特許第6746247号(P6746247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日本製鋼所の特許一覧

特許6746247産業機械の電磁開閉器の検査方法および産業機械
<>
  • 特許6746247-産業機械の電磁開閉器の検査方法および産業機械 図000002
  • 特許6746247-産業機械の電磁開閉器の検査方法および産業機械 図000003
  • 特許6746247-産業機械の電磁開閉器の検査方法および産業機械 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746247
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】産業機械の電磁開閉器の検査方法および産業機械
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/84 20060101AFI20200817BHJP
   G01R 31/333 20060101ALI20200817BHJP
   G01R 31/00 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   B29C45/84
   G01R31/333 E
   G01R31/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-131891(P2018-131891)
(22)【出願日】2018年7月11日
(65)【公開番号】特開2020-6645(P2020-6645A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 友喜
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−220221(JP,A)
【文献】 実開昭53−041055(JP,U)
【文献】 特開2016−015230(JP,A)
【文献】 特開2016−021395(JP,A)
【文献】 特開平01−122530(JP,A)
【文献】 特開2001−208783(JP,A)
【文献】 特開昭63−018717(JP,A)
【文献】 特開平03−218219(JP,A)
【文献】 特開2016−046972(JP,A)
【文献】 特開2008−059827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/80−45/84
G01R 31/00−31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械に設けられ、三相交流電圧線である1次側R、S、T線からなる外部の1次側電線と、2次側R、S、T線からなる内部の2次側電線との間に介装され、内蔵のコイルに電磁力を発生させる駆動用電流をON/OFFして内蔵のスイッチをON/OFFさせ、それによって前記1、2次側電線を導通・遮断するようになっている電磁開閉器の検査方法であって、
前記1次側電線において電圧を検出して1次側電圧を得、前記2次側電線において電圧を検出して2次側電圧を得、前記1次側電圧と前記2次側電圧を比較する電圧比較を実施して、前記電磁開閉器を導通しているとき不一致が検出されたら異常が発生していると判断することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の検査方法において、前記1次側電圧は、前記1次側R線と前記1次側S線の線間電圧である1次側R−S線間電圧と、前記1次側S線と前記1次側T線の線間電圧である1次側S−T線間電圧とし、
前記2次側電圧は、前記2次側R線と前記2次側S線の線間電圧である2次側R−S線間電圧と、前記2次側S線と前記2次側T線の線間電圧である2次側S−T線間電圧とし、
前記電圧比較は、前記1、2次側R−S線間電圧同士と、前記1、2次側S−T線間電圧同士のそれぞれを比較することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の検査方法において、前記1次側電圧は前記1次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である1次側R、S、T相電圧とし、前記2次側電圧は前記2次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である2次側R、S、T相電圧とし、前記電圧比較は、前記1、2次側R相電圧同士と、前記1、2次側S相電圧同士と、前記1、2次側T相電圧同士のそれぞれを比較することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の検査方法において、前記電圧比較は、前記1、2次側電圧のそれぞれについて正弦波からなる電圧波形をフォトカプラを介して矩形波からなる電圧波形に変換し、矩形波同士を比較することによって実施することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法。
