(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
血管の狭窄が重度である場合、特に血管が完全に閉塞しているような場合には、上記のように工夫されたガイドワイヤであっても、狭窄部の表面に対し、ガイドワイヤの先端部が滑って引っ掛からず、穿通性を十分に確保できない可能性がある。また、ガイドワイヤの穿通性を十分に確保できず、狭窄部にガイドワイヤが進入しにくいことで、手技時間が長くなることがあった。
【0007】
特許文献1には、ガイドワイヤの先端に平面部を設け、その平面部に孔部を形成することで、穿通性を向上させたものも開示されているが、この場合、ガイドワイヤの進行方向に向かう平面部が存在し、この平面部が生体管腔内に面接触するために、ガイドワイヤの生体管腔内における通過性が悪化する可能性がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、ガイドワイヤの通過性を悪化させることなく、狭窄部に対する穿通性を向上させたガイドワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明に係るガイドワイヤは、線状に形成されるワイヤ本体を有するガイドワイヤであって、前記ワイヤ本体の先端部は、最先端を形成する頂部と、前記ワイヤ本体の周面から前記頂部までを連続状とした周囲部とで、曲面状に形成され、前記先端部には複数の孔部が形成され、前記孔部は、前記頂部と周囲部にそれぞれ形成され
、
前記頂部には、円形状の先端孔部が形成され、前記周囲部には、楕円形状の周囲孔部が形成され、前記周囲孔部は、前記周囲部の周方向に沿って長軸が、前記周囲部の軸方向に沿って短軸が、それぞれ向くように配置される。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したガイドワイヤは、曲面状の先端部で生体管腔内における通過性を良好にしつつ、孔部によって狭窄部に対する先端部の滑りを抑制し、穿通性を向上させることができる。
【0011】
前記孔部は、前記頂部と周囲部にそれぞれ形成されるようにすれば、狭窄部に対してガイドワイヤの先端部が真っ直ぐに進入していない場合であっても、滑りを抑制することができる。
【0012】
前記孔部は、前記周囲部の周方向に沿って複数形成されるようにすれば、ガイドワイヤの周方向の向きに関わらず、狭窄部に対する滑りを抑制することができる。
【0013】
前記周囲部に形成される前記孔部は、いずれも同形状であって周方向に沿って等間隔に配置されるようにすれば、ガイドワイヤの周方向の向きによらず、狭窄部に対する滑り抑制の効果を一定にすることができる。
【0014】
前記孔部は、前記周囲部の軸方向に沿って複数列が形成されるようにすれば、先端部のより広い範囲で狭窄部に対する滑りを抑制することができる。
【0015】
前記頂部には、円形状の先端孔部が形成され、前記周囲部には、円形状または楕円形状の周囲孔部が形成されるようにすれば、ガイドワイヤが狭窄部に対してどのような角度で接触しても、先端孔部または周囲孔部のエッジが狭窄部に引っ掛かるので、確実に滑りを抑制することができる。
【0016】
前記周囲孔部は楕円形状であって、前記周囲部の周方向に沿って長軸が、前記周囲部の軸方向に沿って短軸が、それぞれ向くように配置されるようにすれば、軸方向への力に対してガイドワイヤの先端部が滑る場合に、滑る方向と直交する方向に周囲孔部のエッジを長くすることができ、滑りに対する抵抗力をより大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。なお、本明細書では、カテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。また、各図ではガイドワイヤ1の長さ方向を短縮し、太さ方向を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と太さ方向の比率は実際とは異なっている。
【0019】
まず、本実施形態のガイドワイヤ1を使用するカテーテル10の構成について説明する。本実施形態のガイドワイヤ1が使用されるカテーテル10は、
図1に示すように、長尺な中空状のカテーテル本体部11と、カテーテル本体部11の先端部に設けられるバルーン12と、カテーテル本体部11の基端に固着されたハブ20とを有している。
【0020】
