特許第6747192号(P6747192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6747192
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】遺伝子増幅装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20200817BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20200817BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20200817BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   G01N35/00 Z
   !C12Q1/6844 Z
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-174439(P2016-174439)
(22)【出願日】2016年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-38312(P2018-38312A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】二宮 健二
(72)【発明者】
【氏名】四方 正光
(72)【発明者】
【氏名】高岡 直子
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎一郎
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−249707(JP,A)
【文献】 特表2003−524754(JP,A)
【文献】 特開2016−085230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0191896(US,A1)
【文献】 特表平05−507887(JP,A)
【文献】 特表2012−514747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
G01N 35/00
C12Q 1/6844
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放された1つの空間を内部に有し前記空間内に増幅対象の遺伝子が収容される本体部、及び、前記本体部に個別に装着されて前記空間の前記上面を封止するための蓋部からなる反応容器を個別に用い、遺伝子の増幅処理を行なう遺伝子増幅装置であって、
前記反応容器の前記本体部が個別に挿入される容器挿入部を少なくとも1つ有するとともに前記容器挿入部に挿入された前記反応容器の温度を昇降させる機能を有する反応容器ホルダと、
前記反応容器ホルダの前記容器挿入部に挿入されたそれぞれの前記反応容器の前記本体部と前記蓋部との当接部分の近傍に配置され、該当接部分の温度を前記反応容器の前記本体部又は前記蓋部の耐熱温度よりも高い温度に加熱するヒートシール部と、を備えた遺伝子増幅装置。
【請求項2】
前記ヒートシール部は、前記反応容器を前記容器挿入部に保持した前記反応容器ホルダの上方に配置されて前記反応容器の前記蓋部に接し、前記蓋部の温度を所定温度に加熱する機能を有するヒートリッドの一部として設けられている請求項1に記載の遺伝子増幅装置。
【請求項3】
前記ヒートリッドは、前記反応容器ホルダの前記容器挿入部から上方へ突出した前記反応容器の前記蓋部と嵌合する窪みを下面に有するとともに、前記反応容器の前記蓋部が前記窪みに嵌め込まれたときに該反応容器の前記本体部と前記蓋部との当接部分の近傍に配置される部分を前記ヒートシール部として有する請求項2に記載の遺伝子増幅装置。
【請求項4】
本体部とその本体部の上部に装着された蓋部からなる反応容器の前記本体部が挿入される容器挿入部を有するとともに前記容器挿入部に挿入された前記反応容器の温度を昇降させる機能を有する反応容器ホルダと、
前記反応容器ホルダの前記容器挿入部に挿入された前記反応容器の前記本体部と前記蓋部との当接部分の近傍に配置され、該当接部分の温度を前記反応容器の前記本体部又は前記蓋部の耐熱温度よりも高い温度に加熱するヒートシール部と、を備え、
