(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが本発明はこれに限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、ポンプ100を示す断面図である。ポンプ100は、作動液体を搬送する磁気カップリングポンプである。ポンプ100は、密閉型の羽根車10と、回転軸AXを中心に羽根車10を回転可能に支持するポンプケーシング60とを備える。羽根車10はロータであり、ポンプケーシング60はステータである。羽根車10とポンプケーシング60との間に液体軸受1A,1Bが形成される。液体軸受1Aと液体軸受1Bとは、回転軸AXと平行な軸方向の異なる位置に形成される。液体軸受1A,1Bは、羽根車10とポンプケーシング60との間の軸受隙間2に潤滑液体の膜を形成する。液体軸受1A,1Bの潤滑液体として、ポンプ100の作動液体が使用される。
【0016】
ポンプケーシング60は、作動液体を吸い込む吸込口6と、作動液体を吐出する吐出口7とを有する。吸込口6は、吸込ホースが接続される吸込ホース接続管部62に設けられる。吐出口7は、吐出ホースが接続される吐出ホース接続管部9に設けられる。
【0017】
なお、以下の説明では、回転軸AXと平行な軸方向の吸込口6側を前側とし、その反対側を後側とする。また、回転軸AXと直交する径方向の回転軸AX側を内側とし、その反対側を外側とする。
【0018】
羽根車10は、吸込口6と対向し作動液体が流入する羽根車入口12と、吐出口7と対向し作動液体が流出する羽根車出口13と、羽根車入口12と羽根車出口13とを接続する羽根車内部流路Prとを有する。
【0019】
羽根車10は、複数の羽根11と、羽根11の前側を覆う前シュラウド20と、羽根11の後側を覆う後シュラウド40とを有する。羽根11の前後が前シュラウド20及び後シュラウド40で覆われることにより密閉型の羽根車10が形成される。
【0020】
前シュラウド20は、入口筒部21と、羽根11の前側を覆う前側板部31とを有する。後シュラウド40は、羽根11の後側を覆う後側板部41と、複数の従動磁石19が設けられた軸部51とを有する。羽根車入口12は、入口筒部21に設けられる。羽根車出口13は、前側板部31と後側板部41との間に設けられる。複数の羽根11は、前側板部31と後側板部41との間に配置される。
【0021】
羽根車内部流路Prは、入口筒部21の内側の空間、及び前側板部31と後側板部41との間の空間を含む。
【0022】
軸部51に、羽根車内部流路Prと接続される貫通孔56が形成される。貫通孔56の後端部は、軸部51の後端面53とポンプケーシング60との間の空間と接続される。
【0023】
入口筒部21の前端部に入口テーパ面24が形成される。入口筒部21の外周面22と入口テーパ面24との境界部に円弧面23が形成される。前側板部31の前面32の外側に前側板テーパ面33が形成される。後側板部41の後面42の外側に後側板テーパ面43が形成される。軸部51の後端面53の内側に軸テーパ面55が形成される。軸部51の外周面52と軸テーパ面55の境界部に円弧面54が形成される。
【0024】
ポンプケーシング60は、前シュラウド20を覆うポンプ前ケーシング61と、後シュラウド40を覆うポンプ後ケーシング81とを有する。
【0025】
ポンプ前ケーシング61は、吸込ホース接続管部62と、吸込ホース接続管部62の後端部と接続された拡径管部65と、拡径管部65の後端部と接続され、入口筒部21の周囲に配置される前軸受形成部67と、前軸受形成部67の後端部と接続され、前側板部31を覆う前ケーシング本体部71とを有する。
【0026】
前ケーシング本体部71は、前軸受形成部67の後端部と接続され、前側板部31と対向する前面対向部72と、前面対向部72の外縁部と接続される前本体筒部75とを有する。
【0027】
前軸受形成部67の内周面68と前面対向部72の内面73とは、前ケース本体テーパ面74を介して接続される。入口筒部21の外周面22と前軸受形成部67の内周面68とは間隙Gc1を介して対向する。前側板部31の前面32と前面対向部72の内面73とは間隙Ga1を介して対向する。入口筒部21の外周面22と前面対向部72の前ケース本体テーパ面74とは間隙Ga1を介して対向する。拡径管部65の内面と入口筒部21の円弧面23とは間隙Gb1を介して対向する。前本体筒部75の内周面76と前側板部31の外周面とは間隙Grを介して対向する。
