特許第6746988号(P6746988)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6746988
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】伸縮自在シャフトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/20 20060101AFI20200817BHJP
   B62D 1/20 20060101ALI20200817BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20200817BHJP
   F16D 3/06 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   F16D3/20 J
   B62D1/20
   F16D1/06 210
   F16D3/06 E
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-54578(P2016-54578)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-166648(P2017-166648A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 誠一
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−306152(JP,A)
【文献】 特開昭62−106127(JP,A)
【文献】 特開2012−193860(JP,A)
【文献】 実開昭54−162993(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 1/00−9/10
B62D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一端部の外周面に雄スプライン部が形成された雄軸と、
前記雄スプライン部の外周面を覆う状態で設けられたコーティング層と、
内周面に雌スプライン部が形成された雌軸とを備えており、
前記雄スプライン部と前記雌スプライン部とを、前記コーティング層を介してスプライン係合させる事により、前記雄軸と前記雌軸とがトルク伝達可能、且つ、全長を伸縮可能な状態に組み合わされている伸縮自在シャフトの製造方法であって、
前記雄軸に前記雄スプライン部を成形する第1ステップと、
前記雄スプライン部の外周面にコーティング層を設ける第2ステップと、
前記コーティング層で覆われた前記雄軸の軸方向一端部の外周面、及び、前記雄軸の軸方向一端面に開口したスリットを、前記雄軸を冷却しながら前記雄スプライン部に加工する第3ステップと、
前記スリットの内側に、弾性部材を設ける第4ステップと、を備え、
前記弾性部材は、板ばねである、
伸縮自在シャフトの製造方法。
【請求項2】
前記第3ステップにおいて、前記雄軸の中心軸を含む仮想平面と平行であって互いに離隔して対向する一対の平坦面が切削加工で成形され、前記平坦面には、当該平坦面において軸方向と直交する幅方向に沿って前記切削加工の痕が形成され、
前記平坦面の前記痕には、前記板ばねの一部が係合される、
請求項1に記載の伸縮自在シャフトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明に係る伸縮自在シャフトは、例えば自動車の操舵装置を構成する中間シャフトとして使用される。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置として従来から、図11に記載する様な構造のものが知られている。このステアリング装置は、ステアリングホイール1が、ステアリングシャフト2の後端部に固定されている。又、これと共に、このステアリングシャフト2の前端部が、1対の自在継手3a、3b及び中間シャフト4を介して、ステアリングギヤユニット5を構成する入力軸6の基端部に接続されている。更に、前記ステアリングギヤユニット5に内蔵されるラックアンドピニオン機構により左右1対のタイロッド7、7を押し引きして、左右1対の操舵輪に、前記ステアリングホイール1の操作量に応じた舵角を付与する様に構成されている。
【0003】
この様なステアリング装置に組み込まれる前記中間シャフト4は、例えば、走行時に自動車から入力される振動が、前記ステアリングホイール1に伝わる事を防止する(吸収する)為、或いは、前記中間シャフト4を、全長を縮めた状態で車体に組み込む為に、伸縮式のものが使用されている。
【0004】
図12は、特許文献1に記載された伸縮式の中間シャフト4の構造を示している。この中間シャフト4は、軸方向一端部(前端部であって、図12の左端部。組み付け状態でアウタチューブ10側の端部)の外周面に雄スプライン部8が形成されたインナシャフト9と、内周面にこの雄スプライン部8とスプライン係合可能な雌スプライン部12が形成された円管状のアウタチューブ10とから成る。そして、前記雄スプライン部8と前記雌スプライン部12とをスプライン係合する事で、前記インナシャフト9と前記アウタチューブ10とを、トルク伝達可能、且つ、全長を伸縮自在な状態に組み合わせている。
【0005】
又、図12に示す構造の場合、前記インナシャフト9を、後側(前後方向とは、車体の前後方向を言う。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)に配置すると共に、前記アウタチューブ10を前側に配置している。又、前記インナシャフト9の軸方向他端部には、前記両自在継手3a、3bのうちの後側に配置された自在継手3aを構成する第一のヨーク11が外嵌固定(圧入)されている。一方、前記アウタチューブ10の軸方向一端部には、前記両自在継手3a、3bのうちの前側に配置された自在継手3bを構成する第二のヨーク13が外嵌固定(圧入)されている。
