(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746610
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】円筒型ターゲット用接続ピース
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20200817BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
C23C14/35 B
C23C14/34 B
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-557437(P2017-557437)
(86)(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公表番号】特表2018-518595(P2018-518595A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】AT2016000045
(87)【国際公開番号】WO2016176697
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2018年1月31日
(31)【優先権主張番号】GM107/2015
(32)【優先日】2015年5月6日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ドロンホーファー、アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】リンケ、クリスティアン
【審査官】
宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0305393(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0096430(US,A1)
【文献】
実開平05−054551(JP,U)
【文献】
特開2010−037583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
C23C 14/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形のターゲット(1a−c)用の、円筒形の内面、円筒形の外面、及び、少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)を有する接続ピース(6a−c)であって、
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)が、嵌め合いによって、前記接続ピース(6a−c)の前記円筒形の内面又は前記円筒形の外面に結合されているか、又は、
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)が、ねじ込まれることによって、前記接続ピース(6a−c)に結合されており、
前記磁性挿入物(4a−c)の位置が、前記接続ピース(6a−c)の少なくとも内面上、又は、外面上で該接続ピース(6a−c)の軸方向に沿って可変であることを特徴とする接続ピース。
【請求項2】
前記磁性挿入物(4a−b)の位置が、前記接続ピース(6a−b)の長手方向軸を中心にした回転により、又は、前記接続ピース(6a−b)の軸方向における変位により、前記接続ピース(6a−b)の少なくとも内面上、又は、外面上で該接続ピース(6a−b)の軸方向に沿って可変であることを特徴とする、請求項1に記載の接続ピース。
【請求項3】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)が、1つの金属ないし1つの合金で作られていることを特徴とする、請求項1または2に記載の接続ピース。
【請求項4】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)が、1つの強磁性金属ないし1つの強磁性合金で作られていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の接続ピース。
【請求項5】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)が(鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金)のグループの中の1つの金属ないし1つの合金で作られていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の接続ピース。
【請求項6】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a−c)がねじ接続で前記接続ピースと接続されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の接続ピース。
