【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面上にシリカ微粒子を含むハードコート層を有し、上記ハードコート層の上記基材フィルム側と反対側面上にドライフィルム層を有する光学積層体であって、上記ハードコート層の上記ドライフィルム層側表面から上記シリカ微粒子が露出しており、
上記ハードコート層は、シランカップリング剤を含有し、上記ドライフィルム層は、
ドライ処理で成膜された反射防止層であり、上記シリカ微粒子が露出した上記ハードコート層表面に直接積層されており、上記ドライフィルム層を設ける前のハードコート層の上記ドライフィルム層が設けられる側の表面に凹凸形状が形成されており、上記ハードコート層の厚み方向の断面において、上記ドライフィルム側界面から厚み方向に厚さの10%までの範囲内で0.2μm×0.2μmの領域を任意に10カ所選択し、上記10カ所の領域における上記シリカ微粒子の存在比の平均値が30〜80%であり、かつ、上記10カ所の領域における上記シリカ微粒子の存在比の標準偏差が1〜7であり、X線光電子分光分析により測定した上記ハードコート層の上記基材フィルム側と反対側表面におけるケイ素原子の存在率Aが3〜10%であることを特徴とする光学積層体である。
【0010】
本発明の光学積層体において、上記ドライフィルム層を設ける前の上記ハードコート層の上記ドライフィルム層が設けられる側の表面に対し、測定視野1μm×1μmで測定した上記凹凸形状の算術平均粗さRaが0.5〜7.0nmであり、上記凹凸形状の凸部間距離の平均間隔が、10〜150nmかつ標準偏差が40nm以下であり、測定視野0.12mm×0.12mmで測定した上記凹凸形状の算術平均粗さRaが0.5〜7.0nmであることが好ましい。
また、上記ハードコート層は、
紫外線吸収剤を含有することが好まし
い。
また、上記紫外線吸収剤は、重量平均分子量が220〜1100のモノマー型紫外線吸収剤であることが好ましい。
また、上記ドライフィルム層は、屈折率2.2〜2.4の高屈折率層と屈折率1.43〜1.53の低屈折率層とが交互に合計4層以上積層されていることが好ましい。
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者らは、基材フィルム上にシリカ微粒子を含むハードコート層とドライフィルム層とが積層された光学積層体において、ハードコート層のドライフィルム層を形成する側の面上に特定の凹凸形状を形成することで、屋外において使用された場合においてもハードコート層とドライフィルム層との間の密着性が優れたものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の光学積層体は、基材フィルムの少なくとも一方の面上にシリカ微粒子を含むハードコート層を有する。
上記基材フィルムを構成する材料としては特に限定されず、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。なかでも、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられ、具体的には、トリアセチルセルロース(TAC)基材が好適に用いられる。
上記基材フィルムがTAC基材であると、その上にハードコート層を形成したとき、該ハードコート層を構成する成分の一部が浸透してなる浸透層を形成でき、基材フィルムとハードコート層との密着性及び該層間の屈折率差に起因した干渉縞の発生を抑制できる。
更に、上記基材フィルムがポリエステル系樹脂(PETやPEN)からなる場合、該基材フィルムは、面内に複屈折率を有し、リタデーションが3000nm以上であることが好ましい。このような基材フィルムであることで、本発明の光学積層体に干渉縞の発生を効果的に抑制できる。また、上記基材フィルムがポリエステル系樹脂からなる場合、リタデーションが3000nm未満の低い基材も用いることもできる。
【0013】
上記基材フィルムの厚さとしては、15〜200μmであることが好ましい。15μm未満であると、シワが発生しやすく、本発明の光学積層体を製造する際に、基材フィルム上にハードコート層を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。また、カールが大きくなり、鉛筆硬度も悪化しやすくなる。更に、ドライフィルム層積層時の熱によるシワも発生しやすくなる。一方、200μmを超えると、本発明の光学積層体を製造する際に、基材フィルムをうまくロール状にできなかったり、光学積層体の薄膜化、軽量化及び低コスト化に不利となったりすることがある。また、ドライフィルム層積層時に、基材フィルムからガス(水分や有機物等)が発生しやすくなり、ドライフィルム層の形成の阻害要因ともなることがある。上記基材フィルムの厚みは、より好ましい下限は40μm、より好ましい上限は125μmである。
【0014】
上記基材フィルムは、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化等のエッチング処理や下塗り処理が施されていてもよい。これらの処理が予め施されていることで、上記基材フィルム上に形成されるハードコート層との密着性を向上させることができる。また、ハードコート層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄等により、基材フィルム表面は、除塵、清浄化されていてもよい。
【0015】
本発明の光学積層体は、上記基材フィルム上にハードコート層が積層されている。
本発明において、上記ハードコート層とは、上記基材フィルムと後述するドライフィルム層との間に形成される有機物の硬化層、又は、無機物を含む有機物の硬化層である。なお、上記有機物及び無機物としては、後述するハードコート層に付与される機能に応じて適宜従来公知の材料が選択される。
このようなハードコート層としては、単一の層であってもよく、複数の層であってもよい。
また、上記ハードコート層は、例えば、帯電防止性能、屈折率調整機能、硬度調整機能等公知の機能が付与されていてもよい。
上記ハードコート層に付与される機能は、単一のハードコート層中に付与されていてもよく、複数の層に分割して付与されていてもよい。
【0016】
本発明の光学積層体において、上記ハードコート層は、後述するドライフィルム層を設ける前のハードコート層の該ドライフィルム層が設けられる側の表面に凹凸形状が形成されている。このような凹凸形状を有することで本発明の光学積層体は、ハードコート層と後述するドライフィルム層との密着性が優れたものとなる。
