特許第6746291号(P6746291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746291
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】ダニ誘引剤及びその利用
(51)【国際特許分類】
   A01N 65/08 20090101AFI20200817BHJP
   A01N 65/30 20090101ALI20200817BHJP
   A01N 65/44 20090101ALI20200817BHJP
   A01P 19/00 20060101ALI20200817BHJP
   A01M 1/02 20060101ALI20200817BHJP
   A01M 1/14 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   A01N65/08
   A01N65/30
   A01N65/44
   A01P19/00
   A01M1/02 A
   A01M1/14 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-208594(P2015-208594)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-81828(P2017-81828A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東藤 佐予
【審査官】 西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−516484(JP,A)
【文献】 特開2004−215577(JP,A)
【文献】 特開2002−253103(JP,A)
【文献】 特開2009−213417(JP,A)
【文献】 特開2000−336007(JP,A)
【文献】 特開2011−153132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
そばの実、緑茶の葉、さつまいもの根及びとうもろこしの実からなる群より選択される少なくとも1種の加工物を含有する、ダニ誘引剤であって
さつまいもの根の加工物及び該とうもろこしの実の加工物は、それぞれ、裁断物、粉砕物、乾燥物、抽出物、乾燥抽出物及び粉末乾燥抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である
ダニ誘引剤
【請求項2】
請求項1に記載するダニ誘引剤を用いることを特徴とする、ダニ誘引方法。
【請求項3】
請求項1に記載するダニ誘引剤と粘着捕獲部を含むダニ捕獲器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニ誘引剤及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
我々の居住空間において、ダニは畳、絨毯、布団、埃等に広く生息している。また、エアコンの普及、気密性の高い住居の普及をはじめとする我々にとって快適な環境が、ダニの発生を一層高めているともいわれている。ダニは吸血、寄生、伝染病の媒介等によって人体に悪影響を与え、また、生きているダニのみならずその死骸や糞が、小児喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎等のアレルギー源となるともいわれている。これらのことから、ダニを防除することは非常に重要である。
【0003】
これまでに、様々な防除手段が知られており、殺ダニ剤を散布する方法、燻煙する方法等が例示される。しかしながら、例えば殺ダニ剤を使用しても、畳、絨毯、布団等の内部にまで薬剤を十分に浸透できない場合には殺ダニ効果が不十分となり、また、残存したダニの死骸がアレルギー源となり得る。
【0004】
そこで、別の方法として、各種誘引剤を用いたダニの捕獲が試みられており、例えば誘引剤として脂肪酸エステル(特許文献1)、食品フレーバー(特許文献2)、精油(特許文献3)等が知られている。これらは、誘引剤が設置された場所にダニを誘導できるため、誘導されたダニが誘引剤付近で死滅した場合であっても、その設置場所を目安としてダニの死骸とともにダニを排除することができる。このことから、ダニの誘引に十分な効果を示す物質を見出すことは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−230605
【特許文献2】特開昭63−255207
【特許文献3】特開2000―336007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、ダニを効果的に誘引できる誘引剤、該誘引剤を用いてダニを誘引する方法、該誘引剤を用いたダニ捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、そば、緑茶、さつまいも、とうもろこしの加工物を用いることにより、ダニを効果的に誘引できることを見出した。本発明は前記知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の加工物を含有する、ダニ誘引剤。