前記ヒートシール部は、前記反応容器を前記容器挿入部に保持した前記反応容器ホルダの上方に配置されて前記反応容器の前記蓋部に接し、前記蓋部の温度を所定温度に加熱する機能を有するヒートリッドの一部として設けられており、
前記ヒートリッドは、前記反応容器ホルダの前記容器挿入部から上方へ突出した前記反応容器の前記蓋部と嵌合する窪みを下面に有するとともに、前記反応容器の前記蓋部が前記窪みに嵌め込まれたときに該反応容器の前記本体部と前記蓋部との当接部分の近傍に配置される部分を前記ヒートシール部として有する、遺伝子増幅装置。
【請求項5】
前記ヒートリッドの昇温動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記ヒートリッドの一部が前記反応容器の前記本体部と前記蓋部の当接部分の近傍に配置された状態で、前記ヒートリッドの温度を前記反応容器の前記本体部又は前記蓋部耐熱温度よりも高い温度に昇温させるヒートシール動作を実行する機能を有する請求項3又は4に記載の遺伝子増幅装置。
【請求項6】
前記制御部は、遺伝子増幅処理を開始する前に前記ヒートシール動作を実行するように構成されている請求項に記載の遺伝子増幅装置。
【請求項7】
前記制御部は前記反応容器ホルダの昇降温動作も制御し、ヒートシール動作の実行中は前記反応容器ホルダの温度を昇温させないように構成されている請求項又はに記載の遺伝子増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子を収容した反応容器に対して加熱と冷却を繰り返し行なうことにより遺伝子の増幅を行なう遺伝子増幅装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子を増幅させる技術としてPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法が知られている。PCR法は、DNAを含む検体に試薬を添加し、その混合液を周期的に昇降温させることで、DNAを増幅するというものである。このようなPCR法を実行するために、検体と試薬を収容した反応容器を収容し、その反応容器の加熱と冷却を周期的に行なう遺伝子増幅処理を実行する遺伝子増幅装置(サーマルサイクラともいう。)が提案され、実施もなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
遺伝子増幅装置は、特許文献1にも開示されているように、反応容器を挿し込むための複数の容器挿入部を有する反応容器ホルダを備えた本体部と、本体部に開閉可能に取り付けられたカバー部を備えている。反応容器ホルダは熱伝導性のブロックによって構成され、本体部内に反応容器ホルダの温度を昇降させるペルチェ素子が設けられている。カバー部には、カバー部が閉じられたときに反応容器の本体部上面に取り付けられた蓋部を押圧するとともに、反応容器の蓋部を所定温度に加熱する機能を有するヒートリッドが設けられている。
【0004】
カバー部にヒートリッドが設けられていることで、カバー部が閉じられたときにヒートリッドによって蓋部が本体側へ押圧されて反応容器のシール性が向上し、反応容器外への反応液の蒸発が防止されるとともに、遺伝子増幅処理が実施される前にヒートリッドによって反応容器の蓋部を加熱しておくことで、遺伝子増幅処理で発生する水蒸気が蓋部で結露することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2016−519614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、遺伝子増幅装置に設置される反応容器の本体部の上部には蓋部が装着され、その蓋部をヒートリッドで押圧しながら所定温度に加熱することで、遺伝子増幅処理を実施しているときの反応液の蒸発と結露を防止している。しかし、このような従来の構成では、反応液による反応容器外への蒸発が完全には防止されていない場合があることがわかった。
【0007】
反応容器からの反応液の蒸発が起こると、遺伝子増幅処理を開始した時と終了した時で反応液量が異なってしまい、反応容器内の反応状態が変化するといった問題や、反応容器ホルダに設置された複数の反応容器間でプレートによる押圧力が不均一になることによって反応液の蒸発量も不均一になり、各反応容器内の反応液量がばらついて反応の正確な比較ができないといった問題がある。
【0008】
