(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
杭圧入装置で杭を地盤に初期圧入する際の反力を得るための反力架台であって、 杭圧入装置のクランプを固定するための複数のクランプ部と、 これらクランプ部に取り付けられて、あらかじめ地盤に設置された反力体に固定されることにより、前記複数のクランプ部を地盤に固定する複数の固定部を有し、 前記複数のクランプ部は互いに別体であり、前記複数の固定部は前記複数のクランプ部に対してそれぞれ取り外し自在である、反力架台。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の反力架台は、クランプ挿入孔の直径を変更することはできず、クランプの直径の異なった杭圧入装置を設置することができない。そのため、杭圧入装置のクランプの直径、すなわち杭の直径に対応して複数の反力架台を用意する必要があった。
【0007】
一方、上記特許文献2の反力架台では、クランプ固定手段にアタッチメントを装着することで、直径の異なる杭の圧入を可能にしている。しかしながら、上記特許文献2の反力架台は、杭体にクランプ固定手段と挟持手段が固定されているため、杭ピッチの変化への対応がしにくいという課題があった。例えば鋼管矢板を連続して圧入する場合、同径の杭でも継手により杭ピッチが変化する。一例として
図1に示すように鋼管杭からなる杭1のLT継手1a、PT継手1b、PP継手1cを比較した場合、図示の例ではLT継手1aの杭ピッチは63mmであり、PT継手1bの杭ピッチは180mmであり、PP継手1cの杭ピッチは248mmである。したがってLT継手1aとPP継手1cとでは杭ピッチ差は185mmにもなる。また杭1の径が変わる場合もあるので、それら杭ピッチ差と杭径差の合計量のピッチ調整が必要になる。
【0008】
上記特許文献2の反力架台のように、杭体にクランプ固定手段と挟持手段が固定されていたのでは、そのようなピッチ調整は基本的には不可能である。また、シリンダー等によってピッチ調整することも検討されているが、上述したような大幅なピッチ調整には対応しきれていなかった。さらに地盤に設置された反力体の天端位置は現場によって異なり、低い場合は布掘り等で全体を沈めるか、段差施工して徐々に天端位置を好ましい高さまで調整することが必要になり、作業が煩雑であった。また従来の反力架台はいずれも一体構造であり、保管に広いスペースが必要になっていた。
【0009】
本発明の目的は、ピッチ調整が容易にできる反力架台を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、杭圧入装置で杭を地盤に初期圧入する際の反力を得るための反力架台であって、杭圧入装置のクランプを固定するための複数のクランプ部と、これらクランプ部に取り付けられて、あらかじめ地盤に設置された反力体に固定されることにより、前記複数のクランプ部を地盤に固定する複数の固定部を有し、前記複数のクランプ部は互いに別体であり、前記複数の固定部は前記複数のクランプ部に対してそれぞれ取り外し自在である、反力架台が提供される。
【0011】
本発明の反力架台にあっては、複数のクランプ部が互いに別体であるので、それらクランプ部同士の間隔を変えることによって、ピッチ調整を容易に行うことができる。かかる本発明の反力架台において、前記複数のクランプ部には、前記複数の固定部をそれぞれ取り付けさせるための支持ブラケットが設けられていても良い。この場合、前記複数のクランプ部のうちの少なくとも1つは、反転させることにより、前記支持ブラケットの位置が可変に構成されていても良い。また、前記固定部は前記支持ブラケットに対する取り付け位置が可変であっても良い。また、前記固定部は、前記反力体を挟持することによりその反力体に固定するものであれば、例えば溶接やボルト等による固定に比べて作業が簡便であるため、好ましい。さらにまた、前記複数のクランプ部同士を連結する連結部を有し、前記連結部は、前記複数のクランプ部同士の距離を可変としても良く、さらに前記複数のクランプ部の水平レベルを調整するレベル調整部を有していれば、現場で複数のクランプ部同士の距離や水平レベルを調整する作業が簡易化される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の反力架台によれば、互いに別体となっている複数のクランプ部同士の間隔を変えることによって、ピッチ調整を容易に行うことができ、杭ピッチ差と杭径差の合計量といった大幅なピッチ調整にも対応可能となる。