特許第6746441号(P6746441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6746441コーティング法及びコーティング膜並びにタービンシュラウド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746441
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】コーティング法及びコーティング膜並びにタービンシュラウド
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20200817BHJP
   C04B 41/87 20060101ALI20200817BHJP
   F01D 5/28 20060101ALI20200817BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20200817BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20200817BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20200817BHJP
   F01D 11/02 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   C04B41/89 A
   C04B41/87 K
   F01D5/28
   F01D9/02 102
   F02C7/00 C
   F02C7/00 D
   F01D25/00 L
   F01D11/02
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-175520(P2016-175520)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-39705(P2018-39705A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2019年6月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP) 革新的構造材料「酸化物系軽量耐熱部材の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514275772
【氏名又は名称】三菱重工航空エンジン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 峰明
(72)【発明者】
【氏名】栗村 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田麥 あづさ
(72)【発明者】
【氏名】花田 忠之
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−247722(JP,A)
【文献】 特開平07−310106(JP,A)
【文献】 特開平09−067662(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/129591(WO,A1)
【文献】 特開2002−266603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/85−41/91
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含む粗粒比率が40%以上のスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させるスラリー付着工程と、
前記スラリーが付着された前記母材を熱処理してボンドコートを形成するボンドコート形成工程と、
前記ボンドコート上にセラミックスを溶射してトップコートを形成するトップコート形成工程と、
を有し、
前記酸化物系セラミックマトリックス複合材料は、アルミナ・シリカ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、前記粗粒セラミックスと前記微粒セラミックスは、アルミナ系粉体である
ことを特徴とするコーティング法。
【請求項2】
酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含む粗粒比率が40%以上のスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させるスラリー付着工程と、
前記スラリーが付着された前記母材を熱処理してボンドコートを形成するボンドコート形成工程と、
前記ボンドコート上にセラミックスを溶射してトップコートを形成するトップコート形成工程と、
を有し、
前記酸化物系セラミックマトリックス複合材料は、純アルミナ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、前記粗粒セラミックスと前記微粒セラミックスは、アルミナ系粉体及びジルコニア系粉体である、
ことを特徴とするコーティング法。
【請求項3】
酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含む粗粒比率が40%以上のスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させるスラリー付着工程と、
前記スラリーが付着された前記母材を熱処理してボンドコートを形成するボンドコート形成工程と、
前記ボンドコート上にセラミックスを溶射してトップコートを形成するトップコート形成工程と、
を有し、
前記トップコートは、ジルコニアアブレーダブルトップコートである、
