特許第6746940号(P6746940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6746940歯車の歯形のシミュレーション装置及び方法並びに加工用工具の刃面のシミュレーション装置及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746940
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】歯車の歯形のシミュレーション装置及び方法並びに加工用工具の刃面のシミュレーション装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/12 20060101AFI20200817BHJP
   B23F 5/16 20060101ALI20200817BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   B23F23/12
   B23F5/16
   G05B19/4069
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-26846(P2016-26846)
(22)【出願日】2016年2月16日
(65)【公開番号】特開2017-144502(P2017-144502A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2019年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 明
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−048107(JP,A)
【文献】 特開平07−219612(JP,A)
【文献】 特開平08−108345(JP,A)
【文献】 特開平09−212222(JP,A)
【文献】 特許第4048090(JP,B2)
【文献】 特開2014−237185(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0106063(US,A1)
【文献】 特開平08−025500(JP,A)
【文献】 特開平11−030514(JP,A)
【文献】 特開2002−137038(JP,A)
【文献】 特開2011−086024(JP,A)
【文献】 特開2012−152837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 1/00−23/12
B29D 15/00
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車加工における歯車の歯形のシミュレーション装置であって、
前記歯車加工は、
加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、
前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、
前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工し、
前記シミュレーション装置は、
前記加工物の形状の情報、前記加工物においてシミュレーションが必要な前記歯車となる部分の断面の情報及び前記加工用工具の刃面の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算部と、
前記3次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算部で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算部と、
前記第2演算部で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記加工物に形成される前記歯形の形状を決定する第3演算部と、
を備える、歯車の歯形のシミュレーション装置。
【請求項2】
前記第3演算部で決定した前記2次元座標系における前記歯形の形状、前記加工用工具の前記工具刃のねじれ角度、及び、前記加工物と前記加工用工具との相対姿勢に基づいて、前記3次元座標系における前記歯車の歯の形状を演算する第4演算部、を備える、請求項1に記載の歯車の歯形のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記第3演算部は、前記2次元座標系の通過点を包含する矩形領域を所定のメッシュの大きさで区切り、前記2次元座標系の通過点を含む前記メッシュを選択して通過点領域を演算し、前記通過点領域の縁を表す前記メッシュを縁メッシュとして演算し、前記縁メッシュに基づいて前記歯形の形状を決定する、請求項1又は2に記載の歯車の歯形のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記第1演算部は、前記加工用工具の工具刃の刃面と側面との境界線歯形を規定する複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)間の距離が、前記メッシュのサイズより小さくなるように補間し、前記複数の定義点で囲まれる領域内で前記通過点を演算する、請求項3に記載の歯車の歯形のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記第3演算部は、前記縁メッシュ内に複数の通過点が存在する場合、通過点を加工された点とし、加工量が最も多くなる通過点を前記歯形の形状を表す点として選択する、請求項3又は4に記載の歯車の歯形のシミュレーション装置。
【請求項6】
歯車加工における歯車の歯形のシミュレーション方法であって、
前記歯車加工は、
加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、
前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、
前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工し、
前記シミュレーション方法は、
前記加工物の形状の情報、前記加工物においてシミュレーションが必要な前記歯車となる部分の断面の情報及び前記加工用工具の刃面の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程で記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算工程と、
前記3 次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算部で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算工程と、