項2.項1に記載するダニ誘引剤を用いることを特徴とするダニ誘引方法。
項3.項1に記載するダニ誘引剤と粘着捕獲部を含むダニ捕獲器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダニを効果的に誘引できる。また、本発明の誘引剤を用いてダニを効果的に誘引することにより、ダニを効果的に捕獲、駆除することができる。また、本発明のダニ誘引方法及びダニ捕獲器によれば、ダニを効果的に捕獲、駆除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ガラスシャーレ上に、検体とダニを置いた概略図である。
図2図2は、ガラスシャーレ上に、検体(抽出液)とダニを置いた概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
ダニ誘引剤
本発明は、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の加工物を含有するダニ誘引剤を提供する。
【0011】
本発明において対象となるダニは、前気門亜目、中気門亜目、無気門亜目のダニ類があり、本発明を制限するものではないが、前気門亜目としてはフトツメダニやミナミツメダニ等のツメダニ類、ホコリダニ類、中気門亜目としてはヤドリダニ類、トリサシダニ類、無気門亜目としてはコナヒョウヒダニやヤケヒョウヒダニ等のヒョウヒダニ類、ケナガコナダニやムギコナダニ等のコナダニ類、ササラダニ類が例示される。特に無気門亜目は寝具類にいるダニ類の大多数を占めており、これはヒョウヒダニ類にあたるヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ、コナダニ類にあたるケナガコナダニ、ニクダニ等が例示される。また、本発明において対象となるダニとして、羽毛布団等に付着が認められるウモウダニ、住居内に迷入するダニ類としてイエダニ、トリサシダニ、ワクモ類、ササラダニ類等が例示される。
【0012】
本発明において加工物の原料としては、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種が使用され、この限りにおいてその使用部位は特に限定されない。
【0013】
本発明を制限するものではないが、そばの使用部位として実(種)、葉、茎、根、花等が例示され、好ましくは実、葉、根が例示される。緑茶の使用部位として茶葉、茎(枝)、根、花等が例示され、好ましくは茶葉、茎が例示される。さつまいもの使用部位として根、葉、花、茎等が例示され、好ましくは根が例示される。とうもろこしの使用部位として実、葉、花、茎、根等が例示され、好ましくは実が例示される。
【0014】
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0015】
本発明において加工物とは、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の任意の部位の裁断物、粉砕物、乾燥物、抽出物等が例示され、その形態や目的とする剤型に応じて、裁断処理、粉砕処理、抽出処理、精製処理、濃縮処理、乾燥処理(凍結乾燥処理等を含む)等の種々の加工処理に適宜供することにより、加工物として調製されたものを指す。本発明を制限するものではないが、加工物として、例えば裁断物(裁断加工物)、粉砕物(粗紛状、細紛状等いずれでもよい)(粉砕加工物)、乾燥物(乾燥加工物);任意の部位、裁断物、粉砕物または乾燥物を溶媒で抽出した抽出物、その乾燥物(乾燥抽出物)、更にこれを粉末にした粉末乾燥抽出物等を挙げることができる。本発明において加工物は、固形状、半固形状、液状等いずれの形態であってもよい。また、これらの加工物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの加工物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法に従えばよい。
【0016】
本発明を制限するものではないが、例えば前記加工物が裁断物または粉砕物である場合、前記任意の部位をそのまま当該分野で公知の裁断機やジェットミル等の粉砕機等に供し、裁断物または粉砕物として調製できる。また、例えば、前記任意の部位を、自然乾燥(天日乾燥等)、恒温乾燥(恒温器等を用いた乾燥)、遠赤外線照射、乾燥機(熱風乾燥、冷風乾燥)、凍結乾燥(真空凍結乾燥を含む)等の従来公知の方法を用いて乾燥させたのち、得られた乾燥物を裁断機や粉砕機等に供し、裁断物または粉砕物として調製することができる。
【0017】
