(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
アコースティックのピアノは一般に、押鍵に連動して動作し、ハンマーを駆動するアクションを備えている。このアクションは、押鍵に伴って回動する複数の部品、例えばウィッペンやジャックなど(以下、本欄において、ハンマーを含め、これらの部品を適宜「回動体」という)を有しており、これらの回動体は、自身に固定された回動ピンを介して、対応するフレンジに回動自在に支持されている。
【0003】
図7(a)は、回動体を支持するフレンジの一例を示している。同図に示すように、このフレンジ41は、互いに間隔を隔てて対向し、上部において二股状に形成された2つの支持壁41a、41aを有している。同図(b)に示すように、両支持壁41a、41aにはそれぞれ、貫通するピン孔41b、41bが形成され、これらのピン孔41b、41bには、回動ピン44との間で発生する雑音を抑制するために、軸受けとしてのブッシングクロス42が取り付けられている。このようなブッシングクロス42を有するフレンジ41として、従来、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この従来のフレンジ41では、ブッシングクロス42が次のようにして、フレンジ41のピン孔41b、41bに取り付けられる。
【0004】
図8は、フレンジ41へのブッシングクロスの取付け手順を示している。同図(a)に示すように、まず、羊毛や合成樹脂から成るシート状のクロス43を準備する。次いで、このクロス43を、同図(b)に示すように、所定の幅を有する細長い帯状にカットし、帯状のクロス43aを作製する。そして、この帯状のクロス43aを、同図(c)に示すように、円筒状に丸めながら、フレンジ41の両ピン孔41b、41bに通し、その内面に接着する。そして、フレンジ41の各支持壁41aの外面及び内面に沿って、円筒状のクロス43aを切断する。これにより、同図(d)に示すように、フレンジ41の両ピン孔41b、41bに、円筒状のブッシングクロス42、42が取り付けられる。
【0005】
なお、上記のようにして構成されたフレンジ41は、両支持壁41a、41aの間に回動体が組み付けられ、両ピン孔41b、41b及び回動体に回動ピン44が挿通される。これにより、その回動ピン44の両端部がそれぞれ、ブッシングクロス42、42を介してピン孔41b、41bに支持され、その結果、回動体がフレンジ41に回動自在に支持される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のフレンジ41では、ブッシングクロス42がフレンジ41のピン孔41bに適正に取り付けられると、
図9(a)に示すように、ブッシングクロス42によって、その内側に真円状の円が形成される。しかし、ブッシングクロス42の周方向の長さが、ピン孔41bの周方向の長さに対して短かったり(同図(b)参照)、長かったり(同図(c)参照)すると、ブッシングクロス42のつなぎ目部分に隙間が生じたり、ブッシングクロス42の内側の円が変形したりするおそれがある。この場合には、回動ピン44の両端部が、フレンジ41の両ピン孔41b、41bの中心からずれてしまい、それにより、ブッシングクロス42側から回動ピン44に作用する荷重が不均一になり、回動体の回動を効率よくかつ安定して行えないという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、回動体に固定された回動ピンの両端部を、ピン孔の中心に適切に位置させることができ、回動体を効率よくかつ安定して回動させることができる鍵盤楽器の回動体の支持装
置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、押鍵に伴って回動する回動体を、当該回動体に固定された回動ピンを介して回動自在に支持する鍵盤楽器の回動体の支持装置
