(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
廃棄物で埋立てられる凹面を有する廃棄物処分場の、前記凹面を前記凹面の少なくとも縁までを、前記凹面に近い側から2重に覆う、共に遮水性と絶縁性とを有する材料で形成された下遮水シートと、上遮水シートの損傷部位を検知するための、
前記上遮水シートの内側であって前記凹面の内部に配される第1電極と、
前記下遮水シートの外側であって地中に配される第3電極と、
前記第1電極と前記第3電極との間に定電圧をかける定電圧電源と、
前記凹面の廃棄物で埋立てられることが予定された部分に対応する前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、平面視で分散させた状態で多数配された検知センサと、
前記検知センサが存在する位置のそれぞれで測定された電位を検知するとともに、前記電位のピーク位置を検知する検知装置と、
を含んでなる、遮水シートの損傷検知システムを有している、廃棄物処分場の遮水構造であって、
前記下遮水シートの外側に設けられた遮水性を有する面である遮水面と、
前記遮水面と前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、その水位が前記上遮水シートの内側に溜まった汚水の水位よりも高くなるようにして水を保つ、水制御手段と、
を備えてなる、
遮水構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、汚水の漏れ出しの可能性のより低い遮水シートを上遮水シートと下遮水シートとの2重構造にする技術について研究を進め、更に、上述の上遮水シートと下遮水シートとの間にある高さまで水を満たすという技術についても研究を進めた。
しかしながら、ここで1つの課題が生じた。上遮水シートと下遮水シートとの間にある高さまで水を満たすという技術は、遮水シートの損傷検知技術と非常に相性が悪いのである。かかる相性の悪さを説明するために、まず、遮水シートが上遮水シートと下遮水シートとの2重構造である場合における遮水シートの損傷検知技術について説明する。
【0008】
通常、遮水シートの損傷検知技術は、いわゆる電気探査の技術である。
電気探査の技術においては共通して、上遮水シートの内側に相当する部分(本願では、凹面の空間的な中心寄りの位置を内側、凹面の外側の地中に相当する位置を外側と称する。)に加圧電極を、そして下遮水シートの外側の地中に相当する部分であって、例えば、平面視した場合における凹面の縁部よりも外に基準電極を配し、そして加圧電極と基準電極との間に定電圧をかける。加圧電極と基準電極とはいずれが高電位でも構わない。
他方、この技術においては上遮水シートと下遮水シートとに挟まれた空間に、例えば、平面視で碁盤の目状に多数の検知センサを配する。検知センサはそれらが存在する位置の電位を測定するためのセンサである。
上遮水シートと下遮水シートの間にはまた、多くの場合、検知センサ間が適度な電気的な抵抗を介して通電するようにするための、適度な電気抵抗値を有する導電性シートが挟み込まれている。この導電性シートにより、後述の電位のピークから周囲の検知センサへの電圧変化がなだらかになり、等電位線を見た際のピーク位置を確認しやすくなる。
前述のように加圧電極と基準電極との間には定電圧がかけられる。それによって加圧電極と基準電極との間には、上遮水シートの内側から、下遮水シートの外側にまで及ぶ電界が生じる。かかる電界は、検知センサにとっていわば基準となる電界を形成する。
そのような電界が存在するときに、上遮水シートに損傷が生じると、上遮水シートの損傷が生じた部分は損傷が生じていないその周囲の部分に比して、絶縁性が小さくなる。したがって、上遮水シートに損傷が生じた場合には、損傷が生じた部分の近くにある検知センサの周辺には、より多くの電流が流れる状態が生じる。したがって、各検知センサで電位を測定することにより、上遮水シートのどこに損傷が生じたのかを検知することができる。具体的には、各検知センサによって測定された各検知センサが存在する位置の電位に基づいて等電位線を求めることにより、電位のピークにある遮水シートの損傷部位を決定することが可能となる。導電性シートがあれば、この等電位線が滑らかなものとなり、等電位線が示す電位のピークの位置は上遮水シートの損傷位置を正確に反映したものとなる。
同様の理屈で、この遮水シートの損傷検知システムは、下遮水シートにおける損傷部位をも検知することができる。なお、下遮水シートの損傷を検知する場合には、損傷検知システムにおける上述の加圧電極は、下遮水シートの外側の地中に相当する部分であって、例えば下遮水シートの真下に配される。
【0009】
このような加圧電極、基準電極、及び検知センサを有する遮水シートの損傷検知技術においては、多数の検知センサは上遮水シートと下遮水シートとの間に配置されることになる。これが、上記2つの技術の相性の悪さに繋がる。
上述したように、上遮水シートと下遮水シートとの間にある高さまで水を満たすことにより、特に上遮水シートが損傷した場合における外部への汚水の漏れ出しを防止しやすくなるが、かかる技術を上述の遮水シートの損傷検知技術と組み合わせた場合には、上遮水シートと下遮水シートとの間に配置される検知センサのうち、上遮水シートと下遮水シートとの間の水の水位より下にある検知センサが、水に没することとなる。
つまり、この場合には、検知センサのうちの水の水位よりも上に位置するものは水に没さず、検知センサのうちの水の水位よりも下に位置するものは水に没することになる。水は空気よりも相当に導電性が高いので、このような状態では検知センサで測定される電位の信頼性が著しく下がるのである。
【0010】
本願発明は、遮水シートの損傷検知技術が導入された廃棄物処分場でも利用可能な、廃棄物処分場からの汚水の漏れ出しの可能性をより小さくするための技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