図1(A)に本発明の光学積層体のTEM断面写真の一例と
図1(B)に従来の光学積層体のTEM断面写真の一例とを示すが、いずれのTEM断面写真においても、黒く表された二つの層がある部分がドライフィルム層であり、下側の黒い層の下方の層がハードコート層である。両者を比較すると、本発明に係るハードコート層とドライフィルム層との界面がシリカ微粒子の露出よる円弧形状であるのに対し、従来の光学積層体ではハードコート層とドライフィルム層との界面が直線状であり、このことからも、シリカ微粒子の露出が密着性の向上に寄与することがわかる。
なお、上記TEM断面写真は、装置名:EM−002B(トプコンテクノハウス製)で、加速電圧:200kV、倍率:29000倍で得ることができる。
【0017】
このような層間密着性に優れる本発明の光学積層体は、クロスハッチ試験にて剥離が生じないものである。
上記クロスハッチ試験としては、例えば、上記ドライフィルム層の表面に1mm×1mmのクロスハッチ(升目)を100個形成し、初期におけるクロスハッチ面状態を観察し、形成したクロスハッチ面に対して、エチルアルコールを塗布したワイプを荷重250g/cm
2にて押し付けて、10cmの距離を往復500回摺動させるアルコールワイプ摺動試験後、クロスハッチ面状態を観察し、更に、形成したクロスハッチ面に対して、キセノン照射(キセノンアークランプ、7.5kW)−時間60hの環境投入後にアルコールワイプ摺動試験を行い、クロスハッチ面状態を観察する。
【0018】
上記クロスハッチ試験の評価は、クロスハッチ面の表面状態を観察することで判断するが、ハードコート層とドライフィルム層との層間密着性に優れる本発明の光学積層体では、
図2(A)に示したように、クロスハッチに剥離が生じない。一方、従来のハードコート層のようにハードコート層とドライフィルム層との層間密着性が劣るものであると、
図2(B)に示したようにクロスハッチの一部に剥離が生じたり、
図2(C)に示したようにクロスハッチの全部に剥離が生じたりする。
なお、
図2(A)〜(C)は、クロスハッチ試験を行った後のクロスハッチ面の表面状態を示す顕微鏡写真である。
【0019】
本発明において、測定視野1μm×1μmで測定した上記凹凸形状の算術平均粗さRaが好ましくは0.5〜7.0nm、より好ましくは5.0nm以下、更に好ましくは4.0nm以下である。上記測定視野1μm×1μm(以下、ミクロ視野ともいう)で測定した算術平均粗さRaが0.5nm未満であったり、7.0nmを超える値であったりすると、ハードコート層とドライフィルム層との密着性が劣ることがある。また、このような凹凸形状を有することで上記ハードコート層表面の易滑性が好適に担保され、本発明の光学積層体は、例えば、ブロッキング性にも優れたものとすることができる。
【0020】
また、上記凹凸形状の凸部間距離の平均間隔が、10〜150nmかつ標準偏差が40nm以下であることが好ましい。上記凸部間距離の平均間隔が10nm未満であると、優れたブロッキング防止性が得にくくなることがあり、一方、150nmを超えると、密着性向上に必須の緻密な、ばらつきの小さい凹凸形状が得にくくなることがある。上記凸部間距離の平均間隔のより好ましい下限は30nm、より好ましい上限は100nmである。
本発明においては、上記ハードコート層の凹凸形状の凸部間距離の平均間隔が上記範囲であり、その上で、凹凸形状のばらつきが小さく均一であることが、該ハードコート層とドライフィルム層との密着性向上に重要である。上記凹凸形状の凸部間距離の標準偏差が40nmを超えると、ハードコート層とドライフィルム層との密着性が劣ることがある。
なお、本明細書において、上記凹凸形状の凸部間距離の平均間隔と標準偏差とは、以下の方法にて測定した値である。
(1)走査型プローブ顕微鏡:SPM(Scanning Probe Microscope)で撮影した上記ハードコート層の凹凸表面画像を、高さをそろえるためにZ軸を30nm設定とした画像とする。着色処理を、Z軸方向の15〜30nmが白着色設定とした。なお、0〜15nmまでは、装置が設定している自動着色状態とした。このような着色設定とすることにより、上記ハードコート層の凹凸表面画像の凹凸形状の輪郭が判断しやすい状態になる。
(2)上記凹凸表面画像から任意の1μm四方の領域を選択し、少なくとも対向する辺を横切る任意の線を引き、上記ハードコート層の凹凸表面画像の凹凸形状の輪郭との交点と交点の距離を実測し、これを凸部間距隔とする。輪郭線が途切れていた場合は、その線を延長し、交点とする。なお、上記実測は、上記凹凸表示画像をA4用紙に可能な限り拡大し、手作業で実施してもよいし、PC上で実施してもよい。
(3)上記(2)と同様にして上記領域の別の箇所に任意の線を合計6本引き、同様にして凸部の間隔を計測し、任意の線6本分の凸部間距隔の全てから平均値を求める。
上記凹凸形状が緻密であった場合には、n数は多数となり、上記凹凸形状のばらつきが大きい場合は、n数は少数となるが、任意の線6本分を測定することによって、n数は通常15以上となる。
(4)全ての凸部間距離データから標準偏差σを算出する。
なお、上記凸部が上記直線に接触するか否かは、上記凸部の頭頂部から10nmまでの領域が上記直線に交わっている場合に「直線に接触する凸部」とする。
【0021】
このように、本発明の光学積層体では、ハードコート層の表面に極めて微細で凸部の高さの揃った凹凸形状が形成されている。このような特殊な凹凸形状が形成されていることで、耐ブロッキング性及び基材フィルムに対する密着性に加えて、該凹凸形状側に形成するドライフィルム層との密着性が優れ、更に、紫外線のある環境下に置いた後の上記ハードコート層とドライフィルム層との間の密着性が優れたものとなる。
【0022】
本発明の光学積層体は、上記ドライフィルム層を設ける前の上記ハードコート層の該ドライフィルム層が設けられる側の表面に対し、測定視野0.12mm×0.12mm(以下、マクロ視野ともいう)で測定した凹凸形状の算術平均粗さRaが0.5〜7.0nmであることが好ましく、より好ましくは5.0nm以下、更に好ましくは4.0nm以下である。
本発明の光学積層体のハードコート層表面は、ミクロ視野では上述した所定の凹凸形状が形成されており、上記マクロ視野においても、所定の凹凸形状が形成されているからこそ、平滑性が保持できるとともに、ブロッキング防止性に優れ、かつ、屋外において使用された場合であっても、層間の密着性が優れたものにできる。
