(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、酸性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体(ただし有機色素誘導体を除く)および塩基性官能基を有するトリアジン誘導体(ただし有機色素誘導体を除く)からなる群より選ばれる一つ以上の誘導体(D)を含んでなる請求項1または2記載の二次電池電極形成用組成物。
更に、活物質(G)を含んでなる二次電池電極形成用組成物であって、活物質(G)の平均粒径/炭素材料(B)の分散粒径(D50)の比が、2以上、100以下である請求項1〜4いずれか記載の二次電池電極形成用組成物。
集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、電解質とを具備する二次電池であって、前記正極または負極の少なくとも一方が、請求項6記載の二次電池用電極である二次電池。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<高分子分散剤(A)>
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用する高分子分散剤(A)は、構造単位(a−1)を必須成分とし、構造単位(a−2)を含んでいてもよい。構造単位の並びに制限はなく、構造単位の並びはランダムでもよい。
【0021】
構造単位(a−1)は、下記一般式(1)および/または一般式(2)で示される。
【0022】
一般式(1)
【化1】
[R
1は、水素またはメチル基を表す。R
2は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。]
【0023】
一般式(2)
【化2】
[R
1は、水素またはメチル基を表す。
R
3は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表し、
R
4は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基を表す。]
【0024】
高分子分散剤(A)の一般式(1)におけるR
1は、水素またはメチル基であり、好ましくは水素である。
【0025】
高分子分散剤(A)の一般式(1)におけるR
2は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基である。好ましくは、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、または置換基を有していてもよいアリーレン基、より好ましくは、置換基を有していてもよいアルキレン基、または置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0026】
一般式(1)のR
2におけるアルキレン基としては、直鎖アルキレン基(メチレン、ジメチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ドデカメチレン基など)、分鎖アルキレン基(2,4,4'−トリメチルヘキサメチレン基など)、環状アルキレン基(1,2−シクロペンチル基、1,3−シクロペンチル基、1,2−シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキシル基、1,4−シクロヘキシル基、メチル−2,4−シクロヘキシル基、およびメチル−2,6−シクロヘキシル基など)を挙げることができ、好ましくは炭素数10以下のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数が4以下の直鎖もしくは分鎖アルキレン基であり、とくに好ましくはジメチレン基である。
【0027】
一般式(1)のR
2におけるアルケニレン基としては、エチニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基を挙げることができ、好ましくは炭素数2〜15のアルケニレン基である。
【0028】
一般式(1)のR
2におけるアリーレン基としては、フェニレン基(1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、2−メチル−1,3−フェニレン、4−メチル−1,3−フェニレン、1,3−ジメチルフェニレン、1,4−ジメチルフェニレン、および1,4−ジエチルフェニレン基)、ナフチレン基(1,2−ナフチレン、1,3−ナフチレン、1,4−ナフチレン、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,7−ナフチレン、1,8−ナフチレン、2,3−ナフチレン、2,6−ナフチレン基)を挙げることができ、好ましくは炭素数が10以下のアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基であり、とくに好ましくは1,2−フェニレン基である。
【0029】
一般式(1)のR
2におけるヘテロアリーレン基としては、ピリジレン基、キノリレン基、アクリジニレン基などが挙げられ、好ましくは炭素数が10以下のヘテロアリーレン基である。
【0030】
一般式(1)のR
3が置換基を有する場合、置換する事が出来る基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基等から選択される置換基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0031】
高分子分散剤(A)の一般式(2)におけるR
3は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基である。好ましくは、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、または無置換のヘテロアリーレン基であり、より好ましくは無置換のアルキレン基である。
【0032】
一般式(2)のR
3における、置換基を有していてもよいアルキレン基としては、一般式(1)におけるR
2のアルキレン基と同義であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜4の直鎖アルキレン基である。
【0033】
一般式(2)のR
3における、置換基を有していてもよいアリーレン基としては、一般式(1)におけるR
2のアリーレン基と同義である。
【0034】
一般式(2)のR
3における、置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基としては、一般式(1)におけるR
2のヘテロアリーレン基と同義である。
【0035】
一般式(2)のR
3が置換基を有する場合、置換する事が出来る基としては、一般式(1)におけるR
2の置換することが出来る基と同義である。
【0036】
高分子分散剤(A)の一般式(2)におけるR
4は、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、または置換基を有していてもよいヘテロアリーレン基である。
【0037】
高分子分散剤(A)の一般式(2)におけるR
4の、アルキレン基としては、一般式(1)におけるR
2のアルキレン基と同義である。
【0038】
高分子分散剤(A)の一般式(2)のR
4における、アルケニレン基としては、一般式(1)におけるR
2のアルケニレン基と同義である。
【0039】
高分子分散剤(A)の一般式(2)におけるR
4における、アリーレン基としては、一般式(1)におけるR
2のアリーレン基と同義である。
【0040】
高分子分散剤(A)の一般式(2)におけるR
4における、ヘテロアリーレン基としては、一般式(1)におけるR
2のヘテロアリーレン基と同義である。
【0041】
一般式(2)のR
4が置換基を有する場合、置換する事が出来る基としては、一般式(1)におけるR
2の置換することが出来る基と同義である。
【0042】
高分子分散剤(A)における構造単位(a−2)は、構造単位(a−2−1)および/または構造単位(a−2−2)である。
【0043】
構造単位(a−2−1)は、共重合体の原料となる単量体に由来する部分のことを示す。構造単位(a−2−1)を得る方法としては特に限定されないが、例えば、構造単位(a−2−1)を形成する単量体を共重合する方法が挙げられる。
【0044】
構造単位(a−2−1)を形成する単量体としては特に限定されないが、芳香環を有する単量体、カルボキシル基またはアミノ基を有する単量体、水酸基を有する単量体、その他の単量体が挙げられ、好ましくは、芳香環を有する単量体、カルボキシル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、その他の単量体である。
【0045】
まず、芳香環を有する単量体について説明する。
芳香環を有する単量体としては特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレンまたはベンジル(メタ)アクリレート、を例示することが出来る。
【0046】
つぎに、カルボキシル基またはアミノ基を有する単量体について説明する。
カルボキシル基を有する単量体としては特に限定されないが、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルまたはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、テレフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、等を例示することが出来る。特にメタクリル酸、アクリル酸が好ましい。
また、アミノ基を有する単量体としては特に限定されないが、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン等が挙げられる。これらのカルボキシル基またはアミノ基を有する構造単位は単独または2種類以上を併用して使用することもでき、カルボキシル基を有する構造単位と、アミノ基を有する構造単位の組み合わせであってもよい。また、これらのカルボキシル基またはアミノ基は、中和したものであっても構わない。
【0047】
つぎに、水酸基を有する単量体について説明する。水酸基を有する単量体としては特に限定されないが、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシスチレン、アリルアルコールが等が挙げられる。
【0048】
つぎに、その他の単量体について説明する。その他の単量体としては、アルキル系(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類、パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー、または、シラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体を挙げることができる。
