特許第6746293号(P6746293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6746293-茶殻由来の食物繊維の製造方法 図000003
  • 特許6746293-茶殻由来の食物繊維の製造方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746293
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】茶殻由来の食物繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/21 20160101AFI20200817BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20200817BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20200817BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20200817BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20200817BHJP
   A61K 127/00 20060101ALN20200817BHJP
【FI】
   A23L33/21
   A61K36/82
   A61P1/10
   A61P3/10
   A61P3/06
   A61K127:00
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-213840(P2015-213840)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-79671(P2017-79671A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100170346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 望
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 進
(72)【発明者】
【氏名】田村 正明
(72)【発明者】
【氏名】安倍 義人
(72)【発明者】
【氏名】菅原 大奨
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−204149(JP,A)
【文献】 特開平10−212227(JP,A)
【文献】 特表2003−512539(JP,A)
【文献】 特開昭52−125657(JP,A)
【文献】 特開平02−119751(JP,A)
【文献】 特開平08−116923(JP,A)
【文献】 特開平04−104773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化物を含むアルカリ溶液を用いて茶殻をアルカリ処理するステップと、
酸を用いてpH6〜8となるように前記水酸化物を中和するステップと、
前記中和された処理液に含まれる茶殻処理物を乾燥することにより、前記処理液から食物繊維を回収するステップと、
を含む茶殻由来の食物繊維の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の茶殻由来の食物繊維の製造方法であって、
前記中和するステップの後、漂白剤を用いて前記アルカリ処理された茶殻処理物を漂白するステップを更に含む
茶殻由来の食物繊維の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の茶殻由来の食物繊維の製造方法であって、
前記漂白するステップの後、前記漂白剤を還元処理するステップを更に含む
茶殻由来の食物繊維の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の茶殻由来の食物繊維の製造方法であって、
前記水酸化物は、水酸化ナトリウムを含み、
前記酸は、塩酸を含む
茶殻由来の食物繊維の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の茶殻由来の食物繊維の製造方法であって、
前記茶殻は、水を用いて原料茶葉から茶系飲料を抽出した抽出残渣である
茶殻由来の食物繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶殻由来の食物繊維の製造方法及び茶殻由来の食物繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の健康志向の高まりによって茶系飲料の需要が伸び、茶系飲料を抽出等した残渣である茶殻の排出量が年々増加している。含水している茶殻は、通常廃棄物として処理されるが、近年の省資源化の流れもあり、茶殻を有効利用する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、茶殻粉砕物が配合された紙パルプスラリーが記載されている。