本発明は、測定視野が1μm×1μmであっても、10μm×10μmであっても、0.12mm×0.12mmであっても、同じレベルのRaであることが好ましい。このような凹凸形状がハードコート層表面に形成されていることで、該ハードコート層は、平滑性に優れる一方で、わずかな凹凸があることで、ブロッキング性にも優れたものとなる。
なお、上記ハードコート層の表面が平滑でない場合、視野範囲によって上記形状変化が出てくる。
【0023】
なお、本明細書において、上記算術平均粗さRa等の上記ミクロ視野及びマクロ視野における凹凸形状のパラメータの測定は、例えば、SPM−9600、島津製作所製、走査型プローブ顕微鏡[SPM(Scanning Probe Microscope)]を用いて行う。
すなわち、まず、装置設定条件を定め、安定撮影するために第1サイクルの観察測定を行う。実際計測に用いるのは、観察条件が整った第2サイクルの観察測定結果である。
レバーチューンボタンを押し、針の電圧を自動で調整する。
測定ボタンを押すと、針がサンプルに近づき、観察開始ボタンを押すと、針がサンプル測定開始する。
測定したまま、Z表示の範囲(縦軸範囲)を、Zレンジ;20nmに設定する。
更に、測定したまま視野を目的範囲(1μm×1μm又は0.12mm×0.12mm)に設定する。
1サイクル終了を待ち、2サイクル目を撮影する。
画像ファイルは自動的に物性などが算出され、その結果毎に保存されるシステムであり、複数のフォルダーができる。
その中の1つ、高さトレースというフォルダーに格納されているデータを読み取ると、面粗さ解析結果として、算術平均粗さRa、最大高さRz、及び、十点平均粗さRzjisの測定値を得ることができる。
上記走査型プローブ顕微鏡によると、触針式表面粗さ測定機と同様の粗さ(2次元)パラメータ測定が可能である。
なお、上記各パラメータ定義は、走査型プローブ顕微鏡 SPM−9600 アップグレードキット取扱説明書(SPM−9600 2016年2月、194−195頁)に記載の通りであり、具体的には以下の通りである。
[算術平均粗さRa]
粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式によって求められる値。
【数1】
L:基準長さ
[最大高さRz]
粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値。
[十点平均粗さRzjis]
粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から縦倍率の方向に測定した、最も高い山頂から5番目までの山頂の標高(Yp)の絶対値の平均値と、最も低い谷底から5番目までの谷底の標高(Yv)の絶対値の平均値との和を求めた値。
粗さ曲線上に合計10点の山頂、谷底が存在しない場合もある。この場合は、数値の後の()内に山頂、谷底の合計点数を表示する。なお、上記取扱説明書中では下記式のように「Rz」と記載されているが、これは「Rzjis」を意味している。
【数2】
【0024】
また、上記ドライフィルム層を設ける前の上記ハードコート層の該ドライフィルム層が設けられる側の表面は、上記Rzjisは、好ましくは5〜50nmであり、より好ましい上限は30nmであり、上記Rzは好ましくは10〜30nm、より好ましい上限は20nmである。
上記Rzjis、Rz及びRaの各パラメータを満たすことで、真空にひくスパッタ時のブロッキング防止性が得られながらも、平滑性が維持でき、かつ、屋外密着性が優れたものとなる。
上記Raを制御することで、上記ハードコート層の表面凹凸形状の概観を理解できるが、上記Rzによって、上記ハードコート層表面の凹凸形状の高さ方向と深さ方向の限度値が決まり、上記Rzjisによって、上記ハードコート層表面の凹凸形状の高さ及び深さの限度値の平均値が分かる。上記Raに加えて、上記Rzjis、Rzの各パラメータを所定の範囲に制御することで、上述したRaだけでは不可能な上記ハードコート層表面の凹凸形状の緻密な制御が可能となる。
【0025】
また、本発明の光学積層体は、上記ドライフィルム層を設ける前の上記ハードコート層の該ドライフィルム層が設けられる側の表面に対し、ナノインデンターを用いたナノインデンテーション法により得られた荷重−押込み深さ曲線が連続的な変化を示すことが好ましい。上記「荷重−押込み深さ曲線が連続的な変化を示す」とは、上記荷重−押込み深さ曲線に変曲点や特異点が存在しないことを意味しており、このような荷重−押込み深さ曲線が連続的な変化を示す本発明の光学積層体は、ハードコート層とドライフィルム層との密着性を優れたものとすることができる。
上記ナノインデンターとしては、例えば、フィッシャー・インスツルメント社製、ピコデンターHM−500が挙げられる。
また、上記ナノインデンターを用いたナノインデンテーション法により荷重−押込み深さ曲線を得る方法としては、具体的には、例えば、押し込み:300nm、LoadingRate:10nm/s、圧子:Berkovich三角錘圧子(稜間角115°)の測定条件で、横軸に押し込み深さ/nm、縦軸に荷重/mNというグラフを記載する方法が挙げられる。
なお、上記ハードコート層中にシリカ微粒子が存在しない場合、上記ナノインデンターを用いたナノインデンテーション法により得られた荷重−押込み深さ曲線に特異点を生じることがある。
【0026】
また、上記ハードコート層の厚み方向の断面において、上記ドライフィルム側界面から厚み方向に厚さの10%までの範囲内で0.2μm×0.2μmの領域を任意に10カ所選択し、上記10カ所の領域における上記シリカ微粒子の存在比の平均値が30〜80%、好ましくは40〜70%であり、かつ、上記10カ所の領域における上記シリカ微粒子の存在比の標準偏差が1〜7である。上記シリカ微粒子の存在比の平均値が30%未満であると、上記ハードコート層表面は平滑ではあるが、ブロッキング防止に必要な凹凸が形成されず、また、屋外での密着性も得難くなり、80%を超えると、ブロッキング防止性は非常に優れるが、上記ハードコート層表面の平滑性が失われ、好ましい上記シリカ微粒子の存在比の標準偏差範囲に制御することも難しくなり、屋外での密着性も悪影響がある。
なお、基材フィルム側表面の場合は、ドライフィルム側界面とは異なり、シリカ微粒子の存在比が30%未満でもよい。ただし、90%を超えると、基材フィルムとの密着性に悪影響がある。また、屈折率に影響があるため干渉縞の原因にもなりやすい。
