(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポンプ機構は、前記容器本体から前記内容物を取り込むための原液取込孔が形成されたハウジングと、前記ハウジング内に上下方向に摺動自在に収容されるステムと、前記ステムと協働して前記ハウジング内を上下方向に摺動するピストン部材と、前記原液取込孔を開閉する逆止弁機構とを備える、請求項1記載の噴射製品。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[噴射製品]
本発明の一実施形態の噴射製品について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態の噴射製品1の模式的な断面図である。
図2は、
図1に示される本実施形態の噴射製品1のバルブ機構3の拡大図である。
図1および
図2に示される噴射製品1は、噴射動作が行われていない状態(非噴射状態)である。本実施形態の噴射製品1は、内容物が充填される容器本体2と、容器本体2に取り付けられるバルブ機構3と、バルブ機構3に取り付けられる噴射部材4と、を主に備える。内容物は、水性原液5と、25℃における水に対するオストワルド係数が0.1以下である圧縮ガスとからなる。バルブ機構3は、容器本体2の気相部分に存在する圧縮ガスを外部に放出するためのガス放出孔61eと、内容物を噴射部材4に供給するための噴射通路とが形成されている。また、バルブ機構3は、噴射通路内の内容物を加圧するポンプ機構を備えている。さらに、バルブ機構3は、噴射部材4が作動されることにより、ガス放出孔61eが開放され、気相部分の圧縮ガスを外部に放出する。以下、それぞれについて説明する。なお、以下に示される実施形態は一例であり、噴射製品1の構成は、非噴射状態とポンプ噴射状態とを適宜切り替えることができ、切り替え時に気相部分の圧縮ガスを外部に放出し得る構成であれば特に限定されない。
【0018】
<容器本体2>
容器本体2は、内容物を充填するための耐圧容器であり、有底筒状の本体部21と、本体部21よりも小径であり本体部21の上部に一体的に設けられた筒状の首部22とを含む。首部22の上部には開口が形成されている。開口は、内容物を充填する際の充填口であり、内容物の充填後にバルブ機構3により閉止される。
【0019】
容器本体2を構成する材料は、特に限定されない。容器本体2を構成する材料は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等の合成樹脂、ガラス、アルミニウムやブリキなどの金属が例示される。なお、ポンプ噴射状態に切り替えた際に、内容物中で微細な気泡が発生し白濁する状態を目視で確認できる点から、透光性を有する合成樹脂やガラスを用いることが好ましい。合成樹脂を用いる場合は、たとえば、日光による内容物の劣化を防止するために紫外線吸収剤が含有されてもよく、圧縮ガスの透過を防止するために容器本体2の外表面または内面に炭素やシリカなどが蒸着されてもよい。首部22の外周には、後述するネジキャップ62と接続するための雄ネジ部23が形成されている。
【0020】
<バルブ機構3>
バルブ機構3は、容器本体2内を密封し、容器本体2から水性原液5を取り込んで加圧するための部材である。バルブ機構3は、ポンプ機構を備えており、ポンプ機構は、好適には、筒状のハウジング6と、ハウジング6内に収容されるバルブ本体7と、後述するピストン部材の上方向への変位を制御する当接部材8とを主に備える。バルブ本体7は、ハウジング6内を上下方向に摺動自在に収容されるステム71(内部ステム74および外部ステム75)を含む。ポンプ機構は、非噴射状態から、ポンプ噴射を行うポンプ噴射状態に変位することが可能である。ポンプ噴射状態の詳細は、後述される。
【0021】
(ハウジング6)
ハウジング6は、筒状のハウジング本体61と、ハウジング本体61に接続され、ハウジング本体61を容器本体2に取り付けるためのネジキャップ62とを備える。
【0022】
ハウジング本体61は、容器本体2から取り込まれる水性原液5が通過または一時的に貯留される第1空間S1と、後述する容器本体2の気相部分に存在する気体状態の圧縮ガスが通過する第2空間S2とを内部に備える円筒状の部材である。第1空間S1と第2空間S2とは、後述するピストン部材72により区画される。ハウジング本体61は、後述する外部ステム75が出没する開口が形成された上端と、容器本体2に貯留される水性原液5を取り込むためのチューブ63が接続される下端とを有する。
【0023】
ハウジング本体61の上端には、径方向の外側へ突出するフランジ部61aが周設されている。フランジ部61aは、容器本体2にハウジング本体61を位置決めするための部位であり、フランジ部61aの大きさ(外径)は、容器本体2の首部22の外径と略一致する。フランジ部61aの下面と首部22の上端とは、ガスケット64を介して位置決めされる。ハウジング本体61は、フランジ部61aにより位置決めされた状態において、ハウジング本体61の外周壁と容器本体2の首部22の内周壁とは離間している。
【0024】
ハウジング本体61の下端近傍には、ハウジング本体61よりも径の小さな小径部61bが形成されている。小径部61bには、チューブ63が差し込まれる連結溝61cが形成されている。チューブ63は、容器本体2の内底近傍まで延びる比較的長尺の円筒状部材であり、連結溝61cに差し込まれる一端と、容器本体2に貯留された水性原液5中に浸漬され、水性原液5を取り込むための開口が形成された他端とを有する。
