【実施例1】
【0011】
判定装置10は、特定振動パターンの振動を与えるように複数の凹凸部が連続して配置されている道路上の所定区間(以下、凹凸配置区間と称する)を判定装置10を搭載する車両が走行する際に、当該車両が逆走していることを判定する装置である。
【0012】
判定装置10は、GPS(Global Positioning System)アンテナ11、GPS受信部12、収音部13、車速センサ14、音声出力部15、格納部16及び制御部17を備える。
【0013】
GPSアンテナ11は、GPS衛星から送信された電波を受信してGPS受信部12に供給する。
【0014】
GPS受信部12は、複数のGPS衛星から送信された電波に基づいて各GPS衛星からの距離を算出することにより、車両の現在位置を示す位置情報を生成する。GPS受信部12は、生成した位置情報を制御部17に供給する。
【0015】
収音部13は、マイクロフォン等の収音装置から構成される。収音部13は、制御部17による制御に応じて、凹凸配置区間に連続して配置されている凹凸部(以下、一連の凹凸部とも称する)によって車両に振動が生じることにより発生する音を収音する。すなわち、収音部13は、一連の凹凸部によって車両に与えられる振動パターンを音として検出する検出部である。収音部13は、収音により得られた収音信号を振動パターン情報として制御部17に供給する。
【0016】
車速センサ14は、車両の移動速度を検出する速度検出部である。車速センサ14は、車両のECU(Engine Control Unit)(図示せず)から車速パルス信号を取得し、車両の車速を算出する。車速センサ14は、算出した車速を示す車速情報を制御部17に供給する。
【0017】
音声出力部15は、例えばアンプ及びスピーカから構成される。音声出力部15は、制御部17の制御に応じて、車両が逆走していることを報知する警告音を車両内部に出力する。
【0018】
格納部16は、ハードディスクや不揮発性メモリ等の記憶装置から構成され、地図情報格納部16a及び参照情報格納部16bを備える。
【0019】
地図情報格納部16aは、凹凸配置区間を有する道路及び当該道路上における凹凸配置区間の位置の情報を含む地図情報を格納する。なお、凹凸配置区間は複数の地点に存在しており、地図情報格納部16aは、各地点における凹凸配置区間の地図上の位置の情報を格納する。
【0020】
図2は、凹凸配置区間を含む道路の例を模式的に示す図である。ここでは、凹凸配置区間が、例えば第1区間X、第2区間Y及び第3区間Zの3つの区間から構成されている例について示す。
【0021】
凹凸配置区間では、規定の進行方向である順方向D(図中、矢印Dで示す)に対して直交する方向に延在する複数の溝によって、複数の凹凸部が連続して形成されている。溝同士の間隔(すなわち、順方向Dに平行な方向における間隔)は、第1区間X、第2区間Y及び第3区間Zの区間毎に独立に設定されており、夫々の区間内においては等間隔となっている。例えば、
図2に示す凹凸配置区間の例では、溝同士の間隔は第1区間Xで最も大きく、次いで第2区間Yで大きく、第3区間Zで最も小さい。すなわち、溝同士の間隔は車両が順方向Dを進むにつれて小さくなり、規定の進行方向とは逆の方向である逆方向R(図中、矢印Rで示す)を進むにつれて大きくなる。
【0022】
図3は、順方向D及び逆方向Rに平行な方向における、凹凸配置区間の断面を模式的に示す図である。第1区間Xでは、順方向Dに平行な方向における溝の中央部から次の溝の中央部までの距離(以下、溝の形成間隔と称する)を一定の間隔L1として、幅Wの溝Gが複数形成されている。第2区間Yでは、溝の形成間隔を一定の間隔L2(例えば、L2<L1)として、幅Wの溝Gが複数形成されている。第3区間Zでは、溝の形成間隔を一定の間隔L3(例えば、L3<L2<L1)として、幅Wの溝Gが複数形成されている。
【0023】
第1区間X、第2区間Y及び第3区間Zでは、車両が通過する際にタイヤTに生じる振動によって所定の音階の音が発生するような溝の形成間隔で溝Gが形成されている。各区間における溝の形成間隔(間隔L1〜L3)は、各区間を通過する車両において想定される法定速度等の所定の速度(以下、想定速度と称する)及び音階の周波数に基づいて算出された間隔に従って形成されている。
【0024】
図4は、音階と周波数との関係及び想定速度を時速40kmと仮定した場合の溝Gの形成間隔の例を示す図である。例えば、「ド」の音の周波数は約261.62Hzであるため、想定速度を時速40km(=秒速約11.11m)とすると、ドの音を発生させるためには、11.11m毎に261.62個の溝Gが形成されていれば良い。従って、溝の形成間隔は約4.25cmとなる。同様に、「レ」の音の周波数は約293.66Hzであるため、レの音を発生させる区間における溝の形成間隔は3.78cmとなる。また、「ミ」の音の周波数は約329.62であるため、ミの音を発生させる区間における溝の形成間隔は3.37cmとなる。
