特許第6746231号(P6746231)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746231
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】泥水式掘進機用の排泥管設備
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/13 20060101AFI20200817BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   E21D9/13 A
   E21D9/06 301A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-247844(P2016-247844)
(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公開番号】特開2018-100554(P2018-100554A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2019年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英典
(72)【発明者】
【氏名】倉田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 鉄也
【審査官】 高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−068079(JP,A)
【文献】 特開2015−075189(JP,A)
【文献】 特開2010−261485(JP,A)
【文献】 特開2012−062685(JP,A)
【文献】 特開2016−169756(JP,A)
【文献】 特開平08−277570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/13
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥水式掘進機のチャンバ内の泥水と掘削土砂との混合泥水をトンネルの外部に運ぶ鋼材で形成された排泥管の途中において経路を曲げる位置に設けられた複数の曲配管と、
前記複数の曲配管の各々の間に設けられた直配管と、
予め作製された交換用配管部品と、
を備え、
前記直配管は、
前記曲配管の下流直後に着脱可能な状態で設けられた交換用配管部と、
前記交換用配管部の下流に着脱可能な状態で設けられた残余配管部と、
を備え、
前記交換用配管部品は、前記交換用配管部と取り替えて装着可能とされ、
管内が損耗した前記交換用配管部を前記交換用配管部品と取り替え得るようにした、
ことを特徴とする泥水式掘進機用の排泥管設備
【請求項2】
前記交換用配管部の長さは、前記残余配管部の長さよりも短いことを特徴とする請求項1記載の泥水式掘進機用の排泥管設備
【請求項3】
前記交換用配管部の長さが、複数の前記直配管において同じ所定の長さに設定されていることを特徴とする請求項1または2記載の泥水式掘進機用の排泥管設備
【請求項4】
前記交換用配管部は、前記トンネル内の前記排泥管に設けられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の泥水式掘進機用の排泥管設備
【請求項5】
前記交換用配管部の長さは、前記複数の曲配管のうち、90度曲折した状態の曲配管の下流の損耗の範囲に合わせて設定されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の泥水式掘進機用の排泥管設備
【請求項6】
前記交換用配管部の長さが30cm〜60cmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の泥水式掘進機用の排泥管設備
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水式掘進機用の排泥管設備に関し、例えば、泥水式シールド掘進機の排泥管の損耗部分の交換技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泥水式シールド掘進機は、カッタ盤後方の泥水室内に送泥管を通じて泥水を供給することで切羽に泥水圧を加えて切羽の安定化を図るとともに、泥水室内に溜められた泥水を排泥管によってトンネルの外部に排出しながら掘削工事を進める掘進機である。なお、泥水式シールド掘進機の排泥管に関する技術については、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−086535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、砂礫層等を掘削対象とした泥水式シールド掘進機においては、排泥管中を流れる礫等により排泥管に穴が開く等のような損耗が生じる場合がある。排泥管の損耗頻度が高い場合は、損耗が生じた配管の寸法にあった交換用の配管を加工し、損耗が生じた配管と交換しなければならない。しかし、この場合の交換用の配管は損耗の無い部分を含む既製の長さのものなので、その加工作業は時間と労力を要する面倒な作業となっている。また、その交換作業も、長い交換用の配管をトンネル内の交換箇所まで運び、狭いトンネル内において複数の作業者が協力して交換しなければならないので時間と労力とを要する面倒な作業となっている。特に、この交換作業の問題は、トンネルが長くなるほど問題になる。そして、排泥管の交換作業中は掘削工事を中断せざるを得ないので掘削工事にも遅れが生じる。
