(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対のビード部間に装架されたカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された少なくとも1層のベルト層とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層よりも内側であって前記ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%以上130%以下となる幅W1の領域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第1のインナーライナー層が配置され、前記カーカス層よりも内側であって前記第1のインナーライナー層の各端部からビード部側に向かって延在する領域に、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第2のインナーライナー層が配置されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
前記第2のインナーライナー層が前記第1のインナーライナー層の各端部から前記ビード部のビードフィラー頂点を基準としてタイヤ径方向に±20mm以内の位置までの領域に配置され、前記カーカス層よりも内側であって前記第2のインナーライナー層のタイヤ径方向内側の端部からビード部側に向かって延在する領域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第3の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第3のインナーライナー層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
前記第1のインナーライナー層と前記第2のインナーライナー層とが互いにスプライスされ、前記第2のインナーライナー層と前記第3のインナーライナー層とが互いにスプライスされていることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量が20モル%〜50モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体及びそれらの変性品から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、ナイロン6/66/610、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン9T及び芳香族ナイロンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記エラストマー成分は、ハロゲン化イソオレフィン−パラアルキルスチレン共重合体ゴム、酸無水物変性エチレン−αオレフィン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、酸無水物変性スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、酸無水物変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新品時及び長距離走行後の空気漏れ防止性能をバランス良く改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部間に装架されたカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置された少なくとも1層のベルト層とを備えた空気入りタイヤにおいて、前記カーカス層よりも内側であって前記ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%以上130%以下となる幅W1の領域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第1のインナーライナー層が配置され、前記カーカス層よりも内側であって前記第1のインナーライナー層の各端部からビード部側に向かって延在する領域に、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第2のインナーライナー層が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明者は、熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナー層について鋭意研究した結果、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)系の熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナー層は初期バリア性が高いものの、疲労によりバリア性が悪化し易いため、長距離走行後の空気漏れ防止性能が低くなる傾向があり、その一方で、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー組成物からなるインナーライナー層は初期バリア性が劣るものの、疲労によるバリア性の悪化が殆ど見られないことを知見し、そのような知見に鑑みて本願発明に至ったのである。
【0009】
つまり、本発明では、ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%以上130%以下となる幅W1の領域、即ち、走行時の変形が少ないベルト層の下方域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第1のインナーライナー層を配置する一方で、第1のインナーライナー層の各端部からビード部側に向かって延在する領域、即ち、走行時の変形が大きいトレッド部のショルダーからサイドウォール部を含む領域に、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第2のインナーライナー層を配置することにより、新品時においてより優れた空気漏れ防止性能を確保する一方で、疲労による空気漏れ防止性能の低下を最小限に抑えることができるので、新品時及び長距離走行後の空気漏れ防止性能をバランス良く改善することが可能になる。
【0010】
本発明において、第2のインナーライナー層が第1のインナーライナー層の各端部からビード部のビードフィラー頂点を基準としてタイヤ径方向に±20mm以内の位置までの領域に配置され、カーカス層よりも内側であって第2のインナーライナー層のタイヤ径方向内側の端部からビード部側に向かって延在する領域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第3の熱可塑性エラストマー組成物で構成された第3のインナーライナー層が配置されている構造を採用しても良い。ビード部の周辺領域も走行時の変形が少ないので、このような領域に第3の熱可塑性エラストマー組成物からなる第3のインナーライナー層を配置することは有効である。なお、第3の熱可塑性エラストマー組成物は第1の熱可塑性エラストマー組成物と同一物であっても良い。