【請求項5】
三相交流電圧線である1次側R、S、T線からなる外部の1次側電線と、2次側R、S、T線からなる内部の2次側電線との間に介装され、内蔵のコイルに電磁力を発生させる駆動用電流をON/OFFして内蔵のスイッチをON/OFFさせ、それによって前記1、2次側電線を導通・遮断する電磁開閉器が設けられている産業機械であって、
前記1次側電線には1次側電圧検出回路が、前記2次側電線には2次側電圧検出回路が設けられ、
前記1次側電圧検出回路によって検出される1次側電圧と、前記2次側電圧検出回路によって検出される2次側電圧とが前記制御装置において比較され、前記電磁開閉器を導通しているときにこれらの不一致が検出されると前記電磁開閉器が異常であると判断されるようになっていることを特徴とする産業機械。
【請求項6】
請求項5に記載の産業機械において、前記1次側電圧検出回路によって検出される前記1次側電圧は、前記1次側R線と前記1次側S線の線間電圧である1次側R−S線間電圧と、前記1次側S線と前記1次側T線の線間電圧である1次側S−T線間電圧であり、前記2次側電圧検出回路によって検出される前記2次側電圧は、前記2次側R線と前記2次側S線の線間電圧である2次側R−S線間電圧と、前記2次側S線と前記2次側T線の線間電圧である2次側S−T線間電圧であり、前記制御装置において前記1、2次側R−S線間電圧同士と、前記1、2次側S−T線間電圧同士のそれぞれが比較されるようになっていることを特徴とする産業機械。
【請求項7】
請求項5に記載の産業機械において、前記1次側電圧検出回路によって検出される前記1次側電圧は、前記1次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である1次側R、S、T相電圧であり、前記2次側電圧検出回路によって検出される前記2次側電圧は、前記2次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である2次側R、S、T相電圧であり、前記制御装置において前記1、2次側R相電圧同士と、前記1、2次側S相電圧同士と、前記1、2次側T相電圧同士のそれぞれが比較されるようになっていることを特徴とする産業機械。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかの項に記載の産業機械において、前記1、2次側電圧検出回路から検出される正弦波の電圧波形からなる前記1、2次側電圧は、フォトカプラによって矩形波からなる電圧波形に変換され、前記制御装置において矩形波の電圧波形同士が比較されるようになっていることを特徴とする産業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部の三相交流電力線と産業装置の内部の電力線とを導通させたり遮断させる電磁開閉器について正常/異常を判断する検査方法、および電磁開閉器の検査が実施されるようになっている産業機械に関するものである。本発明の電磁開閉器の検査方法は特に射出成形機に好適な方法である。
【背景技術】
【0002】
電動射出成形機、押出機等の工場に設置される産業機械には、工場から三相交流電力の供給を受けて、各種モータが駆動されるようになっている。例えば電動射出成形機は、射出装置、型締装置等から構成されこれらは電動モータによって駆動されるようになっている。電動射出成形機は工場から三相交流電力の供給を受け、これをコンバータによって直流電力に変換する。この直流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換し、これによって電動モータを駆動する。このような産業機械には電磁開閉器が設けられ、電磁開閉器の1次側には工場の三相交流電力線が、そして2次側には産業機械内部の電力線が接続されている。電磁開閉器は接点がOFFされる方向にバネ付勢されているが、内部のコイルに通電すると電磁石により接点がONされるようになっている。産業機械の運転を開始するときは電磁開閉器をONする。そうすると1次側と2次側が接続されて産業機械に三相交流電力が供給され、各種モータの駆動が行えるようになる。一方、メンテナンスにより産業機械を停止する場合には電磁開閉器をOFFする。そうすると1次側と2次側とが遮断される。産業機械内の各種モータの停止が保証され、メンテナンス時の安全が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−70981号公報