【0025】
従って、
図2及び
図3に示す凹凸配置区間において、例えば第1区間Xにおける間隔L1が4.25cm、第2区間Yにおける間隔L2が3.78cm、第3区間Zにおける間隔L3が3.37cmであるとすると、車両が順方向Dの向きに走行した場合、一連の凹凸部により車両に与えられる振動により、「ド」「レ」「ミ」の順に音が発生する。一方、車両が逆方向Rの向きに走行した場合、一連の凹凸部により車両に与えられる振動により、「ミ」「レ」「ド」の順に音が発生する。
【0026】
再び
図1を参照すると、参照情報格納部16bは、車両が凹凸配置区間を規定の進行方向に走行した場合に一連の凹凸部が車両に与える特定振動パターンの振動により生じる音(以下、単に特定振動パターンの音と称する)の信号波形の情報を特定振動パターン情報として格納する。また、参照情報格納部16bは、特定振動パターンの音を逆再生した音(以下、単に逆再生パターンの音と称する)の信号波形の情報を逆再生パターン情報として格納する。以下、特定振動パターン情報及び逆再生パターン情報を総称して、参照情報と称する。
【0027】
図5は、参照情報を格納する参照テーブルLTの例を示す図である。参照テーブルLTには、特定振動パターン情報及び逆再生パターン情報が、凹凸配置区間を有する各地点と対応付けて格納されている。例えば、地点Aでは、特定振動パターンの音は「ドレミ」、逆再生パターンの音は「ミレド」である。いずれの地点においても、特定振動パターンの音が逆再生パターンの音と異なるように、凹凸配置区間における一連の凹凸部が形成されている。
【0028】
図6(a)は特定振動パターンの音の信号波形のイメージを模式的に示す図であり、
図6(b)はこれに対応する逆再生パターンの音の信号波形のイメージを模式的に示す図である。逆再生パターンの音の信号波形は、特定振動パターンの音の信号波形の左右を反転させたような信号波形となる。
【0029】
再び
図1を参照すると、制御部17は、CPU(Central Processing Unit)から構成され、判定装置10の各部を制御する。例えば、制御部17は、GPS受信部12から供給された位置情報と格納部16の地図情報格納部16aから読み出した地図情報とに基づいて、車両が凹凸配置区間のうちの1つに接近しているか否かを判定する。そして、車両が凹凸配置区間に接近したと判定すると、制御部17は、収音部13を制御して収音を開始させる。また、車両が凹凸配置区間から離れたと判定すると、制御部17は、収音部13を制御して収音を停止させる。
【0030】
また、制御部17は、パターン取得部17a及び判定部17bとして機能する。
【0031】
パターン取得部17aは、GPS受信部12から供給された位置情報と地図情報格納部16aに格納されている地図情報とに基づいて、車両が接近している凹凸配置区間に対応する参照情報を参照情報格納部16bから読み出し、逆再生パターン情報を取得する。
【0032】
判定部17bは、車速センサ14から取得した車速情報に基づいて、収音部13が取得した収音信号の信号波形を補正し、車両の車速を想定速度と仮定した場合の信号波形となるように調整する。そして、判定部17bは、調整後の収音信号の信号波形と逆再生パターンの音の信号波形とを比較して、車両が逆走していることを判定する。
【0033】
その際、判定部17bは、調整後の収音信号の信号波形が逆再生パターンの音の信号波形の全体と一致するのを待つのではなく、少なくとも一部と実質的に一致すると判定した段階で、車両が逆走していると判定する。例えば、車両が地点Aを走行中である場合、地点Aにおける逆再生パターンの音は「ミレド」であるため、判定部17bは、収音信号の信号波形が「ミレ」となり、逆再生パターンの音の冒頭の2音と実質的に一致すると判定した段階で、車両が逆走していると判定する。
【0034】
次に、判定装置10が行う逆走判定の動作について、
図7のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0035】
制御部17は、車両の位置情報をGPS受信部12から取得する(ステップS101)。また、制御部17は、車両の車速を示す車速情報を車速センサ14から取得する(ステップS102)。
【0036】
制御部17は、格納部16の地図情報格納部16aから地図情報を読み出し、地図情報と車両の位置情報とに基づいて、凹凸配置区間に車両が接近しているかどうかを判定する(ステップS103)。接近していないと判定すると、ステップS101に戻り、制御部17は再び位置情報の取得を行う。
【0037】
一方、凹凸配置区間に車両が接近していると判定すると、パターン取得部17aは、参照情報格納部16bから参照情報を読み出し、車両が接近している凹凸配置区間に対応する逆再生パターン情報の信号波形の情報を取得する(ステップS104)。