【0049】
アルキル系(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
パーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類としては、パーフルオロメチルメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロエチルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる
【0051】
パーフルオロアルキル基含有ビニルモノマーとしては、パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等が挙げられる。
【0052】
シラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラノール基含有ビニル化合物及びその誘導体などを挙げることができる。
【0053】
構造単位(a−2−1)を形成する単量体は、複数の種類を用いても良く、並び方はランダムでもよい。
【0054】
構造単位(a−2−2)は、ビニルアルコール、酢酸ビニル、ビニルアセタールである。これらを得る方法としては特に限定されないが、例えば、構造単位(a−2−2)を形成する単量体を共重合する方法が挙げられる。
【0055】
構造単位(a−2−2)における、ビニルアルコールは、式(3)に示される構造である。
【0057】
構造単位(a−2−2)における、酢酸ビニルは、式(4)に示される構造である。
【0059】
構造単位(a−2−2)における、ビニルアセタールは、一般式(5)に示される構造である。
【0060】
一般式(5)
【化5】
[R
Xは、メチル基、エチル基、または、ブチル基を表す。]
【0061】
構造単位(a−2−2)は、ビニルアルコール、酢酸ビニルまたはビニルアセタールの中から複数の種類を用いても良く、並び方はランダムでもよい。
【0062】
高分子分散剤(A)が、構造単位(a−1)として一般式(1)に示される構造を含んでいる場合、構造単位(a−2)は構造単位(a−2−2)で挙げられる構造であることが好ましい。
【0063】
高分子分散剤(A)が、構造単位(a−1)として一般式(2)に示される構造を含んでいる場合、構造単位(a−2)は構造単位(a−2−1)で挙げられる構造であることが好ましい。
【0064】
また、高分子分散剤(A)の重合度
は10〜350が好ましく、10〜200がより好ましい。
【0065】
高分子分散剤(A)の重合度とは、高分子分散剤(A)を構成する繰り返し単位の数の平均値である。重合度は、生成した高分子分散剤(A)から下記手法より求めることができる。
【0066】
<重合度>
重合度は、共重合体の数平均分子量(Mn)を、高分子の構成単位の平均分子量で除した値である。
なお、分子量M1の単量体1と、分子量M2の単量体2を、それぞれW1とW2の質量比で重合させた場合、共重合体の単量体の平均分子量は、(W1−W2)/(W1/M1+W2/M2)である。
【0067】
数平均分子量(Mn)の測定手法としては、ピーク分子量が既知の標準ポリスチレンを用いて、該標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することなどが挙げられる。
【0068】
高分子分散剤(A)を得る方法としては特に限定されないが、例えば、水酸基をもつ高分子に、構造単位(a−1)の部分骨格をもつ酸無水物を反応させ、高分子分散剤(A)を含む反応溶液(Ax)として得る方法が挙げられる。
【0069】
高分子分散剤(A)を得る方法として酸無水物を反応させる場合、原料の酸無水物が反応しているかどうかを確認することが好ましい。反応率の算出方法としては、生成物の酸無水物量価(Ax)と原料の酸無水物価(Ay)から反応率を求める方法が挙げられる。
反応率=1−(Ax/Ay)
【0070】
ここで言う酸無水物価とは、試料にオクチルアミン、1,4−ジオキサン、水の混合溶液を加えて溶解・反応させた後、過剰のオクチルアミンを0.02M過塩素酸、1,4−ジオキサンの混合溶液で滴定して、下記の式より算出した値である。
酸無水物価(mgKOH/g)=[0.02(mol/L)×(ブランクの滴定量−試料の滴定量)(mL)×F]/試料固形量(g)×56.11(mmol/g)
F:0.02mol/L過塩素酸の力価
【0071】
高分子分散剤(A)を得る方法として水酸基をもつ高分子に酸無水物を反応させる場合、酸無水物と水酸基の反応により、該高分子が重合反応を起こし重合度が変化することはない。よって、高分子分散剤(A)の重合度は、水酸基をもつ高分子の重合度と等しいとして扱うことができる。
水酸基をもつ高分子の重合度は、高分子分散剤(A)の重合度と同様の測定方法から算出することができる。
【0072】
<炭素材料(B)>
炭素材料(B)としては、導電性を有する炭素材料であれば特に限定されるものではないが、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維(カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバー)、フラーレン等を単独で、または2種類以上併せて使用することができる。導電性、入手の容易さ、およびコスト面から、カーボンブラックの使用が好ましい。
【0073】
カーボンブラックとしては、気体または液体の原料を反応炉中で連続的に熱分解し製造するファーネスブラック、特にエチレン重油を原料としたケッチェンブラック、原料ガスを燃焼させて、その炎をチャンネル鋼底面にあて急冷し析出させたチャンネルブラック、ガスを原料とし燃焼と熱分解を周期的に繰り返すことにより得られるサーマルブラック、特にアセチレンガスを原料とするアセチレンブラックなどの各種のものを単独で、または2種類以上併せて使用することができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、中空カーボン等も使用できる。
【0074】
カーボンの酸化処理は、カーボンを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることより、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基の様な酸素含有極性官能基をカーボン表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンの分散性を向上させるために一般的に行われている。しかしながら、官能基の導入量が多くなる程カーボンの導電性が低下することが一般的であるため、酸化処理をしていないカーボンの使用が好ましい。
【0075】
用いるカーボンブラックの比表面積は、値が大きいものほど、カーボンブラック粒子どうしの接触点が増えるため、電極の内部抵抗を下げるのに有利となる。具体的には、窒素の吸着量から求められる比表面積(BET)で、20m
2/g以上、1500m
2/g以下、好ましくは50m
2/g以上、1500m
2/g以下、更に好ましくは100m
2/g以上、1500m
2/g以下のものを使用することが望ましい。比表面積が20m
2/gを下回るカーボンブラックを用いると、十分な導電性を得ることが難しくなる場合があり、1500m
2/gを超えるカーボンブラックは、市販材料での入手が困難となる場合がある。
【0076】
また、用いるカーボンブラックの粒径は、一次粒子径で0.005〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましい。ただし、ここでいう一次粒子径とは、電子顕微鏡で測定された粒子径を平均した値である。
【0077】
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li、(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(電気化学工業社製、アセチレンブラック)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。グラファイトとしては、例えば、人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い
【0078】
導電性炭素繊維としては、石油由来の原料から焼成して得られるものが良いが、植物由来の原料からも焼成して得られるものも用いることができる。例えば、石油由来の原料で製造される昭和電工社製のVGCFなどを挙げることができる。
【0079】
<誘導体(D)>
本発明において使用する誘導体(D)について説明する。本発明において使用する誘導体(D)は、酸性官能基を有する有機色素誘導体、塩基性官能基を有する有機色素誘導体、酸性官能基を有するトリアジン誘導体および塩基性官能基を有するトリアジン誘導体からなる群より選ばれる一つ以上の誘導体である。
酸性官能基を有する誘導体の中ではとりわけ、下記一般式(9)で示される酸性官能基を有するトリアジン誘導体(ただし、有機色素誘導体を含むものは除く)、または一般式(12)で示される酸性官能基を有する有機色素誘導体が好ましい。まず、一般式(9)で示される酸性官能基を有するトリアジン誘導体について説明する。
【0081】
[X
1は、R
5への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−CH
2NHCOCH
2NH−または−X
3−Y−X
4−を表し、X
2及びX
4は、それぞれ独立に、−NH−または−O−を表し、X
3は、R
5への結合基を左端として−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−NHCO−または−NHSO
2−を表し、Yは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Zは、−SO
3M、−COOM、−P(O)(−OM)
2または−O−P(O)(−OM)
2を表し、Mは、1〜3価のカチオンの一当量を表し、Qは、−O−R
6、−NH−R
6、ハロゲン基、−X
1−R
5または−X
2−Y−Zを表し、R
6は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または置換基を有してもよいアルケニル基を表す。uは、1〜4の整数を表す。R
5は、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基または、下記一般式(10)で表される基を表す。]
【0083】
[X
5は、−NH−または−O−を表し、X
6及びX