前記第2演算工程で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記加工物に形成される前記歯の形状を決定する第3演算工程と、を備える歯車の歯形のシミュレーション方法。
【請求項7】
歯車加工における加工用工具の刃面のシミュレーション装置であって、
前記歯車加工は、
加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、
前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、
前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工し、
前記シミュレーション装置は、
前記加工物の形状の情報、前記加工用工具においてシミュレーションが必要な前記工具刃の断面の情報及び前記歯車の歯形の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算部と、
前記3次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算部で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算部と、
前記第2演算部で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記刃面の形状を決定する第3演算部と、
を備える、加工用工具の刃面のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記歯車の歯形の形状を示した複数の定義点の情報は、インボリュート曲線を補正したような数式で表せない歯車の歯形の形状、又は、歯車のインボリュート曲線の形状の任意の点の情報とする、請求項7に記載の加工用工具の刃面のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記第3演算部で決定した前記2次元座標系における前記刃面の形状、前記歯車の前記歯のねじれ角度、及び、前記加工物と前記加工用工具との相対姿勢に基づいて、前記3次元座標系における前記工具刃の形状を演算する第4演算部、を備える、請求項8に記載の加工用工具の刃面のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記第3演算部は、前記2次元座標系の通過点を包含する矩形領域を所定のメッシュの大きさで区切り、前記2 次元座標系の通過点を含む前記メッシュを選択して通過点領域を演算し、前記通過点領域の縁を表す前記メッシュを縁メッシュとして演算し、前記縁メッシュに基づいて前記刃面の形状を決定する、請求項8又は9に記載の加工用工具の刃面のシミュレーション装置。
【請求項11】
前記第1演算部は、前記歯車の歯の歯形面と側面との境界線を規定する複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)間の距離が、前記メッシュのサイズより小さくなるように補間し、前記複数の定義点で囲まれる領域内で前記通過点を演算する、請求項10に記載の加工用工具の刃面のシミュレーション装置。
【請求項12】
前記第3演算部は、前記縁メッシュ内に複数の通過点が存在する場合、通過点を加工された点とし、加工量が最も多くなる通過点を前記刃面の形状を表す点として選択する、請求項10又は11に記載の加工用工具の刃面のシミュレーション装置。
【請求項13】
歯車加工における加工用工具の刃面のシミュレーション方法であって、
前記歯車加工は、
加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、
前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、
前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工し、
前記シミュレーション方法は、
前記加工物の形状の情報、前記加工用工具においてシミュレーションが必要な前記工具刃の断面の情報及び前記歯車の歯形の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶工程と、
前記記憶工程で記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算工程と、
前記3次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算工程で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算工程と、
前記第2演算工程で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記加工用工具素材に形成される前記刃面の形状を決定する第3演算工程と、
を備える加工用工具の刃面のシミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車の歯形のシミュレーション装置及び方法並びに加工用工具の刃面のシミュレーション装置及び方法である。
【背景技術】
【0002】
歯車加工のシミュレーション装置として、特許文献1,2に記載されている装置が知られている。特許文献1に記載のシミュレーション装置は、必要なモータ性能を求めるため、切込ベクトル等を演算して切削力を算出し、切込ベクトルと切削力に基づいて加工物又は加工用工具に生じるトルクを算出する。
【0003】
また、特許文献2に記載のシミュレーション装置は、加工物のブランクモデル、加工用工具のカッターモデル及びそれらの相対的位置関係に基づいて、歯切りのシミュレーションにより加工物のブランクモデルから歯車のモデルを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−237185号公報
【特許文献2】特許第4048090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシミュレーション装置は、外周に複数の工具刃を有する加工用工具を用いて、加工物の中心軸線と加工用工具の中心軸線とを傾斜させ且つねじれた状態で、加工物と加工用工具とを同期回転させながら、加工用工具を加工物の中心軸線方向に直進させる歯車加工に適用される。
【0006】
しかし、特許文献2に記載のシミュレーション装置は、特許文献1に記載の歯車加工に言及されていない。また、歯形形状から刃面形状へのシミュレーションを行うことについて言及されていない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、特許文献1に記載されているような歯車加工に関して刃面形状から歯形形状へのシミュレーションを行える歯車の歯形のシミュレーション装置及び方法、並びに、歯形形状から刃面形状へのシミュレーションを行える加工用工具の刃面のシミュレーション装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本手段に係る歯車加工における歯車の歯形のシミュレーション装置において、前記歯車加工は、加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工する。