尚、前記インナシャフト9と前記第一のヨーク11との結合、或いは、前記アウタチューブ10と前記第二のヨーク13との結合は、溶接により行う事もできる。又、後述する実施の形態の構造の様に、インナシャフトを前側に、アウタチューブを後側に配置する構造を採用する事もできる。
【0006】
上述の様な構成を有する中間シャフト4の様に、前記インナシャフト9と前記アウタチューブ10とをトルク伝達可能、且つ、軸方向の伸縮(摺動)可能に組み合わせた伸縮軸は、回転方向のがたつきが小さく、且つ、伸縮時の摺動抵抗が小さい事が要求される。この為に、従来から、前記インナシャフト9の雄スプライン部8の外周面に、ポリアミド樹脂等の摩擦係数が低い合成樹脂製のコーティング層を設けると共に、前記雄スプライン部8と前記雌スプライン部12とを締め代を持たせた状態で係合させる事が行われている。但し、この様な構造の場合、前記インナシャフト9のうち、前記コーティング層を設けた部分の径方向に関する剛性が高いと、前記締め代に対する摺動抵抗(摺動荷重)の変動が敏感になってしまい、前記アウタチューブ10に対する前記インナシャフト9の摺動を、安定させる事が難しくなる可能性がある。この様な問題は、前記がたつきを十分に抑える為に前記締め代を大きくするほど顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−21596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、雄軸の雄スプライン部と雌軸の雌スプライン部との係合部の回転方向のがたつきを小さく抑えられる構造を採用した場合にも、前記雄軸と前記雌軸とを安定して摺動させる事ができる伸縮自在シャフトの構造を実現するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の伸縮自在シャフトは、雄軸と、コーティング層と、雌軸とを備えている。
このうちの雄軸は、軸方向一端部の外周面に雄スプライン部が形成されている。
前記コーティング層は、前記雄スプライン部の外周面を覆う状態で設けられている。
前記雌軸は、内周面に雌スプライン部が形成されている。
そして、前記雄スプライン部と前記雌スプライン部とを、前記コーティング層を介してスプライン係合させる事により、前記雄軸と前記雌軸とが、トルク伝達可能、且つ、全長を伸縮可能な状態に組み合わされている。
特に本発明の伸縮自在シャフトに於いては、前記雄軸は、該雄軸の軸方向一端部の外周面、及び、該雄軸の軸方向一端面に開口したスリットを有している。
そして、このスリットの内側に、弾性部材が設けられている。
そして、このスリットは冷却しながら前記コーティング層で覆われた前記雄軸に加工される。
【発明の効果】
【0010】
上述した様な構成を有する本発明の伸縮自在シャフトの場合、雄軸の雄スプライン部の外周面を覆う状態でコーティング層を設けている。又、これと共に、前記雄軸に、この雄軸の軸方向一端部の外周面、及び、この雄軸の軸方向一端面に開口したスリットを形成している。この為、この雄軸の雄スプライン部が形成された部分のうちの少なくとも前記スリットが形成された部分の径方向の剛性を適度に小さくできる。従って、前記雄軸の雄スプライン部と雌軸の雌スプライン部との係合部の回転方向のがたつきを防止する為に、この係合部に締め代を持たせた場合でも、この締め代に対する摺動抵抗(摺動荷重)の変動を鈍感にでき、前記雄軸の前記雌軸に対する摺動を安定させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、両端部に十軸式自在継手を装着した中間シャフトを示す、部分切断側面図。
図2】同じく、スリットの内側に板ばねが設けられた状態のインナシャフトの軸方向中間部から軸方向一端部を示す斜視図。
図3】同じく、インナシャフトの軸方向中間部から軸方向一端部を示す側面図(a)と、(a)のA−A断面図(b)。
図4】同じく、板ばねの1例を示す平面図(a)と、(a)の下側から見た側面図(b)。
図5】同じく、板ばねの別例を示す図4と同様の図。
図6】同じく、板ばねの別例を示す図4と同様の図。
図7】同じく、板ばねの別例を示す図4と同様の図。
図8】同じく、スリットの内側に板ばねが設けられた状態のインナシャフトの軸方向中間部から軸方向一端部を示す側面図(a)と、(a)に示すインナシャフトのうち、雄スプライン部が形成された部分の径方向に関する剛性を軸方向位置との関係で示す線図(b)。
図9】本発明の実施の形態の第2例を示す、スリットの内側に板ばねが設けられた状態のインナシャフトの軸方向中間部から軸方向一端部を示す側面図。
図10】本発明の実施の形態の第3例〜第8例を説明する為の図であって、図3のA−A断面に相当する図。
図11】従来から知られているステアリング装置の1例を示す部分切断側面図。
図12】中間シャフトを取り出して示す部分切断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の1例に就いて、図1〜8を参照しつつ説明する。尚、本例は、本発明を、ステアリング装置を構成する中間シャフトに適用したものである。但し、本発明は、この様な中間シャフト以外にも、各種用途で使用される伸縮自在シャフトの構造に適用する事ができる。又、本例の中間シャフト4aを組み込んだステアリング装置の構造は、図11に示したステアリング装置と同様の構造を有している。但し、本例の中間シャフト4aは、図11に示したステアリング装置の構造に限らず、従来から知られている各種構造のステアリング装置に組み込む事ができる。以下、ステアリング装置の構造を簡単に説明した後、本例の中間シャフト4aの構造に就いて説明する。
【0013】
本例の中間シャフト4aを組み込んだステアリング装置は、ステアリングホイール1(図11参照)が、ステアリングシャフト2の後端部に固定されている。又、これと共に、このステアリングシャフト2の前端部が、1対の自在継手3c、3d及び前記中間シャフト4aを介して、ステアリングギヤユニット5を構成する入力軸6の基端部に接続されている。更に、このステアリングギヤユニット5に内蔵したラックアンドピニオン機構により左右1対のタイロッド7、7を押し引きして、左右1対の操舵輪に、前記ステアリングホイール1の操作量に応じた舵角を付与する様に構成されている。
