(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エアベース比率算出手段は、前記第1候補値算出手段が、所定時間ごとに得られる前記ガスセンサのL個のセンサ値のうち、前記警報出力部により警報が出力されているときのセンサ値を前記第1候補値の算出に用いずに、前記エアベース比率を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載のガス警報器。
ガス感応体が検知対象ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力するガスセンサの空気雰囲気におけるセンサ値の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するエアベース比率算出工程と、
前記エアベース比率算出工程において算出されたエアベース比率に基づいて、処理を実行する処理工程と、
前記ガスセンサのセンサ値に基づいて警報状態であるか判断し、警報状態であると判断した場合に警報出力部から警報を出力させる警報制御工程と、を備えたガス警報器の制御方法であって、
前記エアベース比率算出工程は、
第1所定期間内において所定時間ごとに得られる前記ガスセンサのL(Lは3以上の整数)個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出する第1候補値算出工程と、
前記第1所定期間をM(Mは3以上の整数)個含む第2所定期間において得られるM個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出する第2候補値算出工程と、
前記第2所定期間をN(Nは3以上の整数)個含む第3所定期間において得られるN個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出する更新候補値算出工程と、を有し、
前記更新候補値算出工程において算出された更新候補値と前記初期値とに基づいて前記エアベース比率を算出する
ことを特徴とするガス警報器の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1〜3に記載のガス警報器では、エアベース比率に基づいて警報点の変更、故障判断及びセンサ値の補正等の処理を行うことから、エアベース比率の算出精度が高いことが好ましい。
【0007】
なお、エアベース比率は、半導体式ガスセンサを備えるガス警報器に限らず、接触燃焼式ガスセンサなどの他のガスセンサを備えるガス警報器においても算出精度が高いことが好ましい。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、エアベース比率の算出精度をより向上させることが可能なガス警報器及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス警報器は、ガス感応体が検知対象ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力するガスセンサと、前記ガスセンサの空気雰囲気におけるセンサ値の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するエアベース比率算出手段と、前記エアベース比率算出手段により算出されたエアベース比率に基づいて、処理を実行する処理手段と、前記ガスセンサのセンサ値に基づいて警報状態であるか判断し、警報状態であると判断した場合に警報出力部から警報を出力させる警報制御手段と、を備えたガス警報器であって、前記エアベース比率算出手段は、第1所定期間内において所定時間ごとに得られる前記ガスセンサのL(Lは3以上の整数)個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出する第1候補値算出手段と、前記第1所定期間をM(Mは3以上の整数)個含む第2所定期間において得られるM個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出する第2候補値算出手段と、前記第2所定期間をN(Nは3以上の整数)個含む第3所定期間において得られるN個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出する更新候補値算出手段と、を有し、前記更新候補値算出手段により算出された更新候補値と前記初期値とに基づいて前記エアベース比率を算出することを特徴とする。
【0010】