また、前記加工物が乾燥物である場合、該加工物は、例えば、前記任意の部位をそのまま、または前述のように裁断または粉砕したのちに、乾燥させることにより得ることができる。ここで、裁断、粉砕、乾燥は前述と同様に説明できる。また、乾燥物は、前記任意の部位、裁断物または粉砕物に対して発酵処理や酵素処理等を行い、その後に必要に応じて粉砕を行ったり必要な部位の分離等を行い、乾燥を行ったものであってもよい。このような乾燥物には、例えば従来公知の加湿製粉(ウェットミリング)、乾燥製粉(ドライミリング)を経て得られる加工物も包含され、例えばトウモロコシの例としてコーンスターチが例示される。また、一例として乾燥物が粉末形態の場合、これは粉末乾燥物(粉末乾燥加工物)と称することができる。乾燥の程度は当業者が適宜設定すればよい。
【0018】
また、加工物が抽出物である場合、その製造方法(抽出条件等)も特に限定されず、従来公知の方法に従えばよい。前記任意の部位をそのまままたは裁断、粉砕等したのち、搾取または溶媒抽出によって抽出物を得ることができる。溶媒抽出の方法としては、当該技術分野において公知の方法を採用すればよく、例えば水(温水、熱水を含む)抽出、アルコール抽出、超臨界抽出等の従来公知の抽出方法を利用することができる。
【0019】
溶媒抽出を行う場合、溶媒としては水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール類(無水、含水の別を問わない);アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステル等のエステル類、ヘキサン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム等が例示される。溶媒抽出として、好ましくは水、アルコール類、ケトン類、ヘキサン等、より好ましくは水、アルコール類、ケトン類が例示される。これらの溶媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、乾燥させて使用してもよい。また、必要に応じて、得られた抽出物に精製、濃縮処理等を施してもよい。精製処理としては、濾過またはイオン交換樹脂や活性炭カラム等を用いた吸着、脱色、分離といった処理を例示できる。また、濃縮処理としては、エバポレーター等の常法を例示できる。また、これらに対して更に凍結乾燥等の乾燥処理を施してもよく、更に従来公知の方法に従って粉末化させてもよい。また、このようにして得た抽出物を、必要に応じて水、エタノール等に溶解して用いてもよい。
【0021】
本発明において加工物として好ましくは裁断物、粉砕物、乾燥物、抽出物、乾燥抽出物、粉末乾燥抽出物であり、より好ましくは乾燥物、抽出物、乾燥抽出物、粉末乾燥抽出物が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
本発明のダニ誘引剤には、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて任意の成分を更に含有してもよい。任意の成分として、従来公知の殺ダニ効果を有する成分、従来公知のダニ誘引効果を有する成分、殺虫剤、酸化防止剤、殺菌剤、防黴剤、防腐剤、担体、賦形剤、ゲル化剤、徐放化剤、分散剤、滑沢剤、界面活性剤、結合剤、香料、着色料、乳化剤、増粘剤等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
これらの任意の成分のうち一部を説明すると、本発明を制限するものではないが、殺ダニ効果を有する成分、ダニ誘引効果を有する成分及び/または殺虫剤としては、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、フラメトリン、レスメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、エムペントリン、シペルメトリン、シフェノトリン、フェンバレレート、トランスフルトリン、プロフルトリン、メトフルトリン、これらの光学、幾何学異性体等のピレスロイド系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメート系化合物;フェニトロチオン、フェンチオン、DDVP(ジメチル2,2−ジクロルビニルホスフェイト)、ダイアジノン、マラソン、ブロモフォス、ピリダフェンチオン等の有機リン系化合物;メトキサジアゾン、アミドフルメト等が挙げられる。この他にも、IBTA(チオシアノ酢酸イソボルニル)、N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、2,4,4’−トリクロロ−2’−ハイドロキシジフェニルエーテル、サリチル酸フェニル、安息香酸ベンジル、4−クロロフェニル−3’−ヨード−プロパルギルホルマール、第四級アンモニウム塩、植物精油、テルペン化合物、二塩基酸エステル、ステアリン酸、ペルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、リノール酸等の炭素数が4〜18の直鎖脂肪酸、炭素数が14〜18の脂肪酸エステル、チョコレートフレーバー、アーモンドフレーバー等の食品フレーバー、オキアミミール等が例示できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、γ−オリザノール、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル等が例示できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
