(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.原料装入装置>
先ず、本実施の形態で用いられる原料装入装置について説明する。
図1は、ベルレス式の原料装入装置の構成の概略を模式的に示す説明図である。以下、並列ホッパー方式の原料装入装置で説明するが、本発明は垂直型など、その他の原料装入装置へ適用できる。
【0019】
原料装入装置10は、並列ホッパー方式の原料装入装置であり、高炉20に原料を装入する。原料装入装置10は、複数、例えば2つの炉頂ホッパー11a、11b、集合シュート12、垂直シュート13、及び旋回シュート14を有している。炉頂ホッパー11a、11b、集合シュート12、垂直シュート13、旋回シュート14は、上方から下方に向けてこの順で配置されている。
【0020】
炉頂ホッパー11a、11bは、並列に対向配置され、且つ各炉頂ホッパー11a、11bの排出口が垂直シュート13の中心軸から偏心して配置されている。各炉頂ホッパー11a、11bの排出口には、原料の流量を調整する流量調整ゲート15a、15bが設けられている。炉頂ホッパー11a、11bには、当該炉頂ホッパー11の重量を測定するロードセル16a、16bが設けられている。なお、炉頂ホッパー11の重量を測定する荷重測定器は、ロードセル16に限定されず、他の荷重測定器を任意に用いることができる。各炉頂ホッパー11a、11bには、装入1回分の原料Rが一時的に保管される。一方の炉頂ホッパー11a内の原料Rを炉内に装入する間に、もう一方の炉頂ホッパー11bに原料Rを受け入れる。これを交互に繰り返すことで、原料Rの受け入れ、装入にかかる時間を短縮している。
【0021】
なお、炉頂ホッパー11aの原料Rは、例えば高炉20内で鉱石層を形成するための混合材料である。本実施の形態では混合材料として、母相材料である鉱石と、当該母相材料に添加される添加材料である小塊コークスとが混合された材料を用いる例について説明する。また、炉頂ホッパー11bの原料Rは、例えば高炉20内でコークス層を形成するためのコークスである。
【0022】
集合シュート12は、炉頂ホッパー11a、11bから排出された原料Rを集めて垂直シュート13に流す。
【0023】
垂直シュート13は略円筒形状を有し、集合シュート12の下面に接続されて、当該集合シュート12から排出された原料Rを旋回シュート14に流す。
【0024】
旋回シュート14は、垂直シュート13から排出された原料Rを受け、その先端から高炉20内に原料Rを装入する。旋回シュート14は、図示しない駆動機構によって、垂直シュート13を中心に高炉20の円周方向に回転自在に構成されている。また旋回シュート14は、垂直シュート13を中心に上下方向に傾動(回動)自在に構成されており、旋回シュート14の回転半径を任意に変更できる。
【0025】
そして、原料装入装置10では、炉頂ホッパー11a、11b内の原料Rが、流量調整ゲート15a、15bで流量調整されて、集合シュート12に排出される。原料Rは、集合シュート12、垂直シュート13を経て旋回シュート14上に落下し、当該旋回シュート14の先端から高炉20内に装入される。
【0026】
なお、以下の説明においては、上述した炉頂ホッパー11を単にホッパーという場合がある。
【0027】
<2.ホッパーからの混合原料の挙動>
本発明にかかる高炉の原料混合比率推定方法は、ホッパーから排出される混合原料の体積流量速度を一定と見做すことができるという新たな知見に基づくものである。かかる知見を得るにあたり、本発明者は以下のシミュレーションを行い、ホッパーからの原料の挙動を調査した。
【0028】
シミュレーションは、密度が異なる2種類の原料、すなわち焼結鉱と小塊コークスをホッパー内で混合し、さらにこの混合原料をホッパーから排出するという条件において、離散要素法(DEM:Discrete Element Method)を用いて行った。また、このシミュレーションの計算条件として、焼結鉱の平均粒子径を25mm、焼結鉱の重量を28tonとし、小塊コークスの平均粒子径を35mm、小塊コークスの重量を1.8tonとした。
【0029】