【0005】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、その目的は、泥水式掘進機用の排泥管における損耗部分の交換時間を短縮することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の泥水式掘進機用の排泥管設備は、泥水式掘進機のチャンバ内の泥水と掘削土砂との混合泥水をトンネルの外部に運ぶ鋼材で形成された排泥管の途中において経路を曲げる位置に設けられた複数の曲配管と、前記複数の曲配管の各々の間に設けられた直配管と、予め作製された交換用配管部品と、を備え、前記直配管は、前記曲配管の下流直後に着脱可能な状態で設けられた交換用配管部と、前記交換用配管部の下流に着脱可能な状態で設けられた残余配管部と、を備え、前記交換用配管部品は、前記交換用配管部と取り替えて装着可能とされ、管内が損耗した前記交換用配管部を前記交換用配管部品と取り替え得るようにした、ことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、上記請求項1記載の泥水式掘進機用の排泥管設備において、前記交換用配管部の長さは、前記残余配管部の長さよりも短いことを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に記載の本発明は、上記請求項1または2記載の泥水式掘進機用の排泥管設備において、複数の前記直配管において同じ所定の長さに設定されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に記載の本発明は、上記請求項1、2または3記載の泥水式掘進機用の排泥管設備において、前記交換用配管部は、前記トンネル内の前記排泥管に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に記載の本発明は、上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の泥水式掘進機用の排泥管設備において、前記交換用配管部の長さは、前記複数の曲配管のうち、90度曲折した状態の曲配管の下流の損耗の範囲に合わせて設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に記載の本発明は、上記請求項1〜5のいずれか1項に記載の泥水式掘進機用の排泥管設備において、前記交換用配管部の長さが30cm〜60cmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、泥水式掘進機用の排泥管の損耗部分の交換に際して、交換用配管部を交換用配管部品に交換すれば良いので、その交換時間を短縮することが可能になる。
請求項2記載の発明によれば、相対的に短い交換用配管部を交換すれば良いので、その交換作業を容易にすることができる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、例えば、予め作成した複数個の交換用配管部を泥水式掘進機用の排泥管の複数箇所に用意しておくことにより、排泥管の損耗部分の交換作業に際して、交換用配管部の加工や運搬を省くことができるので、排泥管の損耗部分の交換時間を短縮することが可能になる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、交換用配管部は相対的に短いので、狭いトンネル内においても排泥管の損耗部分の交換作業を容易にすることができ、その交換時間を短縮することが可能になる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、90度曲折した曲配管の下流の直配管内で損耗が生じ易いので、その損耗の範囲に合わせて交換用配管部の長さを設定することで排泥管のどの位置での損耗に対しても対応することが可能になる。
【0015】
請求項6記載の発明によれば、交換用配管部の長さが、排泥管の損耗部分を含む長さであり、かつ、加工、運搬および交換作業等に際して取り扱い易い長さに設定されているので、交換用配管部の事前の加工や運搬作業を容易にすることができる上、交換用配管部の交換作業を容易にすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施の形態に係るシールド掘進機の一例の要部構成図である。
図2図1のシールド掘進機後方のトンネル内における排泥ポンプ周辺の排泥管の一例の要部平面図である。