また、特許文献2には、茶殻由来の微細粒子を粘土に対して所定割合で混合して成形した粘土成形体を焼成する、粘土焼成品の製造方法が記載されている。
【0003】
一方で、消費者の健康志向の高まりによって、食物繊維の生理機能に対しても関心が高まっている。食物繊維は、整腸作用のほか、糖や脂質の吸収を抑える効果を有することが知られている。
そこで、飲料や食品等に食物繊維を添加する試みがなされている。一例として、ナトリウムカルボキシメチルセルロ−スを添加した野菜汁及び/又は果汁入り飲料が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−106403号公報
【特許文献2】特開2013−32237号公報
【特許文献3】特開平06−189724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
茶殻には、セルロース等の食物繊維が含まれているが、茶殻特有の香りや味を有する。このため、茶殻そのものを飲料又は食品と混合した場合、飲料又は食品の香りや味に影響を及ぼしかねない。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、飲料又は食品と混合されても、この飲料又は食品の香り及び味へ影響を与え難い茶殻由来の食物繊維、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法は、
水酸化物を含むアルカリ溶液を用いて茶殻をアルカリ処理するステップと、
酸を用いて上記水酸化物を中和するステップと、
上記中和された処理液から食物繊維を回収するステップと、を含む。
アルカリ処理により、茶殻に含有されるタンニンやフェノール類等を一定量除去し、苦味等を抑えることができる。また、中和処理により、アルカリ処理で用いた水酸化物を中和し、当該水酸化物の残存を防止することができる。これにより、食品としての安全性を高めることができる。
【0008】
さらに、上記中和するステップの後、漂白剤を用いて上記アルカリ処理された茶殻処理物を漂白するステップを更に含んでもよい。
これにより、色の薄い食物繊維を製造することができ、混合される飲料又は食品の色の変化を抑制することができる。
【0009】
さらに、上記漂白するステップの後、上記漂白剤を還元処理するステップを更に含んでもよい。
これにより、漂白剤の酸化力を低減し、食品としての安全性を高めることができる。
【0010】
具体的には、上記水酸化物は、水酸化ナトリウムを含み、
上記酸は、塩酸を含んでいてもよい。
【0011】
また、上記食物繊維を回収するステップは、
上記処理液に含まれる茶殻処理物を乾燥又は脱水するステップを含んでいてもよい。
これにより、茶殻処理物の含水量を低減することができる。
【0012】
典型的には、上記茶殻は、水を用いて原料茶葉から茶系飲料を抽出した抽出残渣であってもよい。
【0013】
本発明の他の形態に係る茶殻由来の食物繊維は、
水酸化物を含むアルカリ溶液を用いて茶殻をアルカリ処理し、
酸を用いて上記水酸化物を中和し、
上記中和された処理液から食物繊維を回収する、
ことにより製造される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、飲料又は食品と混合されても、この飲料又は食品の香り及び味へ影響を与え難い茶殻由来の食物繊維、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】Aは、本発明の第1の実施形態に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートであり、Bは、上記第1の実施形態の変形例1−1に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートであり、Cは、上記第1の実施形態の変形例1−2に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
図2】Aは、本発明の第2の実施形態に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートであり、Bは、上記第2の実施形態の変形例2−1に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートであり、Cは、上記第2の実施形態の変形例2−2に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートであり、Dは、上記第2の実施形態の変形例2−3に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
[茶殻由来の食物繊維の概要]