シミュレーション結果を
図2に示す。
図2(a)は、ホッパーから排出される混合原料の体積流量速度の経時変化を示し、
図2(b)は、ホッパーから排出される焼結鉱の質量流量速度の経時変化を示し、
図2(c)は、ホッパーから排出される小塊コークスの質量流量速度の経時変化を示している。
図2(a)〜(c)において横軸は経過時間を示し、ホッパーからの原料排出開始時間を“0”とし、原料排出完了時間を“1”として無次元化している。
【0030】
図2を参照すると、混合原料の体積流量速度は時間が経過してもほぼ一定であることが確認でき、新たな知見を得るに至った。
【0031】
なお、三輪茂雄著「粉体流体工学(1972年)」のP.212−213には、下記式(4)で定義される粉体(以下、混合原料に置き換えて説明する)の質量流量速度Wが一定であることが記載されている。
【0032】
【数1】
但し、W:混合原料の質量流量速度、ρ:混合原料の嵩密度、D
p:混合原料の粒子径、f:摩擦係数、φ:ホッパーの開き角度、D
0:ホッパーの排出口の径
【0033】
ここで、混合原料の体積流量速度Vは、下記式(5)で表される。そうすると、上述した混合原料の体積流量速度Vが一定であるという新たな知見は、換言すれば、混合原料の嵩密度ρが一定であるともいえる。すなわち、ホッパー内で複数種の原料が流動していても、ホッパーから排出される際の混合原料の嵩密度ρは一定と見做すことができる。
V=W/ρ ・・・・(5)
但し、V:混合原料の体積流量速度、W:混合原料の質量流量速度、ρ:混合原料の嵩密度
【0034】
一方、従来、原料の質量流量速度Wは一定であると考えられていたが、例えば本発明のように複数種の原料を混合する場合、その混合原料の嵩密度ρが一定として扱えることは全く想定されていなかった。したがって、混合原料の体積流量速度Vが一定であることは従来にはない、極めて新しい知見なのである。
【0035】
翻ってみても、上記式(4)は単一原料を想定した式であり、複数種の原料が混合された混合原料を想定していなかった。かかる観点からも、混合原料の体積流量速度Vが一定であるという知見は新しいものであると言える。
【0036】
<3.第1の実施の形態にかかる高炉の原料混合比率推定方法>
次に、上述した知見に基づいてなされた、第1の実施の形態にかかる高炉の原料混合比率推定方法について説明する。
図3は、かかる高炉の原料混合比率推定方法の工程の例を示すフローチャートである。
【0037】
(ステップS1)
先ず、ホッパーから排出される混合原料の体積流量速度を決定する。この混合原料の体積流量速度は種々の方法で決定でき、例えば実測値を用いて決定してもよいし、理論式を用いて決定してもよいし、混合原料の排出時間を用いて推定してもよい。
【0038】
理論式を用いる場合、例えば下記式(6)を用いて混合原料の体積流量速度Vを決定する。この式(6)は、上述したように式(4)において混合原料の嵩密度ρを一定と見做せるため、当該式(4)を嵩密度ρで除することにより導出される。なお、混合原料の粒子径D
pは、当該バッチの混合原料をホッパーに投入する前にサンプリングし、その粒度を篩で測定することにより決定できる。摩擦係数fは、混合原料の安息角を測定することで推定できる。
【0039】
【数2】
但し、W:混合原料の質量流量速度、ρ:混合原料の嵩密度、D
p:混合原料の粒子径、f:摩擦係数、φ:ホッパーの開き角度、D
0:ホッパーの排出口の径
【0040】
また、混合原料の排出時間を用いる場合、例えば式(7)を用いて混合原料の体積流量速度Vを決定する。具体的には、ホッパーに投入した混合原料の重量Qと全量排出に要した時間θを求め、式(7)から混合原料の体積流量速度Vを決定する。なお、排出時間θはゲート開度が同一条件であれば、当該バッチの排出時間に代えて、前バッチにおける混合原料の排出時間を用いてもよい。
V=Q/ρθ ・・・・(7)
【0041】
(ステップS2)
次に、ホッパーに設けられたロードセルにより、内容物である混合原料を含むホッパーの重量Q
hを連続的に測定する。
【0042】
(ステップS3)
次に、ステップS2で測定されたホッパーの重量Q
