記球状部で重なって形成されていることを特徴とするかつら用クリップ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のかつら用クリップを備えたかつら。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かつら用クリップに関する。
【背景技術】
【0002】
かつらを頭髪に固定するためのかつら用クリップとして、湾曲して反転可能なベースフレームの一面側に設けられ、ベースフレームとの間にかつらベースの周縁を挟持する挟持部3と、ベースフレームの他面側に当接可能に設けられ、ベースフレーム2との間に地毛を挟持する櫛歯とを備え、挟持部のベースフレームからの突出方向が、櫛歯部のベースフレームからの突出方向と逆方向に設定されているものが提案されている(特許文献1)。
【0003】
かかるかつら用クリップによれば、かつらベースが上方に浮き上がるようにずれを生じようとする場合でも、かつらベースの周縁をしっかりと挟持して、かつらの頭部からの脱落ないしずれを確実に防止することができるという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−329422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、さらに、かつら用クリップの挟持力を高め、かつらの頭部からの脱落ないしずれを防止することができるかつら用クリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的の少なくとも1つを達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかるかつら用クリップは、
枠状の反転枠材と、
前記反転枠材に取付けられた複数の櫛歯と、
を備え、
前記櫛歯は、頭髪を挟持した状態のときに、少なくともいずれかの隣接する櫛歯に重なるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
かつら用クリップが頭髪を挟持した状態のときに、櫛歯同士が重なるようにして形成することによって、一方の櫛歯が他方の櫛歯を押圧することになるため、頭髪を挟持する力を強くすることができる。このため、より外れにくいかつら用クリップとすることができる。また、同様の挟持力であっても細い櫛歯を採用することができるようになる。
【0009】
また、本発明にかかるかつら用クリップにおいて、
前記櫛歯は、枝部と、前記枝部の先端に形成された球状部とからなり、かつ、枝部で交差して形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
櫛歯の枝部で交差させて形成することによって、かつら用クリップが頭髪を挟持した状態のときに、挟持力を強くすることができることに加え、櫛歯の枝部間においても頭髪を挟持することができる。このため、さらに強い挟持力を有するかつら用クリップを提供することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかるかつら用クリップにおいて、
前記櫛歯は、前記球状部で重なって形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
櫛歯の球状部で重なるように形成することによって、枝部の部分には隙間が発生する。これにより、枝部で頭髪を挟持することを防止できる。
【0013】
さらに、本発明にかかるかつら用クリップにおいて、
前記櫛歯は、中央より外側で重なっている櫛歯は、内側にある櫛歯が外側にある櫛歯の上側に配置されるように重なっていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
かかる構成を採用することによって、内側の櫛歯によって外側の櫛歯をより強く押圧することになるため、より強い挟持力で頭髪を挟持することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるかつら用クリップにおいて、
前記櫛歯は、枝部がクランク状に屈折又は湾曲して形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
枝部を屈折又は湾曲して形成することによって、一方の櫛歯が他方の櫛歯を押圧する圧力の強さを調整することができる。そのため、より最適な挟持力を有するかつら用クリップを提供することができる。
【0017】
本発明は、前述した効果を有するかつら用クリップを備えたかつらをも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかるかつら用クリップ100の構成の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態にかかるかつら用クリップ100の櫛歯20の状態を示す図である。
【
図3】
図3は、重なりがなかった場合のかつら用クリップの櫛歯20の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態にかかるかつら用クリップ100の構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明にかかるかつら用クリップ100の実施形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかるかつら用クリップ100が、
図1に示されている。
図1Aは、かつら用クリップ100の上面図であり、
図1B及び
図1Cは、かつら用クリップ100の前面図である。なお、説明の便宜上、
図1における矢印の方向をそれぞれ、「上下」、「左右」「前後」として説明する。第1実施形態にかかるかつら用クリップ100は、主として、反転枠材10と、この反転枠材10に取付けられた複数の櫛歯20と、を備えている。
【0021】
反転枠材10は、弾性変形可能な金属又はプラスチックで作製されており、実施形態においては、上面から見た場合に略長方形に形成されており、内部には略長方形の孔が形成されている。しかしながら、反転枠材10の外形は特に限定するものではなく、正方形であってもよいし、楕円形であってもよく、孔が形成されていればよい。また、反転枠材10は、前方から見た場合に湾曲して形成されており、反転枠材10の弾性によって、