ことを特徴とするコーティング法。
【請求項4】
前記スラリー付着工程は、
前記母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1スラリーを付着させる第1スラリー付着工程と、
前記第1スラリーの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが前記第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2スラリーを付着させる第2スラリー付着工程と、
を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコーティング法。
【請求項5】
前記第1スラリーは、粗粒比率が60%〜80%の範囲にあり、前記第2スラリーは、粗粒比率が40%〜60%の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載のコーティング法。
【請求項6】
酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含む粗粒比率が40%以上のコーティング材が表面側に向けて粗粒比率が低くなるように焼結されたボンドコートと、
前記ボンドコート上にセラミックスが溶射されて形成されたトップコートと、
を備え
前記酸化物系セラミックマトリックス複合材料は、アルミナ・シリカ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、前記粗粒セラミックスと前記微粒セラミックスは、アルミナ系粉体である
ことを特徴とするコーティング膜。
【請求項7】
酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含む粗粒比率が40%以上のコーティング材が表面側に向けて粗粒比率が低くなるように焼結されたボンドコートと、
前記ボンドコート上にセラミックスが溶射されて形成されたトップコートと、
を備え
前記酸化物系セラミックマトリックス複合材料は、純アルミナ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、前記粗粒セラミックスと前記微粒セラミックスは、アルミナ系粉体及びジルコニア系粉体である、
ことを特徴とするコーティング膜。
【請求項8】
酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含む粗粒比率が40%以上のコーティング材が表面側に向けて粗粒比率が低くなるように焼結されたボンドコートと、
前記ボンドコート上にセラミックスが溶射されて形成されたトップコートと、
を備え
前記トップコートは、ジルコニアアブレーダブルトップコートである、
ことを特徴とするコーティング膜。
【請求項9】
前記ボンドコートは、
粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1コーティング材が焼結された第1ボンドコートと、
前記第1ボンドコートの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが前記第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2コーティング材が焼結された第2ボンドコートと、
を備えることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか一項に記載のコーティング膜。
【請求項10】
内面に請求項6から請求項9のいずれか一項に記載のコーティング膜が設けられることを特徴とするタービンシュラウド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ガスタービンのシュラウドの内面にコーティング膜を形成するコーティング法、このコーティング法により形成されたコーティング膜、コーティング法によりコーティング膜が設けられたタービンシュラウドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヘリコプターやジェット機などの航空機エンジンとしてガスタービンが使用されている。この航空用のガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンにより構成されている。そのため、空気取入口から取り込まれた空気を圧縮機により圧縮することで高温・高圧の圧縮空気を生成し、燃焼器によりこの圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼することで高温・高圧の燃焼ガスを生成し、この燃焼ガスによりタービンを駆動する。そして、ヘリコプターの場合、このタービンの駆動力によりロータを回転し、ジェット機の場合、排気ガスのエネルギにより推力を得る。
【0003】
このガスタービンでは、その効率を向上させるために燃焼器での燃焼温度を高く設定しており、高温の燃焼ガス(排気ガス)に晒されるタービンの動翼、静翼、シュラウドなどは、その表面に遮熱コーティング膜(TBC:Thermal Barrier Coating)が設けられている。遮熱コーティング膜とは、母材の表面にボンドコートを介してトップコートが設けられたものであり、トップコートは、熱伝導率の小さい溶射材を溶射することで形成する。
【0004】