殺菌剤、防黴剤及び/または防腐剤としては、安息香酸およびその塩、サリチル酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、デヒドロ酢酸およびその塩、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル、p−クロロ−m−キシレノール、2−(4’−チアゾイル)ベンズイミダゾール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、2,4,4’−トリクロロ−2’−ハイドロキシジフェニルエーテル、チモール、ヒノキチオール、α−ブロモシンナミックアルデヒド、N−ジメチル−N−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチル)チオスルファミド、イマザリル、チアベンダゾール等が例示できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
担体及び/または賦形剤としては、ケイ酸、カオリン、活性炭、ベントナイト、珪藻土、タルク、クレー、炭酸カルシウム、陶磁器粉等の鉱物質粉末、木粉、大豆粉、小麦粉等の植物質粉末等、シクロデキストリン等の包接化合物、トリシクロデカン、シクロドデカン、2,4,6−トリイソプロピル−1,3,5 −トリオキサン、トリメチレンノルボルネン、アダマンタン、しょうのう等の昇華性担体、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ヘキサン、ケロシン、パラフィン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類等を例示できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
ゲル化剤としては、ベンジリデン−D−ソルビトール、カラギーナン、キサンタンガム、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース等を例示できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本発明のダニ誘引剤は、前記加工物と、必要に応じて任意の成分を混合することにより製造でき、該混合は公知の方法に従えばよい。本発明のダニ誘引剤は、固形状(粉末状、顆粒状等を含む)、半固形状、液状等いずれの剤型であってもよく、各剤型に応じた担体、賦形剤といった任意の成分は公知である。また、本発明を制限するものではないが、このような剤型として、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルース、デキストリン、アラビアガム等を用いたスプレードライ法、ゼラチン、ポリビニルアルコール、アルギン酸等を用いた液中硬化法、コアセルベーション法等に従いマイクロカプセル化した剤型に調製してもよい。
【0029】
本発明のダニ誘引剤中の加工物の含有量は、適宜設定すればよく、本発明の効果が得られる限り制限されない。本発明のダニ誘引剤は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の加工物が、1mあたり0.1g以上、好ましくは1mあたり1g以上、より好ましくは1mあたり10g以上で使用することが例示される。
【0030】
本発明のダニ誘引剤は、任意の場所に設置して使用すればよい。本発明を制限するものではないが、設置場所として、玄関、台所、洗面所、寝室、居間等の部屋、押入れ、タンス、食物収納庫、衣装ケース、人形ケース等の収納家具内をはじめ、ダニの駆除が求められる区域やその付近が例示される。設置方法は、任意の場所に置く、ぶら下げる、貼り付ける、散布する、噴霧するなど制限されない。
【0031】
また、本発明のダニ誘引剤は、設置場所に応じて適宜製剤の設計をすれば良く、液剤、粉剤、顆粒剤、ベイト剤、ペースト剤、ゲル剤、エアゾール剤、スプレー剤等の製剤として用いることができる。
【0032】
このような製剤とした本発明のダニ誘引剤は、単独で、または他の成分等と併用して、粘着捕獲器;電気、熱、超音波、脱酸素等を用いた防除装置等に用いることができる。
【0033】
このような本発明のダニ誘引剤によれば、前記加工物を用いることによってダニを効果的に誘引できる。このことから、本発明は、前記加工物を有効成分として含有するダニ誘引剤といえる。また、本発明のダニ誘引剤は、含有される加工物が食品由来であることから安全性が高く、安心して利用することができる。また、本発明のダニ誘引剤が更に殺ダニ効果を有する成分や殺虫剤を含有している場合には、ダニを誘引するとともに、誘引したダニを殺すことができ、効果的な防除に役立つ。