本願発明は、廃棄物で埋立てられる凹面を有する廃棄物処分場の、前記凹面を前記凹面の少なくとも縁までを、前記凹面に近い側から2重に覆う、共に遮水性と絶縁性とを有する材料で形成された下遮水シートと、上遮水シートの損傷部位を検知するための、前記上遮水シートの内側であって前記凹面の内部に配される第1電極と、前記下遮水シートの外側であって地中に配される第3電極と、前記第1電極と前記第3電極との間に定電圧をかける定電圧電源と、前記凹面の廃棄物で埋立てられることが予定された部分に対応する前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、平面視で分散させた状態で多数配された検知センサと、前記検知センサが存在する位置のそれぞれで測定された電位を検知するとともに、前記電位のピーク位置を検知する検知装置と、を含んでなる、遮水シートの損傷検知システムを有している、廃棄物処分場の遮水構造である。
この廃棄物処分場の遮水構造は(本願では単に、「遮水構造」と称する場合もある。)、前記下遮水シートの外側に設けられた遮水性を有する面である遮水面と、前記遮水面と前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、その水位が前記上遮水シートの内側に溜まった汚水の水位よりも高くなるようにして水を保つ、水制御手段と、を備えてなる。
上述のように、上遮水シートと下遮水シートとの間にある高さまで水を満たす技術は、遮水シートの損傷検知技術と組合せる場合における相性が悪い。本願発明では、それに代えて、下遮水シートの更に外側に、遮水性を持つ面である遮水面を設けることとし、その遮水面と下遮水シートとの間に水を配することとした。
この水を、水制御手段によって、その水位が前記上遮水シートの内側に溜まった汚水の水位よりも高くなるように保つことにより、本願発明によれば、上遮水シートと下遮水シートとの間に水を配する場合と同様に、遮水シートが破れたときにおける汚水の遮水シート外への漏れ出しを防ぐことが可能となる。しかも、上遮水シートと下遮水シートとの間にある高さまで水を満たすという従来技術では、上遮水シートと下遮水シートとの双方に損傷が生じた場合には汚水の遮水シート外への流出のおそれを免れないが、下遮水シートの更に外側に遮水面を設ける本願発明による遮水構造によれば、上遮水シートと下遮水シートの双方が破れたとしても、汚水が遮水面外に漏れることがない。更には、この方法によれば、上遮水シートと下遮水シートとの間の空間には損傷検知システムにおける検知センサが配されるところ、同検知センサが配されるその空間には、上遮水シートと下遮水シートとの間にある高さまで水を満たすという上述の従来技術とは異なり、少なくとも上遮水シートと下遮水シートに損傷が生じていない平時においては汚水又は水は入り込んでいないから、検知センサの検知精度に問題が生じることもない。
【0012】
本願発明における遮水面は上述のように、下遮水シートの更に外側に設けられる。下遮水シートと遮水面との間隔は、それらの間に作られる空間に水を溜めることができ、且つその水の量が本願発明が意図する効果を得るために十分な範囲で適当に決定することができる。また、下遮水シートと遮水面との間隔は、すべての部分で一定であるを要さない。
例えば、前記上遮水シートと前記下遮水シートとの間の間隔よりも、前記下遮水シートと前記遮水面との間の間隔が広くなるようになっていてもよい。そうすることにより、上遮水シートと下遮水シートとが損傷した場合においても、遮水面が損傷しにくくなるから、遮水面から汚水が漏れだす可能性を下げることができる。
【0013】
前記遮水面は、遮水性を有する限りどのように構成されていても構わない。例えば、前記遮水面は、遮水性を有する遮水シート、ジオ・シンセティックス・クレイ・ライナー(GCL)、コンパクテッド・クレイ・ライナー(CCL)のいずれかの表面で構成されていてもよい。
また、地盤の透水係数が低く、一定の水位を保てる場合は、遮水面を省略し供水設備のみとしても良い。
また、遮水面の損傷の可能性をより小さくすることを意図するのであれば、前記遮水面は、前記上遮水シート又は前記下遮水シートよりも損傷しにくい材料の表面で構成されていてもよい。この場合における前記材料は、コンクリート又はアスファルトであってもよい。
【0014】
上述したように、本願発明による遮水構造では、遮水面と下遮水シートとの間の空間に水が溜められる。前記遮水面と前記下遮水シートとの間に挟まれた空間に、水を保持する機能を有する物質が配されていても構わない。水を保持する物質は、例えば、砂等の粒状体、或いはジオシンセティック等の複合材料である。かかる物質を配置することにより、遮水面と下遮水シートとの間の水が溜められる空間の体積を小さくすることができるため、水制御手段によりそこに溜められる水の水位を上げ下げすることが容易になる。水を保持する物質が砂その他の粒状体である場合には、その透水係数は、1×10
−2cm/sec以上であるのが好ましい。また、水を保持する物質がジオシンセティックス等の複合材料である場合には、その透水係数は、1.5cm/sec以上であるのが好ましい。
【0015】
本願発明の廃棄物処分場の遮水構造は、前記下遮水シートの外側に配される第2電極を備えており、前記定電圧電源は、前記第1電極と前記第3電極との間、又は前記第2電極と前記第1電極又は前記第3電極との間のいずれに定電圧をかけるかを、任意に選択できるようになっていてもよい。これにより、第1電極と第3電極との間に定電圧をかけることで上遮水シートの損傷箇所の検知を、第2電極と前記第1電極との間、又は第2電極と第3電極との間に定電圧をかけることで、下遮水シートの損傷箇所の検知を、それぞれ行えるようになる。
【0016】
