(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料電池において複数の積層部材が積層される方向を積層方向、前記積層方向に隣り合う一対の前記積層部材間に介装される枠状の燃料電池用ガスケットの延在方向を長手方向、前記長手方向に対して直交する方向を短手方向として、
シール本体と、
前記シール本体から凸設され、前記短手方向に並置され、一対の前記積層部材のうち、同じ前記積層部材に弾接する複数のシールリップと、
前記シール本体から凸設され、前記積層方向から見て、複数の前記シールリップ間を連結し、複数の前記シールリップが弾接する前記積層部材に、弾接する隔壁と、
を有するシール部を備え、
車両搭載用の前記燃料電池に配置される燃料電池用ガスケット。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の燃料電池用ガスケットの実施の形態について説明する。
【0009】
<第一実施形態>
[燃料電池の構成]
まず、本実施形態の燃料電池用ガスケットを備える燃料電池の構成について説明する。
図1に、本実施形態の燃料電池用ガスケットを備える燃料電池の上下方向(積層方向)断面図を示す。
図2に、
図1の矢印II視図(燃料電池用ガスケット2aが配置されたセルアセンブリ3の上面図)を示す。なお、
図1は、
図2のI−I断面に対応している。
【0010】
図1に示すように、燃料電池9は、上下一対の端板90と、複数の燃料電池用ガスケット2aと、複数のセルアセンブリ3と、を備えている。セルアセンブリ3は、電極部材30と、上下一対のセパレータ31と、燃料電池用ガスケット(セル内ガスケット)2bと、を備えている。燃料電池用ガスケット2bは、ゴム製であって、上側から見て矩形枠状を呈している。電極部材30は、燃料電池用ガスケット2bの枠内側に配置されている。電極部材30の外縁は、燃料電池用ガスケット2bに接着されている。上下一対のセパレータ31は、燃料電池用ガスケット2bおよび電極部材30の、上下方向両側に配置されている。上下一対のセパレータ31は、燃料電池用ガスケット2bに接着されている。
図2に示すように、セパレータ31には、複数のマニホールド310が開設されている。
図1に示すように、電極部材30は、MEA(Membrane Electrode Assembly)300と、上下一対の多孔質層301と、を備えている。上下一対の多孔質層301は、MEA300の上下方向両側に配置されている。
【0011】
図1に示すように、上下方向に隣り合うセルアセンブリ3の間には、後述する燃料電池用ガスケット(セル間ガスケット)2aが介装されている。すなわち、燃料電池用ガスケット2aとセルアセンブリ3とは、上下方向に交互に積層されている。燃料電池用ガスケット2aは、上下方向に隣り合う一対のセルアセンブリ3に、弾接している。なお、セルアセンブリ3は、本発明の「積層部材」の概念に含まれる。また、任意の燃料電池用ガスケット2aから見て、上側のセルアセンブリ3は、本発明の「第一部材」の概念に含まれる。並びに、任意の燃料電池用ガスケット2aから見て、下側のセルアセンブリ3は、本発明の「第二部材」の概念に含まれる。
【0012】
図1に示すように、上下一対の端板90は、燃料電池9の上下方向両端に配置されている。上下一対の端板90は、燃料電池用ガスケット2aとセルアセンブリ3との積層体を、上下方向両側から挟持している。このため、燃料電池用ガスケット2aとセルアセンブリ3との積層体には、所定の締結力(上下方向の圧縮力)が加えられている。
【0013】
[燃料電池用ガスケットの構成]
次に、本実施形態の燃料電池用ガスケットの構成について説明する。本実施形態においては、本発明の燃料電池用ガスケットは、燃料電池用ガスケット(セル間ガスケット)2aとして具現化されている。
図3に、
図2のIII−III方向断面の部分拡大図を示す。
【0014】
図2に示すように、上側から見て、燃料電池用ガスケット2aは矩形枠状を呈している。燃料電池用ガスケット2aの四隅には、各々、小枠が形成されている。小枠は、セパレータ31のマニホールド310を囲んでいる。燃料電池用ガスケット2aは、ゴム製のシール部20を備えている。