上記シリカ微粒子の存在比は、STEMによる上記ハードコート層の厚み方向の断面を、画像処理ソフトImage−Pro Plusで解析し、0.2μm×0.2μmの領域におけるシリカ面積の比を算出して求めた。上記シリカ面積は、0.2μm×0.2μmの領域におけるシリカ微粒子をコントラストの異なる色(濃色)のオブジェクトとして上記画像処理ソフト上で画像を開き、上記ソフトのメニューの“計算”で二値化し、面積の和を計算して求めた。同様にして求めたシリカ面積の比を合計10カ所で求め平均値を上記シリカ微粒子の存在比とした。
【0027】
上記ハードコート層は、シリカ微粒子を含有するものであり、該シリカ微粒子は、上記ハードコート層のドライフィルム層側表面から露出している。このような構成によれば、後述するドライフィルム層がハードコート層のバインダー樹脂に強く付着するとともに、露出したシリカ微粒子にさらに強固に付着するため、ハードコート層とドライフィルム層との密着性が向上し、本発明の光学積層体の耐擦傷性を向上させることができる。
なお、上記シリカ微粒子が上記ハードコート層の上記ドライフィルム層側表面(以下、単に表面ともいう)から露出しているとは、上記ハードコート層の表面からシリカ微粒子の一部が突出した状態で、かつ、上記シリカ微粒子の突出した部分に上記ハードコート層を構成するバインダー樹脂が含まれていない状態を意味する。
【0028】
上記シリカ微粒子の露出方法としては、後述するようにハードコート層のバインダー樹脂を選択的にエッチング可能であれば特に限定されず、例えば、グロー放電処理、プラズマ処理、イオンエッチング、アルカリ処理などを用いることができる。
【0029】
上記ハードコート層表面に露出されたシリカ微粒子の平均粒径に対する突出割合の平均値は、60%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以上30%以下である。シリカ微粒子の突出割合が大きすぎるとシリカ微粒子がバインダー樹脂から剥がれ易くなり、ハードコート層とドライフィルム層との密着性が低下してしまい、突出割合が小さすぎると密着性向上の効果が充分に得られない。
【0030】
また、上記シリカ微粒子は、平均粒子径が7〜80nmで単一粒子の状態でハードコート層中に分散されていることが好ましい。このようなシリカ微粒子が分散されていることで、ハードコート層の表面にミクロ視野において上述した微細な凹凸を形成でき、また、ハードコート層の高硬度化とともに、後述するドライフィルム層との密着性の向上を図ることができる。上記平均粒子径が7nm未満であると、単一粒子の状態で分散させることが難しく、80nmを超えると、上述したミクロ視野におけるRaの値を超える大きな凹凸形状が形成されることがあり、ハードコート層とドライフィルム層との密着性が劣ることがある。なお、ハードコート層において、特にドライフィルム層が積層される側で、このような分散性があることが重要である。また、本発明の光学積層体のヘイズが悪化することもある。上記シリカ微粒子の平均粒子径のより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は60nmである。
上記シリカ微粒子は、未処理のままでも、表面処理されていてもよい。
【0031】
上記ハードコート層は、ケイ素原子含有有機化合物及び/又は紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
上記ケイ素原子含有有機化合物及び/又は紫外線吸収剤を含有することで、本発明の光学積層体は、上述したキセノンライトを用いた耐候性試験後のハードコート層とドライフィルム層との密着性に優れたものとなる。これは、ハードコート層とドライフィルム層との密着性の低下は、該ハードコート層に未反応の紫外線硬化型のモノマー・オリゴマー・ポリマー成分(メタアクリレート基、アクリレート基、ビニル基、エポキシ基、チオール基などの官能基)が残留しており、該モノマー成分が紫外線環境下におかれたことで反応し、ハードコート層の硬化収縮が生じることが原因の一つであり、上記ケイ素原子含有有機化合物及び/又は紫外線吸収剤を含有することで、該残留したモノマー成分が反応するのを防止でき、その結果、ハードコート層とドライフィルム層との密着性の向上を図ることができると考えられる。
【0032】
上記紫外線吸収剤は、ハードコート層中に、バインダー樹脂(固形分100%)とシリカ微粒子(固形分100%)とを合わせた組成物100質量部に対し、0.25〜10質量部の範囲で含有されていることが好ましい。0.25質量部未満であると、ハードコート層とドライフィルム層との密着性の改善効果が分かり辛く、10質量部を超えると、本発明の光学積層体の透明性が劣ることがあり、更には、ハードコート層自身の硬度が悪化し、鉛筆硬度などが悪化してしまうことがある)。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は0.5質量部、より好ましい上限は5質量部である。本発明の光学積層体を屋外などで長時間、長期間使用した場合、ハードコート層が劣化し硬化収縮してしまうことで、ドライフィルム層との密着性が劣化してしまうが、上記紫外線吸収剤を添加した場合には、これを防止できよりよい光学積層体とできる。
【0033】
上記紫外線吸収剤は、重量平均分子量が220〜1100のモノマー型紫外線吸収剤を主成分として含むことが好ましい。なお、上記主成分とは、複数の紫外線吸収剤を含む場合、モノマー型紫外線吸収剤の含有量が質量比で50%を超えることを意味する。
上記ハードコート層にポリマー型紫外線吸収剤のみを使用した場合、ポリマー型紫外線吸収剤自体に弱い骨格のものが多く、ハードコート層自身の硬度が悪化し、鉛筆硬度などが悪化することがある。
また、モノマー型紫外線吸収剤とポリマー型紫外線吸収剤とを併用する場合、ポリマー型紫外線吸収剤の含有量が多くなると、ハードコート層形成時に用いられる後述するハードコート層用組成物中のバインダー樹脂のモノマー成分(多官能モノマー)の割合が減り、ハードコート層の硬度が悪化するだけでなく基材フィルムとの密着性が悪化することがある。更に、ハードコート層は、高硬度化や屈折率調整、その他凹凸形状形成等を目的としてシリカ微粒子が添加されることがあるが、例えば、上記紫外線吸収剤が疎水性のポリマー型紫外線吸収剤を含むと、該ポリマー型紫外線吸収剤がシリカ微粒子の分散性に影響を及ぼすことがある。
