【実施例】
【0043】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に述べる。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0044】
(実施例1)
<透明導電性膜形成用塗布液の調製>
先ず、以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用混合液を調製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):40.00部
(2)疎水性樹脂エマルジョン(アルケマ社製のPVDFエマルジョン、固形分濃度:24質量%、溶媒:水):6.00部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):12.70部
(4)プロトン性極性溶媒(エチルアルコール):33.20部
(5)プロトン性極性溶媒(イオン交換水):8.10部
【0045】
次に、上記透明導電性膜形成用混合液を、高圧ホモジナイザーを用いて80MPaの圧力で分散処理して透明導電性膜形成用塗布液を作製した。
【0046】
<透明導電性シートの形成>
次に、厚さ0.7mmの10cm角の無アルカリガラス(全光線透過率:91.2%)を基板として用い、基板の一方の主面の全面に上記透明導電性膜形成用塗布液をスピンコーティング法により塗布し、その後120℃で1時間加熱した。これにより、一方の主面に透明導電性膜が形成された実施例1の透明導電性シートを作製した。上記透明導電性膜の膜厚は、290nmであった。
【0047】
<透明導電性膜の断面構造の観察>
作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を次にようにして行った。先ず、作製した透明導電性シートの透明導電性膜の上にエポキシ樹脂を塗布して包埋して、そのエポキシ樹脂面を機械研磨法にて整面した。その後、日本電子社製の断面試料作製装置“SM−09010”(商品名)を用いてイオンポリッシングにより断面を作製し、フラットミリング処理して断面観察用試料を得た。その断面観察用試料を日立製作所製の電界放射形走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、加速電圧:2.0kV、倍率:100000倍で観察して、二次・反射電子混成像を得た。その観察像を
図2に示す。
【0048】
図2から、透明導電性シート20において、ガラス基板21の上には、透明導電性膜22が形成され、透明導電性膜22の上には、エポキシ樹脂層23が形成され、疎水性有機バインダ22aは、複数の層状の連続膜を形成し、導電性高分子22bは、複数の層状の膜を形成し、導電性高分子22bの膜が疎水性有機バインダ22aの連続膜の間に配置されていることが確認できる。また、
図2から、疎水性有機バインダ22aの連続膜の厚さは、約20〜100nmであった。
【0049】
(実施例2)
以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用混合液を調製し、その透明導電性膜形成用混合液を実施例1と同様にして高圧ホモジナイザーを用いて分散処理して透明導電性膜形成用塗布液を作製し、その透明導電性膜形成用塗布液を用い、透明導電性膜の膜厚を180nmとした以外は、実施例1と同様にして実施例2の透明導電性シートを作製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):60.00部
(2)疎水性樹脂エマルジョン(ダイセルファインケム社製のアクリル樹脂エマルジョン、商品名“AST499”固形分濃度:41.7質量%、溶媒:水):3.00部
(3)レベリング剤(ビックケミージャパン社製、商品名“BYK−337”、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン15質量%とジプロピレングリコールモノメチルエーテル85質量%との混合液):0.20部
(4)非プロトン性極性溶媒(エチレングリコール):10.00部
(5)プロトン性極性溶媒(n−プロピルアルコール):20.00部
(6)プロトン性極性溶媒(イオン交換水):6.80部
【0050】
作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、
図2と同様の観察像を得て、その観察像から疎水性有機バインダの連続膜の厚さは、約30〜150nmであった。
【0051】
(実施例3)
高圧ホモジナイザーを用いた分散処理をせずに透明導電性膜形成用混合液をそのまま透明導電性膜形成用塗布液として用いた以外は、実施例1と同様にして実施例3の透明導電性シートを作製した。
【0052】
作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、
図2と同様の観察像を得て、その観察像から疎水性有機バインダの連続膜の厚さは、約40〜200nmであった。
【0053】
(比較例1)
以下の成分を添加、混合して透明導電性膜形成用混合液を調製し、その透明導電性膜形成用混合液を実施例1と同様にして高圧ホモジナイザーを用いて分散処理し、透明導電性膜形成用塗布液を作製し、その透明導電性膜形成用塗布液を用い、透明導電性膜の膜厚を389nmとした以外は、実施例1と同様にして比較例1の透明導電性シートを作製した。
(1)導電性高分子分散液(ヘレウス社製、商品名“クレビオスPH1000”、導電性高分子:PEDOT−PSS、固形分濃度:1.2質量%、溶媒:水):39.20部
(2)親水性樹脂(クラレ社製のポリビニルアルコール、商品名“PVA−217”):1.41部