7は、それぞれ独立に、トリアジン環への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−または−CH
2NHCOCH
2NH−を表し、R
7及びR
8は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基または−Y−Zを表し、Y及びZは、一般式(9)におけるY及びZと同義である。]
【0084】
また、上記において、R
5、R
7、またはR
8における複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン等の複素環残基、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン等の芳香族環残基が挙げられる。とりわけ、S、N、Oのヘテロ原子のいずれかを含む複素環残基が、分散性に優れた効果を発揮するため好ましい。
【0085】
一般式(9)及び一般式(10)のYは、置換基を有していてもよいアルキレン基、アルケニレン基またはアリーレン基を表すが、炭素数20以下が好ましく、炭素数10以下がより好ましい。特に好ましい態様としては、置換されていてもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
【0086】
R
6における置換基を有してもよいアルキル基および置換基を有してもよいアルケニル基の好ましい態様は、炭素数20以下のものである。更に好ましくは、炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキル基が挙げられる。ここで、置換基を有するアルキル基および置換基を有するアルケニル基とは、アルキル基またはアルケニル基の水素原子が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン基、水酸基、メルカプト基等に置換されたものを挙げることができる。
【0087】
Mは、1〜3価のカチオンの一当量を表し、例えば、水素イオン(プロトン)、金属カチオン、4級アンモニウムカチオンのいずれかを表す。また、分散剤の構造(一分子)中にMを2つ以上有する場合、Mは、プロトン、金属カチオン、4級アンモニウムカチオンのいずれか一種のみでも良いし、二種以上の組み合わせでも良い。
金属カチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト等の金属のカチオンが挙げられる。
4級アンモニウムカチオンとしては、一般式(11)で示される構造を有する単一化合物または、混合物である。
【0089】
[R
9、R
10、R
11、またはR
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。]
【0090】
R
9、R
10、R
11、またはR
12は、それぞれ同一でもよいし、異なっていてもよい。また、R
9、R
10、R
11、またはR
12が炭素原子を有する場合、炭素数は1〜40、好ましくは1〜30、更に好ましくは1〜20である。
【0091】
4級アンモニウムカチオンの具体例としては、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ヒドロキシエチルアンモニウム、ジヒドロキシエチルアンモニウム、2−エチルヘキシルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアンモニウム、ラウリルアンモニウム、ステアリルアンモニウム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
次いで、一般式(12)で示される酸性官能基を有する有機色素誘導体について説明する。
一般式(12)
【化12】
[X
8は、直接結合、或いは、R
13への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−CH
2NHCOCH
2NH−、−X
9−Y−または−X
9−Y−X
10−を表し、X
9はR
13への結合基を左端として、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−NHCO−または−NHSO
2−を表し、X
10は、−NH−または−O−を表し、Yは、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表し、Zは、−SO
3M、−COOM、−P(O)(−OM)
2または−O−P(O)(−OM)
2を表し、Mは1〜3価のカチオンの一当量を表し、R
13は、有機色素残基を表し、vは、1〜4の整数を表す。]
【0093】
R
13の有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素等の残基が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましく、中でもアゾ系色素、ジケトピロロピロール系色素、無金属フタロシアニン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素の残基が、分散性に優れた効果を発揮するため好ましい。
【0094】
一般式(12)におけるMは、一般式(9)におけるMと同義である。
【0095】
本発明において使用する誘導体(D)の合成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特公昭39−28884号公報、特公昭45−11026号公報、特公昭45−29755号公報、特公昭64−5070号公報、特開2004−217842号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0096】
本発明において、誘導体(D)は主に分散剤として機能するとともに、電池性能を向上させるに適した電極膜状態を作り出すための役割も担っているものと考えられる。
【0097】
<塩基性顔料誘導体>
塩基性顔料誘導体の中では、とりわけ、下記一般式(13)で示される塩基性官能基を有するトリアジン誘導体(ただし、有機色素誘導体を含むものは除く)、または一般式(18)で示される塩基性官能基を有する有機色素誘導体が好ましい。まず、一般式(13)で示される塩基性官能基を有するトリアジン誘導体について説明する。
一般式(13)
【0099】
X
11は、R
14への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−CH
2NHCOCH
2NH−または−X
12−Y
2−X
13−を表し、X
12は、同様にR
14への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−NHCO−または−NHSO
2−を表し、X
13は、−NH−または−O−を表し、Y
2は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
Pは、一般式(14)、一般式(15)または一般式(16)のいずれかで示される基を表す。
Q
2は、−O−R
15、−NH−R
15、ハロゲン基、−X
11−R
14または一般式(14)、一般式(15)または一般式(16)のいずれかで示される基を表す。
R
15は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基または置換基を有してもよいアリール基を表す。
一般式(14)
【0103】
X
14は、直接結合、或いは、トリアジン環への結合基を左端として−SO
2−、−CO−、−CH
2NHCOCH
2−、−CH
2NHCONHCH
2−、−CH
2−または−X
15−Y
2−X
16−を表す。X
15は、−NH−または−O−を表し、X
16は、直接結合、或いは、トリアジン環への結合基を左端として−SO
2−、−CO−、−CH
2NHCOCH
2−、−CH
2NHCONHCH
2−または−CH
2−を表す。
v
2は、1〜10の整数を表す。
R
16およびR
17は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または複素環残基を表し、R
16とR
17が結合して環を形成しても良い。
R
18、R
19、R
20およびR
21は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
R
22は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
【0104】
oは、1〜4の整数を表す。
R
14は、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していて
もよい芳香族環残基または下記一般式(17)で示される基を表す。
一般式(17)
【0106】
Tは、−X
18−R
23またはWを表し、Uは、−X
19−R
24またはW
2を表す。
WおよびW
2は、それぞれ独立に、−O−R
15、−NH−R
15、ハロゲン基または一般式(14)、一般式(15)または一般式(16)のいずれかで示される基を表す。
X
17は、−NH−または−O−を表し、X
18およびX
19は、それぞれ独立に、トリアジン環への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−または−CH
2NHCOCH
2NH−を表す。
R
24およびR
25は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環残基または置換基を有していてもよい芳香族環残基を表す。
【0107】
一般式(13)のR
14および一般式(17)のR
24、R
25における複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラジン、トリアジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、アクリドン等の残基が挙げられる。これらの複素環残基および芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、およびフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0108】
R
16およびR
17は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアリール基または複素環残基を表し、R
16とR
17が結合して環を形成しても良い。とりわけ、水素原子であることが、電池内での金属析出を抑える効果が高いと思われ好ましい。
一般式(13)および一般式(17)のY
3は、炭素数20以下の置換基を有してもよいアルキレン基、アルケニレン基またはアリーレン基を表すが、好ましくは、置換基を有してもよいフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基または炭素数が10以下の側鎖を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。