ところで、航空機エンジンの高効率化のためには、軽量で且つ耐熱性の優れた材料を利用することが求められる。そこで、金属系耐熱材料の特性を凌駕するセラミックマトリックス複合材料(CMC:Ceramics Matrix Composites)を適用することが検討されている。即ち、CMCで製作されたシュラウドの内面に耐熱性コーティング層が形成される。この場合、CMCとトップコート(例えば、ジルコニアトップコート)は、それぞれの熱膨張係数が相違することから、CMCとトップコートとの間に中間の熱膨張係数を有するボンドコートを介在させることで熱応力を低減させている。しかし、CMCにアルミナコーティング材を溶射してボンドコートを形成すると、アルミナコーティング材が施工直後にアモルファスとなり、使用温度で結晶化してクラックを生じてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、耐久性が高いボンドコートを形成する方法として、粉末スラリーを塗布もしくはデッピングした後に焼結する方法がある。このコーティング方法として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載されたコーティング方法は、微粒アルミナ粉を分散媒及び分散剤によって分散処理した後、粗粒アルミナ粉を混合し、生成したコーティング材料のスラリーを基材の表面に塗布して乾燥させた後、熱処理するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−330958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のコーティング方法は、微粒アルミナ粉と粗粒アルミナ粉を混合して生成したコーティング材料のスラリーを基材の表面に塗布して乾燥させた後に熱処理するものである。微粒アルミナ粉に対して粗粒アルミナ粉を混合すると、熱処理時の焼結収縮を抑制することができるものの、粗粒アルミナ粉によりボードコートの内部での粒子間の結合力が弱くなり、ボンドコートの表面にコーティング材を溶射するとき、トップコートがボンドコートと共に剥離してしまうという問題が生じる。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するものであり、耐熱性及び密着性の向上を図るコーティング法及びコーティング膜並びにタービンシュラウドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明のコーティング法は、酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させるスラリー付着工程と、前記スラリーが付着された前記母材を熱処理してボンドコートを形成するボンドコート形成工程と、前記ボンドコート上にセラミックスを溶射してトップコートを形成するトップコート形成工程と、を有することを特徴とするものである。
【0010】
従って、酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むスラリーを付着させた後に熱処理してボンドコートを形成し、このボンドコート上にセラミックスを溶射してトップコートを形成する。このとき、ボンドコートは、スラリーの表面側に向けて粗粒比率が低くなるようにスラリーが付着される。そのため、ボンドコートは、母材側で粗粒セラミックスが多く含まれるものとなり、焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート側で粗粒セラミックスが少なくなることで、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜の耐熱性及び密着性を向上することができる。
【0011】
本発明のコーティング法では、前記スラリー付着工程は、前記母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1スラリーを付着させる第1スラリー付着工程と、前記第1スラリーの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが前記第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2スラリーを付着させる第2スラリー付着工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
従って、母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスが第1比率で混合された第1スラリーを付着させ、第1スラリーの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2スラリーを付着させることで、母材側の第1ボンドコートとトップコート側の第2ボンドコートとの粗粒比率を容易に異ならせることができ、コーティング作業の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明のコーティング法では、前記第1スラリーは、粗粒比率が60%〜80%の範囲にあり、前記第2スラリーは、粗粒比率が40%〜60%の範囲にあることを特徴としている。
【0014】
従って、第1ボンドコートと第2ボンドコートの各粗粒比率を最適値に設定することで、ボンドコート全体で焼結収縮により発生する応力を緩和することができると共に、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート形成時におけるエロージョンを抑制することができる。
【0015】
本発明のコーティング法では、前記酸化物系セラミックマトリックス複合材料は、アルミナ・シリカ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、前記粗粒セラミックスと前記微粒セラミックスは、アルミナ系粉体であることを特徴としている。
【0016】
従って、ボンドコートのコーティング材として、母材とトップコートの各熱膨張係数の中間位置にある熱膨張係数のセラミックスを適用することとなり、焼結時に発生する熱応力の影響を低減することができる。
