(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746186
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】ショットブラスト装置
(51)【国際特許分類】
B24B 31/02 20060101AFI20200817BHJP
B24C 3/28 20060101ALI20200817BHJP
B24C 3/30 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
B24B31/02 A
B24C3/28
B24C3/30
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-87054(P2016-87054)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-196671(P2017-196671A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000187149
【氏名又は名称】昭和電工ガスプロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 正之
【審査官】
山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−062965(JP,A)
【文献】
実開昭56−151749(JP,U)
【文献】
実公昭48−041298(JP,Y1)
【文献】
実開昭50−138697(JP,U)
【文献】
米国特許第05245798(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0108527(US,A1)
【文献】
実公昭50−030336(JP,Y1)
【文献】
実開昭53−065826(JP,U)
【文献】
特公昭49−006877(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/02
B24C 3/28
B24C 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラスト処理室が形成されたケース体と、該ケース体のブラスト処理室に回転可能に取付けられ、正面が開口した略円筒状のバレルと、このバレル内の被処理物に投射材を投射する投射機を有するショットブラスト装置であって、前記バレルは、周側面の一部に前記被処理物を排出する排出口と、この排出口側の前記周側面に取付端部が固定され、一方、他端部が前記排出口から離間して延伸するカバー部材とを有し、該カバー部材は、前記バレルを一方の方向に回転させた場合には前記排出口から被処理物が排出されないようにカバーし、他方の方向に回転させた場合には前記排出口から被処理物が排出されるものであることを特徴とするショットブラスト装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記排出口の側部に、その取付端部が固定されていることを特徴とする請求項1に記載のショットブラスト装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、板状で略L字型に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のショットブラスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は処理物に投射材を投射してバリ取りを行なうショットブラスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のショットブラスト装置は、「一側壁が開口されたブラスト処理室が形成されたケース体と、このケース体の開口された一側壁の外方へ突出するように固定された固定レールと、この固定レールに案内されてスライド移動し、かつ前記ケース体の開口する一側壁を開閉する開閉扉と、この開閉扉に取付けられた前記ケース体内に固定された内側固定レールに案内されてスライド移動するバレル支持フレームと、このバレル支持フレームに回転可能で、かつ傾斜状態で取付けられたバレルと、このバレルを回転駆動させ、かつ前記バレル支持フレームに取付けられたバレル駆動装置と、前記バレルの壁面に該バレルを開口するように取付けられた排出口と、該排出口を自動で開口させる排出口開口装置と、該排出口開口装置で排出口を開口させた後、処理物を自動で排出させる処理物排出手段とを備えたことを特徴とするショットブラスト装置」(特許文献1)が知られている。
しかし、このようなショットブラスト装置では、バレルを横方向にスライド移動させた後、バレルの排出口を開口させ処理物を排出していたため、バレルがスライドするためフレームの寸法が大きくなるとともに、排出のための装置等が必要であり、非常に高コストとなるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−7655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、省スペースにできると共に、バレル内より処理物を効率よく取り出して、効率よく処理作業を行なうことができるショットブラスト装置を提供することを目的としている。
【0005】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は次の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、より完全に明らかになるであろう。
ただし、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のショットブラスト装置は、ブラスト処理室が形成されたケース体と、該ケース体のブラスト処理室に回転可能に取付けられ
