特許第6747152号(P6747152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6747152
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】吸収式ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 33/00 20060101AFI20200817BHJP
   F25B 15/00 20060101ALI20200817BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   F25B33/00 Z
   F25B15/00 E
   F25B27/02 K
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-153631(P2016-153631)
(22)【出願日】2016年8月4日
(65)【公開番号】特開2018-21715(P2018-21715A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年7月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成28年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術開発など(未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】坪内 修
【審査官】 飯星 潤耶
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−129727(JP,A)
【文献】 実公昭35−010745(JP,Y1)
【文献】 特開2015−114093(JP,A)
【文献】 特開昭52−090849(JP,A)
【文献】 米国特許第04269719(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 15/00−30/06,33/00−37/00
F25C 1/00
F28D 11/00−11/08
B01D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒が蒸発される蒸発器と、
前記蒸発器により蒸発された冷媒が吸収液により吸収される吸収器と、
冷媒により希釈された吸収液が濃縮される再生器とを備え、
前記再生器は、吸収液を溜める貯留部と、熱交換器と、前記熱交換器の表面に前記貯留部に貯留された吸収液を塗布する塗布部と、前記熱交換器の表面に塗布され固化した吸収液を前記熱交換器の表面から剥離させる剥離部とを含む、吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、プレート状の熱交換器を含み、
前記塗布部は、プレート状の前記熱交換器の表面に前記貯留部に貯留された吸収液を薄膜化して塗布するように構成されている、請求項1に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、所定の間隔を隔てて多段に配列されており、
多段の前記熱交換器の中央部を貫通するように設けられ、前記塗布部および前記剥離部をプレート状の前記熱交換器の表面に沿って回転させるための回転軸をさらに備える、請求項2に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項4】
多段のプレート状の前記熱交換器にまたがって配置され、前記熱交換器に熱媒を供給する熱媒供給配管および前記熱交換器から熱媒を回収する熱媒回収配管をさらに備える、請求項3に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項5】
前記再生器は、蓄熱時には、前記再生器から前記吸収器への吸収液の供給が止められて、前記貯留部に貯留された吸収液を前記塗布部により薄膜化した後固化し、固化した吸収液を前記剥離部により剥離するとともに、放熱時には、固化された吸収液に液状または蒸気状の冷媒が供給されるように構成されている、請求項2〜4のいずれか1項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項6】
