(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746802
(24)【登録日】2020年8月7日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】インドキサカルブの大規模化可能な調製方法
(51)【国際特許分類】
C07D 273/04 20060101AFI20200817BHJP
B01J 31/02 20060101ALI20200817BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20200817BHJP
【FI】
C07D273/04
B01J31/02 102Z
!C07B61/00 300
【請求項の数】28
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-553295(P2019-553295)
(86)(22)【出願日】2018年3月27日
(65)【公表番号】特表2020-515585(P2020-515585A)
(43)【公表日】2020年5月28日
(86)【国際出願番号】IL2018050356
(87)【国際公開番号】WO2018178982
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年10月9日
(31)【優先権主張番号】201731011147
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】IN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517104138
【氏名又は名称】アダマ・マクテシム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタラマナ、ラジュリ
(72)【発明者】
【氏名】ビチディ、ジャヤパル レディ
(72)【発明者】
【氏名】ピライ、ビジュクマール ゴピナサン
(72)【発明者】
【氏名】マナム、スリーデビ
【審査官】
伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−253170(JP,A)
【文献】
米国特許第04065496(US,A)
【文献】
GHARDA CHEMICALS LTD.,IN 2005MU00530 A,2005年11月14日
【文献】
CHEMINOVA INDIA LTD,IN 2013MU00140 A,2014年10月17日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
B01J
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)として表される、ラセミ体の又
は一方の鏡像異性体の割合が高いインドキサカルブの調製方法であって、
【化1】
ラセミ体の又
は一方の鏡像異性体の割合が高い下記式(I)で表される化合物を、
【化2】
炭化水素溶媒中、有機塩基及び相間移動触媒の存在下でメトキシカルボニル化剤及びメチルスルフィニルメチリドの金属塩と反応させることを含む方法。
【請求項2】
メトキシカルボニル化剤は、クロロギ酸メチル、二炭酸ジメチル及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メチルスルフィニルメチリドの金属塩は、アルカリ金属塩及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メチルスルフィニルメチリドの金属塩は、メチルスルフィニルメチリドナトリウム、メチルスルフィニルメチリドカリウム及び/又はそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
炭化水素溶媒は、パラフィン系溶媒、芳香族溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
炭化水素溶媒は、ヘキサン、石油エーテル、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、メシチレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
有機塩基は、二級及び/又は三級アミン及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
有機塩基は、N−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
有機塩基は4−ジメチルアミノピリジンである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
相間移動触媒はテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
メチルスルフィニルメチリドの金属塩をin situで調製することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
メチルスルフィニルメチリドの金属塩は、金属水素化物及びジメチルスルホキシドを用いて調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
金属水素化物は、水素化ナトリウム、水素化カリウム及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
反応が−5〜+20℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