【0014】
前記中間シャフト4aは、特許請求の範囲に記載した雄軸の1例に相当するインナシャフト9aの軸方向一端部(図1の右端部であって、組み付け状態に於いて、アウタチューブ10a側となる端部)と、同じく雌軸の1例に相当するアウタチューブ10aの軸方向他端部(図1の左端部であって、組み付け状態に於いて、前記インナシャフト9a側となる端部)とをスプライン係合させる事により、トルク伝達可能、且つ、全長を伸縮可能に組み合わせている。尚、本例の場合、前記インナシャフト9aが前側に配置され、前記アウタチューブ10aが後側に配置されている。以下、前記中間シャフト4aの具体的な構造に就いて説明する。
【0015】
前記アウタチューブ10aは、軸方向他方側から順に、小径筒部18と、連続部19と、大径筒部20と、ヨーク部21とを備えている。
このうちの小径筒部18は円筒状であり、前記アウタチューブ10aのうちの、軸方向他端部から軸方向中間部にかけての部分に設けられている。この様な小径筒部18の外周面は、軸方向の全長に亙り外径寸法が変化しない円筒面状である。又、この小径筒部18の内周面には、円周方向に関して交互に形成された軸方向に長い、複数ずつの凹部と凸部とから成る雌スプライン部22が、全長に亙り形成されている。
【0016】
前記連続部19は、外径寸法及び内径寸法が軸方向一方側(図1の右側)に向かうほど大きくなる部分円錐筒状であり、軸方向他端縁が、前記小径筒部18の軸方向一端縁に連続している。
前記大径筒部20は円筒状であり、軸方向他端縁が、前記連続部19の軸方向一端縁に連続している。この様な大径筒部20の内径及び外径は、前記小径筒部18の内径及び外径よりも大きい。
【0017】
前記ヨーク部21は、前記自在継手3cを構成するものであり、前記大径筒部20の軸方向一端縁のうちで、この大径筒部20に関する直径方向反対側となる2箇所位置から軸方向一方側に延出する状態で設けられた1対の腕部23、23から成る。この様な両腕部23、23の軸方向一端寄り部分には、互いの中心軸が同軸となる状態で1対の円孔24、24が形成されている。尚、図1に示す組み立て状態に於いて、これら両円孔24、24の内側には、それぞれ有底円筒状の軸受カップ25、25が内嵌固定されている。これと共に、これら両軸受カップ25、25の内側に、それぞれ複数本のニードル26、26を介して、十字軸27を構成する4本の軸部28、28のうちの1対の軸部28、28の端部が回動自在に支持されている。
【0018】
尚、前記十字軸27を構成する4本の軸部28、28のうち、前記ヨーク部21の両円孔24、24内に支持された軸部28、28以外の1対の軸部28(一方の軸部28は図示省略)の端部は、前記ステアリングシャフト2の前端部に支持固定されたヨーク29を構成する1対の腕部30(片方の腕部30は図示省略)に形成された円孔(図示省略)の内側に、軸受カップ及びニードル(図示省略)を介して回動自在に支持されている。
本例の場合、前記ヨーク部21を、前記アウタチューブ10aに一体に設ける構造を採用しているが、アウタチューブとヨーク部とを別体に設けて溶接或は嵌合等により結合固定する構造を採用する事もできる。
【0019】
前記インナシャフト9aは、軸方向一方側(図1の右側)から順に、スプライン形成部31と、連続部32と、小径軸部33と、ヨーク部34と、スリット35とを備えている。
【0020】
このうちのスプライン形成部31は、前記インナシャフト9aの軸方向中間部から軸方向一端部にかけての部分に設けられている。この様なスプライン形成部31の外周面には、円周方向に関して交互に形成された軸方向に長い、複数ずつの凹部36、36と凸部37、37とから成る雄スプライン部38が、全長に亙り形成されている。
【0021】
前記連続部32は、前記インナシャフト9aのうち、前記スプライン形成部31の軸方向他方側に隣接した部分に形成されている。この様な連続部32の外周面には、円周方向に関して交互に形成された、複数ずつの凹部39、39と、前記インナシャフト9aの中心軸を含む仮想平面に関する断面形状が直角三角形状の凸部40、40とから成る不完全スプライン部41が形成されている。この様な不完全スプライン部41を構成する各凸部40、40の外周面は、軸方向他方に向かうほど外径寸法が小さくなる方向に傾斜している。又、前記不完全スプライン部41の各凸部40、40の外周面の軸方向一端縁は、前記雄スプライン部38を構成する各凸部37、37の外周面の軸方向他端縁に連続している。一方、前記不完全スプライン部41の各凸部40、40の外周面の軸方向他端縁は、前記小径軸部33の外周面の軸方向一端縁に連続している。尚、本例の場合、前記雄スプライン部38の凹部36、36の外接円の直径と、前記不完全スプライン部41の凹部39、39の外接円の直径とが等しい。
【0022】
前記小径軸部33は、前記インナシャフト9aのうち、前記連続部32の軸方向他方側に隣接した位置から、軸方向他端寄り部分にかけて設けられている。この様な小径軸部33は、大径部42と、小径部43と、段部44と、基準孔45と、外向鍔部(かしめ部)46とを有している。
【0023】
このうちの大径部42は、小径軸部33の軸方向一端部から軸方向他端寄り部分にかけて形成されている。この様な大径部42の外周面は、軸方向に関して外径が変化しない円筒面状に形成されている。
【0024】
前記小径部43は、小径軸部33の他端寄り部分に形成されている。この様な小径部43の外周面には、円周方向に凹部と凸部とを交互に配置して成る凹凸部である雄セレーション47が形成されている。この雄セレーション47を構成する凸部の外接円の直径は、前記大径部42の外径よりも小さい。
【0025】
前記段部44は、前記大径部42の外周面の軸方向他端縁と、前記小径部43の外周面の軸方向一端縁とを連続した状態で形成されている。この様な段部44は、前記小径軸部33の中心軸に直交する仮想平面上に存在している。
