(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746216
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】フェンダースペーサ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/16 20060101AFI20200817BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
B62D25/16 B
B62D25/08 E
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-192171(P2016-192171)
(22)【出願日】2016年9月29日
(65)【公開番号】特開2018-52374(P2018-52374A)
(43)【公開日】2018年4月5日
【審査請求日】2019年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154782
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 知二
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】山下 純史
(72)【発明者】
【氏名】藤木 昇
【審査官】
岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−221778(JP,A)
【文献】
特開2010−120623(JP,A)
【文献】
特開2003−191863(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0241234(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/16
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の乗員席から車両前方に向かって突出するフロントアッパメンバと、前記フロントアッパメンバに対して車両上下方向及び車両幅方向にて離間し且つ車両下側に位置するフロントフェンダーとの間に位置するフェンダースペーサであって、
前記フロントアッパメンバの車両上下方向に沿った第1面に当接する第1当接面、
前記フロントフェンダーライナーの車両上下方向に沿った第2面に当接する第2当接面、及び
前記第1当接面及び前記第2当接面を接続する、前記第2当接面の側を起点として車両外側から車両内側に向かって斜めに配置される接続部、
を有するフェンダースペーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンダースペーサに関し、特に、フロントサイドメンバに当接するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフェンダースペーサについて、
図5に示すガセット46を用いて説明する。フロントフェンダー4の車幅方向内方側に、ドアヒンジピラー70側に突出する取付けガセット46を設け、その取付けガセット46の車幅方向内端に、ドアヒンジピラー70に固定される締結ボルト47を挿通する挿通穴46cを設け、側面視で取付けガセット46と重複するフロントフェンダー4の外表面に、開口45を形成している。これにより、車体前部の側部にサブウインドウとフロントフェンダーを備えた車体構造において、サブウインドウガラスを取り外すことなく、フロントフェンダーの交換性を確保して、さらに、フロントフェンダー上部の撓みやガタツキを防止する
【0003】
フロントフェンダー4の内部に設けられる取付けガセット46について説明する。
図6に示すように、フロントフェンダー4の車幅方向内方側には、前述したように取付けガセット46を設けている。
【0004】
この取付けガセット46は、中央に車幅方向内方側に隆起する山型隆起部46aを設け、その頂の平面部46bに締結ボルト47を挿通する挿通穴46cを設けている。また、周縁にフロントフェンダー4の内壁面4bに接着クッション材46dを介して当接する当接フランジ部46eを設け、さらに、当接フランジ部46eの上端と後端には、それぞれフロントフェンダー4に接合される接合フランジ46f,46gを設けている。なお、取付けガセット46の下側部分46hは、開放している。
【0005】
この取付けガセット46は、フロントフェンダー4の後部を、サブウインドウ開口部30Aの下方に位置するドアヒンジピラー70に締結固定するために、側面視でウィンカーランプ44の位置と略一致する位置に設置している。この位置に設置することで、ウィンカーランプ44を装着する開口45を通じて、締結ボルト47を締結操作して、フロントフェンダー4を着脱できるように構成している。
【0006】
このように、取付けガセット46を設けて、フロントフェンダー4を車体(ドアヒンジピラー70)に固定することにより、フロントフェンダー4上部の撓みやガタツキを確実に抑えることができる。