の製造方法であって、細長く延びる芯材と、この芯材の長さ方向に沿って延びかつ芯材の周面を覆う組紐とで構成された芯材入り組紐を準備する芯材入り組紐の準備工程と、互いに所定間隔を隔てて対向する2つの支持壁と、これらの支持壁にそれぞれ設けられ、回動ピンの両端部がそれぞれ挿入される2つのピン孔とを有する支持装置本体を準備する支持装置本体の準備工程と、準備された芯材入り組紐を、支持装置本体の2つの支持壁に掛け渡した状態で、2つのピン孔にそれぞれ貫通させるとともに固定する芯材入り組紐の貫通固定工程と、2つのピン孔に貫通した芯材入り組紐を、各支持壁の外面及び内面に沿って面一に切断する芯材入り組紐の切断工程と、回動体の回動ピンが貫通する孔部と、2つの支持壁のピン孔とが一直線に並んだ状態になるよう、回動体を支持装置本体の2つの支持壁間に組み付けるとともに、回動ピンを、2つの支持壁の一方の外側から、一方の支持壁のピン孔、回動体の孔部及び2つの支持壁の他方のピン孔に挿通することにより、各ピン孔内の芯材入り組紐の芯材を外部に押し出しながら、回動ピンを取り付ける回動ピンの取付け工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の製造方法によって製造される支持装置の構成によれば、押鍵に伴って回動する回動体を、それに固定された回動ピンを介して、支持装置によって回動自在に支持する。この支持装置の支持装置本体は、互いに所定間隔を隔てて対向する2つの支持壁を有しており、それらの支持壁にはそれぞれ、回動ピンの両端部が挿入される2つのピン孔が設けられている。また、両ピン孔には、2つの軸受けがそれぞれ挿入された状態で固定され、回動ピンの両端部がそれぞれ挿通された両軸受けにより、回動ピンが回動自在に保持されている。そして、このように回動ピンを保持する各軸受けは、筒状に形成された組紐で構成されている。
【0011】
組紐は一般に、その長さ方向に対し、複数本の繊維が斜めに交差するように編まれており、組紐の長さ方向の全体にわたり、内部に中空を有する筒状に構成することが可能である。したがって、そのような組紐を軸受けとして採用することにより、帯状のクロスを丸めることによってブッシングクロスを構成する従来と異なり、中心部に回動ピンの端部が挿通する適正な中空を有する軸受けを容易に得ることができる。これにより、回動体に固定された回動ピンの両端部を、支持装置本体のピン孔の中心に適切に位置させることができ、回動体を効率よくかつ安定して回動させることができる。
【0015】
上述した請求項1の構成によれば、まず、上記の芯材入り組紐及び支持装置本体を準備する。次いで、芯材入り組紐を、支持装置本体の2つの支持壁に掛け渡した状態で、2つのピン孔にそれぞれ貫通させるとともに固定する。次いで、ピン孔に貫通した芯材入り組紐を、支持装置本体の各支持壁の外面及び内面に沿って面一に切断する。これにより、支持壁の厚さと同じ長さを有する芯材入り組紐が、支持装置本体の2つの支持壁のピン孔にそれぞれ取り付けられる。次いで、回動体を前記支持装置本体の2つの支持壁間に組み付け、回動体の回動ピンが貫通する孔部と、支持装置本体の2つの支持壁のピン孔とが一直線に並んだ状態にする。そして、回動ピンを、2つの支持壁の一方の外側から、そのピン孔、回動体の孔部及び2つの支持壁の他方のピン孔に挿通させる。この場合、各ピン孔内の芯材入り組紐に対し、挿通する回動ピンによって、芯材を外部に押し出しながら、回動ピンを取り付ける。これにより、支持装置本体の2つの支持壁のピン孔には、軸受けとしての筒状の組紐に、回動ピンの端部が挿通される。以上により、前述し
た鍵盤楽器の回動体の支持装置を製造することができ、その支持装置を容易に得ることができる。
【0016】
請求項