【0009】
そして、前記シミュレーション装置は、前記加工物の形状の情報、前記加工物においてシミュレーションが必要な前記歯車となる部分の断面の情報及び前記加工用工具の刃面の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算部と、前記3次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算部で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算部と、前記第2演算部で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記加工物に形成される前記歯形の形状を決定する第3演算部と、を備える。
【0010】
これによれば、加工用工具の形状が既知の場合、当該加工用工具で加工される歯車におけるシミュレーションが必要な歯車となる部分の断面をシミュレーション可能となり、当該加工用工具で加工される歯形と理論値の歯形との形状誤差の検証が可能となる。そして、この処理においては、3次元座標系を2次元座標系に変換演算しているので、処理量を低減でき、処理速度を向上できる。
【0011】
本手段に係る歯車加工における歯車の歯形のシミュレーション方法において、前記歯車加工は、加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工する。
【0012】
そして、前記シミュレーション方法は、前記加工物の形状の情報、前記加工物においてシミュレーションが必要な前記歯車となる部分の断面の情報及び前記加工用工具の刃面の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶工程と、前記記憶工程で記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算工程と、前記3 次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算部で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算工程と、前記第2演算工程で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記加工物に形成される前記歯の形状を決定する第3演算工程と、を備える。これによれば、上述のシミュレーション装置の効果と同様の効果が得られる。
【0013】
本手段に係る歯車加工における加工用工具の刃面のシミュレーション装置であって、前記歯車加工は、加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工する。
【0014】
そして、前記シミュレーション装置は、前記加工物の形状の情報、前記加工用工具においてシミュレーションが必要な前記工具刃の断面の情報及び前記歯車の歯形の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算部と、前記3次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算部で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算部と、前記第2演算部で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記刃面の形状を決定する第3演算部と、を備える。
【0015】
これによれば、歯車の形状が既知の場合、加工用工具においてシミュレーションが必要な工具刃の断面をシミュレーション可能となり、当該加工用工具の工具刃の刃面と理論値の刃面との形状誤差の検証が可能となる。そして、この処理においては、3次元座標系を2次元座標系に変換演算しているので、処理量を低減でき、処理速度を向上できる。
【0016】
本手段に係る歯車加工における加工用工具の刃面のシミュレーション方法において、前記歯車加工は、加工物の中心軸線と外周に複数の工具刃を有する加工用工具の中心軸線とを傾斜した状態とし、前記加工物の中心軸線回りへの前記加工物の回転と前記加工用工具の中心軸線回りへの前記加工用工具の回転とを同期させながら、前記加工用工具を前記加工物に対して前記加工物の中心軸線方向に直進させることで、前記加工物に歯車を加工する。
【0017】
そして、前記シミュレーション方法は、前記加工物の形状の情報、前記加工用工具においてシミュレーションが必要な前記工具刃の断面の情報及び前記歯車の歯形の形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶工程と、前記記憶工程で記憶される前記各情報に基づいて、前記歯車加工における3次元座標系において、前記歯車加工を行った場合に前記複数の定義点が前記断面を通過するときの前記3次元座標系における複数の通過点を演算する第1演算工程と、前記3次元座標系における前記断面を前記3次元座標系のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、前記第1演算工程で演算した前記3次元座標系における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する第2演算工程と、前記第2演算工程で演算した前記2次元座標系における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、前記2次元座標系における前記加工用工具素材に形成される前記刃面の形状を決定する第3演算工程と、を備える。これによれば、上述のシミュレーション装置の効果と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】歯車加工の基本動作を示す斜視図である。
図2図1の加工用工具の部分断面模式図である。
図3】本実施形態のシミュレーション装置の機能ブロック図である。
図4A図3の記憶部に記憶される歯車座標系(Xw,Yw)における歯車原点位置及び工具座標系(Xt,Yt)における工具原点位置を示す図である。
図4B図3の記憶部に記憶される歯車座標系(Xw,Zw)における歯車原点位置及び工具座標系(Xt,Zt)における工具原点位置を示す図である。
図5A図3の記憶部に記憶される歯車座標系(Xw,Yw)における演算領域を示す図である。
図5B図3の記憶部に記憶される歯車座標系(Xw,Zw)における演算領域を示す図である。
図6図3の定義点補間部で求めた刃面の定義点を示す工具刃の斜視図である。
図7A図6の刃面の定義点の定義を行う工具座標系(Xt,Yt)及び加工用工具の正負の回転方向を示す図である。