【請求項7】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a、c)が前記接続ピースの円筒形の内面の一部と結合されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の接続ピース。
【請求項8】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4b)が前記接続ピースの円筒形の外面の一部と結合されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の接続ピース。
【請求項9】
前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a、c)が、少なくとも片手、1つの工具、又は、1つの磁石を用いて接触可能な、少なくとも1つの手段を有しており、この手段を用いて前記少なくとも1つの磁性挿入物(4a、c)の軸方向の位置を変更することができることを特徴とする、請求項7に記載の接続ピース。
【請求項10】
前記少なくとも1つの手段が、(切り込み(Kerbe)、窪み(Senke)、へこみ(Mulde
)、穴(Vertiefung)、ナット(Nut)、溝(Rille)、孔(Bohrung)、ジャーナル(Zapfen)、ねじ(Gewinde)、円錐形部品(Konus)、テーパー(Kegel)、角状部品(Kante
))のグループの中の少なくとも1つのコンポーネントを、前記磁性挿入物(4a、c)の半径方向に有していることを特徴とする、請求項9に記載の接続ピース。
【請求項11】
前記接続ピースが2つ以上の前記磁性挿入物(4a−c)を有していることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の接続ピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形のターゲット用の、円筒形の内面、円筒形の外面、及び、少なくとも1つの磁性挿入物を有する接続ピースに関し、当該磁性挿入物の位置が接続ピースの少なくとも内面上、又は、外面上で接続ピースの軸方向に沿って可変となっている。
【背景技術】
【0002】
ここで、ターゲットとはカソードスパッタリング装置用のスパッター源を意味する。カソードスパッタリングではターゲット材がプラズマにより「スパッタされ」、サブストレート上に薄膜として堆積する。このカソードスパッタリングは通常、スパッタリングとも呼ばれ、スパッタリング源はスパッタリングターゲットとも呼ばれる。したがって、円筒形のターゲット体を備えたターゲットは円筒形のスパッタリングターゲットであり、円筒型ターゲットとも呼ばれる。特に多用されるスパッタリング法はマグネトロンスパッタリングである。簡単なカソードスパッタリングでは電界のみが印加されるのに対し、マグネトロンスパッタリングではさらに磁界が発生される。電界と磁界を重畳することによって、荷電体の軌道がより長くなり、1電子当たりの衝突回数が高められる。この磁界は通常は、円筒型ターゲットの内部に設置されている、1つの磁石、又は、多数の磁石のアレイにより発生される。
【0003】
円筒形のターゲット(円筒型ターゲット)のメリットは均等な減耗、及び、これによる、平板型ターゲットよりも高い利用率である。ここで利用率とは、第1回使用前のターゲットの質量を基準にした、そのターゲットの全使用期間後のスパッタリングで費消された材料質量を意味する。この利用率は、平板型ターゲットでは約15から30%であり、円筒型ターゲットでは一般的に70から90%である。
【0004】
円筒型ターゲットをモノリシックなターゲットとして作ることができることは公知である。モノリシックなターゲットは通常は、貫通している支持パイプを有さない。モノリシックなターゲットは本質的に温度の影響を受けにくいので、スパッタリングにおいて最大で30kW/mという特に高い出力密度が可能である。これにより、最大の成膜率及びより高いスループットが可能であり、このことによって、堆積された皮膜の諸特性を改善することができる。
【0005】
使用されたスパッタリング材料の機械的強度、延性及び破壊靭性が十分に大きい場合には、円筒型ターゲットのモノリシックな作成は特に金属のターゲットの場合に有利である。モノリシックなターゲットの使用にとって特に重要なのは、端部の機械的特性値及び幾何学的な設計である。というのは、この部分は部分的に非常に薄い肉厚(好適には4mm未満)にしなければならないからである。これは通常はターゲット体の機械加工により行われる。モノリシックなターゲットの一端部又は両端部が破損すると、最悪の場合にはターゲット全体が使いものにならず、新たに作らねばならない。
【0006】
ターゲットの一端部又は両端部の機械加工に対する代案は、例えば特許文献1に開示されているような接続ピースである。