また、複数のクランプ部と複数の固定部はそれぞれ単体にもできるので、収納や運搬時には例えばクランプ部の内部に取り外した固定部を入れるなどして省スペース化を図ることができて便利である。また、例えば圧入施工される鋼管杭の径が異なる場合は、クランプ部のみを交換すれば良く、複数の固定部はクランプ部を交換しても共用できるため、それだけ部品点数が少なくて済み、経済的である。
【0013】
また各固定部のクランプ部に対する取り付けは、例えばクランプ部に設けられた支持ブラケットに固定部を取り付けることにより行われる。この場合、クランプ部を反転させて支持ブラケットの位置を変えることができれば、クランプ部を反転させることによって、支持ブラケットに取り付けられる各固定部の位置を容易に変更することが可能となる。このため、杭ピッチ差と杭径差や地盤に予め設置された反力体の天端位置などに応じてクランプ部を適宜反転させることによって、ピッチ調整やクランプ部の高さ調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】LT継手とPT継手とPP継手を比較した場合の杭ピッチの変化を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る反力架台の平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る反力架台の前面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る反力架台の後面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る反力架台を予め地盤に設置された反力体に固定した状態を示す平面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る反力架台を予め地盤に設置された反力体に固定した状態を示す右側面図である。
【
図7】反力体に固定された本発明の実施の形態に係る反力架台に杭圧入装置を取り付けた状態を示す右側面図である。
【
図8】反力体に固定された本発明の実施の形態に係る反力架台に杭圧入装置を取り付けた状態を示す前面図である。
【
図9】反力体に対する固定部の取り付け位置の変化を示す説明図であり、反力体の前方に固定部を取り付けた状態の平面図である。
【
図10】反力体に対する固定部の取り付け位置の変化を示す説明図であり、反力体の後方に固定部を取り付けた状態の平面図である。
【
図11】後クランプ部をZ軸周りに反転させることにより、ピッチ調整を行う場合の説明図であり、クランプ部を後方に移動させた状態の平面図である。
【
図12】後クランプ部をZ軸周りに反転させることにより、ピッチ調整を行う場合の説明図であり、クランプ部を前方に移動させた状態の平面図である。
【
図13】前クランプ部と後クランプ部をX軸周りに反転させることにより、高さ調整を行う場合の説明図であり、前クランプ部と後クランプ部を上方に移動させた状態の前面図である。
【
図14】前クランプ部と後クランプ部をX軸周りに反転させることにより、高さ調整を行う場合の説明図であり、前クランプ部と後クランプ部を下方に移動させた状態の前面図である。
【
図15】固定部の取り付け位置を左右に調整する場合の説明図であり、左右外側に離れた位置に固定部を配置した状態の前面図である。
【
図16】固定部の取り付け位置を左右に調整する場合の説明図であり、左右に近づけた位置に固定部を配置した状態の前面図である。
【
図17】小径のリング体を有する本発明の実施の形態に係る反力架台の平面図である。
【
図18】前クランプ部と後クランプ部を連結部で連結する本発明の実施の形態に係る反力架台を予め地盤に設置された反力体に固定した状態を示す平面図である。
【
図19】