反応が−5〜+20℃の温度で実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ラセミ体の又は一方の鏡像異性体の割合が高いインドキサカルブを単離することをさらに含む、請求項1〜16に記載の方法であって、前記単離することが、n−ヘプタン/トルエン溶媒混合物を用いて粗半固体反応生成物を再結晶化することを含む方法。
【請求項18】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:2のn−ヘプタン/トルエンを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:0.5のn−ヘプタン/トルエンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:1のn−ヘプタン/トルエンを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ラセミ体の又は一方の鏡像異性体の割合が高いインドキサカルブを単離することをさらに含む、請求項1〜13に記載の方法であって、前記単離することが、n−ヘプタン/酢酸エチル溶媒混合物を用いて粗半固体反応生成物を再結晶化することを含む方法。
【請求項22】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:2のn−ヘプタン/酢酸エチルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:0.5のn−ヘプタン/酢酸エチルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:1のn−ヘプタン/酢酸エチルを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
ラセミ体の又は一方の鏡像異性体の割合が高いインドキサカルブを単離することをさらに含む、請求項1〜16に記載の方法であって、前記単離することが、メチルシクロヘキサン/メタノール溶媒混合物を用いて粗半固体反応生成物を再結晶化することを含む方法。
【請求項26】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:2のメチルシクロヘキサン/メタノールを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:0.5のメチルシクロヘキサン/メタノールを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
溶媒混合物は、10:0.1〜10:1のメチルシクロヘキサン/メタノールを含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセミ体の又はキラル中心で一方の鏡像異性体の割合が高い、節足動物駆除剤オキサジアジンインドキサカルブを、そのアミド前駆体である式(I)で表されるメチル−7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[[(4−トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]−インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシラートから、メトキシカルボニル化剤及び新規な触媒系を使用して調製するための向上した大規模化可能な方法に関する。
【0002】
【化1】
【背景技術】
【0003】
節足動物駆除剤オキサジアジン及び生物学的に活性なオキサジアジンの調製のための対応する合成方法は、特許文献1及び特許文献2に既に開示されている。しかし、これらの調製方法は安全で経済的な操業のために依然として改善を要する。特に、水素化ナトリウム塩基の存在下でのクロロギ酸メチルによるアミド前駆体のアシル化が、一般式(I)の化合物として表される殺虫剤インドキサカルブを調製する効率的な方法として開示されている。
【0004】
【化2】
【0005】
一般に、水素化ナトリウムは、求核置換反応における基質活性化の一般的な塩基である。水素化ナトリウムは、アルコール、フェノール、アミド、ケトン、エステル、及び他の官能基の、それらの求核置換を促進するための脱プロトン化に一般的に使用される塩基である。水素化ナトリウムは、塩基としても水素化物源としても機能することができる。これらの反応の溶媒としてジメチルホルムアミド又はアセトニトリルを使用すると、クロロギ酸メチルなどの求電子剤の存在下では、この二役の性質は、副産物の形成をもたらす。
【0006】
特許文献3は、一般的な方法で、DMF中の水素化ナトリウム及びクロロギ酸メチルを用いた活性オキサジアジンのアミド前駆体のアシル化を開示しているが、最終活性オキサジアジンの収率や鏡像異性体に関する実験データはない。
【0007】
この種の変換には、副反応、特に、金属水素化物のDMFとの不均化反応が含まれ、ジメチルアミン及び一酸化炭素をもたらす。このことはかなり前に、非特許文献1及び2に既に報告されている。
【0008】
Cheminova India Ltd.のインド特許出願第140/MUM/2013号は、アセトニトリル中、又は好ましくは二塩化メチレンとアセトニトリルの溶媒系中で、クロロギ酸メチルと水素化ナトリウムを使用したインドキサカルブのアミド前駆体のアシル化を開示している。
【0009】