【0004】
このように、電磁開閉器は産業機械において安全を確保するために重要な電気機器であるが、機械的に接点がON/OFFされるようになっているので経年劣化が避けられない。電磁開閉器のメーカは安全に使用できる期間を公表しており、期間経過前の交換を推奨している。従って定期的に実施される保守点検において、必要な時期に電磁開閉器を交換している。しかしながら電磁開閉器は、期間内であっても故障することがある。そのような電磁開閉器の故障として、例えば接点の溶着がある。長時間接点をONし続けていると熱により接点が溶着することがあり、接点を開く動作、つまり電力の遮断ができなくなる。特許文献1には、産業機械の一種であるプレス加工機において電磁開閉器の接点の溶着の故障を検出する方法が記載されている。一般的なプレス加工機においては、プレス加工機の電源投入時において、電磁開閉器の接点の溶着の有無を検査するテストを一度だけ実施している。特許文献1に記載の検査方法では、プレス動作を行う加工プログラムが終了のトリガが発生したら、このタイミングにおいても接点の溶着の有無を検査するようにしている。このようにして検査の頻度を高くすることによってプレス加工機の安全性を高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業機械に設けられている電磁開閉器は、接点の溶着以外にも色々な故障が発生し、接点導通不良、絶縁部の劣化による短絡等の故障もある。故障の発生前において異音が発生したり、異臭が発生したり、変色する等の症状が出ていれば、周期的に実施される保守点検において異常に気づく可能性もある。そうすれば新品に交換し、産業機械の突然の停止を未然に防ぐことはできる。しかしながらこのような保守点検は、産業機械を停止して実施しなければならないので、頻繁に実施することはできないし、保守点検の間隔が長いと異常を検出できずに産業機械の突然の停止に至る場合もある。さらには、故障の種類によっては事前に症状が出ないもの、あるいは症状が出ても検出が難しいものもある。例えば、このような故障として接点が高速にばたついてON/OFFするチャタリングや、三相交流電力線の3相のうち1相が欠相する故障をあげることができる。このような故障が発生するとコンバータに入力される三相交流電力の品質は低下する。しかしながら品質は低下しても直流電力の生成は継続することができ、各種モータを駆動し続けることができる場合もある。つまり故障が発生しても故障に気づき難い。このような故障はやがて接点導通不良等に至り、産業機械が突然停止するという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決した産業機械の電磁開閉器の検査方法および産業機械を提供することを目的としている。具体的には、産業機械の運転を停止すること無く電磁開閉器の故障の検査を実施することができ、チャタリングや欠相等の検出が難しい故障も検出できる電磁開閉器の検査方法、およびそのような検査方法を実施する産業機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、産業機械に設けられている電磁開閉器において、その1次側電圧と2次側電圧とを比較して、電磁開閉器を導通しているときに不一致が検出されたら異常が発生していると判断するように構成する。比較する1次側電圧と2次側電圧は、1次側R線と1次側S線の1次側R−S線間電圧と2次側R線と2次側S線の2次側R−S線間電圧とを比較し、1次側S線と1次側T線の1次側S−T線間電圧と2次側S線と2次側T線の2次側S−T線間電圧とを比較する。あるいは1次側R、S、T線と、2次側R、S、T線のそれぞれの相電圧同士を比較する。なお、電圧の比較においては、フォトカプラによって正弦波からなる電圧波形を矩形波に変換し、矩形波同士を比較するようにする。
【0008】