図18に示す実施の形態に係る反力架台を予め地盤に設置された反力体に固定した状態を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また、以下の実施の形態では、円筒形状の鋼管杭からなる杭1の圧入に用いられる反力架台2を例示して説明する。
【0016】
本明細書において、前方とは後述する杭圧入装置3によって圧入施工を進行していく方向であり、後方とは杭圧入装置3によって圧入施工を進行していく方向と反対の方向であり、
図2、
図5、
図6、
図7、
図9、
図10、
図11、
図12、
図17、
図18、
図19において、紙面右側が前方であり、紙面左側が後方である。また、
図3、
図8、
図13、
図14、
図15、
図16において、紙面垂直の上側が前方であり、下側が後方である。また、
図4において、紙面垂直の下側が前方であり、上側が後方である。左右方向は、前方に向いた状態で決められ、例えば
図2において、紙面下側が右側方であり、紙面上側が左側方である。
【0017】
図2〜4に示すように、本発明の実施の形態にかかる反力架台2は、後述する杭圧入装置3のクランプ40を固定するための複数のクランプ部10、11と、クランプ部10、11に取り付けられる複数の固定部12を有している。後述するように、固定部12は反力体5を挟持することで、クランプ40を反力体5に固定するものである。図示の実施の形態では、複数のクランプ部として前クランプ部10と後クランプ部11を有している。また図示の実施の形態では、前クランプ部10には、左右2個ずつ合計4個の固定部12が取り付けられ、後クランプ部11には、左右1個ずつ合計2個の固定部12が取り付けられる。
【0018】
前クランプ部10と後クランプ部11は互いに別体であり、前クランプ部10と後クランプ部11は任意の距離に配置することができる。前クランプ部10と後クランプ部11には、杭圧入装置3のクランプ40を挿入して固定させるための円筒形状のリング体15がそれぞれ設けられている。これらリング体15の内径は、杭圧入装置3によって地盤4に圧入される杭1の内径とほぼ等しく設定されている。
【0019】
前クランプ部10のリング体15の左右にはフレーム16が固定されており、これらフレーム16の左右外側には、固定部12を取り付けさせるための支持ブラケット17が前後にそれぞれ設けられている。
図3に示されるように、フレーム16および支持ブラケット17は、リング体15の外面における下部に配置されている。また、各支持ブラケット17には、固定部12を取り付ける際にピン30を通すための孔18が上下に設けられている。
【0020】
前クランプ部10のリング体15の前面には、杭圧入装置3によって地盤4に圧入された1本目の杭1の頭部に前クランプ部10を連結させるための、連結プレート19が取り付けられている。
【0021】
後クランプ部11のリング体15の左右には、固定部12を取り付けさせるための支持ブラケット17が1つずつ設けられている。
図4に示されるように、後クランプ部11においても同様に、支持ブラケット17はリング体15の外面における下部に配置され、また、各支持ブラケット17には、固定部12を取り付ける際にピン30を通すための孔18が上下に設けられている。但し、
図2に示されるように、後クランプ部11では、左右の支持ブラケット17が、リング体15の中心Oよりも前方に配置されている。
【0022】
前クランプ部10および後クランプ部11の各支持ブラケット17に取り付けられる固定部12はいずれも同様の構成を有している。固定部12のフレーム20にはシリンダー機構21が装着されており、このシリンダー機構21の先端に形成された可動爪22に対向して、固定爪23がフレーム20に固定されている。後述するように、シリンダー機構21の稼働によって可動爪22を固定爪23に向けて押圧させることで、反力体5を可動爪22と固定爪23の間で挟持するようになっている。
【0023】
また、固定部12のフレーム20には、前後方向に所定の間隔を空けて配置された門型ブラケット24が設けられている。前クランプ部10および後クランプ部11に固定部12を取り付ける場合は、この門型ブラケット24の間に、前クランプ部10および後クランプ部11に設けられた支持ブラケット17が挿入される。各門型ブラケット24には、前クランプ部10および後クランプ部11に固定部12を取り付ける際にピン30を通すための孔25が上下に設けられている。