カテーテル本体部11は、中空の管状体である外管14と、外管14の内部に配置される中空の管状体である内管15とを備えている。外管14と内管15の間には、バルーン12を拡張するための拡張用流体が流通する拡張ルーメン16が形成され、内管15の内側にはガイドワイヤ1が挿通されるガイドワイヤルーメン17が形成される。
【0021】
外管14および内管15は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されるのが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
【0022】
バルーン12の先端側は内管15に接着され、基端側は外管14に接着されていて、バルーン12内が拡張ルーメン16に連通している。これにより、拡張ルーメン16を介して拡張用流体を注入することで、バルーン12を拡張させることができる。拡張用流体は気体でも液体でもよく、例えばヘリウムガス、CO
2ガス、O
2ガス等の気体や、生理食塩水、造影剤等の液体を用いることができる。
【0023】
ハブ20は、外管14と内管15の間に形成される拡張ルーメン16と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する第1開口部21と、ガイドワイヤルーメン17と連通する第2開口部22とを備えている。第2開口部22には、ガイドワイヤ1を挿通自在としつつ血液の流出を抑制する止血弁23が設けられる。
【0024】
治療時において、ガイドワイヤ1は、カテーテル10に対して、第2開口部22からガイドワイヤルーメン17を経て、カテーテル本体部11の先端まで挿通されている。また、ガイドワイヤ1の先端は、カテーテル本体部11の先端よりもさらに先端側に突出している。なお、ガイドワイヤ1の先端付近は、若干湾曲している。手技時には、生体管腔内でガイドワイヤ1の挿入を先行させながら、カテーテル本体部11が挿入されていく。
【0025】
第1形態のガイドワイヤ1について詳細に説明する。ガイドワイヤ1は、長尺な線状に形成されたワイヤ本体30を有している。ワイヤ本体30は、弾性を有する線材であり、コア線の周囲に素線が巻回されて形成されている。コア線及び素線は、ステンレス鋼などの金属材によって形成されている。なお、ワイヤ本体30は樹脂製であってもよい。
【0026】
ガイドワイヤ1の全長は特に限定されないが、200〜5000mm程度が一般的である。コア線の外径も限定されないが、0.03〜0.5mmの範囲が好ましい。ガイドワイヤ1の外径についても限定されないが、0.2〜1.2mm程度が一般的である。本実施形態において、ガイドワイヤ1の先端にかかる荷重は、0.3〜80gfの範囲である。
【0027】
ワイヤ本体30の先端部31には素線が巻回されておらず、チップが設けられている。チップは、半田、銀、金などによって、あるいはワイヤ本体30が樹脂製である場合には樹脂によって、形成される。チップの径は0.2〜0.8mmの範囲、チップの長さは0.05〜10mmの範囲が好ましい。この先端部31についてより詳細に説明する。
図2に示すように、ワイヤ本体30の先端部31は、ワイヤ本体30の最先端部を形成する頂部32と、頂部32からワイヤ本体30の周面34までを連続状とする周囲部33とによって、滑らかな曲面を形成している。本実施形態において、先端部31は半球形状の表面を有するように形成されている。ただし、先端部31の形状は半球形状には限られず、球面あるいは非球面の丸みを帯びた形状であって、周面34から頂部32までが連続的な形状であればよい。
【0028】
ワイヤ本体30の先端部31には、複数の孔部が形成されている。このうち、頂部32には、円形状の先端孔部35が形成されている。また、周囲部33には、円形状の周囲孔部36が複数形成されている。周囲孔部36は、周方向に複数が形成されて列を形成し、さらにこの列が軸方向に複数列設けられている。周囲孔部36の周方向に沿う各列において、それぞれの周囲孔部36は同形状であって、周方向等間隔に配置されている。なお、本明細書において同形状とは、大きさの違いに関わらず同じ形状を有することをいう。
【0029】
周囲孔部36は、軸方向においては径が異なっている。周囲孔部36は、頂部32に近い側は径が大きく、周面34側は径が小さく形成されている。周面34側の周囲孔部36は、頂部32側の周囲孔部36に比べて、周方向により狭い間隔で配置されている。
【0030】