本発明の第1の実施形態に係る茶殻由来の食物繊維は、茶殻を原料として製造される食物繊維であり、飲料や食品に混合され、喫食されることが可能な食物繊維である。
飲料の例としては、野菜ジュース、果物ジュース、茶系飲料、清涼飲料水、乳飲料、アルコール飲料等を挙げることができる。
食品の例としては、健康食品、菓子類、加工食品、調味料等を挙げることができる。
【0018】
本実施形態に係る茶殻は、水を用いて原料茶葉から茶系飲料を抽出した抽出残渣である。このような茶殻は、例えばペットボトルなどの容器入りの各種茶系飲料の工場などにおいて大量に発生するものである。このような茶殻に含まれる繊維質を食物繊維として再利用することで、省資源化することができる。
茶系飲料には、狭義の茶(茶樹由来)及び広義の茶(穀物茶やハーブ茶等)が含まれる。狭義の茶には、発酵茶、半発酵茶及び不発酵茶が含まれ、例えば、緑茶、烏龍茶、紅茶等が挙げられる。広義の茶の原料には、薬用植物又はハーブ類が含まれ、例えば、ペパーミント、レモンバーム、レモングラス、カモミール、ホワイトホアハウンド、グアバ、ウコン、バナバ、ミモサ、ケブラッチョ、バンビア、アカシア、チェストナット、タラ、ミラボラム、スマック、サイプレス、サンダルウッド、ゼラニウム、ベルガモット、マージョラム、ユーカリ、ラベンダー、ローズマリー、ハイビスカス、クローブ、ベニバナ、アイ、サフラン、アカネ、クチナシ、キハダ、クワ、ケルメス等が挙げられる。
本実施形態に係る茶殻は、1種類の飲料由来のものでもよいし、複数種の異なる飲料由来のものでもよい。
原料茶葉は、上述の茶の有効成分を含む茶樹組織を広く意味し、茎茶、棒茶等を含み得るものであって、「葉」に限定されない。
【0019】
本実施形態に係る食物繊維は、不溶性食物繊維及び水溶性食物繊維のうちの少なくとも一方を含み、さらに、茶殻に含有されるポリフェノール、タンニン、フェノール類等の成分、及び製造工程において用いられる安全性の高い試薬(例えば常用されている食品添加物等)を適宜含んでいてもよい。
本実施形態に係る食物繊維の粒径は、飲料や食品に添加された際に、飲料や食品の味、食感等を損ねない範囲の粒径であればよい。そのような粒径は、含水量によっても異なるが、例えば約10μm〜200μm程度とすることができる。
なお、本発明に係る食物繊維は、後述する製造方法によって製造されるものであって、使用される茶殻や製造工程上の差異によってその成分及び特性が異なるものである。
【0020】
ここで、近年の健康志向の高まりから、食物繊維が混合された飲料や食品も多く製造されている。茶殻には繊維質が豊富に含まれているため、この茶殻を廃棄せずに、飲料や食品に混合されることが可能な食物繊維として再利用することができれば、省資源化と飲料や食品の機能性を高めることの双方を両立させることができる。
一方、茶殻は、特有の香りや味を楽しむことができる茶系飲料の残渣であるため、特有の香り及び味を有する。また、茶殻は、残渣であることからわかるように、一般に喫食されるものではない。このため、茶殻そのものを飲料や食品に混合した場合、茶殻特有の香りや味が、混合された飲料や食品の香りや味に影響を及ぼしかねない。
そこで、本実施形態では、以下の製造方法により茶殻から食物繊維を製造することで、茶殻特有の味や香りが抑制され、混合された飲料又は食品の味及び香りに影響を与え難いものとすることができる。
【0021】
[茶殻由来の食物繊維の製造方法]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。以下、同図に沿って茶殻由来の食物繊維の製造方法の一例を説明する。
【0022】
(アルカリ処理(ステップS11))
ステップS11では、水酸化物を含むアルカリ溶液を用いて茶殻をアルカリ処理する。これにより、茶殻に含有され苦味を感じる成分であるタンニンやフェノール類等をある程度除去することができる。
本ステップにおける茶殻は、茶系飲料を抽出した後の抽出残渣を粉砕せずに用いてもよいし、ステップS14で説明するような粉砕処理を予備的に施したものでもよい。また、茶殻の含水量も限定されず、例えば茶系飲料を抽出した後の抽出残渣を脱水せずに用いてもよいし、後述する変形例1−1のステップS113で説明するような脱水処理を予備的に施したものでもよい。
本ステップにおける水酸化物は、例えば、水酸化ナトリウムを含んでいてもよく、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の他の水酸化物を含んでいてもよい。また、本ステップにおける水酸化物は、1種類の水酸化物を含んでいてもよいし、複数種類の水酸化物を含んでいてもよい。
また、アルカリ溶液は、上記水酸化物以外の、例えば炭酸水素ナトリウム等のアルカリ化剤を含んでいてもよい。
本ステップにおけるアルカリ処理は、例えば室温〜100℃の温度条件下で、例えば30分〜24時間程度行うことができる。
本ステップの処理が行われた茶殻を、「茶殻処理物」と称する。
【0023】
(中和処理(ステップS12))