【0011】
第1のインナーライナー層と第2のインナーライナー層とは互いにスプライスされていることが好ましく、更には、第2のインナーライナー層と第3のインナーライナー層とは互いにスプライスされていることが好ましい。このように第1及び第2のインナーライナー層を切れ目なく配置し、或いは、第1乃至第3のインナーライナー層を切れ目なく配置することにより、良好な空気漏れ防止性能を確保することができる。
【0012】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン含有量が20モル%〜50モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体及びそれらの変性品から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。このようなエチレン−ビニルアルコール共重合体を選択することにより、良好なインナーライナー層を形成することができる。
【0013】
ポリアミドは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、ナイロン6/66/610、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン9T及び芳香族ナイロンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。このようなポリアミドを選択することにより、良好なインナーライナー層を形成することができる。
【0014】
エラストマー成分は、ハロゲン化イソオレフィン−パラアルキルスチレン共重合体ゴム、酸無水物変性エチレン−αオレフィン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、酸無水物変性スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、酸無水物変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなエラストマー成分を選択することにより、良好なインナーライナー層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
【0017】
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。カーカス層4の補強コードとしては、ポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用されるが、スチールコードを使用しても良い。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
【0018】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜するように引き揃えられた複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。
【0019】
ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。このベルトカバー層8は少なくとも1本の補強コードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルトカバー層8は図示のようにベルト層7の幅方向の全域を覆うように配置しても良く、或いは、ベルト層7の幅方向外側のエッジ部のみを覆うように配置しても良い。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0020】
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4よりも内側であってタイヤ空洞部に面する部位には、熱可塑性エラストマー組成物からなる第1のインナーライナー層11及び第2のインナーライナー層12が配設されている。
【0021】
第1のインナーライナー層11は、ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%以上130%以下となる幅W1の領域に配置されている。ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法WBはベルト層7を平面上に展ばした状態で測定される幅を意味し、第1のインナーライナー層11の幅W1はインナーライナー層11を平面上に展ばした状態で測定される幅を意味する。また、第1のインナーライナー層11の幅方向中心位置はタイヤの幅方向中心位置と一致している。このように配置された第1のインナーライナー層11は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1の熱可塑性エラストマー組成物で構成されている。第1のインナーライナー層11は初期バリア性が比較的高いという特性を有している。
【0022】
第2のインナーライナー層12は、第1のインナーライナー層11の各端部E11からビード部3側に向かって延在する領域に配置され、そのタイヤ径方向内側の端部E12がビードトゥの位置に配置されている。このように配置された第2のインナーライナー層12は、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物で構成されている。第2のインナーライナー層12は疲労によるバリア性の悪化が比較的少ないという特性を有している。
【0023】
上述した空気入りタイヤでは、走行時の変形が少ないベルト層7の下方域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1の熱可塑性エラストマー組成物からなる第1のインナーライナー層11を配置する一方で、走行時の変形が大きいトレッド部1のショルダーからサイドウォール部2を含む領域に、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物からなる第2のインナーライナー層12を配置することにより、新品時及び長距離走行後の空気漏れ防止性能をバランス良く改善することができる。
【0024】
ここで、第1のインナーライナー層11の幅W1がベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%よりも小さいと新品時の空気漏れ防止性能が十分に向上できず、逆に130%よりも大きいと長距離走行後の空気漏れ防止性能が悪化することになる。
【0025】