図3に示すように、先端孔部35及び周囲孔部36は、いずれも各孔部の中心位置に対する接線方向と直交する方向に向かって、同径のまま伸びるように形成されている。つまり、先端孔部35と周囲孔部36のガイドワイヤ1内部における形状は、いずれも円柱状となる。また、いずれの孔部も、各孔部の中心位置に対する接線方向と直交する方向から見て円形となる同じ深さの孔として形成されている。先端孔部35の縁部には、周方向に沿ってエッジ35aが形成され、周囲孔部36の縁部にも、周方向に沿ってエッジ36aが形成される。
【0031】
先端孔部35及び周囲孔部36を有するガイドワイヤ1の先端部31は、曲面状に形成されているので、ガイドワイヤ1を生体管腔内に挿入していく際に、血管壁などに面接触することなく円滑に進入させることができる。その一方で、
図4に示すように、血管40内が狭窄部41により完全に閉塞している場合に、ガイドワイヤ1の先端部31が狭窄部41の表面に突き当たると、曲面状である先端部31は、例えば図中S方向に滑ろうとする。これに対し、ガイドワイヤ1の先端部31に先端孔部35及び周囲孔部36が形成されていることで、それらのエッジ35a,36aが狭窄部41の表面に引っ掛かり、滑りが抑制される。これにより、進行方向である図中P方向にガイドワイヤ1を進入させることができる。つまり、ガイドワイヤ1の良好な通過性を維持したまま、狭窄部41に対する穿通性も良好にすることができる。
【0032】
また、ガイドワイヤ1の先端部31に、通過性向上のため高潤滑性のコーティングを施している場合には、先端部31が特に滑りやすくなっているため、先端部31に孔部が形成されていることによる狭窄部41における滑り抑制の機能を、より効果的に発揮することができる。
【0033】
なお、
図4のように狭窄部41が完全に閉塞していなくても、ガイドワイヤ1が狭窄部41内に進入しにくくなることがあり、その場合も同様に、本発明によって穿通性向上の効果を得ることができる。
【0034】
ガイドワイヤ1の先端部31が滑る方向は、ガイドワイヤ1の向きや狭窄部41の表面状態、あるいはガイドワイヤ1に対してかかる力の方向などによって様々であり、いずれの方向にも滑る可能性がある。これに対し、周囲孔部36は周方向において等間隔に配置されているので、どの方向に対してもガイドワイヤ1の先端部31の滑りを抑制することができる。
【0035】
また、各孔部は、その中心位置に対する接線方向と直交する方向に向かって伸びるように形成されているので、各孔部が狭窄部41に接触した際に、どの方向に対してもエッジ35a,36aが同じように狭窄部41の表面に対し引っ掛かるので、どのような方向でも十分な滑り抑制効果を発揮させることが可能となる。
【0036】
先端孔部35及び周囲孔部の配置、孔径、数、及び深さについては適宜設定することができ、特に限定されないが、孔径は0.01〜0.3mm、数は頂部32に1個、周囲部33に周方向5〜10個の列を2〜5列、深さは0.01〜0.2mmの範囲とすることが好ましい。
【0037】
先端部31に先端孔部35や周囲孔部36を形成する製造方法としては、様々な方法が考えられる。例えば、微細なドリルでワイヤ本体30の先端部31に孔を開けることで、先端孔部35や周囲孔部36を形成できる。また、先端部31の表面に対し局所的に熱を加えて孔を開ける方法も考えられる。先端孔部35については、回転する砥石によりワイヤ本体30の先端部31を曲面状とする加工の際に、砥石に凸部を形成しておき、この凸部によって先端孔部35を形成することもできる。また、先端部31と逆形状を有した金型によって、孔を形成する方法も考えられる。
【0038】
本形態では、
図3のように各孔部がそれぞれ先端部31の表面から垂直方向に伸びるように形成されているが、
図5に示すように、周囲孔部37が、ガイドワイヤ1の先端側から基端側に向かう方向(ガイドワイヤ1の軸方向)に沿って伸びるように形成されていてもよい。この場合、周囲孔部37のエッジ37aの角度が、周方向に沿って変化することとなるため、ガイドワイヤ1の滑りの方向によって効果の違いが生じるが、狭窄部41に対する穿通性の向上の効果を得ることはできる。
【0039】
周囲孔部の他の形態についても説明する。
図6に示すように、周囲孔部38を楕円形状としてもよい。この場合、周囲孔部38のガイドワイヤ1内部における形状は楕円柱状となる。なお、この形態において先端部31の形状や先端孔部35の形状は、第1形態のものと同様である。
【0040】
本形態の周囲孔部38は、周囲部33の周方向に沿って長軸が、周囲部33の軸方向に沿って短軸が、それぞれ向くように配置されている。ガイドワイヤ1には、軸方向に挿入される力がかかるので、狭窄部41において、先端部31の曲面径状に沿って軸方向に滑ることとなる。本形態の周囲孔部36は、軸方向に直交する方向に長く、先端部31が軸方向に滑った場合に狭窄部41に対して引っ掛かる長さが大きいので、滑りに対する抵抗力をより大きくすることができる。