2に係る発明は、押鍵に伴って回動する回動体を、回動体に固定された回動ピンを介して回動自在に支持する鍵盤楽器の回動体の支持装置の製造方法であって、細長く延びる芯材と、この芯材の長さ方向に沿って延びかつ芯材の周面を覆う組紐とで構成された芯材入り組紐を準備する芯材入り組紐の準備工程と、互いに所定間隔を隔てて対向する2つの支持壁と、これらの支持壁にそれぞれ設けられ、回動ピンの両端部がそれぞれ挿入される2つのピン孔とを有する支持装置本体を準備する支持装置本体の準備工程と、準備された芯材入り組紐を、支持装置本体の2つのピン孔にそれぞれ貫通させるとともに固定する芯材入り組紐の貫通固定工程と、2つのピン孔に貫通した芯材入り組紐を、各支持壁の外面及び内面に沿って面一に切断する芯材入り組紐の切断工程と、回動体の回動ピンが貫通する孔部と、2つの支持壁のピン孔とが一直線に並んだ状態になるよう、回動体を支持装置本体の2つの支持壁間に組み付けるとともに、回動ピンを、2つの支持壁の一方の外側から、一方の支持壁のピン孔、回動体の孔部及び2つの支持壁の他方のピン孔に挿通することにより、各ピン孔内の芯材入り組紐の芯材を外部に押し出しながら、回動ピンを取り付ける回動ピンの取付け工程と、を備え、回動体は、複数種類の回動体で構成されており、芯材入り組紐の準備工程において、芯材及び組紐がそれぞれ所定の径を有する1種類の芯材入り組紐が準備され、支持装置本体の準備工程において、支持装置本体は、支持装置本体が支持する回動体の種類の所望の回動度合に応じて、ピン孔の径が設定されることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、前述した請求項
1と同
様の鍵盤楽器の回動体の支持装置を製造することができ、その支持装置を容易に得ることができる。また、この構成によれば、芯材及び組紐がそれぞれ所定の径を有する1種類の芯材入り組紐が準備され、また、支持装置本体のピン孔の径が、その支持装置本体が支持する回動体の種類の所望の回動度合に応じて設定される。この場合、例えば、回動のしやすさを表す回動度合を高くすべき回動体に対しては、それを支持する支持装置本体のピン孔の径を大きくすることにより、回動ピンに作用する、軸受けとしての組紐の摩擦が小さくなり、回動体の回動度合を高くすることができる。一方、回動度合を低くすべき回動体に対しては、それを支持する支持装置本体のピン孔の径を小さくすることにより、回動ピンに作用する、軸受けとしての組紐の摩擦が大きくなり、回動体の回動度合を低くすることができる。したがって、単一種類の芯材入り組紐を用いる場合でも、回動体に要求される回動度合に適した支持装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による回動体の支持装置を適用したアップライトピアノのアクション及びその周囲を示す側面図である。
【
図2】
図1のハンマー組立て品及びバットフレンジなどを分解して示す斜視図である。
【
図3】
図1のウィッペン、ジャック及びウィッペンフレンジなどを分解して示す斜視図である。
【
図4】フレンジの製造方法を説明するための図であり、(a)は芯材入り組紐を示す斜視図、(b)は芯材入り組紐を長さ方向に対して直角に切断した断面図、(c)はフレンジ本体を示す斜視図である。
【
図5】フレンジの製造方法を説明するための図であり、(a)はフレンジ本体の両支持壁のピン孔に芯材入り組紐を貫通させた状態を示す斜視図、(b)はピン孔に貫通させた芯材入り組紐を、各支持壁の外面及び内面に沿って切断した状態を示す斜視図、(c)は(b)のフレンジにおける両支持壁の縦断面図である。
【
図6】フレンジの製造方法を説明するための図であり、(a)はフレンジを回動体に組み付ける前の状態、(b)はフレンジを回動体の両支持壁間に組み付けた状態、(c)はセンターピンをフレンジ及び回動体に取り付けた状態を示す。
【
図7】従来のフレンジを示す斜視図であり、(a)はブッシングクロス及び回動ピンが取り付けられた状態、(b)はブッシングクロス及び回動ピンを取り外した状態を示す。
【
図8】フレンジへのブッシングクロスの取付け手順を説明するための説明図である。
【
図9】フレンジのピン孔に取り付けられたブッシングクロスを拡大して示す図であり、(a)はブッシングクロスが適正に取り付けられた状態、(b)はブッシングクロスのつなぎ目に隙間が生じた状態、(c)はブッシングクロスのつなぎ目が重なった状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による回動体の支持装置を適用したアップライトピアノのアクション、及びその周囲を示している。より具体的には、アクション1と、鍵盤2と、ハンマー3を有するハンマー組立て品4(回動体)などを、離鍵状態において示している。なお、以下の説明では、演奏者側から見たときのアップライトピアノの手前側(