【0026】
前記基準孔45は、軸方向他端が前記小径軸部33の軸方向他端面に開口した状態で形成されている。又、前記基準孔45の奥端縁の軸方向に関する位置は、前記小径部43の軸方向中間部に位置している。尚、前記基準孔45は、前記インナシャフト9aの素材である杆状部材の軸方向他端面に、孔あけ加工を施す事により形成する。
【0027】
前記外向鍔部46は、前記小径軸部33の軸方向他端部に、全周に亙り前記小径部43の外周面よりも径方向外方に突出した状態で形成されている。この様な外向鍔部46は、前記素材に対して前記基準孔45を形成して得た中間素材の軸方向他端部を、例えば、ローリングかしめにより全周に亙りかしめ拡げる事により形成する。
【0028】
前記ヨーク部34は、前記小径軸部33の軸方向他端部に結合固定されている。尚、本例の場合、前記ヨーク部34と、十字軸48と、前記入力軸6の基端部に支持固定されたヨーク49とにより、前記両自在継手3c、3dのうちの、前側(図1の左側)に配置された自在継手3dを構成している。
【0029】
この様なヨーク部34は、略円筒状の基部50と、この基部50の外周面のうち、この基部50の中心軸に関して反対となる2箇所位置から軸方向他方側に延出した状態で設けられた1対の腕部51、51とから成る。
このうちの基部50は、中央部に中心孔52が形成されている。この中心孔52の内周面には、円周方向に凹部と凸部とを交互に配置して成る凹凸部である雌セレーション53が形成されている。この様な基部50は、前記中心孔52の内側に前記小径部43を挿通すると共に、前記雌セレーション53と前記雄セレーション47とをセレーション係合させた状態で、前記段部44と前記外向鍔部46との間で挟持されている。
【0030】
又、前記両腕部51、51のうち、軸方向に関して前記基部50と反対側端部寄り部分には、互いの中心軸が同軸となる状態で1対の円孔54、54が形成されている。
又、図1に示す組み立て状態に於いて、前記両腕部51、51の両円孔54、54の内側には、それぞれ有底円筒状の軸受カップ55、55が内嵌固定されている。これと共に、これら両軸受カップ55、55の内側に、それぞれ複数本のニードル56、56を介して、前記十字軸48を構成する4本の軸部57、57のうちの1対の軸部57、57の端部が回動自在に支持されている。
【0031】
尚、前記十字軸48を構成する4本の軸部57、57のうち、前記ヨーク部34の両円孔54、54内に支持された軸部57、57以外の1対の軸部57(一方の軸部57は図示省略)の端部は、前記ヨーク49を構成する1対の腕部58(一方の腕部58は図示省略)に形成された円孔(図示省略)の内側に、軸受カップ(図示省略)及びニードル(図示省略)を介して回動自在に支持されている。
【0032】
前記スリット35は、前記インナシャフト9aに切削加工を施す事により形成したもので、前記インナシャフト9aの中心軸を含む仮想平面上に形成されると共に、このインナシャフト9aの軸方向一端縁から、前記スプライン形成部31の軸方向中間部(このスプライン形成部31の軸方向に関する中央位置よりも僅かに軸方向他方側に位置する部分)にかけて形成されている。この様なスリット35は、軸方向一端が、前記インナシャフト9aの軸方向一端面に開口すると共に、このスリット35の幅方向両端(図1の表裏方向両端)が、前記スプライン形成部31(前記雄スプライン部38)の外周面のうち、軸方向一端縁から軸方向中間部にかけての部分の径方向に関して反対となる2箇所位置に開口している。前記スリット35の幅方向両側の開口部と、前記雄スプライン部38との関係に就いて、本例の場合、前記スリット35の幅方向両側の開口部は、前記雄スプライン38のうち、円周方向に隣り合う凹部36と凸部37との連続部(図3にαで示す位置)からこの連続部の円周方向一方側{図3(b)の反時計方向}に隣接する位置に存在する1個の凸部37を介して、この凸部37の円周方向一方側に隣接する凹部36の円周方向一端部(図3にβで示す位置)にかけての部分に開口している。別の言い方をすれば、前記スリット35の幅方向両側の開口部は、互いに径方向に関して反対となる位置で、且つ、1個の凹部36と1個の凸部37とを含む位置に開口している。
尚、本例の構造を実施する場合には、前記スリット35の幅方向両端は、前記スプライン形成部31(前記雄スプライン部38)の外周面のうち、径方向に関して反対となる任意の2箇所位置に開口させる事ができる。但し、例えば、前記スリット35の幅方向両端を、前記雄スプライン部38を構成する凹部36に開口させる構成を採用する事ができる。又、前記スリット35の幅方向両端を、前記雄スプライン部38を構成する凸部37に開口させる構成を採用する事もできる。更に、前記スリット35の幅方向両端のうちの一方の端部を、前記凹部36に開口させると共に、他方の端部を、前記凸部37に開口させる構成を採用する事もできる。以上の様な各種構成を採用する場合に、好ましくは、前記スリット35の幅方向両端を、前記凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口しない状態で形成する様にする。
【0033】
又、前記インナシャフト9aのうち、前記スリット35を挟んで対向する状態で設けられた1対の平坦面70a、70bは、前記インナシャフト9aの中心軸を含む仮想平面と平行であり、互いに所定距離(前記スリット35の厚さ分)だけ離隔している。即ち、本例の場合、前記インナシャフト9aの中心軸に直交する仮想平面に関する、前記スリット35の断面形状を、直線状としている。
【0034】
又、本例の場合、前記スリット35の軸方向他端縁(奥端縁)を、前記連続部32の軸方向一端縁よりも軸方向一方側に位置させている。具体的には、前記スリット35の軸方向他端縁を、前記雄スプライン部38の軸方向に関する長さをL38とした場合に、前記雄スプライン部38の軸方向一端縁から、(0.5〜0.9)・L38となる位置に配置する。尚、本例の場合、このインナシャフト9aのうち、前記スリット35及び前記基準孔45以外の部分は、中実状に形成されている。