ステップS12では、酸を用いて上記水酸化物を中和する。水酸化物を中和することで、水酸化物の残存を防止ことができる。
中和とは、水酸化物と酸が反応することで水が生成される反応をいうものとする。
本ステップにおける酸は、塩酸を含んでいてもよいし、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、グルコン酸等の有機酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸、フッ化水素酸等の無機酸、その他の酸を含んでいてもよい。また、本ステップにおける酸は、1種類の酸を含んでいてもよいし、複数種類の酸を含んでいてもよい。
中和後のpHは、例えばpH6〜8とすることができる。
【0024】
(回収(ステップS13))
ステップS13では、中和された処理液から食物繊維を回収する。本実施形態における中和された処理液とは、ステップS12における中和処理後の茶殻処理物を含む処理液をいう。
本ステップにおける具体的な回収方法としては、中和された処理液に含まれる茶殻処理物を乾燥することができる。茶殻処理物の乾燥処理は、一般的なオーブンや真空乾燥機等の乾燥機を用いることができる。
また、ステップS13では、必要に応じて、茶殻処理物の乾燥前に、中和された処理液をろ過してもよい。ろ過処理には、茶殻処理物と処理液を分離することが可能なろ過フィルターを用いることができる。これにより、中和された処理液から茶殻処理物を分離し、乾燥処理を効率よく実行することができる。また、分離された茶殻処理物を水等で洗浄してもよい。
【0025】
(粉砕処理(ステップS14))
ステップS14では、食物繊維の粉砕処理を行う。本ステップでは、回収された茶殻由来の食物繊維を数百μm以下に粉砕することが可能であり、必要に応じて篩などを用いて分級することが可能である。これにより、飲料や食品に添加された場合に、良好な食感の食物繊維を得ることができる。
本実施形態において、ステップS14の粉砕処理は、乾式粉砕とすることができ、例えばカッターミル、ボールミル等の乾式粉砕機を用いることができる。
【0026】
[本実施形態の作用効果]
以上のように、本実施形態によれば、アルカリ処理により、茶殻特有の苦味等を除去することができる。これにより、飲料又は食品に添加された場合、この飲料又は食品の味や香りに影響を与え難い食物繊維を提供することができる。さらに、アルカリ処理に用いた水酸化物を酸で中和することにより、水酸化物の残存を防止し、安全性の高い茶殻由来の食物繊維を提供することができる。
また、本実施形態によれば、廃棄される茶殻を有効活用し、食物繊維を製造することができる。これにより、省資源化及び健康増進に貢献することができる。
【0027】
[変形例]
以下、本実施形態の変形例について説明する。なお、上述の実施形態と重複する部分については説明を省略する。
【0028】
(変形例1−1)
図1Bは、本実施形態の変形例1−1に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
同図に示すように、茶殻由来の食物繊維の製造方法は、中和された処理液中の茶殻を粉砕処理した後、食物繊維を回収することができる。なお、同図のステップS111及びS112は、図1Aで説明したステップS11及びS12と同様であるため、説明を省略する。
【0029】
(粉砕処理(ステップS113))
ステップS113では、中和された処理液に含まれる茶殻処理物の粉砕処理を行う。本変形例において、粉砕処理は湿式粉砕とすることができ、例えばスーパーマスコロイダー等の湿式粉砕機を用いることができる。これにより、溶液中の茶殻を、数百μm以下に粉砕することができる。
なお、ステップS113では、必要に応じて、茶殻処理物の粉砕前に、中和された処理液をろ過してもよい。また、ろ過された茶殻処理物を水等で洗浄してもよい。
【0030】
(回収(ステップS114))
ステップS114では、回収工程として、茶殻処理物を脱水することができる。茶殻の脱水処理には、スクリュープレス機、フィルタープレス機、攪拌脱水機、遠心脱水機等の脱水機を用いることができる。脱水後の茶殻の含水量は特に限定されず、数質量%〜数十質量%、例えば10〜20%とすることができる。
また、ステップS114でも、必要に応じて、茶殻の脱水前に、茶殻処理物を含む処理液をろ過することができる。
【0031】
(冷凍(ステップS115))
ステップS115では、回収された食物繊維を冷凍することができる。冷凍には、例えば、一般的な冷凍庫、冷凍室等を用いることができる。これにより、回収された食物繊維が含水していた場合でも、腐敗等を防止し、長期保存が可能となる。
【0032】
以上、本変形例によっても、茶殻特有の苦味等が除去され、安全性の高い食物繊維を提供することができる。
なお、本変形例においては、冷凍工程を省略することもできる。
【0033】
(変形例1−2)