、正面が開口した略円筒状のバレルと、このバレル内の被処理物に投射材を投射する投射機を有するショットブラスト装置であって、前記バレルは、周側面の一部に前記被処理物を排出する排出口と、この排出口側の前記周側面に取付端部が固定され、一方、他端部が前記排出口から離間して延伸するカバー部材とを有し、該カバー部材は、前記バレルを一方の方向に回転させた場合には前記排出口から被処理物が排出されないようにカバーし、他方の方向に回転させた場合には前記排出口から被処理物が排出されるものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載の発明においては、バレルを一方の方向に回転させた場合には前記排出口から被処理物が排出されないようにカバーし、他方の方向に回転させた場合には前記排出口から被処理物が排出されるカバー部材が設けられているので、バレルの回転方向を変えるだけで被処理物を排出することができる。
したがって、バレルをスライド移動等させることもなく、省スペース化することができる。
(2)請求項2も前記(1)と同様な効果が得られるとともに、カバー部材が排出口の一端部から立ち上がるように形成されているので、バレル内に被処理物をブラスト処理する空間を大きく取ることができる。
(3)請求項3も前記(1)〜(2)と同様な効果が得られるとともに、カバー部材を略L字状に形成しているので、一方の方向にバレルを回転させた場合に、排出口から被処理物が排出されることをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1乃至
図7は本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
図8及び
図9は本発明の第2の実施形態示す説明図である。
【
図1】第1の実施形態のショットブラスト装置の正面図。
【
図6】バレルを一方の方向に回転させた場合の説明図。
【
図7】バレルを他方の方向に回転させた場合の説明図。
【
図8】第2の実施形態のショットブラスト装置の正面図。
【
図9】バレルを他方の方向に回転させた場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
なお、一方の方向とは、被処理物に投射材を投射するブラスト処理を行う際に回転させる方向をいい、他方の方向とは、一方の方向と逆方向に回転させることをいう。一方の方向は時計回り(CW)であっても、反時計方向(CCW)であってもよい。
例えば一方の方向をCWとして場合には、他方の方向はCCWとなる。
本実施の形態においては、一方の方向をCCW、他方の方向をCWとして説明する。
【0010】
図1乃至
図7に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は大型の被処理物2(成型品)のバリを除去する本発明のショットブラスト装置である。
このショットブラスト装置1は、
図1及び
図2に示すように、外観が箱状のケース体3で、この箱状のケース体3の正面側には上下に開閉扉4、5が設けられている。上部開閉扉4の内部にはブラスト処理室6が形成されており、このブラスト処理室6には正面が開口した略円筒状のバレル7が傾斜状態で設けられている。このバレル7は、円筒状のバレル7の軸心と同軸となる取付軸8を介してバレル回転装置9に取り付けられており、このバレル回転装置9よって、略円筒状のバレル7の軸心を支点に回転できるものである。また、このバレル7の開口部分と対向する位置(背面部分)には投射材10を投射する投射機11が設けられている。
【0011】
前記ケース体の下部開閉扉5の内側には、前記ブラスト処理室6の下部に設けられたホッパー13と、このホッパー13の下部にと弾性材12を介して連設され、該ホッパー13からの大バリ、投射材、小バリが落下してくるのを受けて選別する選別装置14が設けられている。
【0012】
また、ホッパー13および選別装置14内のバリ等を効率よく篩い落とすために、これらを振動させる振動装置15も設けられている。
この選別装置14は多段の篩状になっており、最上部の篩は大バリ及び被処理物2が残留する粗さとなっており、2段目は小バリが残留する粗さとなっている。投射材10のみが最下段まで落下する。
【0013】
選別装置14には、このようにして選別された大バリを収納する大バリ収納容器16と、前記選別装置14で選別された投射材10を前記投射機11の吸引ホース17を介して供給できるように設けられた投射材貯槽18と、前記選別装置14で選別された小バリを収納する小バリ収納容器19が設けられている。
【0014】
前記バレル7は、
図3乃至
図5に示すように、上下が小径となる略円筒形状で、上面(前記取付軸8とは反対側の面)が開口しており、この開口から被処理物2をバレル7内に投入する。このバレル7には投射材10やバリが通過する大きさの透孔20が多数形成されており、この透孔20から落下した投射材10等をホッパー13で受ける。
【0015】
バレル7の周側面7aには、加工済みの被処理物2を排出する排出口21が形成されている。この排出口21は、本実施の形態においては、バレル7の周側面7aの約1/12程度の幅で、バレル7の背面から正面側のバレル7の外径が小径になる部位までの長さで設けられている。排出口21の幅や長さは、適宜変更できるものである。
【0016】
また、この排出口21の側部(本実施の形態においては、バレル7の正面から見た場合に排出口21の左側側部)には、その取付端部が固定され、他端部が立ち上がるように前記排出口21から離間して延伸するカバー部材22形成されている。このカバー部材22の他端部22aとバレル7の内側面の間から前記排出口にかけては、少なくとも被処理物2が通過できる大きさの被処理物通過部23が設けられている。
【0017】
このカバー部材22は他端部22aが排出口21とは逆側に屈曲した略L字状で板状の部材であり、バレル7を一方の方向に回転させた場合には前記排出口21から被処理物2が排出されないようにカバーし、他方の方向に回転させた場合には前記排出口21から被処理物2が排出されるものようにガイドする。
【0018】
このカバー部材22は、本実施の形態においては、略L字状で板状の部材を用いているが、カバー部材22全体が湾曲しているものを用いてもよい。
このカバー部材22の長さは、カバー部材の他端部22aとバレル7の内側面の間の隙間(
図5でaと示した部位の寸法)、又は被処理物通過部23の最小隙間(