【0035】
又、前記インナシャフト9aを構成する雄スプライン部38の外周面には、滑りやすい(摩擦係数の低い)合成樹脂製のコーティング層59が設けられている。具体的には、本例の場合、このコーティング層59は、前記インナシャフト9aの外周面のうち、前記スプライン形成部31の軸方向一端縁から前記小径軸部33の軸方向一端寄り部分(前記連続部32の軸方向他端縁よりも軸方向他方側に位置する部分であって、図1に直線Xで示す位置)にかけての部分に設けられている。
【0036】
又、本例の場合、前記スリット35の内側に特許請求の範囲に記載した弾性部材に相当する板ばね60が設けられている。この板ばね60の構造に就いて、図4を参照しつつ説明する。
この板ばね60は、金属製の板材から造られており、バネ本体61と、第一係合部62と、第二係合部63とから成る。
このうちのバネ本体61は、図4(a)に示す平面視が中央に通孔が設けられた矩形枠状であり、且つ、図4(b)に示す側面視が波形状の板状部材である。具体的には、前記バネ本体61は、長手方向(図4の左右方向)中間部に、高さ方向一側面(図4の上側面)が凸となる1対の第一弾性部64、64が形成されている。又、前記バネ本体61の長手方向(図4の左右方向)両端部には、それぞれ前記バネ本体61の高さ方向他側面(図4の下側面)が凸となる1対の第二弾性部65、65が形成されている。
前記第一係合部62は、長手方向一端縁から、高さ方向一方へ略直角に折れ曲がった状態で形成されている。
前記第二係合部63は、前記バネ本体61の内周側面のうち、長手方向他方側の内周側面から、長手方向一方向に延出すると共に、高さ方向他方側に折れ曲がった状態で形成されている。具体的には、前記第二係合部63は、長手方向一方側に向かうほど、このバネ本体61から高さ方向他方側に離れる状態で形成されている。
【0037】
以上の様な構成を有する板ばね60は、前記バネ本体61を、高さ方向に弾性変形させた状態(このバネ本体61の厚さ方向に関する弾性力を保持した状態)で、前記スリット35の内側に配置されている。この状態で、前記第一弾性部64の高さ方向一側面が、前記両平坦面70a、70bのうちの平坦面70aを弾性的に押圧している。一方、前記両第二弾性部65、65の高さ方向他側面がそれぞれ、前記両平坦面70a、70bのうちの平坦面70bを弾性的に押圧している。即ち、前記板ばね60は、前記両平坦面70a、70bを弾性的に押圧する部分を有している。
又、上述の状態で、前記第一係合部62の、長手方向他側面{図4(b)の左側面}は、前記インナシャフト9aの軸方向一端面と当接している。又、上述の状態で、前記第二係合部63の先端縁は、前記平坦面70bと係合している。この様にして、前記板ばね60の長手方向(前記インナシャフト9aの軸方向)の位置決めを図っている。即ち、この板ばね60は、前記インナシャフト9aと係合する事により、自身の長手方向(前記インナシャフト9aの軸方向)の位置決めを図る(軸方向両方への変位を規制する)為の係合部を有している。
【0038】
尚、前記両平坦面70a、70bには、このスリット35を形成する際の切削加工の痕が形成されている。この様な切削加工の痕は、前記スリット35の幅方向(図1の表裏方向)に長い状態で形成されており、前記第二係合部63の先端縁と前記切削加工の痕とが、前記インナシャフト9aの軸方向に係合する。この様にして、前記板ばね60の、前記インナシャフト9aの軸方向一方への位置決めを図っている。
【0039】
尚、弾性部材として板ばねを採用する場合には、上述の板ばね60以外にも、例えば、図5に示す様な板ばね66、図6に示す板ばね(皿ばね)67、或いは図7に示す板ばね(波座金)68を採用する事もできる。この様な各種板ばね66、67、68も、前記1対の平坦面70a、70bを弾性的に押圧する部分を有している。又、好ましくは、前記各板ばね66、67、68に、前記インナシャフト9aと軸方向に係合する事により、これら各板ばね66、67、68の軸方向の位置決めを図る(軸方向の変位を規制する)第一係合部及び第二係合部を設ける。又、前記板ばね60、66、67、68は金属製のものに限定されるものではない。又、前記スリット35の内側に配置する弾性部材は、板ばねに限定されるものではない。例えば、板ばねに代えて、ゴム等のエラストマー、合成樹脂等の弾性材により造られた弾性部材を採用する事もできる。この場合に、弾性部材の形状として、各種構造のものを採用する事ができる。
【0040】
以上の様な構成を有するインナシャフト9aは、前記雄スプライン部38を全長に亙り、前記アウタチューブ10aの雌スプライン部22に、前記コーティング層59を介してスプライン係合させる事により、前記アウタチューブ10aに組み付けられている。この様に組み付けられた状態で、前記雄スプライン部38と前記雌スプライン部22との係合部には、所定量の締め代が設けられている。この様にして、前記インナシャフト9aと前記アウタチューブ10aとは、トルクの伝達を可能、且つ、全長を伸縮可能な状態に組み合わされている。
【0041】
以上の様な構成を有する本例の中間シャフト4aによれば、前記インナシャフト9aの雄スプライン部38と、前記アウタチューブ10aの雌スプライン部22との係合部の回転方向のがたつきを小さく抑えられる構造を採用した場合にも、前記インナシャフト9aと前記アウタチューブ10aとの摺動抵抗を小さく抑える事ができる。
即ち、本例の場合、前記インナシャフト9aに、前記スリット35を形成している。この為、前記雄スプライン部38が形成された部分のうちの前記スリット35が形成された部分の径方向の剛性を適度に小さくできる。従って、前記雄スプライン部38と前記雌スプライン部22との係合部の回転方向のがたつきを防止する為に、この係合部に締め代を持たせた場合でも、この締め代に対する摺動抵抗(摺動荷重)の変動を鈍感にでき、前記インナシャフト9aの、前記アウタチューブ10aに対する摺動を安定させる事ができる。