【0017】
本発明のコーティング法では、前記酸化物系セラミックマトリックス複合材料は、純アルミナ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、前記粗粒セラミックスと前記微粒セラミックスは、アルミナ系粉体及びジルコニア系粉体であることを特徴としている。
【0018】
従って、ボンドコートのコーティング材として、母材とトップコートの各熱膨張係数の中間位置にある熱膨張係数のセラミックスを適用することとなり、焼結時に発生する熱応力の影響を低減することができる。
【0019】
本発明のコーティング法では、前記トップコートは、ジルコニアアブレーダブルトップコートであることを特徴としている。
【0020】
従って、トップコートをジルコニアアブレーダブルトップコートとすることで、トップコートが自己摩耗型衝撃緩衝機能を得ることとなり、周辺部材との接触時にトップコートが摩耗して衝撃力を緩和することができ、周辺部材の摩耗や破損を防止することができる。
【0021】
また、本発明のコーティング膜は、酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むコーティング材が表面側に向けて粗粒比率が低くなるように焼結されたボンドコートと、前記ボンドコート上にセラミックスが溶射されて形成されたトップコートと、を備えることを特徴とするものである。
【0022】
従って、ボンドコートは、表面側に向けて粗粒比率が低くなるようにコーティング材が焼結されたことで、母材側で粗粒セラミックスが多く含まれるものとなり、焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート側で粗粒セラミックスが少なくなることで、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高光度となり、トップコート形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜の耐熱性及び密着性を向上することができる。
【0023】
本発明のコーティング膜では、前記ボンドコートは、粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1コーティング材が焼結された第1ボンドコートと、前記第1ボンドコートの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが前記第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2コーティング材が焼結された第2ボンドコートと、を備えることを特徴としている。
【0024】
従って、母材側の第1ボンドコートとトップコート側の第2ボンドコートとの粗粒比率を容易に異ならせることができ、コーティング作業の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0025】
また、本発明のタービンシュラウドは、内面に前記コーティング膜が設けられることを特徴とするものである。
【0026】
従って、ボンドコートは、母材側で焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート側でセラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜の耐熱性及び密着性を向上することができ、タービンシュラウドの耐久性を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のコーティング法及びコーティング膜並びにタービンシュラウドによれば、酸化物系セラミックマトリックス複合材料により構成される母材上にボンドコートとトップコートを形成するとき、ボンドコートは、スラリーの表面側に向けてセラミックスの粗粒比率が低くなるので、母材側で粗粒セラミックスが多く含まれるものとなり、焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート側で粗粒セラミックスが少なくなることで、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜の耐熱性及び密着性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態の航空用エンジンのシュラウドを表す要部断面図である。
図2図2は、本実施形態のコーティング膜を表す断面図である。
図3図3は、コーティング方法を表すフローチャートである。
図4図4は、コーティング材の粗粒比率に対する収縮率を表すグラフである。
図5図5は、コーティング材の粗粒比率に対する相対密度を表すグラフである。
図6図6は、ボンドコートにおける実施例と比較例との評価を表す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に添付図面を参照して、本発明に係るコーティング法及びコーティング膜並びにタービンシュラウドの好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0030】
図1は、本実施形態の航空用エンジンのシュラウドを表す要部断面図である。
【0031】
本実施形態において、ガスタービンとしての航空用エンジンは、ファンケーシングと本体ケーシングとを有し、ファンケーシング内にファンが収容され、本体ケーシング内に圧縮機と燃焼器とタービンが収容されて構成されている。
【0032】
圧縮機は、低圧コンプレッサと高圧コンプレッサとを有している。燃焼器は、圧縮機より圧縮空気の長方向の下流側に配置され、周方向に複数配置されている。タービンは、燃焼器より燃焼ガスの流れ方向の下流側に配置され、高圧タービンと低圧タービンとを有している。