アセトニトリルは、空気から水を容易に吸収する吸湿性溶媒であることが知られている。前述のアシル化プロセスのように、乾燥状態に保つべき工業プロセスの場合、これは好ましくない。さらに、アセトニトリルはこのプロセスに対して必ずしも不活性ではないようである。アセトニトリルは、強塩基、特に金属水素化物と脱プロトン化反応を起こし、ニトリル安定化アニオンを生成することが知られている。ニトリル安定化アニオンは、非特許文献3に報告されているように、三量体4−アミノ−2,6−ジメチルピリミジンを生成する副反応に関与する。
【0010】
二塩化メチレンは、環境及び健康に有害な揮発性の高いハロゲン化溶媒であり、商業規模での開かれた利用は好ましくない。Gharda Chemicals Ltd.の特許文献4は、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、及びジオキサン、モノグリム、ジグリム、その他の開鎖又は環状エーテルなどのエーテル溶媒からなる溶媒混合物中で、水素化ナトリウムとクロロギ酸メチルを使用した、インドキサカルブのアミド前駆体の前述のアシル化を開示している。
【0011】
エーテル溶媒は、空気中の酸素を吸収して反応し、不安定な過酸化物を形成する傾向があり、これは、回収プロセス中に蒸発や蒸留により濃縮された場合、爆発性混合物をもたらし得る他の化合物と組み合わされた場合、又は通常とは異なる熱、衝撃、又は摩擦によりかき乱された場合に、激しい力で爆発する可能性がある。したがって、商業規模で大量のエーテル溶媒を使用することは好ましくない。
【0012】
さらに、前者の方法は再現性に欠けるため、商業規模での使用を望む以前に細かく詳述される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第92/11249号
【特許文献2】国際公開第93/19045号
【特許文献3】国際公開第92/11249号
【特許文献4】インド特許第241255号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Neumeyer JL,Cannon JG.J Org Chem.1961;26:4681−4682
【非特許文献2】Armarego DD,Perrin WLF.Purification of Laboratory Chemicals.Butterworth Heinemann;1997.p.192
【非特許文献3】Anthony R.Ronzio and William B.Cook in Org.Synth.1944,24,6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上記を考慮すると、インドキサカルブをそのアミド前駆体から大規模に調製するための改善された方法であって、産業用途に適しており、高効率、低コストで、環境にやさしく、高収率を提供し、再現性の高さと簡単なワークアップにより、先行技術の欠点を克服する方法が依然として必要である。
【0016】
驚くべきことに、インドキサカルブのアミド前駆体を炭化水素溶媒中、有機塩基及び相間移動触媒の存在下でメトキシカルボニル化剤及びメチルスルフィニルメチリド(methylsulfinylmethylide)の金属塩と反応させると、インドキサカルブがより高い収率及び再現性で形成され、毒性及び爆発性の溶媒系の使用を回避できることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、式(II)として表される、ラセミ体の又はキラル中心で一方の鏡像異性体の割合が高いインドキサカルブの調製方法を提供する。
【0018】
【化3】
【0019】
この方法は、ラセミ体の又はキラル中心で一方の鏡像異性体の割合が高い下記式(I)で表される化合物を、
【0020】
【化4】
【0021】
炭化水素溶媒中、有機塩基及び相間移動触媒の存在下でメトキシカルボニル化剤及びメチルスルフィニルメチリドの金属塩と反応させることを含む。さらに、本発明は、n−ヘプタン/トルエン溶媒混合物、n−ヘプタン/酢酸エチル溶媒混合物、及び/又はメチルシクロヘキサン/メタノール溶媒混合物を用いて粗半固体反応生成物を再結晶化することを含む、ラセミ体の又はキラル中心で一方の鏡像異性体の割合が高いインドキサカルブを単離する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本主題を詳細に説明する前に、本明細書で使用される特定の用語の定義を提供することが役立つ場合がある。別様に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本主題が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書で使用される「1つ」という用語は、特に明記しない限り、単数及び複数を含む。したがって、本願では、「1つ」、又は「少なくとも1つ」という用語は区別なく使用することができる。
【0024】
本願を通して、様々な実施形態の説明は「含む」という用語を使用しているが、一部の特定の例では、実施形態は代わりに「実質的に〜からなる」又は「からなる」という言葉を使用して説明できることを当業者は理解するであろう。
【0025】
本教示をよりよく理解するために、本教示の範囲を決して限定するものではないが、特に明記しない限り、量、パーセンテージ、又は割合、ならびに明細書及び特許請求の範囲で使用される他の数値を表す全ての数字は、全ての例で「約」という用語で修飾されるものとする。
【0026】