【0007】
モノリシックなターゲットの替わりに、さらに、ボンディングされたターゲットが知られている。この場合、ターゲット体はろう付け乃至ボンディングにより支持パイプに取り付けられ、通常は低温溶融はんだが使用される。その結果、そのようなターゲットは温度の影響をより受け易く、出力密度を高めると、そしてその結果、温度が高くなると、ろう材(大抵は低温溶融インジウムはんだ)の(部分的な)溶融、及び、支持パイプからのターゲット体の分離が生じる。
【0008】
円筒型ターゲットの内側空間内で実現されるターゲットの冷却は、円筒形のターゲットでは熱伝導がより有利なので、平板型ターゲットの場合よりも本質的に効果的であり、このことによって、表面でのより高いエネルギー密度、及びその結果、より高い成膜率が可能となる。さらに、特に反応性スパッタリングにおける局所的なアーク形成(Arcingとも呼ばれる)の傾向も低減される。大面積のサブストレートが膜付けされる場合には、円筒型ターゲットの使用は特に有利である。使用中に円筒型ターゲットはゆっくり回転し、他方、磁界は通常は静止している。
【0009】
特許文献1はカソードスパッタリング装置用の円筒形のターゲットを開示している。円筒型ターゲット体の両端部にそれぞれ1つの支持パイプ、ないし、接続パイプが配置されている。ターゲット体から突き出たこれらの支持パイプを用いて、このターゲットは装置内に組み込まれる。1実施形態では、1つの支持パイプがターゲット体の1つの開放端に挿入され、次いで、ねじにより固定され、このねじはこの支持パイプのフランジを通してターゲット体の端の縁部にねじ止めされる。代案として、ターゲット体に袋ナット用の雄ねじが設けられ、この袋ナットを用いて支持パイプのフランジをターゲット体の端部に押し付けることができる。この円筒型ターゲットの材料利用率向上のための対策又は実施形態は記載されていない。
【0010】
特許文献2は円筒形のスパッタリングターゲットを開示しており、これは1つの支持パイプ、及び、この支持パイプ上に配置された1つのターゲット材料を備えている。スパッタリング中にターゲット材料の均等な減耗を達成するために、ターゲット材料と支持パイプとの間に1つの強磁性体が配置されている。この強磁性体はプラズマ溶射によって支持パイプ上に吹き付けることができ、この場合、この材料の厚さは支持パイプの長手軸に沿って連続的に変化する。ここに記載された実施形態では、中間層の磁気特性の変化、又は、このターゲット使用期間中のエロージョンプロファイルの的確な調整は不可能である。モノリシックなターゲットでの、又は、別個の複数の接続ピースを備えたモノリシックなターゲットでの使用については記載されていない。
【0011】
特許文献3はスパッタリングターゲットを開示しており、このスパッタリングターゲットは、前面及び背面を有するバッキングプレート、並びに、前面及びバッキングプレートに取り付けられた背面を有するターゲットプレートを含んでいる。ターゲットプレートの背面、バッキングプレートの前面、バッキングプレートの背面、の少なくとも1つが、少なくとも1つの窪みを有し、この窪みの形状と大きさは、ターゲットプレートの隣接領域と比べてターゲットプレートのスパッタリングによる減耗がより大きいと目される領域に対応するように形成されている。この少なくとも1つの窪みに1つの挿入物が設置されている。バッキングプレートは第1の材料を含み、ターゲットプレートは第2の材料を含み、挿入物は第3の材料を含んでいる。さらに、スパッタリングターゲットの電磁特性をコントロールする方法が開示されている。
【0012】
特許文献4はスパッタリングターゲット用の支持パイプを開示しており、この支持パイプは僅かに強磁性であり、それによって、円筒形のスパッタリングターゲットのマグネトロンスパッタリング中に磁界のショートレンジの変化が現れることが低減され、又は、ショートレンジの変化の大きさが低減される。強磁性の支持パイプ用のこのように最適化された合金が、1つの磁石棒により発生される磁界の均一性を改善する。こうして、磁界のショートレンジの変化を平均値の5%未満に低減することが可能である。ここに開示された僅かに強磁性な支持パイプは、磁界のロングレンジの変化を調整するために使用される挿入物と共に、または、前記挿入物の代わりに使用することができる。全長にわたってボンディングされた円筒型ターゲットに対してのみの利用が記載されている。ターゲットの使用期間中の磁気特性の適正化については記載されていない。
【0013】
公知のように、磁界の偏向によって円筒型ターゲットの両端部に不均一なスパッタリング減耗が生じることがあり、これがさらに、寿命が短くなることに基づいて利用率がより小さくなることに繋がる。この不均一な減耗は様々な要因の影響を受け、ターゲットの幾何学的形状、マグネトロン、及び、円筒型ターゲットの使用条件(例えば、回転速度、パワー密度、アルゴン圧力)に依存する。材料利用率を高めるための対策は、例えば、円筒型ターゲットの両端部の厚さを厚くすることであり、これにより、より高い材料減耗を示す箇所により多くの材料を供給することができる。この構造は、その特徴的な形状から「ドッグボーン(dog bone)」と呼ばれ、例えば、特許文献5に記載されている。