【0024】
次に、以上のように構成された本発明の実施の形態にかかる反力架台2を用いて、杭圧入装置3における初期圧入の反力を得る手順を説明する。
【0025】
先ず、
図5、6に示すように、前クランプ部10の左右に2個ずつ合計4個の固定部12を取り付け、後クランプ部11の左右の1個ずつ合計2個の固定部12を取り付ける。この場合、前クランプ部10および後クランプ部11に設けられた各支持ブラケット17を、各固定部12の門型ブラケット24の間にそれぞれ挿入して、各支持ブラケット17に設けられている上下の孔18と、各門型ブラケット24に設けられている上下の孔25をそれぞれ一致させる。そして、一致させた孔18と孔25にピン30を通して、各支持ブラケット17と各門型ブラケット24をそれぞれ一体的に固定することにより、各固定部12の取り付けが行われる。なお、ピン30には、例えばボルト・ナットが利用できる。
【0026】
また、あらかじめ地盤4に設置されている反力体5を各固定部12で挟持する。ここで、反力体5は、杭1を圧入する際の反力を得るために地盤4に設置されている構造体であり、図示の例では、施工に先立って地盤4に予め打ち込んでおいたU型鋼矢板からなる反力体5を用いている。なお、反力体5は鋼矢板に限らず、その他の杭等も使用でき、地盤の状態に応じて最も施工しやすいものを選択できる。また、反力がとれれば杭以外の構造物も使用でき、例えば河川等の現場では、堤防などを反力体5として使用することも可能である。
【0027】
各固定部12による反力体5への固定は、固定部12のシリンダー機構21を稼働させ、可動爪22を固定爪23に向けて押圧させて、それらの間で反力体5を挟持することにより行われる。各固定部12は上述したように前クランプ部10と後クランプ部11に取り付けられているので、このように、各固定部12によって反力体5を挟持したことにより、前クランプ部10と後クランプ部11は地盤4に固定された状態となる。
【0028】
次に、
図7、8に示すように、こうして前クランプ部10と後クランプ部11を地盤4に固定した状態で、杭圧入装置3のクランプ40を前クランプ部10と後クランプ部11に挿入して、前クランプ部10と後クランプ部11にしっかりと固定する。これにより、杭圧入装置3で杭1を地盤に初期圧入する際の反力が、反力架台2によって得られた状態となる。
【0029】
こうして反力が得られた状態で、杭圧入装置3の先端のチャック41で杭1を把持し、チャック41を下降することで、1本目の杭1を地盤4に圧入する。このとき杭圧入装置3は、反力架台2によって十分な反力を得ているため、確実な圧入作業が行える。
【0030】
また、1本目の杭1を地盤4に圧入した後、前クランプ部10の前面に取り付けられた連結プレート19を、ピン等の適当な部材を用いて、地盤4に圧入された1本目の杭1の頭部に連結する。これにより、次の2本目以降の杭1を杭圧入装置3で圧入するときに既設の杭1の反力も利用できるため、さらに安定した圧入作業が行える。
【0031】
本発明の実施の形態にかかる反力架台2は、前クランプ部10と後クランプ部11が互いに別体となっているので、前クランプ部10と後クランプ部11の間隔を変えることによって、ピッチ調整を容易に行うことができ、杭ピッチ差と杭径差の合計量といった大幅なピッチ調整にも対応可能である。例えば
図9に示すように、固定部12によって反力体5の前方を挟持することにより、前クランプ部10と後クランプ部11を前方に移動させることができる。また、
図10に示すように、固定部12によって反力体5の後方を挟持することにより、前クランプ部10と後クランプ部11を後方に移動させることができる。このように反力体5を挟持する位置を前後に移動させて、前クランプ部10と後クランプ部11の前後位置を変更させることで、前クランプ部10と後クランプ部11のピッチ調整が可能である。
【0032】
また
図2、4に示されるように、後クランプ部11では、左右の支持ブラケット17が、リング体15の外面の下部において、リング体15の中心Oよりも前方に配置されている。
図11は、
図2、4と同様に、左右の支持ブラケット17が、リング体15の外面の下部において、リング体15の中心Oよりも前方に配置された後クランプ部11の状態を示している。かかる後クランプ部11は、