【0038】
制御部17は、収音部13を制御して、車両のタイヤと路面との間で発生している音を収音させる(ステップS105)。収音部13は、収音信号を制御部17に供給する。
【0039】
判定部17bは、車速センサ14から取得した車速情報に基づいて、収音信号の信号波形を調整し、車両の車速が想定速度であると仮定した場合の収音信号の信号波形を生成する(ステップS106)。
【0040】
判定部17bは、波形調整後の収音信号の信号波形と逆再生パターンの音の信号波形とを比較し、収音信号の信号波形が逆再生パターンの音の信号波形の少なくとも一部と実質的に一致するか否かを判定する(ステップS107)。一致しないと判定すると、制御部17は、逆走判定処理を終了する。
【0041】
一方、波形が実質的に一致すると判定すると、判定部17bは、車両が逆走していると判定する(ステップS108)。
【0042】
制御部17は、音声出力部15を制御して、車両が逆走していることを報知する警告音を出力させる(ステップS109)。
【0043】
以上の動作により、判定装置10は、車両が逆走していることを判定する。
【0044】
本実施例の判定装置10は、車両が凹凸配置区間を走行する際に一連の凹凸部が車両に与える振動によって発生する音を収音する。そして、判定装置10は、収音信号の信号波形と、凹凸配置区間を規定の方向に走行した場合に車両に与えられる特定振動パターンにより生じる音のパターンを逆再生した逆再生パターンの音の信号波形とを比較して、車両が逆走していることを判定する。従って、直線区間であるかカーブ区間であるかを問わず、逆走判定を行うことができる。
【0045】
また、車両が凹凸配置区間を走行する際に発生する音を用いて判定を行うため、視界が良いか悪いかを問わず、車両が逆走していることを判定することができる。
【0046】
また、収音信号の信号波形と逆再生パターンの音の信号波形とを比較結果することによって判定を行うため、複雑な処理を必要とせず、車両が逆走していることを簡易且つ迅速に判定することが可能となる。
【実施例2】
【0047】
本実施例の判定装置20について、
図8を参照して説明する。なお、実施例1と同様又は等価な構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0048】
判定装置10は、GPSアンテナ11、GPS受信部12、振動センサ21、車速センサ14、音声出力部15、格納部22及び制御部23を備える。
【0049】
振動センサ21は、車両が走行中に車体に伝わる振動を検出するセンサである。振動センサ21は、例えば車両のサスペンションの挙動を検出することにより、車体の振動を検出する。振動センサ21は、制御部23による制御に応じて、車両が凹凸配置区間を走行する際に一連の凹凸部によって車両に与えられる振動を検出し、振動パターン情報として制御部17に供給する。
【0050】
格納部22は、ハードディスクや不揮発性メモリ等の記憶装置から構成され、地図情報格納部22a及び参照情報格納部22bを備える。
【0051】
地図情報格納部22aは、凹凸配置区間を有する道路及び当該道路上における凹凸配置区間の位置の情報を含む地図情報を格納する。
【0052】
参照情報格納部22bは、車両が凹凸配置区間を規定の進行方向に走行した場合に一連の凹凸部が車両に与える振動のパターンである特定振動パターンの信号波形の情報及び特定振動パターンを逆再生した逆再生パターンの信号波形の情報を参照情報として、凹凸配置区間を有する各地点の情報と対応付けて格納する。なお、いずれの地点においても、凹凸配置区間における一連の凹凸部は、特定振動パターンの信号波形と逆再生パターンの信号波形とが異なるように形成されている。
【0053】
制御部23は、CPUから構成され、判定装置20の各部を制御する。例えば、制御部23は、GPS受信部12から供給された位置情報と格納部22の地図情報格納部22aから読み出した地図情報とに基づいて、車両が凹凸配置区間のうちの1つに接近しているか否かを判定する。そして、車両が凹凸配置区間に接近したと判定すると、制御部23は、振動センサ21を制御して振動検出を開始させる。また、車両が凹凸配置区間から離れたと判定すると、制御部23は、振動センサ21を制御して振動検出を停止させる。
【0054】
また、制御部23は、パターン取得部23a及び判定部23bとして機能する。
【0055】
パターン取得部23aは、GPS受信部12から供給された位置情報と地図情報格納部22aに格納されている地図情報とに基づいて、車両が接近している凹凸配置区間に対応する参照情報を参照情報格納部22bから読み出し、逆再生パターン情報を取得する。
【0056】