hに基づいて、所定時刻tにおけるホッパーの重量Q
hの変化量dQ
h/dtを求める。このdQ
h/dtを、所定時刻tにおける混合原料の質量流量速度W
tとする。
【0043】
(ステップS4)
このとき、下記(8)、(9)の関係式が成立する。式中の添え字A、Bは粒子銘柄であり、Aは母相原料である鉱石を示し、Bは添加原料である小塊コークスを示している。
W
t=W
A,t+W
B,t ・・・・(8)
V=W
A,t/ρ
A+W
B,t/ρ
B ・・・・(9)
但し、W
t:所定時刻tにおける混合原料の質量流量速度、W
A,t:所定時刻tにおける鉱石の質量流量速度、W
B,t:所定時刻tにおける小塊コークスの質量流量速度、V:混合原料の体積流量速度、ρ
A:鉱石の嵩密度、ρ
B:小塊コークスの嵩密度
【0044】
上記式(8)、(9)を解くことにより、下記式(1)、(2)が求まる。そして、ステップS1で決定した混合原料の体積流量速度Vを一定とし、ステップS3で算出した混合原料の質量流量速度W
tに基づいて、鉱石の質量流量速度W
A,tと小塊コークスの質量流量速度W
B,tを算出する。
W
A,t=(ρ
Aρ
BV−ρ
AW
t)/(ρ
B−ρ
A) ・・・・(1)
W
B,t=W
t−W
A,t ・・・・(2)
【0045】
(ステップS5)
次に、ステップS3で算出した混合原料の質量流量速度W
tと、ステップS4で算出した小塊コークスの質量流量速度W
B,tとに基づき、下記式(3)を用いて、混合原料における添加原料の混合比率M
tを推定する。
M
t=W
B,t/W
t ・・・・(3)
【0046】
以上の実施の形態によれば、ステップS1〜S5を行うことによって、混合原料における小塊コークスの混合比率を適切に推定することができる。しかも、この混合比率の推定にあたり、実際に測定が必要となるものはロードセルによるホッパーの重量のみであり、従来のように2つの重量測定手段、特にコイルセンサーは不要となる。したがって、混合比率の推定を簡易に行うことができる。
【0047】
そして、このように適切に推定された混合比率は、高炉の原料装入工程において、次のように活用することができる。
【0048】
例えば原料装入装置には、炉頂ホッパーへ混合原料を投入する際、その混合原料の偏析を調整する偏析調整装置が設けられる。そこで、本発明の方法で推定される混合比率の経時的変化が均一になるように、偏析調整装置を制御することができる。
【0049】
また、例えば本発明の方法で推定される混合比率に基づいて、混合原料を高炉内に装入する際に、旋回シュートの角度を適宜制御する。そうすると、高炉内において、炉半径方向で小塊コークスの消耗が大きい位置に、小塊コークスの混合比率が高い混合原料を装入することができる。
【0050】
なお、以上の実施の形態では、母相原料が鉱石であり、添加原料が小塊コークスである場合について説明したが、母相原料と添加原料はこれに限定されない。本実施の形態は、母相原料として、種々の比率で構成される焼結鉱、塊鉱石、ペレットの混合物に適用できる。また本実施の形態は、添加原料として、フェロコークス、含炭塊成鉱、還元鉄粉、スクラップ成鉱等の高炉用原料や、石灰石、蛇紋岩、橄欖岩、硅石等の副原料を用いた場合にも適用することができる。すなわち、添加原料の粒子が、母相原料の粒子と密度差があれば、本実施の形態を適用して添加原料の混合比率を推定することができる。
【0051】
<4.第2の実施の形態にかかる原料混合比率推定方法>
次に、第2の実施の形態にかかる2種類以上の添加原料がある場合の原料混合比率推定方法について説明する。
図4は、かかる高炉の原料混合比率推定方法の工程の例を示すフローチャートである。本実施の形態では、母相原料A(鉱石)、添加原料B(小塊コークス)、添加原料C(硅石)とし、各原料A、B、Cの嵩密度はρ
A>ρ
C>ρ
Bとする。なお、添加原料Cは硅石でなくてもよい。
【0052】
(ステップS1〜S3)
第2の実施の形態におけるステップS1〜S3は、それぞれ上述した第1の実施の形態におけるステップS1〜S3と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