【0042】
又、上述の様に前記雄スプライン部38の径方向の剛性を適度に小さくする事ができる為、この雄スプライン部38と前記雌スプライン部22との係合部の回転方向のがたつきを防止する為に、この係合部に締め代を持たせた構造を採用した場合でも、この締め代に対する摺動抵抗(摺動荷重)を小さくする事ができる。又、この摺動抵抗(摺動荷重)の変動が鈍感になり、前記インナシャフト9aの、前記アウタチューブ10aに対する摺動を安定させる事ができる。更に、前記インナシャフト9aの誤差を許容できる範囲(寸法公差)を大きく確保した場合でも、この寸法公差の影響で、前記摺動抵抗が徒に大きくなる事を防止できる。従って、前記インナシャフト9a及び前記アウタチューブ10aの、製造コストの低減を図れる。
【0043】
又、本例の場合、前記スリット35の内側に、前記板ばね60を設けている。この為、前記雄スプライン部38の軸方向一端部の径方向の剛性が低くなり過ぎないようにできる。即ち、前記スリット35の内側に前記板ばね60を設けていない構造の場合、前記雄スプライン部38の径方向の剛性は、図8(b)に破線で示す様に変化する。即ち、前記スリット35の内側に前記板ばね60を設けていない構造の場合、雄スプライン部のうち、スリットが形成された部分の径方向の剛性は、軸方向一方側に向かうほど小さくなる。尚、図8(b)は、横軸を、この雄スプライン部38の軸方向他端縁からの距離とし、縦軸をこの雄スプライン部38の径方向の剛性とした線図である。
【0044】
一方、前記スリット35の内側に前記板ばね60を設けた構造の場合、前記雄スプライン部38の径方向の剛性は、図8(b)に実線で示す様に変化する。即ち、前記スリット35の内側に前記板ばね60を設けた構造の場合、前記雄スプライン部38のうち、このスリット35が形成された部分の径方向の剛性は、このスリット35の軸方向他端縁から前記板ばね60の軸方向(長手方向)他端縁にかけての部分で、軸方向一方側に向かうほど小さくなっているが、前記板ばね60が配置された部分で、ほぼ一定となっている。この様に、本例の場合、前記雄スプライン部38の軸方向一端部の径方向の剛性が低くなり過ぎない様にできる。具体的には、前記スリット35の軸方向寸法を大きくた場合に、前記雄スプライン部38の軸方向一端部の径方向の剛性が低くなり過ぎてしまう可能性がある。この様な場合でも、前記スリット35の内側に前記板ばね60を設ければ、前記雄スプライン部38の軸方向一端部の径方向の剛性が低くなり過ぎる事を防止できる。
又、本例の場合、前記板ばね60により、前記雄スプライン部38のうちの前記スリット35により2分割された部分を、これら両部分が互いに離れる方向に弾性的に押圧している。この為、トルク伝達時の、前記雄スプライン部38と前記雌スプライン部22との間のガタを防止できる。
【0045】
又、本例の場合、前記スリット35の軸方向他端縁を、前記雄スプライン部38の軸方向他端縁よりも軸方向一方側に配置している。この為、前記インナシャフト9aのうちの前記連続部32と前記小径軸部33との境界部分の様に、応力が集中し易い部分の剛性を確保する事ができる。この結果、前記インナシャフト9aの耐久性の向上を図れる。
【0046】
又、本例の場合、前記雄スプライン部38は全長に亙り、前記コーティング層59で覆われているが、コーティング層の製造方法に就いて簡単に説明する。
コーティング層の設けられていないインナシャフト9aの素材のうちの、軸方向一端部から軸方向中間部(前記連続部32に相当する部分よりも軸方向他端側に位置する部分)に、例えば、浸漬(ディッピング)、流動浸漬法、静電塗装法等により粗コーティング層を形成する。そしてこの粗コーティング層に、シェービング加工を施す事により前記コーティング層59を形成する。
この様なシェービング加工は、例えば、前記コーティング層59のうちの前記雄スプライン部38を覆う部分の外周面に沿う内周面形状を有する筒状のシェービング用金型(シェービングカッター)の内側に、前記インナシャフト9aのうちの前記粗コーティング層が形成された部分を挿通する事により、該粗コーティング層のうちの前記雄スプライン部38を覆う部分の径方向外端寄り部分を削り取る。
【0047】
又、本例の場合の前記スリット35の製造方法に就いて簡単に説明する。
コーティング層が設けられシェービング加工が施された雄スプライン部に前記スリット35の加工を行う。スリットの加工の前に雄スプラインのシェービング加工を行うことで、シェービング加工時の荷重による雄スプライン部の内径側への撓みが抑えられ、加工後の雄スプラインの形状精度が高くなる。
スリットの加工は、冷却水をかけながら砥石を用いて切断する。切断加工の際には熱が発生するが、冷却しながら加工することで、この熱による雄スプライン部のコーティング層の変形を防止することができる。又、冷却しながら加工することで加工速度を上げることができる。
上述の方法で加工された雄スプラインは形状精度が高くなる。雄スプラインの形状精度が低いと、前記雄スプライン部38と前記雌スプライン部22との係合部に所望の摺動抵抗(摺動荷重)を得るために、前記スリット35の内側に前記板ばね60のばね定数が異なるものを製品毎に選別して組み込まなければならず、ばね定数が異なるものを組み込む場合では前記雄スプライン部38の径方向の剛性が変化してしまい、均一の製品を得ることが困難となる。しかし雄スプラインの形状精度が高くなると、前記板ばね60のばね定数が一定のものを製品毎に組み込むことで所望の摺動抵抗(摺動荷重)を得ることができ、製品毎に前記雄スプライン部38の径方向の剛性が異なることが無く均一の製品を得ることができる。
【0048】
前記スリット35の製造方法について、好適な加工順序や加工方法について前述した。前述以外の加工順序として、粗コーティング層が形成された雄スプライン部に前記スリットの加工を行い、その後前記粗コーティング層にシェービング加工を施すこともできる。又、前述以外のスリットの加工方法として、冷却水をかけながら切削工具を用いて切断することもできる。