図11、12中に示すZ軸周りに反転させることにより、
図12に示すように、左右の支持ブラケット17を、上下方向(Z軸方向)の位置を変更することなく、リング体15の中心Oよりも後方の位置に変更することができる。したがって、固定部12によって反力体5を挟持する前後方向の位置が同じであっても、
図11(
図2)に示すように、左右の支持ブラケット17がリング体15の中心Oよりも前方にあれば、相対的に後クランプ部11は後方に移動し、
図12に示すように、左右の支持ブラケット17がリング体15の中心Oよりも後方にあれば、相対的に後クランプ部11は前方に移動することとなる。このため、後クランプ部11をZ軸周りに反転させることによって、後クランプ部11のリング体15の位置を前後に移動させて、ピッチ調整を容易に行うことができる。尚、後クランプ部11をY軸周りに反転させることによっても、左右の支持ブラケット17をリング体15の中心Oよりも後方の位置に変更することができるが、この場合は上下方向(Z軸方向)の位置も変更され、反転後は、左右の支持ブラケット17が、リング体15の外面における上部に配置されることとなる。また、支持ブラケット17が、リング体15の外面におけるZ軸方向の中央部に配置されている場合は、後クランプ部11をY軸またはZ軸周りに反転させることによって、左右の支持ブラケット17を、上下方向(Z軸方向)の位置を変更することなく、リング体15の中心Oよりも前方から後方に変更することができる。
【0033】
また
図3、4に示されるように、前クランプ部10と後クランプ部11では、左右の支持ブラケット17が、リング体15の外面における下部に配置されている。また
図2に示されるように、後クランプ部11では、左右の支持ブラケット17が、リング体15の中心Oよりも前方に配置されている。
図13は、
図3、4と同様に、左右の支持ブラケット17がリング体15の外面における下部に配置された前クランプ部10と後クランプ部11の状態を示している。かかる前クランプ部10と後クランプ部11は、
図13、14中に示すX軸周りに上下に反転させることにより、
図14に示すように、左右の支持ブラケット17を、前後方向(X軸方向)の位置を変更することなく、リング体15の外面における上部に変更することができる。したがって、固定部12によって反力体5を挟持する高さ位置が同じであっても、
図13(
図3、4)に示すように、左右の支持ブラケット17がリング体15の外面における下部にあれば、相対的に前クランプ部10と後クランプ部11は上方に移動し、
図14に示すように、左右の支持ブラケット17がリング体15の外面における上部にあれば、相対的に前クランプ部10と後クランプ部11は下方に移動することとなる。このように、前クランプ部10と後クランプ部11をX軸周りに反転させることによって、前クランプ部10と後クランプ部11の位置を上下に移動させることが可能である。このため、地盤4に予め設置された反力体5の天端位置などに応じて、前クランプ部10と後クランプ部11をX軸周り上下に反転させることによって、前クランプ部10と後クランプ部11の高さ調整を容易に行うことができる。尚、前クランプ部10と後クランプ部11をY軸周りに反転させることによっても、左右の支持ブラケット17をリング体15の外面における上部に変更することができるが、この場合は前後方向(X軸方向)の位置も変更され、反転後は、後クランプ部11では、左右の支持ブラケット17が、リング体15の中心Oよりも後方に配置されることとなる。また、後クランプ部11の左右の支持ブラケット17が、前後方向(X軸方向)に関してリング体15の中心Oと同じ位置に配置されている場合は、後クランプ部11をX軸またはY軸周りに反転させることによって、左右の支持ブラケット17を、前後方向(X軸方向)の位置を変更することなく、リング体15の外面における下部から上部に変更することができる。
【0034】
また、
図15、16に示すように、前クランプ部10と後クランプ部11の支持ブラケット17に設けられている孔18を長穴としておけば、各支持ブラケット17に取り付けられる固定部12の位置を左右方向に移動させて調整することも可能となる。例えば