【0028】
ポンプ後ケーシング81は、前ケーシング本体部71の後端部と接続され、後側板部41を覆う後ケーシング本体部91と、後ケーシング本体部91と接続され、軸部51の周囲に配置される後軸受形成部82と、後軸受形成部82の後端部と接続され、軸部51と対向する後壁板部85とを有する。
【0029】
後ケーシング本体部91は、前ケーシング本体部71の後端部と接続された後本体筒部92と、後本体筒部92の後端部と接続され、後側板部41と対向する後面対向部95とを有する。
【0030】
後側板部41の後面42と後面対向部95の内面96とは間隙Ga2を介して対向する。軸部51の外周面52と後軸受形成部82の内周面83とは間隙Gc2を介して対向する。後壁板部85の内面86と軸部51の後端面53とは間隙Gb2を介して対向する。
【0031】
ポンプ駆動装置200は、出力軸211を有するモータ210と、カップ220と、カップ220に固定されている複数の駆動磁石219と、モータ210及びカップ220を覆う駆動装置ケーシング230とを備える。
【0032】
カップ220は、炭素鋼で形成され、駆動磁石219のヨークとして機能する。カップ220は、カップ円筒部221と、カップ円筒部221と接続されるモータ接続部225とを有する。モータ210の出力軸211はモータ接続部225に固定される。カップ円筒部221に複数の駆動磁石219が固定される。駆動磁石219は永久磁石であり、Nd(ネオジウム)磁石である。
【0033】
駆動装置ケーシング230は、ケーシング本体231と、ケーシング本体231と接続されるキャップ241とを有する。ケーシング本体231は、ケーシング円筒部232と、ケーシング円筒部232と接続されるケーシング底部235とを有する。モータ210は、ケーシング本体231の内側に配置され、ケーシング底部235に固定される。
【0034】
キャップ241は、ポンプ後ケーシング81の後軸受形成部82及び後壁板部85が嵌まり込むポンプ嵌合部242と、ポンプ嵌合部242と接続されるポンプ受け部244と、ポンプ受け部244と接続され、ケーシング本体231の開口縁部と係合する係合部246とを有する。
【0035】
次に、ポンプ100の動作について説明する。モータ210が作動し、出力軸211が回転すると、カップ220及び複数の駆動磁石219が回転する。駆動磁石219が回転すると、駆動磁石219と磁気結合されている従動磁石19は、駆動磁石219と一緒に回転軸AXを中心に回転する。駆動磁石219が回転すると、羽根車10は、従動磁石19と一緒に、ポンプケーシング60の内部で回転軸AXを中心に回転する。
【0036】
羽根車10が回転すると、吸込口6からポンプケーシング60の内部に作動液体が吸い込まれる。ポンプケーシング60の内部に吸い込まれた作動液体は、羽根車入口12から羽根車10の羽根車内部流路Prに流入する。羽根車内部流路Prに流入した作動液体は、回転する複数の羽根11から遠心力を受けて、羽根車出口13から流出した後、吐出口7から吐出される。
【0037】
羽根車出口13から流出した作動液体の一部は、前面対向部72の内面73及び前ケース本体テーパ面74と前側板部31の前面32との間隙Ga1に流入する。間隙Ga1に流入した作動液体は、前軸受形成部67の内周面68と入口筒部21の外周面22との間隙Gc1を流れた後、拡径管部65の内面66で規定される間隙Gb1を流れる。間隙Gb1の作動液体は、羽根車入口12から羽根車内部流路Prに流入する。
【0038】
また、羽根車出口13から流出した作動液体の他の一部は、後面対向部95の内面96と後側板部41の後面42との間隙Ga2に流入する。間隙Ga2に流入した作動液体は、後軸受形成部82の内周面83と軸部51の外周面52との間隙Gc2を流れた後、後壁板部85の内面86と軸部51の後端面53との間隙Gb2を流れる。間隙Gb2の作動液体は、貫通孔56を介して羽根車内部流路Prに流入する。
【0039】
外周面22と内周面68とは平行である。また、回転軸AXと直交する面内において、外周面22及び内周面68は円形である。外周面22及び内周面68は液体軸受面であり、外周面22と内周面68との間に液体軸受1Aが形成される。外周面22と内周面68との間隙Gc1は、軸受隙間2である。外周面22と内周面68との間の軸受隙間2を流れる作動液体は、液体軸受1Aの潤滑液体として機能する。
【0040】