前記塗布部および前記剥離部は、一体的に形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の吸収式ヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収式ヒートポンプ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、蒸発器、吸収器および再生器を備えた吸収式ヒートポンプ装置が開示されている。この特許文献1の吸収式ヒートポンプ装置は、運転時に再生器において濃縮されて吸収器に送られた吸収液が、運転停止時に吸収器において結晶固化するのを防止するために、運転停止時に吸収器に冷媒を入れて、吸収器の吸収液を希釈するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−019614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の吸収式ヒートポンプ装置では、運転停止時に吸収器において結晶固化するのを防止するために、運転停止時に吸収器に冷媒を入れて、吸収器の吸収液を希釈するように構成されているため、吸収液の濃縮により蓄えられたエネルギを運転停止時に放出している。そこで、吸収器において吸収液が結晶固化するのを抑制しながら、エネルギを有効に活用することが可能な吸収式ヒートポンプ装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、吸収器において吸収液が結晶固化するのを抑制しながら、エネルギを有効に活用することが可能な吸収式ヒートポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における吸収式ヒートポンプ装置は、冷媒が蒸発される蒸発器と、蒸発器により蒸発された冷媒が吸収液により吸収される吸収器と、冷媒により希釈された吸収液が濃縮される再生器とを備え、再生器は、吸収液を溜める貯留部と、熱交換器と、熱交換器の表面に貯留部に貯留された吸収液を塗布する塗布部と、熱交換器の表面に塗布され固化した吸収液を熱交換器の表面から剥離させる剥離部とを含む。
【0008】
この発明の一の局面による吸収式ヒートポンプ装置では、上記のように、再生器に、吸収液を溜める貯留部と、熱交換器と、熱交換器の表面に貯留部に貯留された吸収液を塗布する塗布部と、熱交換器の表面に塗布され固化した吸収液を熱交換器の表面から剥離させる剥離部とを設ける。これにより、運転停止時に、再生器において吸収液を濃縮して固化させることができるので、濃縮された吸収液を再生器に集めて、吸収器に濃縮された吸収液が供給されなくなる。これにより、吸収器における吸収液の濃度が高くなるのを抑制することができるので、吸収器において吸収液が結晶固化するのを抑制することができる。また、塗布部により吸収液が熱交換器の表面に塗布されるので、熱交換器を介して吸収液を効率よく加熱して固化させることができる。また、熱交換器の表面に塗布されて固化した吸収液が剥離部により剥離されるので、熱交換器の表面において吸収液が固化するのを抑制することができる。また、運転開始時において、固化した吸収液を冷媒に溶解させることにより、熱(溶解熱および希釈熱)を発生させることができるので、エネルギを有効に活用することができる。
【0009】
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、熱交換器は、プレート状の熱交換器を含み、塗布部は、プレート状の熱交換器の表面に貯留部に貯留された吸収液を薄膜化して塗布するように構成されている。
【0010】
このように構成すれば、塗布部によりプレート状の熱交換器の表面に容易に薄膜状の吸収液を形成することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、熱交換器は、所定の間隔を隔てて多段に配列されており、多段の熱交換器の中央部を貫通するように設けられ、塗布部および剥離部をプレート状の熱交換器の表面に沿って回転させるための回転軸をさらに備える。
【0012】
このように構成すれば、熱交換器を多段に設けることにより、吸収液をより効率よく加熱することができる。また、回転軸により塗布部および剥離部を回転させることにより、吸収液を熱交換器の表面に容易に薄膜状に塗布して固化することができるとともに、固化した吸収液を熱交換器の表面から容易に剥離させることができる。
【0013】
上記熱交換器が多段に配列されている構成において、好ましくは、多段のプレート状の熱交換器にまたがって配置され、熱交換器に熱媒を供給する熱媒供給配管および熱交換器から熱媒を回収する熱媒回収配管をさらに備える。
【0014】
このように構成すれば、共通の熱媒供給配管により多段の熱交換器に熱媒を容易に供給することができるとともに、共通の熱媒回収配管により多段の熱交換器から熱媒を容易に回収することができる。
【0015】