【0109】
次いで、一般式(106)で示される塩基性官能基を有する有機色素誘導体について説明する。
一般式(18)
【0110】
【化18】
Z
2は、下記一般式(19)、一般式(20)または一般式(21)で示される基である。mは、1〜4の整数を表す。
一般式(19)
【化19】
一般式(20)
【0113】
X
20は、直接結合、或いは、R
26への結合基を左端として−SO
2−、−CO−、−CH
2NHCOCH
2−、−CH
2NHCONHCH
2−、−CH
2−または−X
21−Y
4−X
22−を表す。X
21は、−NH−または−O−を表し、X
22は、直接結合、或いは、Y
4への結合基を左端として−SO
2−、−CO−、−CH
2NHCOCH
2−、−CH
2NHCONHCH
2−または−CH
2−を表す。Y
4は、炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
v3は、1〜10の整数を表す。
【0114】
R
27およびR
28は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいフェニル基または複素環残基を表し、R
27とR
28が結合して環を形成しても良い。とりわけ、水素原子であることが、電池内での金属析出を抑える効果が高いと思われ好ましい。
R
29、R
30、R
31およびR
32は、それぞれ独立に、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
R
33は、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基または置換されていてもよいアリール基を表す。
【0115】
R
26は、有機色素残基、置換基を有していてもよい複素環残基、置換基を有していてもよい芳香族環残基を表す。
R
26における有機色素残基としては、例えば、ジケトピロロピロール系色素、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系色素、フタロシアニン系色素、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系色素、キナクリドン系色素、ジオキサジン系色素、ぺリノン系色素、ぺリレン系色素、チオインジゴ系色素、イソインドリン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、スレン系色素、金属錯体系色素の残基が挙げられる。とりわけ、金属による電池の短絡を抑制する効果を高めるためには、金属錯体系色素ではない有機色素残基の使用が好ましい。
【0116】
また、R
26における複素環残基および芳香族環残基としては、例えば、チオフェン、フラン、ピリジン、ピラゾール、ピロール、イミダゾール、イソインドリン、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、ベンズチアゾール、ベンズトリアゾール、インドール、キノリン、カルバゾール、アクリジン、ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アントラキノン、アクリドン等の残基が挙げられる。これらの複素環残基および芳香族環残基は、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基等)、アミノ基、アルキルアミノ基(ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基等)、ニトロ基、水酸基、アルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等)、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素等)、フェニル基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)、およびフェニルアミノ基(アルキル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ニトロ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン等で置換されていてもよい)等の置換基を有していてもよい。
【0117】
一般式(14)〜(16)および一般式(19)〜(21)で示される置換基を形成するために使用されるアミン成分としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジ
アミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N
,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニコペチン酸メチル、イソニコペチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエチルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン等が挙げられる。
【0118】
本発明の塩基性官能基を有する有機色素誘導体または塩基性官能基を有するトリアジン誘導体の合成方法としては、特に限定されるものではないが、特開昭54−62227号公報、特開昭56−118462号公報、特開昭56−166266号公報、特開昭60−88185号公報、特開昭63−305173号公報、特開平3−2676号公報、特開平11−199796号公報等に記載されている方法で合成することができる。
【0119】
例えば、本発明の塩基性官能基を有する有機色素誘導体は、有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)に式(22)〜式(25)で示される置換基を導入した後、これら置換機とアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N−メチルピペラジン、ジエチルアミンまたは4−[4−ヒドロキシ−6−[3−(ジブチルアミノ)プロピルアミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ]アニリン等)を反応させることによって、合成することができる。
式(22) −SO
2Cl
式(23) −COCl
式(24) −CH
2NHCOCH
2Cl
式(25) −CH
2Cl
また、例えば、式(22)で示される置換基を導入する場合には、有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)をクロロスルホン酸に溶解して、塩化チオニル等の塩素化剤を反応させるが、このときの反応温度、反応時間等の条件により、有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)に導入する式(22)で示される置換基数をコントロールすることができる。
【0120】
また、式(23)で示される置換基を導入する場合には、まずカルボキシル基を有する有機色素、複素環化合物(例えば、アクリドン)または芳香族環化合物(例えば、アントラキノン)を公知の方法で合成した後、ベンゼン等の芳香族溶媒中で塩化チオニル等の塩素化剤を反応させる方法等が挙げられる。
【0121】
式(22)〜式(25)で示される置換基とアミン成分との反応時には、式(22)〜式(25)で示される置換基の一部が加水分解して、塩素が水酸基に置換することがある。その場合、式(22)で示される置換基はスルホン酸基となり、式(23)で示される置換基はカルボン酸基となるが、いずれも遊離酸のままでもよく、また、1〜3価の金属または、上記のアミンと塩を形成していてもよい。
【0122】
また、有機色素がアゾ系色素である場合は、式(19)〜式(21)または、下記一般式(26)で示される置換基をあらかじめジアゾ成分またはカップリング成分に導入し、その後カップリング反応を行うことによってアゾ系有機色素誘導体を製造することもできる。
一般式(26)
【0124】
X
23は、アゾ系色素への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−CH
2NHCOCH
2NH−または−X
24−Y
5−X
25−を表し、X
24は、アゾ系色素への結合基を左端として−NH−、−O−、−CONH−、−SO
2NH−、−CH
2NH−、−NHCO−または−NHSO
2−を表し、X
25はそれぞれ独立に−NH−または−O−を表し、Y
5は炭素数1〜20で構成された、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいアルケニレン基または、置換基を有してもよいアリーレン基を表す。
P
2は、一般式(14)、(15)または、一般式(16)のいずれかで示される置換基を表す。
Q
3は、−O−R
34、−NH−R
34、ハロゲン基、−X
22−R
33または、一般式(14)、(15)または、一般式(16)のいずれかで示される置換基を表す。
R
34は、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基または、置換基を有してもよいアルケニル基または、置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0125】
また、本発明の塩基性官能基を有するトリアジン誘導体は、例えば、塩化シアヌルを出発原料とし、塩化シアヌルの少なくとも1つの塩素に式(19)〜式(21)または、一般式(26)で示される置換基を形成するアミン成分(例えば、N,N−ジメチルアミノプロピルアミンまたはN−メチルピペラジン等)を反応させ、次いで塩化シアヌルの残りの塩素と種々のアミンまたはアルコール等を反応させることによって得られる。
【0126】
本発明で使用する顔料誘導体は、酸性または塩基性の官能基を有する有機色素誘導体、または、酸性または塩基性の官能基を有するトリアジン誘導体であることが好ましく、酸性または塩基性の官能基を有するトリアジン誘導体であることがより好ましく、酸性の官能基を有するトリアジン誘導体であることさらに好ましく、アゾ結合を有さず、かつ酸性の官能基を有するトリアジン誘導体であることが特に好ましい。
【0127】
上記顔料誘導体は、1種または2種以上を任意の割合で混合して使用しても良い。
本発明において、顔料誘導体は主に分散剤として機能するとともに、電池性能を向上させるに適した電極膜状態を作り出すための役割も担っているものと考えられる。
【0128】
<溶剤(E)>