【0015】
図3に示すように、シール部20は、シール本体200と、複数の第一シールリップ201aと、複数の第一隔壁202aと、複数の第二シールリップ201bと、複数の第二隔壁202bと、を備えている。シール本体200は、上側から見て矩形枠状を呈している。第一シールリップ201aは、シール本体200から、上向きに凸設されている。第一シールリップ201aは、上側のセルアセンブリ3の下面に弾接している。
図2に示すように、上側から見て、複数の第一シールリップ201aは、短手方向(枠内外方向)に並置されている。複数の第一シールリップ201aは交差していない。上側のセルアセンブリ3と、第一シールリップ201aと、の弾接部分には、主シールラインLaが形成されている。
【0016】
第一隔壁202aは、複数の第一シールリップ201a間の隙間Aに配置されている。第一隔壁202aは、短手方向に延在している。第一隔壁202aは、複数の第一シールリップ201a間を連結している。第一隔壁202aは、上側のセルアセンブリ3の下面に弾接している。複数の第一隔壁202aは、所定間隔ずつ離間して、長手方向に並置されている。すなわち、上側から見て、複数の第一シールリップ201aと、複数の第一隔壁202aと、梯子状を呈している。上側のセルアセンブリ3と、第一隔壁202aと、の弾接部分には、副シールラインMaが形成されている。副シールラインMaは、枠内側の主シールラインLaと、枠外側の主シールラインLaと、を連結している。
【0017】
複数の第二シールリップ201bおよび複数の第二隔壁202bの構成と、複数の第一シールリップ201aおよび複数の第一隔壁202aの構成と、は同一である。また、複数の第二シールリップ201bおよび複数の第二隔壁202bの配置と、複数の第一シールリップ201aおよび複数の第一隔壁202aの配置と、は上下対称である。
【0018】
[燃料電池用ガスケットの機能]
次に、本実施形態の燃料電池用ガスケットの機能について説明する。以下、
図2に示す燃料電池用ガスケット2aの左縁が、
図3に示す断面を中心に捩れた場合を想定する。
図4に、
図2のIV−IV方向断面の部分拡大図を示す。
図5に、
図2のV−V方向断面の部分拡大図を示す。
図6に、
図2の区間VI部分の斜視図を示す。なお、
図6においては、燃料電池用ガスケット2aと、上側のセルアセンブリ3と、の弾接部分(主シールラインLa、副シールラインMa)を、一点鎖線ハッチングで示す。また、
図6の断面IIIは
図3に、
図6の断面IVは
図4に、
図6の断面Vは
図5に、各々対応している。
【0019】
図3〜
図6に示すように、燃料電池用ガスケット2aの左縁は、
図3に示す断面を中心に、捩れている。
図4、
図6に示すように、前側から見て、燃料電池用ガスケット2aの左縁の前側部分は、シール本体200の中心軸周りに、反時計回り方向に捩れている。このため、枠内側の第一シールリップ201aは、上側のセルアセンブリ3に、強く弾接している。一方、枠外側の第一シールリップ201aは、上側のセルアセンブリ3から、離間している。すなわち、枠外側の第一シールリップ201aと、上側のセルアセンブリ3と、の間には、開口区間Dが形成されている。
図5、
図6に示すように、前側から見て、燃料電池用ガスケット2aの左縁の後側部分は、シール本体200の中心軸周りに、時計回り方向に捩れている。このため、枠外側の第一シールリップ201aは、上側のセルアセンブリ3に、強く弾接している。一方、枠内側の第一シールリップ201aは、上側のセルアセンブリ3から、離間している。すなわち、枠内側の第一シールリップ201aと、上側のセルアセンブリ3と、の間には、開口区間Cが形成されている。このように、枠外側の主シールラインLaは、前側の開口区間Dにより、断線している。並びに、枠内側の主シールラインLaは、後側の開口区間Cにより、断線している。
【0020】