【0007】
すなわち、サブウインドウガラス30を接着固定した場合には、その下方のフロントフェンダー4上部の締結場所を確保できないため、フロントフェンダー4上部の締結力が低下して、フロントフェンダー4上部に撓みやガタツキが生じるおそれがある。これを、取付けガセット46を設けることで、フロントフェンダー4内の車体(ドアヒンジピラー70)に、締結固定できるため、フロントフェンダー4の締結力を高めることができるのである(以上、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−307977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のガセット46には、以下に示すような改善すべき点がある。ガセット46は、フロントフェンダー4に設けられているウィンカーランプ44を装着する開口45を用いて、ドアヒンジピラー70に締結する締結ボルト47を挿入している。したがって、フロントフェンダー4に何らかの開口を設ける必要があるため、意匠上、フロントフェンダー4に開口を設けることができない場合には利用できない、という改善すべき点がある。また、ガゼット46は、接着クッション材46dを用いてフロントフェンダー4に固定されるが、接着性の問題により、ガセット46を、長期間、安定して固定することが難しい、という改善すべき点がある。
【0010】
なお、車両重量軽減のため、フロントフェンダーを樹脂により形成する場合には、金属によりフロントフェンダーを形成する場合に比してたわみが生じやすい。このため、意匠性を担保しながら、長期間、安定してたわみを防止する必要がある。
【0011】
そこで、本発明は、フロントサイドフェンダーのたわみを、簡易な構成で防止できるフェンダースペーサを提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0013】
本発明に係るフェンダースペーサは、自動車の乗員席から車両前方に向かって突出するフロントアッパメンバと、前記フロントアッパメンバに対して
車両上下方向及び車両幅方向にて離間し且つ車両下側に位置するフロントフェンダーとの間に位置するフェンダースペーサであって、前記フロントアッパメンバの車両上下方向に沿った第1面に当接する第1当接面、前記フロントフェンダーライナーの車両上下方向に沿った第2面に当接する第2当接面、
及び前記第1当接面及び前記第2当接面を接続する、前記第2当接面の側を起点として車両外側から車両内側に向かって斜めに配置される接続部、を有する。
【0014】
これにより、フェンダースペーサを、第1当接面及び第2当接面の異なる2面で支持することができるので、簡易な構成で、フェンダースペーサが回転することを防止できる。つまり、フェンダースペーサとフロントサイドフェンダーとの位置関係を保持できるため、フロントサイドフェンダーのたわみを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るフェンダースペーサを配置する自動車の車体前部の構造を示す図である。
【
図2】本発明に係るフェンダースペーサの一実施例であるフェンダースペーサ100を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0017】
本発明に係るフェンダースペーサの一実施形態であるフェンダースペーサ100について図面を用いて説明する。
【0018】
フェンダースペーサ100は、車両の乗員席前方、いわゆるエンジンルーム内に配置される。フェンダースペーサ100を用いる自動車の車体前部の構造について
図1を用いて説明する。自動車の車体前部には、車両前方方向に突出するフロントアッパメンバUMが存在する。フロントアッパメンバUMは、乗員席から車両前方に向かって突出し、フード下に存在する。また、フロントアッパメンバUMは、車両側面に沿って、左右に1つずつ存在する。フロントアッパメンバUMは、金属により形成されている。
【0019】
車両外側から内側を見たフロントアッパメンバUMを
図1に示す。フロントアッパメンバUMは、車両上下方向に沿った第1面PUM(斜線領域)を有している。
【0020】
フロントサイドフェンダーSFの車両下方側には、いわゆるタイヤハウスの上面を形成するフロントフェンダーライナーFLが存在する。フロントフェンダーライナーFLは、車両下側から上側に向かって凸状のフェンダーライナー突出部FL1を有している。フェンダーライナー突出部FL1は、車両の外側に位置し、車両内側から外側に向かって下降する斜めの斜面からなる第2面PFLを有している。
【0021】
なお、各フロントアッパメンバUMの車両外側には、車両の外表面を形成するフロントサイドフェンダーSF(図示せず)が存在する。フロントサイドフェンダーSFは、樹脂により形成されている。
【0022】
フェンダースペーサ100について
