(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746849
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】光起電性材料及び光起電性デバイスにおけるその使用
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0248 20060101AFI20200817BHJP
【FI】
H01L31/04 300
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-136014(P2016-136014)
(22)【出願日】2016年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-28267(P2017-28267A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2019年1月29日
(31)【優先権主張番号】15176300.0
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514093305
【氏名又は名称】フンダシオ インスティテュート デ サイエンセズ フォトニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ゲラシモス コンスタンタトス
(72)【発明者】
【氏名】マリア バルネチェア ナヴァロ
(72)【発明者】
【氏名】ニコル ケイツ ミラー
【審査官】
山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−170812(JP,A)
【文献】
特開2009−004773(JP,A)
【文献】
特表2013−524530(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1503043(KR,B1)
【文献】
中国特許出願公開第102633297(CN,A)
【文献】
MANOLACHE, S. A. et al.,Improvements in the quality of CuSbS2 films used in solid state solar cells,Proceedings of the International Semiconductor Conference, CAS,2005年,pp. 145-148
【文献】
HUANG, Pen-Chi et al.,AgBiS2 Semiconductor-Sensitized Solar Cells,THE JOURNAL OF PHYSICAL CHEMISTRY C,2013年 8月16日,Vol.117,pp.18308-18314
【文献】
PEI, Yan-Ling et al.,High thermoelectric performance in n-type BiAgSeS due to intrinsically low thermal conductivity,ENERGY & ENVIRONMENTAL SCIENCE,2013年,Vol.6,pp.1750-1755
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYS2及びXYS2−zVzの相を有する立方晶系ナノ結晶性材料を備え、
2>z>0であり、
XはAg又はCuから選択され、
YはBi又はSbから選択され、
Vはハロゲンから選択され、
カチオンのXとYとは、立方格子中において空間的に交互にあり、
アニオン性部位は硫黄原子又はVによって占有されている、
光起電性材料。
【請求項2】
基材;
伝導帯が前記立方晶系ナノ結晶性材料の伝導帯より低く、且つ価電子帯が前記立方晶系ナノ結晶性材料の価電子帯より低い、正孔輸送層と、
伝導帯が、真空に対して、前記立方晶系ナノ結晶性材料の伝導帯より高く、且つ価電子帯が前記立方晶系ナノ結晶性材料の価電子帯より高い、電子受容体n型層と、
の間に配置された請求項1に記載の光起電性材料;及び
最上部に置かれた金属接触子
を含む光起電性デバイス。
【請求項3】
前記基材が、透明な導電性酸化物でコートされた、ガラス又はプラスチック基材から選択される、請求項2に記載の光起電性デバイス。
【請求項4】
前記透明な導電性酸化物が、ITO(インジウムがドープされた酸化スズ)、FTO(フッ素がドープされた酸化スズ)又はAZO(アルミニウムがドープされた酸化亜鉛)から選択される、請求項3に記載の光起電性デバイス。
【請求項5】
前記電子受容体n型層が50nm〜500nmの厚さを有する、請求項2〜4のいずれか一項に記載の光起電性デバイス。
【請求項6】