開口区間Cと開口区間Dとの間には、重複区間Bが介在している。重複区間Bにおいては、二つの第一シールリップ201aが、共に上側のセルアセンブリ3に弾接している。すなわち、枠内外方向に複数の主シールラインLaが並んでいる。なお、重複区間Bの長さは、燃料電池用ガスケット2aの材質、形状、剛性、シミュレーション、実験などから、設定可能である。重複区間Bに少なくとも一つの第一隔壁202aが配置されるように、第一隔壁202aの配置間隔(ピッチ)、配置数は設定されている。
【0021】
なお、燃料電池用ガスケット2aが正しく一対のセルアセンブリ3間に介装されている場合(燃料電池用ガスケット2aが捩れていない場合)、燃料電池用ガスケット2aの長手方向全長に亘って、重複区間Bが延在することになる。この場合、開口区間C、Dは形成されない。
【0022】
仮に、
図6に示す第一隔壁202aが配置されていない場合、
図6に点線矢印Y2で示すように、開口区間C、隙間A、開口区間Dを経由するリーク通路が開通してしまう。このため、リーク通路を介して、燃料電池用ガスケット2aの左縁の右側(枠内側)と左縁の左側(枠外側)とが連通してしまう。したがって、流体(例えば、水素を含む燃料ガス、酸素を含む酸化ガス、冷却水など)が、燃料電池9の内部から外部に、漏出してしまう。あるいは、流体が、燃料電池9の外部から内部に、進入してしまう。
【0023】
これに対して、本実施形態の燃料電池用ガスケット2aは、第一隔壁202aを備えている。第一隔壁202aは、重複区間Bに配置されている。第一隔壁202aは、副シールラインMaにより、隙間Aを分断している。このため、点線矢印Y2で示すリーク通路は開通しない。したがって、実線矢印Y1で示すように、流体は、燃料電池9の内部から外部に、漏出しない。また、流体が、燃料電池9の外部から内部に、進入しない。
【0024】
なお、
図3〜
図6に示すように、下側のセルアセンブリ3と、燃料電池用ガスケット2aの左縁と、の間においても、第一隔壁202a同様に、第二隔壁202bが複数の第二シールリップ201b間の隙間を分断している。すなわち、
図3に示すように、副シールラインMbは、枠内側の主シールラインLbと、枠外側の主シールラインLbと、を連結している。このため、リーク通路(ただし、
図6に点線矢印Y2で示すリーク通路に対して、前後対称のリーク通路)は開通しない。
【0025】
[燃料電池用ガスケットの作用効果]
次に、本実施形態の燃料電池用ガスケットの作用効果について説明する。燃料電池9の組付時においては、作業者のスキルなどにより、燃料電池用ガスケット2aが捩れてしまう場合がある。また、燃料電池9の使用時においては、例えば車両の振動、車両の加減速に伴う慣性力などにより、燃料電池用ガスケット2aが捩れてしまう場合がある。燃料電池用ガスケット2aが捩れてしまうと、
図6に点線矢印Y2で示すように、開口区間C、隙間A、開口区間Dを経由するリーク通路が開通してしまう。このため、リーク通路を介して、燃料電池用ガスケット2aの枠内側と枠外側とが連通してしまう。
【0026】
ここで、
図6に示すように、燃料電池用ガスケット2aが捩れた場合であっても、長手方向の少なくとも一部には、複数の第一シールリップ201aが同じセルアセンブリ3(上側のセルアセンブリ3)に弾接する区間、すなわち重複区間Bが存在している。この点、本実施形態の燃料電池用ガスケット2aによると、当該重複区間Bに、第一隔壁202aが配置されている。
図3、
図6に示すように、第一隔壁202aは、副シールラインMaにより、隙間Aを分断している。このため、本実施形態の燃料電池用ガスケット2aの場合、点線矢印Y2で示すリーク通路は開通しない。したがって、実線矢印Y1で示すように、燃料電池用ガスケット2aと上側のセルアセンブリ3との間において、燃料電池用ガスケット2aの枠内側と枠外側との連通を遮断することができる。同様に、
図3、
図6に示すように、第二隔壁202bは、副シールラインMbにより、複数の第二シールリップ201b間の隙間を分断している。このため、燃料電池用ガスケット2aと下側のセルアセンブリ3との間において、燃料電池用ガスケット2aの枠内側と枠外側との連通を遮断することができる。このように、本実施形態の燃料電池用ガスケット2aによると、燃料電池用ガスケット2aが捩れて配置されている場合であっても、短手方向(枠内外方向)のシール性が低下しにくい。