上記空気入りタイヤにおいて、第1のインナーライナー層11と第2のインナーライナー層12とは互いにスプライスされている。インナーライナー層11,12を切れ目なく配置することにより、良好な空気漏れ防止性能を確保することができる。インナーライナー層11,12を相互にスプライスするにあたって、両者の端部同士を互いに重ね合せたラップスプライス構造や、両者の端部同士を互いに突き合わせたバットスプライス構造を採用することができる。ラップスプライス構造では、両者の端部同士を互いに重ね合せて熱融着させても良い。
【0026】
図2は本発明の他の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図2において、
図1と同一物には同一符号を付してその部分の詳細な説明は省略する。
図2に示す空気入りタイヤにおいて、カーカス層4よりも内側であってタイヤ空洞部に面する部位には、熱可塑性エラストマー組成物からなる第1のインナーライナー層11、第2のインナーライナー層12及び第3のインナーライナー層13が配設されている。
【0027】
第1のインナーライナー層11は、ベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%以上130%以下となる幅W1の領域に配置されている。このように配置された第1のインナーライナー層11は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1の熱可塑性エラストマー組成物で構成されている。第1のインナーライナー層11は初期バリア性が比較的高いという特性を有している。
【0028】
第2のインナーライナー層12は、第1のインナーライナー層11の各端部E11からビード部3側に向かって延在する領域に配置され、そのタイヤ径方向内側の端部E12がビードフィラー6の頂点を基準としてタイヤ径方向に±20mm以内の範囲Xに位置している。このように配置された第2のインナーライナー層12は、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物で構成されている。第2のインナーライナー層12は疲労によるバリア性の悪化が比較的少ないという特性を有している。
【0029】
第3のインナーライナー層13は、第2のインナーライナー層12のタイヤ径方向内側の端部E12からビード部側に向かって延在する領域に配置され、そのタイヤ径方向内側の端部E13がビードトゥの位置に配置されている。このように配置された第3のインナーライナー層13は、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第3の熱可塑性エラストマー組成物で構成されている。第3のインナーライナー層13は初期バリア性が比較的高いという特性を有している。
【0030】
上述した空気入りタイヤでは、走行時の変形が少ないベルト層7の下方域及びビード部3の周辺領域に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第1及び第3の熱可塑性エラストマー組成物からなる第1及び第3のインナーライナー層11,13を配置する一方で、走行時の変形が大きいトレッド部1のショルダーからサイドウォール部2を含む領域に、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した第2の熱可塑性エラストマー組成物からなる第2のインナーライナー層12を配置することにより、新品時及び長距離走行後の空気漏れ防止性能をバランス良く改善することができる。
【0031】
ここで、第1のインナーライナー層11の幅W1がベルト層7のタイヤ幅方向最大寸法WBの50%よりも小さいと新品時の空気漏れ防止性能が十分に向上できず、逆に130%よりも大きいと長距離走行後の空気漏れ防止性能が悪化することになる。また、第2のインナーライナー層12のタイヤ径方向内側の端部E12がビードフィラー6の頂点からタイヤ径方向外側に向かって20mmの位置よりもタイヤ径方向外側に位置していると、それに伴って第3のインナーライナー層13をタイヤ径方向外側に拡張する必要があるため、長距離走行後の空気漏れ防止性能が悪化することになる。逆に、第2のインナーライナー層12のタイヤ径方向内側の端部E12がビードフィラー6の頂点からタイヤ径方向内側に向かって20mmの位置よりもタイヤ径方向内側に位置していると、第2のインナーライナー層12の占有面積が大きくなるため、新品時の空気漏れ防止性能が十分に向上できない。
【0032】
上記空気入りタイヤにおいて、第1のインナーライナー層11と第2のインナーライナー層12とは互いにスプライスされ、第2のインナーライナー層12と第3のインナーライナー層13とは互いにスプライスされている。インナーライナー層11〜13を切れ目なく配置することにより、良好な空気漏れ防止性能を確保することができる。インナーライナー層11〜13を相互にスプライスするにあたって、両者の端部同士を互いに重ね合せたラップスプライス構造や、両者の端部同士を互いに突き合わせたバットスプライス構造を採用することができる。ラップスプライス構造では、両者の端部同士を互いに重ね合せて熱融着させても良い。
【0033】
以下、本発明で使用される熱可塑性エラストマー組成物について説明する。この熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂をマトリクスとし、該熱可塑性樹脂中にエラストマー成分が分散した構造を有する組成物である。
【0034】
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン69(N69)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/12共重合体(N6/66/12)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン9T、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕、芳香族ナイロン及びそれらのN−アルコキシアルキル化物〔例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物〕、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
【0035】
特に、エチレン−ビニルアルコール共重合体を50重量%以上含む熱可塑性樹脂をマトリクスとする熱可塑性エラストマー組成物は初期バリア性が良好である。熱可塑性樹脂中のエチレン−ビニルアルコール共重合体の含有量が50重量%未満であると初期バリア性の向上が不十分になる。
【0036】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位(−CH
2CH