(ステップS4’)
母相原料Aと嵩密度が近い添加原料Cを混合した状態を、1つの混合粒子と考え、上記式(8)、(9)を下記式(8’)、(9’)とする。
W
t=W
AC,t+W
B,t ・・・・(8’)
V=W
AC,t/ρ
AC+W
B,t/ρ
B ・・・・(9’)
但し、W
AC,t:所定時刻tにおける鉱石と硅石を混合した状態の質量流量速度、ρ
AC:鉱石と硅石を混合した状態の嵩密度
【0054】
上記式(8’)、(9’)を解くことにより、下記式(1’)、(2’)が求まる。そして、ステップS1で決定した混合原料の体積流量速度Vを一定とし、ステップS3で算出した混合原料の質量流量速度W
tに基づいて、鉱石及び硅石の質量流量速度W
AC,tと小塊コークスの質量流量速度W
B,tを算出する。
W
AC,t=(ρ
ACρ
BV−ρ
ACW
t)/(ρ
B−ρ
AC) ・・・・(1’)
W
B,t=W
t−W
AC,t ・・・・(2’)
【0055】
(ステップS5’)
次に、ステップS4’で算出した小塊コークスの質量流量速度W
B,tを用いて、所定時刻tにおける鉱石及び硅石の体積流量速度V
AC,tを、下記式(10)を用いて算出する。
V
AC,t=V−W
B,t/ρ
B (10)
【0056】
(ステップS6’)
次に、W
AC,tから母相原料Aと添加原料Cの質量流量速度をそれぞれ分離し、求める。式(8’)、(9’)は、式(8’’)、(9’’)に変更される。
W
AC,t=W
A,t+W
C,t ・・・・(8’’)
V
AC,t=W
A,t/ρ
A+W
C,t/ρ
C ・・・・(9’’)
但し、W
C,t:所定時刻tにおける硅石の質量流量速度
【0057】
上記式(8’’)、(9’’)を解くことにより、下記式(1’’)、(2’’)が求まり、これらの式から、鉱石の質量流量速度W
A,tと硅石の質量流量速度W
C,tを求める。
W
A,t=(ρ
Aρ
CV
AC,t−ρ
AW
AC,t)/(ρ
C−ρ
A) ・・・・(1’’)
W
C,t=W
AC,t−W
A,t ・・・・(2’’)
【0058】
(ステップS7’)
次に、ステップS3で算出した混合原料の質量流量速度W
tと、ステップS4’で算出した小塊コークスの質量流量速度W
B,tと、ステップS6’で算出した硅石の質量流量速度W
C,tに基づき、下記式(3’)、(3’’)を用いて、混合原料における添加原料B、Cの混合比率M
B,t、M
C,tを推定する。
M
B,t=W
B,t/W
t ・・・・(3’)
M
C,t=W
C,t/W
t ・・・・(3’’)
【0059】
以上の実施の形態によれば、ステップS1〜S7’を行うことによって、複数銘柄の混合原料における添加原料の混合比率を適切に推定することができる。
【0060】
なお、以上の実施の形態では、母相原料Aが鉱石であり、添加原料Bが小塊コークス、添加原料Cが硅石である場合について説明したが、母相原料と添加原料はこれに限定されない。本実施の形態は、母相原料として、種々の比率で構成される焼結鉱、塊鉱石、ペレットの混合物に適用できる。また本実施の形態は、添加原料として、フェロコークス、含炭塊成鉱、還元鉄粉、スクラップ成鉱等の高炉用原料や、石灰石、蛇紋岩、橄欖岩等の副原料を用いた場合にも適用することができる。すなわち、添加原料の粒子が、母相原料の粒子と密度差があれば、本実施の形態を適用して添加原料の混合比率を推定することができ、複数種の添加原料がある場合には、母相原料との密度差が大きいものから順番に質量流量速度を求めていけばよい。
【0061】
例えば添加原料がB、C、Dの3種類の場合であって、嵩密度がρ
A>ρ
D>ρ
C>ρ
Bの場合、添加原料B、C、Dのうち、母相原料Aと嵩密度が近い添加原料C、Dを混合した状態を1つの混合粒子と考えて、ステップS4’〜S6’を行い、添加原料Bの質量流量速度と、添加原料C、Dを混合した状態の質量流量速度を算出する。その後、添加原料C、Dのうち、母相原料Aと嵩密度が近い添加原料Dを混合した状態を1つの混合粒子と考えて、さらにステップS4’〜S6’を行い、添加原料Cの質量流量速度と添加原料Dの質量流量速度を算出する。そして、ステップS7’において、混合原料における添加原料B、C、Dの混合比率を推定する。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