前記電子受容体n型層が、ZnO、インジウムがドープされたZnO、アルミニウムがドープされたZnO若しくはTiO2、又はそれらの組合せから選択される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の光起電性デバイス。
【請求項7】
前記光起電性材料の厚さが10nm〜500nmである、請求項2〜6のいずれか一項に記載の光起電性デバイス。
【請求項8】
前記正孔輸送層が、スピロ−O−MeTAD、PTAA、PEDOTの有機層、又はP3HT若しくはPTB7から選択される共役ポリマー、又はNiO、MoO3、WO3若しくはSnO2から選択される無機酸化物から選択される、請求項2〜7のいずれか一項に記載の光起電性デバイス。
【請求項9】
前記金属接触子が、MoO3、Au、Ag、Mo、Al又はMoから選択される、請求項2〜8のいずれか一項に記載の光起電性デバイス。
【請求項10】
太陽電池における請求項1に記載の光起電性材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、光起電性材料、及び正孔輸送層と電子受容体層との間の配置された光活性材料を含む光起電性デバイスに関する。
【0002】
本発明は、光起電性材料の使用にも関する。
【0003】
[背景技術]
薄膜太陽電池の技術は、New world record efficiency for Cu(In,Ga)Se
2 thin−film solar cells beyond 20%, P. Jackson et al., Progress in Photovoltaics: Research and Applications, Volume 19, Issue 7, pages 894‐897, November 2011、という論文に記載された黄銅鉱又はケステライトの結晶構造を有する、銅インジウムガリウムサルファイド(sulfide)/セレニド(selenide)又は銅亜鉛スズサルファイド/セレニドに基づく、三元及び四元半導体化合物の使用に今まで依存してきた。
【0004】
コロイド状ナノ結晶に基づく太陽電池デバイスの新しいクラスも開発及び実証されており、それらは、PbS(Se)量子ドット(QDs)若しくはCdSe QDsの二元半導体、ナノロッド又はテトラポッドに主に注目したものである。Hybrid Nanorod−Polymer Solar Cells、Wendy U.Huynh et al. Science 295, 2425 (2002)という論文には、ナノロッドが共役ポリマーであるポリ−3(ヘキシチオフェン)と組み合わされて界面面積の大きい電荷移動接合点を創り出す、ハイブリッドナノロッドポリマー太陽電池が記載されている。
【0005】
量子ドットを架橋する二座配位分子を使用するリガンド交換戦略による、又は量子ドットの表面を不動態化すると同時に物理的付着も容易にするハロゲン化物に基づく原子リガンドを使用することによる、キャリア移動度の増大における進歩を鑑みると、今や8%程度という賞賛すべき電力変換効率に達したPbS QDsの事例は、特に関心を集め、有望である。例えば、このことは、Hybrid passivated colloidal quantum dot solids,Ip et al., Nature Nanotechnology, vol. 7, pp. 577−582, 2013に記載されている。
【0006】
これらの材料において使用される構造は、空乏領域がPbS QDsと透明電極、典型的にはZnO若しくはTiO
2又は他のn型半導体、例えばCdS又はBi
2S
3などのナノ結晶との間に形成されている、空乏化されたヘテロ接合点からなる。それ故、その結果生じた構造は、p型QDsとn型相との間のp−nヘテロ接合点を形成している。
【0007】
この技法の主な欠点は、毒性の元素に依存しており、それ故、この技法の大規模な展開について規制の問題が課されるという事実である。
【0008】
最近、無毒性材料の開発に対する関心が増大しており、それらの開発によって、Pb又はCdを含有していない種々のナノ結晶及びそれらの太陽電池デバイスにおける使用が示されるに至った。
【0009】
これらの材料には、Cu
2S、CZTS、CI(G)Se、及びCu
2Oが含まれており、それらは共通の特徴を共有している:即ち、それらはpドープされた半導体であり、それ故、ポリマー−ナノ結晶太陽電池における電子受容体として使用するのに適当でない。最近、Bi
2S
3ナノ結晶の二元化合物からなる別の無毒性材料が、太陽利用のための有望な材料のリストに加えられた。これは、結晶構造における硫黄の空位のためn型半導体として作用することが示された材料である。したがって、この機構と関連する高ドーピングは、太陽電池デバイスにおける高性能の達成を大いに妨げていた。それ故、この材料をn型電子受容体として供与体ポリマー(donor polymers)と共に使用するデバイスは、1%程度の効率を示していた。