このガス警報器によれば、L個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出し、M個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出し、N個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出し、更新候補値と初期値とに基づいてエアベース比率を算出する。このように、ノイズによって極値的なセンサ値が得られていたとしても、第1候補値の算出によって、このような値による影響を緩和すると共に、第2候補値及び更新候補値の算出においても同様にこのような値による影響を緩和することができる。よって、3段階によるノイズ除去を行ったうえで得られる更新候補値に基づいてエアベース比率を算出することとなり、エアベース比率の算出精度をより向上させることができる。
【0011】
また、このガス警報器において、前記エアベース比率算出手段は、前記第1候補値算出手段が、所定時間ごとに得られる前記ガスセンサのL個のセンサ値のうち、前記警報出力部により警報が出力されているときのセンサ値を前記第1候補値の算出に用いずに、前記エアベース比率を算出することが好ましい。
【0012】
このガス警報器によれば、警報が出力されているときのセンサ値を第1候補値の算出に用いずにエアベース比率を算出するため、空気雰囲気におけるセンサ値であるか否かの専用処理を必要とせず、既存の警報判断を利用して空気雰囲気であることを特定してエアベース比率を算出することができる。
【0013】
また、本発明のガス警報器において、前記第2所定期間は、日単位の期間であり、前記更新候補値算出手段は、N個の第2候補値のうち2番目からN−1番目に大きいセンサ値のいずれか1つを更新候補値とすることが好ましい。
【0014】
このガス警報器によれば、第2所定期間は日単位の期間であり、N個の第2候補値のうち2番目からN−1番目に大きいセンサ値のいずれか1つを更新候補値とするため、1日かけて室内を清掃してスプレーを使用した場合など、警報は出力されないが日単位でセンサ値が全体的に変動する場合などにおいても、そのような日の第2候補値は1番目又はN番目に大きいセンサ値となり易く、このような値が更新候補値とされないことから、エアベース比率の算出精度をより一層向上させることができる。
【0015】
また、本発明のガス警報器の制御方法は、ガス感応体が検知対象ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力するガスセンサの空気雰囲気におけるセンサ値の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するエアベース比率算出工程と、前記エアベース比率算出工程において算出されたエアベース比率に基づいて、処理を実行する処理工程と、前記ガスセンサのセンサ値に基づいて警報状態であるか判断し、警報状態であると判断した場合に警報出力部から警報を出力させる警報制御工程と、を備えたガス警報器の制御方法であって、前記エアベース比率算出工程は、第1所定期間内において所定時間ごとに得られる前記ガスセンサのL(Lは3以上の整数)個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出する第1候補値算出工程と、前記第1所定期間をM(Mは3以上の整数)個含む第2所定期間において得られるM個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出する第2候補値算出工程と、前記第2所定期間をN(Nは3以上の整数)個含む第3所定期間において得られるN個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出する更新候補値算出工程と、を有し、前記更新候補値算出工程において算出された更新候補値と前記初期値とに基づいて前記エアベース比率を算出することを特徴とする。
【0016】
このガス警報器の制御方法によれば、L個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出し、M個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出し、N個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出し、更新候補値と初期値とに基づいてエアベース比率を算出する。このように、ノイズによって極値的なセンサ値が得られていたとしても、第1候補値の算出によって、このような値による影響を緩和すると共に、第2候補値及び更新候補値の算出においても同様にこのような値による影響を緩和することができる。よって、3段階によるノイズ除去を行ったうえで得られる更新候補値に基づいてエアベース比率を算出することとなり、エアベース比率の算出精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、エアベース比率の算出精度をより向上させることが可能なガス警報器及びその制御方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係るガス警報器の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、ガス警報器1は、検知対象ガスの濃度が所定濃度以上であると判断した場合に警報出力するものであって、ガスセンサ10と、制御部20と、警報音発生部(警報出力部)30と、表示部(警報出力部)40とを備えて構成されている。