本願発明者は、以上の遮水構造を備えた廃棄物処分場をも本願発明の一態様として提案する。かかる廃棄物処分場により得られる効果は、以上説明した遮水構造により得られる効果と同じである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0019】
図1に、この実施形態による廃棄物処分場を示す。この廃棄物処分場は、以下に説明するように、遮水シートの損傷検知システムを備えている。
【0020】
廃棄物処分場は、凹面1を備えている。この実施形態における凹面は、地面を掘ることによって作られているが、その周囲の例えば一部に盛土することにより作られていてもよい。凹面1は、底面1Aとその外側を囲む斜面である法面1Bとを備えている。
廃棄物処分場は、また、遮水シート2を備えている。この実施形態における遮水シート2は、2重構造となっており、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとを備えている。下遮水シート2Bは、凹面1の全面を覆い、その全周が凹面1の縁部から外側に食み出している。上遮水シート2Aは、下遮水シート2Bの上側に配されており、平面視した場合に下遮水シート2Bにその大きさ、形状が対応するようになっている。なお、図示を省略するが、上遮水シート2Aの内側、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bの間、下遮水シート2Bの外側の少なくとも一箇所には、上遮水シート2A又は下遮水シート2Bの保護或いは、当該部分における内外方向の透水係数の調整を目的とした層状の部材(例えばマット)が配置されていてもよい。そのような層状の部材乃至その配置は公知、或いは周知技術にしたがって採用することができる。
上遮水シート2Aと、下遮水シート2Bとはともに、従来の廃棄物処分場で用いられているものと同様のもので良い。この実施形態では、上遮水シート2Aと、下遮水シート2Bとはともに、遮水性を有する合成樹脂製のシート材であるが、例えば合成ゴムであるゴム製やアスファルトシート製等とすることも可能である。合成樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)等であり、ゴムは、例えば、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等である。アスファルトシートは、不織布で補強されたものとすることができる。また、上遮水シート2Aと、下遮水シート2Bとはともに、厚さが略1.0mm以上のものとすることができる。
これには限られないがこの実施形態による上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとは、その縁部が互いに接続されずその間の空間は外部に開放されている。もっとも上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとは、その縁部が互いに接続され、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間が概ね気密になるように、袋状に加工されていてもよい。かかる接続は、公知或いは周知の手法、例えば熱融着により行うことができる。
【0021】
以上説明した廃棄物処分場は、上述したように遮水シート2の損傷を検知するための遮水シートの損傷検知システムを備えている。かかる検知システムは概ね、第1電極3、第3電極4、定電圧電源5、検知センサ6、及び検知装置7を含んで構成されている。また、これには限られないが、この検知システムは、第2電極3A、及びリレー5Gを有している。
これらはいずれも、従来の遮水シートの損傷検知システムにも存在したものであり、従来の検知システムに用いられていた公知又は周知のそれらを転用することが可能である。
【0022】
第1電極3は、上遮水シート2Aの内側に配置される電極である。これには限られないが、この実施形態における第1電極3は1つであるが、第1電極3を複数とすることも可能である。第1電極3が複数であるとき、それらの電位は同じにされる。第1電極3は、検知システムの使用時には廃棄物処分場に廃棄された廃棄物Xに埋もれた状態となる。第2電極3Aは、下遮水シート2Bの外側に配される。第2電極3Aは、平面視した場合における下遮水シート2Bの真下に配置される。第2電極3Aはこの実施形態では1つとされるが、これが複数でも良いのは第1電極3の場合と同様である。
また、第2電極3Aは、下遮水シート2Bと遮水面の間に設けることが好ましい。このようにすることによって、下遮水シート2Bと遮水面の間に存在する水の層による検知結果への影響を少なくすることができる。
第3電極4は、下遮水シート2Bの外側に配置され、地中にアースされる電極である。これには限られないが、この実施形態における第3電極4は、平面視した場合における凹面1の縁部の外に位置するようにされる。これには限られないが、この実施形態における第3電極4は2つである。もっとも第3電極4を1つとすることも3つ以上とすることも可能である。第3電極4が複数である場合、それらの電位は同じにされる。
定電圧電源5は、第1電極3と第3電極4との間に、或いは第2電極3Aと第1電極3との間に、又は第2電極3Aと第3電極4との間に、選択的に定電圧をかけるための電源である。かかる選択は、追って詳述するリレー5Gにより実現される。
定電圧電源5は、第1電極3と第3電極4との間に、又は第2電極3Aと第1電極3との間、或いは第2電極3Aと第3電極4との間に、選択的に定電圧をかけるための電源である。かかる選択は、追って詳述するリレー5Gにより実現される。