したがって、そうでないことが示されていない限り、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、各数値パラメータは、報告された有効数字の数を考慮し、通常の丸め手法を適用して少なくとも解釈する必要がある。これに関して、本願における用語「約」の使用は、示された値から具体的に±10%の範囲を含む。さらに、本明細書の同じ構成要素又は特性を対象とする全ての範囲には、その上限値及び下限値が含まれ、上限値及び下限値は独立に組み合わせ可能であり、全ての中間値及び範囲も含まれる。
【0027】
メチル−7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[(メトキシカルボニル)[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]−インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシラート(インドキサカルブ)の調製
本発明は、ラセミ体の又はキラル中心で一方の鏡像異性体の割合が高い式(II)として表されるインドキサカルブの調製方法を提供する。
【0029】
この方法は、ラセミ体の又はキラル中心で一方の鏡像異性体の割合が高い以下の式(I)で表される化合物を、
【0031】
炭化水素溶媒中、有機塩基及び相間移動触媒の存在下でメトキシカルボニル化剤及びメチルスルフィニルメチリドの金属塩と反応させることを含む。
一実施形態によれば、メトキシカルボニル化剤は、クロロギ酸メチル、二炭酸ジメチル及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0032】
本発明の一態様によれば、式(I)のアミド前駆体のメトキシカルボニル化剤に対するモル比は、約1:1から約1:5である。
一実施形態によれば、炭化水素溶媒は、パラフィン系溶媒、芳香族溶媒、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
好ましい実施形態によれば、炭化水素溶媒は、ヘキサン、石油エーテル、トルエン、クロロベンゼン、キシレン、メシチレン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
別の実施形態によれば、式(II)として表される化合物の調製方法は、約−5〜+20℃、好ましくは約−5〜+5℃の温度で実施することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、メチルスルフィニルメチリドの金属塩は、アルカリ金属塩及びそれらの混合物からなる群から、好ましくは、メチルスルフィニルメチリドナトリウム、メチルスルフィニルメチリドカリウム及び/又はそれらの混合物から選択される。
【0035】
本発明の別の実施形態では、有機塩基は、二級及び/又は三級アミン及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、有機塩基は、N−メチルイミダゾール、4−ジメチルアミノピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0036】
一実施形態によれば、相間移動触媒は、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0037】
好ましい実施形態では、相間移動触媒はテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)である。
一実施形態によれば、メチルスルフィニルメチリドの金属塩は、金属水素化物及びジメチルスルホキシドを用いて調製される。
【0038】
一実施形態では、金属水素化物は、水素化ナトリウム、水素化カリウム及び/又はそれらの混合物からなる群から選択される。
別の実施形態では、メチルスルフィニルメチリドの金属塩の調製の反応は、約−5〜+20℃、好ましくは約−5〜+5℃の温度で実施することができる。
【0039】
好ましい実施形態によれば、インドキサカルブは、n−ヘプタン/トルエン溶媒混合物を使用して最終粗半固体生成物から再結晶化される。n−ヘプタン/トルエン溶媒混合物の特に好ましい比は、約10:0.1から約10:1である。
【0040】
好ましい実施形態によれば、式(I)のアミド前駆体のクロロギ酸メチルに対するモル比は、約1:2から約1:3.3である。
別の好ましい実施形態によれば、式(I)のアミド前駆体の二炭酸ジメチルに対するモル比は、約1:2から約1:3である。別の実施形態において、式(I)のアミド前駆体の有機塩基に対するモル比は、約1:0.1から約1:1、好ましくは約1:0.25から1:1である。
【0041】
一実施形態によれば、式(I)のアミド前駆体の相間移動触媒に対するモル比は、約1:0.1から約1:1、好ましくは約1:0.25から1:1である。
別の実施形態によれば、式(I)のアミド前駆体の金属水素化物に対するモル比は、約1:1から約1:3、好ましくは約1:1.5から約1:2である。
【0042】
別の実施形態によれば、式(I)のアミド前駆体のジメチルスルホキシドに対するモル比は約1:1から約1:3、好ましくは約1:1.3から約1:1.7である。
別の好ましい実施形態によれば、インドキサカルブは、n−ヘプタン/トルエン溶媒混合物を使用して最終粗半固体生成物から再結晶化される。
【0043】
一実施形態によれば、n−ヘプタン/トルエンの混合物は、約10:0.1から約10:2、好ましくは約10:0.1から約10:0.5、より好ましくは約10:0.1から約10:1のn−ヘプタン/トルエンを含む。
【0044】