さらに他の変形例として、図1Cに示すように、粉砕処理を省略してもよい。これにより、茶殻の粒径が予め揃っている、食物繊維が添加される食品の態様により食物繊維の粒径が大きくても食感に問題が生じない等の事情がある場合に、製造工程を簡略化することができる。
【0034】
<第2の実施形態>
[茶殻由来の食物繊維の製造方法]
図2Aは、本発明の第2の実施形態に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
同図に示すように、本実施形態の茶殻由来の食物繊維の製造方法は、上述の各ステップに加え、さらに、漂白処理を行うことができる。
なお、同図に記載のステップS21のアルカリ処理、ステップS22の中和処理、ステップS26の粉砕処理については上述の第1の実施形態で説明と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
(漂白処理(ステップS23))
ステップS23では、中和する工程の後、漂白剤を用いてアルカリ処理された茶殻処理物を漂白する。これにより、茶殻特有の色をより薄くすることができる。
本ステップにおける漂白剤は、例えば過酸化水素を含んでいてもよい。この場合、例えば中性〜アルカリ性、50℃〜100℃、数時間程度の条件下で漂白処理することができる。
あるいは、漂白剤は、亜塩素酸ナトリウムを含んでいてもよい。この場合、漂白処理は、例えば塩酸、クエン酸、酢酸等によりpH1〜5、より好ましくはpH3〜4程度の酸性に調整された条件下で行われる。また、処理温度は室温〜80℃程度とすることができる。これにより、亜塩素酸ナトリウムから漂白作用を有する二酸化塩素を発生させることができる。
また、当該漂白剤は、その他の漂白剤を含んでいてもよく、複数種類の漂白剤を含んでいてもよい。
これらの漂白剤は、茶殻処理物に対し、少量ずつ滴下されてもよいし、所定の量を一度に投入してもよい。また、本実施形態の漂白処理は、必要に応じて攪拌してもよい。
また、漂白処理の後、必要に応じてろ過処理や水洗処理等を行うことができる。
【0036】
(還元処理(ステップS24))
ステップS24では、上記漂白剤を還元処理することができる。これにより、漂白処理で用いた漂白剤由来の臭いや味等を抑えることができる。
本ステップで用いる還元剤は、例えば、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩等を用いることができる。また、還元剤の特性に応じてpH調整剤等によりpHを調整し、例えば酸性〜中性の条件下で還元処理を行ってもよい。
本ステップの還元処理は、ORP(酸化還元電位)メータ等により酸化還元電位を測定することにより処理を終了することもできるし、所定の処理時間が経過した時点で処理を終了することもできる。
【0037】
以上、本実施形態によっても、茶殻特有の苦味等を除去でき、安全性の高い茶殻由来の食物繊維を提供することができる。さらに本実施形態によっては、白色又は白色に近い色の食物繊維を提供することができ、食物繊維に起因する飲料、食品の色の変化を抑えることができる。
【0038】
[変形例]
(変形例2−1)
図2Bは、変形例2−1に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
同図に示すように、茶殻由来の食物繊維の製造方法は、還元処理に係るステップS24を有さなくてもよい。これにより、漂白剤の安全性や、漂白剤の食物繊維に対する香り、味への影響等を鑑みて、製造工程を簡略化することができる。
【0039】
(変形例2−2)
図2Cは、変形例2−2に係る食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
同図に示すように、漂白処理を2段階行ってもよい。なお、同図のステップS211及びS212は、図2Aで説明したS21及びS22と同様であり、同図のステップS215乃至S217は、図2Aで説明したステップS24乃至S26と同様であるため、説明を省略する。
【0040】
(第1の漂白処理(ステップS213))
ステップS213では、中和処理の後、第1の漂白剤を用いてアルカリ処理された茶殻処理物を漂白する。
本ステップにおける第1の漂白剤は、例えば過酸化水素を含んでいてもよい。この場合、例えば中性〜アルカリ性、50℃〜100℃、数時間程度の条件下で漂白処理することができる。この漂白剤は、茶殻処理物に対し、少量ずつ滴下されてもよいし、所定の量を一度に投入してもよい。
第1の漂白剤は、その他の漂白剤を含んでいてもよく、複数種類の漂白剤を含んでいてもよい。また、本実施形態の漂白処理は、必要に応じて攪拌してもよい。
【0041】
(第2の漂白処理(ステップS214))
ステップS213では、第1の漂白処理の後、第2の漂白剤を用いて茶殻をさらに漂白する。
本ステップにおける第2の漂白剤は、亜塩素酸ナトリウムを含んでいてもよい。この場合、例えば塩酸、クエン酸、酢酸等によりpH1〜5、より好ましくはpH3〜4程度の酸性に調整された条件下で行われる。また、処理温度は室温〜80℃程度とすることができる。これにより、亜塩素酸ナトリウムから漂白作用を有する二酸化塩素を発生させることができる。