また、遺伝子増幅処理では反応容器が95℃程度の高温に加熱されて反応容器が熱変形し、遺伝子増幅処理が終了した反応容器の本体部と蓋部との密閉度が悪くなって蓋部が本体部から簡単に外れる状態になることが多かった。反応容器の蓋部が本体部から簡単に外れてしまうと、反応容器内の遺伝子増幅産物が外部へ漏れ、環境汚染やコンタミネーションを引き起こすという問題もあった。
【0009】
そこで、本発明は、遺伝子増幅処理の実施の前後にわたって反応容器のシール性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る遺伝子増幅装置は、本体部とその本体部の上部に装着された蓋部からなる反応容器の前記本体部が挿入される容器挿入部を有するとともに前記容器挿入部に挿入された前記反応容器の温度を昇降させる機能を有する反応容器ホルダと、前記反応容器ホルダの前記容器挿入部に挿入された前記反応容器の前記本体部と前記蓋部との当接部分の近傍に配置され、該当接部分の温度を前記反応容器の前記本体部又は前記蓋部の耐熱温度よりも高い温度に加熱するヒートシール部と、を備えている。
【0011】
反応容器の本体部と蓋部の材質はポリプロピレンなどの樹脂である。本体部と蓋部との当接部分の近傍に配置されるヒートシール部が該当接部分を本体部又は蓋部の材質の耐熱温度よりも高い温度になると、当接部分の樹脂が熱変形することによって本体部と蓋部が互いに接着され、反応容器がヒートシールされる。以下において、ヒートシール部を反応容器の本体部又は蓋部の耐熱温度よりも高い温度に加熱して本体部と蓋部の当接部分をヒートシールする動作を「ヒートシール動作」と称する。
【0012】
ヒートシール部は反応容器の本体部と蓋部との当接部分を加熱するものであるから、その機能を発揮することができる位置であれば反応容器ホルダ側に設けられていてもよいし、ヒートリッド側に設けられていてもよい。ただし、反応容器内の反応液の蒸発や本体部の熱変形を防止する観点から、反応容器ホルダ全体を反応容器の本体部又は蓋部の耐熱温度よりも高い温度に加熱することは好ましくないため、ヒートシール部を反応容器ホルダ側に設ける場合には、ヒートシール部の昇温動作を反応容器ホルダの昇降温動作と独立して行なわせる必要があるとともに、ヒートシール部と反応容器ホルダとが熱的に分離されている必要があり、簡単な構成でヒートシール部を実現すること困難である。
【0013】
そこで、本発明におけるヒートシール部は、前記反応容器を前記容器挿入部に保持した前記反応容器ホルダの上方に配置されて前記反応容器の前記蓋部に接し、前記蓋部の温度を所定温度に加熱する機能を有するヒートリッドの一部として設けられていることが好ましい。既述のように、ヒートリッドは反応容器ホルダに設置された反応容器の蓋部に接して該蓋部を加熱するために設けられているものである。したがって、ヒートリッドの一部が反応容器の本体部と蓋部との当接部分の近傍に配置されるようにすれば、ヒートリッドを本体部又は蓋部の耐熱温度よりも高い温度にまで昇温するだけで、新たなヒータ等を設けることなくヒートシール部を実現することができ、コストの上昇を抑制することができる。ヒートリッドは反応容器の蓋部に接するものであって本体部に直接的に接するものではないので、本体部を必要以上に加熱して反応液を蒸発させたり本体部を熱変形させたりすることがない。
【0014】
ヒートシール部をヒートリッドの一部として実現する構成の一例として、反応容器ホルダの容器挿入部から上方へ突出した反応容器の蓋部と嵌合する窪みをヒートリッドの下面に設け、反応容器の蓋部が窪みに嵌め込まれたときに該反応容器の本体部と蓋部との当接部分の近傍にヒートリッドの一部が配置されるようにすることが挙げられる。かかる構成にすることで、安価にヒートシール部を実現することができる。
【0015】
また、従来の遺伝子増幅装置では、ヒートリッドの下面が平面であることが一般的であり、平面で複数の反応容器の蓋部を押し付ける構造のため、蓋部を押圧する力が不均一になりやすいという問題があった。
【0016】
これに対し、ヒートリッドの下面に反応容器の蓋部と嵌合する窪みを設ければ、ヒートリッドが反応容器の蓋部を本体部側へ安定的にかつ均一に押圧することができるようになり、反応容器のシール性をより向上させることができる。
【0017】
また、本発明の遺伝子増幅装置は、上記のヒートシール動作を自動的に実行するように構成されていてもよい。具体的には、前記ヒートリッドの昇温動作を制御する制御部を備え、該制御部は、前記ヒートリッドの一部が前記反応容器の前記本体部と前記蓋部の当接部分の近傍に配置された状態で、前記ヒートリッドの温度を前記反応容器の前記本体部又は前記蓋部耐熱温度よりも高い温度に昇温させるヒートシール動作を実行する機能を有するようになっていてもよい。