【0027】
また、
図1に示すように、燃料電池用ガスケット2aは、上下方向両側の一対のセルアセンブリ3に、弾接している。このため、燃料電池用ガスケット2aとセパレータ31とを接着する必要がない。したがって、燃料電池9に燃料電池用ガスケット2aを簡単に組み付けることができる。
【0028】
また、
図2に示すように、上側から見て、複数の第一シールリップ201aは、各々、無端環状を呈している。複数の第一シールリップ201aは、互いに独立して配置されている。このため、複数の第一シールリップ201aは、交差していない。したがって、複数の第一シールリップ201aが交差している場合と比較して、交差部分の反力(詳しくは、交差部分が上側のセルアセンブリ3に加える反力)が局所的に大きくなるのを、抑制することができる。複数の第二シールリップ201bについても同様である。
【0029】
また、
図3に示すように、第一隔壁202aは、複数の第一シールリップ201aから、左右両外側に突出していない。このため、第一隔壁202aが短手方向両外側に突出している場合と比較して、燃料電池用ガスケット2aの短手方向幅が短くなる。第二隔壁202bについても同様である。
【0030】
<第二実施形態>
本実施形態の燃料電池用ガスケットと、第一実施形態の燃料電池用ガスケットとの相違点は、燃料電池用ガスケットがストッパ部を備えている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図7に、本実施形態の燃料電池用ガスケットの短手方向断面図(横断面図)を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0031】
上側から見て、一対のストッパ部21は、各々、ゴム製であって矩形枠状を呈している。
図7に示すように、一対のストッパ部21は、シール部20の右側(枠内側)および左側(枠外側)に配置されている。ストッパ部21は、ストッパ本体210と、第一補強リブ211aと、第二補強リブ211bと、連結部212と、を備えている。ストッパ本体210は、連結部212を介して、シール本体200に連なっている。第一補強リブ211aは、ストッパ本体210から上向きに凸設されている。
【0032】
無荷重状態(燃料電池用ガスケット2aが燃料電池9に組み付けられる前の状態)において、第一補強リブ211aの上面は、上側に膨らむ曲面状を呈している。無荷重状態においては、第一シールリップ201aの最頂部の高度は、第一補強リブ211aの最頂部の高度よりも、高く設定されている。一方、荷重状態(燃料電池用ガスケット2aが燃料電池9に組み付けられた後の状態)においては、第一シールリップ201aおよび第一補強リブ211aは、共に上側のセルアセンブリ3(具体的には、当該セルアセンブリ3における下側のセパレータ31)の下面に、弾接している。第二補強リブ211bの構成と、第一補強リブ211aの構成と、は同一である。また、第二補強リブ211bの配置と、第一補強リブ211aの配置と、は上下対称である。
【0033】
本実施形態の燃料電池用ガスケットと、第一実施形態の燃料電池用ガスケットとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。右側のストッパ部21には、右側から、流体の圧力が加わる。当該圧力により、右側のストッパ部21の第一補強リブ211aは上側のセルアセンブリ3に、右側のストッパ部21の第二補強リブ211bは下側のセルアセンブリ3に、各々押し付けられる。このため、燃料電池用ガスケット2aが上下一対のセルアセンブリ3に接着されていないにもかかわらず、燃料電池用ガスケット2aと上下一対のセルアセンブリ3との間のシール性を確保することができる。
【0034】
ここで、「上側の燃料電池用ガスケット2a、セルアセンブリ3、下側の燃料電池用ガスケット2a」という積層部分を想定する。並びに、当該積層部分において、上側の燃料電池用ガスケット2aの下側の主シールラインLbと、下側の燃料電池用ガスケット2aの上側の主シールラインLaと、が水平方向(例えば、