上記熱交換器がプレート状の熱交換器を含む構成において、好ましくは、再生器は、蓄熱時には、再生器から吸収器への吸収液の供給が止められて、貯留部に貯留された吸収液を塗布部により薄膜化した後固化し、固化した吸収液を剥離部により剥離するとともに、放熱時には、固化された吸収液に液状または蒸気状の冷媒が供給されるように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、蓄熱時に、濃縮された吸収液が吸収器に供給されなくなるので、吸収器において吸収液が固化するのを確実に抑制することができる。また、再生器において吸収液を固化してエネルギを容易に溜めることができる。また、放熱時に、固化された吸収液に液状または蒸気状の冷媒が供給されることにより、融解熱を発生させてエネルギを容易に取り出すことができる。
【0017】
上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、好ましくは、塗布部および剥離部は、一体的に形成されている。
【0018】
このように構成すれば、塗布部および剥離部を別体で設ける場合と比べて、構成を簡素化することができる。
【0019】
なお、上記一の局面による吸収式ヒートポンプ装置において、以下の構成も考えられる。
【0020】
(付記項)
すなわち、上記蓄熱時に再生器から吸収器への吸収液の供給が止められて吸収液を固化する構成の吸収式ヒートポンプ装置において、再生器は、蓄熱時には、吸収液を結晶化して固化するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の全体構成を示した図である。
図2】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の再生器の概略的な構造を示した斜視図である。
図3】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の冷房運転時の動作を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の冷房蓄熱時の動作を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の冷房蓄熱利用時の動作を説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の暖房運転時の動作を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の暖房蓄熱時の動作を説明するための図である。
図8】本発明の一実施形態における吸収式ヒートポンプ装置の暖房蓄熱利用時の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100の構成について説明する。
【0024】
(吸収式ヒートポンプ装置の構成)
本発明の一実施形態による吸収式ヒートポンプ装置100は、冷媒として水が用いられ、吸収液として臭化リチウム(LiBr)水溶液が用いられている。また、吸収式ヒートポンプ装置100は、エンジン8を備えた乗用車およびバスなどの車両(図示せず)に搭載されるように構成されている。また、吸収式ヒートポンプ装置100は、エンジン8を冷却する冷却水の熱、および、エンジン8から排出される高温の排気ガスの熱を利用(回収)して、吸収液(希液)が加熱されるように構成されている。
【0025】
吸収式ヒートポンプ装置100は、図1に示すように、再生器1と、凝縮器2と、蒸発器3と、吸収器4とを備えている。再生器1は、吸収液から冷媒蒸気(高温水蒸気)を分離する役割を有する。凝縮器2は、冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有する。蒸発器3は、冷房運転時に、凝縮水となった冷媒を低温低圧の条件下で蒸発(気化)させる役割を有する。また、蒸発器3は、暖房運転時に、冷媒蒸気を凝縮(液化)させる役割を有する。吸収器4は、濃液状態の吸収液に蒸発器3において気化した冷媒蒸気(低温水蒸気)を吸収させる役割を有する。
【0026】
また、吸収式ヒートポンプ装置100は、三方弁5と、熱交換器6aと、熱交換器6bとを備えている。また、吸収式ヒートポンプ装置100は、ラジエータ6c、熱交換器6d、熱要求デバイス7およびエンジン8を循環する冷却水と熱交換することが可能に構成されている。
【0027】
再生器1には、凝縮器2に冷媒蒸気を送るための配管11が設けられている。配管11は、再生器1と凝縮器2とを接続している。また、配管11の途中には、弁111が設けられている。再生器1には、三方弁5を介して蒸発器3に冷媒蒸気を送るための配管12が設けられている。配管12は、再生器1と三方弁5とを接続している。再生器1には、吸収器4に濃縮した吸収液を送るための配管13が設けられている。配管13は、再生器1と吸収器4とを接続している。また、配管13の途中には、弁131が設けられている。