【0049】
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図9を参照しつつ説明する。本例の場合、中間シャフトを構成するインナシャフト9bに形成したスリット35aの奥端部に、拡張部に相当する拡張凹部69が形成されている。具体的には、この拡張凹部69は、このスリット35aの厚さ方向に関する寸法L69が、このスリット35aの厚さ寸法L35aよりも大きい(L69>L35a)。又、前記拡張凹部69は、このスリット35aの奥端部の幅方向(図9の表裏方向)の全長に亘り形成されている。この様にして、前記インナシャフト9bのうちの前記拡張凹部69が形成された部分の剛性を低くしている。
【0050】
又、本例の場合、板ばね60aの第二係合部63aを、前記拡張凹部69に係合させている。この為に、本例の場合、前記第二係合部63aを、バネ本体61の長手方向他方側の外周側面から、長手方向他方側に延出した状態で形成している。この他の前記板ばね60aの構造は、前述した実施の形態の第1例の板ばね60と同様である。
【0051】
この様な本例の構造の場合、前記スリット35aの奥端部に前記拡張凹部69を形成している。この為、前記インナシャフト9b(スプライン形成部31)のうちの前記スリット35aが形成された部分の径方向の剛性を、前記拡張凹部69が形成されていない場合と比べて小さくできる。この為、前記スリット35aの軸方向に関する長さを短くした場合でも、前記インナシャフト9b(スプライン形成部31)のうちの前記スリット35aが形成された部分が、前記拡張凹部69が形成された部分を起点として弾性変形し易くなる。この結果、前記インナシャフト9b(スプライン形成部31)のうちの前記スリット35aが形成された部分の径方向の剛性を、適度に低くする事ができる。
更に、前記拡張凹部69と前記板ばね60aの第二係合部63aとを係合させている為、この板ばね60aの軸方向一方への変位を、より強力に規制できる。この他の部分の構造、及び、作用・効果は前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0052】
[実施の形態の第3例〜第8例]
本発明の実施の形態の第3例〜第8例に就いて、図10を参照しつつ説明する。
先ず、図10(a)は、本発明の実施の形態の第3例を示す図である。本例の場合、スリット35bの、インナシャフト9cの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状を三俣状としている。即ち、前記スリット35bにより、前記インナシャフト9cの軸方向一端部から軸方向中間部にかけての部分を、円周方向に3分割している。又、本例の場合、前記スリット35bの径方向外端部を、それぞれ前記インナシャフト9cに形成された雄スプライン部38を構成する凹部36、36にのみ開口させている。この様な本例の場合、前記スリット35bの幅方向両端部を、凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口させていない。その他の部分の構造、及び、作用・効果は前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0053】
次に、図10(b)は、本発明の実施の形態の第4例を示す図である。本例の場合、スリット35cの、インナシャフト9dの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状を十字状としている。即ち、前記スリット35cにより、前記インナシャフト9dの軸方向一端部から軸方向中間部にかけての部分を、円周方向に4分割している。又、本例の場合、前記スリット35cの径方向外端部を、それぞれ前記インナシャフト9dに形成された雄スプライン部38を構成する凹部36、36にのみ開口させている。又、この様な本例の場合も、前記スリット35cの幅方向両端部を、凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口させていない。その他の部分の構造、及び、作用・効果は前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0054】
次に、図10(c)は、本発明の実施の形態の第5例を示す図である。本例の場合、スリット35dの、インナシャフト9eの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状を直線状としている。この様な前記スリット35dは、前記インナシャフト9eの中心軸を含む仮想平面上に形成されている。但し、本例の場合、前記スリット35dの幅方向一端のみを前記インナシャフト9dに形成された雄スプライン部38を構成する凹部36にのみ開口させている。即ち、前記スリット35dの幅方向他端は、前記雄スプライン部38の外周面に開口していない。この様な本例の場合も、前記スリット35dの幅方向一端部を、凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口させていない。その他の部分の構造、及び、作用・効果は前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0055】
次に、図10(d)は、本発明の実施の形態の第6例を示す図である。本例の場合、スリット35eの、インナシャフト9fの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状を直線状としている。但し、本例の場合、前記スリット35eは、前記インナシャフト9fの中心軸を含む仮想平面に対して所定量だけオフセットした状態で形成されている。又、本例の場合、前記スリット35eの幅方向両端部を、それぞれ前記インナシャフト9dに形成された雄スプライン部38を構成する凹部36、36にのみ開口させている。この様な本例の場合、前記スリット35eの幅方向両端部を、凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口させていない。その他の部分の構造、及び、作用・効果は前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0056】