【0018】
上記の場合、制御部は、遺伝子増幅処理を開始する前にヒートシール動作を実行するように構成されていることが好ましい。そうすれば、遺伝子増幅処理の前後にわたって反応容器の封止が保たれ、反応液の蒸発や漏れが防止される。
【0019】
制御部は、ヒートリッドの昇温動作とともに反応容器ホルダの昇降温動作も制御するものであってよい。その場合、ヒートシール動作の実行中は反応容器ホルダの温度を昇温させないように構成されていることが好ましい。そうすれば、ヒートシール動作中における反応液の蒸発が抑制される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る遺伝子増幅装置は、反応容器の本体部と蓋部との当接部分の近傍に配置され、該当接部分の温度を本体部又は蓋部の耐熱温度よりも高い温度に加熱するヒートシール部を備えているので、反応容器の本体部と蓋部の当接部分をヒートシールすることができる。反応容器の本体部と蓋部の当接部分をヒートシールすることにより、反応容器のシール性が大幅に向上し、反応容器からの反応液の蒸発や漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】遺伝子増幅装置の一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の遺伝子増幅装置に設置される反応容器を示す断面図である。
図3】同実施例のヒートリッドを示す断面図である。
図4】同実施例のヒートシール動作時及び遺伝子増幅処理時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る遺伝子増幅装置の一実施例について、図1から図4を用いて説明する。
【0023】
図1に示されているように、この実施例の遺伝子増幅装置は、反応容器ホルダ2、ヒートリッド8、ヒートリッド駆動機構20及び制御部22を備えている。増幅対象の遺伝子は試薬とともに反応容器14内に収容され、反応容器ホルダ2に設置される。反応容器ホルダ2の上方に上下動可能なヒートリッド8が設けられている。ヒートリッド8は、反応容器ホルダ2の上方でヒートリッド駆動機構20によって上下動させられる。
【0024】
反応容器ホルダ2は伝熱ブロック4と温度調節機構6によって構成されている。伝熱ブロック4は、上方が開口した穴からなる容器挿入部4aを複数備えており、その容器挿入部4aに反応容器14の本体部16が挿入される。温度調節機構6は例えばペルチェ素子などによって構成され、伝熱ブロック4の温度を昇降させる機能を有する。
【0025】
図2に示されているように、反応容器14は、本体部16の上部に蓋部18が装着された状態で反応容器ホルダ2に設置される。蓋部18の下面には本体部16の上端部と嵌合する窪みが設けられており、その窪みに本体部16の上端部が嵌め込まれることで、本体部16の上面開口を封止して本体部16内に収容された反応液の蒸発や漏れを防止する。この実施例で示されている反応容器14の蓋部18は、下端部に周方向へ広がる鍔部18aが設けられている。本体部16の上端部を嵌め込むための窪みは鍔部18の内側に設けられている。
【0026】
図1に示されているように、反応容器14が反応容器ホルダ2の容器挿入部4aに設置されると、反応容器14の本体部16は容器挿入部4a内に収容されるものの、本体部16の上部に装着された蓋部18は伝熱ブロック4の上面から上方へ突出した状態となる。
【0027】
ヒートリッド8は伝熱ブロック10と伝熱ブロック10を加熱するヒータなどの加熱機構12からなる。図3に示されているように、伝熱ブロック10の下面には、伝熱ブロック4の上面から上方へ突出した反応容器14の蓋部18と嵌合する窪み10aが設けられている。遺伝子増幅処理が実施される際は、ヒートリッド駆動機構20によってヒートリッド8が反応容器ホルダ2の上方から下降し、伝熱ブロック10の窪み10aに蓋部18が嵌め込まれて図1の状態となる。このとき、伝熱ブロック10の下面における各窪み10aの周囲の面10b(図3参照)は、反応容器14の蓋部18に設けられた鍔部18aの上面に接する。
【0028】
反応容器14の蓋部18が、伝熱ブロック10の窪み10aに嵌め込まれ、さらにヒートリッド8によって本体部16側へ押圧されることで、図4に示されているように、窪み10aの内面と蓋部18の外面とが密接するとともに、窪み10aの周囲の面10bと鍔部18aの上面とが密接し、蓋部18が安定的にかつ均一に反応容器ホルダ2側へ押圧される。