図2を用いて説明する。フェンダースペーサ100は、アッパメンバ支持部101、フェンダー支持部103、及び、接続部105を有している。アッパメンバ支持部101は、フロントアッパメンバUMに対して車両外側に配置される。アッパメンバ支持部101は、断面、変形の楕円形状を有する筒状形状を有している。
【0023】
アッパメンバ支持部101は、車両内側に、フロントアッパメンバUMに設けられている所定の取付孔(図示せず)に嵌合する取付突起を有している。取付突起を、フロントアッパメンバUMの取付孔に嵌合させるだけで、アッパメンバ支持部101を、ひいては、フェンダースペーサ100を、容易に、フロントアッパメンバUMに取り付けることができる。
【0024】
フェンダー支持部103は、フロントフェンダーライナーFLに対して車両外側に配置される。フェンダー支持部103は、断面、変形の楕円形状を有する筒状形状を有している。フェンダー支持部103は、フロントフェンダーライナーFLの斜面PFLに当接し、フロントフェンダーライナーFLに対して自身を支持する第2当接面P103を有している。
【0025】
接続部105は、アッパメンバ支持部101とフェンダー支持部103とを接続し、両者を一体とする。なお、アッパメンバ支持部101は、フェンダー支持部103に対して車両内側に配置されるため、接続部105は、フェンダー支持部103を起点として、車両外側から車両内側に向かって斜めに配置される。
【0026】
フェンダースペーサ100のフロントサイドフェンダーSF側から見た状態、つまり背面の状態を
図3に示す。アッパメンバ支持部101は、第1当接面P101を有している。また、フェンダー支持部103は、第2当接面P103を有している。第1当接面P101は、アッパメンバ支持部101のフロントサイドフェンダーSF側に位置する。第2当接面P103は、フェンダー支持部103のフロントサイドフェンダーSF側に位置する。
【0027】
図4に、
図3に示すフェンダースペーサ100のX−X断面を示す。第1当接面P101は、フロントアッパメンバUMの第1面PUMに当接する。また、第2当接面P103は、フロントフェンダーライナーFLの第2面PFLに当接する。つまり、フェンダースペーサ100では、車両上側に位置するフロントアッパメンバUMに当接する第1当接面P101、及び、車両下側に位置するフロントフェンダーライナーFLに当接する第2当接面P103の異なる2面を用いて、自身を固定する。このため、フェンダースペーサ100が、車両前後方向を回転軸として車両上側、又は、車両下側に向かって回転することを防止できる。これにより、フロントサイドフェンダーSFの下方が車両内側に向かって押圧されたとしても、フェンダースペーサ100が回転しないため、フェンダースペーサ100とフロントサイドフェンダーSFとの間を所定距離に維持でき、結果として、フロントサイドフェンダーSFのたわみを防止することができる。
【0028】
また、第1当接面P101及び第2当接面P103は、フロントサイドフェンダーSFから所定距離に位置するように配置される。なお、第1当接面P101及び第2当接面P103が位置するフロントサイドフェンダーSFからの距離は、フロントサイドフェンダーSFに外部から車両内側方向に力が加わった際に、フロントサイドフェンダーSFに生ずるたわみの量が外部からの美観上、一般的な金属板により形成されるフロントサイドフェンダーに比して劣らない程度に設定される。
【0029】
[その他の実施形態]
(1)第2当接面102:前述の実施例1においては、フェンダースペーサ100において、フロントフェンダーライナーFLの第2面に当接する面を第2面としたが、フロントフェンダーライナーFLのその他の面を第2面としてもよい。」
【0030】
(2)第1当接面P101:前述の実施例1においては、アッパメンバ支持部101のフロントアッパメンバUM側の1面を第1当接面P101としたが、車両上下方向に沿った面であれば、例示のものに限定されない。例えば、アッパメンバ支持部101にアッパメンバ支持部101の第1面PUMに接し、自身を支持する支持突出部を設け、支持突出の底面によって形成される面を第1当接面としてもよい。
【0031】
(3)フロントサイドフェンダーSF:前述の実施例1においては、フロントサイドフェンダーSFは樹脂により形成されているとしたが、金属材料等によって、形成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るフェンダースペーサは、例えば、樹脂製のフロントサイドフェンダーを有する乗用車に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
100 フェンダースペーサ
101 アッパメンバ支持部
P101 第1当接面
103 フェンダー支持部
P103 第2当接面
105 接続部
UM フロントアッパメンバ
PUM 第1面
FL フロントフェンダーライナー
FL1 フェンダーライナー突出部
PFL 第2面
SF フロントサイドフェンダー