本発明の電池用組成物に用いても良い溶剤(E)(本明細書中では、溶媒または液状媒体と称する場合がある)としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類が挙げられる。
【0129】
これらの中でも、比誘電率が15以上の極性溶剤を使用することが好ましい。比誘電率は、溶剤の極性の強さを表す指標のひとつであり、浅原ほか編「溶剤ハンドブック」((株)講談社サイエンティフィク、1990年)等に記載されている。
例えば、メチルアルコール(比誘電率:33.1)、エチルアルコール(23.8)、2−プロパノール(18.3)、1−ブタノール(17.1)、1,2−エタンジオール(38.66)、1,2−プロパンジオール(32.0)、1,3−プロパンジオール(35.0)、1,4−ブタンジオール(31.1)、ジエチレングリコール(31.69)、2−メトキシエタノール(16.93)、2−エトキシエタノール(29.6)、2−アミノエタノール(37.7)、アセトン(20.7)、メチルエチルケトン(18.51)、ホルムアミド(111.0)、N−メチルホルムアミド(182.4)、N,N−ジメチルホルムアミド(36.71)、N−メチルアセトアミド(191.3)、N,N−ジメチルアセトアミド(37.78)、N−メチルプロピオンアミド(172.2)、N−メチル−2−ピロリドン(32.0)、ヘキサメチル燐酸トリアミド(29.6)、ジメチルスルホキシド(48.9)、スルホラン(43.3)、アセトニトリル(37.5)、プロピオニトリル(29.7)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
とりわけ、比誘電率が15以上、200以下、好ましくは15以上、100以下、更に好ましくは、20以上、100以下の極性溶剤を使用することが、活物質や導電助剤の分散性に優れており好ましい。また、溶剤の選択は、活物質との反応性、及びバインダー樹脂に対する溶解性等を鑑みつつ行う。分散性が高く、活物質との反応性が低く、バインダー樹脂の溶解性の高い溶剤を選択することが好ましい。更に、環境負荷軽減や経済的有利性等から、電極製造工程において排出される溶剤を回収・再利用する場合は、混合溶剤ではなく、単一溶剤での使用が好ましい。
【0131】
これら、比誘電率、活物質との反応性、及びバインダー樹脂の溶解性を満たし、単一使用での汎用性を有する溶剤としては、アミド系溶剤が好ましく、特に、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチル燐酸トリアミド等のアミド系非プロトン性の非水系溶剤の使用が好ましい。特に本発明の使用態様においては、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0132】
<活物質(G)>
本発明の組成物を正極合材または負極合材に用いる場合は、上記高分子分散剤(A)、炭素材料(B)、誘導体(D)、および溶剤(E)以外に、活物質(G)として、少なくとも正極活物質または負極活物質を含んでいてもよい。
【0133】
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS
2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
【0134】
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、Li
XFe
2O
3、Li
XFe
3O
4、Li
XWO
2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することも出来る。
【0135】
これら活物質(G)の大きさは、平均粒径が0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。本明細書でいう活物質(G)の平均粒径とは、活物質(G)を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
【0136】
<バインダー(F)>
本発明の組成物には、更に、バインダーを含有させることが好ましい。使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。特に本発明の使用態様においては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0137】
また、バインダーとしてのこれらの樹脂類の質量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合材成分が著しく凝集してしまうことがある。
【0138】
本発明の組成物は、正極合材または負極合材に用いることができる。正極合材または負極合材に用いる場合は、上記高分子分散剤(A)と、炭素材料(B)、および溶剤(E)、とを含む組成物に、活物質(G)(正極活物質または負極活物質)、より好ましくは更にバインダー(F)を含有させた正・負極合材スラリーとして使用することが好ましい。また、該組成物には誘導体(D)を含むことができる。
【0139】
電極合材スラリー中の総固形分に占める活物質(G)の割合は、80質量%以上、99質量%以下が好ましい。また、電極合材スラリー中の総固形分に占める、導電助剤としての炭素材料(B)割合は、0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。そして、電極合材スラリー中の総固形分に占める、バインダー(F)成分の割合は、0.5質量%以上、10質量%以下が好ましい。
また、本発明において、合材スラリー中に占める高分子分散剤(A)の割合は、導電助剤としての炭素材料(B)の質量に対して0.01〜7.5質量%であることが好ましい。より好ましくは、導電助剤としての炭素材料(B)の質量に対して0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは導電助剤としての炭素材料(B)の質量に対して1.0〜5.0質量%である。誘導体(D)を添加する場合は、高分子分散剤(A)の質量に対して、1質量%以上、80質量%以下の割合が好ましく、10質量%以上、60質量%以下がより好ましい。
【0140】
また、電極合材スラリーの適正粘度は、電極合材スラリーの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
【0141】
<二次電池電極形成用組成物>
次に、二次電池電極形成用組成物(単に「組成物」と称することがある)の製造方法について説明する。本発明の組成物は、例えば、高分子分散剤(A)の存在下、導電助剤としての炭素材料(B)を溶剤(E)に分散し、該分散体に、必要に応じて、誘導体(D)、活物質(G)(正極活物質または、負極活物質)、および/またはバインダー(F)、を混合することにより、製造することができる。各成分の添加順序などについては、これに限定されるわけではない。また、必要に応じて、更に溶剤を添加しても良い。尚、本明細書において、「分散体」とは、特に断りがない限り、高分子分散剤(A)、導電助剤としての炭素材料(B)、溶剤(E)からなり、誘導体(D)を含むことができる二次電池電極形成用組成物を指すものとする。また、「合材スラリー」とは、「分散体」に、さらに活物質(G)(正極活物質または負極活物質)およびバインダー(F)を含有してなる二次電池電極形成用組成物を指すものとする。
【0142】
上記製造方法は、高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)を、溶剤(E)中で完全ないしは一部溶解させ、その溶液中に導電助剤としての炭素材料(B)を添加、混合することで、これら高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)を、炭素材料(B)に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するものである。このときの分散体中における炭素材料(B)の濃度は、使用する炭素材料(B)の比表面積や表面官能基量などの炭素材料固有の特性値等にもよるが、生産効率、分散効率、後述するコンタミ除去工程の効率および作業性の観点から、1質量%以上、50質量%以下が好ましく、更に好ましくは、5質量%以上、35質量%以下である。とりわけ、コンタミを除く工程を入れる場合は、分散体の粘度を、好ましくは5mPa・s以上、10,000mPa・s以下、より好ましくは5,000mPa・s以下、更に好ましくは3,000mPa・s以下とする。
【0143】
二次電池電極形成用組成物中での導電助剤としての炭素材料(B)の分散粒径は、0.03μm以上、2μm以下、好ましくは、0.05μm以上、1μm以下、更に好ましくは0.05μm以上、0.5μm以下であることが望ましい。
本明細書でいう炭素材料(B)の分散粒径とは、体積粒度分布において、粒径の小さいものからその粒子の体積割合を積算した際に、50%となるところの粒子径(D50)であり、動的光散乱方式の粒度分布計(本明細書の実施例では日機装社製「マイクロトラックUPA」)によって測定される値である。
【0144】
また、高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)を、を炭素材料(B)に作用(例えば吸着)させつつ、溶剤に分散するための装置としては、顔料分散等に用いられる分散機を使用できる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、分散機としては、分散機からの金属混入防止処理を施したものを用いることが好ましい。
【0145】
例えば、メディア型分散機を使用する場合は、アジテーターおよびベッセルが、セラミック製または樹脂製の分散機を使用する方法や、金属製アジテーターおよびベッセル表面をタングステンカーバイド溶射や樹脂コーティング等の処理をした分散機を用いることが好ましい。そして、メディアとしては、ガラスビーズや、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ等のセラミックビーズを用いることが好ましく、中でもジルコニアビーズの使用が好ましい。また、ロールミルを使用する場合についても、セラミック製ロールを用いることが好ましい。分散装置は、1種のみを使用しても良いし、複数種の装置を組み合わせて使用しても良い。また、強い衝撃で粒子が割れたり、潰れたりしやすい正または負極活物質の場合は、メディア型分散機よりは、ロールミルやホモジナイザー等のメディアレス分散機が好ましい。
【0146】