【0010】
特許出願WO2013153024には、光起電性ナノ複合体及び上記光起電性ナノ複合体を含む太陽電池デバイスが記載されており、上記デバイスにおいて、上記光起電性ナノ複合体は、n型量子ドット及びn型ナノ結晶から選択されたn型材料と、p型量子ドット及びp型ナノ結晶から選択されたp型材料とを有している溶液処理された半導体材料の膜を含んでおり、上記n型材料は、真空レベルとの比較で、上記p型材料の伝導帯レベルと少なくとも同等の伝導帯レベルを有しており、上記p型材料は、真空レベルとの比較で、上記n型材料の価電子帯と最大でも同等の価電子帯を有している。一例では、n型ナノ結晶はPbSであり、p型材料はBi
2S
3である。
【0011】
したがって、当技術分野において公知の事項から、無毒性の元素及び優れた効率を有する光起電性材料の開発は、依然として大きい関心事である。
【0012】
[発明の概要]
本発明者らは、光起電性材料において、電荷の分離及び再結合が起こるときの結晶構造の役割が見過ごされてきたことを見出した。
【0013】
本発明者らは、結晶構造の注意深い選択、並びにカチオン性及びアニオン性の副格子(sublattice)における原子の位置の注意深い選択が光起電性材料の性能において劇的な役割を演ずるであろうと仮定した。
【0014】
この仮定においては、電子と正孔の二分子間再結合(bimolecular recombination)を抑制することが求められ、これは、ポリマー太陽電池において、電子と正孔とを空間的に分離して再結合を抑制するために、複合体中で2種以上の材料を使用するバルクのヘテロ接合を採用することにより対処された。
【0015】
本発明には、大きい静的誘電率(static dielectric constant)を有する光起電性材料が記載されている。材料が、クーロン半径(電子と正孔が互いに引き合って、それ故再結合する半径)が十分小さい程度に大きい誘電率を有していれば、再結合はカチオン性副格子内における電荷分布の非対称性のために抑制されることになり電子と正孔とが分離したままのドメインが、結晶構造内に生じる、それ故、それらのドメインが材料の誘電率により規定されるクーロン半径より大きい場合、再結合しない。
【0016】
本発明の光活性材料の基礎は、立方晶構造を有するナノ結晶性のイオン性材料であり、そのカチオン性副格子は2種の交互の1価カチオン及び3価カチオンからなる。これは、カチオン性の部位(site)とアニオン性の部位との間に局所的双極子の形成に帰結する。この構造は、キャリアが光により発生したときに、サブユニット格子より大きいドメインにおける電子と正孔の空間的分離をもたらす。上記構造は100を超える非常に大きい静的誘電率を有する。それ故そのクーロン半径は上述されたドメインより小さく、それ故電子と正孔の二分子間再結合は抑制される。上記構造は、半導体の化学量論及びナノ結晶サイズにより制御され得る1.5〜1.1eVの範囲内にバンドギャップを有する。
【0017】
本発明の光起電性材料は、XYS
2及びXYS
2−zV
zの相からなり、2>z>0であり、XはAg又はCuから選択され、YはBi又はSbから選択され、及びVはハロゲンから選択され、上記カチオンのXとYとは立方格子(cubic lattice)において空間的に交互にあり、上記アニオン性部位は硫黄原子又はVにより占有されている。
【0018】
上記XYS
2相は、電子のパーコレーション経路として役立ち、それに対してXYS
2−zV
z相は正孔のパーコレーション経路として役立つ。
【0019】
このように、光起電性材料は階層構造を形成し、その中で光子は上記2相に吸収され、それらの大部分はしかしながらXYS
2相で吸収されて、高誘電率のため自由電荷に解離する。次に上記電荷は異なったナノドメイン内に空間的に分離されて、上記2相間にさらに分離され、それらの相を通してそれらの電荷は選択的接触子にも導かれる。
【0020】
それ故、本発明の態様は、XYS
2及びXYS
2−zV
z(式中、2>z>0であり、XはAg又はCuから選択され、YはBi又はSbから選択され、Vはハロゲンから選択される)の相であり、カチオンのXとYとは立方格子において空間的に交互にあり、アニオン性部位は硫黄原子又はVによって占有されている相を有する、立方晶系ナノ結晶性材料(cubic nanocrystalline material)を備える光起電性材料に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、
基材;
伝導帯が立方晶系ナノ結晶性材料の伝導帯より低く、且つ価電子帯が立方晶系ナノ結晶性材料の価電子帯より低い、正孔輸送層と、