定電圧電源5の+側の端子は、導線である第1導線5Aの一端と接続されている。第1導線5Aの他端は、第1電極3と接続されている。他方、定電圧電源5の−側の端子は、導線である第2導線5Bの一端と接続されている。そして、動線である第2動線5Bの他端はリレー5Gと接続されている。リレー5Gは、公知又は周知のスイッチであり、まず、第1導線5Aの接続先を切り替える機能を有する。第1導線5Aと接続しうる端子は、リレー5G中に2つ含まれている。それら端子の一方に、導線である第3導線5Cの一端が接続されている。第3導線5Cの他端は、第2電極3Aに接続されている。リレー5G中に含まれる端子の他方には、導線である第4導線5Dの一端が接続されている。第4導線5Dの他端は、第3電極4と接続されている。リレー5Gは、また、第1動線5Aとの接続を切り、第3導線5Cと、第4導線5Dとを接続する機能をも有する。もっとも、定電圧電源5の接続の向きは図示したもの逆向きでも構わない。
リレー5Gが、第2導線5Bと、第3導線5Cとを接続した場合には、定電圧電源5の存在により、第1電極3と第2電極3Aとの間に、前者から後者へと電位が下る勾配を持つ電界が形成される。リレー5Gが、第2導線5Bと、第4導線5Dとを接続した場合には、定電圧電源5の存在により、第1電極3と第3電極4との間には、前者から後者へと電位が下る勾配を持つ電界が形成される。図示を省略するが、上遮水シート2A及び下遮水シート2Bは、上遮水シート2Aの上に溜まった汚水を処理するため、汚水を凹面1外に排出するため汚水処理施設に続く排出管等によって多くの場合複数箇所で貫かれており、排出管等によって貫かれた部分に電流の通り道ができている。また、上遮水シート2A及び下遮水シート2Bは、一枚物のシートではなく普通は、多数の遮水シートを熱融着等の周知又は公知の技術でその縁を接続したものとなっており、水密であることが理想的とされるもののその接続部分に、意図しないものではあるが僅かな電流の通り道ができている。そのような電流の通り道が存在するため、上遮水シート2A及び下遮水シート2Bの双方が絶縁性を有していたとしても、第1電極3と第2電極3Aとの間に上述の如き電解を形成することができる。同様に、リレー5Gを切り替えることによって、第2電極3Aと第1電極3との間に、又は第2電極3Aと第3電極4との間に、定電圧電源5によって、電解が形成されることになる。
【0023】
検知センサ6はそれが存在する位置における電位を測定するためのものである。この実施形態における検知センサ6は電極である。検知センサ6は、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に多数配される。検知センサ6は、一般に、廃棄物処分場の凹面1における廃棄物Xで埋立てられることが予定された部分に設けられる。その部分の遮水シート2が損傷する可能性が高いからである。
これには限られないが、この実施形態では、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間のうち、検知センサ6は、凹面1の底面1Aに対応する部分にのみ設けられている。検知センサ6は、凹面1の法面1Bに対応する部分にも設けられていても良い。ただし、検知センサ6は一般に、凹面1の外側には設けられない。
検知センサ6は、平面視した場合に、凹面1の底面1Aの略全範囲に分散させた状態で配置される。これには限られないが、この実施形態では、検知センサ6は、平面視した場合に、碁盤の目状に配置される。
各検知センサ6は、導線である第5導線6Aによって、検知装置7に接続されている。
また、これには限られないが、この実施形態では、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間内に、導電性シート6Bが配されている。導電性シート6Bは、適度な電気抵抗を有する公知又は周知のシート状物であり、それを検知システムで用いることもまた公知又は周知である。導電性シート6Bの存在により、後述の電位のピークから周囲の検知センサへの電圧変化がなだらかになり、後述する等電位線を見た際にピーク位置を確認しやすくなる。
【0024】
検知装置7は、上述したように各検知センサ6に第5導線6Aによって接続されており、第5導線6Aを介して各検知センサ6が存在する位置における電位を測定することができるようになっている。
また、検知装置7は、各検知センサ6の位置に関する情報を有しており、各検知センサ6が存在する位置を2次元的にマッピングするとともに、各検知センサ6について測定された電位に基づいて等電位線を得ることができるようになっている。
これらの機能は一般に、市販のコンピュータに上述のごとき機能を果たすソフトウエアをインストールすることにより得ることができるが、各検知センサ6の電位を測定すること、また各検知センサ6の電位にもとづいて等電位線を得ることとも、従来からの遮水シートの損傷検知システムにおける検知装置で公知又は周知であるから、詳しい説明は省略する。
【0025】
この廃棄物処分場の遮水シート2の外側、より詳細には下遮水シート2Bの外側には、遮水シート2とは別の遮水シート8が設けられている。遮水シート8は、これには限られないが、この実施形態では、遮水シート2と平行に配されている。遮水シート8は、遮水性を有するものとされており、例えば遮水シート2を構成する上遮水シート2A又は下遮水シート2Bと同じものとすることができ、少なくとも遮水シート2A又は下遮水シート2Bに使用できる上述したものの1つを流用することができる。遮水シート8の内側の面が本願でいう遮水面である。
遮水シート8の内側面である遮水面と下遮水シート2Bの外側面の間の間隔は、これには限られないがこの実施形態では、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の間隔よりも広くされている。例えば、前者の間隔は、5〜30mm程度であり、後者の間隔は、10〜500mm程度である。これにより、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとがともに損傷したときに、遮水面乃至それを構成する遮水シート8までもが損傷する可能性が低くなる。遮水シート8が損傷しなければ、汚水が廃棄物処分場から漏れ出すという最悪の事態は免れることができる。