かくして請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、産業機械に設けられ、三相交流電圧線である1次側R、S、T線からなる外部の1次側電線と、2次側R、S、T線からなる内部の2次側電線との間に介装され、内蔵のコイルに電磁力を発生させる駆動用電流をON/OFFして内蔵のスイッチをON/OFFさせ、それによって前記1、2次側電線を導通・遮断するようになっている電磁開閉器の検査方法であって、前記1次側電線において電圧を検出して1次側電圧を得、前記2次側電線において電圧を検出して2次側電圧を得、前記1次側電圧と前記2次側電圧を比較する電圧比較を実施して、前記電磁開閉器を導通しているとき不一致が検出されたら異常が発生していると判断することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法として構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の検査方法において、前記1次側電圧は、前記1次側R線と前記1次側S線の線間電圧である1次側R−S線間電圧と、前記1次側S線と前記1次側T線の線間電圧である1次側S−T線間電圧とし、前記2次側電圧は、前記2次側R線と前記2次側S線の線間電圧である2次側R−S線間電圧と、前記2次側S線と前記2次側T線の線間電圧である2次側S−T線間電圧とし、前記電圧比較は、前記1、2次側R−S線間電圧同士と、前記1、2次側S−T線間電圧同士のそれぞれを比較することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法として構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の検査方法において、前記1次側電圧は前記1次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である1次側R、S、T相電圧とし、前記2次側電圧は前記2次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である2次側R、S、T相電圧とし、前記電圧比較は、前記1、2次側R相電圧同士と、前記1、2次側S相電圧同士と、前記1、2次側T相電圧同士のそれぞれを比較することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法として構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかの項に記載の検査方法において、前記電圧比較は、前記1、2次側電圧のそれぞれについて正弦波からなる電圧波形をフォトカプラを介して矩形波からなる電圧波形に変換し、矩形波同士を比較することによって実施することを特徴とする、産業機械の電磁開閉器の検査方法として構成される。
【0009】
請求項5に記載の発明は、三相交流電圧線である1次側R、S、T線からなる外部の1次側電線と、2次側R、S、T線からなる内部の2次側電線との間に介装され、内蔵のコイルに電磁力を発生させる駆動用電流をON/OFFして内蔵のスイッチをON/OFFさせ、それによって前記1、2次側電線を導通・遮断する電磁開閉器が設けられている産業機械であって、前記1次側電線には1次側電圧検出回路が、前記2次側電線には2次側電圧検出回路が設けられ、前記1次側電圧検出回路によって検出される1次側電圧と、前記2次側電圧検出回路によって検出される2次側電圧とが前記制御装置において比較され、前記電磁開閉器が導通しているときにこれらの不一致が検出されると前記電磁開閉器が異常であると判断されるようになっていることを特徴とする産業機械として構成される。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の産業機械において、前記1次側電圧検出回路によって検出される前記1次側電圧は、前記1次側R線と前記1次側S線の線間電圧である1次側R−S線間電圧と、前記1次側S線と前記1次側T線の線間電圧である1次側S−T線間電圧であり、前記2次側電圧検出回路によって検出される前記2次側電圧は、前記2次側R線と前記2次側S線の線間電圧である2次側R−S線間電圧と、前記2次側S線と前記2次側T線の線間電圧である2次側S−T線間電圧であり、前記制御装置において前記1、2次側R−S線間電圧同士と、前記1、2次側S−T線間電圧同士のそれぞれが比較されるようになっていることを特徴とする産業機械として構成される。
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の産業機械において、前記1次側電圧検出回路によって検出される前記1次側電圧は、前記1次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である1次側R、S、T相電圧であり、前記2次側電圧検出回路によって検出される前記2次側電圧は、前記2次側R、S、T線のそれぞれの相電圧である2次側R、S、T相電圧であり、前記制御装置において前記1、2次側R相電圧同士と、前記1、2次側S相電圧同士と、前記1、2次側T相電圧同士のそれぞれが比較されるようになっていることを特徴とする産業機械として構成される。