図1の右側)を「前」、奥側(
図1の左側)を「後」として説明する。
【0020】
鍵盤2は、アップライトピアノの左右方向に並んだ多数の鍵2a(1つのみ図示)によって構成されている。各鍵2aは、前後方向(
図1の左右方向)に延び、その中央において、棚板10上の筬5に立設されたバランスピン5aを中心として回動自在に支持されている。
【0021】
棚板10の左右の端部には、アクションブラケット(図示せず)がそれぞれ設けられており、アクション1は、両アクションブラケット間において、鍵盤2の後端部の上方に配置されている。また、アクション1は、ウィッペン21(回動体)、ジャック22(回動体)及びバット23などを備えており、これらは、鍵2aごとに設けられている。また、
図2に示すように、バット23には、上方に所定長さ延びるハンマーシャンク3aと、その上端部に設けられたハンマーヘッド3bとで構成されたハンマー3が取り付けられており、これらのバット23及びハンマー3などによって、ハンマー組立て品4が構成されている。
【0022】
左右のアクションブラケット間には、センターレール6及びハンマーレール7などが左右方向(
図1の表裏方向)に延びるように渡されている。センターレール6の前面上端部には、バット23を介してハンマー組立て品4を回動自在に支持するバットフレンジ11が、バットフレンジスクリュー12c(
図2参照)によってねじ止めされ、鍵2aごとに設けられている。
【0023】
各バットフレンジ11は、フレンジ本体12(支持装置本体)と、このフレンジ本体12の後述する2つのピン孔12bに取り付けられた2つの軸受け13とを備えている。フレンジ本体12は、合成樹脂から成り、上部には二股状に分岐した左右2つの支持壁12a、12aが設けられている。両支持壁12a、12aは、互いに所定間隔を隔てて対向しており、各支持壁12aには、左右方向に貫通し、所定の径を有するピン孔12bが形成されている。
【0024】
各軸受け13は、ピン孔12bとほぼ同じ外径及び後述するセンターピン14とほぼ同じ内径を有する円筒状に形成されている。また、この軸受け13は、フッ素繊維から成る組紐で構成されている。
【0025】
以上のように構成されたバットフレンジ11では、2つの軸受け13、13がそれぞれ取り付けられた左右のピン孔12b、12bに、所定長さを有する1本のセンターピン14(回動ピン)が挿通された状態で、左右の支持壁12a、12aに取り付けられている。また、センターピン14の左右の支持壁12a、12aの間の部分は、ハンマー組立て品4のバット23の前面下端部とバットプレート23aとの間に挟み付けられた状態で、バットプレートスクリュー23bによって固定されており、それにより、センターピン14がバット23と一体になっている。以上の構成により、ハンマー組立て品4は、センターピン14及び左右の軸受け13、13を介して、バットフレンジ11に回動自在に支持されている。
【0026】
図1に示すように、ウィッペン21は、合成樹脂で構成され、所定の形状に形成されている。具体的には、ウィッペン21は、下方に突出するヒール部21aを有しており、このヒール部21aを介して、対応する鍵2aの後端部に設けられたキャプスタンボタン2bに載置されている。また、ウィッペン21は、その後端部において、ウィッペンフレンジ15に支持されている。
【0027】
図3に示すように、ウィッペンフレンジ15は、前述したバットフレンジ11と同様に構成されている。すなわち、合成樹脂製のフレンジ本体16(支持装置本体)と、前記2つの軸受け13、13とを備えており、フレンジ本体16の両支持壁16a、16aのピン孔16b、16bに、軸受け13、13がそれぞれ取り付けられている。このウィッペンフレンジ15は、両支持壁16a、16aを下側にした状態で、センターレール6の後面の下端部に、ウィッペンフレンジスクリュー16cによってねじ止めされている。
【0028】