【0028】
また、図2に示すように、再生器1は、容器10と、複数のプレート状の熱交換器14と、貯留部15と、回転体16と、回転軸17とを含んでいる。回転体16は、板状部161と、腕部162とを有している。回転軸17には、モータ171が接続されている。なお、回転体16は、特許請求の範囲の「塗布部」および「剥離部」の一例である。
【0029】
図1に示すように、凝縮器2には、三方弁5を介して蒸発器3に冷媒を送るための配管21が設けられている。配管21は、凝縮器2と三方弁5とを接続している。凝縮器2には、再生器1に冷媒を送るための配管22が設けられている。配管22は、凝縮器2と再生器1とを接続している。また、配管22の途中には、弁221と、ポンプ222とが設けられている。
【0030】
蒸発器3には、吸収器4に冷媒蒸気を送るための配管31が設けられている。配管31は、蒸発器3と吸収器4とを接続している。また、配管31の途中には、弁311が設けられている。蒸発器3には、吸収器4に冷媒を送るための配管32が設けられている。配管32は、蒸発器3と吸収器4とを接続している。また、配管32の途中には、弁321が設けられている。蒸発器3には、再生器1に冷媒蒸気を送るための配管33が設けられている。配管33は、蒸発器3と再生器1とを接続している。また、配管33の途中には、弁331が設けられている。
【0031】
吸収器4には、冷媒を吸収して濃度が低くなった吸収液を再生器1に送るための配管41が設けられている。配管41は、吸収器4と再生器1とを接続している。また、配管41の途中には、弁411と、ポンプ412とが設けられている。
【0032】
三方弁5には、冷媒を送る配管51が設けられている。配管51は、三方弁5と蒸発器3とを接続している。三方弁5は、配管12および21を連通させる状態と、配管12および51を連通させる状態と、配管21および51を連通させる状態と、のいずれかに切り替えることが可能に構成されている。
【0033】
熱交換器6aは、車内の空気を冷却または加熱させるために熱交換を行うように構成されている。熱交換器6aには、熱媒が流れる配管61が接続されている。配管61は、蒸発器3と熱交換するとともに、熱交換器6aと熱交換するように構成されている。配管61の途中には、ポンプ611が設けられている。
【0034】
熱交換器6bは、配管13の熱と、配管41の熱とを熱交換するように構成されている。
【0035】
ラジエータ6cは、エンジン8を冷却する冷却水を冷却するように構成されている。冷却水は、配管62を流れるように構成されている。配管62は、エンジン8と、熱交換器6dと、再生器1と、熱要求デバイス7と、ラジエータ6cとに冷却水を循環させるように構成されている。配管62の途中には、ポンプ621が設けられている。配管62は、熱媒供給配管62aおよび熱媒回収配管62b(図2参照)を含んでいる。
【0036】
熱交換器6dは、配管62の熱と、配管63の熱とを熱交換するように構成されている。配管63は、エンジン8から排出される排気ガスが通るように構成されている。
【0037】
再生器1は、吸収液を加熱し、加熱した吸収液から冷媒蒸気を分離するように構成されている。つまり、再生器1は、冷媒により希釈された吸収液を濃縮するように構成されている。再生器1は、エンジンを冷却する冷却水の熱を利用して加熱されるように構成されている。具体的には、図2に示すように、熱交換器14に熱媒を供給する熱媒供給配管62aから熱媒(冷却水)が供給される。また、熱交換器14から熱媒を回収する熱媒回収配管62bに熱媒(冷却水)が回収される。これにより、再生器1が加熱される。
【0038】
凝縮器2は、再生器1により分離された冷媒蒸気を凝縮(液化)するように構成されている。凝縮器2には、冷媒蒸気を冷却するための冷却水回路(図示せず)が通されている。これにより、冷媒蒸気が冷やされて、冷媒が凝縮される。
【0039】
蒸発器3は、冷房運転時に、冷媒を蒸発(気化)させることにより、配管61の熱媒から熱を奪うように構成されている。また、蒸発器3は、暖房運転時に、冷媒を凝縮(液化)させることにより、配管61の熱媒に熱を与えるように構成されている。また、蒸発器3は、内部を絶対圧力で1kPa以下の真空状態に保持する容器と、容器内部に設置された熱交換部および噴射器とを含む。また、蒸発器3では、冷媒(水)が噴射器から熱交換部に向けて噴霧される。熱交換部では、配管61と熱交換が行われるように構成されている。つまり、冷媒の気化熱または凝縮熱が、配管61の熱媒との間で熱交換される。
【0040】