第2の漂白剤は、その他の漂白剤を含んでいてもよく、複数種類の漂白剤を含んでいてもよい。また、本実施形態の漂白処理は、必要に応じて攪拌してもよい。
また、漂白処理の後、必要に応じてろ過処理や水洗処理等を行うことができる。
【0042】
(変形例2−3)
図2Dは、変形例2−3に係る茶殻由来の食物繊維の製造方法を示すフローチャートである。
同図に示すように、図1Bで説明した第1の実施形態の変形例と同様に、茶殻を粉砕処理した後、食物繊維を回収することができる。なお、同図のステップS221乃至S224は、図2Aで説明したS21乃至S24と同様であり、同図のステップS225乃至S227は、図1Bで説明したステップS113及びS115と同様であるため、説明を省略する。
なお、本変形例においても、適宜冷凍工程を省略することもできる。
【0043】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0044】
例えば、以上説明した各ステップの間に、茶殻処理物の水洗処理を行ってもよい。これにより、茶殻処理物に付着した試薬を除去することができる。さらに、水洗処理の前に、ろ過処理を行ってもよい。これにより、処理液から茶殻処理物を分離し、効率よく水洗処理を行うことができる。
また、回収や粉砕処理の前、あるいは処理中に、茶殻処理物を適宜脱水してもよい。これにより、茶殻処理物の含水量を調整することができる。
【0045】
また、本発明の茶殻は、水を用いて原料茶葉から茶系飲料を抽出した抽出残渣に限定されない。例えば、本発明の茶殻は、水以外の液体(乳飲料など)を用いて原料茶葉から茶系飲料を抽出した抽出残渣であってもよい。あるいは、本発明の茶殻は、水等の液体を用いて原料茶葉から飲料を圧搾した残渣であってもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[茶殻由来の食物繊維の製造]
(実施例1)
実施例1に係る茶殻由来の食物繊維として、上述の第1の実施形態に相当する方法(図1A参照)で茶殻由来の食物繊維を製造した。
アルカリ処理として、含水量が79質量%である119質量部の緑茶抽出茶殻、131質量部の水、及び8.1質量部の48質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応容器に入れ、40℃で1時間加温した。その後、処理液をろ過し、茶殻処理物を130質量部の水で洗浄した。
続いて、中和処理として、得られた97質量部の茶殻処理物に140質量部の水を加え、塩酸(和光純薬工業株式会社)とクエン酸(和光純薬工業株式会社)でpH6〜8に中和した。
最後に、食物繊維を回収するため、得られた茶殻処理物を真空乾燥機で60℃、8時間乾燥した。その後、乾燥された茶殻処理物に対し、カッター式ミルとボールミルにより乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、13.0質量部の粉体を得た。
【0048】
(実施例2)
実施例2に係る茶殻由来の食物繊維として、上述の変形例2−1に相当する方法(図2B参照)で茶殻由来の食物繊維を製造した。
アルカリ処理は、上述の実施例1と同様に行った。
続いて、中和処理として、得られた97質量部の茶殻処理物を反応容器に入れ、76質量部の水を加え、塩酸(和光純薬工業株式会社)でpH6〜8に中和した。
続いて、漂白処理として、中和された処理液に、6.0質量部の35質量%過酸化水素水(和光純薬工業株式会社 食品添加物グレード)を加え、80℃で1時間反応させた。反応終了後、処理液をろ過し、得られた茶殻処理物を200質量部の水で洗浄した。
最後に、実施例1と同様に食物繊維を回収し、乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、11.5質量部の粉体を得た。
【0049】
(実施例3)
実施例3に係る茶殻由来の食物繊維として、上述の第2の実施形態に相当する方法(図2A参照)で茶殻由来の食物繊維を製造した。
まず、上述の実施例1と同様にアルカリ処理を行った。
続いて、上述の実施例2と同様に中和処理を行った。
続いて、漂白処理として、中和された処理液に、6.0質量部の35質量%過酸化水素水(和光純薬工業株式会社 食品添加物グレード)を加え、80℃で1時間反応させた。反応終了後、処理液をろ過し、水200質量部で洗浄を行った。
続いて、還元処理として、得られた茶殻処理物73質量部を反応容器に入れ、200質量部の水を加えた。さらに、当該反応容器に、0.1質量部の亜硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社 食品添加物グレード)と、0.05質量部のL(+)アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社)を添加し、40℃で1時間撹拌した。反応後、ろ過により得られた茶殻処理物を200質量部の水で洗浄し、脱水した。