請求項8に記載の発明は、請求項5〜7のいずれかの項に記載の産業機械において、前記1、2次側電圧検出回路から検出される正弦波の電圧波形からなる前記1、2次側電圧は、フォトカプラによって矩形波からなる電圧波形に変換され、前記制御装置において矩形波の電圧波形同士が比較されるようになっていることを特徴とする産業機械として構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、産業機械に設けられ、三相交流電圧線である1次側R、S、T線からなる外部の1次側電線と、2次側R、S、T線からなる内部の2次側電線との間に介装され、内蔵のコイルに電磁力を発生させる駆動用電流をON/OFFして内蔵のスイッチをON/OFFさせ、それによって1、2次側電線を導通・遮断するようになっている電磁開閉器についての検査方法として構成される。本発明は、1次側電線において電圧を検出して1次側電圧を得、2次側電線において電圧を検出して2次側電圧を得、1次側電圧と2次側電圧を比較する電圧比較を実施して、電磁開閉器を導通しているとき不一致が検出されたら異常が発生していると判断する。正常であれば、1次側電圧と2次側電圧は導通するので正確に一致するはずである。しかしながらチャタリングが発生したり、三相のうち1相の電圧が欠損する欠相が発生すると、1、2次側電圧に不一致が生じる。本発明は構成がシンプルでありながら、このような不一致を容易に検出できる。つまり、電磁開閉器の故障を容易に検出できる。また、このような故障の検出は産業機械の運転中であっても実施でき、産業機械を停止する必要はない。産業機械のうち、特に電動射出成形機においては、メンテナンス時に確実に電磁開閉器が三相交流電力の供給を遮断して作業員の安全を確保することが必須であり、電磁開閉器について容易に異常を検出できるだけでなく、運転中においても異常を検出できることは重要である。他の発明によると、1次側電圧は、1次側R線と1次側S線の線間電圧である1次側R−S線間電圧と、1次側S線と1次側T線の線間電圧である1次側S−T線間電圧とし、2次側電圧は、2次側R線と2次側S線の線間電圧である2次側R−S線間電圧と、2次側S線と2次側T線の線間電圧である2次側S−T線間電圧とし、電圧比較は、1、2次側R−S線間電圧同士と、1、2次側S−T線間電圧同士のそれぞれを比較するように構成されている。つまりこの発明によると、2組の線間電圧同士を比較すればよいので、センサの個数は最小で済む。つまり小コストで発明を実施できる。他の発明によると、電圧比較は、前記1、2次側電圧のそれぞれについて正弦波からなる電圧波形をフォトカプラを介して矩形波からなる電圧波形に変換し、矩形波同士を比較することによって実施するように構成されている。電圧波形を矩形波に変換すると、振幅の情報が消える。従って矩形波同士で電圧波形を比較すると、振幅の変化を無視できるので位相の相違等を容易に検出することができ、正弦波同士を比較する場合に比してシンプルに検査できる。つまり容易に異常を検出することができ、発明を実施するためのコストを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る電動射出成形機に設けられている電磁開閉器と、モータと、回路群とを示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る電圧検出回路を示す回路図である。
図3】電磁開閉器が正常に動作しているときと、チャタリングが発生したときと、欠相が発生したときの、それぞれにおける三相交流電圧の正弦波の電圧波形と、本発明の実施の形態に係る電圧検出回路によって変換される矩形波の電圧波形とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、産業機械の一例である本実施の形態に係る電動射出成形機1について説明する。本実施の形態に係る電動射出成形機1は、従来の電動射出成形機と同様に構成され、概略射出装置と型締装置とからなる。これらの装置はサーボモータ等のモータによって駆動されるようになっており、図1において、そのような各種装置を駆動するモータMと、電動射出成形機1に設けられている各種回路等とが模式的に示されている。
【0013】