【0014】
材料利用率を高めたいそれぞれのターゲットに対して、独自の、且つ、適正化されたターゲット幾何学形状構造を作る、又は、加工する必要がある。そのために、特に、1つ又は複数の接続ピースを備えた、または、備えていないモノリシックなターゲットの場合には、製造技術的コストがより高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1225249B1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102007060306A1号明細書
【特許文献3】国際公開第2011102896A1号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第20100044222A1号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2769002A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、円筒形のターゲットのための改良された接続ピースを提供することにある。この接続ピースは円筒型ターゲットの使用期間を長くし、低コストで、且つ、容易に取り付け可能である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は請求項1の特徴により解決される。好適な形態は従属請求項の主題である。
【0018】
円筒形のターゲット用の本発明による接続ピースは円筒形の内面、円筒形の外面、及び、少なくとも1つの磁性挿入物を有し、当該磁性挿入物の位置が接続ピースの少なくとも内面上、又は、外面上で接続ピースの軸方向に沿って可変であることを特徴とする。
【0019】
この少なくとも1つの磁性挿入物の位置が可変であるので、成膜装置内で使用中の円筒型ターゲットの減耗プロファイルを的確に変更し、適正化することができる。
【0020】
磁性挿入物の位置は好適に、接続ピースの長手方向軸を中心にした回転により、又は、接続ピースの軸方向における変位により、接続ピースの少なくとも内面上、又は、外面上で接続ピースの軸方向に沿って可変である。
【0021】
この少なくとも1つの磁性挿入物の位置の変更は、接続ピースの長手方向軸(円筒型ターゲットの長手方向軸と同じである)を中心にした回転、又は、接続ピースの軸方向における変位により、特に簡単で、且つ、少ない工程ステップで行うことができる。
【0022】
この少なくとも1つの磁性挿入物は、好適には、1つの金属ないし1つの合金で、特に好適には、1つの強磁性金属ないし1つの強磁性合金で作られている。強磁性金属ないし強磁性合金を使用することにより、この磁性挿入物の効果が大いに得られる、というのは、これにより、円筒型ターゲットの、そうでない場合には材料減耗が大きくなるような領域において、磁界を弱めることができるからである。磁界の達成可能な弱めにより、材料の減耗速度が減少し、全体として円筒型ターゲットの材料利用率が向上する。
【0023】
相応の金属又は相応の合金をそれぞれ選択することにより、それぞれの結果得られる透磁率によって、この少なくとも1つの磁性挿入物の作用を的確に制御することができる。この挿入物用に選択された金属ないし合金は、さらに、(例えば、フライス盤、旋盤、研削加工機による)良好な被機械加工性、十分に大きい延性、及び、冷却水に対する良好な耐腐食性を有する必要がある。使用条件に対する適正化が得られるように、適切な金属ないし合金をマグネトロンのそれぞれの磁気特性に応じて選択することができる。
【0024】
好適な1実施形態では、この少なくとも1つの磁性挿入物は(鉄、鉄合金、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金)のグループの中の1つの金属ないし1つの合金で作られている。
【0025】
この少なくとも1つの磁性挿入物は様々な方法で接続ピースと結合することができる。この磁性挿入物は、例えば、適切な嵌め合いを介するだけで接続ピースの円筒形の外側、又は、円筒形の内側に取り付けることができるので、軸方向に沿った位置の変更はこの挿入物を軸方向に変位することにより可能であり、ターゲットの運転期間中に、この挿入物を含む接続ピースをターゲット体から取り外す又は分解することなしに、この挿入物の位置を変更する、調整する、又は、位置決めすることができる。
【0026】
しかし、好適な方法では、この少なくとも1つの磁性挿入物はねじ
接続で接続ピースと
接続されている。ねじ
接続を使用することにより、円筒型ターゲットを成膜装置内で使用中に、例えば磁界の作用により、又は、円筒型ターゲットを成膜装置内で垂直方向に設置する場合にも、この磁性挿入物が滑らないことが保証される。ねじ