ウィッペン21の後部には、左右方向に貫通するピン取付け孔21b(孔部)が形成されており、そのピン取付け孔21bがウィッペンフレンジ15の左右の支持壁16a、16a間に位置した状態で、ウィッペン21とウィッペンフレンジ15が互いに組み付けられている。そして、その状態で、1本のセンターピン14が、左右のピン孔16b、16bと、これらの間のピン取付け孔21bに挿通されている。上記のセンターピン14は、ウィッペン21と一体になっており、ウィッペン21は、センターピン14及び左右の軸受け13、13を介して、ウィッペンフレンジ15に回動自在に支持されている。
【0029】
また、ウィッペン21の前後方向の中央付近には、上方に突出するフレンジ部17が一体に設けられている。このフレンジ部17は、前述したバットフレンジ11及びウィッペンフレンジ15と同様、ピン孔17bを有する二股状の左右2つの支持壁17a、17a及び各ピン孔17bに取り付けられた軸受け13、13を有している。そして、このフレンジ部17に、ジャック22が組み付けられている。
【0030】
ジャック22は、合成樹脂で構成され、前後方向に延びる基部22aと、その後端部から上方に延びるハンマー突上げ部22bとによって、側面形状がL字状に形成されている。基部22aとハンマー突上げ部22bとの角部には、左右方向に貫通するピン取付け孔22c(孔部)が形成されており、そのピン取付け孔22cがフレンジ部17の左右の支持壁17a、17a間に位置した状態で、ウィッペン21とジャック22が互いに組み付けられている。そして、その状態で、1本のセンターピン14が、左右のピン孔17b、17bと、これらの間のピン取付け孔22cに挿通されている。上記のセンターピン14は、ジャック22と一体になっており、ジャック22は、センターピン14及び左右の左右の軸受け13、13を介して、フレンジ部17に回動自在に支持されている。
【0031】
また、
図1に示すように、センターレール6には、前方に延びる複数のレギュレティングブラケット8a(1つのみ図示)と、その前端部に取り付けられ、左右方向に延びるレギュレティングレール8bとが設けられている。レギュレティングレール8bには、その下方に、鍵2aごとに複数のレギュレティングボタン8c(1つのみ図示)が取り付けられている。また、ウィッペン21の後端部には、後述するダンパー25を駆動するためのスプーン24が立設されている。
【0032】
さらに、
図1に示すように、センターレール6の上面には、ダンパーフレンジ18が取り付けられている。このタンパーフレンジ18は、前述したバットフレンジ11及びウィッペンフレンジ15と同様に構成されている。すなわち、合成樹脂製のフレンジ本体19(支持装置本体)と、前記2つの軸受け13、13(1つのみ図示)とを備えており、フレンジ本体19の両支持壁19a、19a(1つのみ図示)のピン孔19b、19bに、軸受け13、13がそれぞれ取り付けられている。このダンパーフレンジ18は、両支持壁19a、19aを後ろ側にした状態で、センターレール6にねじ止めされている。
【0033】
上記のダンパーフレンジ18には、ダンパー25が取り付けられている。ダンパー25は、上下方向に延びるダンパーレバー25と、このダンパーレバー25aの上端から上方に延びるダンパーワイヤ25bと、このダンパーワイヤ25bの上端部に取り付けられたダンパーヘッド25cなどで構成されている。ダンパー25は、ダンパーレバー25aの上下方向の中央に設けられたピン取付け孔(図示せず)、及びフレンジ本体19の左右の支持壁19a、19aのピン孔19b、19bに挿通されたセンターピン14によって、ダンパーフレンジ18に回動自在に支持されている。ダンパーヘッド25cは、ダンパーレバースプリング25dによって後方に付勢されており、離鍵状態では、上下方向に延びるように張られた弦Sに前方から当接している。
【0034】
ここで、上述したアップライトピアノの押鍵の開始から終了までの一連の動作について、説明する。まず、演奏者により、
図1に示す離鍵状態から鍵2aが押し下げられると、鍵2aは、バランスピン5aを中心として同図の時計方向に回動し、その後端部に載置されたウィッペン21は、鍵2aによって突き上げられることにより、ウィッペンフレンジ15のセンターピン14を中心として上方(