ダニ誘引方法
このことから、本発明は、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の加工物を含むダニ誘引剤を用いることを特徴とするダニ誘引方法を提供する。
【0034】
本発明においてダニ誘引剤は前述と同様に説明される。
【0035】
本発明のダニ誘引方法は、前記ダニ誘引剤を、前述のようにダニを誘引したい任意の場所に適宜設置することにより実施される。本発明のダニ誘引方法は、使い勝手がよく、誘引したダニをより効率良く捕える観点から、好ましくは後述するダニ捕獲器;電気、熱、超音波、脱酸素等を用いた防除装置等を、ダニを誘引したい任意の場所に設置することにより実施される。
【0036】
このような本発明のダニ誘引方法によれば、ダニを効果的に誘引することができる。また、本発明のダニ誘引方法は、前述のようにダニ誘引剤に含有される加工物が食品由来であることから安全性が高く、安心して実施することができる。また、本発明に使用されるダニ誘引剤が更に殺ダニ効果や殺虫剤を有する成分を含有している場合には、ダニを誘引するとともに、誘引したダニを殺すことができることから、本発明の方法はダニの効果的な防除にも役立つ。
ダニ捕獲器
更に本発明は、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の加工物を含有するダニ誘引剤と粘着捕獲部を有するダニ捕獲器を提供する。
【0037】
本発明においてダニ誘引剤は前述と同様に説明される。
【0038】
本発明において粘着捕獲部は、その表面に粘着性を備えていればよく、この限りにおいて制限されない。
【0039】
ダニ捕獲器は少なくともダニ誘引剤と粘着捕獲部とを有していればよく、ダニ捕獲器におけるダニ誘引剤と粘着捕獲部の配置場所は制限されない。例えば、ダニ誘引剤を粘着捕獲部に接するように配置してもよく、ダニ誘引剤と基材を組み合わせた複合物を、該複合物を形成するダニ誘引剤と基材の少なくとも一方が粘着捕獲部に接するように配置してもよい。また、ダニ捕獲器において、例えば、ダニ誘引剤及び/または該複合物を粘着捕獲部の一部または全体と混合して配置してもよく、ダニ誘引剤及び/または該複合物を、粘着捕獲部とは接しないものの粘着捕獲部付近に配置してもよい。ダニ誘引剤と粘着捕獲部は、ダニ捕獲器の一部分に配置されていてもよく、複数箇所に配置されていてもよく、全体に配置されていてもよい。
【0040】
前記基材としては、本発明の効果を妨げることなく、ダニ誘引剤を保持できるものであれば制限されない。基材として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル等の合成樹脂、天然樹脂、これらの混合樹脂、合成繊維、天然繊維、これらの混合繊維、ガラス、アルミニウム、ステンレス、亜鉛等の金属を主原料とする、従来公知の基材が例示される。また、基材の形態は制限されないが好ましくは固形状であり、ダニ誘引剤の塗布、噴霧、含浸、収容、コート等が可能なシート状の基材(紙、織布、不織布、皮革、フィルム、プラスチック板等)、ダニ誘引剤を収容可能な容器状、袋状等の基材、ダニ誘引剤と混合可能な固形状(粉末、顆粒等)の基材等が例示される。このように従来公知の方法に従って、前記複合物が得られる。該複合物におけるダニ誘引剤の含有量は本発明の効果が得られる限り制限されない。
【0041】
粘着捕獲部として、本発明の効果を妨げない限り当該分野において従来公知の粘着性を有する物質を用いれば良く、これにより粘着性を備えている粘着捕獲部を得ることができる。粘着捕獲部として、従来公知の油脂、軟化剤、液状ゴム、液状樹脂、タンパク質、多糖類、高分子物質、合成樹脂等を主成分とする感圧性接着物、粘着性含水ゲルが例示される。また、粘着捕獲部には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて前記任意の成分をはじめとする当該分野において従来公知の成分を含有させてもよい。粘着捕獲部の形態も制限されず、固形状、半固形状、液状等が例示でき、好ましくは固形状、半固形状が例示でき、使い勝手の観点から更に好ましくは固形状である。
【0042】
本発明では、該ダニ誘引剤と該粘着捕獲部を前述のように配置させることにより、ダニ捕獲器が得られる。本発明を制限するものではないが、例えば、前述のような基材に該ダニ誘引剤と該粘着捕獲部を適宜配置することにより、ダニ捕獲器が得られる。
【0043】
本発明のダニ捕獲器は、前述のダニ誘導剤と同様に任意の場所に設置して使用すればよい。本発明を制限するものではないが、設置場所として玄関、台所、洗面所、寝室、居間等の部屋、押入れ、タンス、食物収納庫、衣装ケース、人形ケース等の収納家具内をはじめとして、ダニの駆除が求められる区域やその付近が例示される。
【0044】