図7B図6の刃面の定義点の定義を行う工具座標系(Xt,Zt)を示す図である。
図8】既知の加工用工具で加工物を加工したときに形成される内歯の歯車の歯の歯形の形状を求めるとき、図3の通過点演算部で通過点を求める方法を説明するための図である。
図9A図3の第2演算部で断面を3次元座標系から2次元座標系へ変換する方法を説明するための図である。
図9B図3の第2演算部で変換した断面を示す図である。
図10図3のメッシュ化部で全通過点を包含する矩形領域をメッシュ化した状態を示す図である。
図11図3の通過点領域演算部で通過点を含むメッシュから求めた通過点領域を示す図である。
図12図3の縁メッシュ演算部で求めた通過点領域の縁を表す縁メッシュを示す図である。
図13A図3の形状決定部で時計回りの連続する縁メッシュの抽出方法を説明するための図である。
図13B図3の形状決定部で反時計回りの連続する縁メッシュの抽出方法を説明するための図である。
図14A図3の形状決定部で時計回りで抽出した縁メッシュから形状点を選択する方法を説明するための図である。
図14B図3の形状決定部で反時計回りで抽出した縁メッシュから形状点を選択する方法を説明するための図である。
図15図3の形状決定部で選択した形状点を示す図である。
図16】形状点のシミュレーション値と理論値を比較した図である。
図17A】既知の内歯の歯車の歯を加工するための加工用工具の形状を求めるとき、図3の通過点演算部で通過点を求める方法を説明するための第1の図である。
図17B】既知の内歯の歯車の歯を加工するための加工用工具の形状を求めるとき、図3の通過点演算部で通過点を求める方法を説明するための第2の図である。
図17C】既知の内歯の歯車の歯を加工するための加工用工具の形状を求めるとき、図3の通過点演算部で通過点を求める方法を説明するための第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1.歯車加工の基本動作)
本発明の歯車の歯形のシミュレーション装置の適用対象である歯車加工の基本動作について、図1及び図2を参照して説明する。ここでは、加工物20の内周面にインボリュート歯形の歯21を加工する場合を例に挙げる。ただし、加工物20の外周面に歯を加工する場合にも適用可能である。また、インボリュート歯形以外のトロコイド歯形やサイクロイド歯形等の歯を加工する場合にも適用可能である。
【0020】
図1に示すように、加工物20は、円環状に形成され、その内周面に歯車21Aの歯21が形成される。以下の説明では、隣り合う歯21の間の歯みぞ22に直角な歯21の断面形状を歯形21bという。また、加工物20は、その中心軸線Zw回りに回転可能に支持される。つまり、加工物20は、C軸回転可能となる。なお、中心軸線Zwに直角な加工物座標系をXw−Ywで表す。
【0021】
図1及び図2に示すように、加工用工具10は、外周に複数の工具刃11を有する。各工具刃11は、突条に形成される。各工具刃11は、各工具刃11の延在方向に対する側面11aと、延在方向の端面11bと、径方向外面11cとを備える。以下の説明では、隣り合う工具刃11の間の刃みぞ12に直角な工具刃11の断面形状を刃面(上記端面11bに相当)という。また、加工用工具10は、加工用工具10の中心軸線Zt回りに回転可能に支持される。つまり、加工用工具10は、U軸回転可能となる。なお、中心軸線Ztに直角な工具座標系をXt−Ytで表す。
【0022】
ここで、本実施形態において、工具刃11は、加工用工具10の中心軸線Ztに対してねじれ角γ1を有している。ただし、ねじれ角γ1がゼロとなるように、工具刃11を形成してもよい。また、工具刃11の径方向外面11cは、中心軸線Ztに対して傾斜している。
【0023】
つまり、工具刃11の外接面は、円錐状に形成される。工具刃11の径方向外面11cの傾斜角度ξbは、切削における逃げ角に相当する。また、工具刃11の端面11bは、中心軸線Ztに直交する平面に対して角度ξaだけ傾斜している。工具刃11の端面11bの傾斜角度ξaは、切削におけるすくい角に相当する。
【0024】
そして、図1に示すように、加工用工具10の中心軸線Ztは、加工物20の中心軸線Zwに対して傾斜し且つねじれた状態とされている。つまり、両者の中心軸線Zt,Zwが平行ではないという意味である。
【0025】
この状態で、加工用工具10の回転と加工物20の回転とを同期させながら、図1の太矢印にて示すように、加工用工具10を加工物20に対し加工物20の中心軸線Zw方向に直進させる。なお、加工用工具10を加工物20の中心軸線Zw方向に移動させてもよいし、加工物20を加工物20の中心軸線Zw方向に移動させてもよい。
【0026】
加工用工具10の中心軸線Ztと加工物20の中心軸線Zwとが傾斜し且つねじれているため、加工点において、加工用工具10と加工物20とに相対速度が生じる。そのため、加工物20が切削される。そうすると、図1に示すように、加工物20の内周面に歯21が形成される。なお、図1は、加工物20に歯21を途中まで加工した状態を示しているが、上記動作を継続することにより、加工物20の軸線方向全長に亘って、歯21が形成される。
【0027】
(2.歯車加工装置)
本実施形態のシミュレーション装置の適用対象である歯車加工を行う歯車加工装置は、例えば、5軸マシニングセンタを適用できる。すなわち、加工用工具10と加工物20とを相互に直交する3軸方向に相対的に直進移動させ、加工用工具10及び加工物20をそれぞれ軸回りに回転させ(U軸回転、C軸回転)、且つ、加工用工具10の中心軸線Ztと加工物20の中心軸線Zwとを傾斜させることができる装置を適用する。
【0028】
(3.シミュレーション装置の概要)
本実施形態のシミュレーション装置は、既知の形状の加工用工具10で加工物20を加工したときに形成される歯21の形状を求め、又は既知の形状の歯21を加工するための加工用工具10の工具刃11の形状を求める装置である。なお、以下の説明では、既知の加工用工具10で加工物20を加工したときに形成される内歯の歯車21Aの歯21の歯形21bの形状を求める場合について説明する。
【0029】
(4.シミュレーション装置の詳細)
図3に示すように、シミュレーション装置100は、記憶部110、第1演算部120、第2演算部130、第3演算部140及び第4演算部150を備える。そして、第1演算部120は、定義点補間部121及び通過点演算部123を備え、第3演算部140は、メッシュ化部141、通過点領域演算部142、縁メッシュ演算部143及び形状決定部144を備える。
【0030】
記憶部110は、加工物20の形状の情報、加工物20においてシミュレーションが必要な歯車21Aとなる部分の断面、例えば図4Bに示す加工物20に形成される歯21の歯みぞ22に直角な任意の断面Sの情報、及び加工用工具10の刃面11b形状を示した複数の定義点、例えば図6に示す加工用工具10の工具刃11の刃面11bと側面11aとの境界線を規定する複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)の情報を記憶する(記憶工程)。なお、nは、刃の高さやシミュレーション精度などに基づいて、適切な値とする。図6では便宜上、nを10としているが、30以上がより適切である。