判定部23bは、車速センサ14から取得した車速情報に基づいて、振動センサ21が取得した振動パターン情報の信号波形を補正し、車両の車速を想定速度と仮定した場合の信号波形となるように調整する。そして、判定部23bは、調整後の振動パターン情報の信号波形と逆再生パターンの信号波形とを比較して、車両が逆走していることを判定する。その際、判定部23bは、調整後の振動パターン情報の信号波形が逆再生パターンの信号波形の少なくとも一部と実質的に一致した段階で、車両が逆走していると判定する。
【0057】
上記の通り、本実施例の判定装置20は、振動センサ21を備える。振動センサ21は、実施例1の収音部13とは異なり、凹凸配置区間を通過する際に車両に与えられる振動を音ではなく車体に伝わる振動そのものとして検出する。そして、判定部23bは、振動センサ21が取得した振動パターン情報に基づいて、車両が逆走していることを判定する。
【0058】
従って、本実施例の判定装置20によれば、凹凸配置区間における一連の凹凸部を構成する溝が音階の周波数に対応する間隔で形成されていない場合であっても、逆走判定を行うことができる。また、周囲の騒音等の影響により収音することが困難な状況においても、逆走判定を行うことができる。
【0059】
なお、本発明の実施形態は、上記実施例で示したものに限られない。例えば、上記実施例では、判定装置が移動体としての車両に搭載されている車載装置である場合を例として説明した。しかし、判定装置は、スマートフォン等の携帯型端末であっても良い。例えば、携帯型端末が車両の内部にある状態で、判定動作を行うためのアプリケーションプログラムを実行することにより、当該携帯型端末を判定装置として動作させることが可能である。
【0060】
また、上記実施例では、判定装置10が位置情報取得部としてのGPSアンテナ11及びGPS受信部12を有し、車両の位置情報に基づいて、収音部13及び振動センサ21の制御及び参照情報の取得を行う例について説明した。しかし、判定装置10及び20は、GPSアンテナ11及びGPS受信部12を有しない構成であっても良い。
【0061】
例えば、判定装置10がGPSアンテナ11及びGPS受信部12を有しない場合、収音部13は、車両が凹凸配置区間に接近しているか否かにかかわらず収音を行い、収音信号を振動パターン情報として取得する。パターン取得部17aは、参照情報格納部16bに格納されている逆再生パターン情報を全て読み出す。判定部17bは、収音信号の信号波形と逆再生パターンの音の信号波形とを順次比較し、車両が逆走していることを判定する。
【0062】
同様に、判定装置20がGPSアンテナ11及びGPS受信部12を有しない場合、振動センサ21は、車両が凹凸配置区間に接近しているか否かにかかわらず振動の検出を行い、振動パターン情報を取得する。パターン取得部23aは、参照情報格納部22bから逆再生パターンの信号波形を全て読み出す。判定部23bは、振動パターン情報の信号波形と逆再生パターンの信号波形とを順次比較し、車両が逆走していることを判定する。
【0063】
また、上記実施例では、参照情報格納部16b及び22bに、特定振動パターン情報及び逆再生パターン情報が参照情報として格納されている例について説明した。しかし、参照情報として格納される情報は、特定振動パターン情報又は逆再生パターン情報のいずれか一方のみであっても良い。例えば、特定振動パターン情報のみが参照情報として格納されている場合、パターン取得部16aは、読み出した特定振動パターン情報に基づいて逆再生パターン情報を生成する。そして、判定部16bは、生成した逆再生パターン情報に基づいて、逆走判定を行う。一方、逆再生パターン情報のみが参照情報として格納されている場合、判定部17bは、パターン取得部16aが読み出した逆再生パターン情報をそのまま用いて、逆走判定を行う。
【0064】
また、特定振動パターン及び逆再生パターンは、上記実施例で示したものに限られない。例えば、特定振動パターンの振動によって発生する音のパターンを構成する音の数及び組み合わせは、上記実施例1で示したものに限られない。また、上記実施例2では、一連の凹凸部は、特定振動パターン及び逆再生パターンによる振動が所定の音階を生じさせる周波数となるように形成されている必要はなく、特定振動パターンと逆再生パターンとが異なるパターンとなるように形成されていれば良い。
【0065】
また、上記実施例では、凹凸配置区間の特定振動パターン及び逆再生パターンが地点毎に異なる例について説明した。しかし、特定振動パターン及び逆再生パターンは各地点において共通のパターンであっても良い。
【0066】
また、上記実施例では、車両が逆走していることを報知する警告音を車両内部に出力すると説明した。しかし、逆走を判定した際の対処方法は、ブレーキ制御などの車両制御や、車外における通報、搭載通信端末による通報などでも良い。
【0067】
また、上記実施例で説明した一連の処理は、例えばROMなどの記録媒体に格納されたプログラムに従ったコンピュータ処理により行うことができる。