外周面52と内周面83とは平行である。また、回転軸AXと直交する面内において、外周面52及び内周面83は円形である。外周面52及び内周面83は液体軸受面であり、外周面52と内周面83との間に液体軸受1Bが形成される。外周面52と内周面83との間隙Gc2は、軸受隙間2である。外周面52と内周面83との間の軸受隙間2を流れる作動液体は、液体軸受1Bの潤滑液体として機能する。
【0041】
本実施形態においては、液体軸受1A,1Bにおいて動圧軸受が成立しない条件でも、羽根車10とポンプケーシング60との接触が抑制され、羽根車10がポンプケーシング60で非接触支持されるように、液体軸受1A,1Bが最適化される。以下、最適化された液体軸受1Aについて説明する。なお、液体軸受1Bについても、液体軸受1Aと同様に最適化される。
【0042】
図2は、液体軸受1Aを示す模式図である。液体軸受1Aは、回転軸AXの周囲に配置される外面である外周面22を有する羽根車10と、羽根車10の周囲に配置されるポンプケーシング60とを有する。羽根車10とポンプケーシング60とは相対回転可能である。羽根車10はロータとして機能する第1部材であり、ポンプケーシング60はステータとして機能する第2部材である。
【0043】
ポンプケーシング60は、外周面22との間で軸受隙間2を形成する第1内面である内周面68と、潤滑液体が流入する軸受隙間2の入口側において外周面22との間に軸受隙間2の第1寸法Cdよりも大きい第2寸法Idの間隙Ga1を形成する第2内面である内面73と、潤滑液体が流出する軸受隙間2の出口側において外周面22との間に第1寸法Cdよりも大きい第3寸法Odの間隙Gb1を形成する第3内面である内面66とを有する。間隙Ga1は軸受隙間2の入口と接続される入口側流路であり、間隙Gb1は軸受隙間2の出口と接続される出口側流路である。
【0044】
軸受隙間2を流れる潤滑液体として、ポンプ1の作動液体が使用される。作動液体として、気温20[℃]における粘度が1[cP]以上5[cP]以下の作動液体が使用される。作動液体として水が使用されてもよい。気温20[℃]における水の粘度は、1.002[cP]である。
【0045】
軸受隙間2において回転軸AXと平行な軸方向に潤滑液体が流れるように、間隙Ga1の圧力Paが間隙Gb1の圧力Pbよりも高くなっている。間隙Ga1には羽根車出口13からの圧力が高められた潤滑液体(作動液体)が流れ込み、間隙Ga1の圧力Paは間隙Gb1の圧力Pbよりも高くなる。また、間隙Ga1の第2寸法Idは、軸受隙間2の第1寸法Cdよりも大きいので、間隙Ga1の圧力Paを高めることができる。
【0046】
外周面22の断面は円形であり、内周面68は円筒面である。
図2は、羽根車10の入口筒部21の回転軸AXとポンプケーシング60の前軸受形成部67の中心軸BXとが一致している状態を示す。また、内周面68との間で軸受隙間2を形成する入口筒部21は、直径が一定であるストレート部材である。
【0047】
軸受隙間2の第1寸法をCd、羽根車10の入口円筒部21の直径をdとしたとき、
0.002 ≦ Cd/d ≦ 0.02 …(1)
の条件を満足する。
【0048】
図2に示す状態では、回転軸AXと中心軸BXとは一致しており、外周面22の周囲の軸受隙間2の第1寸法Cdは一定である。また、
図2に示すように、入口側から出口側までの軸受隙間2の圧力勾配は、外周面22の周方向において一様である。
【0049】
図3は、羽根車10の動作を示す模式図である。圧力Paが圧力Pbよりも大きく、軸受隙間2において軸方向に潤滑液体が流れている状態において、ポンプケーシング60に対して羽根車10が径方向に動いた場合、羽根車10を元の位置に戻そうとする復元力が発生する。
【0050】
例えば、
図3に示すように、羽根車10が上方に移動し、ポンプケーシング60の中心軸BXと羽根車10の回転軸AXとがずれた場合、羽根車10の上側の軸受隙間2の第1寸法Cdは、羽根車10の下側の軸受隙間2の第1寸法Cdよりも小さくなる。その結果、羽根車10の下側の軸受隙間2における潤滑液体の流量が増し、
図3に示すように、羽根車10の上側の軸受隙間2の圧力が、羽根車10の上側の軸受隙間2の圧力よりも大きくなる。羽根車10の上側の軸受隙間2と下側の軸受隙間2との圧力差が生じると、羽根車10を下方に移動させようとする力、すなわち、羽根車10を元の位置に戻そうとする復元力(回転軸AXを中心軸BXに一致させようとする力)が羽根車10に作用する。これにより、軸受隙間2の第1寸法Cdは元の値に戻り、外周面22の周囲において軸受隙間2の第1寸法Cdは一定となる。そのため、羽根車10とポンプケーシング60との接触が抑制される。