最後に、実施例1と同様に食物繊維を回収し、乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、11.5質量部の粉体を得た。
【0050】
(実施例4)
実施例4に係る茶殻由来の食物繊維として、上述の変形例2−2に相当する方法(図2C参照)で茶殻由来の食物繊維を製造した。
まず、上述の実施例1と同様にアルカリ処理を行った。
続いて、上述の実施例2と同様に中和処理を行った。
続いて、第1の漂白処理として、中和された処理液に、4.5質量部の35質量%過酸化水素水(和光純薬工業株式会社 食品添加物グレード)を加え、80℃で1時間反応させた。その後、処理液に130質量部の水を加え、塩酸(和光純薬工業株式会社)とクエン酸(和光純薬工業株式会社)を用いてpH3に調整した。
続いて、第2の漂白処理として、第1の漂白処理の処理液に、9.6質量部の25質量%亜塩素酸ナトリウム水溶液(シルブライト25FD(日本カーリット株式会社製 食品添加物グレード))と少量の酸を加え、pH3の条件下において60℃で4時間反応させた。反応終了後、処理液をろ過し、水200質量部で洗浄を行った。
続いて、還元処理として、得られた73質量部の茶殻処理物を反応容器に入れ、200質量部の水を加えた。pHが3〜4程度であったため、炭酸水素ナトリウムを添加し、pHを4〜6に調整した。pHが調整された処理液に、0.1質量部の亜硫酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社 食品添加物グレード)と0.05質量部のL(+)アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社)を添加し、40℃で1時間撹拌した。反応後、ろ過により得られた茶殻処理物を200質量部の水で洗浄し、脱水した。
最後に、実施例1と同様に食物繊維を回収し、乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、粉体11.0質量部を得た。
【0051】
(比較例1)
比較例1に係る茶殻由来の食物繊維として、アルカリ処理、漂白処理及び還元処理を行い、中和処理を行わずに茶殻由来の食物繊維を製造した。
まず、上述の実施例1と同様にアルカリ処理を行った。
続いて、漂白処理として、得られた97質量部の茶殻処理物を反応容器に入れ、この反応容器に76質量部の水と4.5質量部の35質量%過酸化水素水(和光純薬工業株式会社 食品添加物グレード)を加え、80℃で1時間反応させた。その後、130質量部の水と9.6質量部の25質量%亜塩素酸ナトリウム水溶液(シルブライト25FD(日本カーリット株式会社製 食品添加物グレード))を加え、60℃で4時間反応させた。反応終了後、ろ過により得られた茶殻処理物を200質量部の水で洗浄し、脱水した。
続いて、上述の実施例3と同様に、還元処理を行った。
最後に、上述の実施例1と同様に食物繊維を回収し、乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、11.0質量部の粉体を得た。
【0052】
(比較例2)
比較例2に係る茶殻由来の食物繊維として、アルカリ処理及び漂白処理を行い、中和処理及び還元処理を行わずに茶殻由来の食物繊維を製造した。
まず、上述の実施例1と同様にアルカリ処理を行った。
続いて、上述の比較例1と同様に漂白処理を行った。
最後に、上述の実施例1と同様に食物繊維を回収し、乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、11.0質量部の粉体を得た。
【0053】
(比較例3)
比較例3に係る茶殻由来の食物繊維として、アルカリ処理を行い、中和処理、漂白処理、及び還元処理を行わずに茶殻由来の食物繊維を製造した。
まず、上述の実施例1と同様にアルカリ処理を行った。但し、ろ過した後、200質量部の水で洗浄した。得られた97質量部の茶殻処理物に水140質量部を加えた。
最後に、上述の実施例1と同様に食物繊維を回収し、乾式粉砕処理を行った。これにより、茶殻由来の食物繊維として、13.0質量部の粉体を得た。
【0054】
[食物繊維の色の評価]
製造された実施例1〜4及び比較例1〜3に係る食物繊維の粉体の色を、目視により評価した。結果を、表1に示す。
表1に記載の評価基準としては、◎が白色、○が薄茶色又は薄緑色、△が茶色、×が緑茶抽出後の茶殻そのものの色味である、黒色に近い緑色である。
なお、表1には、各実施例1〜4及び比較例1〜3で行った主な処理についても記載している。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示すように、漂白処理を行っている比較例2と漂白処理を行っていない比較例3を比較すると、比較例2の食物繊維の方が色が薄かった。この結果から、漂白処理により、食物繊維が漂白されることが確認された。