図15に示すように、長穴に形成された孔18の外側にピン30を通して固定部12を取り付ければ、前クランプ部10と後クランプ部11のリング体15から左右外側に離れた位置に固定部12を配置することができる。また一方、
図16に示すように、長穴に形成された孔18の内側にピン30を通して固定部12を取り付ければ、前クランプ部10と後クランプ部11のリング体15の左右に近づけた位置に固定部12を配置することができる。このため、地盤4に設置された反力体5の左右の幅Aの変化にも対応でき、反力体5の施工精度が低下しても対応できる。
【0035】
次に
図17は、小径のリング体15’を有する反力架台2を示している。なお、
図17に示した本発明の実施の形態にかかる反力架台2は、リング体15’が小径である点を除けば、先に
図2等で説明した本発明の実施の形態にかかる反力架台2と基本的な構成は同じである。前クランプ部10と後クランプ部11は、圧入施工する杭1の径(杭圧入装置3のクランプ40の径と同じ)に合わせて、適宜変更する。この場合、固定部12は共通であるため、杭1の径が変わっても前クランプ部10と後クランプ部11だけを交換すれば良く、固定部12は共用できるため、それだけ部品点数が少なくて済み、経済的である。特に鋼管杭はサイズが非常に多いが、固定部12を共用することにより、広範囲の異径杭にも少ない部品点数で対応可能であり、軽量・コンパクト化ができ、コストダウンが可能となる。また施工性も向上する。
【0036】
また、各クランプ部(実施の形態では前クランプ部10と後クランプ部11)と各固定部12はそれぞれ単体にもできるので、収納や運搬時には例えばクランプ部10、11の内部に取り外した固定部12を入れるなどして省スペース化を図ることができて便利である。
【0037】
図18、19は、前クランプ部10と後クランプ部11を連結部51で連結する本発明の実施の形態に係る反力架台2を示し、
図20、21は、それぞれ
図19のB部、C部の拡大図である。本実施形態では、前述の実施の形態に加えて、前クランプ部10と後クランプ部11とを連結する連結部51と、水平レベルを調整するレベル調整部61とを備えている。
【0038】
連結部51は、
図18、19、20に示すように、前クランプ部10の後方および後クランプ部11の前方にそれぞれ設けられたクランプ部連結プレート52、53と、これらのクランプ部連結プレート52、53を固定するボルト54およびナット55で構成されている。各クランプ部連結プレート52、53にはボルト孔56が開けられており、これらのボルト孔56にボルト54を通しナット55で締めることにより、前クランプ部10と後クランプ部11のそれぞれのリング体15、15同士が連結される。クランプ部連結プレート52、53のうち少なくとも一方、例えば図示されるように前クランプ部10側のクランプ部連結プレート52のボルト孔56を、前後方向に長い長穴として形成することにより、前クランプ部10と後クランプ部11とを任意の距離に配置することができる。本実施の形態では、
図18に示されるように、後クランプ部11に設けられる左右の支持ブラケット17は、前後方向においてリング体15の中心Oの位置に配置される。このように前後方向において中心Oの位置に左右の支持ブラケット17が配置されていれば、杭圧入や杭引抜の際に後クランプ部11に上下方向の力が作用しても、前後方向に関して支持ブラケット17の位置とその力の作用する位置とが偏心していないために回転モーメントが発生せず、例えば圧入杭打抜実行の際に後クランプ部11が上下方向に動いてしまうことがない。
【0039】
クランプ部連結プレート52、53は、
図18に示すように前クランプ部10および後クランプ部11にそれぞれ二カ所ずつ設け、各クランプ部連結プレート52、53は、
図19、20に示すように上下二カ所ずつボルト止めすることが好ましい。なお、連結部51は、前クランプ部10と後クランプ部11との距離を強固に固定するものではなく、所定以上の力がかかったときには、ボルト54が長穴のボルト孔56に沿って滑り、適宜ずれるようになっている。また、本実施形態では、ボルト54およびナット55でクランプ部連結プレート52、53を固定することとしたが、例えばピンや楔、シリンダー等によって固定してもよい。
【0040】