【0029】
図4の状態になると、ヒートリッド8の伝熱ブロック10の一部が、二点鎖線の円で示された本体部16と蓋部18との当接部分30の近傍に配置される。この状態で伝熱ブロック10の温度を本体部16又は蓋部18の耐熱温度よりも高い温度にまで昇温すると、当接部分30の樹脂が熱変形して本体部16と蓋部18が接着され、ヒートシールされる。反応容器14の本体部16と蓋部18の主な材質はポリプロピレンなどの樹脂である。本体部14と蓋部18の主な材質がポリプロピレンである場合には、本体部14及び蓋部18の耐熱温度は121℃である。したがって、伝熱ブロック10の温度を121℃よりも高い温度(例えば、125℃)にまで昇温すれば、反応容器14のヒートシールを行なうことができる。
【0030】
反応容器14の当接部分30の近傍に配置される伝熱ブロック10の一部は、反応容器14の当接部分30のヒートシールを行なうヒートシール部をなす。このようにして反応容器14をヒートシールする動作をヒートシール動作という。
【0031】
図1に戻って、反応容器ホルダ2の温度調節機構6、ヒートリッド8の加熱機構12及びヒートリッド駆動機構20の動作は制御部22によって制御される。制御部22は、ヒートシール動作部24と遺伝子増幅処理部26を備えている。制御部22はこの遺伝子増幅装置専用のコンピュータ又は汎用のコンピュータによって実現することができる。ヒートシール動作部24及び遺伝子増幅処理部26は、制御部22を実現するコンピュータ内に設けられた記憶装置に格納されたプログラムを中央演算素子(CPU)が実行することによって実現される機能である。
【0032】
ヒートシール動作部24は、例えば後述する遺伝子増幅処理を実行する前のタイミングで、上述のヒートシール動作を実行するように構成されている。ヒートシール動作では、伝熱ブロック10の温度がヒートシール動作用の温度として予め設定された温度(例えば125℃)になるように、伝熱ブロック10に取り付けられた温度センサ(図示は省略)からの信号に基づいて加熱機構12の出力が制御される。このヒートシール動作を実行する際、温度調節機構6の動作はオフでよい。
【0033】
遺伝子増幅処理部26は、ユーザから遺伝子増幅処理を開始すべき旨の入力があったときに、遺伝子増幅処理を開始するように構成されている。通常、ユーザは反応容器ホルダ2に反応容器14を設置し、装置カバー(図示は省略)を閉じた段階で、遺伝子増幅処理の開始を入力する。遺伝子増幅処理の開始が入力されると、遺伝子増幅処理部26は、ヒートリッド駆動機構20を制御してヒートリッド8を下降させ、図1の状態にする。
【0034】
従来の遺伝子増幅装置であれば、この状態で温度調節機構6を制御して伝熱ブロック4の温度を周期的に昇降温させる遺伝子増幅処理を開始するのであるが、この実施例では、制御部22にヒートシール動作部が設けられていることによって、遺伝子増幅処理が開始される前にヒートシール動作が実行される。このヒートシール動作により、反応容器14の本体部16と蓋部18の当接部分30がヒートシールされ、反応容器14のシール性が向上する。ヒートシール動作では、蓋部18がその耐熱温度よりも高い温度に加熱されることによって熱変形することとなるが、本体部16内の反応液に影響はない。
【0035】
なお、以上において説明した実施例では、ヒートリッド8(伝熱ブロック10)の一部がヒートシール部をなしているが、ヒートシール部をヒートリッド8とは別に設けてもよい。要は、反応容器ホルダ2に設置された反応容器14の本体部16と蓋部18の当接部分30(図4参照)の近傍に、その当接部分30を本体部16又は蓋部18の耐熱温度よりも高い温度に加熱することができるようになっているものであれば、ヒートシール部を実現することができる。ただし、反応容器ホルダ2の伝熱部材4を反応容器14の耐熱温度よりも高い温度に昇温させると、反応液の蒸発や本体部16の熱変形などの問題があるため、従来の遺伝子増幅装置の構成のままでヒートシール部を実現することはできない。
【符号の説明】
【0036】
2 反応容器ホルダ
4,10 伝熱ブロック
6 温度調節機構
8 ヒートリッド
10a 窪み
12 加熱機構
14 反応容器
16 本体部
18 蓋部
20 ヒートリッド駆動機構
22 制御部
24 ヒートシール動作部
26 遺伝子増幅処理部
30 当接部分
図1
図2
図3
図4