接続を使用することにより、この少なくとも1つの磁性挿入物の位置を接続ピースの軸方向に沿って無段階で、且つ、非常に高精度に調整することも可能である。ねじ
接続を使用することにより、同様に、この挿入物の芯出しを簡単に行うことができるので、円筒型ターゲットの回転中に均一な磁界弱めが保証される。
【0027】
好適な1実施形態では、この少なくとも1つの磁性挿入物が接続ピースの円筒形の内面の一部と結合されている。この配置のメリットは、その磁性挿入物に容易にアクセス可能であり、これを大変な面倒なしに位置決めできることである。この挿入物の位置は、接続ピース自身を円筒型ターゲット体から取り外すことなしに、取り付けられた接続ピースとは無関係に変更することができる、ないし、円筒型ターゲットの実際の減耗プロファイルに合わせることができる。
【0028】
別の好適な実施形態では、この少なくとも1つの磁性挿入物が接続ピースの円筒形の外面の一部と結合されている。この配置のメリットは、この挿入物が冷却水と直接に接触しておらず、さらに、この挿入物が円筒型ターゲット体外側表面により近く取り付けられており、その結果、材料減耗へ的確に影響を与えることが可能である、ことである。
【0029】
さらに好適には、この少なくとも1つの磁性挿入物が、少なくとも片手、1つの工具、又は、1つの磁石を用いて接触可能な、少なくとも1つの手段を有しており、この手段を用いてこの少なくとも1つの磁性挿入物の軸方向の位置を変更することができる。
【0030】
特に好適な実施形態では、この少なくとも1つの手段は、(切り込み(Kerbe)、窪み(Senke)、へこみ(Mulde)、穴(Vertiefung)、ナット(Nut)、溝(Rille)、孔(Bohrung)、ジャーナル(Zapfen)、ねじ(Gewinde)、円錐形部品(Konus)、テーパー(Kegel)、角状部品(Kante))のグループの中の少なくとも1つのコンポーネントを、磁性挿入物の半径方向に有している。(切り込み、窪み、へこみ、穴、ナット、溝、孔、ピン、ねじ、円錐形部品、テーパー状部品、角)のグループの中のこの少なくとも1つのコンポーネントは、これに対応した工具、例えば、ペンチ(Zange)、ピン(Dorn)、トング(Feder)、スパナ(Schluessel)、又は、人の手も、このコンポーネントに係合し、又は、それを掴むことができるように、設計されている。これにより、少なくとも1つの磁性挿入物の位置を接続ピースの軸方向に沿って特に精密に変更することが可能である。
【0031】
別の実施形態では、磁性挿入物の位置を1つの磁石の助けを借りて変えることができる。例えば、強磁性体磁性挿入物の位置を永久磁石(例えば、鉄ベースの磁石、又は、希土類磁石)を用いて変えることができる。
【0032】
別の実施形態では、本発明による接続ピースが2つ以上の磁性挿入物を有している。多数の磁性挿入物を使用することによって、円筒型ターゲットの端部領域の磁界を、特にフレキシブル、且つ、ピッタリ合うように調整することができる。
【0033】
図面に基づき本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1の実施形態による円筒型ターゲット(1a)の1端部を側面から見た断面の模式図であり、本発明による接続ピース(6a)が円筒形のターゲット体(2a)の1端に配置されている。この接続ピースは1つの磁性挿入物(4a)を有し、この磁性挿入物の位置は接続ピースの軸方向(矢印方向)に沿って可変である。この実施形態では、この磁性挿入物は接続ピースの円筒形の内面に配置されている。
【
図2】第2の実施形態による円筒型ターゲット(1b)の1端部を側面から見た断面の模式図であり、本発明による接続ピース(6b)が円筒形のターゲット体(2b)の1端に配置されている。この接続ピースは1つの磁性挿入物(4b)を有し、この磁性挿入物の位置は接続ピースの軸方向(矢印方向)に沿って可変である。この実施形態では、この磁性挿入物は接続ピースの円筒形の外面に配置されている。
【
図3】第3の実施形態による円筒型ターゲット(1c)の1端部を側面から見た断面の模式図であり、本発明による接続ピース(6c)が円筒形のターゲット体(2c)の1端に配置されている。この接続ピースは多数の磁性挿入物(4c)を有し、これらの磁性挿入物は接続ピースの円筒形の内面に取り付けられている。これらは例えば接続ピース内にねじ込まれた挿入物とすることができる、
または、接続ピースの円筒形の内面にのみ挿入された挿入物とすることができる。これらの挿入物の位置も接続ピースの軸方向に沿って可変である。こうして、個々の挿入物を的確に、取り付け、再び取り外し、又は、別の位置に設置することができる。これにより、この実施形態では、これらの磁性挿入物の数も的確に変えることができる。
【符号の説明】
【0035】
1a−c 円筒型ターゲット
2a−c ターゲット体
4a−c 磁性挿入物
6a−c 接続ピース
A 円筒型ターゲットの軸線