【0051】
この復元力は、羽根車10の回転数が低くても発生する。例えば、直径dが25mmで、第1寸法Cdが0.25mmであり、Cd/dが0.01である場合、動圧軸受を成立させてポンプケーシング60で羽根車10を非接触支持するためには、羽根車10を約15000[rpm]で回転させなければならない。本実施形態においては、軸受隙間2の入口側と出口側とに圧力差を設けて、軸受隙間2の軸方向に潤滑液体を流すことによって、Cd/dが0.01である場合、設計点の58%の回転数程度で羽根車10を回転すれば、上述の復元力により、ポンプケーシング60で羽根車10を非接触支持することができる。
【0052】
つまり、あるCd/dの関係を有するロータをステータで非接触支持しようとする場合、本実施形態に係る復元力を使えば、動圧軸受を使う場合に比べて、半分以下の回転数で回転させれば済む。
【0053】
また、この復元力は、軸受隙間2の第1寸法Cdが大きくても発生する。例えば、直径dが25[mm]の羽根車10を設計点の58%の回転数で回転させた状態で動圧軸受を成立させるために、従来は、第1寸法Cdを0.025[mm]程度とし、Cd/dを0.001程度にしないと成立しない。本実施形態においては、直径dが25[mm]のときに第1寸法Cdを0.25[mm]としても、羽根車10を設計点の58%の回転数で回転させることにより、ポンプケーシング60で羽根車10を非接触支持することができる。
【0054】
つまり、ある直径dを有するロータをステータで非接触支持しようとする場合、本実施形態に係る復元力を使えば、動圧軸受を使う場合に比べて、軸受隙間2の第1寸法Cdを約10倍大きくすることができる。
【0055】
また、この復元力は、潤滑液体の粘度に依存せずに発生する。潤滑液体としてポンプ100の作動液体を使用する場合、その潤滑液体(作動液体)の粘度では動圧軸受を成立させることが困難な状況が発生する可能性がある。本実施形態に係る復元力を使えば、どのような粘度の作動液体を搬送しようとする場合でも、その作動液体を潤滑液体として使用することができる。
【0056】
図4は、ポンプ100の評価試験の結果を示す図である。評価試験では、直径dが25[mm]、Cd/dが0.01であるロータ(羽根車10)及びステータ(ポンプケーシング60)を有するポンプ100を使用した。
【0057】
評価試験では、ロータの回転数、潤滑液体の流量、及び圧力を変えつつ、ステータに対してロータを回転させた状態でレーザ変位計を使ってロータの位置を計測し、ステータとロータとが接触したか否かを計測した。
図4は、ロータの各回転数における流量−揚程特性を示す。横軸は、軸受隙間2に流入する潤滑液体の流量である。縦軸は、ポンプ100の揚程であり、軸受隙間2の入口側と出口側との圧力差に相当する。
【0058】
ポンプ100の設計点における流量及び揚程は100[%]である。ポンプ100の設計点における回転数を100[%]として、回転数を78[%]、68[%]、58[%]と変化させたときの、各回転数における流量−揚程特性を評価した。
【0059】
図4において、白丸「○」は、ロータがステータに非接触で支持されている運転点を示し、黒丸「●」は、ロータがステータに接触した運転点を示す。
【0060】
回転数58[%]は設計最低回転数であり、設計点流量100[%]以下の流量において、ロータとステータとの接触は確認されなかった。一方、流量が上昇し、揚程(圧力差)が低下すると、ロータとステータとの接触が確認される。これより、入口側と出口側との圧力差が小さくなると、軸受隙間2における潤滑液体の軸方向の流れが弱まり、上述の復元力が得られないことが確認できる。
【0061】
また、回転数68[%]、78[%]、及び100[%]においては、入口側と出口側との圧力差が十分であり、回転数の上昇に伴って動圧効果も得られてくるため、ロータとステータとの接触は確認されなかった。
【0062】
このように、ロータの回転数に依存することなく、(1)式の条件を満たすように軸受隙間2の第1寸法Cdが規定されれば、復元力を得ることが確認できた。
【0063】
また、Cd/dが0.01の場合のみならず、0.002の場合、及び0.02の場合においても、同様の傾向が得られることが確認できた。
【0064】