また、漂白処理に加えて還元処理を行っている比較例1と還元処理を行っていない比較例2を比較すると、比較例1の食物繊維の方がさらに色が薄かった。この結果から、漂白処理に加えて還元処理を行うことで、食物繊維の色がより薄くなることが確認された。なお、還元処理を行っている実施例3と還元処理を行っていない実施例2を比較することによっても、同様の結果が確認された。
また、漂白処理に加えて中和処理を行っている実施例4と中和処理を行っていない比較例1を比較すると、実施例4の食物繊維の方が色が薄かった。この結果から、漂白処理に加えて中和処理を行うことで、食物繊維の色がより薄くなることが確認された。
【0057】
[食物繊維を添加した飲料の香り、味及び液色の評価]
製造された実施例1〜4及び比較例1〜3に係る食物繊維を45℃で4週間保管し、野菜汁飲料(野菜ジュース)に添加して官能検査を行った。本官能検査で用いた飲料は、にんじん、トマトを含む約30種類ほどの野菜を含む野菜汁約100%からなる飲料とした。また、当該飲料における全食物繊維の配合量は約0.7質量%であり、上記実施例1〜4及び比較例1〜3に係る食物繊維の配合量は、約1割の約0.07質量%であった。
官能検査は、7人のパネラーが以下の評価基準に基づいて上記飲料の味、臭気及び液色をそれぞれ評価することによって行われた。また、評価結果は、各サンプルについて最も多くのパネラーから得られた評価を各サンプルの評価結果として採用した。採用した結果を、表1に示す。
(評価基準)
(1)味
〇:苦味を感じることがなく、良好
△:苦味が若干感じられ、あまりよくない
×:苦味が感じられ、問題あり
(2)臭気
〇:塩素臭を感じることがなく、良好
△:塩素臭が若干感じられ、あまり良くない
× :塩素臭が感じられ、問題あり
(3)液色
〇:鮮やかな朱色
△:やや白色〜灰色がかった朱色
×:白色〜灰色がかった朱色
【0058】
表1に示すように、実施例1〜4の食物繊維を添加した飲料は、苦味及び塩素臭を感じることがなく、いずれも良好であった。実施例2,3は、実施例4と比較すると若干の塩味が感じられたが、野菜汁の味を損ねることはなかった。
一方、比較例1を添加した飲料は、苦味が若干感じられ、野菜汁本来の味を損ねる結果となった。また、塩素臭も若干感じられた。これは、中和処理を省略して漂白処理を行ったためと考えられる。さらに表に記載はないが、アルカリ臭(磯臭さや、生臭さのような臭い)が感じられ、好ましくなかった。
また、比較例2を添加した飲料は、苦味が若干感じられたとともに、塩素臭が感じられ、問題であった。さらに、比較例1と同様に、アルカリ臭が感じられた。
これらの結果から、比較例1,2を添加した飲料は、中和処理を省略したにも関わらず漂白処理を行ったことから塩素臭や苦味が感じられたものと考えられる。アルカリ処理に用いた水酸化物等の影響が残っていたためにアルカリ臭も感じられたと考えられる。
また、比較例3を添加した飲料は、漂白処理を行っていないため、塩素臭は感じられなかったが、アルカリ臭が強く感じられた。また、苦味も強く感じられた。これは、アルカリ処理に用いた水酸化物等の影響が強く残っていたためと考えられる。
【0059】
液色については、全体として、漂白処理を行っていたものの方が、行っていないものよりも良好であった。
具体的には、漂白処理を行っていない実施例1では鮮やかな野菜汁本来の色から大きく変色していた。一方、同様に漂白処理を行っていない比較例3では、野菜汁本来の色からは変色していたが、実施例1よりは変色が少なかった。これは、食物繊維自体の色味と、野菜汁の色味との相性に起因する差異であると考えられる。
また、過酸化水素水を用いて漂白処理を行った実施例2,3の食物繊維を添加した飲料の液色は、若干変色が見られた。一方、過酸化水素水に加えて次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて2段階の漂白処理を行った実施例4の食物繊維を添加した飲料は、野菜汁本来の色に近く、特に鮮やかな野菜汁本来の色であった。
また、2段階の漂白処理を行ったにも関わらず、中和処理を行っていない比較例1,2は、実施例4よりも液色が濁っていた。
これらのことから、元来朱色の野菜汁の液色を大きな変色なく維持するためには、少なくとも過酸化水素水を用いた漂白処理を行うことがよく、特に中和処理の後、2段階の漂白を行うことがよいことが確認された。但し、液色が朱色以外の飲料の場合には、同一の食物繊維を用いた場合でも、上記結果とは異なる評価になる可能性があるとともに、液色を考慮する必要性が低い飲料の場合には、漂白処理を行う必要はないものと考えられる。
【0060】
以上のように、比較例1〜3の食物繊維は、苦味を有しているため、飲料又は食品と混合された際、この飲料又は食品の味を損ねる可能性がある。一方で、実施例1〜4の食物繊維は、飲料又は食品と混合されても飲料又は食品の香り及び味に影響を与え難く、本実施形態に係る製造方法により、茶殻特有の香り及び味を抑えることができることが確認された。
図1
図2