また、分散時に金属異物等のコンタミを除く工程を入れることが好ましい。カーボンブラック、グラファイトおよび、炭素繊維等の炭素材料中には、それらの製造工程由来(ラインコンタミや触媒として)の金属異物が含まれている場合が多く、これら金属異物を除去することは、電池の短絡を防ぐために非常に重要となる。本発明では、上記高分子分散剤(A)の効果により、炭素材料(B)同士の凝集がよくほぐれること、および分散体の粘度が低くなるため、分散体中の炭素材料濃度が高い場合でも、効率良く金属異物を取り除くことができる。金属異物を除く方法としては、磁石による除鉄や、ろ過、遠心分離等の方法が挙げられる。
【0147】
バインダー(F)の添加方法としては、上記高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)の存在下、導電助剤としての炭素材料(B)を溶剤に分散してなる分散体を攪拌しつつ、固形のバインダー成分を添加し、溶解させる方法が挙げられる。また、バインダーを溶剤に溶解したものを事前に作製しておき、上記分散体と混合する方法が挙げられる。また、バインダー(F)を上記分散体に添加した後に、上記分散装置で再度分散処理を行っても良い。また、上記高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)の存在下、導電助剤としての炭素材料(B)を溶剤(E)に分散するときに、バインダー(F)の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。
【0148】
活物質(G)(正極活物質または負極活物質)の添加方法としては、上記高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)の存在下、導電助剤としての炭素材料(B)を溶剤(E)に分散してなる分散体を攪拌しつつ、正極活物質または負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。また、上記高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)の存在下、導電助剤としての炭素材料を溶剤に分散するときに、正極活物質または負極活物質の一部ないしは全量を、同時に添加して分散処理を行うこともできる。また、上記高分子分散剤(A)、さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)の存在下、導電助剤としての炭素材料(B)を溶剤(E)に分散してなる分散体を攪拌しつつ、バインダー成分を固形または溶液で添加した後に、正極活物質または負極活物質を添加し、分散させる方法が挙げられる。更に、上記高分子分散剤(A)、炭素材料(B)、溶剤(E)、活物質(G)、バインダー(F)さらに誘導体(D)を含む場合は誘導体(D)を混合し、同時に分散処理することもできる。混合、分散を行うための装置としては、通常の顔料分散等に用いられている上述の分散機が使用できる。
【0149】
使用する活物質(G)の大きさは、平均粒径で0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。ここでいう活物質の平均粒径とは、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)による観察画像において、個々の一次粒子の長径の平均値である。ただし、活物質の中には活物質の反応面積を増大させるために、合成過程または合成後に微細な一次粒子を造粒処理するなどした凝集体(二次粒子)を用いる場合があり、その場合は、二次粒子の長径を測定し、活物質の平均粒径とする。
活物質(G)の平均粒径が、上述の炭素材料(B)の分散粒径(D50)との比(活物質(G)の平均粒径/炭素材料(B)の分散粒径(D50))で、2以上、100以下であるのが好ましい。更に好ましくは、9以上、70以下である。
【0150】
本発明の組成物は、上述するように、通常は溶剤を含む分散体(液)、ペースト等として、製造、流通、使用できる。これは、導電助剤や活物質と分散剤を乾燥粉体の状態で混合しても、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることはできず、液相法で、分散剤の存在下、導電助剤や活物質を溶剤に分散することにより、導電助剤や活物質に均一に分散剤を作用させることができるからである。また、以下に説明するように、集電体に電極合材層を形成する場合には、液状の分散体をできるだけ均一に塗布してこれを乾燥させることが好ましいからである。
しかしながら、例えば、液相法で作製した分散体を、運搬コストなどの理由から、一度溶剤を除去して乾燥粉体として、この乾燥粉体を適当な溶剤で再分散させて、電極合材層の形成に用いても良い。したがって、本発明の組成物は、液状の分散体に限られず、このような、乾燥粉体の状態の組成物であってもよい。
【0151】
本発明の二次電池電極形成用組成物のうち合材スラリーを、集電体上に塗工・乾燥し、合材層を形成し、二次電池用電極を得ることができる。
【0152】
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
【0153】
集電体上に合材スラリーや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0154】
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
【0155】
正極または負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池、燃料電池等が挙げられ、好ましくはリチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、燃料電池であり、より好ましくは、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池であり、特に好ましくは、リチウムイオン二次電池である。それぞれの二次電池において、従来から知られている電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
【0156】
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶剤に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、LiC
4F
9SO
3、Li(CF
3SO
2)
3C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF
2、LiSCN、又はLiBPh
4等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
非水系の溶剤としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶剤は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
【0158】
さらに上記電解液を、ポリマーマトリクスに保持し、ゲル状とした高分子電解質の形態で使用することもできる。ポリマーマトリクスとしては、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するアクリレート系樹脂、ポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリホスファゼン系樹脂、及びポリアルキレンオキシドセグメントを有するポリシロキサン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0159】
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0160】
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
【実施例】
【0161】
以下、実施例に基づき、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中、部は、質量部を、%は、質量%を、それぞれ表す。また、溶剤(E)として使用するN−メチル−2−ピロリドンを「NMP」と略記することがある。
【0162】
<共重合体の合成>
(合成例1)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、NMP200.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、スチレン100.0部、4−ヒドロキシブチルアクリレート100.0部、および重合開始剤としてV−601(和光純薬工業製)12.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬工業製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続け、室温まで0.5時間で冷却した。得られた溶液をNMPで希釈し、不揮発分20%の共重合体(1)溶液を得た。
【0163】
(合成例2〜5)
表1に示す材料と組成に変更した以外は、合成例1と同様の方法で合成し、合成例2〜5の共重合体溶液をそれぞれ得た。
【0164】
<共重合体の評価>
(重合度の評価)
共重合体の数平均分子量(Mn):
ピーク分子量が既知の標準ポリスチレンを用いて、該標準で校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(東ソー社製「HLC−8020」)を使用し、共重合体の数平均分子量(Mn)を測定した(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃)。
【0165】
共重合体の重合度:
共重合体の数平均分子量(Mn)を、共重合体の製造に用いた単量体の平均分子量で除した値を重合度とした。
なお、分子量M1の単量体1と、分子量M2の単量体2を、それぞれW1とW2の質量比で重合させた場合、共重合体の単量体の平均分子量は、(W1−W2)/(W1/M1+W2/M2)である。
【0166】
【表1】
St:スチレン (分子量104.2)
4HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート (分子量144.2)
LMA:ラウリルメタクリレート (分子量254.4)
HEA:ヒドロキシエチルアクリレート (分子量116.1)
AA:アクリル酸 (分子量72.1)
HPA:ヒドロキシプロピルアクリレート (分子量130.1)
BA:ブチルアクリレート (分子量128.2)
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート (分子量130.1)
BzMA:ベンジルメタクリレート (分子量176.2)
【0167】
<高分子分散剤(A)の合成>
(高分子分散剤(A−1)の合成(合成例6))