図7に示す左右方向)に互いにずれている場合を想定する。
【0035】
この場合、仮に
図7に示すストッパ部21が配置されていないと、上側の燃料電池用ガスケット2aの下側の主シールラインLbと、下側の燃料電池用ガスケット2aの上側の主シールラインLaと、の位置ずれ(以下、単に「シールラインの位置ずれ」と略称する)により、上下一対の燃料電池用ガスケット2aに挟まれているセルアセンブリ3に、剪断力が加わってしまう。
【0036】
この点、本実施形態の燃料電池用ガスケット2aは、ストッパ部21を備えている。このため、シールラインの位置ずれが発生している場合であっても、セルアセンブリ3に剪断力が加わりにくくなる。したがって、セルアセンブリ3が変形しにくくなる。よって、シールラインの位置ずれに起因するシール性の低下を抑制することができる。
【0037】
また、シール部20が捩れる場合であっても、連結部212が弾性変形することにより、当該捩れを吸収することができる。このため、ストッパ部21が、シール部20の捩れの影響を受けにくい。
【0038】
<第三実施形態>
本実施形態の燃料電池用ガスケットと、第二実施形態の燃料電池用ガスケットとの相違点は、ストッパ部が第一補強リブ、第二補強リブを備えていない点である。また、シール部が第二シールリップ、第二隔壁を備えていない点である。また、シール部が三つの第一シールリップを備えている点である。ここでは、主に相違点について説明する。
図8に、本実施形態の燃料電池用ガスケットの短手方向断面図を示す。なお、
図7と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0039】
図8に示すように、シール本体200は、下側のセルアセンブリ3に弾接している。シール本体200からは、上向きに三つの第一シールリップ201aが凸設されている。第一隔壁202aは、左右方向(枠内外方向、短手方向)両端の一対の第一シールリップ201a間を連結している。第一隔壁202aは、左端の第一シールリップ201aから、左側に突出していない。並びに、第一隔壁202aは、右端の第一シールリップ201aから、右側に突出していない。また、ストッパ部21は、ブロック状のストッパ本体210を備えている。ストッパ部21は、第一補強リブ、第二補強リブを備えていない。
【0040】
本実施形態の燃料電池用ガスケットと、第二実施形態の燃料電池用ガスケットとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。第一隔壁202aは、左右方向中央の第一シールリップ201aを貫通して、左右方向両端の一対の第一シールリップ201a間を連結している。このため、確実に、燃料電池用ガスケット2aの右側(枠内側)と左側(枠外側)との連通を遮断することができる。また、ストッパ部21は、第一補強リブ、第二補強リブを備えていない。このため、反力(詳しくは、ストッパ部21がセルアセンブリ3に加える反力)が大きくなるのを、抑制することができる。
【0041】
<その他>
以上、本発明の燃料電池用ガスケットの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0042】
図9(a)に、その他の実施形態(その1)の燃料電池用ガスケットの左縁の部分上面図を示す。
図9(b)に、その他の実施形態(その2)の燃料電池用ガスケットの左縁の部分上面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0043】
図9(a)に示すように、第一隔壁202aは、複数の第一シールリップ201a間を、折れ線状(ジグザグ状)に連結してもよい。すなわち、第一隔壁202aを、前後方向(長手方向)および左右方向(短手方向)に対して交差する方向に延在させてもよい。こうすると、燃料電池用ガスケット2aの長手方向全長に亘って、第一隔壁202aを配置することができる。このため、燃料電池用ガスケット2aの長手方向全長に亘って、反力(詳しくは、燃料電池用ガスケット2aがセルアセンブリ3に加える反力)のばらつきを、抑制することができる。なお、第二隔壁202bについても同様である。