図3図2の排泥管の要部側面図である。
図4図3の排泥管の一部を抜き出して示した要部拡大側面図である。
図5】本実施の形態の排泥管の構成を採用していない一般的な排泥管の要部拡大側面図である。
図6】(a)は交換用配管部の交換作業時の排泥管の要部拡大側面、(b)は図6(a)に続く交換用配管部の交換作業時の排泥管の要部拡大側面、(c)は図6(b)に続く交換用配管部の交換作業時の排泥管の要部拡大側面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0018】
まず、本実施の形態のシールド掘進機の構成例について図1を参照して説明する。図1は本実施の形態に係るシールド掘進機の一例の要部構成図である。
【0019】
本実施の形態のシールド掘進機1は、カッタヘッド2を切羽に押し当て回転させることにより地山を掘削する際に、カッタヘッド2の後方の機器本体3内に設けられた泥水室4に送泥管5を通じて泥水を圧送し、泥水室4内の泥水圧力を切羽の土圧および地下水圧に見合う圧力にして切羽の安定を図るとともに、泥水室4内に溜められた泥水を排泥管6によってトンネルの外部に排出しながら地山にトンネルを形成する泥水式シールド掘進機である。
【0020】
シールド掘進機1を構成するカッタヘッド2は、地山の切羽を掘削する正面円形状の掘削部材であり、機器本体3の前面に機器本体3の周方向に沿って正逆方向に回転自在の状態で設置されている。このカッタヘッド2は、例えば、スポークタイプが採用されており、その前面(切羽に対向する面)には、玉石等の破砕や地山の掘削を行う複数のビット2aおよびスクレーパツース2bが装着されている他、カッタヘッド2の回転により掘削された土砂等を泥水室4内に取り込む貫通穴(図示せず)が形成されている。なお、カッタヘッド2の外周面には、急曲線施工時の余堀りやシールド掘進機1の姿勢制御等を行うコピービット2cが装着されている。
【0021】
シールド掘進機1の機器本体3を構成する前胴プレート3aおよび後胴プレート3bは、例えば円筒状の鋼製板により形成されている。この前胴プレート3aと後胴プレート3bとは、後胴プレート3bの先端側の球面軸受部が前胴プレート3aの後端側の内周面に接した状態で入り込むことで係合されている。この後胴プレート3bの後方には、掘進作業中に機器本体3の後部から機器本体3内に地下水等が入り込むのを防止するテールシール3cが後胴プレート3bの内周に沿って枠状に設けられている。
【0022】
前胴プレート3aの前面側において、その前面から機器本体3の内方に後退した位置には、機器本体3内を切羽側と機内側とに分ける隔壁7が設置されている。この機器本体3の切羽側、すなわち、上記カッタヘッド2と隔壁7との間に、上記泥水室4が設けられている。泥水室4は、カッタヘッド2の回転により掘削された土砂等を取り込み、送泥管5を通じて供給された泥水と混合する空間(チャンバ)である。
【0023】
一方、機器本体3の機内には、カッタ駆動体10と、複数本の中折れジャッキ11aと、複数本のシールドジャッキ11bと、エレクタ12と、送泥管5と、排泥管6とが設置されている。
【0024】
カッタ駆動体10は、カッタヘッド2を正逆方向に回転させる駆動源である。中折れジャッキ11aは、前胴プレート3aと後胴プレート3bとを連結するとともに、シールド掘進機1の推進方向を修正する機器である。シールドジャッキ11bは、機器本体3の後方のトンネルの内周に敷設されたセグメントSGに反力をとってシールド掘進機1を前進させるための推進力を発生させる機器である。エレクタ12は、掘削されたトンネルの内周にセグメントSGを組み付ける装置である。セグメントSGは、例えば、平板状のコンクリート製セグメントまたは合成セグメント(コンクリートと鋼材との合成構造)からなり、トンネルの周方向および軸方向に沿って複数個並べられた状態で設置されている。
【0025】
送泥管5は、泥水室4内に泥水を供給する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。送泥管5の先端部(放泥口)は、隔壁7の正面内上部を貫通して泥水室4に達している。これにより、送泥管5を通じて圧送された泥水は、シールド掘進機1の正面内上部から泥水室4内に供給される。一方、送泥管5の後端部は、トンネルの抗口に向かって延び、途中で所定の間隔毎に配置された複数の送泥ポンプ(図示せず)を介してトンネルの外部の泥水層(図示せず)に接続されている。なお、泥水槽は、トンネルの外部の泥水処理装置(図示せず)に接続されている。
【0026】
排泥管6は、泥水室4内の排泥水(掘削土砂と泥水との混合泥水)をトンネルの外部に排出する配管であり、例えば、鋼材により形成されている。排泥管6の先端部(吸泥口)は、隔壁7の正面内下部を貫通して泥水室4に達している。これにより、泥水室4内の排泥水は、シールド掘進機1の正面内下部から排出される。一方、排泥管6の後端部は、トンネルの抗口に向かって延び、途中で所定の間隔毎に配置された複数の排泥ポンプ(図1には図示せず)を介してトンネルの外部の上記泥水処理装置に接続されている。すなわち、泥水室4内の排泥水は、排泥管6を通じてトンネルの外部の泥水処理装置に送られ、そこで土砂と泥水とに分離され比重や粘性等が調整された後、泥水槽に送られて再び送泥管5を通じて泥水室4(切羽)へ送られる。