図1の反時計方向)に回動する。このウィッペン21の回動に伴い、ダンパー25は、ダンパーレバー25aの下端部がスプーン24で後方に押圧されることにより、ダンパーフレンジ18のセンターピン14を中心として時計方向に回動する。これにより、ダンパーヘッド25cが弦Sから離れる。
【0035】
また、上述したウィッペン21の回動に伴い、ジャック22は、ウィッペン21と一緒に上方に移動する一方、ハンマー3は、バット23を介して、ジャック22のハンマー突上げ部22bで突き上げられることにより、バットフレンジ11のセンターピン14を中心として、後方の弦Sに向かって反時計方向に回動する。
【0036】
鍵2aの押し下げによって、その鍵2aがさらに回動すると、ジャック22の基部22aが、レギュレティングボタン8cに下方から当接する。これにより、ジャック22は、それ以上の上方への移動が阻止され、ウィッペン21に対して、フレンジ部17のセンターピン14を中心として時計方向に回動する。
【0037】
そして、鍵2aがさらに回動したときに、ジャック22のハンマー突上げ部22bがバット23から前方に外れ、ジャック22がハンマー組立て品4から離脱する。ハンマー3は、ジャック22が離脱した後も慣性によって回動し、ハンマーヘッド3bが弦Sに衝突してこれを振動させることにより、ピアノ音が発生する。そして、ハンマー組立て品4は、弦Sの反発力により、バットフレンジ11のセンターピン14を中心として、時計方向へ復帰回動する。
【0038】
押鍵が終了し、鍵2aが離鍵されると、鍵2aはバランスピン5aを中心として、また、アクション1のウィッペン21、ジャック22及びダンパー25は、押鍵時と逆方向に復帰回動し、押鍵前の離鍵状態に戻る。
【0039】
次に、前述したハンマー組立て品4、ウィッペン21、ジャック22及びダンパー25をそれぞれ回動自在に支持するバットフレンジ11、ウィッペンフレンジ15、フレンジ部17及びダンパーフレンジ18の製造方法について、
図4〜
図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、ハンマー組立て品4、ウィッペン21、ジャック22及びダンパー25を総称して「回動体」というものとし、また、バットフレンジ11、ウィッペンフレンジ15、フレンジ部17及びダンパーフレンジ18を総称して「フレンジ」というものとする。
【0040】
まず、フレンジにおける軸受けを構成するための所定の芯材入り組紐を準備するとともに、フレンジ本体を準備する。
図4(a)及び(b)は、上記の芯材入り組紐を示している。この芯材入り組紐31は、細長く延びる芯材31aと、この芯材31aの長さ方向に沿って延びかつその周面を覆う組紐31bとで構成されている。芯材31aは、所定の径D(例えば1mm)を有する合成樹脂で構成される一方、組紐31bは、所定の外径W(例えば2mm)を有し、フッ素繊維で構成されている。なお、この芯材入り組紐31は、あらかじめ用意された芯材31aに対し、その長さ方向に沿って、多数のフッ素繊維が斜めに交差するように編まれている。これにより、組紐31b自体は、その長さ方向の全体にわたり、内部に中空を有する円筒状に構成される。
【0041】
図4(c)に示すフレンジ本体33は、互いに所定間隔を隔てて対向する左右2つの支持壁33a、33aを備えており、各支持壁33aには、左右方向に貫通し、所定の径(例えば2mm)を有するピン孔33bが形成されている。
【0042】
以上のように構成された芯材入り組紐31及びフレンジ本体33を準備した後、
図5(a)に示すようにまず、芯材入り組紐31を、フレンジ本体33の両ピン孔33b、33bに貫通させる。なお、これに先立ち、芯材入り組紐31の表面の所定箇所、及び/又はフレンジ本体33のピン孔33b、33bの内周面に、あらかじめ接着剤を塗布しておく。これにより、芯材入り組紐31は、両ピン孔33b、33bの内周面に接する部分がそれらのピン孔33b、33bに接着固定される。
【0043】
次いで、図示しないカッターによって、芯材入り組紐31を、各支持壁33aの外面及び内面に沿って面一に切断する。これにより、