なお、この実施形態では上述のように、遮水シート8により遮水面を構成したが、これに代えて、例えば、ジオ・シンセティックス・クレイ・ライナー(GCL)、コンパクテッド・クレイ・ライナー(CCL)のいずれかで遮水面を構成してもよい。
GCLは、粒状のナトリウム型ベントナイトを2枚の布地(例えば、ポリプロピレン製の織布又はポリエステル製の不織布)の間に充填し、2枚の布地をニードルパンチで互いに固定してなる、自己修復型マットである。GCLによる自己修復型マットの例は、例えば、株式会社ボルクレイ・ジャパンが販売する、ボルクレイ・マットである。
CCLは、締固め粘土ライナーにより形成される遮水層である。例えば現地土に、株式会社ボルクレイ・ジャパンが販売するベントナイト(ボルクレイ・コロニー、ボルクレイ・コロニーDC、ボルクレイ・コロニーM、ボルクレイ・ドンミン、ボルクレイ・ドンミンDC)を公知或いは周知の割合、方法で混合して錬成したものを、これも公知或いは周知の厚さ、方法で敷設することにより、CCLによる遮水層を作ることができる。
また、遮水面を、上遮水シート2A又は下遮水シート2Bよりも損傷しにくい材料の表面で構成することも可能である。例えば、遮水シート8を、所定厚さのアスファルト又はコンクリートに置換することにより、それを実現可能である。
【0026】
下遮水シート2Bと、遮水シート8の遮水面とに挟まれた空間には、後述するように水が溜められる。なお、水は、水道水でも良いし、工業用水でも良いし、現地で調達できるのであれば沢水や井戸水でも構わない。
以下、水が溜められる上記空間(以下、「貯水空間」と呼ぶ場合がある。)について、詳しく説明する。
貯水空間は、
図1に示したように、地表にまで到達していたとしても構わない。他方、貯水空間は、その上端が、貯水空間に溜められる水の予定された最高の水位よりも上に位置することを条件として、凹面1の下方の一定の範囲の外側に設けられていても構わない。
追って詳しく説明するが、貯水空間に溜められる水の水位は、廃棄物処分場の凹面1内に、より詳細には上遮水シート2Aの上側に溜まる汚水の水位よりも上側に位置するように保たれる。廃棄物処分場には通常、汚水を外部に凹面1内から外部へ排出する排出管とそれに続く汚水処理施設とが存在するのが通常であり、それにより汚水の水位は予定されたある範囲内に収められる。したがって、その予定された汚水の水位よりも高くその水位が保たれるために必要な貯水空間内の水の水位の上限を把握することは可能というよりも容易であり、それ故貯水空間が凹面1の底面1Aからどの高さまで必要なのかというのも容易に把握することができる。
貯水空間が、凹面1の下方の一定の範囲の外側に設けられる場合には、例えば、
図2の側断面図に示したように構成することができる。遮水面を形成する遮水シート8は、
図2に示したように、凹面1の底面1Aからある高さにおいて、下遮水シート2Bの外側に溶着されている。図中2B1が溶着部位である。こうすることにより、凹面1の底面1Aから上に続く貯水空間は、その溶着部位2B1の高さにまでしか及ばないことになる。なお、図中8Aは、注水管である。注水管8Aは、貯水空間に水を供給するものであり、その先端が貯水空間内に及んでいるとともに、その基端が注水装置8Bに接続されている。注水装置8Bは、本願発明における水制御手段の一部に相当するものであり、注水管8Aを介して貯水空間に水を供給するためのポンプと、ポンプを駆動させるか駆動を停止させるかを決定する公知又は周知の制御装置とを含んでいる。この実施形態では注水装置8Bは、貯水空間に水を供給する機能のみを備えており、貯水空間から水を抜く機能を備えていない。貯水空間の水は例えばそこから水が外部へ漏れること、又は後述するように上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間或いは上遮水シート2Aの内側の空間に至ることがあるから減ることはあるが、貯水空間に雨水が入り込まないようにしておけば、基本的に増えることはない。したがって、注水装置8Bには水を供給する機能さえ与えておけば基本的には足りる。もっとも何らかの理由で必要なのであれば、注水装置8Bに貯水空間から水を抜く機能を与えてももちろん構わない。
なお、この実施形態のように、凹面1の底面1Aからある高さにおいて、下遮水シート2Bの外側に遮水シート8の上端を、遮水シート8の溶着部位2B1で溶着することで、貯水空間上方の空間から土砂等が落ちてきたとしても、その土砂等が貯水空間に入り込まないようになる。
【0027】
必ずしもこの限りではないが、この実施形態では、それが地表まで及ぶか否かによらず、貯水空間内に、水を保持する機能を有する物質である保水物質8Cが充填されている。保水物質8Cは、貯水空間の少なくとも一部を占める。保水物質8Cは後述するすべての副貯水空間に存在していてもしていなくてもよく、また各副貯水空間の全体積を占めていても、そうでなくても良い。
保水物質8Cは、貯水空間の中に完全に隙間なく充填されていても構わないし、そうでなくても良い。保水物質8Cは例えば、砂その他の粒状物、或いはジオシンセティック等の複合材料などである。ジオシンセティックの例は、例えば、排水材(太陽工業株式会社が販売するサンレックスフロー)である。保水物質8Cが砂その他の粒状体である場合には、その透水係数は、1×10
−2cm/sec以上であるのが好ましい。また、保水物質8Cがジオシンセティックス等の複合材料である場合には、その透水係数は、1.5cm/sec以上であるのが好ましい。
なお、保水物質8Cの存在によって水位の制御を迅速に行うことが可能となる。
【0028】
これには限られないが、この実施形態における廃棄物処分場に設けられた上述の貯水空間は、複数に分割されている。
貯水空間をどのように分割するかは自由である。
これには限られないが、この実施形態では、副貯水空間Zのそれぞれが、
図3に示したように、凹面1の中心からその外側に放射状に伸びるようにする。
図3におけるZの符号が付された網掛け部分のそれぞれが、副貯水空間である。