【0027】
次に、シールド掘進機1の排泥管6の構成例について図2図4を参照して説明する。図2図1のシールド掘進機後方のトンネル内における排泥ポンプ周辺の排泥管の一例の要部平面図、図3図2の排泥管の要部側面図、図4図3の排泥管の一部を抜き出して示した要部拡大側面図である。なお、図2図4において左側はトンネルの切羽(シールド掘進機1)側、右側はトンネルの抗口(立坑)側となっている。
【0028】
図2および図3に示すように、排泥管6の途中には排泥ポンプPdが接続されている。排泥ポンプPdは、排泥管6内の排泥水をトンネルTの外部に向かって圧送するための圧送ポンプである。この排泥ポンプPdの周辺の排泥管6は上下左右に曲折する部分が多くなっている。なお、図中の符号Wは注水装置、符号Sは起動盤、矢印Adは排泥水の流れる方向をそれぞれ示している。
【0029】
排泥管6は、複数の曲配管6a(6a1,6a2)と、直配管6b(6b1〜6b5)と、継手6cとを有している。曲配管6aは、排泥管6の経路を曲げる位置に着脱可能な状態で設けられている。曲配管6aのうち曲配管6a1は経路を45度程度曲げるように形成され、曲配管6a2は経路を90度程度曲げるように形成されている。なお、曲配管6aの曲折角度は上記したものに限定されるものではなく種々のものがある。
【0030】
直配管6b(6b1〜6b5)は、互いに隣り合う曲配管6a,6a同士を繋ぐ線に沿って延びた状態で曲配管6a,6aの間に着脱可能な状態で設けられている。直配管6bの軸方向長さ(全長)は、統一されておらず排泥管6の場所によって決められている。例えば、図4に示すように、直配管6b3の軸方向長さ(全長)L1と、直配管6b4の軸方向長さ(全長)L2とは異なっている。この直配管6bのうち直配管6b3〜6b5は、交換用配管部6beと、残余配管部6bu(6bu1〜6bu3)とを備えている。
【0031】
交換用配管部6beは、交換を予定して設置された配管部であり、曲配管6aの下流直後に着脱可能な状態で設置されている。全ての直配管6bの各々の交換用配管部6beの軸方向長さL3(図4参照)は、各直配管6b(6b3〜6b5)および残余配管部6buの各々の全長より短い所定の長さに統一されている。すなわち、全ての交換用配管部6beの長さは同じである。この交換用配管部6beの軸方向長さL3は、曲配管6a2の下流の直配管6b内において生じる許容範囲を超える損耗の範囲を含む長さであって、加工、運搬および交換作業等の際に取り扱い易い長さに設定されている。損耗に関する長さの設定については、例えば、複数の曲配管6aのうち、90度曲折した曲配管6a2の下流の直配管6b内で損耗が生じ易いので、その損耗の範囲に合わせて設定されている。これにより、排泥管6のどの位置での損耗に対しても対応することができる。以上のような観点から交換用配管部6beの軸方向長さ(すなわち、所定の長さL3)は、既製品よりも短い、例えば、30cm〜60cm、具体的には、例えば、50cm程度に設定されている。
【0032】
直配管6bの残余配管部6bu(6bu1〜6bu3)は、交換用配管部6beの下流直後に着脱可能な設置されている。残余配管部6buの軸方向長さ(全長)は、統一されておらず排泥管6の場所によって決められている。例えば、図4に示すように、残余配管部6bu1の軸方向長さL4と、残余配管部6bu2の軸方向長さL5とは異なっている。ただし、残余配管部6buの軸方向長さは、当該残余配管部6buが配置された各々の直配管6bの全長よりは短く、交換用配管部6beの軸方向長さより長い。なお、ここでは1つの残余配管部6buが1つの配管で形成されている場合を例示しているが、これに限定されるものではなく、1つの残余配管部6buが複数の配管を継手6cで繋ぎ合わせることで構成される場合もある。
【0033】
継手6cは、曲配管6aおよび直配管6b(交換用配管部6beおよび残余配管部6bu)を着脱可能な状態で機械的に接続する部材であり、曲配管6aおよび直配管6b(交換用配管部6beおよび残余配管部6bu)の隣接間に装着されている。
【0034】
ここで、図5は本実施の形態の排泥管6の構成を採用していない一般的な排泥管50の要部拡大側面図を示している。この場合、損耗が生じた直配管50bの寸法にあった交換用の配管を加工し、直配管50bの全体を交換しなければない。しかし、この交換用の配管は損耗の無い部分を含む既製の長さのものなので、その加工作業は時間と労力を要する面倒な作業となっている。また、その交換作業も、長い交換用の配管をトンネル内の交換箇所まで運び、狭いトンネル内において複数の作業者が協力して交換しなければならないので時間と労力とを要する面倒な作業となっている。この交換作業の問題は、特に、トンネルが長くなるほど問題になる。そして、この交換作業中は掘削工事を中断せざるを得ないので掘削工事に遅れが生じてしまう。