この限りにおいて制限されないが、本発明のダニ捕獲器は、そば、緑茶、さつまいも及びとうもろこしからなる群より選択される少なくとも1種の加工物が、1mあたり0.1g以上、好ましくは1mあたり1g以上、より好ましくは1mあたり10g以上となるように使用することが例示される。
【0045】
このようなダニ捕獲器によれば、前記ダニ誘導剤に引き寄せられたダニが粘着捕獲部に接着して実質的に動けなくできることから、引き寄せられてきたダニを簡単且つ効率良く駆除することができる。また、このように捕獲できることから、引き寄せられたダニが死んだ場合であっても、その死骸とともにダニを駆除できることから、引き寄せられて死骸となったダニがアレルギー源となることも回避できる。また、本発明のダニ捕獲器が、殺ダニ効果や殺虫剤を有する成分とともに使用されている場合には、ダニを誘引するとともに、誘引したダニを殺すことができ、効果的な防除に役立つ。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
試験例1
1.手順
そば、緑茶、さつまいも、とうもろこしを用いてダニの誘引に対する影響を検討した。具体的には、次の表1に示す、粉末状のそば、緑茶、さつまいも、とうもろこしの各検体100mgを、ガラスシャーレ(直径15cm)の円周に沿ってそれぞれ置いた。次いで、このガラスシャーレを、飽和食塩水で調湿したバット内(相対湿度75%)に入れ、次いで、シャーレの中央にダニ約500頭(ヤケヒョウヒダニ)を置き、25℃で一晩放置した。その後、各検体付近のダニの数を計測し、これに基づいてダニの誘引に対する効果を評価した。
【0047】
また、そば、緑茶、さつまいも、とうもろこし以外にも、表1に示す、粉末状のかつお、きなこ、ごま、卵黄、オキアミ、アーモンド、米ぬかの各検体を用いた以外は、前記そば等と同様にしてダニの誘引に対する効果を評価した。
【0048】
各検体付近のダニの数を計測し、検体付近にダニが100頭以上集まっている場合を◎、20〜99頭は○、10〜19頭を△、10頭未満を×とし、◎は誘引効果が最も高く、×は誘引効果が最も低いと評価した。
【0049】
また、本試験例においてガラスシャーレ上に各検体とダニを置いた概略図を図1に示す。これは6検体をガラスシャーレの円周に沿ってそれぞれ置き、中央にダニを置いた概略図である。
2.結果
結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1から明らかなように、そばは◎であり、高いダニ誘引効果を有していることが分かった。また、さつまいも、とうもろこし、緑茶においても○であり、十分なダニ誘引効果を有していることが分かった。本試験は3回行ったが、いずれも再現性高くダニ誘引効果を有していた。一方、かつお、きなこ、ごま、卵黄、オキアミ、アーモンド、米ぬかにおいてはいずれも△または×となり、十分なダニ誘引効果は得られなかった。
【0052】
このことから、そば、緑茶、さつまいも、とうもろこしの加工物によれば効果的にダニを誘引できることが明らかになった。
試験例2
1.手順
試験例1においてダニ誘引効果が認められたそばについて、次の試験を行った。具体的には、試験例1で用いたそば1gを表2に示す溶媒(アセトン、エタノール、ヘキサンは2mL、水は6mL)と混合し、20℃で15分攪拌後、静置し、上清を採取することにより抽出液を調製した。
【0053】
ガラスシャーレ(直径15cm)の円周に沿って、図2のように黒色の画用紙を4枚置き、そのうち2枚に2種類の検体(抽出液)200μLをそれぞれ滴下させることにより含浸させ、残り2枚に、抽出液の調製に用いた溶媒を同様にして含浸させた。残り2種類の検体(抽出液)及び溶媒についても、同様に別のガラスシャーレ及び画用紙を用いて含浸させた。次いで、これらのガラスシャーレを、飽和食塩水で調湿したバット内(相対湿度75%)に入れ、次いで、シャーレの中央にダニ約500頭を置き、25℃で一晩放置した。その後、各画用紙上のダニの数を計測し、これに基づいてダニの誘引に対する効果を評価した。
【0054】
なお、画用紙上のダニの数を計測し、溶媒のみを含浸させた画用紙上のダニ数と抽出液を含浸させた画用紙上のダニ数を数えて、溶媒のみを含浸させた画用紙上のダニ数を基準(1)にして、これに対する、抽出液を含浸させた画用紙上のダニ数を算出し、後者が前者の5倍以上である場合を◎、3倍以上5倍未満を○、2倍以上3倍未満を△、2倍未満を×とし、◎が最も誘引効果が高く、×は誘引効果が最も低いと評価した。
2.結果
結果を表2に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2から明らかなように、いずれの抽出液を用いた場合も効果的な誘引効果が示された。特に、溶媒としてアセトン、エタノール、水を用いた場合に一層高い誘引効果が示された。
【0057】
試験例1、2により、本発明の誘引剤が顕著なダニ誘引効果を奏することが示され、少量であってもダニを効率よく誘引できることが確認された。このことから、本発明のダニ誘引剤を用いることによって、ダニを効率良く捕獲、防除できることが分かった。
図1
図2