【0025】
小径部61bの中央には、容器本体2からチューブ63を介して取り込まれる水性原液5をハウジング本体61の第1空間S1に導入するための原液取込孔61dが形成されている。原液取込孔61dと第1空間S1との接続箇所には、逆止弁機構65が設けられている。
【0026】
逆止弁機構65は、容器本体2から第1空間S1への一方向に水性原液5を取り込むための弁機構であり、原液取込孔61dを適宜開閉する。逆止弁機構65は、ハウジング本体61の下端近傍において、ハウジング本体61の内周壁が径方向の内側へ膨出することにより形成された凹部65aと、凹部65aに落とし込まれたボール65bとを含む。ボール65bは、噴射部材4を操作しないときは自重により原液取込孔61dと第1空間S1との連通箇所を閉止する。一方、ボール65bは、バルブ機構3が後述されるポンプ噴射を行うポンプ噴射状態にある場合において、容器本体2内の水性原液5が第1空間S1に取り込まれる際に発生する液流によって持ち上げられ、原液取込孔61dと第1空間S1との連通箇所を開放する。
【0027】
ハウジング本体61の側周壁には、後述するピストン部材72により適宜開閉されるガス放出孔61eが形成されている。ガス放出孔61eは、第2空間S2と容器本体2の内部空間(気相部分)とを接続し、気相部分の圧縮ガスを第2空間S2を通過させて外部に放出するための孔である。また、ポンプ噴射後に容器本体内の水性原液が第1空間S1内に導入される際に外部の空気を容器本体内に導入するための孔である。ガス放出孔61eは、非噴射状態ではピストン部材72により閉止され、バルブ機構3が非噴射状態からポンプ噴射状態に変位する際にピストン部材72が下方向に摺動されることにより開放される。
【0028】
ネジキャップ62は、当接部材8の上面を押さえ、中央に開口が形成された円盤状の天板62aと、天板62aの外周縁から下方へ設けられた側周部62bと、天板62aの内周縁から上方へ設けられた円筒状の装着部62cとを有する。側周部62bの内周壁には、首部22の雄ネジ部23と接続するための雌ネジ部62dが形成されている。装着部62cは、内周壁において径方向内側へ周設されたカバー部62eと、外周壁において径方向の外側へ突出するよう周設された係合部62fとを備える。カバー部62eは、ハウジング本体61に対して後述する当接部材8を位置決めするため部位である。係合部62fは、噴射部材4をネジキャップ62に取り付けるための部位である。
【0029】
(バルブ本体7)
バルブ本体7は、容器本体2から取り込まれた水性原液5を噴射部材4に送るための部材であり、ハウジング本体61内に上下方向に摺動自在に収容されるステム71と、ステム71と協働してハウジング6内を上下方向に摺動するピストン部材72と、ステム71を上方に付勢するバネ部材73とを備える。
【0030】
ステム71は、非噴射状態においてピストン部材72と当接することにより、水性原液5が第1空間S1から外部に噴射されることを防ぐための内部ステム74と、内部ステム74の上部に装着され、ハウジング本体61の上端に形成された開口から出没する外部ステム75とからなる。内部ステム74と外部ステム75とは、同軸上に設けられており、ハウジング本体61内を一体的に上下方向に摺動する。
【0031】
内部ステム74は、下向きの略椀状であり、下面にバネ部材73の上端が接続される比較的大径の椀状部74aと、椀状部74aよりも小径であり、椀状部74aの上面中央から上方に延びる円筒状の円筒部74bとを含む。
【0032】
椀状部74aの上面と円筒部74bとの接続箇所には、ピストン部材72の内側摺動部76の下端が当接する環状の当接溝74hが形成されている。椀状部74aの下面には、バネ部材73の上端が挿入される。椀状部74aの外周縁には、椀状部74aの上下方向に延びる切欠き溝741aが形成されている。また、椀状部74aの下面のうち、外周縁近傍は、後述するポンプ噴射状態において、ハウジング本体61の内周面から径方向の内側に膨出した当接段部61fと当接する。ステム71は、ポンプ噴射状態において、当接段部61fと当接することにより、下方への摺動が制止される。
【0033】
外部ステム75は、ハウジング61内に取り込まれた水性原液5がさらに通過する外部ステム内通路75aが形成されており、円錐台状のスカート部75bと、スカート部75bの上端から上方にかけて縮径された筒状部75cとを含む。筒状部75cの上端は、容器本体2から突出しており、噴射部材4が取り付けられる。筒状部75cの外径は、当接部材8の内径よりもわずかに小さい。そのため、バルブ機構3が非噴射状態からポンプ噴射状態に変位する際に、容器本体2内の気相部分の圧縮ガスは、外部ステム75の外周壁と当接部材8の内周壁とにより画定される通路(ガス放出通路)等から外部に放出され得る。
【0034】
スカート部75bの内周面には、バルブ機構3が後述する非噴射状態からポンプ噴射状態に変位する際に、ピストン部材72に押し当てられる当接段部75dが形成されている。スカート部75bの内径は、円筒部74bの外径よりも大きい。そのため、スカート部75bの内周壁と円筒部74bの外周壁とは離間される。このように離間されて形成された空間には、後述するピストン部材72の上部内側摺動部76aが挿入される。
【0035】
筒状部75cの内径は、円筒部74bの外径と同程度である。そのため、外部ステム75は、円筒部74bの上部を筒状部75cの下端側から挿入することにより内部ステム74に装着される。
【0036】