このようなモノマー型紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、TINUVIN99−2、TINUVIN384−2、TINUVIN900、TINUVIN1130(BASF社製)、アデカスタブLA29、アデカスタブLA31、アデカスタブLA32、アデカスタブLA36(ADEKA社製)、KEMISOLB73(ケミプロ化成社製)などが挙げられ、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤として、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479(BASF社製)やアデカスタブLA46、アデカスタブLAF70(ADEKA社製)などが挙げられる。
なお、モノマー型紫外線吸収剤は、通常、光学積層体の保管環境や使用環境変化など経時でブリードアウトの問題が生じることがあるが、本発明の光学積層体では、上記ハードコート層上に後述する緻密なドライフィルム層を積層するため、該モノマー型紫外線吸収剤のブリードアウトを好適に抑制することができる。上記重量平均分子量が1100以上の紫外線吸収剤の場合、ハードコート層自身の硬度悪化が起こる場合がある。
【0034】
上記ケイ素原子含有有機化合物は、反応性ケイ素原子含有有機化合物であることが好ましい。このような反応性ケイ素原子含有有機化合物としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられ、上記ハードコート層がシランカップリング剤を含むことで、上記ハードコート層の表面に特定の形状の凹凸形状、特に凸部の高さの揃った凹凸形状を形成できる。更に、上記シランカップリング剤は、ハードコート層に含まれるシリカ微粒子とも相性が良い。また、シランカップリング剤は、ハードコート層中の露出したシリカ微粒子とも反応性が良い。そのため、ドライフィルム層との密着性をより優れたものにできると考えられる。
上記シランカップリング剤は、さらに好ましくは、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、チオール基を分子内に持つ反応性シランカップリング剤である。このような反応性シランカップリング剤は、ハードコート層に含まれる樹脂成分と反応して架橋構造を形成できブリードアウト等を抑制できる。
【0035】
本発明の光学積層体は、X線光電子分光分析により測定したハードコート層の基材フィルム側と反対側表面におけるケイ素原子の存在率Aが3〜10%、好ましくは3〜7%である。また、上記X線光電子分光分析により測定した上記ハードコート層の上記基材フィルム側表面におけるケイ素原子の存在率Bが、上記ケイ素原子の存在率Aよりも小さいことが好ましい。すなわち、上記ハードコート層中で上記ケイ素原子が偏って含まれていることが好ましい。このようにケイ素原子が偏って含まれていることで、上述したハードコート層の表面凹凸形状を好適に形成できると考えられる。また、このケイ素原子の存在率Bは、極めて0に近い、又は、0(ハードコート層の上記基材フィルム側表面にケイ素原子が存在しない)であってもよいが、上記ケイ素原子の存在率Aの1/3〜1/10であることが好ましい。
なお、上記X線光電子分光分析によるケイ素原子の存在率は以下の方法で測定できる。
存在率A:基材フィルム/ハードコート層までの中間積層体をつくり、(70℃×1分乾燥後、UV積算光量200mJ/cm
2で硬化して製造)ハードコート層の最表面の分析によってC、O、Siを測定し、合計を100とした場合のSi割合(%)をケイ素原子の存在率Aとした。
存在率B:上記中間積層体は密着性が優れ、基材フィルムからハードコート層が剥離できないため、存在率B測定用に、ハードコート層が基材フィルムから剥離できる基材、例えば、未処理PETや未処理COPを用いて存在率Aと同条件で基材/ハードコート層を作製した後、ハードコート層側にプラスチックテープ(品番)を貼り、基材フィルム/ハードコート層を剥離することで、ハードコート層の基材フィルム側表面を出し、サンプルとして存在率Aと同様に求めた。
なお、上記X線光電子分光分析としては、例えば、ESCA (Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)として、Kratos社製 AXIS−NOVAを用い、以下の測定条件が挙げられる。測定時に角度は付けず、通常角度(90度)とした。
X線源:モノクロAl
加速電圧:15kV
エミッション電流:10mA
測定面積:300×700μmφ
【0036】
上述のように本発明の光学積層体では、上記ハードコート層中でドライフィルム層側界面付近にケイ素原子が偏在されていることが好ましい。上記ハードコート層が上述したシランカップリング剤を含む場合にこのような状態でケイ素原子が偏在させることができる。これは、上記シランカップリング剤がいわゆるレベリング剤と同様の働きをした結果であると考えられる。
なお、上記シランカップリング剤の分子量が小さい場合、後述するハードコート層用組成物を用いてTAC基材に塗布したときに、浸透性の溶剤とともに、TAC基材へ浸透する場合があり、この場合は上述した効果を発揮できないことがある。そのため、本発明においては、少なくとも重量平均分子量が1000以上であるシランカップリング剤を含むことが好ましい。好ましい添加量は、バインダー樹脂(固形分100%)及びシリカ微粒子(固形分100%)を合わせた組成物を100質量部とした場合、2〜15質量部が好ましい。添加量が多すぎる場合には、外観が白化する原因となり、硬度が低下したり、Raも大きくなってしまう。更に、基材とハードコート層界面の密着性低下もありえる。2質量部未満の場合は、ドライフィルム層が優れた密着性を得るためのケイ素原子存在率が得られない。
【0037】
低分子量のシランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学社製のKBM503、KBM5803、KBM4803、KBM403、KBE503、KBM502、KBM1083、等が挙げられる。
また、オリゴマー(分子量1000以上)である上記シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学社製のX411805、X411810、KR513、KR516、KR5167(主鎖:SiOSi、側鎖:UV反応基とアルコキシドとを含む)や、X121048、X121050、X121154、X12981S、X12984S、(主鎖:MMA、側鎖:紫外線反応基とアルコキシドとを含む)、等が挙げられる。