図5(b)及び(c)に示すように、フレンジ本体33の両ピン孔33b、33bには、これらを塞いだ状態で、芯材入り組紐31が取り付けられる。より具体的には、各ピン孔33bの中心部に芯材31aが位置するとともに、その外側に組紐31bが位置しかつピン孔33bの内周面に接着されている。
【0044】
図6(a)〜(c)は、回動体30とフレンジ32との連結手順を順に示している。なお、同図(a)に示すように、回動体30には、センターピン14を貫通させた状態で取り付けるためのピン取付け孔30a(孔部)が形成されている。
【0045】
まず、
図6(b)に示すように、回動体30のピン取付け孔30aと、フレンジ32の2つのピン孔33b、33bが一直線に並んだ状態になるよう、回動体30を、2つの支持壁33a、33a間に組み付ける。そして、センターピン14を、一方の支持壁33aの外側から、そのピン孔33bの中心に向かって挿入する。この場合、
図6(c)に示すように、両ピン孔33b、33bにそれぞれ取り付けられた芯材入り組紐31の芯材31aを、センターピン14によって外部に押し出しながら、そのセンターピン14を、フレンジ32の両支持壁33a、33aと回動体30にわたるように取り付ける。これにより、センターピン14は、回動体30のピン取付け孔30aに貫通した状態で固定されるとともに、両端部が、軸受けとしての組紐31b、31bを介して、両支持壁33a、33aに回動自在に支持される。
【0046】
以上詳述したように、本実施形態によれば、ハンマー組立て品4、ウィッペン21、ジャック22及びダンパー25などの回動体30に固定されたセンターピン14の両端部を、軸受け13、13を介して、対応するフレンジ32によって回動自在に支持する。上記の各軸受け13は、内部に中空を有する筒状の組紐で構成されているので、帯状のクロスを丸めることによってブッシングクロスを構成する従来と異なり、センターピン14の両端部を、フレンジ32のピン孔33bの中心に適切に位置させることができ、回動体30を効率よくかつ安定して回動させることができる。また、上記の軸受け13を、芯材入り組紐31を用いて構成し、前述したようにして、回動体30とフレンジ32を、センターピン14を介して連結するので、回動体30を効率よくかつ安定して回動させることができるフレンジ32を、容易に得ることができる。
【0047】
また、フレンジ32に形成されるピン孔33bの径は、そのフレンジ32が支持する回動体30の種類に応じて設定することが好ましい。例えば、回動度合を高くすべき回動体30(例えばジャック22)に対しては、それを支持するフレンジ32(フレンジ本体33)のピン孔33bの径を大きくすることにより、センターピン14に作用する軸受け13(組紐31b)の摩擦が小さくなり、回動体30の回動度合を高くすることができる。一方、回動度合を低くすべき回動体30(例えばウィッペン21)に対しては、それを支持するフレンジ32のピン孔33bの径を小さくすることにより、センターピン14に作用する軸受け13(組紐31b)の摩擦が大きくなり、回動体30の回動度合を低くすることができる。したがって、単一種類の芯材入り組紐31を用いる場合でも、回動体30に要求される回動度合に適したフレンジ32を得ることができる。
【0048】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明の支持装置を、アップライトピアノのフレンジに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、グランドピアノはもちろん、電子ピアノなどの鍵盤楽器の各種の回動体を回動自在に支持するフレンジなどにも、適用することができる。
【0049】
また、組紐31bの材料として、フッ素繊維を例示したが、組紐31bはこれに限定されるものではなく、種々の材料を採用することも可能である。さらに、実施形態で示したアクション1や各種のフレンジ11、15、17及び18の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。