以上の実施の形態では、本発明を炉頂ホッパーに適用した場合について説明したが、他のすべてのホッパー(例えばサージホッパー等)に適用することができる。
【実施例1】
【0064】
以下、実施例と比較例に基づいて本発明(第1の実施の形態)の効果について説明する。具体的には、上述した式(3)で推定される添加原料の混合比率M
tの基となる、式(2)で算出される小塊コークスの質量流量速度W
B,tの検証を行う。
【0065】
実施例においては、実炉(高炉)にて、鉱石80tonと小塊コークス1.9tonを搬送し、混合原料排出時の炉頂ホッパーの重量Q
hをロードセルにより連続的に測定した。そして、所定時刻における炉頂ホッパーの重量変化量dQ
h/dt、すなわち所定時刻における混合原料の質量流量速度W
tを求めた。このように求められた混合原料の質量流量速度W
tを
図5に示す。
【0066】
また実施例において、炉頂ホッパーから排出される混合原料の体積流量速度Vは、上述した式(6)を用いて求めた。式(6)では、混合原料の粒子径D
pを18mmとし、摩擦係数fを0.4とし、炉頂ホッパーの開き角度φを45度とし、ホッパーの排出口の径D
0を655mmとした。そうすると、混合原料の体積流量速度Vは0.71m
3/sと求まった。
【0067】
そして、これら混合原料の質量流量速度W
tと混合原料の体積流量速度Vに基づき、上述した式(2)を用いて小塊コークスの質量流量速度W
B,tを算出した。この際、鉱石の嵩密度ρ
Aを1.8ton/m
3とし、小塊コークスの嵩密度ρ
Bを0.5ton/m
3とした。その結果、小塊コークスの質量流量速度W
B,tが
図6に示すように求まった。
【0068】
一方、比較例においては、実炉(高炉)の相似形となる1/5縮尺の試験装置を用いて実験を行った。炉頂ホッパーから排出される混合原料を所定のサンプリング装置で回収し、各時間帯の小塊コークスの重量を測定した。その結果、当該小塊コークスの質量流量速度は
図7に示すように求まった。
【0069】
実施例の
図6と比較例の
図7を比較すると、小塊コークスの質量流量速度の経時変化の傾向は非常に良い対応関係にある。したがって、本発明で算出される小塊コークスの質量流量速度は、その精度が極めて高いことが分かった。そして、当該小塊コークスの質量流量速度に基づいて推定される添加原料の混合比率も、その精度が極めて高いことが分かった。
【実施例2】
【0070】
以下、本発明(第2の実施の形態)の効果について説明する。具体的には、母相原料A(鉱石)に対して、複数種の添加原料B(小塊コークス)、添加原料C(硅石)を混合した時の質量流量速度W
B,tとW
C,t(混合比率M
B,tとM
C,t)の検証を、離散要素法(DEM)を用いて行った。本検証においては、焼結鉱の平均粒子径を25mm、焼結鉱の重量を28tonとし、小塊コークスの平均粒子径を35mm、小塊コークスの重量を1.8ton、硅石の平均粒子径を30mm、硅石の重量を3.0tonとした。混合した全粒子をホッパーに装入し、その後、ホッパーから排出し、排出された粒子の銘柄と重量を調査した。
【0071】
小塊コークスと硅石の混合比率の経時変化をDEMによりシミュレーションした結果(実績値)と、式(3’)、(3’’)による推定値を
図8、9に示す。この際、焼結鉱の嵩密度ρ
Aを1.8ton/m
3とし、小塊コークスの嵩密度ρ
Bを0.5ton/m
3、硅石の嵩密度ρ
Cを1.15ton/m
3とした。さらに、焼結鉱と硅石が混合状態にあるときの嵩密度ρ
ACを1.7ton/m
3とした。
【0072】
図8と
図9を確認すると、小塊コークス、硅石の混合比率の時間変化の傾向は、DEMでシミュレートした実績値と、式(3’)、(3’’)による推定値で非常に良い対応関係にある。したがって、本発明で算出される複数の銘柄を添加原料とした場合においても、添加原料の質量流量速度は、その精度が極めて高いことが分かった。