図3(A)、(B)ではともに、これには限られないが平面視した場合の凹面1が正方形となっており、そこに上遮水シート2A、及び下遮水シート2Bを含む遮水シート2が配されている。
図3(A)では、遮水面を形成する遮水シート8が地表にまで届いており、それにより各副貯水空間Zが地表にまで届いている。他方、
図3(B)の場合では、各副貯水空間Zは、凹面1の底から一定の高さにまでしか及んでいないため地表にまで届いておらず、各副貯水空間Zに対応する部分にしか遮水面を形成する遮水シート(図示を省略)が存在していない。
貯水空間の副貯水空間Zへの分割は、例えば、
図4に示したようにして行うことができる。
図4は、副貯水空間Zが地表にまで届いている場合といない場合に共通する、その上端部分の一部を拡大した端面図である。
図4に示したように、下遮水シート2Bは、所定幅の副下遮水シート2BZからなる。隣接する副下遮水シート2BZのそれぞれは、その一方の縁部と、他方の縁部付近とで、互いに熱融着などの公知又は周知の手法で互いに接続される。図中2BZ1が、その接続部分である。他方、他方の副下遮水シート2BZの余った部分は、遮水シート8と接続される。これを繰り返すことにより、下遮水シート2と遮水シート8との間に、副貯水空間Zが連続して設けられることとなる。なお、
図4に示したように、各副貯水空間Zには、注水管8Aがそれぞれ配されることになる。注水管8Aを各副貯水空間Zに配すことにより、各副貯水空間Z内の水の水位は、個別に制御できるようになる。各注水管8Aは、それぞれ個別の注水装置8Bに接続されても良いし、共通の注水装置8Bに接続されてもよい。1つの注水装置8Bで多数の注水管8Aに注水を行う方法は、弁を用いる周知の手法を適当に採用すれば良い。
【0029】
廃棄物処分場は、また、汚水井戸9Aと、水井戸9Bの2つの井戸を備えている。汚水井戸9Aと、水井戸9Bはそれぞれ、汚水の水位と水の水位を把握するためのものである。
汚水井戸9Aは、凹面1の底付近にその下端が達しており、その上端が凹面1に埋設される廃棄物Xの上面よりも上方に位置する略鉛直方向に伸びる筒状体である。その内部の汚水の水面は、凹面1内に溜まった汚水の水面の高さに常に一致するため、汚水井戸9Aの内側の汚水の水面の高さを観察し或いは適当なセンサを用いて検知することで、凹面1内に溜まった汚水の水面の高さを把握することができる。この実施形態では、これには限られないが、図示せぬセンサにより、汚水井戸9A内の汚水の水面の高さを常にモニタリングし、汚水の水面の高さを注水装置8Bに、例えば略実時間で通知するようにしている。
水井戸9Bは、貯水空間の底付近にその下端が達しており、その上端が凹面1に埋設される廃棄物Xの上面よりも上方に位置する略鉛直方向に伸びる筒状体である。その内部の水の水面は、貯水空間内に溜まった水の水面の高さに常に一致するため、水井戸9Bの内側の水の水面の高さを観察し或いは適当なセンサを用いて検知することで、貯水空間内に溜まった水の水面の高さを把握することができる。この実施形態では、これには限られないが、図示せぬセンサにより、水井戸9B内の水の水面の高さを常にモニタリングし、水の水面の高さを注水装置8Bに、例えば略実時間で通知するようにしている。
注水装置8Bは、貯水空間内の水の水面の高さを、凹面1内の汚水の水面の高さよりも常に高く保つようになっている。そのために、汚水井戸9Aと、水井戸9Bから送られてくる、汚水の水位のデータと、水の水位のデータとが使用される。つまり、注水装置8Bは、水の水位を表すデータが示す水の水位が、汚水の水位を表すデータが示す汚水の水位よりも低くなりそうになったとき(或いは、両水位の間に、例えば数mの差を付けることにしている場合には、その数mの差がなくなりそうになったとき)に、注水管8Aを介して貯水空間に水を注水する。なお、水井戸9Bは、貯水空間が複数の副貯水空間に分かれている場合には、複数の副貯水空間のそれぞれ毎に設けられている。この場合、各水井戸9Bに溜まった水の水位は副貯水空間毎に個別にモニタリングされることになり、副貯水空間に溜まった水の水位はそれぞれ、それら副貯水空間に溜まった水の水位が、凹面1に溜まった汚水の水位を上回るように、注水装置8Bによって制御されることになる。
なお、この実施形態では、汚水の水位を把握するのに汚水井戸9Aを、水の水位を把握するのに水井戸9Bをそれぞれ用いることとしていたが、汚水と水の水位を把握するための技術としては、汚水井戸9Aと水井戸9Bとを用いる必要は必ずしも無く、例えば適当な公知又は周知技術を用いることも可能である。
【0030】
以上で説明した廃棄物処分場の使用方法、及び動作を説明する。
上述したように廃棄物処分場の凹面1には、廃棄物X(
図1)が埋め立てられる。廃棄物Xが埋め立てられて行く最中に、凹面1の底には、汚水P(
図1)が溜まる。汚水Pの元となるのは主に雨水である。或いは廃棄物X中の有機物を発酵させ早く安定化させるために廃棄物Xには水が散布される場合がある。そのような水も汚水Pの元となる。
汚水Pの水位は汚水井戸9Aによって監視され、汚水Pの水位を示すデータが略実時間で注水装置8Bに送られる。他方、注水装置8Bは、注水管8Aを介して、水Qを貯水空間に供給して貯水空間に水Qを溜める(
図1)。水Qは、貯水空間が複数の副貯水空間に区切られているのであれば、各副貯水空間に個別に供給される。注水装置8Bは、貯水空間の水Qの水位が、汚水Pの水位を超えるまで、貯水空間内の水Qの水位を上げる。この実施形態では、これには限られないが、貯水空間内の水Qの水位が常に、凹面1内に溜まった汚水Pの水位よりも1〜3mの範囲から選択されるある高さだけ上回るように制御される。なお、貯水空間が、複数の副貯水空間に分割されている場合には、注水装置8Bは、各副貯水空間内の水Qの水位が常に、凹面1内に溜まった汚水Pの水位よりも1〜3mの範囲から選択されるある高さだけ上回るように制御する。
【0031】