別の好ましい実施形態によれば、インドキサカルブは、n−ヘプタン/酢酸エチル溶媒混合物を使用して最終粗半固体生成物から再結晶化される。n−ヘプタン/酢酸エチル溶媒混合物の好ましい比は、約10:0.1から約10:2、より好ましくは約10:0.1から約10:0.5、特に好ましくは約10:0.1から約10:1である。
【0045】
追加の好ましい実施形態によれば、インドキサカルブは、メチルシクロヘキサン/メタノール溶媒混合物を使用して最終粗半固体生成物から再結晶化される。メチルシクロヘキサン/メタノール溶媒混合物の特に好ましい比は、約10:0.1から約10:2、より好ましくは約10:0.1から約10:0.5、特に好ましくは約10:0.1から約10:1である。
【0046】
別の実施形態によれば、メチルスルフィニルメチリドの金属塩は、単離することなくin situで調製される。
本発明に含まれるプロセスに関与する反応の進行は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)などのクロマトグラフィー法などを含み得る任意の適切な方法を使用してモニタリングすることができる。
【0047】
さらに別の実施形態では、式(II)の化合物は、当技術分野で周知の任意の従来技術により反応混合物から単離することができる。そのような単離技術は、濃縮、抽出、沈殿、冷却、濾過、結晶化、遠心分離、及びそれらの組み合わせ、その後の乾燥からなる群から、制限なく選択することができる。
【0048】
一実施形態によれば、得られた式(II)の化合物は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の純度で存在する。
【0049】
さらなる詳述がなくても、前述の説明を使用する当業者は、本発明を最大限に利用できると考えられる。以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提示される。したがって、以下の例は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる形であれ本開示を限定するものではない。
【0050】
実施例1(ワンポット合成):
キラル比(88(S):12(R))を有する250.0g(1.0eq)のメチル−7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[[(4トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニルイル]−インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシラートを、2450mLのトルエン及び55.0g(1.32eq)のDMSOと−5℃〜0℃で混合した。次に、42.6g(2.0eq)のNaH(鉱油中60%)を投入し、得られた混合物を−5℃〜0℃で30分間撹拌した。次に、16.1g(0.25eq)のDMAPと43.5g(0.25eq)のテトラブリルアンモニウムブロミド(TBAB)を−5℃〜0℃で加えた。次いで、125mLのトルエン中の164.4g(3.3eq)のクロロギ酸メチルを、−5℃〜0℃で反応混合物に滴下した。反応をさらに30分間保持した後、メタノールで停止させ、最終半固体をn−ヘプタン/トルエン(10/1V/V)から再結晶化して、92%のインドキサカルブを99%のキラル比保持率で得た。
【0051】
実施例2(ワンポット合成):
キラル比(75(S):25(R))を有する250.0(1.0eq)のメチル−7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[[(4−トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]−インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)カルボキシラートを、2450mLのトルエン及び55.0g(1.32eq)のDMSOと−5℃〜0℃で混合した。次に、42.6g(2.0eq)のNaH(鉱油中60%)を投入し、得られた混合物を−5℃〜0℃で30分間撹拌した。次いで、125mLのトルエン中の164.4g(3.3eq)のクロロギ酸メチルを、−5℃〜0℃で反応混合物に滴下した。反応をさらに30分間保持した後、メタノールで停止させ、最終半固体をn−ヘプタン/トルエン(10/0.5V/V)から再結晶させて、92%のインドキサカルブを99%のキラル比保持率で得た。
【0052】
実施例3(2ポット合成):
キラル比(88(S):12(R))を有する250.0g(1.0eq)のメチル−7−クロロ−2,5−ジヒドロ−2−[[[(4−トリフルオロメトキシ)フェニル]アミノ]カルボニル]−インデノ[1,2−e][1,3,4]オキサジアジン−4a(3H)及び1960mL(7.8Vol)のトルエンと44.0g(1.06eq)のDMSOをフラスコA内で混合した。11.0mlのDMSO(0.1.4eq)及び42.6g(2.0eq)のNaH(鉱油中60%)をフラスコB内で−5℃〜0℃で混合した。フラスコAの内容物をフラスコBの内容物に−5℃〜+5℃で滴下し、30分間撹拌した。次いで、16.1g(0.25eq)のN,N−ジメチルアミノピリジン及び43.5g(0.25eq)のTBABを−5℃から0℃で添加した。その後、125mL(0.5Vol)のトルエン中の164.4g(3.3eq)のクロロギ酸メチルを、−5℃から0℃で反応物に滴下した。30分間撹拌した後、反応を−5℃〜+5℃のメタノールで停止させ、30℃にし、濃縮して半固体を得た。次に、得られた半固体を、n−ヘプタン/トルエン(10/1V/V)から再結晶化して、99%の最終インドキサカルブを99%のキラル比保持率で得た。