特に、トリアセチルセルロース(TAC)基材の場合は、オリゴマータイプが好ましい。これは、例えば、他のPETなどでは浸透はしにくいが、TAC基材の場合、低分子量のシランカップリング剤は、TAC基材へ浸透し、ハードコート層の表面に存在しにくい傾向があるからである。
特に、オリゴマータイプで主鎖に、−Si−O−Si−のシロキサン構造がある場合、ドライフィルム層側界面付近に偏在しやすくなる傾向があり、好ましい。
ケイ素原子の存在率A中には、シリカ粒子起因およびシランカップリング剤起因などのケイ素原子が含まれている。これらのケイ素原子総合量が密着性に有効である。
【0038】
上記ハードコート層に含まれるバインダー樹脂としては、透明性のものが好ましく、例えば、紫外線又は電子線により硬化する樹脂である電離放射線硬化型樹脂が紫外線又は電子線の照射により硬化したものであることが好ましい。
なお、本明細書において、「樹脂」とは、特に言及しない限り、モノマー、オリゴマー、ポリマー等も包含する概念である。
【0039】
上記電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、アクリレート系等の官能基を有する化合物等の1又は2以上の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。1の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等を挙げることができる。2以上の不飽和結合を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能化合物等を挙げることができる。なかでも、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)及びペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)が好適に用いられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートを指すものである。また、本発明では、上記電離放射線硬化型樹脂として、上述した化合物をPO(プロピレンオキサイド)、EO(エチレンオキサイド、CL(カプロラクトン)等で変性したものも使用できる。
【0040】
上記化合物のほかに、不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等も上記電離放射線硬化型樹脂として使用することができる。
【0041】
上記電離放射線硬化型樹脂は、溶剤乾燥型樹脂(熱可塑性樹脂等、塗工時に固形分を調整するために添加した溶剤を乾燥させるだけで、被膜となるような樹脂)と併用して使用することもできる。
上記電離放射線硬化型樹脂と併用して使用することができる溶剤乾燥型樹脂としては特に限定されず、一般に、熱可塑性樹脂を使用することができる。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース誘導体、シリコーン系樹脂及びゴム又はエラストマー等を挙げることができる。上記熱可塑性樹脂は、非結晶性で、かつ有機溶媒(特に複数のポリマーや硬化性化合物を溶解可能な共通溶媒)に可溶であることが好ましい。特に、透明性や耐候性という観点から、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、脂環式オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(セルロースエステル類等)等が好ましい。
【0042】
また、上記ハードコート層は、熱硬化性樹脂を含有していてもよい。
上記熱硬化性樹脂としては特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。
【0043】
上記ハードコート層は、例えば、上述したシリカ微粒子、ケイ素原子含有化合物及び/又は紫外線吸収剤、上記バインダー樹脂のモノマー成分及び溶剤等を含有するハードコート層用組成物を、基材フィルム上に塗布し、乾燥させて形成した塗膜を電離放射線照射等により硬化させることで形成することができる。
【0044】
上記ハードコート層用組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アルコール(例、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、PGME、エチレングリコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0045】
上記ハードコート層用組成物は、更に光重合開始剤を含有することが好ましい。
上記光重合開始剤としては特に限定されず、公知のものを用いることができ、具体例には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、チオキサントン類、プロピオフェノン類、ベンジル類、ベンゾイン類、アシルホスフィンオキシド類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。なかでも、ドライフィルム層を積層する際、熱によって、揮発・昇華しにくい光重合開始剤の使用が好まれる。
また、上記光重合開始剤としては、分子内に開裂点が2箇所以上有する化合物も好適である。例えば、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(IRGACURE127)や、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}(ESACURE ONE)が挙げられる。
【0046】
上記光重合開始剤としては、上記バインダー樹脂がラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等を単独又は混合して用いることが好ましい。また、上記バインダー樹脂がカチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、上記光重合開始剤としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることが好ましい。
【0047】