ピストン部材72は、ハウジング本体61の内部空間を第1空間S1と第2空間S2とに区画するとともに、第1空間S1と第2空間S2とを適宜連通させ、かつ、ガス放出孔61eを適宜開閉するための部材である。ピストン部材72は、内部ステム74および外部ステム75と適宜協働してハウジング本体61内を上下方向に摺動する。ピストン部材72は、内部ステム74の外周壁に沿って摺動する内側摺動部76と、ハウジング本体61の内周壁に沿って摺動する外側摺動部77と、内側摺動部76と外側摺動部77とを連結する連結環78とを含む。連結環78は、内側摺動部76と外側摺動部77との中心近傍をつなぐ。
【0037】
内側摺動部76は、第1空間S1と第2空間S2とを適宜連通させるための部位であり、連結環78との接続箇所の上部に相当する上部内側摺動部76aと、連結環78との接続箇所の下部に相当する下部内側摺動部76bとを含む。
【0038】
上部内側摺動部76aの上端は、内部ステム74の外周壁と外部ステム75のスカート部75bの内周壁との間に形成される空間に挿入され、バルブ機構3が非噴射状態からポンプ噴射状態に変位する際に外部ステム75および内部ステム74が下方向へ摺動されると、内部ステム74の外周壁と外部ステム75の内周壁とにより形成される空間に、より深く挿入される。なお、非噴射状態からポンプ噴射状態へ変位する際には、ピストン部材72は、下部内側摺動部76bを当接溝74hと当接させ、その後、ステム71と一体的に下方に摺動する。
【0039】
下部内側摺動部76bは、バネ部材73により内部ステム74が上方向に付勢されると、椀状部74aの当接溝74h近傍と下端とが当接し、上方向に付勢される。
【0040】
外側摺動部77は、ガス放出孔61eを適宜開閉する円柱状の部材であり、ハウジング本体61の内周壁に沿って摺動する。また、外側摺動部77は、連結環78との接続箇所の上部に相当する上部外側摺動部77aと、連結環78との接続箇所の下部に相当する下部外側摺動部77bとを含む。
【0041】
上部外側摺動部77aの上端は、バネ部材73により内部ステム74を介して上方向に付勢されると、後述する当接部材8の下端と当接する。
【0042】
連結環78は、内側摺動部76と外側摺動部77とを連結する部位である。
【0043】
ピストン部材72を構成する材料としては、合成樹脂、シリコーンゴム、合成ゴム等の弾性力のある材料が例示される。
【0044】
バネ部材73は、ステム71を上方に付勢するための部材であり、椀状部74aの下面と接続される上端と、凹部65aの周囲に取り付けられる下端とを有する。バネ部材73は、ハウジング本体61内において圧縮した状態で配置されており、内部ステム74を上方に付勢する。また、バネ部材73の下端は、ボール65bの径よりも小さくなるよう、径方向の内側に向かって縮径されている。これにより、後述するポンプ噴射状態において容器本体2から水性原液5から取り込まれる際の液流によりボール65bが上方向に押し上げられた場合であっても、ボール65bは、バネ部材73の下端によって制止される。
【0045】
このように構成されたバルブ本体7は、ネジキャップ62の雌ネジ部62dを容器本体2の雄ネジ部23に螺合させることにより、容器本体2に固定される。
【0046】
(当接部材8)
当接部材8は、ハウジング本体61の開口部に嵌入されてステム71と当接してステム71を位置決めし、さらにピストン部材72の上部外側摺動部77aの上端と当接してピストン部材72を位置決めする部材である。これら当接部材8、ステム71およびハウジング本体61は、いずれも、たとえばガスケット等によって閉止されていない。そのため、ガス放出孔61eを介して容器本体2の気相部分から取り込まれた圧縮ガスは、当接部材8およびハウジング本体61のわずかな間隙や、当接部材8およびステム71のわずかな間隙等から、外部に放出され得る。
【0047】
当接部材8は、ネジキャップ62の裏面と接触する天面部81と、ハウジング本体61の開口部に嵌入される筒状の当接脚部82とを含む。天面部81は、ネジキャップ62の裏面と、ハウジング本体61のフランジ部61aとによって挟持される。これにより、当接部材8は、位置決めされる。当接脚部82の下端は、上部外側摺動部77aの上端と当接し、非噴射状態でのピストン部材72の位置を規定する。
【0048】
<噴射部材4>
噴射部材4は、外部ステム75に装着される噴射ノズル41と、ネジキャップ62に装着される操作部42とを含む。
【0049】
噴射ノズル41は、L字型の筒状体であり、筒状部75cの上端と接続される一端と、先端ノズル43が接続される他端とを備える。噴射ノズル41の外周壁には、後述するレバー42bの本体部42hに形成された軸受に軸支される回動軸41aが設けられている。噴射ノズル41の一端の下面41cには、係止溝41b(
図3参照)が形成されている。係止溝41bは、バルブ機構3が後述される非噴射状態からポンプ噴射状態に変位する際に切替部材9の係止突起95を係止するために設けられている。係止溝41bの深さは、係止突起95の高さと同程度である。
【0050】
先端ノズル43は、水性原液5の噴射方向や噴射形状等を調整するための治具であり、噴射ノズル41に接続される一端と、水性原液5が噴射される噴射孔43aが形成された他端とを備える。本実施形態の噴射製品1は、先端ノズル43にメカニカルブレークアップ機構を備えたノズルチップ43bが装着されている。メカニカルブレークアップ機構は、水性原液5を広範囲に均一に噴霧するための機構であり、水性原液5に旋回力を与えて適度な大きさに微細化するための溝(チャンネル)を有する。