【0021】
ガスセンサ10は、検知対象ガスの濃度に応じた信号を出力するものであって、いわゆる半導体式ガスセンサや接触燃焼式ガスセンサが採用されている。これらのセンサは、ガス感応体が検知対象ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力するものである。
【0022】
具体的に半導体式ガスセンサは、酸化スズの粉体を焼成して焼結し触媒を添加したものをガス感応体とし、検知対象ガスである還元性ガス(例えばメタンガス)に曝されたときに抵抗値が低下するものである。一方、接触燃焼式ガスセンサは、酸化触媒をアルミナなどの担体とともに焼結した検知素子をガス感応体とし、検知対象である可燃性ガス(例えばメタン)に曝されたときに抵抗値が上昇するものである。これらのセンサは、ヒータによって所定温度に保たれたり、2以上の温度間で温度変化させられたり、オンオフされたりして、駆動されている。
【0023】
なお、以下においてガスセンサ10は、半導体式ガスセンサであるものとして説明をすると共に、ガスセンサ10のセンサ値は、ガスセンサ10から出力された信号を抵抗値換算した値(すなわちセンサ抵抗値)であるものとして説明する。
【0024】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)により構成され、ROM(Read Only Memory)に記憶されるプログラムを実行して、ガスセンサ10のセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断するものである。警報音発生部30は、例えばスピーカと音声出力回路とによって構成され、制御部20により警報状態であると判断された場合に、警報音を出力するものである。表示部40は、例えばLED(Light Emitting Diode)と点灯回路とによって構成され、制御部20により警報状態であると判断された場合に、点灯出力又は点滅出力するものである。
【0025】
図2は、
図1に示した制御部20の機能ブロック図である。
図2に示すように、制御部20は、ROMに記憶されるプログラムを実行することで、エアベース比率算出部(エアベース比率算出手段)21と、センサ値補正部(処理手段)22と、警報制御部(警報制御手段)23とが機能する。
【0026】
エアベース比率算出部21は、ガスセンサ10の空気雰囲気(清浄状態の空気雰囲気)におけるセンサ値の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するものである。このエアベース比率算出部21は、後述する更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。ここで、半導体式ガスセンサにおいてエアベース値(清浄状態の空気雰囲気におけるセンサ抵抗値)は、長期使用された場合の被毒の影響によって初期値よりも低下する傾向にある。よって、エアベース比率算出部21は、後述する更新候補値を初期値で除することで、1以下のエアベース比率を算出することとなる。
【0027】
センサ値補正部22は、エアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率に基づいて、処理を実行するものである。ここでの処理とは、ガスセンサ10のセンサ値を補正する処理であって、具体的にはガスセンサ10のセンサ値をエアベース比率で除する処理である。なお、センサ値を補正する処理に代えて、警報点を変更したり、センサ故障を判断したりする処理であってもよい。
【0028】
警報制御部23は、ガスセンサ10のセンサ値に基づいて(本実施形態ではセンサ値補正部22により補正されたセンサ値から)警報状態であるかを判断するものであり、警報状態であると判断した場合には、警報音発生部30から警報音を出力させ、表示部40を点灯又は点滅させるものである。
【0029】
ここで、上記の如く、センサ値補正部22は、エアベース比率に基づいてセンサ値を補正することから、エアベース比率の算出精度は高ければ高いほど好ましいといえる。そこで、本実施形態に係るエアベース比率算出部21は、第1候補値算出部(第1候補値算出手段)21aと、第2候補値算出部(第2候補値算出手段)21bと、更新候補値算出部(更新候補値算出手段)21cとを備えている。
【0030】