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、共重合体溶液(1) 50.0部(共重合体(1)としては10.0部)を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を60℃に加熱して、無水コハク酸0.35部を添加した。反応容器内を90℃に加熱して、反応試剤としてジアザビシクロウンデセン(DBU、東京化成製)0.05部を添加した。添加終了後、反応容器内を110℃に加熱して、5時間反応を続けた。その後、酸無水物価の測定を行い、反応率が95%以上であることを確認した。その後、N−メチル−2−ピロリドンを加え希釈し、N.V.=20%にした。その後、冷却し、高分子分散剤(A−1)を含む高分子分散剤溶液(A’−1)を得た。
【0168】
(高分子分散剤(A−2)〜(A−5)の合成(合成例7〜10))
表2に示す材料と組成に変更した以外は、合成例6と同様の方法で合成し、合成例7〜10の高分子分散剤溶液をそれぞれ得た。
【0169】
高分子分散剤(A−1)〜(A−5)の重合度は、合成原料の共重合体(1)〜(5)の重合度とする。
【0170】
【表2】
【0171】
(高分子分散剤(A−6)の合成(合成例11))
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、N−メチル−2−ピロリドン 200.0部、及びPVA102 50.0部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を60℃に加熱して、無水フタル酸2.21部を添加した。反応容器内を90℃に加熱して、反応試剤としてDBU(東京化成製)0.05部を添加した。添加終了後、反応容器内を110℃に加熱して、5時間反応を続けた。その後、酸無水物価の測定を行い、反応率が95%以上であることを確認した。その後、N−メチル−2−ピロリドンを加え希釈し、N.V.=20%にした。その後、冷却し、高分子分散剤(A−6)を含む高分子分散剤溶液(A’−6)を得た。
【0172】
(高分子分散剤(A−7)〜(A−11)の合成(合成例12〜16))
表2に示す材料と組成に変更した以外は、合成例11と同様の方法で合成し、合成例12〜16の高分子分散剤溶液をそれぞれ得た。
【0173】
高分子分散剤(A−5)〜(A−11)の重合度は、合成原料(PVA102、PVA103など)の重合度とした。
【0174】
【表3】
・PVA102:クラレポバールPVA102(クラレ製):ケン化度:98.0―99.0%、重合度:200。
・PVA103:クラレポバールPVA103(クラレ製):ケン化度:98.0―99.0%、重合度:300。
・PVA403:クラレポバールPVA403(クラレ製):ケン化度:78.5−81.5%、重合度:300。
・PVA505:クラレポバールPVA505(クラレ製):ケン化度:72.5−74.5%、重合度:500。
・BL−S:エスレックBL−S(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む構造単位:22mol%、アセチル基を含む構造単位:4mol%、ブチラール環を含む構造単位;74mol%、計算分子量:23,000。
・BH−S:エスレックBH−S(積水化学工業社製):ポリビニルブチラール樹脂、水酸基を含む構造単位:22%、アセチル基を含む構造単位:5mol%、ブチラール環を含む構造単位;73mol%、計算分子量:66,000。
【0175】
<二次電池電極形成用組成物(分散体)の製造>
[実施例1]
表4に示した組成に従い炭素材料分散体を調製した。まず、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン80.0部をミキサーで攪拌しつつ、表2に示した高分子分散剤(A−1)を含む高分子分散剤溶液(A’−1)(固形分20%)を4部加えて撹拌溶解させた。次に、導電助剤となるデンカブラックHS−100(電気化学工業社製)を16部加えてミキサーで混合した後、更にサンドミルで分散を行い、二次電池電極形成用組成物の一態様である分散体1を得た。
【0176】
[実施例2〜11]
表4に示した組成に従い、炭素材料としてデンカブラックHS−100(電気化学工業社製)、又は、Super−P Li(TIMCAL社製)を、分散剤として高分子分散剤溶液(A’−1)を高分子分散剤溶液(A’−2)〜(A’−11)に変更した以外は、実施例1と同様にして、分散体2〜11をそれぞれ得た。
【0177】
[実施例12〜15]
表4に示した組成に従い、炭素材料としてデンカブラックHS−100(電気化学工業社製)を16部、分散剤として、表2に示した各種高分子分散剤溶液3部、及び表5に示す誘導体(D−1)〜(D−4)を0.2部、N−メチル−2−ピロリドン80.8部に加える事に変更した以外は実施例1と同様にして、分散体12〜15をそれぞれ得た。
【0178】
[実施例16]
表4に示した組成に従い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン82.0部をミキサーで攪拌しつつ、分散剤として高分子分散剤溶液(A’−11)を2.0部加えて撹拌溶解させた以外は、実施例1と同様にして分散体16を得た。
【0179】
[実施例17]
表4に示した組成に従い、溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン68.0部をミキサーで攪拌しつつ、分散剤として高分子分散剤溶液(A’−3)を16.0部加えて撹拌溶解させた以外は、実施例1と同様にして分散体17を得た。
【0180】
[比較例1〜3]
表4に示した組成に従い、炭素材料としてデンカブラックHS−100(電気化学工業社製)、又は、Super−P Li(TIMCAL社製)を、分散剤として表2に示した共重合体(1)溶液、PVA103をN−メチル−2−ピロリドンで固形分20%に溶解させたPVA103溶液、BL‐SをN−メチル−2−ピロリドンで固形分20%に溶解させたBL‐S溶液に変更した以外は、実施例1と同様にして分散体18〜20をそれぞれ得た。
【0181】
[比較例4]
表4に示した組成に従い、炭素材料としてデンカブラックHS−100(電気化学工業社製)を16部、分散剤として、表2に示したPVA103溶液3部、及び表5に示す誘導体(D−1)を0.2部、N−メチル−2−ピロリドン80.8部に加える事に変更した以外は実施例1と同様にして、分散体21を得た。
【0182】
<分散体の評価>
(分散安定性の評価)
分散体の分散性評価には、その指標として分散粒径を使用した。結果を表4に示す。分散粒径の測定は、動的光散乱方式の粒度分布計(日機装社製「マイクロトラックUPA」)を用い、体積粒度分布において、粒径の小さいものからその粒子の体積割合を積算した際に、50%となるところの粒径(D50)を求めた。この粒径(D50)は、炭素材料(B)の分散粒径に該当する。
測定用のサンプル液は、以下のようにして調製した。N−メチル−2−ピロリドン100gをディスパー攪拌しつつ、その液に、上記で得られた各種分散体を1乃至4滴添加し、1,000rpmで5分攪拌した。当該測定用サンプル液を上記の粒度分布計にセットし、ローディングインデックス(レーザーの散乱強度)が0.8〜1.2の範囲に入っていることを確認してから分散粒径を測定した。上記の調製方法でローディングインデックスが1.2を超える場合は、0.8〜1.2の範囲になるよう、当該サンプル液をN−メチル−2−ピロリドンで適宜希釈してから測定した。測定時間は60秒/1回とし、3回連続で測定して得られた値の平均値を使用した。
分散体の分散性評価結果を表4に示した。数値が小さいものほど、分散性に優れ、均一で良好な分散体であることを示す。尚、分散体の分散粒径は、各種分散体の製造直後および、当該分散体を50℃で15日間保存した後の2回測定を行った。
表4において、「保存安定性(2)/(1)」とは、「50℃で15日間保存した分散体の分散粒径/製造直後の分散体の分散粒径」の比を意味し、1.00からの乖離が小さいほど保存安定性に優れていることを示す。
【0183】
【表4】
【0184】
<炭素材料(B)>
A:デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、一次粒子径48nm、比表面積48m
2/g、以下「HS−100」と略記することがある。
F:Super−P Li(TIMCAL社製):ファーネスブラック。一次粒子径40nm、比表面積62m
2/g。
【0185】
実施例12〜15、比較例4に用いた誘導体を表5に示す。
【表5】
【0186】
本発明の炭素材料分散体の分散性に関しては、表4に示したように、いずれの分散体も炭素材料の分散性が良好であり、均一に炭素材料が分散された分散体であることが確認された。また、実施例における炭素材料分散体は比較例に比して、製造直後の分散粒径と50℃で15日保存した後の分散粒径の変化が小さく、保存安定性に優れることが確認された。
【0187】
<二次電池電極形成用組成物(正極合材スラリー)の製造>
[実施例18]
実施例1で製造した分散体1 13.8部とバインダーとしてW#1100のN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分12%)17.5部を採取しディスパーで混合して均一化する。この混合液をディスパーで攪拌しつつ正極活物質として平均粒径6.7μmのLiCoO
2(以下、LCOと略記する)68.6部を徐々に添加した後、合材スラリーの固形分が73%となるように溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを更に加えて、ディスパーで30min混合する事で正極合材スラリーを製造した。
【0188】
[実施例19〜26、実施例29〜32、比較例5〜8]
表6に示した材料に変更した以外は実施例21と同様にして、正極合材スラリーをそれぞれ製造した。また、活物質としては、LCO、平均粒径12μmのLiMn
2O
4(以下、LMOと略記する)、平均粒径15μmのLiNi
(1/3)Mn
(1/3)Co
(1/3)O
2(以下、NMCと略記)のいずれかを使用した。
【0189】
[実施例27]
実施例10で製造した分散体10 15.6部とバインダー(F)としてW#7200のN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分8%)31.3部を採取しディスパーで混合して均一化する。この混合液をディスパーで攪拌しつつ正極活物質として、表面にカーボンコート層を有する平均粒径1μmのLiFePO
4(以下、LFP−01と略記する)45部を徐々に添加した後、合材スラリーの固形分が50%となるように溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンを更に加えて、ディスパーで30min混合する事で正極合材スラリーを製造した。
【0190】
[実施例28、33]