(3)非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド):12.70部
(4)プロトン性極性溶媒(エチルアルコール):33.20部
(5)プロトン性極性溶媒(イオン交換水):13.49部
【0054】
作製した透明導電性シートの透明導電性膜の断面構造の観察を実施例1と同様にして行ったところ、透明導電性膜の断面構造は均一な単層構造であることを確認した。
【0055】
次に、上記で得られた透明導電性シートについて、下記に示す各評価を行った。
【0056】
<電気特性>
透明導電性シートの電気特性は、下記のように透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を測定することで評価した。
【0057】
透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値は、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定装置“Loresta−GP”(MCP−T610型)とLSPプローブを用いて測定した。
【0058】
<光学特性>
透明導電性シートの光学特性は、下記のように透明導電性シートの全光線透過率を測定することで評価した。
【0059】
透明導電性シートの全光線透過率は、日本電色工業社製のヘイズメータ"NDH2000"を用いて測定した。
【0060】
上記測定の結果、全光線透過率が80%以上の場合、光学特性は良好と判断し、全光線透過率が80%を下回った場合、光学特性は不良と判断した。
【0061】
<物理特性>
透明導電性シートの物理特性は、下記のように透明導電性シートの透明導電性膜の鉛筆硬度を測定することで評価した。
【0062】
透明導電性シートの透明導電性膜の鉛筆硬度は、日本工業規格(JIS)K5400に規定された鉛筆硬度の測定方法に基づき、新東科学社製の表面性試験機“HEIDON−14DR”を用いて測定した。
【0063】
<耐湿熱性>
透明導電性シートの耐湿熱性は、下記のように透明導電性シートの保存試験を行うことで評価した。
【0064】
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜の初期の表面抵抗値を前述の電気特性の評価と同様にして測定した。次に、透明導電性シートを恒温恒湿槽に入れて65℃、相対湿度90%で500時間保存した。続いて、保存後の透明導電性シートの透明導電性膜の表面抵抗値を上記と同様にして測定した。最後に、下記式(1)により表面抵抗値の変化度を算出した。
表面抵抗値の変化度=保存後の表面抵抗値/初期の表面抵抗値 (1)
【0065】
上記測定の結果、表面抵抗値の変化度が1.2以下の場合、耐湿熱性は良好と判断し、表面抵抗値の変化度が1.2を上回った場合、耐湿熱性は不良と判断した。
【0066】
上記評価の結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1から、本発明の実施例1〜3の透明導電性シートは、透明導電性膜の表面抵抗値が全て180Ω/スクエアを下回って電気特性が良好であり、また光学特性及び耐湿熱性も全て良好との評価を得ることができ、更に物理特性である鉛筆硬度も全てB以上を得たことが分かる。特に、高圧ホモジナイザーを用いて分散処理した透明導電性膜形成用塗布液を用いた実施例1及び2は、分散処理していない透明導電性膜形成用塗布液を用いた実施例3に比べて電気特性がより向上することが分かる。
【0069】
一方、比較例1では光学特性及び耐湿熱性が劣り、鉛筆硬度も5B以下となり物理特性も劣ることが分かる。
【0070】
続いて、上記で得られた透明導電性シートについて、下記とおりパターニング適性の評価を行った。
【0071】
<レジスト膜の形成>
先ず、透明導電性シートの透明導電性膜側の主面の中央部に5cm角の面積にスクリーン印刷法によりレジスト剤(ヘレウス社製、商品名“Clvious SET S”)を印刷し、その後100℃で5分間加熱した。これにより、透明導電性膜上にレジスト膜を形成した。
【0072】
<導電性の低下>
次に、透明導電性膜上にレジスト膜が形成された透明導電性シートを、塩素系不活性剤(ヘレウス社製、商品名“Clvious Etch”)を10%水溶液に調製した溶液に20分間浸漬した後、蒸留水で洗浄し、100℃で5分間加熱した。これにより、透明導電性膜の露出部の導電性を低下させた。
【0073】
<レジスト膜の剥離>
次に、上記透明導電性シートをトルエンに3分間浸漬し、レジスト膜を剥離した後、蒸留水で洗浄し、100℃で5分間乾燥した。
【0074】
次に、得られた透明導電性シートの電気特性を評価した。評価方法については以下に説明する。
【0075】
<電気特性>
先ず、透明導電性シートの導電パターン形成面において、導電パターンが形成されている導電部の表面抵抗値を、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定計“Loresta−GP”(MCP−T610型)とLSPプローブを用いて測定した。また、透明導電性シートの導電パターン形成面において、導電パターンが形成されていない非導電部の表面抵抗値を、三菱化学アナリテック社製の抵抗率測定計“Hiresta−UP”(MCP−HT450型)とURSプローブを用いて測定した。ここでは、導電部と非導電部の表面抵抗値の差が、1×10
6Ω/スクエア以上である場合は、良好な電気的コントラストが得られていると評価する。
【0076】
その結果、実施例1〜3の透明導電性シートでは、良好な電気的コントラストが得られていたが、比較例1の透明導電性シートでは、良好な電気的コントラストが得られていないことが分かった。