第1候補値算出部21aは、第1所定期間内において所定時間毎に得られるガスセンサ10のL(Lは3以上の整数)個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出するものである。
【0031】
第2候補値算出部21bは、第1所定期間をM(Mは3以上の整数)個含む第2所定期間において得られるM個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出するものである。本実施形態において第2所定期間は例えば1日や2日や3日(日単位の期間の一例)などである。
【0032】
更新候補値算出部21cは、第2所定期間をN(Nは3以上の整数)個含む第3所定期間において得られるN個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出するものである。
【0033】
そして、エアベース比率算出部21は、更新候補値算出部21cにより算出された更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。なお、初期値は、予め記憶された値であってもよいし、ガス警報器1の設置直後のセンサ値から求められる値であってもよい。
【0034】
このように、上記のエアベース比率算出部21は、最大値及び最小値の少なくとも一方を除く第1候補値の算出によって、たとえノイズによって極値的なセンサ値が得られていたとしても、このような極値的なセンサ値による影響を緩和すると共に、第2候補値及び更新候補値の算出においても同様に極値的なセンサ値による影響を緩和することができる。すなわち、3段階によるノイズ除去を行ったうえで得られる更新候補値に基づいてエアベース比率を算出することとなり、エアベース比率の算出精度をより向上させることができる。
【0035】
次に、図面を参照してエアベース比率算出部21の具体的な処理を説明する。
図3は、
図2に示した第1候補値算出部21aの処理の概要を示す図である。
図3に示すように、第1候補値算出部21aは、所定時間T毎にガスセンサ10から得られる信号を抵抗値換算してセンサ値を求め、このセンサ値を記憶保存していく。そして、記憶保存したセンサ値がL個となった場合、すなわち第1所定期間P1が経過した場合、L個のセンサ値のうち、最大値と最小値とを除き、(L−2)個のセンサ値の平均値を第1候補値として算出する。
【0036】
なお、エアベース比率を算出するための更新候補値については、空気雰囲気のセンサ値に基づいて得られた値である必要がある。このため、第1候補値算出部21aは、警報音発生部30及び表示部40から警報出力されているときのセンサ値を第1候補値の算出に用いないこととする。
【0037】
例えば、L個のセンサ値のうち、2つのセンサ値が警報出力時のものである場合、第1候補値算出部21aは、まずL個のセンサ値のうち警報出力時のセンサ値を除いて(L−2)個とし、(L−2)個のセンサ値の最大値と最小値とを除いた(L−4)個のセンサ値の平均値を第1候補値として算出する。また、所定時間T毎の検出タイミングにおけるセンサ値が警報出力時のものである場合、第1候補値算出部21aは、警報出力が解除されるまで待機し、解除されたときのセンサ値を所定時間T毎のセンサ値の1つとしてもよい。この場合、待機時間分だけ第1所定期間P1が延長されてもよいし、延長されなくともよい。
【0038】
このようにすることで、エアベース比率算出部21は、空気雰囲気におけるセンサ値であるか否かを判断するための専用処理を必要とせず、既存の警報判断を利用して空気雰囲気であることを判断してエアベース比率を算出することができる。
【0039】
図4は、
図2に示した第2候補値算出部21bの処理の概要を示す図である。
図4に示すように、第2候補値算出部21bは、第1所定期間P1毎に第1候補値算出部21aにより算出される第1候補値を記憶保存していく。そして、記憶保存した第1候補値がM個となった場合、すなわち第2所定期間P2が経過した場合、第2候補値算出部21bは、M個の第1候補値のうち2番目〜(M−1)番目に高い値を示す第1候補値のいずれか1つを第2候補値として算出する。
【0040】
例えば、A1>A2>A3>・・・・・>A9>A10という第1候補値が得られていた場合、第2候補値算出部21bは、A2〜A9のいずれか1つの第1候補値を第2候補値とする。
【0041】
図5は、
図2に示した更新候補値算出部21cの処理の概要を示す図である。
図5に示すように、更新候補値算出部21cは、第2所定期間P2毎に第2候補値算出部21bにより算出される第2候補値を記憶保存していく。そして、記憶保存した第2候補値がN個となった場合、すなわち第3所定期間P3が経過した場合、更新候補値算出部21cは、N個の第2候補値のうち2番目〜(N−1)番目に高い値を示す第2候補値のいずれか1つを更新候補値として算出する。