【0031】
また、歯車21Aの情報、加工用工具10の情報、加工条件の情報、及び演算条件の情報を記憶する。歯車21Aの情報としては、歯直角モジュール、歯数、ねじれ角度、演算領域、歯車原点位置等があり、加工用工具10の情報としては、刃直角モジュール、刃数、ねじれ角度、工具原点位置等があり、加工条件の情報としては、工具回転方向、歯車回転方向、歯車回転軸傾き角度等があり、演算条件の情報としては、メッシュ幅等がある。
【0032】
これらの情報のうち、歯車原点位置、工具原点位置、及び演算領域については、以下の通りである。図4A及び図4Bに示すように、加工物20と加工用工具10との位置関係から、歯車原点位置は歯車座標系(Xw,Yw,Zw)においてOw(0,0,0)で表され、工具原点位置は工具座標系(Xt,Yt,Zt)においてOt(a,b,0)で表される。
【0033】
また、図5A及び図5Bに示すように、歯車加工シミュレーション装置100では、加工物20は円筒形状であるので、加工物20に形成される歯21の歯みぞ22に直角な任意の断面における演算領域の内外判定は、演算領域定義開始角度α、演算領域定義終了角度β、内径Di、外径Do及び厚みT(ただし、加工物20はX−Y平面に接触状態と仮定し、負方向もあり)に対して行う。
【0034】
第1演算部120は、記憶部110に記憶される各情報に基づいて、歯車加工における3次元座標系である加工物座標系(Xw,Yw,Zw)において、歯車加工を行った場合に複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)が断面Sを通過するときの加工物座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を演算する(第1演算工程)。
【0035】
第2演算部130は、加工物座標系(Xw,Yw,Zw)における断面Sを加工物座標系(Xw,Yw,Zw)のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、第1演算部120で演算した加工物座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を2次元座標系に変換演算する(第2演算工程)。
【0036】
第3演算部140は、第2演算部130で演算した2次元座標系(Xw´,Yw´)における複数の通過点に基づいて、2次元座標系(Xw´,Yw´)における加工物20に形成される歯形21bの形状を決定する(第3演算工程)。
【0037】
そして、第4演算部150は、第3演算部140で決定した2次元座標系(Xw´,Yw´)における歯形21bの形状、加工用工具10の工具刃11のねじれ角度、及び、加工物20と加工用工具10との相対姿勢に基づいて、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における歯車21Aの歯21の形状を演算する(第4演算工程)。なお、第1、第3演算部120,140を構成する各部については、以下の具体的動作で説明する。
【0038】
(5.シミュレーション装置の具体的動作)
次に、歯車加工シミュレーション装置100による具体的なシミュレーション動作について説明する。
【0039】
先ず、図6に示すように、第1演算部120において、定義点補間部121は、加工用工具10の工具刃11の刃面11bと側面11aとの境界線を規定する複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)において、定義点間の距離ΔP(k,k+1)が後述するメッシュのサイズより小さくなるように補間した定義点Pc(k,k+1)を追加する。ここで、図7A及び図7Bに示すように、刃面11bの定義点P(k),Pc(k,k+1)は、工具座標系(Xt,Yt,Zt)にて定義を行い、加工用工具10の回転に関しては、回転軸(中心軸線Zt)の正方向から見て反時計回りを正(+)として処理を行う。
【0040】
次に、通過点演算部123は、加工用工具10の工具刃11の刃面11bの定義点P(k),Pc(k,k+1)を加工動作に合わせて動かし、加工物20に形成される歯21の歯みぞ22に直角な任意の断面Sとの交点を通過点として算出する。この場合、実際の加工用工具10及び加工物20の動作と異なり、図8に示すように、加工物20の位置を固定して加工用工具10を加工物20回りで自転及び公転させながら上記定義点P(k),Pc(k,k+1)が上記断面に重なったときの座標値を通過点の座標値として求める。
【0041】
次に、図9A及び図9Bに示すように、第2演算部130は、上記断面Sの法線ベクトルVを加工物座標系(Xw,Yw,Zw)のうち例えばZw軸に重ねることで通過点の2次元化処理を行う。すなわち、第2演算部130は、上記断面Sを複数の通過点(図9A及び図9Bでは3点Pa,Pb,Pc示す)のうち任意の通過点Pを中心に回転させてXw´−Yw´平面に平行な面(Zw´値一定)とすることで通過点Pa,Pb,Pcの2次元化処理を行う(図9A及び図9Bでは、Paを中心に回転させている)。この2次元化処理を行う理由は、3次元空間上ではメッシュ化し難く、また、次数を削減して処理量を軽減するためである。
【0042】
次に、図10に示すように、第2演算部140において、メッシュ化部141は、2次元化処理を行った通過点P(図10では網点及びその輪郭線で示す)のXw方向の最大値Mxmax及び最小値MxminとYw方向の最大値Mymax及び最小値Myminをもとに全通過点を包含する矩形領域Aを求める。そして、メッシュ化部141は、求めた矩形領域Aを所定のメッシュmの大きさで区切ってメッシュ化を行う。
【0043】
そして、図11に示すように、通過点領域演算部142は、通過点Pがメッシュmに包含されているか対応付けを行い、対応付け情報をもとに各メッシュmにおける通過点Pの有無の判別処理を行い、通過点Pを含むメッシュmを選択して通過点領域AA(図11では黒丸点の集合で示す)を演算する。
【0044】
そして、図12に示すように、縁メッシュ演算部143は、通過点領域AAの縁を表すメッシュmを縁メッシュmmとして演算する。その演算方法は、通過点Pが存在するメッシュmに対し上下、左右のメッシュmに通過点Pが存在する場合は、当該メッシュmを縁メッシュmm候補から外す(通過点P無しに変更する)。この演算を通過点領域AAに存在する全メッシュmに対して行って縁メッシュmmを求める。
【0045】