以上説明したように、本実施形態によれば、軸受隙間2の入口側と出口側とに圧力差を設けて、軸受隙間2において軸方向に潤滑液体を流すことにより、動圧軸受が成立しない条件(ロータの回転数、軸受隙間の寸法、及び潤滑液体の粘度)においても、復元力を発生させることができ、この復元力により、ロータとステータとの接触を抑制することができる。
【0065】
この復元力により、ロータの回転数が低い状態でも、ロータとステータとの接触が抑制されるので、ポンプ100の立ち上げ時など、ロータの回転数が所定値よりも低い第1回転数範囲でも、ロータとステータとの接触が抑制される。また、ロータの回転数が所定値よりも高い第2回転数範囲になれば、ロータとステータとの間に働く潤滑液体の動圧により動圧軸受が成立し、ステータでロータを非接触で支持することができる。
【0066】
また、復元力を発生させる場合、動圧軸受が成立する条件に比べて軸受隙間2の第1寸法Cdは大きくてよいので、ロータの外面及びステータの内面に高い平滑度又は高い加工精度は要求されない。また、一般的な動圧軸受においてはロータに溝が設けられることがあるが、本実施形態においては、溝は不要である。これにより、ロータ及びステータの加工上の制約が緩和される。また、第1寸法Cdが大きくてもよいので、潤滑液体に異物が混入していても、軸受隙間2に異物が詰まることが抑制される。
【0067】
また、本実施形態によれば、ポンプ100自身の発生圧を液体軸受1A,1Bに誘導し、2次流れを利用して静圧効果も得ている。従来の静圧軸受のようなリセル又はランドは不要である。また、液体軸受1A,1Bの潤滑液体としてポンプ100の作動液体を使用することにより、作動液体の供給系と潤滑液体の供給系とを別々に設ける構造に比べてシンプルな構造となり、入口側流路と出口側流路との潤滑液体の圧力差を得るための外部高圧ポンプ又は配管類も不要となる。
【0068】
<第2実施形態>
第2実施形態について説明する。
図5は、ポンプ300の一例を示す模式図である。第1実施形態で説明したポンプ100は、円筒状のステータ(ポンプケーシング60)の内側にロータ(羽根車10)が設けられている構成であった。
図5に示すポンプ300は、ステータ400の周囲に円筒状のロータ500が設けられている構造である。
【0069】
図5に示すポンプ300は、作動液体を搬送する軸流ポンプである。ポンプ300は、回転軸AXの周囲に配置される外面401を有する第1部材であるステータ400と、ステータ400の周囲に配置される第2部材であるロータ500とを備えている。ステータ400及びロータ500は、羽根を有する。ステータ400とロータ500とは相対回転可能である。
【0070】
ロータ500は、外面401との間で軸受隙間310を形成する第1内面501と、潤滑液体が流入する軸受隙間301の入口側において外面401との間に軸受隙間2の第1寸法Cdよりも大きい第2寸法Idの入口側流路Ga3を形成する第2内面502と、潤滑液体が流出する軸受隙間310の出口側において外面401との間に第1寸法Cdよりも大きい第3寸法Odの出口側流路Gb3を形成する第3内面503とを有する。潤滑液体としてポンプ300の作動液体が使用される。
【0071】
ポンプ300は、軸受隙間310において回転軸AXと平行な軸方向に潤滑液体が流れるように、入口側流路Ga3の圧力Paを出口側流路Gb3の圧力Pbよりも高くする。
【0072】
回転軸AXと直交する面内において外面401及び第1内面501は円形であり、軸受隙間310の第1寸法をCd、ステータ400の直径をdとしたとき、上述の(1)式の条件を満足する。
【0073】
ロータ500にはマグネット519が配置され、ポンプ300のハウジング360の外側にはモータコイル319が設けられている。モータコイル319に電流が流れると、マグネット519を有するロータ500が回転する。
【0074】
また、ロータ500の軸方向端部には磁石520が設けられ、ステータ400には磁石503と対向する位置に磁石420が設けられる。磁石520と磁石420との吸引力又は反発力のバランスにより、ステータ400に対するロータ500の軸方向の相対位置が維持される。
【0075】
このように、ステータ400の周囲にロータ500が配置されているタイプのポンプ300であっても、復元力により、ステータ400とロータ500との接触を抑制することができる。
【0076】
なお、上述の各実施形態においては、ポンプは、磁気カップリングポンプでもよいし、キャンドモータポンプでもよいし、シールレスポンプでもよい。