【0042】
例えば、B1>B2>B3>・・・・・>B9>B10という第2候補値が得られていた場合、第2候補値算出部21bは、B2〜B9のいずれか1つの第2候補値を更新候補値とする。
【0043】
ここで、第2候補値算出部21bは、2番目に高い値を示す第1候補値を第2候補値として算出することが好ましい。同様に、更新候補値算出部21cは、2番目に高い値を示す第2候補値を更新候補値として算出することが好ましい。これにより、極力エアベース比率に基づく補正を行わない方向で処理を実行することができるためである。すなわち、第2候補値が大きいと更新候補値が大きくなり、更新候補値が大きいと初期値との変動比率も小さくなることから、センサ値の補正度合いについても小さくすることができるからである。
【0044】
なお、第1候補値算出部21aによる平均値の算出処理(第1候補値の算出処理)を、第2候補値の算出処理や更新候補値の算出処理に適用してもよい。同様に、第2候補値算出部21bによる2番目を採用する処理(第2候補値の算出処理)や更新候補値算出部21cによる2番目を採用する処理(更新候補値の算出処理)を、第1候補値の算出処理に適用してもよい。
【0045】
再度、
図2を参照する。エアベース比率算出部21は、上記のようにして得られる更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。
【0046】
図6は、
図2に示したエアベース比率算出部21により算出されるエアベース比率の一例を示すグラフである。更新候補値はガス感応体の被毒によって低下していく傾向がある。このため、エアベース比率算出部21により算出されるエアベース比率についても被毒が進行すると低い値となる。
【0047】
図6に示す例においては、100日及び200日経過時点におけるエアベース比率が約0.8強となっており、300日経過時点におけるエアベース比率が約0.7強となっており、400日経過時点におけるエアベース比率が約0.5強となっている。
【0048】
再度、
図2を参照する。センサ値補正部22は、ガスセンサ10のセンサ値を、エアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率で除することで、センサ値を補正するものである。ここで、センサ値補正部22は、エアベース比率算出部21により算出されたエアベース比率が所定範囲(例えば0.2<エアベース比率≦0.9)内に収まる場合のみに、センサ値を補正する。
【0049】
図7は、
図6に示した被毒の進行状態におけるセンサ値の推移を示すグラフである。
図7に示すように、検知対象ガスの濃度が0ppm、1000ppm、3000ppm、及び3500ppmの全ての場合において、被毒が進行していくと(日数が経過していくと)、センサ値(Rs/kΩ)が低下していく傾向にある。
【0050】
図8は、
図7に示したセンサ値をエアベース比率で補正したときの補正センサ値の推移を示すグラフである。
図8に示すように、エアベース比率で補正すると、検知対象ガスの濃度が0ppm、1000ppm、3000ppm、及び3500ppmの全ての場合において、補正センサ値(Rs/kΩ)は略横這いとなっている。
【0051】
このため、警報制御部23は、補正センサ値により警報状態を判断することで、ガス感応体の被毒時においても、より正確に警報状態を判断することができる。
【0052】
図9は、
図6に示した被毒の進行状態における警報点の推移を示すグラフである。
図9に示すように、0日(初期)において、第1段警報点は3000ppmとなっており、第2段警報点は3500ppmとなっている。すなわち、初期においては、検知対象ガスが3000ppmであるときに第1段警報が発せられ、検知対象ガスが3500ppmであるときに第2段警報が発せられる。
【0053】
しかし、100日経過すると、第1段警報点は約2000ppmとなっており、第2段警報点は約2500ppmとなっている。このため、100日経過時点においては、検知対象ガスが2000ppmしかない環境下において第1段警報が発せられ、検知対象ガスが2500ppmしかない環境下において第2段警報が発せられてしまう。
【0054】
また、200日経過すると、第1段警報点は約1300ppmとなっており、第2段警報点は約1700ppmとなっており、300日経過すると、第1段警報点は約1000ppmとなっており、第2段警報点は約1400ppmとなっている。このため、200日経過時点や300日経過時点では、これらの検知対象ガスしかない環境下において第1又は第2段警報が発せられてしまう。特に、400日経過すると、第1段警報点及び第2段警報点は共に1000ppmを下回ってしまう。すなわち、検定下限レベルを下回る結果となってしまう。
【0055】
図10は、