図1B又は
図1Cに示すように、上方が凸の湾曲状態と下方が凸状の湾曲状態とを保持することができる。
【0022】
櫛歯20は、反転枠材10の一つの辺11から対辺12側に向かって、対辺12を超えて延設された複数の細い棒状体で作製されている。櫛歯20は、反転枠材10と一体に作製してもよいし、反転枠材10に溶接等によって後加工で接合してもよい。櫛歯20は、一端挟持した頭髪が先端から抜けづらくなるように、先端に枝部21の部分よりも直径が一回り大きく形成された球状部22が設けられている。また、櫛歯20は、
図1Aに示すように、反転枠材10が櫛歯20側に凸状の湾曲した状態に形成されている場合には、櫛歯20が反転枠材10に対して隙間が空いた状態(以下、「開いた状態」という。)となるように取付けられる(
図2A)。一方、反転枠材10が櫛歯20側に対して凹状の湾曲状態に形成されている場合は、櫛歯20の一部又は全部が接触している状態(以下、「閉じた状態」という。)となるように形成される(
図2B)。櫛歯20は、
図2に示すように、屈曲又は湾曲させて形成してもよい。本実施形態においては、対辺12の後方側で、一端上方に湾曲又は屈曲させた後、対辺12の後端近傍で反対方向(下方方向に)に湾曲又は屈曲させ、全体としてクランク状に形成している。このように櫛歯20を屈曲又は湾曲させることによって、反転枠材10の湾曲率を小さくしても効果的に隙間を開いた状態と空いた状態とを形成することができる。
【0023】
さらに、本発明にかかるかつら用クリップ100の櫛歯20は、左右に隣接するいずれかの櫛歯20と、上下に重なるように配置されている。すなわち、
図1に示すように、櫛歯20が枝部21で交差して形成されている。こうした状態に形成することによって、上側に配置された櫛歯20aが下側に配置された櫛歯20bに対して押圧する力が加わるので、下側に配置された櫛歯20bがより強く反転枠材10の対辺12を押圧することになる。これは、本来、下側に配置された櫛歯20bがなければ、
図3に示すように、上側に配置されている櫛歯20及び下側に配置されている櫛歯20のいずれも、対辺12に接触して押圧する位置まで移動する。従って、上側に配置されている櫛歯20は、もっと下方に配置されているはずの圧力が下側に配置された櫛歯20bに対して加わることになる。よって、下方に配置された櫛歯20bの反転枠材(対辺12)に対する押圧力は、1本の場合と比較して強くなる。従って、頭髪をより強い力で押圧し挟持するため、より頭髪から外れにくいかつら用クリップとすることができる。また、櫛歯20の枝部21を細くした場合であっても従来と同様の挟持力を発揮させることができる。
【0024】
なお、櫛歯20の重なりは隣接する櫛歯20のいずれが上方側に配置されてもよいが、
図1に示すように、隣接する櫛歯20において、反転枠材10の左右中央(一点鎖線の位置)、すなわち、
図1Bの前面図で見た場合に、反転枠材10の湾曲面が最も下方に位置している部分を境に、左側に存在する重なった櫛歯郡(四角枠Lで囲まれた櫛歯20)の重なり具合は、中央に近い側(右側)の櫛歯20が上方に配置されるように重ねるとよい。また、反転枠材10の湾曲面が最も下方に位置している部分を境に、右側に存在する重なった櫛歯郡(四角枠Rで囲まれた櫛歯20)の重なり具合は、中央に近い側(左側)の櫛歯20が上方に配置されるように重ねるとよい。仮に交差していない従来の櫛歯の場合を想定すると
図3に示すように、中央側の櫛歯20にいくほど、下方側に配置されていることがわかる。すなわち、中央側にある櫛歯20を上方側に配置させることによって、より強い押圧力を下方の櫛歯20bに対して与えることができるようになり、外れにくいかつら用クリップを提供することができる。
【0025】
以上のようにして作製されたかつら用クリップ100の使用方法について説明する。かつらは、一般的に、かつら用ベースと、このかつら用ベースに対して複数の毛髪を植設して形成されている。かつら用ベースは、一般的にネット状に形成されているか、又はシート状の合成樹脂等で形成されている、かつら用クリップ100は、このかつら用ベースの内側(頭髪が植設されている側と反対側)に取付けられる。取付け位置は特に限定するものではないが、一般的には、前額側の頭髪の生え際の近傍に設けられる。こうして取付けられたかつら用クリップ100は、開いた状態で頭髪を拾い上げた状態で、閉じた状態にすることで頭髪が固定されることになる。この際に、前述したように挟持力が従来のかつら用クリップより強くなることに加え、櫛歯20同士によっても頭髪を挟むことができるため、より外れにくいかつらとすることができる。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態にかかるかつら用クリップ100が
図4に示されている。第2実施形態にかかるかつら用クリップ100は、櫛歯20の重なり具合が異なるのみでその他の構成は第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0027】
第2実施形態にかかるかつら用クリップ100は、一方の櫛歯20が隣接する櫛歯20に対して、閉じた状態のときに球状部22同士が重なるように形成されている。かかる構成を採用することによって、櫛歯20と反転枠材10との間で頭髪を挟持することができ、また櫛歯20同士の間には隙間が形成されるので、より多くの頭髪を挟み込むことができ、より強固に頭髪を固定することができ、より外れにくいかつら用クリップを提供することができる。
【0028】
このように本発明にかかるかつら用クリップによれば、従来のかつら用クリップと比較して、より強い挟持力で頭髪を挟持させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
上述した実施の形態で示すように、かつら用のクリップとして利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…反転枠材、11…辺、12…対辺、20…櫛歯、20a…櫛歯、20b…櫛歯、21…枝部、22…球状部、100…かつら用クリップ