2 −)とビニルアルコール単位(−CH
2−CH(OH)−)とからなる共重合体であるが、エチレン単位及びビニルアルコール単位に加えて、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の構成単位を含有していてもよい。エチレン−ビニルアルコール共重合体としては、エチレン単位の含有量すなわちエチレン含有量が好ましくは5〜55モル%、より好ましくは20〜50モル%であるエチレン−ビニルアルコール共重合体及びそれらの変性品から選ばれた少なくとも1種を用いると良い。エチレン−ビニルアルコール共重合体のエチレン含有量が少なすぎるとエチレン−ビニルアルコール共重合体の分子鎖が剛直になり疲労耐久性が低下する。逆にエチレン含有量が多すぎると熱可塑性樹脂に含まれる水酸基の数が減るために気体透過性が増加して空気バリア性が低下する。エチレン−ビニルアルコール共重合体はエチレン酢酸ビニル共重合体のケン化物であるが、そのケン化度は、好ましくは90%以上、より好ましくは99%以上である。エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度が小さすぎると空気バリア性が低下し、また熱安定性も低下する。
【0037】
エチレン−ビニルアルコール共重合体は、市販されており、たとえば、日本合成化学工業株式会社からソアノール(登録商標)の商品名で、株式会社クラレからエバール(登録商標)の商品名で入手することができる。エチレン単位含有量5〜55モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体としては、日本合成化学工業株式会社製ソアノール(登録商標)H4815B(エチレン単位含有量48モル%)、ソアノール(登録商標)A4412B(エチレン単位含有量42モル%)、ソアノール(登録商標)DC3212B(エチレン単位含有量32モル%)、ソアノール(登録商標)V2504RB(エチレン単位含有量25モル%)、株式会社クラレ製エバール(登録商標)L171B(エチレン単位含有量27モル%)、エバール(登録商標)H171B(エチレン単位含有量38モル%)、エバール(登録商標)E171B(エチレン単位含有量44モル%)などがある。
【0038】
また、ポリアミドを70重量%以上含む熱可塑性樹脂をマトリクスとする熱可塑性エラストマー組成物は耐疲労性が良好であり、疲労によるバリア性の悪化が比較的少ない。熱可塑性樹脂中のポリアミドの含有量が70重量%未満であると疲労によりバリア性が悪化する。
【0039】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6/66/12、ナイロン6/66/610、ナイロンMXD6、ナイロン6T、ナイロン6/6T、ナイロン9T及び芳香族ナイロンからなる群から選ばれた少なくとも1種を用いると良い。このようなポリアミドを選択することにより、良好なインナーライナー層を形成することができる。
【0040】
本発明で使用されるエラストマー成分としては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0041】
特に、エラストマー成分は、ハロゲン化イソオレフィン−パラアルキルスチレン共重合体ゴム、酸無水物変性エチレン−αオレフィン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、酸無水物変性スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、酸無水物変性エチレン−エチルアクリレート共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。このようなエラストマー成分を選択することにより、良好なインナーライナー層を形成することができる。
【0042】
前記した特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性が乏しい場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているゴム粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよい。
【0043】
本発明において、熱可塑性エラストマー組成物には、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナー層としての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。
【0044】
また、エラストマーは熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0045】
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
【0046】
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0047】
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
【0048】
その他として、亜鉛華(1〜5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(0.5〜5phr程度)が例示できる。
【0049】
また、必要に応じて、加硫促進剤および加硫促進助剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
【0050】
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(1〜5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(0.5〜4phr程度)等が使用できる。
【0051】
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤は、上記混練中に添加してもよく、混練の前に予め混合しておいてもよい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は100〜7500sec
-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
【0052】
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナー層に十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
【0053】
熱可塑性エラストマー組成物のJIS K7100により定められるところの標準雰囲気中におけるヤング率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