【0044】
図9(b)に示すように、第一隔壁202aは、複数の第一シールリップ201a間を、波線状(正弦波状)に連結してもよい。また、第一シールリップ201aの短手方向断面積をS1、第一隔壁202aの短手方向断面積をS2、第一シールリップ201aと第一隔壁202aとの連結部分の短手方向断面積をS3として、S3と(S1+S2)とを略一致させてもよい。こうすると、断面α〜γにおける、複数の第一シールリップ201aおよび第一隔壁202aの短手方向総断面積(断面αにおいてはS3+S1、断面βにおいてはS1+S2+S1、断面γにおいてはS1+S3)を、均一化することができる。このため、燃料電池用ガスケット2aの長手方向全長に亘って、反力のばらつきを、抑制することができる。なお、第二隔壁202bについても同様である。
【0045】
図10に、その他の実施形態(その3)の燃料電池用ガスケットの左縁の部分斜視図を示す。
図11に、
図10のXI−XI方向断面図を示す。なお、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
図10、
図11に示すように、燃料電池用ガスケット2aは、ゴム製のシール部20を備えている。シール部20は、シール本体200と、複数のシールリップ201cと、複数の隔壁202cと、を備えている。シール本体200は、上側から見て矩形枠状を呈している。シール本体200の短手方向断面は、円形を呈している。複数のシールリップ201cは、シール本体200から、所定角度ずつ離間して、径方向外側に凸設されている。上側の一対のシールリップ201cは、
図6に示す上側のセルアセンブリ3の下面に弾接している。下側の一対のシールリップ201cは、
図6に示す下側のセルアセンブリ3の上面に弾接している。
【0046】
隔壁202cは、シール本体200から無端環状(フランジ状)に凸設されている。隔壁202cは、全てのシールリップ201cを、全周的に連結している。隔壁202cの上側部分は、
図6に示す上側のセルアセンブリ3の下面に弾接している。隔壁202cの下側部分は、
図6に示す下側のセルアセンブリ3の上面に弾接している。複数の隔壁202cは、所定間隔ずつ離間して、前後方向(長手方向)に並置されている。
【0047】
図10、
図11に示すように、複数のシールリップ201c、複数の隔壁202cは、全周的に配置されている。このため、燃料電池用ガスケット2aの捩れ具合に因らず、確実に、燃料電池用ガスケット2aの右側(枠内側)と左側(枠外側)との連通を遮断することができる。
【0048】
なお、本明細書における「捩れ」には、燃料電池用ガスケット2aの任意の二箇所の短手方向断面において、一方の断面(例えば、
図2のIV−IV方向断面(
図4参照))と、他方の断面(例えば、
図2のV−V方向断面(
図5参照))とが、シール本体200の中心軸周りに(シール本体200の周方向に)、相対的にずれている形態が含まれる。
【0049】
また、本明細書における「捩れ」には、
図9(b)に矢印Y3で示すように、正規の装着位置に対して、上側から見て、燃料電池用ガスケット2aの長手方向に離間した任意の二箇所(例えば、断面αと断面γ)が、中間の任意の位置(例えば断面β)を境に、一方(断面α)が左側(枠外側)に、他方(断面γ)が右側(枠内側)に、ずれている形態が含まれる。この形態の場合、ずれにより、第一シールリップ201a、第二シールリップ201bに対して、水平方向に剪断力が作用する。このため、第一シールリップ201a、第二シールリップ201bが、倒れ込んでしまう。したがって、主シールラインLa、Lbが断線することになる。
【0050】
シールリップ(第一シールリップ201a、第二シールリップ201b、シールリップ201c)、隔壁(第一隔壁202a、第二隔壁202b、隔壁202c)、補強リブ(第一補強リブ211a、第二補強リブ211b)の形状、大きさ、配置数(以下、「形状等」と称す)は特に限定しない。
【0051】
例えば、