表6に示した材料に変更した以外は、実施例27と同様にして、正極合材スラリーをそれぞれ製造した。
【0191】
【表6】
【0192】
<バインダー(F)>
KFポリマーW#1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、分子量:28万。以下「W#1100」と略記することがある。
KFポリマーW#7200(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、分子量:63万。以下「W#7200」と略記することがある。
【0193】
<二次電池電極形成用組成物(負極合材スラリー)の製造>
[実施例35]
実施例4で製造した分散体4 11.3部とバインダー(F)としてW#7200のN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分8%)28.8部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ負極活物質として平均粒径15μmの人造黒鉛55.8部を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が60%となるように溶剤(E)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、二次電池電極形成用組成物の一態様である負極合材スラリーを製造した。
【0194】
[比較例9]
表7に示した材料に変更した以外は実施例35と同様にして、負極合材スラリーを調整した。
【0195】
[実施例36]
実施例8で製造した分散体8 17.8部とバインダー(F)としてW#7200のN−メチル−2−ピロリドン溶液(固形分8%)33.8部をディスパーで混合して均一化した後、当該液を攪拌しつつ負極活物質として平均粒径5μmのLi
4Ti
5O
12(以下、LTOと略記することがある)51.3部、を徐々に添加した。次に、合材スラリーの固形分が57%となるように溶剤(E)としてN−メチル−2−ピロリドンを加えてさらに混合し、負極合材スラリーを製造した。
【0196】
[比較例10、11]
表7に示した材料に変更した以外は実施例36と同様にして、負極合材スラリーをそれぞれ調整した。
【0197】
(活物質の平均粒径)
活物質の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning Electron Microscope)から得られた観察画像から算出した。ここで、LCO、LMO、LFP、人造黒鉛、LTOついては、一次粒子100個の長径を測定しその平均値から算出した。また、NMCについては、二次粒子100個の長径を測定しその平均値から算出した。
【0198】
【表7】
【0199】
<合材スラリーの評価>
(分散性評価)
正極合材スラリーおよび負極合材スラリーの分散性評価については、グラインドゲージによる粒度の評価(JIS K5600−2−5に準ずる)により実施した。数値が小さいものほど分散性に優れ、均一で良好な分散体であることを示す。尚、合材スラリーの粒度測定は、各種スラリーの製造直後および、当該スラリーを40℃で4日間保存した後、それぞれ測定した。測定にあたっては、スラリー製造直後、遊星回転式の脱泡装置で脱泡した後に粒度の測定を実施した。また、40℃で4日間保存した合材スラリーについては、ディスパーで再攪拌後、遊星回転式の脱泡装置で脱泡した後に、粒度の測定を実施した。結果を表8、表9に示す。
【0200】
<二次電池用電極(正極、負極)の製造>
塗工塗膜乾燥後の電極の厚みが100μmとなるように、上記製造した正極合材スラリーを、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布し塗工膜を作成、これを、120℃の乾燥炉で乾燥し塗工物を得た。これに、更に、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが85μmとなる正極を製造した。
【0201】
塗工塗膜乾燥後の電極の厚みが80μmとなるように、上記製造した負極合材スラリーを、集電体となる厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布し塗工膜を作成、これを、120℃の乾燥炉で乾燥し塗工物を得た。これに、更に、ロールプレスによる圧延処理を行い、厚みが70μmとなる負極を製造した。
【0202】
<二次電池(コイン型電池)の製造>
上記方法により得られた正極または負極を、直径16mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔を対極とした。 これら作用極、対極の間にポリプロピレンより成る多孔質セパレーターを挟み積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを1:1(体積比)の割合で混合した混合溶媒にLiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水系電解液)で極間を満たす形でコイン型電池を製造した。コイン型電池は、アルゴンガス置換したグロ−ブボックス内で作製後、以下に示す電池特性評価を行った。
【0203】
<二次電池(正極、負極)の評価>
正極については、50サイクルと200サイクルの放電容量維持率を測定した。結果を表8に示す。負極については、50サイクルと100サイクルの放電容量維持率を測定した。結果を表9に示す。
【0204】
(サイクル特性(50サイクル))
得られたコイン型電池について、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用い、充放電測定を行い、LiCoO
2の場合、充電レート1.0Cで充電終止電圧4.3Vまで定電流定電圧充電を続け満充電とした後に、放電レート1.0Cで放電終止電圧2.8Vに達するまで定電流放電を行った。
【0205】
また、使用する活物質がLiMn
2O
4、及び、LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2の場合は、充電終止電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vとした以外は、LiCoO
2の場合と同様に充放電測定を行った。
【0206】
また、使用する活物質が、LiFePO
4の場合は、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.0Vとした以外は、LiCoO
2の場合と同様に充放電測定を行った。
【0207】
負極評価では、人造黒鉛の場合、充電終止電圧0.01V、放電終止電圧が1.5Vとし、チタン酸リチウムの場合、放電終止電圧2.0V、充電終止電圧が1.0Vとした以外は、正極評価の場合と同様に充放電測定を行った。
【0208】
これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして50サイクルの充電・放電を繰り返し、「放電容量維持率(50サイクル)=50サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量」とし、放電容量維持率によって以下の基準に従って判定した。
◎:「放電容量維持率が95%以上。極めて良好。」
○:「放電容量維持率が90%以上、95%未満。良好。」
△:「放電容量維持率が85%以上、90%未満。使用可能。」
×:「放電容量維持率が85%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0209】
(サイクル特性(100サイクル、200サイクル))
50サイクルと同様に、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を用いて充放電測定を行った。これらの充電・放電サイクルを1サイクルとして100サイクルまたは200サイクルの充電・放電を繰り返し、「放電容量維持率(100サイクルまたは200サイクル)=100サイクルまたは200サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量」とし、放電容量維持率によって以下の基準に従って判定した。
◎:「放電容量維持率が90%以上。極めて良好。」
○:「放電容量維持率が85%以上、90%未満。非常に良好。」
△○:「放電容量維持率が80%以上、85%未満。良好。」
△:「放電容量維持率が75%以上、80%未満。使用可能。」
×:「放電容量維持率が75%未満。実用上問題あり、使用不可。」
【0210】
【表8】
【0211】
【表9】
【0212】
表8、表9において、「保存安定性(2)/(1)」とは、「40℃で4日間保存した合材スラリーの粒度/製造直後の合材スラリーの粒度」の比を意味し、1からの乖離が小さいほど、保存安定性に優れていることを示す。
【0213】
表8、表9に示すように、実施例18〜34の本発明による合材スラリーは、導電助剤と活物質の分散性に優れた組成物であることが確認された。とりわけ、高分子分散剤(A)の重合度が10〜350の範囲にある分散体(実施例1〜4、6〜8、10)や、高分子分散剤(A)の添加量が、炭素材料に対して0.01〜7.5質量%である分散体(実施例1〜16)や、高分子分散剤(A)と誘導体(D)を併用した分散体(実施例12〜15)は、比較例に比して40℃で4日間保存したときの粒度の変化が小さく、保存安定性に優れることが確認された。
【0214】
また、本発明の二次電池電極形成用組成物から形成された二次電池用電極を用いた電池では、比較例に対してサイクル特性(放電容量維持率)に優れることが明らかとなった。
更に、高分子分散剤(A)の重合度が10〜350の範囲にある二次電池電極形成用組成物(実施例18〜21、23〜25、27)や、高分子分散剤(A)の添加量が、炭素材料に対して0.01〜7.5質量%である二次電池電極形成用組成物(実施例18〜33)に於いて、100サイクル又は200サイクル経過後も放電容量維持率が高く、良好なサイクル特性となることが確認された。
更に、使用する活物質(G)の平均粒径と、分散体中の炭素材料(B)の分散粒径(D50)との比(活物質平均粒径/炭素材料分散粒径(D50))が2以上の本発明(実施例21〜35、37)について、電池のサイクル特性(放電容量維持率)が向上する傾向が見られた。
実施例に於いてサイクル特性が向上する効果について、その理由は明らかではないが、本発明の樹脂を用いることで、炭素材料分散体、合材スラリーの分散安定性を向上させる効果があることより、酸性官能基が、炭素材料、活物質の表面近傍に存在する事で、合材スラリーを使用した塗工物を製造した際、導電パス形成など乾燥後の材料分布状態に良好な影響を与えている、或いは、膜強度が高くなることでサイクル特性が向上したのではないかと類推している。