【0033】
図1に示すように、本体ケーシング11は、円環形状をなし、内側に円環形状をなす燃焼器ライナ12が一体的に設けられており、この燃焼器ライナ12の内側に主流路13が形成されている。そして、本体ケーシング11と燃焼器ライナ12は、その間に冷却用の次空気流路14が設けられている。本体ケーシング11(燃焼器ライナ12)は、内側の主流路13にタービンロータ15が配置されている。このタービンロータ15は、燃焼器からの燃焼ガスの膨張によって駆動されると共に、高圧コンプレッサを連動して駆動するものである。本体ケーシング11は、タービンロータ(動翼)15の外側に位置して円環形状をなすシュラウド16が設けられ、燃焼器ライナ12に支持されている。
【0034】
図2は、本実施形態のコーティング膜を表す断面図である。図3は、コーティング方法を表すフローチャートである。
【0035】
図2に示すように、本実施形態のコーティング膜31は、母材32の表面に第1ボンドコート41と第2ボンドコート42とからなるボンドコート33が形成され、ボンドコート33の表面にトップコート34が形成されて構成されている。上述した航空用エンジンにて、母材32は、本体ケーシング11の内側に配置されるシュラウド16であり、シュラウド16の内周面にコーティング膜31が設けられる。
【0036】
母材32は、酸化物系セラミックマトリックス複合材料(以下、酸化物CMCと称する。)であって、アルミナ・シリカ(Al−SiO)系酸化物CMC、または、純アルミナ(Al)系酸化物CMCが適用される。
【0037】
ボンドコート33は、第1ボンドコート41と第2ボンドコート42とから構成されている。このボンドコート33は、母材32上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させ、このスラリーが付着された母材32を熱処理することで、スラリーを焼結させて形成する。本実施形態では、粗粒比率が異なる2つのボンドコート41,42によりボンドコート33を形成している。
【0038】
トップコート34は、ジルコニアアブレーダブル(自己摩耗型衝撃緩衝材)トップコートであり、ボンドコート33上にセラミックスとしてのジルコニアを溶射してトップコート34を形成する。この場合、溶射粉末として、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)を適用した。但し、その他に、酸化イッテルビウム(Yb2O3)で部分安定化させたジルコニア(ZrO2)であるイッテルビア安定化ジルコニア(YbSZ)などを用いてもよい。
【0039】
母材32として、アルミナ・シリカ系酸化物CMCを適用した場合、このアルミナ・シリカ系酸化物CMCの熱膨張率が6×10−6/Kであり、トップコート34の熱膨張率が10×10−6/Kであることから、ボンドコート33のコーティング材としての粗粒セラミックス及び微粒セラミックスは、熱膨張率が8×10−6/Kとその中間にあるアルミナ系粉体(Al)とする。
【0040】
また、母材32として、純アルミナ系酸化物CMCを適用した場合、このアルミナ系酸化物CMCの熱膨張率が8×10−6/Kであり、トップコート34の熱膨張率が10×10−6/Kであることから、ボンドコート33のコーティング材としての粗粒セラミックス及び微粒セラミックスは、熱膨張率が9×10−6/Kとその中間にあるアルミナ系粉体(Al)及びジルコニア系粉体(YSZ)の混合物とする。この場合、粗粒セラミックスとしてアルミナ系粉体及びジルコニア系粉体を適用し、微粒セラミックスとしてアルミナ系粉体を使用したり、粗粒セラミックスとしてジルコニア系粉体を適用し、微粒セラミックスとしてアルミナ系粉体を使用したり、粗粒セラミックスとしてアルミナ系粉体を適用し、微粒セラミックスとしてアルミナ系粉体及びジルコニア系粉体を使用したりするなど、その組み合わせは多種多様である。但し、アルミナ系粉体とジルコニア系粉体の体積比率は、1:1が望ましい。
【0041】
更に、第1ボンドコート41は、粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1コーティング材が焼結されて形成されている。第2ボンドコート42は、粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2コーティング材が焼結されて形成されている。そのため、ボンドコート33は、粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むコーティング材が表面側に向けて粗粒比率が低くなるように焼結されて形成されたものとなる。ここで、粗粒セラミックスと微粒セラミックスとの関係は、粗粒セラミックスの粒子径が微粒セラミックスの粒子径の5倍以上であり、7倍以上が好ましい。
【0042】
即ち、ボンドコート33を形成する場合、酸化物系CMCにより構成される母材32上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させ、スラリーの乾燥後、母材32を熱処理して焼結される。
【0043】
この場合、ボンドコート33は、第1ボンドコート41と第2ボンドコート42とから構成されることから、母材32上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが第1比率で混合された第1スラリーを付着させ、第1スラリーの乾燥後、第1スラリーの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが第2比率で混合された第2スラリーを付着させ、第2スラリーの乾燥後、熱処理して焼結する。