そして、図12に示すように、形状決定部144は、先ず、連続する縁メッシュmmの中から開始メッシュmsを検出する。その検出方法は、加工用工具10の工具刃11の実態が縁メッシュmmに対し図示左側に来るように縁メッシュmmを扱うため、内歯加工ではYw方向が小さく且つXw方向が大きい座標値のメッシュm、すなわち図示右下のメッシュmからYw方向に縁メッシュmmを探し、見つかればそれを開始メッシュmsとし、見つからなければXw方向に1メッシュ分移動してYw方向に縁メッシュmmを探す処理を見つかるまで繰り返す。また、開始メッシュmsとして、Yw方向が小さく且つXw方向が小さい座標のメッシュmとしてもよい。
【0046】
次に、開始メッシュmsより上下方向、左右方向、斜め方向に新たに接続可能な縁メッシュmmの有無を探し、連続する3個の縁メッシュmmを抽出する。なお、上下方向、左右方向を優先させる。その抽出方法は、図13A及び図13Bに示すように、抽出した3個の縁メッシュmm1,mm2,mm3にそれぞれに含まれる通過点Pの座標値の平均座標値もしくは中心座標値を当該縁メッシュmm1,mm2,mm3の代表点P1,P2,P3の座標値として円弧もしくは線分を決定する。
【0047】
なお、網点で示す側が歯21の歯形21bである。円弧情報として時計回り、反時計回りの情報が必要になるが、図13Aの場合、進行方向ベクトルVaと円弧中心方向ベクトルVcから回転方向は時計回りと決定し、図13Bの場合、進行方向ベクトルVbと円弧中心方向ベクトルVcから回転方向は反時計回りと決定する。
【0048】
次に、図14Aに示すように、時計回りの円弧を決定した場合、連続する3個の縁メッシュmm1,mm2,mm3の真ん中の縁メッシュmm1に属する各通過点P1a,P1b,P1c,P1dと円弧中心Cとの距離が最小dminとなる通過点P1bを当該縁メッシュmm1の形状点として選択する。すなわち、加工量が最も多くなる通過点を形状点として選択する。
【0049】
また、図14Bに示すように、反時計回りの円弧を決定した場合、連続する3個の縁メッシュmm1,mm2,mm3の真ん中の縁メッシュmm1に属する各通過点P1a,P1b,P1c,P1dと円弧中心Cとの距離が最大dmaxとなる通過点P1cを当該メッシュmm1の形状点として選択する。すなわち、通過点が加工された点となるので加工量が最も多くなる通過点を形状点として選択する。
【0050】
また、線分を決定した場合、進行方向に対してメッシュmの幅の√2倍右側にオフセットした線分と真ん中の縁メッシュmmに含まれる全通過点との距離を算出し、距離が最小となる通過点を当該縁メッシュmmの形状点として選択する。そして、図15に示すように、形状決定部144は、全縁メッシュmmの形状点PPを選択したら、全形状点を2次元座標系(Xw´,Yw´)における加工物20に形成される歯形21bの形状として決定する。
【0051】
そして、第4演算部150は、第3演算部140で決定した2次元座標系(Xw´,Yw´)における歯形21bの形状、加工用工具10の工具刃11のねじれ角度、及び、加工物20と加工用工具10との相対姿勢に基づいて、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における歯車21Aの歯21の形状を求める。以上の処理により、既知の加工用工具10で加工物20を加工したときに形成される内歯の歯21の歯形21bの3次元形状を求めることができる。
【0052】
(6.歯形の形状の検証)
次に、上述したシミュレーション装置100の形状決定部144で決定される2次元座標系(Xw´,Yw´)の歯形21bの形状のシミュレーション値と理論値との比較を行った。図16において、黒丸点がシミュレーション値を示し、実線が理論値を示す。
【0053】
シミュレーション値と理論値がほぼ一致し実用レベルとなっている。Xw2,Xw3は、歯先から歯底に向かう肩の点の部分では、少し誤差があるが、Xw2,Xw3の部分でフィルタなどの補正を行うことで誤差を減らすことができる。
【0054】
(7.歯車加工シミュレーション装置の別の具体的動作)
上述の実施形態では、既知の加工用工具10で加工物20を加工したときに形成される内歯の歯21の形状を求める場合を説明したが、既知の加工用工具10で加工物20を加工したときに形成される外歯の歯の形状を求めることもできる。外歯の歯の場合の処理は、内歯の歯21の場合の処理と略同様であるが、形状決定部144が、連続する縁メッシュの中から開始メッシュを検出する処理のみ異なる。
【0055】
すなわち、図12に示す縁メッシュmmを外歯の歯形の縁メッシュmmとした場合、加工用工具10の刃形の実態が縁メッシュmmに対し図示右側に来るように縁メッシュmmを扱うため、外歯加工ではYw方向が大きく且つXw方向が小さい座標値のメッシュm、すなわち図示左下のメッシュmからYw方向に縁メッシュmmを探し、見つかればそれを開始メッシュmsとし、見つからなければXw方向に1メッシュ分移動してYw方向に縁メッシュmmを探す処理を見つかるまで繰り返す。
【0056】
(8.別形態)
上述の実施形態では、歯車加工シミュレーション装置100により、既知の加工用工具10で加工物20を加工したときに形成される内歯の歯車21Aの歯21の形状又は外歯の歯車の歯の形状を求める場合について説明したが、既知の内歯の歯車21Aの歯21又は既知の外歯の歯車の歯を加工するための加工用工具10の工具刃11の形状を求めることも可能である。
【0057】
すなわち、歯車21Aの歯21の形状を求める場合は、歯車加工において加工用工具10の工具刃11の刃面11bの定義点が、加工物20における任意の断面Sを通過する通過点を求めた。しかし、加工用工具10の工具刃11の形状を求める場合は、歯車加工において歯車21Aの歯21の歯形21bの定義点が、加工用工具10における任意の断面を通過する通過点を求めることになる。以下では、内歯の歯車21Aの歯21の場合を説明する。
【0058】
先ず、記憶部110は、加工物20の形状の情報、加工用工具10においてシミュレーションが必要な工具刃11の断面の情報及び歯車21Aの歯形21bの形状を示した複数の定義点の情報を記憶する。そして、歯車21Aの歯形21bの形状として、インボリュート曲線を補正したような数式で表せない歯車の歯形の形状の情報や歯車のインボリュート曲線の形状の任意の点(等間隔又は離散的な点)の情報なども使用可能であり、座標情報(3次元座標)として入力可能ならば、あらゆる歯形の形状に適用可能である。また、CADなどの設計ツールからの情報によって効率的に歯車21Aの歯形21bの情報を入力することができる。
次に、第1演算部120において、定義点補間部121は、図6での説明と同様に歯21の歯形21bにおける端面と側面との境界線を規定する複数の定義点において、定義点間の距離が後述するメッシュのサイズより小さくなるように補間する。
【0059】
次に、図17A図17B図17Cに示すように、通過点演算部123は、歯21の歯形21bの定義点を加工動作に合わせて動かし、加工用工具素材10Aに形成される加工用工具10の刃みぞ12に直角な任意の断面との交点を通過点として算出する。この場合、加工用工具素材10Aの位置を固定して歯車21Aを加工用工具素材10A回りで自転及び公転させながら上記領域が上記断面に重なったときの座標値を求める。以降の処理は、上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。以上の処理により、既知の内歯の歯車21Aの歯21を加工するための加工用工具10の工具刃11の刃面11bの2次元形状及び工具刃11の3次元形状を求めることができる。