図7に示したセンサ値をエアベース比率で補正したときの警報点の推移を示すグラフである。
図10に示すように、センサ値をエアベース比率で補正することで、第1段警報点及び第2段警報点の低下を抑えることができ、400日経過時点において検定下限レベルを下回ることがないようになっている。すなわち、警報の鋭敏化を食い止める結果となっている。
【0056】
さらに、上記したように、第2所定期間P2は日単位の期間であり、更新候補値算出部21cは、N個の第2候補値のうち2番目からN−1番目に大きいセンサ値のいずれか1つを更新候補値とすることから、1日かけて室内を清掃してスプレーを使用した場合などにおいても適切な更新候補値が算出される。
【0057】
図11は、比較例に係るエアベース比率による補正の様子を示す図である。なお、
図11に示す例では、第3所定期間P3が無く、第2所定期間P2が1日であり、M個の第1候補値のうち2番目に大きい値が更新候補値とされる例を示している。
【0058】
比較例においては、第3所定期間P3が無く、第2所定期間P2が1日であることから、1日毎にエアベース比率が算出されることとなる。このため、例えば2日目に、1日かけて台所を清掃してスプレーを使用したとする。この場合、スプレーの影響によりセンサ値が1日中低下し続けることがある。このような場合、低下したセンサ値から更新候補値が算出されてしまい、エアベース比率についても小さい値となってしまう。このため、3日目には、小さいエアベース比率に基づいてセンサ値が補正されることとなり、警報の鈍化を招いてしまう。
【0059】
ところが、本実施形態に係るガス警報器1では、日単位の第2所定期間P2が採用されることから、第3所定期間P3については少なくとも3日以上となり、3日以上の結果から上記の如くエアベース比率が算出されることから、
図11に示すような警報の鈍化についても防止されている。
【0060】
次に、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法について説明する。
図12は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、エアベース比率の算出処理を示している。なお、
図12に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0061】
図12に示すように、制御部20は、まず所定時間Tが経過したか否かを判断する(S1)。所定時間Tが経過していないと判断した場合(S1:NO)、所定時間Tが経過したと判断するまで、この処理が繰り返される。
【0062】
所定時間Tが経過したと判断した場合(S1:YES)、第1候補値算出部21aは、ガスセンサ10からの信号に基づくセンサ値を記憶する(S2)。次に、第1候補値算出部21aは、第1所定期間P1が経過したかを判断する(S3)。第1所定期間P1が経過していないと判断した場合(S3:NO)、処理はステップS1に移行する。
【0063】
一方、第1所定期間P1が経過したと判断した場合(S3:YES)、第1候補値算出部21aは、ステップS2において記憶したセンサ値のうち、警報時のセンサ値を除外すると共に、除外したセンサ値のうち、最大値と最小値とを除き、センサ値の平均値を第1候補値として算出し記憶する(S4)。
【0064】
次いで、第2候補値算出部21bは、第2所定期間P2が経過したかを判断する(S5)。第2所定期間P2が経過していないと判断した場合(S5:NO)、処理はステップS1に移行する。
【0065】
一方、第2所定期間P2が経過したと判断した場合(S5:YES)、第2候補値算出部21bは、ステップS4にて算出して記憶された第1候補値のうち、2番目に大きい値を第2候補値として算出し記憶する(S6)。その後、更新候補値算出部21cは、第3所定期間P3が経過したかを判断する(S7)。
【0066】
第3所定期間P3が経過していないと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、第3所定期間P3が経過したと判断した場合(S7:YES)、更新候補値算出部21cは、ステップS6にて算出して記憶された第2候補値のうち、2番目に大きい値を更新候補値として算出する(S8)。
【0067】
その後、エアベース比率算出部21は、ステップS8にて算出された更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する(S9)。その後、
図12に示す処理は終了する。
【0068】
図13は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、警報判断処理を示している。なお、
図13に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