【0051】
操作部42は、第1空間S1に貯留される水性原液5を噴射するためにステム71を摺動させるための部位であり、装着部62cに装着されるレバー支持部42aと、レバー支持部42aに軸支されたレバー42bとを含む。
【0052】
レバー支持部42aは、円筒状の本体部42cと、本体部42cの側壁から突出する支持アーム42dとを備える。本体部42cは、装着部62cが挿入される環状溝42eが形成されており、環状溝42eの内面には、装着部62cの係合部62fが係合する係合溝42fが形成されている。レバー支持部42aは、環状溝42eに装着部62cが挿入され、係合部62fと係合溝42fとが係合されることにより、ネジキャップ62に装着される。支持アーム42dの上端近傍には、後述するレバー42bに設けられる軸受(図示せず)に軸支される回動軸42gが形成されている。
【0053】
レバー42bは、使用者が噴射時に操作する部位であり、支持アーム42dに軸支される軸受が形成された一端と、先端ノズル43が露出される他端とを含む本体部42hと、本体部42hの他端から下方に延設されたトリガー部42iとを含む。本体部42hは、中央部分に、回動軸41aが軸支される軸受(図示せず)が形成されている。トリガー部42iは、噴射時に使用者によって操作される。
【0054】
このように構成された噴射部材4によれば、使用者がトリガー部42iを引くことにより、レバー42bは回動自在に軸支された後端を基点として回動し、かつ、中央部分に形成された軸受を介して噴射ノズル41を下方に押し下げる。
【0055】
<切替部材9>
切替部材9は、バルブ機構3を後述する非噴射状態およびポンプ噴射状態に変位させる際に好適に使用される治具である。また、切替部材9は、ステム71の摺動可能距離を調整することにより、バルブ機構3を非噴射状態とポンプ噴射状態とに切り替えるための治具である。
図1および
図2に加え、
図3を参照して、本実施形態の切替部材9が説明される。
図3は、切替部材9の動作を説明するための斜視図である。なお、本実施形態において切替部材9は、必須ではない。
【0056】
切替部材9は、本体部42cに装着するための円筒状の装着部91と、噴射ノズル41の一端と当接して噴射ノズル41の下方向への移動を適宜制止するための円筒状の当接部92とからなる本体部90と、本体部90の外周壁において径方向の外側に膨出するよう形成された板状の操作部93とを備える。本体部90の外周壁には、一部が切り欠かれた切欠部94が形成されている。装着部91と当接部92とは、外径が同程度であり、一体的に形成されている。また、装着部91の中心孔91aの径は、当接部92の中心孔92bの径よりも大きく、本体部42cの外径と同程度である。そのため、装着部91は、切欠部94を介して本体部42cに嵌め込むことにより本体部42cに取り付けることができる。一方、当接部92の中心孔92bの径は、外部ステム75の外径よりもわずかに大きい。そのため、装着部91を本体部42cに装着することによって切替部材9を本体部42cおよび外部ステム75の外周に取り付けた場合に、中心孔92bを画定する内周縁は、外部ステム75の外周壁と接触しない。これにより、外部ステム75は、上下方向に摺動される際に、切替部材9(当接部92)により摺動が阻害されることがない。
【0057】
当接部92の上面92aには、係止突起95が形成されている。係止突起95は、噴射ノズル41の一端の下面に形成された係止溝41bに適宜係合される。
【0058】
切替部材9は、いくらか弾性を有する樹脂からなる。そのため、切替部材9は、切欠部94を押し広げて、装着部91を本体部42cに嵌め込むことにより、容易に本体部42cおよび外部ステム75の外周に取り付けることができる。同様に、切替部材9は、切欠部94を押し広げて、本体部42cから容易に取り外すことができる。
【0059】
当接部92は、切替部材9が本体部42cに取り付けられた状態において、噴射ノズル41の一端側の下面41cと本体部42cの上面との間に挟まれるように配置される。そのため、噴射ノズル41は、下面41cと係止突起95の上面とが当接することにより下方向への移動が規制される。
【0060】
操作部93は、使用者が切替部材9を操作する際に指先同士で摘まむ部位である。使用者は、操作部93を操作することにより、切替部材9を本体部42cおよび外部ステム75の軸周りに回動させることができる。切替部材9を操作して非噴射状態およびポンプ噴射状態にそれぞれ切り替える方法については後述される。
【0061】
(内容物)
内容物は、容器本体2に充填され、水性原液5と25℃における水に対するオストワルド係数が0.1以下である圧縮ガスとを含む。水性原液5は、噴射部材4が操作されることにより、容器本体2からバルブ機構3に供給される。具体的には、水性原液5は、チューブ63の下端から取り込まれ、第1空間S1を通過または第1空間S1に一時的に貯留された後、外部ステム75の外部ステム内通路75a、噴射ノズル41のノズル内通路41dに供給され、噴射孔43aより噴射される。
【0062】
・水性原液5
水性原液5は、容器本体2に充填される液体成分である。水性原液5は、従来公知の成分を含む。一例を挙げると、水性原液5は、水と、アルコールと、界面活性剤と、増粘剤と、有効成分などを含むことができる。
【0063】
水は、水性原液5の主たる溶媒であり、圧縮ガスや、水溶性の有効成分等を適宜溶解する。水としては、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等が例示される。