吸収器4は、蒸発器3により蒸発された冷媒蒸気を吸収液により吸収するように構成されている。吸収器4には、吸収液を冷却するための冷却水回路(図示せず)が通されている。これにより、冷却水が冷やされて、冷媒を吸収することにより発生する熱が冷却される。
【0041】
熱要求デバイス7は、車両に設けられた、熱を必要とする機器である。熱要求デバイス7には、冷却水の排熱が供給されるように構成されている。
【0042】
(再生器の構造)
ここで、本実施形態では、再生器1は、図2に示すように、容器10内に、複数の熱交換器14と、貯留部15と、回転体16と、回転軸17とが設けられている。熱交換器14は、プレート状に形成されている。具体的には、熱交換器14は、円状のプレート状に形成されている。熱交換器14の内部には、熱媒を通す空間が形成されている。また、熱交換器14は、所定の間隔を隔てて多段に配列されている。具体的には、多段の熱交換器14は、水平方向(X方向)に沿って配列されている。
【0043】
熱交換器14には、多段の熱交換器14にまたがって配置された熱媒供給配管62aおよび熱媒回収配管62bが接続されている。具体的には、熱媒供給配管62aは、多段の熱交換器14の下方(Z2方向側)にX方向に延びるように配置されている。熱媒回収配管62bは、多段の熱交換器14の上方(Z1方向側)にX方向に延びるように配置されている。
【0044】
貯留部15は、吸収液を溜めるように構成されている。具体的には、貯留部15は、吸収器4から送られる液体の吸収液を溜めるように構成されている。また、貯留部15は、再生器1により濃縮した吸収液および固化した吸収液を溜めるように構成されている。また、貯留部15は、上方(Z1方向側)から吸収液が供給されるように構成されている。また、貯留部15は、下方(Z2方向側)から吸収液を送り出すように構成されている。
【0045】
また、本実施形態では、回転体16は、熱交換器14の表面に貯留部15に貯留された吸収液を塗布するように構成されている。また、回転体16は、熱交換器14の表面に塗布され固化した吸収液を熱交換器14の表面から剥離させるように構成されている。つまり、吸収液を塗布する部材と、吸収液を剥離する部材とを、回転体16として一体的に設けている。また、回転体16は、プレート状の熱交換器14の表面に貯留部15に貯留された吸収液を薄膜化して塗布するように構成されている。
【0046】
回転体16は、多段の熱交換器14の間に配置されている。つまり、回転体16は、隣接する熱交換器14の間の各々に配置されている。回転体16の板状部161は、円状の熱交換器14の半径方向に沿って延びるように配置されている。板状部161は、回転体16の回転により、熱交換器14の表面に吸収液を塗布するとともに、固化した吸収液を熱交換器14の表面から剥離させるように構成されている。板状部161は、1つの腕部162に対して、X方向の両側(X1方向側およびX2方向側)に一対設けられている。回転体16の腕部162は、回転軸17に接続されており、回転軸17の回転によりR方向に回転されるように構成されている。また、腕部162は、隣接する熱交換器14の間において、約180度の間隔を隔てて一対設けられている。
【0047】
回転軸17は、多段の熱交換器14の中央部を貫通するように設けられている。具体的には、回転軸17は、円状の熱交換器14の略中心を貫通するように設けられている。また、回転軸17は、回転体16をプレート状の熱交換器14の表面に沿って回転させるように構成されている。また、回転軸17は、モータ171により駆動されるように構成されている。
【0048】
また、本実施形態では、再生器1は、蓄熱時には、再生器1から吸収器4への吸収液の供給が止められて、貯留部15に貯留された吸収液を回転体16により薄膜化した後固化し、固化した吸収液を回転体16により剥離するように構成されている。また、再生器1は、蓄熱時には、吸収液を結晶化して固化するように構成されている。つまり、再生器1は、蓄熱時に、吸収液の溶質を結晶化させて析出させるように構成されている。吸収液の溶質は、溶媒(冷媒)が蒸発(気化)して少なくなることにより、溶解度を超えた分の量が析出される。なお、溶解度は、温度に依存する。つまり、温度が変化することによっても、吸収液の溶質が析出する。ここで、吸収液の溶質である臭化リチウムは、温度が高くなるほど、溶解度が大きくなる。つまり、運転停止後に、再生器1内の温度が下がることにより、吸収液の溶質である臭化リチウムは、再生器1において析出される。また、再生器1は、放熱時には、固化された吸収液に液状または蒸気状の冷媒が供給されるように構成されている。
【0049】
(冷房運転時の動作)