【0044】
具体的に、第1スラリーは、粗粒比率(第1比率)が60%〜80%の範囲があることが望ましく、第2スラリーは、粗粒比率(第1比率)が40%〜60%の範囲にあることが望ましい。
【0045】
図4は、コーティング材の粗粒比率に対する収縮率を表すグラフで、図5は、コーティング材の粗粒比率に対する相対密度を表すグラフである。図4にて、Aは、コーティング材を1200℃で熱処理した場合の収縮率であり、Bは、コーティング材を1300℃で熱処理した場合の収縮率である。図5にて、Aは、コーティング材を1200℃で熱処理した場合の相対密度であり、Bは、コーティング材を1300℃で熱処理した場合の相対密度であり、Cは、コーティング材の熱処理前の相対密度である。ここで、コーティング材は、粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むスラリーである。また、相対密度とは、充填率である。
【0046】
図4に示すように、コーティング材を1200℃で熱処理した収縮率A及びコーティング材を1300℃で熱処理した収縮率Bのいずれも、粗粒比率が大きく(微粒セラミックスに対して粗粒セラミックスが多く)なると、収縮率が低下する傾向を表している。そして、一般に、セラミックスを熱処理してコーティング膜を形成する場合、収縮率を5%以下とすることが望ましく。3%以下にすることが最適である。今回の実験では、粗粒比率が40%以上の範囲で収縮率が5%以下となり、粗粒比率が50%〜80%の範囲で収縮率が最小値となった。
【0047】
図5に示すように、コーティング材の熱処理前の相対密度Cは、粗粒比率が大きく(微粒セラミックスに対して粗粒セラミックスが多く)なると相対密度が上昇し、所定の粗粒密度を超えると相対密度が低下する傾向を表している。また、コーティング材を1200℃で熱処理した相対密度A及びコーティング材を1300℃で熱処理した収縮率Bのいずれも、粗粒比率が大きく(微粒セラミックスに対して粗粒セラミックスが多く)なると相対密度が低下する傾向を表している。今回の実験では、コーティング材を熱処理する前及び熱処理した後の相対密度は、粗粒比率が50%〜80%の範囲で最も高くなった。
【0048】
ボンドコート33は、母材32の熱膨張率とトップコート34の熱膨張率の中間位置の熱膨張率のコーティング材が必要である。これは、ボンドコート33を形成するコーティング材を熱処理したり、エンジンを起動・停止したりするとき、熱膨張差による熱応力を緩和させる必要があるからである。一方で、セラミックスの粗粒比率が高くなると、粒子間の結合力が弱くなり、ボンドコート33の表面にコーティング材を溶射するとき、トップコート34がボンドコート33と共に剥離してしまうおそれがある。
【0049】
そのため、本実施形態では、ボンドコート33を、母材32側の第1ボンドコート41とトップコート34側の第2ボンドコート42とから構成する。そして、第1ボンドコート41におけるコーティング材のセラミックスの粗粒比率を60%〜80%の範囲とし、第2ボンドコート42におけるコーティング材のセラミックスの粗粒比率を40%〜60%の範囲としている。なお、望ましくは、第1ボンドコート41におけるコーティング材のセラミックスの粗粒比率を65%〜75%の範囲とし、第2ボンドコート42におけるコーティング材のセラミックスの粗粒比率を45%〜55%の範囲とする。
【0050】
ここで、本実施形態のコーティング法について、図3により詳細に説明する。
【0051】
本実施形態のコーティング法において、図3に示すように、ステップS11にて、スラリーコーティング材を作製する。具体的に、粗粒セラミックスとしてのアルミナ系粉末(平均粒径3.4μm)と、粗粒セラミックスとしての凝集粉末(平均粒径0.7μm)と、微粒セラミックスとしてのアルミナ系粉末(平均粒径0.16μm)を利用する。そして、第1スラリーとして、粗粒アルミナ系粉末と粗粒凝集粉末と微粒アルミナ系粉末を、体積比4:3:3(粗粒比率7:3)で混合し、焼結助剤として硝酸塩(MgO)を500massppm添加し、粉末濃度を25体積%とし、蒸留水を媒体として数時間(例えば、4時間)ボールミル混合を行う。このとき、分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム塩を微量添加する。また、第2スラリーとして、粗粒アルミナ系粉末と粗粒凝集粉末と微粒アルミナ系粉末を、体積比3:2:5(粗粒比率5:5)で混合し、焼結助剤として硝酸塩(MgO)を500massppm添加し、粉末濃度を25体積%とし、蒸留水を媒体として数時間(例えば、4時間)ボールミル混合を行う。このとき、分散剤として、ポリカルボン酸アンモニウム塩を微量添加する。
【0052】
ステップS12にて、ボンドコーティング第1層(第1スラリー付着)を製膜し、ステップS13にて、ボンドコーティング第2層(第2スラリー付着)を製膜する。具体的に、スラリーコーティングは、ディップコーティング装置を用いる。即ち、母材32となる酸化物CMCを第1スラリーの溶液中に所定速度で浸漬し、所定時間浸漬させた後、所定の速度で引き上げることで、母材32の表面にボンドコーティング第1層を製膜する。そして、母材32の表面に形成されたボンドコーティング第1層が乾燥すると、同様に、ボンドコーティング第1層が形成された酸化物CMC(母材32)を第2スラリーの溶液中に所定速度で浸漬し、所定時間浸漬させた後、所定の速度で引き上げることで、ボンドコーティング第1層の表面にボンドコーティング第2層を製膜する。そして、母材32の表面に形成されたボンドコーティング第2層を乾燥させる。
【0053】