上記ハードコート層用組成物における上記光重合開始剤の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。0.5質量部未満であると、形成するハードコート層のハードコート性能が不充分となることがあり、10.0質量部を超えると、逆に硬化を阻害し、鉛筆硬度などが悪化する恐れがある。また、ドライフィルム層を積層する際、光重合開始剤の未反応物や反応残渣由来の成分が、揮発・昇華してドライフィルム層成膜を阻害し、所望とする機械・光学特性能が発現しなかったり、揮発・昇華した光重合開始剤由来の成分が、光学積層体に付着し欠点となる恐れがあり、品質が悪化したりすることがある。
【0048】
上記ハードコート層用組成物中における原料の含有割合(固形分)としては特に限定されないが、通常は5〜70質量%、特に、上記ハードコート層用組成物の塗工適正上、20〜60質量%とすることが好ましい。上記ハードコート層用組成物は、数μm厚の塗工を行うため、固形分が低すぎる(すなわち、含有する溶剤の割合が高い)と、塗膜の乾燥がしづらく、形成するハードコート層に膜厚ムラが発生しやすい。一方、上記ハードコート層用組成物の固形分が高すぎると、レベリング性が悪く、形成するハードコート層に膜厚ムラ及び外観悪化が生じやすくなる。
【0049】
上記ハードコート層用組成物には、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御する等の目的に応じて、従来公知の分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤等を添加していてもよい。
上記レベリング剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素系界面活性剤等が、ハードコート層がベナードセル構造となることを回避することから好ましい。溶剤を含む樹脂組成物を塗工し、乾燥する場合、塗膜内において塗膜表面と内面とに表面張力差等を生じ、それによって塗膜内に多数の対流が引き起こされる。この対流により生じる構造はベナードセル構造と呼ばれ、形成するハードコート層にゆず肌や塗工欠陥といった問題の原因となる。
また、上記ベナードセル構造は、ハードコート層の表面の凹凸が大きくなりすぎて本発明の光学積層体の外観を損なう恐れがある。前述のようなレベリング剤を用いると、この対流を防止することができるため、欠陥やムラのないハードコート層が得られるだけでなく、ハードコート層表面の凹凸形状の調整も容易となる。
【0050】
上記ハードコート層用組成物の調製方法としては各成分を均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ニーダー、ミキサー等の公知の装置を使用して行うことができる。
【0051】
上記ハードコート層用組成物を光透過性基材上に塗布する方法としては特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、ダイコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の公知の方法を挙げることができる。
上記の方法のいずれかでハードコート層用組成物を塗布した後、形成した塗膜を乾燥させるために加熱されたゾーンに搬送され各種の公知の方法で塗膜を乾燥させ溶剤を蒸発させる。ここで溶剤相対蒸発速度、固形分濃度、塗布液温度、乾燥温度、乾燥風の風速、乾燥時間、乾燥ゾーンの溶剤雰囲気濃度等を選定することにより、シリカ微粒子の分散状態を調整できる。
特に、乾燥条件の選定によってシリカ微粒子の分散状態を調整する方法が簡便で好ましい。具体的な乾燥温度としては、50〜100℃、30秒〜2分の範囲内で適宜調整した乾燥処理を、1回又は複数回行うことでシリカ微粒子の分散状態を所望の状態に調整することができる。
【0052】
また、上記乾燥後の塗膜を硬化させる際の電離放射線の照射方法としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯等の光源を用いる方法が挙げられる。
また、紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0053】
本発明の光学積層体において、上記ハードコート層は、例えば、硬度が、JIS K5600−5−4(1999)による鉛筆硬度試験(荷重500g、速度1mm/秒)において、H以上、であることが好ましく、2H以上であることがより好ましい。
上記ハードコート層の厚さとしては、1〜20μmであることが好ましい。1μm未満であると、上記光透過性基材からのオリゴマー等の低分子量成分の析出を充分に防止できず、また、ハードコート層が傷付きやすくなることがあり、紫外線硬化型のバインダー樹脂(モノマー類)のTAC基材等の基材フィルムへの浸透成分が少ないため、基材フィルムとハードコート層との密着性の悪化、干渉縞の悪化による視認性の悪化が起こることがある。ハードコート層の厚さが20μmを超えると、ハードコート層の薄膜化を図れないだけでなく、ハードコート層が割れやすくなったり、カールしたり、シワが発生したりすることがある。また、ドライフィルム積層時にハードコート層から低分子の有機成分や水が放出されドライフィルム層の積層を阻害し、ハードコート層とドライフィルム層との密着性が不充分になることがある。更に、上記ハードコート層にカールが発生すると、ドライフィルム層積層後にドライフィルム層にもクラック発生することがある。
上記ハードコート層の厚さのより好ましい範囲は2〜15μmであり、更に好ましくは、4〜10μmである。なお、上記ハードコート層の厚さは、断面顕微鏡観察により測定することができる。
また、上記ハードコート層は、屈折率が1.45〜1.60であることが好ましい。上記ハードコート層の屈折率が上記範囲外であると、基材フィルム等との屈折率差が顕著となり、干渉縞発生の原因となることがある。
【0054】
本発明の光学積層体は、上記基材フィルムのハードコート層側と反対側面上に、別のハードコート層を有していてもよく、この場合、本発明の光学積層体のカールの発生を抑制でき、また、製造過程における傷発生を低減させることができ、更に基材フィルムからのガス発生を抑制できる。
【0055】
上記別のハードコート層は、上述したハードコート層と同様の材料を用いて形成することができる。このようにして上記別のハードコート層を形成することで、本発明の光学積層体の耐ブロッキング性や易滑性の効果を高めることができる。
【0056】
本発明の光学積層体は、上記ハードコート層の基材フィルム側と反対側面上にドライフィルム層を有する。