【0064】
水の含有量は、水性原液5中50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、水性原液5中、99.5質量%以下であることが好ましく、99量%以下であることがより好ましい。水の含有量が50質量%未満である場合、圧縮ガスの溶解量が多くなりやすく、微細な気泡が発生しにくい。一方、水の含有量が99.5質量%を超える場合、有効成分やアルコールなどの含有量が少なくなり、有効成分などの効果が得られにくくなる。
【0065】
アルコールは、圧縮ガスが水性原液5中に溶解する濃度を調整し、ポンプ噴射状態に切り替えて圧縮ガスを外部に排出したときに水性原液5中で発生する気泡の大きさや量、保持時間を調整するなどの目的で含有される。アルコールとしては、エタノール、イソプロパノール等の炭素数が2〜3個の1価アルコールや、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の多価アルコールが例示される。これらは併用されてもよい。
【0066】
アルコールが含有される場合において、アルコールの含有量は、水性原液5中、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が1質量%未満である場合、アルコールの効果が得られにくくなる。一方、アルコールの含有量が40質量%を超える場合、水性原液5に圧縮ガスが多く溶解しすぎ、バルブ機構3がポンプ噴射状態に切り替えられた際に、水性原液5中で発生する気泡が大きくなり、すぐに浮遊して消滅しやすくなる。
【0067】
界面活性剤(可溶化剤)は、水に溶けない有効成分を溶解させる、洗浄力を高くする有効成分として適宜含有される。界面活性剤としては、特に限定されない。一例を挙げると、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、POEアルキルエーテル、POE・POPアルキルエーテルなどのノニオン性界面活性剤、脂肪酸石鹸などのアニオン性界面活性剤、アルキルリン酸塩、アルキル硫酸塩、POEアルキルエーテル硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、コカミドプロピルベタイン、ラウリルベタインなどの両性界面活性剤、N−アシルグルタミン酸塩などのアミノ酸系界面活性剤、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコン系界面活性剤等が例示される。これらは併用されてもよい。
【0068】
界面活性剤が含有される場合において、界面活性剤の含有量は、水性原液5中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、水性原液5中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が0.01質量%未満である場合、水に溶けない有効成分を溶解する効果や洗浄力を高くする効果が充分に得られにくい。一方、界面活性剤の含有量が15質量%を超える場合、洗い流しにくくなる傾向がある。
【0069】
増粘剤は、圧縮ガスを外部に放出して水性原液5中で生じる微細な気泡の浮遊を抑制し、維持しやすくするために含有される。増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ゼラチン等が例示される。これらは併用されてもよい。
【0070】
増粘剤が含有される場合において、増粘剤の含有量は、水性原液5中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、増粘剤の含有量は、水性原液5中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。増粘剤の含有量が0.01質量%未満である場合、圧縮ガスが気化することによって生じる気泡を維持する効果が充分に得られにくい。一方、増粘剤の含有量が5質量%を超える場合、水性原液5の粘度が高くなり過ぎて、吐出しにくくなる傾向や、使用感が低下する傾向がある。
【0071】
水性原液5は、上記の配合成分以外にも有効成分を適宜含有し得る。一例を挙げると、有効成分は、クロロヘキシジン、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、第4級アンモニウム塩等の殺菌または抗菌剤;クエン酸、リン酸、リンゴ酸、乳酸等のpH調整剤;安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウム等の防腐剤;トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩等の抗炎症剤;塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等の収斂剤;アスコルビン酸、トコフェロールエステル等のビタミン類;チョウジ、ローズマリー、オウゴン等のエキス類;ヒアルロン酸などの保湿剤;ペパーミント、ハッカ油、スペアミント等の精油、レモン、ストロベリー等のフルーツ系のエッセンス、l−メントール、リモネン、オシメン、シネオール、n−デシルアルコール、シトロネロール、ワニリン、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、チモール、ローズマリー油、セージ油、シソ油、レモン油、オレンジ油等の香料;各種色素等である。これらは併用されてもよい。