廃棄物処分場が持つ損傷検知システムは、常時、或いは所定時間おきに、遮水シート2の損傷の検知を行う。その方法は以下の如きである。以下の説明では上遮水シート2Aの損傷の検知を先に、下遮水シート2Bの損傷の検知を後に行うこととしているが、その先後が問われないのは当然である。
【0032】
まず、リレー5Gにより、第2導線5Bと第4導線5Dとを接続することにより、第1電極3と第3電極4との間に、定電圧電源5によって定電圧の電圧をかける。そうすると、第1電極3と第3電極4との間に電界が生じる。
遮水シート2に損傷が存在しない状態を考える。この場合、第1電極3から上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間に向けて電流が流れる経路が僅かにしか存在しない。したがって、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に流れ込む電流が極僅かであることもあり、当該空間から第3電極4へ流れる電流は、殆ど無い状態となる。この状態では、各検知センサ6における電位は殆ど同じとなっている。なお、この状態における検知センサ6は、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間に汚水Pも水Qも存在しないから、検知センサ6で測定される電位は正確である。各検知センサ6で検知された電位についてのデータは、検知装置7に送られるが、そこで検知センサ6から送られて来たデータにより生成される電位のマップには、等電位線は存在しない状態となる。
他方、上遮水シート2Aのうち、
図5における例えばH1で示した位置に損傷H1が生じたとする。損傷H1が生じると、第1電極3から、その損傷H1の部位を介して、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に電流が流れ込む。この電流は、検知センサ6付近を通過し、第3電極4に到達する。上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間から、第3電極4に電流が至るための経路は僅かにしか存在しないが、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間に第1電極3から流れ込んでくる電流の量が損傷H1が存在しない場合よりも多いから、相当量の電流が第1電極3から第3電極4に流れることになる。かかる電流は、損傷H1が生じた部位に近い検知センサ6の付近をより多く流れることになる。それにより、損傷H1が生じた部位に近い検知センサ6と損傷H1が生じた部位から遠い検知センサ6とが測定する電位に差が生じる。各検知センサ6で検知された電位についてのデータは、検知装置7に送られるが、そこで検知センサ6から送られて来たデータにより生成される電位のマップには、等電位線が現れることになる。これにより上遮水シート2Aの損傷H1の位置が特定される。
また、損傷H1が生じると、汚水Pがその損傷H1から上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に流れ込む。しかしながら、下遮水シー2Bに損傷がない限り、下遮水シート2Bの外に汚水Pが流出することはない。なお、この実施形態では、汚水Pがその損傷H1から上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に流れ込むことによる、凹面1内での汚水Pの水位の低下によっても、どこに生じたかまでは分からないが、損傷H1が上遮水シート2Aに生じたことを把握することができる。
廃棄物処分場の管理者等は、検知装置7にて検知された損傷H1の上遮水シート2Aにおける位置を特定し、その補修を行い、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に入り込んだ汚水Pを外部へと排出すれば良い。
以上の事情は、貯水空間が分割されていようがいまいが変わらない。
【0033】
また、下遮水シート2Bに損傷が生じていないかどうかは、リレー5Gにより、第2導線5Bと第3導線5Cとを接続することにより検知可能となる。第2導線5Bと、第3導線5Cとがリレー5Gにより接続されると、第1電極3と第2電極3Aとの間に、定電圧電源5によって定電圧の電圧がかけられた結果、第1電極3と第2電極3Aとの間に電界が生じる。
この場合、第2電極3Aへ上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間から電流が流れる経路が僅かにしか存在しない。したがって、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に流れ込む電流が極僅かであることもあり、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から第3電極4へ流れる電流は、殆ど無い状態となる。結果として、上遮水シート2Aの損傷を検出する際に上遮水シート2Aに損傷がなかったときにおける上記の場合と同様に、検知センサ6から送られて来たデータにより検知装置7で生成される電位のマップには、等電位線は存在しない状態となる。
下遮水シート2Bのうち、
図6における例えばH2で示した位置に損傷H2が生じたとする。
上記損傷H2が生じると、第2電極3Aへ、その損傷H2の部位を介して、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から電流が流れる。上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとに挟まれた空間に、第3電極からの電流が至るための経路も僅かにしか存在しないが、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から第2電極3Aへ流れる電流の量が損傷H2が存在しない場合よりも多いから、相当量の電流が第1電極3から第2電極3Aに流れることになる。かかる電流は、損傷H2が生じた部位に近い検知センサ6の付近をより多く流れることになる。それにより、損傷H2が生じた部位に近い検知センサ6と損傷H2が生じた部位から遠い検知センサ6とが測定する電位に差が生じる。各検知センサ6で検知された電位についてのデータは、検知装置7に送られるが、そこで検知センサ6から送られて来たデータにより生成される電位のマップには、等電位線が現れることになる。これにより下遮水シート2Bの損傷H2の位置が特定される。