母材32の表面にボンドコーティング第1層とボンドコーティング第2層が積層されると、ステップS14にて、この母材32を、例えば、電気炉に入れ、1200℃で数時間(例えば、4時間)にわたって熱処理し、ボンドコーティング第1層とボンドコーティング第2層を焼結する。
【0054】
ボンドコーティング第1層とボンドコーティング第2層が焼結されることで、母材32の表面に第1ボンドコート41と第2ボンドコート42からなるボンドコート33が形成されると、ステップS15にて、プラズマ溶射装置を用いてトップコートを溶射により形成する。具体的に、溶射粉末に溶媒を混合した懸濁液をプラズマ溶射ガンに供給し、プラズマ溶射ガンが供給された懸濁液をプラズマジェットを用いて加熱・加速し、溶融またはそれに近い状態にして母材32のボンドコート33の表面に吹き付けることで、トップコート34を形成する。
【0055】
以下に、第1ボンドコート41及び第2ボンドコート42における粗粒比率や第2ボンドコート42の有無に応じたコーティング膜の評価について説明する。図6は、ボンドコートにおける実施例と比較例との評価を表す表である。
【0056】
図6に示すように、実施例1は、第1ボンドコート(ボンドコーティング第1層)41及び第2ボンドコート(ボンドコーティング第1層)42を有し、第1ボンドコート41の粗粒比率が70%(粗粒/微粒比7:3)に設定され、第2ボンドコート42の粗粒比率が50%(粗粒/微粒比5:5)に設定されたものである。実施例2は、第1ボンドコート(ボンドコーティング第1層)41及び第2ボンドコート(ボンドコーティング第1層)42を有し、第1ボンドコート41の粗粒比率が70%(粗粒/微粒比7:3)に設定され、第2ボンドコート42の粗粒比率が40%(粗粒/微粒比4:6)に設定されたものである。実施例3は、第1ボンドコート(ボンドコーティング第1層)41及び第2ボンドコート(ボンドコーティング第1層)42を有し、第1ボンドコート41の粗粒比率が60%(粗粒/微粒比6:4)に設定され、第2ボンドコート42の粗粒比率が50%(粗粒/微粒比5:5)に設定されたものである。
【0057】
一方、比較例1は、第1ボンドコート(ボンドコーティング第1層)を有し、第1ボンドコートの粗粒比率が50%(粗粒/微粒比5:5)に設定されたものである。比較例2は、第1ボンドコート(ボンドコーティング第1層)を有し、第1ボンドコートの粗粒比率が70%(粗粒/微粒比7:3)に設定されたものである。比較例3は、第1ボンドコート(ボンドコーティング第1層)及び第2ボンドコート(ボンドコーティング第1層)を有し、第1ボンドコートの粗粒比率が70%(粗粒/微粒比7:3)に設定され、第2ボンドコートの粗粒比率が30%(粗粒/微粒比3:7)に設定されたものである。
【0058】
実施例1,2,3は、いずれもボンドコート33の成膜状況は良好(〇)であり、トップコート34の成膜状況は良好(〇)であることから、コーティング膜31の判定も良好(〇)となる。一方、比較例1は、ボンドコートの成膜状況として、立割れが発生して判定(△)となり、トップコートの成膜状況は形成直後は良好(〇)であったものの、数日後に剥離(×)が発生したことから、コーティング膜の判定も不良(×)となる。比較例2は、ボンドコートの成膜状況は良好(〇)であるが、トップコートの成膜状況は溶射中に剥離(×)が発生したことから、コーティング膜の判定も不良(×)となる。比較例3は、ボンドコートの成膜状況として、大きな立割れが発生して判定が不良(×)となり、トップコートの成膜状況は形成直後は良好(〇)であったものの、数日後に剥離(×)が発生したことから、コーティング膜の判定も不良(×)となる。
【0059】
以上のようなコーティング膜の評価結果から、本実施形態のコーティング膜31は、ボンドコート33を、母材32側の第1ボンドコート41とトップコート34側の第2ボンドコート42とから構成し、第1ボンドコート41におけるセラミックスの粗粒比率(第1比率)を60%〜80%の範囲と、第2ボンドコート42におけるセラミックスの粗粒比率(第1比率)を40%〜60%の範囲としており、良好な耐熱性及び密着性を確保できる。即ち、第1ボンドコート41は、粗粒セラミックスが多く含まれるため、粗粒セラミックスが母材32の凹部に真空含浸することで侵入して焼結されることで、凹部を適正に修復すると共に焼結収縮により発生する応力が緩和される。一方、第2ボンドコート42は、第1ボンドコート41より粗粒セラミックスが少なくなることで、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート34の形成時におけるエロージョンが抑制される。
【0060】
このように本実施形態のコーティング法にあっては、酸化物系CMCにより構成される母材32上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むスラリーを表面側に向けて粗粒比率が低くなるように付着させるスラリー付着工程と、スラリーが付着された母材32を熱処理してボンドコート33を形成するボンドコート形成工程と、ボンドコート33上にセラミックスを溶射してトップコート34を形成するトップコート形成工程とを有する。
【0061】
従って、ボンドコート33は、スラリーの表面側に向けて粗粒比率が低くなるようにスラリーが付着される。そのため、母材32側で粗粒セラミックスが多く含まれるものとなり、焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート34側で粗粒セラミックスが少なくなることで、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート34の形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜の耐熱性及び密着性を向上することができる。
【0062】