【0072】
有効成分が含有される場合において、有効成分の含有量は、水性原液5中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、水性原液5中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が0.01質量%未満である場合、有効成分の効果が充分に得られにくい。一方、有効成分の含有量が10質量%を超える場合、内容物は、有効成分によっては安定性が悪くなったり、使用感が悪くなる傾向がある。
【0073】
・圧縮ガス
圧縮ガスは、水性原液5とともに容器本体2に充填され、容器本体2内において大部分が容器本体2内の気相に存在して水性原液5を加圧して吐出可能にする加圧剤として作用し、残部が水性原液5中に溶解する。圧縮ガスの溶解量は、容器本体2内に充填された時点において、1ppm以上であればよく、1.5ppm以上であることが好ましい。また、圧縮ガスの溶解量は、1000ppm以下であればよく、500ppm以下であることが好ましい。圧縮ガスの溶解量が1ppm未満である場合、溶解量が少なすぎるためポンプ噴射に切り替えて圧縮ガスを放出した際に水性原液5中で発生する気泡が少なく、白濁しにくい。一方、圧縮ガスの溶解量が1000ppmを超える場合、水性原液5中で発生する気泡が大きくなり、バルブ機構3がポンプ噴射状態に切り替えられた際に、すぐに浮遊して水性原液5中で分散しにくくなる。なお、本実施形態において、圧縮ガスの溶解量とは、25℃において圧縮ガスが水性原液5中に溶解している量である。
【0074】
圧縮ガスは、25℃における水に対するオストワルド係数が0.1以下であればよく、0.05以下であることが好ましい。オストワルド係数が0.1を超える場合、溶解量が多くなるため、吐出された水性原液5中で微細な気泡が発生しにくい。
【0075】
より具体的には、圧縮ガスとしては、窒素(オストワルド係数:0.0141)、酸素(オストワルド係数:0.0283)、水素(オストワルド係数:0.0194)、空気(0.0167)およびこれらの混合ガス等が例示される。なお、圧縮ガスは、上記溶解量の範囲に含まれる限りにおいて、比較的オストワルド係数の大きなガスが併用されてもよい。このようなガスとしては、炭酸ガス(オストワルド係数:0.759)、亜酸化窒素(オストワルド係数:0.59)等が例示される。これらの中でも、圧縮ガスは、入手が容易であり、取扱いやすく、人体への影響が少ない点から、窒素または空気であることが好ましい。なお、圧縮ガスは、併用されてもよい。
【0076】
圧縮ガスが充填され、水性原液5中に飽和溶解した後の容器本体2内の圧力は、25℃において0.2〜1.0MPa(ゲージ圧)、好ましくは0.3〜0.8MPa(ゲージ圧)である。このような圧力は、圧縮ガスが上記溶解量となるように充填されることにより調整され得る。
【0077】
<バルブ機構3の変位の一例>
次に、上記構成の噴射製品1を用いて水性原液5を噴射する場合におけるバルブ機構3の変位が、
図1〜
図3に加えて
図4〜
図6を参照して説明される。
図4は、切替部材9の動作を説明するための斜視図である。
図5は、エアゾール噴射を行うエアゾール噴射状態に変位しているバルブ機構3の模式的な拡大図である。
図6は、バルブ機構3がポンプ噴射を行うポンプ噴射状態に変位している噴射製品1の模式的な断面図である。
図7は、ポンプ噴射を行うポンプ噴射状態に変位しているバルブ機構3の模式的な拡大図である。なお、バルブ機構3は、非噴射状態から、上記したエアゾール噴射状態を経て、その後、ポンプ噴射状態に変位されてもよい。ただし、本実施形態の噴射製品1は、ポンプ噴射を行うことができればよく、エアゾール噴射状態への変位は必須ではない。そのため、本実施形態のバルブ機構3は、たとえば使用者によって噴射部材4が短時間で操作されることにより、実質的にエアゾール噴射状態に変位されることなく(または短時間のエアゾール噴射状態への変位を経て)、非噴射状態からポンプ噴射状態に変位されてもよい。また、以下の実施形態では、切替部材9を回動することによりバルブ機構3が非噴射状態からエアゾール噴射状態に変位でき、切替部材を取り外すことによりバルブ機構3がさらにポンプ噴射状態に変位できる態様について例示している。これに代えて、本実施形態の噴射製品1は、切替部材9の係止溝41bの長さ(深さ)が調整されることにより、切替部材9を取り外さなくても、噴射ノズル41を介してステム71をより下方に押し下げ可能とし、バルブ機構3をポンプ噴射機構に変位させ得る態様が採用されてもよい。また、切替部材9の取り外しのみでバルブ機構3をポンプ噴射機構に変位させてもよい。
【0078】
(非噴射状態)
まず、水性原液5を噴射しない非噴射状態(噴射前の状態)では、
図1に示されるように、切替部材9は、当接部92(
図3参照)が本体部42cに嵌め込まれている。また、切替部材9は、係止突起95が噴射ノズル41の下面41cと当接するように適宜回動されている。この状態では、噴射ノズル41は、下方向に移動することができない。その結果、バルブ機構3は、内容物を噴射しない非噴射状態となり、バネ部材73により内部ステム74、外部ステム75およびピストン部材72が上方へ付勢された状態で維持される。この場合、ピストン部材72は、下部内側摺動部76bを当接溝74hと当接させることによって第1空間S1と第2空間S2との連通(噴射通路)を遮断しており、かつ、上部外側摺動部77aによってガス放出孔61eを閉止している(閉止状態)。そのため、水性原液5は噴射されない。また、噴射ノズル41は、下方向に移動することができないため、水性原液5は、誤って噴射されることがない。