他方、損傷H2が生じると、損傷H2の生じた位置にもよるが、場合によっては水Qが、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に流れ込む。しかしながら、これによっても遮水シート8の外側に汚水が流出することはない。なお、この実施形態では、水Qがその損傷H2から上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に流れ込むことによる、副貯水空間内での水Qの水位の低下によっても、どこに生じたかまでは分からないが、水位の低下が生じた副貯水空間と接している下遮水シート2Bのどこかに、損傷H2が生じたことを把握することができる。また、損傷H2が生じたことによりある副貯水空間における水Qの水位がある程度以上下がったことにより、汚水Pの水位に近づいたのであれば、注水装置8Bがポンプを作動させ、注水管8Aを介して水をその水位が下がった副貯水空間に供給する。
廃棄物処分場の管理者等は、検知装置7にて検知された損傷H2の下遮水シート2Bにおける位置を特定し、その補修を行えば良い。
以上の事情も、貯水空間が分割されていようがいまいが変わらない。
なお、リレー5Gを切り替えることによって、第2電極3Aと第3電極4との間に、定電圧電源5によって電解を形成することによっても、下遮水シート2Bの破損を検知することができる。
【0034】
他方、上遮水シート2Aのうち、
図7における例えばH3で示した位置に損傷H3が生じ、且つ下遮水シート2Bのうち、
図7における例えばH4で示した位置に損傷H4が生じたとする。
上遮水シート2Aに生じた損傷H3の上遮水シート2Aにおける位置と、下遮水シート2Bに生じた損傷H4の下遮水シート2Bにおける位置とを検知装置7が検知できるのはそれぞれ、上述した上遮水シート2Aに損傷H1が生じた場合、又は下遮水シート2Bに損傷H2が生じた場合と同様である。なお、この実施形態では、凹面1内での汚水Pの水位の低下によっても、どこに生じたかまでは分からないが、損傷H3が上遮水シート2Aに生じたことを把握することができ、貯水空間内での水Qの水位の低下によっても、どこに生じたかまでは分からないが、損傷H4が下遮水シート2Bに生じたことを把握することができる。これも既に述べたのと同様である。
この場合、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間には、損傷H3を介して凹面1内に溜まっていた汚水Pが、損傷H4を介して貯水空間内に溜まっていた水Qが、それぞれ流れ込んでくる。しかしながら、損傷H3の部位における汚水Pの水圧と、損傷H4の部位における水Qの水圧は、汚水Pの水位よりも水Qの水位の方が高いため、常に後者の方が大きい。したがって、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間が汚水Pと水Qとである程度満たされたとしても、同空間にある汚水Pと水Qとが混合した液体は、損傷H4を介して下遮水シート2Bから外に出て行くことはなく、むしろ損傷H3を介して上遮水シート2Aの上側、つまり凹面1内に戻っていくことになる。したがって、この場合においても、汚水Pが下遮水シート2Bの外側に流出することはない。
廃棄物処分場の管理者等は、検知装置7にて検知された損傷H3の上遮水シート2Aにおける位置を特定し、その補修を行うとともに、検知装置7にて検知された損傷H4の下遮水シート2Bにおける位置を特定し、その補修を行い、また、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間に入り込んだ汚水Pを外部へと排出すれば良い。
なお、この場合においては、結果として、貯水空間内に溜まっていた水Qが、凹面1内に流れ込むことになるから、凹面1内の汚水Pの水位は、損傷H3、H4が存在しないときよりも上昇してしまう。その場合においても、注水装置8Bが注水管8Aを介して貯水空間に水を供給することにより、貯水空間内の水Qの水位を凹面1内の汚水Pの水位よりも高く保つことは可能である。もっとも、それと同時に、廃棄物処分場に普通に設けられている汚水処理施設に図示を省略の排出管等を介して汚水Pを送ることにより、汚水Pの水位を下げるようにするのが好ましい。かかる汚水処理施設による汚水Pの排出及び処理は、従来から用いられている極普通の汚水処理施設で対応できる。
例えば、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとにそれぞれ1cm角の損傷が発生した場合であって、汚水Pと水Qとの水位差を100cmに保っている場合を想定する。この場合における、上遮水シート2Aと下遮水シート2Bとの間の空間から、損傷H3を介して凹面に流入する汚水P及び水Qの流入量は、仮に上遮水シート2Aの上側に透水係数が1×10
−2cm/sの厚さ10mmの保護マットとしての不織布が存在するものとすると、以下の数1の数式により求めることができる。
【数1】
一般的に、廃棄物処分場に設けられる汚水処理施設の処理量は、20〜100m
3/日であり、上述の値であれば、保護マットの透水係数が一桁大きくてもまったく問題にならない。
なお、貯水空間が複数の副貯水空間を含む場合には、損傷H4が生じた部分の下遮水シート2AB含む副貯水空間においてのみ、水Qの水位の低下が生じる。その場合には、水Qの水位の低下が生じた副貯水空間にのみ注水装置8Bが水を供給すれば良い。