伝導帯が、真空に対して、立方晶系ナノ結晶性材料の伝導帯より高く、且つ価電子帯が立方晶系ナノ結晶性材料の価電子帯より高い、電子受容体n型層と
の間に配置された上記の光活性材料;及び
最上部(top)に置かれた金属接触子(metal contacts)
を含む光起電性デバイスである。
【0022】
電子受容体は、正孔のための選択的接触子(selective contact)として作用して、界面における電子蓄積を防止し、したがって再結合を防止する。
【0023】
本発明の別の態様は、太陽電池における光起電性材料の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、カチオンの所与のモル濃度における異なった反応温度での溶液中のナノ結晶の吸光度を示す。
【
図1B】
図1Bは、75℃に固定された温度で合成中のカチオン性前駆体の異なった濃度を示す。
【
図2A】
図2A〜2Dは、ナノ結晶性材料の立方晶構造を示し、75℃で実施された合成のためにAgイオンの異なった濃度を使用したナノ結晶のバンドギャップの変更(modification)を示す、対応するXRDパターンである。
【
図2B】
図2A〜2Dは、ナノ結晶性材料の立方晶構造を示し、75℃で実施された合成のためにAgイオンの異なった濃度を使用したナノ結晶のバンドギャップの変更を示す、対応するXRDパターンである。
【
図2C】
図2A〜2Dは、ナノ結晶性材料の立方晶構造を示し、75℃で実施された合成のためにAgイオンの異なった濃度を使用したナノ結晶のバンドギャップの変更を示す、対応するXRDパターンである。
【
図2D】2A〜2Dは、ナノ結晶性材料の立方晶構造を示し、75℃で実施された合成にのためにAgイオンの異なった濃度を使用したナノ結晶のバンドギャップの変更を示す、対応するXRDパターンである。
【
図3】暗条件及び太陽光照明条件下での、報告されたデバイスの電流電圧特性を示す。
【
図4】AgBiS
2半導体の吸収の結果として起こる太陽電池の外部量子効率スペクトルを示す
。
【0025】
[発明の詳細な説明]
上述のように、本発明の一態様は、
基材;
伝導帯が立方晶系ナノ結晶性材料の伝導帯より低く、且つ価電子帯が立方晶系ナノ結晶性材料の価電子帯より低い、正孔輸送層と、
伝導帯が、真空に対して、立方晶系ナノ結晶性材料の伝導帯より高く、且つその価電子帯が立方晶系ナノ結晶性材料の価電子帯より高い、電子受容体n型層と
の間に配置された上記の光活性材料;及び
最上部に置かれた金属接触子
を含む光起電性デバイスに関する。
【0026】
好ましい実施形態において、基材は、透明な導電性酸化物でコートされた、ガラス又はプラスチック基材から選択される。より好ましい実施形態では、透明な導電性酸化物は、ITO(インジウムがドープされた酸化スズ)、FTO(フッ素がドープされた酸化スズ)又はAZO(アルミニウムがドープされた酸化亜鉛)から選択される。
【0027】
好ましい一実施形態では、n型電子受容体は、ZnO、TiO
2、アルミニウムがドープされたZnO、若しくはインジウムがドープされたZnO、又はそれらの組合せから選択される。
【0028】
正孔輸送層は、NiO、MoO
3、WO
3若しくはSnO
2から選択される無機酸化物、又は有機正孔輸送層、例えば、スピロMeOTAD(N
2,N
2,N
2’,N
2’,N
7,N
7,N
7’,N
7’−オクタキス(4−メトキシフェニル)−9,9’−スピロビ[9H−フルオレン]−2,2’,7,7’−テトラミン)、PEDOT(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))及びその誘導体、PTAA(ポリ[ビス(4−フェニル)(2,4,6−トリメチルフェニル)アミン])など、又はP3HT(ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)若しくはPTB7(ポリ({4,8−ビス[(2−エチルヘキシル)オキシ]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン−2,6−ジイル}{3−フルオロ−2−[(2−エチルヘキシル)カルボニル]チエノ[3,4−b]チオフェンジイル}のような他の共役ポリマーから選択される。
【0029】
好ましい一実施形態において、電子受容体は、5nm〜500nmの間の厚さを有する。
【0030】
好ましい一実施形態において、光活性層の厚さは、10nm〜500nmの間である。
【0031】
好ましい一実施形態において、金属接触子は、MoO
3、Au、Ag、Mo、Al又はMoから選択される。
【0032】