また、シミュレーション装置100は、既知のパーソナルコンピュータなどの情報処理装置やPLC(Programmable Logic Controller)などの組み込みシステムに、上述の記憶部110及び第1演算部120などの各機能を搭載することによって実現することができる。
【0060】
(9.効果)
本実施形態の歯車加工における歯車21Aの歯形21bのシミュレーション装置100は、加工物20の中心軸線Zwと外周に複数の工具刃11を有する加工用工具10の中心軸線Ztとを傾斜した状態とし、加工物20の中心軸線Zw回りへの加工物20の回転と加工用工具10の中心軸線Zt回りへの加工用工具10の回転とを同期させながら、加工用工具10を加工物20に対して加工物20の中心軸線Zw方向に直進させることで、加工物20に歯車21Aを加工する歯車加工に適用できる。
【0061】
そして、シミュレーション装置100は、加工物20の形状の情報、加工物20においてシミュレーションが必要な歯車21Aとなる部分の断面Sの情報及び加工用工具10の刃面11b形状を示した複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)の情報を記憶する記憶部110と、記憶部110に記憶される各情報に基づいて、歯車加工における3次元座標系(Xw,Yw,Zw)において、歯車加工を行った場合に複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)が歯形21b断面Sを通過するときの3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を演算する第1演算部120と、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における断面を3次元座標系(Xw,Yw,Zw)のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、第1演算部120で演算した3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を2次元座標系(Xw´,Yw´)に変換演算する第2演算部130と、第2演算部130で演算した2次元座標系(Xw´,Yw´)における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、2次元座標系(Xw´,Yw´)における加工物20に形成される歯形21bの形状を決定する第3演算部140と、を備える。
【0062】
これによれば、加工用工具10の形状が既知の場合、当該加工用工具10で加工される歯車21Aにおけるシミュレーションが必要な歯車21Aとなる部分の断面をシミュレーション可能となり、当該加工用工具10で加工される歯形21bと理論値の歯形21bとの形状誤差の検証が可能となる。そして、この処理においては、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)を2次元座標系に変換演算しているので、処理量を低減でき、処理速度を向上できる。
【0063】
また、第3演算部140で決定した2次元座標系(Xw´,Yw´)における歯形21bの形状、加工用工具10の工具刃11のねじれ角度、及び、加工物20と加工用工具10との相対姿勢に基づいて、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における歯車21Aの歯21の形状を演算する第4演算部150、を備える。これにより、立体的な歯21についてのシミュレーション値と理論値との形状誤差の検証が可能となる。
【0064】
また、第3演算部140は、2次元座標系(Xw´,Yw´)の通過点を包含する矩形領域Aを所定のメッシュmの大きさで区切り、2次元座標系(Xw´,Yw´)の通過点を含むメッシュmを選択して通過点領域AAを演算し、通過点領域AAの縁を表すメッシュmを縁メッシュmmとして演算し、縁メッシュmmに基づいて歯21の形状を決定する。これにより、全通過点を処理する必要はなく、処理量を低減でき、処理速度を向上できる。
【0065】
また、第1演算部120は、加工用工具10の工具刃11の刃面11bと側面11aとの境界線歯形21bを規定する複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)間の距離ΔP(k,k+1)が、メッシュmのサイズより小さくなるように補間し、複数の定義点P(k),Pc(k,k+1)で囲まれる領域内で通過点を演算する。これにより、メッシュm内には、定義点P(k),Pc(k,k+1)が必ず存在することになり、歯21の形状の精度を向上できる。
【0066】
また、第3演算部140は、縁メッシュmm内に複数の通過点が存在する場合、通過点を加工された点とし、加工量が最も多くなる通過点を歯形21bの形状を表す点として選択するので、加工残しの無い歯21の形状が得られる。
【0067】
本実施形態の歯車加工における歯車の歯形21bのシミュレーション方法は、上述のシミュレーション装置100に適用できる歯車加工に適用できる。そして、加工物20の形状の情報、加工物20においてシミュレーションが必要な歯車21Aとなる部分の断面Sの情報及び加工用工具10の刃面11bの形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶工程と、記憶工程で記憶される各情報に基づいて、歯車加工における3次元座標系(Xw,Yw,Zw)において、歯車加工を行った場合に複数の定義点P(k)(ただし、k=1〜n)が断面Sを通過するときの3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の歯形21b通過点を演算する第1演算工程と、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における断面を3次元座標系(Xw,Yw,Zw)のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、第1演算工程で演算した3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を2次元座標系(Xw´,Yw´)に変換演算する第2演算工程と、第2演算工程で演算した2次元座標系(Xw´,Yw´)における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、2次元座標系(Xw´,Yw´)における加工物20に形成される歯形21bの形状を決定する第3演算工程と、を備える。これによれば、上述の歯車加工シミュレーション装置100の効果と同様の効果が得られる。