【0041】
また、
図7に示すように、周囲孔部39を先端孔部35と同心円となる溝状に形成してもよい。この場合には、エッジ39a,39aが全周に渡って繋がっているので、先端部31がどの角度に滑っても、エッジ39aが狭窄部41に対し確実に引っ掛かるようにして抵抗力を発生させ、滑りを抑止することができる。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るガイドワイヤ1は、線状に形成されるワイヤ本体30を有し、ワイヤ本体30の先端部31は、最先端を形成する頂部32と、ワイヤ本体30の周面34から頂部32までを連続状とした周囲部33とで、曲面状に形成され、先端部31には複数の孔部35,36が形成される。このため、曲面状の先端部31で生体管腔内におけるガイドワイヤ1の通過性を良好にしつつ、孔部35,36によって狭窄部41に対する先端部31の滑りを抑制し、ガイドワイヤ1の穿通性を向上できる。
【0043】
また、孔部35,36は、頂部32と周囲部33にそれぞれ形成されるようにすれば、狭窄部41に対してガイドワイヤ1の先端部31が真っ直ぐに進入していない場合であっても、滑りを抑制することができる。
【0044】
また、孔部36は、周囲部33の周方向に沿って複数形成されるようにすれば、ガイドワイヤ1の周方向の向きに関わらず、狭窄部41に対する滑りを抑制することができる。
【0045】
また、周囲部33に形成される孔部36は、いずれも同形状であって周方向に沿って等間隔に配置されるようにすれば、ガイドワイヤ1の周方向の向きによらず、狭窄部41に対する滑り抑制の効果を一定にすることができる。
【0046】
また、孔部36は、周囲部33の軸方向に沿って複数列が形成されるようにすれば、先端部31のより広い範囲で狭窄部41に対する滑りを抑制することができる。
【0047】
また、頂部32には、円形状の先端孔部35が形成され、周囲部33には、円形状または楕円形状の周囲孔部36が形成されるようにすれば、ガイドワイヤ1が狭窄部41に対してどのような角度で接触しても、先端孔部35または周囲孔部36のエッジ35a,36aが狭窄部41に引っ掛かるので、確実に滑りを抑制することができる。
【0048】
また、周囲孔部38は楕円形状であって、周囲部33の周方向に沿って長軸が、周囲部33の軸方向に沿って短軸が、それぞれ向くように配置されるようにすれば、軸方向への力に対してガイドワイヤ1の先端部31が滑る場合に、滑る方向と直交する方向に周囲孔部38のエッジを長くすることができ、滑りに対する抵抗力をより大きくすることができる。
【0049】
上述の実施形態において、先端孔部35は円形であり、周囲孔部は円形、楕円形、または溝状であるが、これらはその他の形状であってもよい。例えば、多角形であってもよいし、星形や十字形のような形状であってもよい。
【0050】
ただし、先端孔部35は、ガイドワイヤ1の進行方向を向いており、狭窄部41での先端部31の滑りが生じた場合には、あらゆる方向からの滑りをエッジ35aで受け止める必要があるので、いずれの角度にもエッジ35aが同じように向く円形状が好ましい。
【0051】
また、先端孔部35及び周囲孔部のガイドワイヤ1内部における形状も、上述の実施形態では円柱状または楕円柱状であるが、球面または非球面の表面を有する半球体状など他の形状であってもよい。
【0052】
また、上述の実施形態では、いずれもワイヤ本体30の先端部31の頂部32に先端孔部35が、周囲部33に周囲孔部が、それぞれ形成されているが、少なくとも先端部31に複数の孔部が形成されていればよく、その配置は限定されない。
【0053】
また、上述の実施形態に係るガイドワイヤ1を使用するカテーテル10は、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)であるが、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)であってもよい。また、ガイドワイヤ1は、カテーテルに使用されるものに限られず、内視鏡などに使用されるものであってもよい。
【0054】
本出願は、2015年1月23日に出願された日本特許出願番号2015−11817号に基づいており、それらの開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。