図3を参照して冷房運転時の動作について説明する。冷房運転時には、図3に示すように、弁111、131、311および411が開かれ、弁221、321および331が閉じられる。また、三方弁5が、凝縮器2(配管21)と蒸発器3(配管51)とを導通させるように切り替えられる。また、ポンプ412、611および621が駆動される。これにより、冷媒が、再生器1、凝縮器2、蒸発器3および吸収器4を循環する。また、吸収液が、再生器1および吸収器4を循環する。また、熱媒が、配管61内を循環する。また、冷却水が、配管62内を循環する。
【0050】
再生器1において、吸収器4から送られる希釈された吸収液から、冷媒蒸気が分離されることにより、吸収液が濃縮される。そして、冷媒蒸気は、凝縮器2に送られる。また、濃縮された吸収液は、吸収器4に送られる。凝縮器2において、冷媒蒸気が凝縮(液化)される。液化された冷媒は、蒸発器3に供給される。
【0051】
蒸発器3において、液体の冷媒が蒸発(気化)される。この際、冷媒は、気化熱により、配管61の熱媒の熱を奪う。そして、冷媒蒸気は、吸収器4に送られる。吸収器4において、冷媒蒸気が吸収液に吸収される。そして、冷媒が吸収され希釈された吸収液は、再生器1に送られる。熱交換器6aでは、配管61の冷やされた熱媒を用いて車両の内部が冷やされる。
【0052】
(冷房蓄熱時の動作)
図4を参照して冷房蓄熱時の動作について説明する。冷房蓄熱時には、図4に示すように、弁111が開かれ、弁131、221、311、321、331および411が閉じられる。また、三方弁5が、凝縮器2(配管21)と蒸発器3(配管51)とを導通させるように切り替えられる。また、ポンプ621が駆動される。これにより、冷媒が、再生器1から凝縮器2を介して蒸発器3に移動される。また、冷却水が、配管62内を循環する。
【0053】
再生器1から吸収器4への吸収液の供給が止められた状態で、再生器1において、貯留部15に貯留された吸収液を回転体16により薄膜化して塗布される。薄膜化した吸収液は、熱交換器6の表面において固化する。固化した吸収液は、回転体16により剥離される。これにより、粒子径が1mm程度の吸収液の固体の粒が形成される。その結果、再生器1には、固体の吸収液が貯留される。また、再生器1において、吸収液から分離された冷媒蒸気は、凝縮器2に送られる。凝縮器2において、冷媒蒸気が凝縮(液化)される。液化された冷媒は、蒸発器3に供給される。蒸発器3において、液体の冷媒が貯留される。
【0054】
(冷房蓄熱利用時の動作)
図5を参照して冷房蓄熱利用時の動作について説明する。冷房蓄熱利用とは、冷房蓄熱により、再生器1において貯留された固体の吸収液を用いてエネルギを取出して利用することである。冷房蓄熱利用時には、図5に示すように、弁331が開かれ、弁111、131、221、311、321および411が閉じられる。また、ポンプ611および621が駆動される。これにより、冷媒が、蒸発器3から再生器1に移動される。また、熱媒が、配管61内を循環する。また、冷却水が、配管62内を循環する。
【0055】
再生器1において、固化された吸収液に蒸気状の冷媒が蒸発器3から供給される。つまり、蒸発器3に貯留された冷媒が気化して再生器1に貯留された固化された吸収液に吸収される。固化された吸収液は、液体の吸収液に比べて、冷媒を吸収しやすいため、蒸発器3において、冷媒の気化が促進される。これにより、蒸発器3における冷却能力が大きくなる。つまり、冷房運転始動時に、大きな冷却能力により車両の内部を冷やすことが可能である。また、再生器1において、吸収液が冷媒を吸収することにより熱を発生させる。この際、配管62内の冷却水が温めるられる。つまり、始動時において、冷却水の温度が迅速に適温になるように温めることが可能である。
【0056】
(暖房運転時の動作)
図6を参照して暖房運転時の動作について説明する。暖房運転時には、図6に示すように、弁321が開がれ、弁111、131、221、311、331および411が閉じられる。また、三方弁5が、再生器1(配管12)と蒸発器3(配管51)とを導通させるように切り替えられる。また、ポンプ412、611および621が駆動される。これにより、冷媒が、再生器1、蒸発器3および吸収器4を循環する。また、熱媒が、配管61内を循環する。また、冷却水が、配管62内を循環する。
【0057】
再生器1において、吸収液が加熱されて、冷媒蒸気が分離される。そして、冷媒蒸気は、蒸発器3に送られる。蒸発器3において、冷媒蒸気が凝縮(液化)される。この際、冷媒は、凝縮熱を配管61の熱媒に与える。そして、液化された冷媒は、吸収器4に供給される。
【0058】
冷媒は、吸収器4から再生器1に送られる。熱交換器6aでは、配管61の温められた熱媒を用いて車両の内部が温められる。