レベル調整部61には、レベリングプレート62、レベリングボルト63およびナット64を有する例えば市販のレベルジャッキ等を用いることができる。図示するように、前クランプ部10の前側の左右2つの固定部12それぞれのフレーム20の前方と、後クランプ部11の左右2つの固定部12それぞれのフレーム20の後方に、レベリング用ブラケット65がそれぞれ取り付けられ、レベリング用ブラケット65に設けられたボルト孔66にレベリングボルト63を通して、これら4つのレベル調整部61で前クランプ部10および後クランプ部11の水平位置を調整する。前クランプ部10と後クランプ部11とが連結部51で固定されているため、前クランプ部10と後クランプ部11のそれぞれに4つずつのレベル調整部61を設けることなく、前クランプ部10および後クランプ部11の全体の水平位置を4つのレベル調整部61で調整することができる。
【0041】
その他の構成は、前述の実施の形態と同様である。このような実施の形態にかかる反力架台2を用いて、杭圧入装置3における初期圧入の反力を得る際には、まず、例えば工場出荷前の工程において、前クランプ部10と後クランプ部11とを連結部51で固定する。すなわち、前クランプ部10と後クランプ部11のリング体15、15を所定の距離に配置して、各クランプ部連結プレート52、53をボルト54で固定し、前後のリング体15、15のピッチおよび水平レベルをあらかじめ調整しておく。なお、現場に平らな場所がある場合には、現場搬入後、反力体5の上に載置する前に、前クランプ部10と後クランプ部11とを連結して水平レベルを固定してもよい。
【0042】
連結されたリング体15、15を現場へ運搬した後、前クランプ部10および後クランプ部11に、それぞれ固定部12を取り付けて、反力体5の上に載置する。さらに、反力体5の上にレベル調整部61のレベリングプレート62を載置して、前クランプ部10および後クランプ部11に設けられたレベリング用ブラケット65にレベリングボルト63を通し、反力体5上における前クランプ部10と後クランプ部11との水平レベルを調整する。その後の初期反力を得る際の工程は、前述の実施の形態と同様である。なお、連結部51のボルト54とナット55は締結したままでもよく、緩めてもよく、取り外してもよい。一方、レベル調整部61のレベリングプレート62は、調整後の圧入工程では、反力体5から離すことが好ましい。
【0043】
この実施形態によれば、現場でのピッチ調整およびレベル調整に時間をかけることなく、効率のよい現場作業が実現できる。さらに、反力体5のそれぞれの上端(天端)高さが不揃いの場合でも、前クランプ部10と後クランプ部11の両方を合わせて4つのレベル調整部61で容易かつ迅速にレベル調整を行い、杭圧入装置3のクランプ40を前クランプ部10と後クランプ部11に固定することができる。
【0044】
また、前述したように、連結部51は前クランプ部10と後クランプ部11とを強固に固定するものではなく、現場で反力架台2に大きな力がかかった際には適宜ずれることができるので、高強度な構造にする必要がない。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態の一例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。杭圧入装置は、圧入と引き抜きの両方を行う杭圧入引抜装置を含む。
【0046】
例えば、複数のクランプ部として前クランプ部10と後クランプ部11を示して説明したが、クランプ部は3つ以上あっても良い。各クランプ部に取り付けられる固定部の数も任意である。また、以上の実施の形態では、固定部12の一形態として、反力体5を可動爪22と固定爪23の間で挟持することで、クランプ部を固定する例を示したが、固定部は例えば溶接又はボルト等により反力体5に固定されるものであってもよい。また、以上の実施の形態では、円筒形状の鋼管杭からなる杭1の圧入に用いられる反力架台2を例示して説明したが、その他の杭であっても本発明は同様に適用できる。また、
図15、16では、長穴を利用して固定部12の位置を左右に調整する例を示したが、固定部12が左右に動く機構を設けることも可能である。その他シリンダストロークによる移動、レール式等、種々の方法が考えられる。