図3に示す複数の第一シールリップ201aの形状等の異同は特に限定しない。また、複数の第二シールリップ201bの形状等の異同は特に限定しない。また、第一シールリップ201aと第二シールリップ201bとの形状等の異同は特に限定しない。例えば、第一シールリップ201aまたは第二シールリップ201bだけを配置してもよい。また、
図10に示す複数のシールリップ201cの形状等の異同は特に限定しない。
【0052】
同様に、
図3に示す複数の第一隔壁202aの形状等の異同は特に限定しない。また、複数の第二隔壁202bの形状等の異同は特に限定しない。また、第一隔壁202aと第二隔壁202bとの形状等の異同は特に限定しない。例えば、第一隔壁202aまたは第二隔壁202bだけを配置してもよい。また、
図10に示す複数の隔壁202cの形状等の異同は特に限定しない。
【0053】
同様に、
図7に示す複数の第一補強リブ211aの形状等の異同は特に限定しない。また、複数の第二補強リブ211bの形状等の異同は特に限定しない。また、第一補強リブ211aと第二補強リブ211bとの形状等の異同は特に限定しない。例えば、第一補強リブ211aまたは第二補強リブ211bだけを配置してもよい。また、一対のストッパ部21の補強リブの配置数が異なっていてもよい。また、一対のストッパ部21のうち、いずれか一方のストッパ部21だけに、補強リブを配置してもよい。
【0054】
図8に示すように、燃料電池用ガスケット2aが、同じ積層部材(例えば、上側のセルアセンブリ3)に弾接する三つ以上のシールリップ(例えば、第一シールリップ201a)を備える場合、隔壁(例えば、第一隔壁202a)は、少なくとも、短手方向(
図8における左右方向)に隣り合う任意の一対のシールリップ(例えば、最右側の第一シールリップ201aと左右方向中央の第一シールリップ201a、あるいは最左側の第一シールリップ201aと左右方向中央の第一シールリップ201a)間を連結すればよい。この場合であっても、枠内外方向(左右方向)のシール性を確保することができる。
【0055】
本発明の「第一部材」、「第二部材」、「積層部材」の種類は特に限定しない。燃料電池9を構成する部材であればよい。これらの部材は、単一の部材からなる一体物(例えばセパレータ31)でもよい。また、複数の部材が合体した合体物(例えばセルアセンブリ3、電極部材30)でもよい。
【0056】
荷重状態における、補強リブとセルアセンブリ3との離接は、特に限定しない。
図1に示す上下一対の端板90の締結力が大きい場合、補強リブはセルアセンブリ3に当接しやすい。反対に、当該締結力が小さい場合、補強リブはセルアセンブリ3に当接しにくい。シールリップがセルアセンブリ3に当接していればよい。
【0057】
複数の第一シールリップ201aは、交差していてもよい。この場合は、当該交差部分を避けて、第一隔壁202aを配置する方がよい。こうすると、交差部分の反力が局所的に大きくなるのを、抑制することができる。また、燃料電池用ガスケット2aの長手方向全長に亘って、反力のばらつきを、抑制することができる。なお、複数の第二シールリップ201b、第二隔壁202bについても同様である。
【0058】
本発明の燃料電池用ガスケットを、
図1に示す燃料電池用ガスケット(セル内ガスケット)2bとして具現化してもよい。燃料電池9における積層部材の積層方向は特に限定しない。上下方向、水平方向、これらの方向を適宜組み合わせた方向であってもよい。燃料電池用ガスケット2aの用途は特に限定しない。ガスケットとして、燃料電池9以外の用途(例えば、配管継手、圧力容器、圧力機械(ポンプ、コンプレッサなど)など)に用いてもよい。燃料電池用ガスケット2a、2bの材質は特に限定しない。ゴム成分の他に、架橋剤、架橋助剤、接着成分などを含んでいてもよい。好適なゴム成分としては、EPDMの他、シリコーンゴム(VMQ)、フッ素ゴム(FKM)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPM)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。