【0069】
図13に示すように、まず制御部20は、ガスセンサ10からの信号に基づくセンサ値を算出する(S10)。次に、制御部20は、現在のエアベース比率(
図12のステップS9で算出されたエアベース比率)が所定範囲であるか(例えば0.2<エアベース比率≦0.9であるか)を判断する(S11)。所定範囲内でないと判断した場合(S11:NO)、処理はステップS13に移行する。
【0070】
一方、所定範囲内であると判断した場合(S11:YES)、センサ値補正部22は、ステップS10にて算出したセンサ値を、エアベース比率により除することで、補正センサ値を算出する(S12)。
【0071】
その後、警報制御部23は、ステップS12にて算出された補正センサ値、又は、ステップS10にて算出したセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断する(S13)。このとき、警報制御部23は、補正センサ値又はセンサ値と第1段警報点及び第2段警報点とを比較して警報状態であるかを判断する。すなわち、警報制御部23は、補正センサ値又はセンサ値が第1段警報点以下となると警報状態であると判断し、更に第2段警報点以下となるとより緊急度が高い警報状態であると判断する。
【0072】
警報状態でないと判断した場合(S13:NO)、
図13に示す処理は終了する。一方、警報状態であると判断した場合(S13:YES)、警報制御部23は、警報音発生部30及び表示部40から警報出力させる(S14)。なお、ここでの警報出力の内容は、第1段警報点以下であるか、第2段警報点以下であるかによって変化させられる。その後、
図13に示す処理は終了する。
【0073】
このようにして、本実施形態に係るガス警報器1及びその制御方法によれば、L個のセンサ値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第1候補値を算出し、M個の第1候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて第2候補値を算出し、N個の第2候補値のうち、最大値及び最小値の少なくとも一方を除いて更新候補値を算出し、更新候補値と初期値とに基づいてエアベース比率を算出する。このように、ノイズによって極値的なセンサ値が得られていたとしても、第1候補値の算出によって、このような値による影響を緩和すると共に、第2候補値及び更新候補値の算出においても同様にこのような値による影響を緩和することができる。よって、3段階によるノイズ除去を行ったうえで得られる更新候補値に基づいてエアベース比率を算出することとなり、エアベース比率の算出精度をより向上させることができる。
【0074】
また、警報が出力されているときのセンサ値を第1候補値の算出に用いずにエアベース比率を算出するため、空気雰囲気におけるセンサ値であるか否かの専用処理を必要とせず、既存の警報判断を利用して空気雰囲気であることを特定してエアベース比率を算出することができる。
【0075】
また、第2所定期間P2は日単位の期間であり、N個の第2候補値のうち2番目からN−1番目に大きいセンサ値のいずれか1つを更新候補値とするため、1日かけて室内を清掃してスプレーを使用した場合など、警報は出力されないが日単位でセンサ値が全体的に変動する場合などにおいても、そのような日の第2候補値は1番目又はN番目に大きいセンサ値となり易く、このような値が更新候補値とされないことから、エアベース比率の算出精度をより一層向上させることができる。
【0076】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0077】
例えば、上記においては、検知対象となる還元性ガスがメタンガスである都市ガス向けのガス警報器1を例に説明したが、これに限らず、検知対象となるガスがプロパンガスやブタンガスなどであるLPガス向けのガス警報器であってもよい。また、ガス警報器1は、火災警報機能を更に有するガス火災警報器として構成されてもよい。
【0078】
さらに、上記実施形態ではガスセンサ10として半導体式ガスセンサを備えるガス警報器1を例に説明したが、ガスセンサ10は半導体式ガスセンサに限られるものではなく、エアベース値の変動時にセンサ値が変動する接触燃焼式ガスセンサなど、他のセンサであってもよい。
【0079】
加えて、上記では、ガスセンサ10から電圧信号を抵抗値換算した値をセンサ値としたが、これに限らず、電圧信号そのものをセンサ値としてもよい。この場合、上記説明においてセンサ値の大小関係の概念が逆になるなど、適宜処理内容が変わることはいうまでもない。また、センサ値は抵抗値や電圧信号に限らず、電圧信号を濃度換算した値であってもよい。すなわち、センサ値とは、出力される信号そのもの、又はその信号から求められる値であれば、特に上記に限られるものではない。