【0059】
(暖房蓄熱時の動作)
図7を参照して暖房蓄熱時の動作について説明する。暖房蓄熱時には、図7に示すように、弁111、131、221、311、321、331および411が閉じられる。また、三方弁5が、再生器1(配管12)と蒸発器3(配管51)とを導通させるように切り替えられる。また、ポンプ611および621が駆動される。これにより、冷媒が、再生器1から蒸発器3に移動される。また、熱媒が、配管61内を循環する。また、冷却水が、配管62内を循環する。
【0060】
再生器1から吸収器4への吸収液の供給が止められた状態で、再生器1において、貯留部15に貯留された吸収液を回転体16により薄膜化して塗布される。薄膜化した吸収液は、熱交換器6の表面において固化する。固化した吸収液は、回転体16により剥離される。これにより、粒子径が1mm程度の吸収液の固体の粒が形成される。その結果、再生器1には、固体の吸収液が貯留される。また、再生器1において、吸収液から分離された冷媒蒸気は、蒸発器3に送られる。蒸発器3において、冷媒蒸気が凝縮(液化)される。この際、冷媒は、凝縮熱を配管61の熱媒に与える。また、蒸発器3において、液体の冷媒が貯留される。
【0061】
(暖房蓄熱利用時の動作)
図8を参照して暖房蓄熱利用時の動作について説明する。暖房蓄熱利用とは、暖房蓄熱により、再生器1において貯留された固体の吸収液を用いてエネルギを取出して利用することである。暖房蓄熱利用時には、図8に示すように、弁221が開かれ、弁111、131、311、321、331および411が閉じられる。また、三方弁5が、凝縮器2(配管21)と蒸発器3(配管51)とを導通させるように切り替えられる。また、ポンプ621が駆動される。これにより、冷媒が、蒸発器3から凝縮器2を介して再生器1に移動される。また、冷却水が、配管62内を循環する。
【0062】
再生器1において、固化された吸収液に液状の冷媒が蒸発器3から供給される。これにより、再生器1において、吸収液が冷媒を吸収することにより熱を発生させる。この際、配管62内の冷却水が温めるられる。つまり、始動時において、冷却水の温度が迅速に適温になるように温めることが可能である。
【0063】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0064】
本実施形態では、上記のように、再生器1に、吸収液を溜める貯留部15と、熱交換器14と、熱交換器14の表面に貯留部15に貯留された吸収液を塗布するとともに、熱交換器14の表面に塗布され固化した吸収液を熱交換器14の表面から剥離させる回転体16とを設ける。これにより、運転停止時に、再生器1において吸収液を濃縮して固化させることができるので、濃縮された吸収液を再生器1に集めて、吸収器4に濃縮された吸収液が供給されなくなる。これにより、吸収器4における吸収液の濃度が高くなるのを抑制することができるので、吸収器4において吸収液が結晶固化するのを抑制することができる。また、回転体16により吸収液が熱交換器14の表面に塗布されるので、熱交換器14を介して吸収液を効率よく加熱して固化させることができる。また、熱交換器14の表面に塗布されて固化した吸収液が回転体16により剥離されるので、熱交換器14の表面において吸収液が固化するのを抑制することができる。また、運転開始時において、固化した吸収液を冷媒に溶解させることにより、熱(溶解熱および希釈熱)を発生させることができるので、エネルギを有効に活用することができる。
【0065】
また、本実施形態では、回転体16を、プレート状の熱交換器14の表面に貯留部15に貯留された吸収液を薄膜化して塗布するように構成する。これにより、回転体16によりプレート状の熱交換器14の表面に容易に薄膜状の吸収液を形成することができる。
【0066】
また、本実施形態では、熱交換器14を、所定の間隔を隔てて多段に配列するとともに、多段の熱交換器14の中央部を貫通するように配置され、回転体16をプレート状の熱交換器14の表面に沿って回転させるための回転軸17を設ける。これにより、熱交換器14を多段に設けることにより、吸収液をより効率よく加熱することができる。また、回転軸17により回転体16を回転させることにより、吸収液を熱交換器14の表面に容易に薄膜状に塗布して固化することができるとともに、固化した吸収液を熱交換器14の表面から容易に剥離させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、多段のプレート状の熱交換器14にまたがって配置され、熱交換器14に熱媒を供給する熱媒供給配管62aおよび熱交換器14から熱媒を回収する熱媒回収配管62bを設ける。これにより、共通の熱媒供給配管62aにより多段の熱交換器14に熱媒を容易に供給することができるとともに、共通の熱媒回収配管62bにより多段の熱交換器14から熱媒を容易に回収することができる。