電動射出成形機1は、外部電源すなわち工場電源2から三相交流電力の供給を受けるようになっており、工場電源2からの1次側電線3、すなわち1次側R線、S線、T線からなる三相交流電線によって三相交流電力が供給されている。電動射出成形機1の内部には、2次側R線、S線、T線からなる2次側電線4が設けられ、三相交流電力の供給を受けるようになっている。このような1次側電線3と2次側電線4の間には電磁開閉器6が介装されている。電磁開閉器6、つまりMCは従来周知であるので説明は簡単にするが、1次側電線が接続されている1次側端子と、2次側電線が接続されている2次側端子と、内部にバネ付勢されたスイッチと、該スイッチを駆動するコイルとから構成されている。電動射出成形機1に設けられている電磁開閉器6は、いわゆるフェールセーフに基づいた動作をする標準形からなり、コイルに対して電流を供給していないときはスイッチがOFFされて1次側端子と2次側端子は遮断される。つまり1次側電線3と2次側電線4は遮断され、三相交流電力は供給されない。しかしながらコイルに駆動用電流を流すと電磁力によってスイッチがONになり、1次側端子と2次側端子とが接続される。つまり1次側電線3と2次側電線4が導通し、三相交流電力が供給される。電動射出成形機1には、電動射出成形機1を制御する制御回路8が設けられており、この制御回路8が電磁開閉器6を駆動するようになっている。
【0014】
2次側電線4はモータMを駆動する駆動回路9に接続されている。駆動回路9は、三相交流電力の三相交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ、この直流電圧を所望の周波数の三相交流電圧に変換するインバータ等から概略構成されている。コンバータ、インバータは制御回路8によって制御されるようになっており、駆動回路9によって生成される三相交流電圧によってモータMが駆動される。ところで、駆動回路9には直流電圧を平滑化する平滑化コンデンサも設けられている。直流電圧がゼロの状態から電磁開閉器6をONして駆動回路9に三相交流電力を供給すると、平滑化コンデンサに蓄電されるまで駆動回路9に大電流が流れ込んで電子素子を破壊してしまう。そこで電動射出成形機1には初期充電回路11が設けられ、電子素子の破壊を防止している。すなわち初期充電回路11は、電磁開閉器6を迂回して1次側電線3から直接三相交流電力の供給を受けるようになっており、駆動回路9への三相交流電力の供給の開始に先だって、平滑化コンデンサに十分に蓄電するようにしている。
【0015】
本実施の形態に係る電動射出成形機1には、本発明の実施の形態に係る電磁開閉器の検査方法を実施するために、本発明に特有の回路が設けられている。すなわち1次側電線3に設けられている本実施の形態に係る1次側電圧検出回路12と、2次側電線4に設けられている本実施の形態に係る2次側電圧検出回路13である。1次側電圧検出回路12と2次側電圧検出回路13は、同じ構成からなる。本実施の形態においては、1次側電線3と2次側電線4のそれぞれにおいてR線とS線の線間電圧と、S線とT線の線間電圧とを検出し、これらの正弦波からなる電力波形を矩形波に変換する回路になっている。
【0016】
本実施の形態に係る1次側電圧検出回路12を具体的に説明する。1次側電圧検出回路12は、1次側R線と1次側S線の間に設けられている1次側R−S線間電圧検出回路12Aと、1次側S線と1次側T線の間に設けられている1次側S−T線間電圧検出回路12Bとから構成されている。1次側R−S線間電圧検出回路12Aは、フォトカプラ14と、第1、2の抵抗15、16と、フォトカプラ14を保護するダイオード17とから構成されている。1次側R線から引き出された電圧線は第1の抵抗15を介してフォトカプラ14の発光ダイオード14aのアノード側に接続され、カソード側は1次側S線に接続されている。このようなフォトカプラ14に対して、発光ダイオード14aと反対向きになるようにダイオード17が接続されている。一方、フォトカプラ14のフォトトランジスタ14bのコレクタには正の直流電圧源18が接続され、エミッタは第2の抵抗16を介して接地されている。このエミッタ側の電圧が制御回路8に入力されている。このような1次側R−S線間電圧検出回路12Aにおいて、1次側R線と1次側S線の線間電圧、つまり1次側R−S線間電圧が正になると、エミッタには直流電圧源18の電圧値が検出され、負になると電圧ゼロが検出される。従って1次側R−S線間電圧が図3のグラフ21のように正弦波の電圧波形として変化するとき、エミッタにおいて検出される電圧波形はグラフ22のように矩形波になる。
【0017】
1次側S−T線間電圧検出回路12Bも、1次側R−S線間電圧検出回路12Aと同様に構成されている。従って、正弦波の電圧波形からなる1次側S−T線間電圧、つまり1次側S線と1次側T線の線間電圧が、矩形波の電圧波形に変換されて、制御回路8に入力されている。2次側電圧検出回路13も、1次側電圧検出回路12と同様に構成されており、正弦波の電圧波形からなる2次側R−S線間電圧、つまり2次側R線と2次側S線の線間電圧と、同様に正弦波の電圧波形からなる2次側S−T線間電圧、つまり2次側S線と2次側T線の線間電圧とが、矩形波の電圧波形に変換されて制御回路8に入力されている。