図5でbと示した部位の寸法)の少なくとも一方が被処理物2の最大径(最大寸法)の1.1倍以上でバレル直径の1/2以下、更に好適には、被処理物2の最大径(最大寸法)の1.2倍以上でバレル直径の2/3以下となるように形成されている。
【0019】
カバー部材22の長さが、カバー部材の他端部22aとバレル7の内側面の間の隙間(
図5でaと示した部位の寸法が)バレル7の直径の1/2以下となるような長さの場合には、ブラスト処理時に被処理物が被処理物通過部23に入りやすくなるが被処理物2の落差が大きくなり、処理性能を向上させることができるという効果も得られる。
【0020】
これらの隙間の寸法やカバー部材22の長さ寸法は、被処理物2や処理方法によって適宜変更できるものである。
なお、このカバー部材22にもバレル7に形成されているものと同様の透孔20が多数形成されている。
【0021】
その作用の詳細を説明すると、本実施の形態においては、一方の方向(CCW)にバレル7を回転させた場合、
図6に示すように、被処理物2は重力によってバレル7下部の周側面付近を回転しながらブラスト処理を受ける。カバー部材22がバレル7の下部の周側面付近に到達すると、被処理物2はカバー部材22によって持ち上げられ、カバー部材22の取付端部が上方(バレル7の正面視1時から2時の方角付近)まで回転すると被処理物2は下部の周側面付近に落下する。この時、排出口21は、すでに上方の位置(バレル7の正面視2時から3時の方角付近)に到達しているため、排出口21から被処理物2が排出されることはない。また、この時に被処理物2がカバー部材22の他端部22aとバレル7の内側面の間(被処理物通過部23の入り口部分)を通過しても、排出口21の方へ被処理物2が移動することはなく、再度被処理物通過部23の入り口部分を通過してバレル7の下部の周側面付近に移動する。
【0022】
他方の方向(CW)にバレル7を回転させた場合、
図7に示すように、被処理物2は重力によってバレル7の下部の周側面付近に位置し、カバー部材22の他端部22a側が、その取付端部よりも先にバレル7の鉛直下方向の周側面付近に到達し、被処理物通過部23を被処理物2が通過する。その後、排出口21がバレル7の下部の周側面付近に到達すると、被処理物2が排出口21から排出される。
【0023】
この時、被処理物通過部23を通過した被処理物2は、カバー部材22によってガイドされ確実に排出口21から排出される。
【0024】
本発明のショットブラスト装置1を使用する際には、上部開閉扉4を開け、ブラスト処理室6内のバレル7に被処理物2を投入する。
なお、被処理物2をバレル7に投入する際には、排出口21を鉛直上方へ位置させた状態で投入することが望ましい。
【0025】
その後、本実施の形態においては、一方の方向(CCW)にバレル7を回転させながら、投射機11によりバレル7の被処理物2に対して投射材10を投射し、被処理物2のバリ等を除去する。なお、本実施の形態においては図示等指定内が、ブラスト処理を行う際にブラスト処理室6内に冷媒を供給する冷媒供給装置をさらに備えてもよい。
【0026】
被処理物2の処理が完了したら、他方の方向(CW)にバレル7を回転させ、被処理物通過部23を被処理物2が通過し、排出口21から被処理物2を排出する。
【0027】
排出口21から排出された被処理物2は、ホッパー13を介して選別装置14に落下する。被処理物2を回収する場合には、ショットブラスト装置1の動作を停止し、下部開閉扉5を開けて選別装置14の被処理物2を回収する。なお、この下部開閉扉5には、被処理物2を回収するために小窓(図示せず)を設けてもよい。
【0028】
低温で処理する場合は、処理物の出し入れに上部開閉扉4を大きく開けてバレル7を出し入れする必要が無い(下部開閉扉5の小窓から取り出し可能)ので、冷気が逃げず外気の侵入を防ぎ、冷却用のガス(炭酸や窒素)を無駄にしない。
【0029】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図8及び
図9に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0030】
図8及び
図9に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、バレル7の排出口21に対応する下部にシューター24を備え、前記バレル7を他方の方向に回転させた場合に、前記排出口21から排出された被処理物2が前記シューター24を介して排出されるように構成した点で、このようなショットブラスト装置1Aにしても、前記本発明を実施するための第1の形態と同様な作用効果が得られるとともに、自動で装置外部に被処理物2を排出することができる。
本実施の形態のように、シューター24をホッパー13の下部に設ける場合には、シューター24にも透孔20を形成し、バリや投射材10のみが選別装置14へ落下するように
構成するとよい。
【0031】
なお、本発明の実施形態ではバレルは上下部分が小径の略円筒形状のものについて説明したが、上下部分が小径の略多角柱状(例えば略六角柱状や略八角柱状)のバレルを用いてもよく、大型のバレルを用いる場合には、投射機を複数設けてもよい。
また、カバー部材は一方の方向にバレルを回転させた時に、排出口から被処理物が排出されないようにカバーできる位置であれば、排出口の側部から離れた位置に取付端部位置するものであってもよく、他端部が屈曲していないものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明はショットブラスト装置を製造する産業で利用される。
【符号の説明】
【0033】
1、1A:ショットブラスト装置、
2:被処理物、 3:ケース体、
4:上部開閉扉、 5:下部開閉扉、
6:ブラスト処理室、 7:バレル、
8:取付軸、 9:バレル回転装置、
10:投射材、 11:投射機、
12:弾性材、 13:ホッパー、
14:選別装置、 15:振動装置、
16:大バリ収納容器、 17:吸引ホース、
18:投射材貯槽、 19:小バリ収納容器、
20:透孔、 21:排出口、
22:カバー部材、 23:被処理物通過部、
24:シューター。