【0079】
(エアゾール噴射状態)
一方、
図4に示されるように、切替部材9の係止突起95が係止溝41bと対応する位置まで回動されると、バルブ機構3は、非噴射状態からエアゾール噴射を行うエアゾール噴射状態に容易に変位することができる。具体的には、
図4に示されるように、係止突起95が係止溝41bと対応する位置まで回動されると、使用者はトリガー部42iを操作することができる。これにより噴射ノズル41が下方向に可能な範囲で押し下げられると、係止突起95は、係止溝41b内に挿入され、係止される。その結果、内部ステム74と外部ステム75とは、一体となって下方へ摺動する。このときピストン部材72は外部ステム75と当接しないため移動せず、内部ステム74と外部ステム75とは、係止溝41bの深さ分(係止突起95の高さ分)だけ下降する。その結果、
図5に示されるように、この変位により、下部内側摺動部76bの下端は、当接溝74hから離れる。これにより、第1空間S1と第2空間S2とは連通される。すなわち、容器本体2内と外部とが連通される。なお、この際、ガス放出孔61eは、上部外側摺動部77aによって閉止されたままである。容器本体2内と外部とが連通されると、容器本体2内は圧縮ガスにより加圧されているため、圧縮ガスにより加圧されている水性原液5がボール65bを上方向に持ち上げて、第1空間S1に供給される。さらに、この水性原液5は、第2空間S2に供給され、外部ステム内通路75aを通過して、噴射孔43a(
図1参照)より噴射される。このように、エアゾール噴射状態では、水性原液5は、圧縮ガスによる加圧力により連続的に噴射される。
図5において、矢印A1は、容器本体2から取り込まれる水性原液5の流れを示している。
【0080】
エアゾール噴射状態では、内容物は、加圧充填された圧縮ガスによって勢いよく噴射される。また、トリガー部42iを繰り返し操作しなくても、操作した状態に維持すれば必要量を連続的に噴射することができる。そのため、噴射製品1は、たとえば塗布面の汚れ等を、噴射の勢いと、噴射された内容物中に溶解していた圧縮ガスが気化することによる物理的なスクラブ作用によって、除去し得る。
【0081】
(気泡発生状態)
切替部材9(
図3、4参照)が取り外されると、バルブ機構3は、非噴射状態またはエアゾール噴射状態からポンプ噴射状態に容易に変位することができる。この際、バルブ機構3は、圧縮ガスの気泡を発生させる気泡発生状態を経由する。具体的には、
図6に示されるように、切替部材9が取り外されると、使用者はトリガー部42i(
図1参照)をさらに操作することができ、噴射ノズル41は、エアゾール噴射状態(
図5参照)からさらに下方向に可能な範囲で押し下げられる。この際、
図7に示されるように、内部ステム74と外部ステム75とは、スカート部75bの当接段部75dがピストン部材72の上部内側摺動部76aの上端に当接するまで一体となって下方へ摺動し、その後、内部ステム74、外部ステム75およびピストン部材72が一体となってさらに下方へ摺動する。この変位により、ピストン部材72は、上部外側摺動部77aの外周壁による閉止状態から、ガス放出孔61eを開放する(開放状態)。これにより、容器本体2内の気相部分に存在する圧縮ガスが外部に放出され、容器本体2内が大気圧となる。矢印A2は、容器本体2の気相部分から外部に放出される圧縮ガスの流れを示している。その結果、水性原液5中に高圧で溶解していた圧縮ガスは過飽和の状態となるため、大気圧の飽和溶解量になるまでの量の圧縮ガスが気化して多数の微細な気泡が発生する。このとき、水への溶解度が小さな圧縮ガスを用い、かつ水性原液中に特定量溶解させているため、発生する気泡は微細であり、水性原液中ですぐに浮遊せずに漂うように分散するため、水性原液の外観は気泡により白濁する。
図6において、微細な気泡が発生して分散している水性原液は、水性原液5aとして示されている。なお、低温状態など、温度条件によっては、噴射製品1は、ポンプ噴射状態に切り替えられた後、圧縮ガスの微細な気泡の発生が少ない場合がある。このような場合には、噴射製品1は、適宜振とうされてもよい。これにより、微細な気泡の発生が促され得る。
【0082】
(ポンプ噴射状態)
本実施形態の噴射製品1は、
図6に示されるように、使用者がトリガー部42iを操作すると、ピストン部材72が下方に摺動して、第1空間S1の容積が減少する。この際、ボール65bは、第1空間S1の容積の減少による下方向への付勢によって沈み、原液取込孔61dを閉止する。その結果、第1空間S1に貯留された原液(図示せず)は、加圧され、第2空間S2に供給され、外部ステム内通路75aを通過して、噴射孔43a(
図1参照)より噴射される。噴射された水性原液5には、微細な気泡として分散している圧縮ガスが含まれている。そのため、本実施形態の噴射製品1によれば、ポンプ噴射を行うことによって、塗布面に多くの微細な圧縮ガスの気泡を付与することができる。
【0083】
その後、使用者によるトリガー部42iの操作が止められると、復帰動作および第1空間S1への原液の取り込み動作が開始される。すなわち、バネ部材73の付勢力により、内部ステム74および外部ステム75、ピストン部材72は、上方へ押し上げられて元の位置に戻り、第1空間S1と第2空間S2との連通が再び閉止される。また、ガス放出孔61eは、上部外側摺動部77aの外周壁により再び閉止される。なお、内部ステム74、ピストン部材72および外部ステム75の上方への摺動は、上部外側摺動部77aの上端が当接部材8の当接脚部82の下端と当接することにより制止される。