本実施形態のコーティング法では、スラリー付着工程は、母材32上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1スラリーを付着させる第1スラリー付着工程と、第1スラリーの表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2スラリーを付着させる第2スラリー付着工程とを有する。従って、母材32側の第1ボンドコート41とトップコート34側の第2ボンドコート42との粗粒比率を容易に異ならせることができ、コーティング作業の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0063】
本実施形態のコーティング法では、第1スラリーは、粗粒比率が60%〜80%の範囲にあり、第2スラリーは、粗粒比率が40%〜60%の範囲にある。従って、第1ボンドコート41と第2ボンドコート42の各粗粒比率を最適値に設定することで、ボンドコート33全体で焼結収縮により発生する応力を緩和することができると共に、セラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート34形成時におけるエロージョンを抑制することができる。
【0064】
本実施形態のコーティング法では、酸化物系CMCは、アルミナ・シリカ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、粗粒セラミックスと微粒セラミックスは、アルミナ系粉体である。従って、ボンドコート33のコーティング材として、母材32とトップコート34の各熱膨張係数の中間位置にある熱膨張係数のセラミックスを適用することとなり、焼結時に発生する熱応力の影響を低減することができる。
【0065】
本実施形態のコーティング法では、酸化物系CMCは、純アルミナ系酸化物系セラミックマトリックス複合材料であり、粗粒セラミックスと微粒セラミックスは、アルミナ系粉体及びジルコニア系粉体である。従って、ボンドコート33のコーティング材として、母材32とトップコート34の各熱膨張係数の中間位置にある熱膨張係数のセラミックスを適用することとなり、焼結時に発生する熱応力の影響を低減することができる。
【0066】
本実施形態のコーティング法では、トップコート34は、ジルコニアアブレーダブルトップコートである。従って、トップコート34が自己摩耗型衝撃緩衝機能を得ることとなり、周辺部材との接触時にトップコート34が摩耗して衝撃力を緩和することができ、周辺部材の摩耗や破損を防止することができる。
【0067】
また、本実施形態のコーティング膜にあっては、酸化物系CMCにより構成される母材32上に粗粒セラミックスと微粒セラミックスを含むコーティング材が表面側に向けて粗粒比率が低くなるように焼結されたボンドコート33と、ボンドコート33上にセラミックスが溶射されて形成されたトップコート34とを備える。従って、ボンドコート33は、母材32側で焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート34側でセラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート34形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜31の耐熱性及び密着性を向上することができる。
【0068】
本実施形態のコーティング膜では、ボンドコート33は、粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが予め設定された第1比率で混合された第1コーティング材が焼結された第1ボンドコート141と、第1ボンドコート41の表面に粗粒セラミックスと微粒セラミックスとが第1比率より粗粒比率が低い第2比率で混合された第2コーティング材が焼結された第2ボンドコート42とを備える。従って、母材32側の第1ボンドコート41とトップコート34側の第2ボンドコート42との粗粒比率を容易に異ならせることができ、コーティング作業の簡素化及び低コスト化を図ることができる。
【0069】
また、本実施形態のタービンシュラウドにあっては、内面にコーティング膜31が設けられる。従って、コーティング膜31におけるボンドコート33は、母材32側で焼結収縮により発生する応力を緩和することができ、トップコート34側でセラミックスにおける粒子間の結合力が高くなって高硬度となり、トップコート34形成時におけるエロージョンを抑制することができる。その結果、コーティング膜31の耐熱性及び密着性を向上することができ、タービンシュラウドの耐久性を向上することができる。
【0070】
なお、上述した実施形態では、母材32側の第1ボンドコート41とトップコート34側の第2ボンドコート42とボンドコート33を構成し、第1ボンドコート41におけるセラミックスの粗粒比率より第2ボンドコート42におけるセラミックスの粗粒比率を低く設定したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、ボンドコートを3層以上にしてもよく、また、ボンドコートの粗粒比率が母材32側からトップコート34側に向けて徐々に低くなるようにしてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、母材をタービンシュラウドとしたが、この構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
11 本体ケーシング
12 燃焼器ライナ
16 シュラウド
31 コーティング膜
32 母材
33 ボンドコート
34 トップコート
41 第1ボンドコート
42 第2ボンドコート
図1
図2
図3
図4
図5
図6