【0054】
上記熱可塑性エラストマー組成物はシート又はフィルムに成形して単体で用いることが可能であるが、隣接するゴムとの接着性を高めるために接着層を積層しても良い。接着層は、常法に従って例えば樹脂用押出機によって押し出してシート状又はフィルム状に成形して積層しても良いし、樹脂用押出機によって熱可塑性樹脂組成物又は熱可塑性エラストマー組成物と共に共押し出しすることで積層しても良い。接着層は接着性向上のため、エポキシ変性ポリマーを含むことが好ましい。接着層の厚さは特に限定されないが、タイヤ軽量化のためには厚さが少ない方がよく、5μm〜150μmが好ましい。
【実施例】
【0055】
(1)熱可塑性エラストマー組成物の調整
表1に示す原料のうちゴム(Br−IPMS)を予めゴムペレタイザー(森山製作所製)によりペレット状に加工した。そのゴムペレットと熱可塑性樹脂(EVOH、ポリアミド)と酸変性エラストマーと添加剤(酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤)を、表1に示す配合比率で、二軸混練押出機(日本製鋼所製)に投入し、250℃で3分間混練した。混練物を押出機から連続的にストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断することにより、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物A1〜A5を得た。
【0056】
【表1】
【0057】
EVHO:日本合成化学製、ソアノールE3808(エチレン38モル%)
ポリアミド:DSMジャパンエンジニアリングプラスチックス株式会社製、ノバミッド2010R(ナイロン6/66共重合体)
ゴム:エクソンモービルケミカル社製、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体ゴム、ExxproMDX89−4
酸変性エラストマー:エクソンモービルケミカル社製、マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ExxelorVA1803
酸化亜鉛:正同化学工業株式会社製、酸化亜鉛3種
ステアリン酸:日油株式会社製、ビーズステアリン酸
6PDD:フレキシス社製、サントフレックス6PPD
【0058】
(2)フィルム層の成形
上述した熱可塑性エラストマー組成物A1〜A5の各々をインフレーション成形装置(プラコー社製)を使用して230℃でチューブ状に押出し、空気を吹き込んで膨張させ、ピンチロールで折り畳み、巻き取ることにより、空気透過防止機能を有するチューブ状のフィルム層を得た。熱可塑性エラストマー組成物A1〜A5からなるフィルム層の厚さは100μmであった。また、折り畳まれたフィルム層の幅はいずれも650mmであった。
【0059】
(3)タイヤの製造
上述したフィルム層をインナーライナー層としてタイヤ成形用ドラム上に配置し、その上に未加硫ゴムからなるタイゴム層、カーカス層、ベルト層、トレッドゴム層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ねた後、ドラムを抜き取ってグリーンタイヤを成形した。
【0060】
実施例1〜6については、
図1のタイヤ構造を採用し、第1のインナーライナー層の構成材料、第2のインナーライナー層の構成材料、ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法WBに対する第1のインナーライナー層の幅W1の比率(W1/WB×100%)、第2のインナーライナー層のタイヤ径方向内側の端部位置を表2のように設定した。
【0061】
比較例1,2については、タイヤ内面の全域にわたって配置されるインナーライナー層を同一素材から構成した。言い換えれば、第1のインナーライナー層の構成材料と第2のインナーライナー層の構成材料を表2のように同一物とした。
【0062】
実施例7〜9については、
図2のタイヤ構造を採用し、第1のインナーライナー層の構成材料、第2のインナーライナー層の構成材料、第3のインナーライナー層の構成材料、ベルト層のタイヤ幅方向最大寸法WBに対する第1のインナーライナー層の幅W1の比率(W1/WB×100%)、第2のインナーライナー層のタイヤ径方向内側の端部位置、第3のインナーライナー層のタイヤ径方向内側の端部位置を表3のように設定した。なお、表3において、「ビードフィラー頂点−20mm」とはビードフィラー頂点よりもタイヤ径方向内側へ20mmの位置を意味し、「ビードフィラー頂点+20mm」とはビードフィラー頂点よりもタイヤ径方向外側へ20mmの位置を意味する。
【0063】
このようにして得られた実施例1〜9及び比較例1,2に係るグリーンタイヤを通常の加硫成形方法により加硫することにより、タイヤサイズ195/65R15の空気入りタイヤを得た。
【0064】
(4)空気漏れ試験
上述のように製造された実施例1〜9及び比較例1,2の試験タイヤについて、新品時、及び、リム15×6JJ、内圧200kPaとして、排気量1800ccのFF乗用車に装着し、実路上を30,000km走行後の各タイヤの内圧低下率を次の方法により測定した。即ち、各試験タイヤを正規リムに装着し、初期圧力250kPa、室温21℃、無負荷条件にて3ヶ月間放置し、3時間毎に内圧を測定し、測定内圧Pt、初期内圧P0、経過日数tとして、Pt/P0=exp(−αt)にて回帰してα値を求めた。得られたα値を用いて、t=30(日)を代入し、β=〔1−exp(−αt)〕×100からβ値を求め、そのβ値を1ヶ月当たりの内圧低下率(%/月)とした。その結果を表2及び表3にそれぞれ示した。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
この表2,3から判るように、タイヤ内面の全域にわたって配置されるインナーライナー層を熱可塑性エラストマー組成物A1(EVOH100%の樹脂)で構成した比較例1では、走行に伴うインナーライナー層の疲労により走行後の内圧低下率が増大しており、走行後の空気漏れ防止性能が著しく悪化していた。一方、タイヤ内面の全域にわたって配置されるインナーライナー層を熱可塑性エラストマー組成物A4(ナイロン100%の樹脂)で構成した比較例2では、走行前後で内圧低下率に変化が見られないが、新品時の内圧低下率がやや高くなっていた。
【0068】
一方、ベルト層の下方域に位置する第1のインナーライナー層を熱可塑性エラストマー組成物A1〜A3(EVOH50%〜100%の樹脂)で構成し、サイドウォール部に位置する第2のインナーライナー層を熱可塑性エラストマー組成物A4〜A5(ナイロン70%〜100%の樹脂)で構成した実施例1〜9では、新品時の内圧低下率が比較例2よりも低くなっており、走行後の内圧低下率が比較例1よりも低くなっていた。その結果、新品時及び長距離走行後の空気漏れ防止性能がバランス良く改善されていた。