【0068】
また、本実施形態では、再生器1を、蓄熱時には、再生器1から吸収器4への吸収液の供給が止められて、貯留部15に貯留された吸収液を回転体16により薄膜化した後固化し、固化した吸収液を回転体16により剥離するとともに、放熱時には、固化された吸収液に液状または蒸気状の冷媒が供給されるように構成する。これにより、蓄熱時に、濃縮された吸収液が吸収器4に供給されなくなるので、吸収器4において吸収液が固化するのを確実に抑制することができる。また、再生器1において吸収液を固化してエネルギを容易に溜めることができる。また、放熱時に、固化された吸収液に液状または蒸気状の冷媒が供給されることにより、融解熱を発生させてエネルギを容易に取り出すことができる。
【0069】
また、本実施形態では、吸収液を塗布する部材と剥離する部材とを、一体的に設ける。これにより、塗布部および剥離部を別体で設ける場合と比べて、構成を簡素化することができる。
【0070】
また、本実施形態では、再生器1を、蓄熱時には、吸収液を結晶化して固化するように構成されている。これにより、結晶化した吸収液に冷媒を供給することにより、冷媒を効果的に吸収させることができる。また、溶解により熱を発生させることができるので、放熱時にエネルギを容易に取り出すことができる。
【0071】
(変形例)
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0072】
たとえば、上記実施形態では、吸収液を塗布する部材と剥離する部材とを、一体的に設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、吸収液を熱交換器の表面に塗布する塗布部と、熱交換器の表面に塗布され固化した吸収液を熱交換器の表面から剥離させる剥離部を別体で設けてもよい。たとえば、同一の回転体において、所定の角度を隔てて、塗布部と剥離部とを交互に設けてもよい。これにより、塗布部を塗布に適した材料にすることができる。たとえば、塗布部を刷毛により構成してもよい。また、塗布部と剥離部とを別体にすることにより、熱交換器の表面に対して、塗布に適した圧力および剥離に適した圧力をそれぞれかけることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、同一の回転体(塗布部および剥離部)において、一対の腕部が設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、同一の回転体において、3以上の腕部が設けられていてもよい。この場合、均等の角度間隔において腕部が設けられていてもよい。たとえば、4つの腕部を設ける場合、90度ずつの間隔を隔てて腕部を配置してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を、乗用車やバスなど車両の空調システムに適用した例を示したが、本発明はこれに限られない。車両のみならず商業施設向け(据置型)の吸収式ヒートポンプ装置にも、本発明を適用することができる。
【0075】
また、上記実施形態では、冷却水および排気ガスの熱を利用して吸収液を加熱した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ハイブリッド自動車や電気自動車の空調用に、本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。また、吸収液の加熱熱源に電気自動車のバッテリやモータ排熱や燃料電池における発電時の排熱を利用して、燃料電池システムを備えた乗用車の空調に本発明の吸収式ヒートポンプ装置を適用してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、冷媒および吸収液として、水および臭化リチウム水溶液を用いた例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、冷媒および吸収液として、それぞれ、アンモニアおよび水を用いて吸収式ヒートポンプ装置を構成してもよい。また、他の吸収液および冷媒を用いてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 再生器
3 蒸発器
4 吸収器
14 熱交換器
15 貯留部
16 回転体(塗布部、剥離部)
17 回転軸
62a 熱媒供給配管
62b 熱媒回収配管
100 吸収式ヒートポンプ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8