【0018】
本実施の形態に係る電磁開閉器の検査方法を説明する。概略的には、1次側電圧検出回路12と、2次側電圧検出回路13とにおいて検出される矩形波の電圧波形を制御回路8において比較することによって、電磁開閉器6の故障を検出する。まず、電磁開閉器6をOFFしているとき、つまり1次側電線3と2次側電線4が遮断されているとき、電磁開閉器6は接点の溶着の有無を検査する。このとき制御回路8は、2次側電圧検出回路13において検出される2次側R−S線間電圧と2次側S−T線間電圧が、いずれも電圧値が常にゼロになることを確認する。もし、このとき矩形波の一致が検出されたら、接点の溶着が発生していると判断し、警報を発生する。
【0019】
電磁開閉器6をONしているとき、つまり1次側電線3と2次側電線4とを導通させているとき、制御回路8は1次側電圧と2次側電圧とを比較し電圧波形が一致するか否かを検査する。本実施の形態においては、矩形波に変換された1次側R−S線間電圧と、同様に矩形波に変換された2次側R−S線間電圧とを比較する。そして矩形波に変換された1次側S−T線間電圧と、同様に矩形波に変換された2次側S−T線間電圧とを比較する。ただし、電圧波形の振幅については比較の対象から除外する。電磁開閉器6が正常なとき、1次側電圧と2次側電圧とは電圧波形が一致する。制御回路8は矩形に変換されたそれぞれの線間電圧の波形が一致することを確認する。電磁開閉器6において接点の接続がばたつくチャタリングが発生すると、例えば2次側R−S線間電圧は、図3のグラフ24において符号24a、24bで示されているように正弦波の電圧波形の一部が欠落し、電圧がゼロの部分が発生する。このとき矩形波に変形されたグラフ25の電圧波形においては、符号25aで示されているように電圧波形の欠落が発生する。グラフ22で示されている1次側R−S線間電圧の変換された矩形波と比較することによって、符号25aの欠落を検出できる。制御回路8はチャタリングが発生していると判断し、警報を発生する。R、S、T線のいずれかの相の電圧が欠相した場合には、2次側R−S線間電圧の正弦波の電圧波形は、図3のグラフ26のようになる。つまり、グラフ21で示されている1次側R−S線間電圧に対して位相がずれると共に振幅も小さくなる。2次側R−S線間電圧の変換された矩形波の電圧波形はグラフ27のようになる。制御回路8は、グラフ22で示されている1次側R−S線間電圧の変換された矩形波と比較して、位相のずれを検出し、欠相が発生していると判断して警報を発生する。
【0020】
本実施の形態に係る電磁開閉器の検査方法は色々な変形が可能である。本実施の形態において1、2次側電圧検出回路12、13は、1、2次側R−S線間電圧、1、2次側S−T線間電圧を検出するようになっており、制御回路8において1、2次側R−S線間電圧同士と、1、2次側S−T線間電圧同士とを比較するようになっている。つまり線間電圧同士を比較するようになっている。これをR、S、T線のそれぞれの相電圧同士を比較するようにしてもよい。つまり1次側電圧検出回路12においては、1次側R線、1次側S線、1次側T線のそれぞれの相電圧を検出するようにし、2次側電圧検出回路13においては2次側R線、2次側S線、2次側T線のそれぞれの相電圧を検出するようにし、それぞれの相電圧同士を比較するようにすればよい。他の変形も可能である。本実施の形態においては、正弦波からなる電圧波形をフォトカプラ14によって矩形波からなる電圧波形に変換して、矩形波の電圧波形同士を比較するように説明した。しかしながら、1、2次側電圧について正弦波からなる電圧波形同士で直接比較するようにしてもよい。
【0021】
技術用語「電磁開閉器」は、狭義には、電磁石の動作によって電路を開閉する電磁接触器と、過負荷時に回路を保護するために遮断するサーマルリレーとを組合わせた開閉器を意味する。しかしながら本明細書においては技術用語「電磁開閉器」を広義で使用している。すなわち、サーマルリレーが組み込まれていない開閉器、つまり電磁接触器についても、電磁開閉器としている。
【符号の説明】
【0022】
1 電動射出成形機 2 工場電源
3 1次側電線 4 2次側電線
6 電磁開閉器 8 制御回路
9 駆動回路 11 初期充電回路
12 1次側電圧検出回路 13 2次側電圧検出回路
14 フォトカプラ 15 第1の抵抗
16 第2の抵抗 17 ダイオード
18 直流電圧源
図1
図2
図3