デバイスを作製するために、本発明者らは、本発明のナノ結晶を、溶液から、ITOでコートされたガラス基材を覆うZnO層上へ、スピンキャストした。次に上記ナノ結晶を、元からあったオレイン酸分子を表面から除去して、エタンジチオール、ベンゼンジチオール又はそれらに代わるチオール−官能化された先端基(thiol−functionalized head groups)などの他の架橋分子で置き換える処理ステップに供する。リガンド交換は、ハロゲン化テトラブチルアンモニウム(ハロゲン化物=臭化物、ヨウ化物、塩化物)などのハロゲン化物含有分子を用いたオレイン酸の置換により実施する。この場合、カチオン性部位は、ハロゲン原子の含有により電荷中性が達成されているAgBiS2−xYx(Y=I、Br、Cl)の四元ナノ結晶系を形成するハロゲン原子から不動態化される。次に金属電極が上部に設置される(deposited)。
【0033】
代替として、光起電性デバイスは、逆の順序で作製することもできる。この場合には、正孔輸送層が基材上に設置される。次にナノ結晶が上で記載したように設置される。次に電子受容体層が設置され、金属接触子が上部に設置される。
[実施例]
【0034】
以下の実施例は、例示の手段として提供するもので、本発明を限定することは意味されない。
【0035】
実施例1 光起電性デバイスの開発
ナノ結晶の合成
この光活性材料を実行する例は、ナノ結晶の合成のためにコロイド化学を使用することによる。AgBiS
2のナノ結晶の典型的な合成のために、1mmolのBi(OAc)
3、1mmolのAg(OAc)及び17mmolのオレイン酸(OA)を、100℃で終夜ポンプで引き、オレイン酸ビスマス及びオレイン酸銀を形成して、酸素及び湿気を除去した。
【0036】
この時間の後、反応雰囲気をArに切り替えて、温度を75℃、100℃、135℃に変化させた。
【0037】
上記混合物が一定の温度に達したときに、5mlのODE(1−オクタデセン)に溶解した1mmolのHMS(ヘキサメチルジシラチアン)をフラスコに速やかに注入した。
【0038】
次にナノ結晶を単離して溶媒逆溶媒逐次プロセス(solvent anti−solvent sequential process)で精製し、トルエン又は他の非極性溶媒に最終的に溶解した。
【0039】
吸収スペクトルにおける反応の成長温度に対する効果を
図1Aに示す。
【0040】
ナノ結晶におけるカチオンの相対的化学量論及びそれらのバンドギャップを調整するために、しかるべくAg前駆体の濃度を調節することができる。
【0041】
図
1Bは、75℃で実施された合成においてAgイオンの異なった濃度を使用したナノ結晶のバンドギャップの変更を示す。
【0042】
図2A、図2B、図2C及び図2Dは、75℃の温度での反応における異なったAgモルの濃度に対応するXRDプロットを示す。これらのプロットは材料の相純度を立証し、且つAgBiS
2半導体の立方晶相に合致する。
【0043】
光起電性デバイスの製作
ITOで覆われたガラス基材を、水、アセトン及び2−プロパノール中での超音波処理により徹底的に清浄化し、デバイスの作製に先立ち、窒素ガンを使用して乾燥した。
【0044】
ZnO電子輸送層を、ゾルゲル法を使用して成長させた。簡単に述べると、0.5gの酢酸亜鉛二水和物を、5mLのメトキシエタノール及び0.142mLのエタノールアミンに溶解した。溶液をITOでコートされたガラス基材上に3000rpmでスピンキャストして、200℃で30分間アニールした。このプロセスを2回行った。
【0045】
もともと高濃度であった溶液にトルエンを加えることにより、20g/LのAgBiS
2ナノ結晶のトルエン溶液を調製した。層を重ねるプロセス(layer−by−layer process)の繰り返しにより、所望の膜厚を得た。スピンしている(2000rpm)基材上に、ナノ結晶の1滴、続いてのアセトニトリル中の2体積%の1,2−エタンジチオール(EDT)を3滴、又はメタノール中の1g/Lのテトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)を10滴配合した。各層が完成した後、上記膜をアセトニトリル又はメタノールのいずれか及びトルエンですすぐ。
【0046】
5mg/mLのPTB7のジクロロベンゼン溶液を、終夜50℃で攪拌することにより調製した。PTB7層を上記AgBiS
2膜上に2000rpmの自転速度で1分間スピンコートした。2×10
−6mbar未満の基礎圧力下で、加熱蒸発システムにおいて、金属の蒸着を実施した。
【0047】
酸化モリブデンの薄層(3nm、0.1Ås
−1)、続いてAg(150nm、2.5Ås
−1)が、上部の電気接触子として蒸着された(deposited)。
【0048】
上記デバイスは、典型的には5%の電力変換効率を示し、その電流電圧特性が図
3に示される。
【0049】
図
4に示されたEQEスペクトルは、AgBiS
2半導体のバンドギャップにより決定されるこのデバイスの全色(panchromatic)の太陽利用を示している。