【0084】
このように、バネ部材73により、内部ステム74、外部ステム75およびピストン部材72が一体となって押し上げられる際、第1空間S1と第2空間S2との連通は閉止されている。そのため、ボール65bも上方へ移動し、原液取込孔61dと第1空間S1とを連通箇所を開放し、第1空間S1には、容器本体2から新たに一定量の水性原液5が取り込まれる。本実施形態の噴射製品1は、逆止弁機構65を備えるため、取り込まれた水性原液5は逆流しにくい。その結果、噴射製品1は、適切な量の内容物を噴射しやすく、安定した効果が得られやすい。
【0085】
以上、本実施形態の噴射製品1は、噴射部材4が操作されることによりバルブ機構3のガス放出孔61eが開放され、気相部分の圧縮ガスが外部に放出される。その結果、容器本体2内が大気と連通し、大気圧となる。これにより、内容物中に溶解していた圧縮ガスが気化し、内容物は、微細な気泡が分散した状態となる。また、噴射製品1は、内容物を加圧するポンプ機構を備えている。そのため、噴射製品1は、このような微細な気泡の分散した内容物を噴射することができる。これら一連の操作は、いずれも、たとえば特殊なノズルを付設することが必須でない。また、微細な気泡の分散した内容物は、たとえば塗布面に対して、気泡による洗浄効果等を付与し得る。
【0086】
また、本実施形態の噴射製品1は、上記非噴射状態、エアゾール噴射状態およびポンプ噴射状態への変位が、ハウジング6に収容されたピストン部材72を介して行われる。そのため、噴射製品1の寸法そのものは従来と同様に小型であってもよく、取り扱い易い。また、ピストン部材72は、噴射部材4の操作と協働する。そのため、噴射製品1は、操作方法が簡便である。
【0087】
本実施形態の噴射製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、噴射製品は、水性原液5を容器本体2内に充填し、容器本体2にバルブ機構3を取り付けて密封し、バルブ機構3から圧縮ガスを充填することによって製造し得る。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0089】
(実施例1)
図1に示される無色透明のポリエチレンテレフタレート製耐圧容器に、以下の処方にしたがって調製した水性原液を充填し、バルブを取り付け、バルブのステムから窒素ガスを充填し、噴射部材を取り付けて噴射製品を製造した。なお、容器内の圧力は0.5MPa(25℃)であった。
(水性原液処方)
精製水 100.0
合計 100.0(質量%)
【0090】
(実施例2)
以下の処方にしたがって調製した水性原液を用いたこと以外は実施例1と同様にして噴霧製品を製造した。
(水性原液処方)
エタノール 10.0
精製水 90.0
合計 100.0(質量%)
【0091】
(実施例3)
以下の処方にしたがって調製した水性原液を用い、窒素ガスを充填して容器内の圧力を0.4MPa(25℃)にしたこと以外は実施例1と同様にして噴霧製品を製造した。
(水性原液処方)
コカミドプロピルベタイン水溶液 0.1
エタノール 30.0
精製水 69.9
合計 100.0(質量%)
【0092】
(実施例4)
圧縮ガスとして水素ガスを用いたこと以外は実施例1と同様にして噴霧製品を製造した。
【0093】
(比較例1)
原液としてエタノールを用いたこと以外は実施例1と同様にして噴霧製品を製造した。
【0094】
(比較例2)
圧縮ガスとして炭酸ガスを用いたこと以外は実施例1と同様にして噴霧製品を製造した。
【0095】
(比較例3)
圧縮ガスとして亜酸化窒素を用いたこと以外は実施例1と同様にして噴霧製品を製造した。
【0096】
実施例1〜4および比較例1〜3において作製した噴射製品について、以下の評価方法によって圧縮ガスの溶解量および白濁状態を評価した。結果を表1に示す。
【0097】
<圧縮ガスの溶解量>
耐圧容器の容積、原液の充填量、圧縮ガスの充填量、平衡状態の圧力から、圧縮ガスの原液溶解量を算出した。
【0098】
<白濁状態>
噴霧製品を25℃の恒温室内で1日間静置し、非噴射状態から気泡発生状態を経てポンプ噴射状態に変位するようトリガー部を操作し、気相の圧縮ガスを外部に排出した。このときの内容物の状態を評価した。
(評価基準)
○:ゆっくりと微細な気泡が発生し、上下に振ると一気に気泡が発生して内容物全体が白濁し、30秒以上持続した。
×:大きな粒の気泡が発生した。上下に振っても白濁せず、すぐに消えた。
【0099】
【表1】
【0100】
表1に示されるように、実施例1〜4の噴射製品は、非噴射状態からポンプ噴射状態に切り替えて気相にある圧縮ガスを外部に排出することにより、水性原液に溶解していた圧縮ガスによりゆっくりと微細な気泡が発生し、容器を上下に振ると一気に気泡が発生して内容物が白濁状態となった。また、白濁状態は30秒以上持続し、ポンプ操作により白濁状態の内容物を噴射することができた。一方、水性原液でない比較例1の噴射製品や、オストワルド係数の大きな炭酸ガスや亜酸化窒素ガスを用いた比較例2および比較例3の噴射製品では、非噴射状態からポンプ噴射状態に切り替えて気相にある圧縮ガスを外部に排出することにより、大きな気泡が発生し、内容物中に分散せずに消失した。