【0068】
本実施形態の歯車加工における加工用工具10の刃面11bのシミュレーション装置100は、上述の歯車加工に適用できる。そして、加工物20の形状の情報、加工用工具10においてシミュレーションが必要な工具刃11の断面の情報及び歯車21Aの歯形21bの形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶部110と、記憶部110に記憶される各情報に基づいて、歯車加工における3次元座標系(Xw,Yw,Zw)において、歯車加工を行った場合に複数の定義点が断面を通過するときの3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を演算する第1演算部120と、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における断面を3次元座標系(Xw,Yw,Zw)のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、第1演算部120で演算した3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を2次元座標系(Xw´,Yw´)に変換演算する第2演算部130と、第2演算部130で演算した2次元座標系(Xw´,Yw´)における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、2次元座標系(Xw´,Yw´)における刃面11bの形状を決定する第3演算部140と、を備える。
【0069】
これによれば、歯車21Aの形状が既知の場合、歯車21Aを加工するための加工用工具10におけるシミュレーションが必要な工具刃11の断面をシミュレーション可能となり、最適な工具刃11を有する加工用工具10の設計が可能となる。そして、この処理においては、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)を2次元座標系(Xw´,Yw´)に変換演算しているので、処理量を低減でき、処理速度を向上できる。
【0070】
また、歯車21Aの歯形21bの形状を示した複数の定義点の情報は、インボリュート曲線を補正したような数式で表せない歯車の歯形の形状、又は、歯車のインボリュート曲線の形状の任意の点の情報とする。特に、インボリュート曲線を補正したような数式で表せない歯車の歯形の形状、又は、歯車のインボリュート曲線の任意の点(等間隔又は離散的な点)の情報とする歯車の歯形の形状であっても、歯車21Aを加工するための加工用工具10におけるシミュレーションが必要な工具刃11の断面をシミュレーション可能となり、最適な工具刃11を有する加工用工具10の設計が可能となる。
【0071】
また、第3演算部140で決定した2次元座標系(Xw´,Yw´)における刃面11bの形状、歯車21Aの歯21のねじれ角度、及び、加工物20と加工用工具10との相対姿勢に基づいて、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における工具刃11の形状を演算する第4演算部150、を備える。これにより、立体的な工具刃11についてのシミュレーション値と理論値との形状誤差の検証が可能となる。
【0072】
また、第3演算部140は、2次元座標系(Xw´,Yw´)の通過点を包含する矩形領域Aを所定のメッシュmの大きさで区切り、2次元座標系(Xw´,Yw´)の通過点を含むメッシュmを選択して通過点領域AAを演算し、通過点領域AAの縁を表すメッシュmを縁メッシュmmとして演算し、縁メッシュmmに基づいて刃面11bの形状を決定する。これにより、全通過点を処理する必要はなく、処理量を低減でき、処理速度を向上できる。
【0073】
また、第1演算部120は、歯車21Aの歯21の歯形21b面と側面との境界線を規定する複数の定義点間の距離が、メッシュmのサイズより小さくなるように補間し複数の定義点で囲まれる領域内で通過点を演算する。これにより、メッシュm内には、定義点が必ず存在することになり、工具刃11の形状の精度を向上できる。
【0074】
また、第3演算部140は、縁メッシュmm内に複数の通過点が存在する場合、通過点を加工された点とし、加工量が最も多くなる通過点を刃面11bの形状を表す点として選択するので、加工残しの無い歯21の加工が可能な加工用工具10の工具刃11の形状が得られる。
【0075】
本実施形態の歯車加工における加工用工具の刃面のシミュレーション方法は、上述のシミュレーション装置100に適用できる歯車加工に適用できる。そして、加工物20の形状の情報、加工用工具10においてシミュレーションが必要な工具刃11の断面の情報及び歯車21Aの歯形21bの形状を示した複数の定義点の情報を記憶する記憶工程と、記憶工程で記憶する各情報に基づいて、歯車加工における3次元座標系(Xw,Yw,Zw)において、歯車加工を行った場合に複数の定義点が断面を通過するときの3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を演算する第1演算工程と、3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における断面を3次元座標系(Xw,Yw,Zw)のうち所定の2軸のなす平面に平行にすることで、第1演算工程で演算した3次元座標系(Xw,Yw,Zw)における複数の通過点を2次元座標系(Xw´,Yw´)に変換演算する第2演算工程と、第2演算工程で演算した2次元座標系(Xw´,Yw´)における複数の通過点の内、少なくとも加工量が最も多くなる通過点を選択することにより、2次元座標系(Xw´,Yw´)における刃面11bの形状を決定する第3演算工程と、を備える。これによれば、上述の歯車加工シミュレーション装置100の効果と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0076】
10:加工用工具、 11:工具刃、 11a:工具刃の側面、 11b:工具刃の刃面、 12:刃みぞ、 20:加工物、 21A:歯車、 21:歯、 21b:歯形、 22:歯みぞ、 100:歯車加工シミュレーション装置、 110:記憶部、 120:第1演算部、 121:定義点補間部、 122:通過点演算部、 130:第2演算部、 140:第3演算部、 141:メッシュ化部、 142:通過点領域演算部、 143:縁メッシュ演算部、 144:形状決定部144、 150:第4演算部、 m:メッシュ、 mm:縁メッシュ、 P(k),Pc(k,k+1):定義点
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
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図7B
図8
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