【0035】
一方、砂礫層等を掘削対象とした泥水式のシールド掘進機1においては、排泥管6内を流れる排泥水中の礫等が排泥管6の内壁に衝突し易いため排泥管6に穴が開く等のような損耗が生じる場合があるが、本発明者の検討によれば、排泥管6において許容できない損耗が生じるのは曲配管6aの下流直後の直配管6b内の数十cmの範囲に集中しており、ほとんどの場合、曲配管6aの下流直後の一部分を交換すれば足りるものであった。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、上記したように曲配管6aの下流直後に交換用配管部6beを着脱可能な状態で設けた。これにより、排泥管6の損耗部分の交換作業に際しては、直配管6bの全部を交換しないでも、直配管6bの一部の交換用配管部6beを交換すれば足りる。この交換用配管部6beは、その軸方向長さが50cm程度と短く取り扱い易いので、その加工や運搬を容易に実施することができる上、狭いトンネル内であっても交換作業を容易に実施することができる。また、交換箇所が短いので、資源を有効に活用することができるとともに、排泥管6にかかる費用を削減することもできる。
【0037】
また、本実施の形態においては、排泥管6中の全ての交換用配管部6beの軸方向長さを所定の長さL3に統一した。これにより、交換用配管部6beを排泥管6のどの位置でも使用することができる。このため、例えば、予め作成した複数個の交換用配管部6beをトンネルT内において曲配管6aが多い箇所等に配置しておくことにより、排泥管6の損耗部分の交換作業に際して、交換用配管部6beの加工や運搬を省くことができる。
【0038】
これらにより、シールド掘進機1の排泥管6の損耗部分の交換時間を短縮することができる。したがって、シールド掘進機1によるトンネル掘削作業の中断時間を短縮することができるので、トンネル掘削工事の工期を短縮することもでき、トンネル掘削工事の工費を低減することができる。
【0039】
次に、上記した交換用配管部6beの交換作業の一例について図6を参照して説明する。図6(a)〜(c)は交換用配管部の交換作業時の排泥管の要部拡大側面を示している。
【0040】
まず、図6(a)に示すように、排泥管6の交換作業の前に、トンネル内において複数箇所(曲配管6aの多い箇所等)に、予め作成した複数個の交換用配管部品6besを配置しておく。なお、×印は排泥管6において損耗が生じた部分を示している。また、図面を見易くするため事前に用意した交換用配管部品6besにハッチングを付した。
【0041】
続いて、排泥管6の損耗部分の交換作業に際しては、損耗した交換用配管部6beと排泥管6とを機械的に接続する継手6cを取り外すことにより、図6(b)に示すように、排泥管6から損耗した交換用配管部6beを取り外す。
【0042】
その後、その損耗した交換用配管部6beに代えて、図6(c)に示すように、事前に用意しておいた交換用配管部品6besを排泥管6に位置合わせして嵌め込み継手6cで固定する。なお、事前に用意した交換用配管部品6besのうち交換によって減った分は、例えば、掘削工事中でも補給することができる。
【0043】
ここで、本実施の形態の排泥管構造を採用しない場合(図5の場合)、平均で、交換用の配管の加工にほぼ30分、運搬にほぼ10分、交換作業にほぼ20分、合計でほぼ60分かかったものが、本実施の形態の場合、平均で、交換用の配管(交換用配管部品6bes)の加工にほぼ0分、運搬にほぼ0分、交換作業にほぼ15分、合計でほぼ15分に短縮することができた。その結果、シールド掘進機1によるトンネル掘削作業の中断時間を25%に抑えることができた。
【0044】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0045】
前記実施の形態においては交換用配管部6beの軸方向長さを全て同じにした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ある複数の箇所の交換用配管部6beの軸方向長さを第1の所定の長さに統一し、他のある複数の箇所の交換用配管部6beの軸方向長さを第1の所定の長さと異なる第2の所定の長さに統一する等しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は泥水式掘進機の排泥管の交換技術に適用して有効である。
【符号の説明】
【0047】
1 シールド掘進機
2 カッタヘッド
2a ビット
2b スクレーパツース
2c コピービット
3 機器本体
4 泥水室
5 送泥管
6 排泥管
6a,6a1,6a2 曲配管
6b,6b1〜6b5 直配管
6be 交換用配管部
6bes 交換用配管部品
6bu,6bu1〜6bu3 残余配管部
6c 継手
7 隔壁
10 カッタ駆動体
11a 中折れジャッキ
11b シールドジャッキ
12 エレクタ
T トンネル
SG セグメント
Pd 排泥ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6