次に、図10(e)は、本発明の実施の形態の第7例を示す図である。本例の場合、雄スプライン部38aの断面形状を略十字状に形成している。そして、インナシャフト9gの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状が直線状であるスリット35fの幅方向両端部を、この雄スプライン部38aを構成する4個の凸部37aのうちの1個の凸部37aの外周面と、この1個の凸部37aと径方向に関して反対となる位置に存在する凸部37aの外周面とに開口させている。尚、本例の場合も、前記スリット35fの軸方向一端は、前記インナシャフト9gの軸方向一端面に開口している。この様な本例の場合、前記各凸部37aの外周面(先端面)の円周方向に関する寸法を大きく確保する事ができる。この為、前記スリット35fの厚さ寸法を大きくする事ができる。この様にスリット35fの厚さ寸法を大きくした場合、前記雄スプライン部38aが形成された部分のうちの前記スリット35fが形成された部分の径方向の剛性を小さくし易くなる。この様に剛性を大きく低下させた状態で、前記スリット35fの内側に配置する弾性部材の材質、形状等を適宜設定すれば、前記雄スプライン部38aのうちの前記スリット35fが形成された部分の径方向に関する剛性の細かい設定が可能となる。
【0057】
次に、図10(f)は、本発明の実施の形態の第8例を示す図である。本例の場合、スリット35gの、インナシャフト9hの中心軸に直交する仮想平面に関する断面形状を直線状としている。又、本例の場合、前記スリット35gの幅方向両端部を、雄スプライン部38を構成する凸部37の円周方向両端縁に開口させている。別の言い方をすれば、本例の場合、前記スリット35gの幅方向両端部を、前記凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口させていない。尚、この様な本例の構造を実施する場合には、前記スリット35gの幅方向両端部を、1個の凸部37と、この凸部37の円周方向両側に存在する1対の凹部36とを含み、且つ、前記スリット35gの幅方向両端部が、前記凸部37の円周方向側面(トルクを伝達する面)に開口しない位置に開口させる事もできる{図10(f)に二点鎖線で示す形状}。この様な本例の構造によれば、前記スリット35gの厚さ寸法を大きく確保できると共に、トルク伝達を安定して行う事ができる。又、前記スリット35gの厚さ寸法を大きく確保できる為、前述した実施の形態の第7例と同様に、前記スリット35gの内側に配置する弾性部材の材質、形状等を適宜設定すれば、前記インナシャフト9hを構成する雄スプライン部38のうち、前記スリット35gが形成された部分の径方向に関する剛性の細かい設定が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
前述した実施の形態の1例では、本発明を、ステアリング装置を構成する中間シャフトのうちインナシャフトに適用した例に就いて説明した。但し、本発明は、この様なインナシャフト以外にも、各種用途で使用される伸縮自在シャフトの構造に適用する事ができる。
又、本発明を実施する場合に、雄軸に形成するスリットの形状は、前述した実施の形態の1例の構造に限定されない。前記雄軸の軸方向一端部を、円周方向に3分割以上する様なスリットの構造とする事もできる。
本発明を実施する場合に、弾性部材の材質は、金属に限らず、ゴム等のエラストマー、合成樹脂等を採用できる。又、弾性部材は、前述した実施の形態の各例の様に、板ばね状に加工されたものだけでなく、例えば、前記スリットの形状に見合う形状(スリット内に配置された状態でこのスリットを満たす形状)を有する様な弾性部材を採用する事もできる。
又、本発明を実施する場合に、拡張部は、前述した実施の形態の第2例の拡張凹部69の様な凹部に限定されるものではない。例えば、スリットの厚さが、雄軸の軸方向一端から軸方向他端に向かうに従って、段階的に、或いは、連続的に(傾斜して)拡張する様な構造も含む。
【符号の説明】
【0059】
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3a、3b、3c、3d 自在継手
4、4a 中間シャフト
5 ステアリングギヤユニット
6 入力軸
7 タイロッド
8 雄スプライン部
9、9a、9b、9c、9d、9e、9f、9g、9h インナシャフト
10、10a アウタチューブ
11 第一のヨーク
12 雌スプライン部
13 第二のヨーク
14 十字軸
15 ヨーク
16 十字軸
17 ヨーク
18 小径筒部
19 連続部
20 大径筒部
21 ヨーク部
22 雌スプライン部
23 腕部
24 円孔
25 軸受カップ
26 ニードル
27 十字軸
28 軸部
29 ヨーク
30 腕部
31 スプライン形成部
32 連続部
33 小径軸部
34 ヨーク部
35、35a、35b、35c、35d、35e、35f、35g スリット
36 凹部
37、37a 凸部
38、38a 雄スプライン部
39 凹部
40 凸部
41 不完全スプライン部
42 大径部
43 小径部
44 段部
45 基準孔
46 外向鍔部
47 雄セレーション
48 十字軸
49 ヨーク
50 基部
51 腕部
52 中心孔
53 雌セレーション
54 円孔
55 軸受カップ
56 ニードル
57 軸部
58 腕部
59 コーティング層
60、60a板ばね
61 バネ本体
62 第一係合部
63、63a 第二係合部
64 第一弾性部
65 第二弾性部
66 板ばね
67 板ばね
68 板ばね
69 凹部
70a、70b 平坦面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12