本発明において、上記ドライフィルム層は、反射防止層(AR層)として機能する層であり、該ドライフィルム層としては、異なる屈折率を有する屈折率層を2層以上積層したものを用いることができる。
本発明の光学積層体では、上記ドライフィルム層は、上記シリカ微粒子が露出した上記ハードコート層表面に直接積層されている。このような構成とすることで、上記ハードコート層とドライフィルム層との密着性が極めて優れたものとなる。
なお、上記ドライフィルム層は、密着層と反射防止層(AR層)とから構成されていてもよい。
【0057】
上記密着層は、上記ハードコート層のシリカ微粒子露出面に成膜され、シリカ微粒子と同種の酸素欠損状態の金属酸化物もしくは金属からなる。
上記密着層の酸化度は、密着層上に成膜される機能層に応じて適宜設計することができ、その膜厚としては10nm以下であることが好ましい。
【0058】
各屈折率層の成膜方法としては、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法などのドライ処理が各種考案されていてどのような方法で成膜しても充分な反射防止性能は得られるが、本発明の光学積層体を画像表示装置に適用するときに、最表面、特にタッチパネルの最表面として充分な機械特性、耐久性、耐環境性が必要とされることからスパッタリング法が好ましく、更に生産性を高めるためハードコート層をロール状にして真空槽内で巻き取りながら成膜するロールコーティング法が最も好ましい。
【0059】
上記ドライフィルム層を構成する屈折率層のうち、比較的屈折率の高い屈折率層(以下、高屈折率層ともいう)は、屈折率が2.2〜2.4であることが好ましく、その材料としては、比較的高い屈折率を持つ光透過性材料であることが好ましく、例えば、SiN、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、ITO及びこれらを主成分とした合金酸化物が一般的に用いられる。すなわち、上述のSiN、TiO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、ITOを主成分としてその特性に影響を与えない範囲でSi、Sn、Zr、Al等の金属を添加した合金酸化物が挙げられる。
なお、上述のTa
2O
5は原料が高価であること、TiO
2は、短波長領域において吸収が出易く特にスパッタリング法でドライフィルム層を形成する際には生産性が悪くばらつきも出やすいことから、Nb
2O
5もしくはSiNが好ましい。
【0060】
比較的屈折率の低い屈折率層(以下、低屈折率層ともいう)は、屈折率が1.43〜1.53であることが好ましく、例えば、MgF
2、SiO
2等、又は、これに微量の添加物を混入した材料が用いられるが、上記低屈折率層の形成にスパッタリング法を用いる場合、SiO
2が最も好ましい。
【0061】
なお、ハードコート層上又は密着層上に反射防止膜を形成する前に、両者の密着性を向上させるため、真空槽内でプラズマ処理をして表面を改質するとよい。さらにその後、密着層を被着するのが好ましい。
【0062】
上記密着層としては、CrOx(x=1〜2)、SiNx等の金属酸化物、金属窒化物を用いることができる。特に、スパッタリング法により成膜されたSiOx(x=1〜2)の還元気味Si酸化物を3nm以上、10nm以下程度施したものが好ましく用いられる。SiOxが3nm未満では充分な密着性が得られないことがあり、10nm以上ではSiOx膜の光吸収により充分な透過率が得られないことがある。
【0063】
上記ドライフィルム層のハードコート層側と反対側面には防汚層が形成されていてもよい。上記防汚層としては、例えば、3〜5nm程度の厚みの公知の防汚層を湿式法で形成するのが好ましい。3nm未満では充分な防汚性能が得られず、厚さが5nmを越えると光学特性に影響を与えることがある。
【0064】
上記ドライフィルム層は、高屈折率層と低屈折率層とが交互に合計4層以上積層されている構成が好ましい。
このような構成のドライフィルム層は、特に反射防止性能に優れるとともにハードコート層に対する密着性にも優れたものとなる。
上記高屈折率層及び低屈折率層は、具体的には、厚み10〜200nmで、屈折率2.2〜2.4であることが好ましく、上記低屈折率層は、厚み10〜200nmで、屈折率1.43〜1.53であることが好ましい。
このような高屈折率層と低屈折率層とが交互に合計4層以上積層された構成とすることで、上記高屈折率層及び上記低屈折率層の厚みは、高屈折率層が20〜70nm、低屈折率層が20〜120nmであることがより好ましい。
【0065】
本発明の光学積層体は、上記高屈折率層、上記ハードコート層及び上記低屈折率層は、それぞれの屈折率が下記式(1)の関係を満たすことが好ましい。
高屈折率層の屈折率>ハードコート層の屈折率>低屈折率層の屈折率 (1)
【0066】
本発明の光学積層体において、上記低屈折率層、上記高屈折率層及び上記導電層の膜厚は、TEM、STEM断面観察写真で任意の2点を選択し、厚みを測定し、同じ作業を同じサンプルの別画面において5回実施し、合計10点分の膜厚の平均値が膜厚の値(nm)として算出される。
なお、上記低屈折率層、上記高屈折率層及び上記導電層以外の膜厚についても、nmオーダーの薄膜であれば、上述した測定方法を用いて膜厚が算出される。
また、本発明の光学積層体において、上記低屈折率層及び上記高屈折率層の屈折率は、380nm〜780nmの波長領域における屈折率を一定とした場合に、分光光度計により測定した反射スペクトルと、フレネルの式を用いた薄膜の光学モデルから算出したスペクトルとをフィッティングさせることにより算出される。
【0067】
本発明の光学積層体は、長尺シートがロール状に巻回された巻回体とすることができる。本発明の光学積層体の長尺シートの巻回体は、光透過性基材として長尺シートのロール状巻回体を用い、上記ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層及び導電層を、いずれもロール・トゥ・ロール法により形成することができる。このような巻回体の形成にあたっては、タッチパネル用ハードコートフィルムの表面に、弱粘着層を備えた保護フィルムをセパレータとして貼り合わせた上で、ロール状に巻回してもよいが、本発明の光学積層体は、耐ブロッキング性や易滑性が改善できるため、上記保護フィルムを用いることなく光学積層体の長尺シートの巻回体を形成することができる。