(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹状孔部は、当該凹状孔部の内側面に、当該凹状孔部の径よりも小さい径で形成された複数の第二凹凸部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の発光素子。
前記第二基板は、波長400nm以上800nm以下の光に対して透光性を有する材料で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光素子。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10は、上記特許文献1に開示された発光素子を模式的に示す図面である。
図10に示す発光素子100は、蛍光体を含む発光部101と、発光部101の上面に接触して形成された透光性基板102とを有する。透光性基板102の、発光部101とは反対側の面には、ナノメートルオーダーの径を有する微細な凹凸構造103が形成されている。
【0007】
図11は、発光素子100に対して励起光が照射された場合の光線の進行を模式的に示す図面である。励起光111が、透光性基板102内を透過して発光部101に入射されると、発光部101に含まれる蛍光体が励起され、蛍光112が放射される。この蛍光112は、透光性基板102内を透過して、凹凸構造103から外部に取り出される。
【0008】
しかし、
図11に示すように、蛍光112の一部は、透光性基板102内を基板の面に平行なd2方向に進行する。この結果、透光性基板102から取り出される蛍光は、面方向に拡がりを有する。この結果、発光素子100から射出される蛍光のエタンデュが大きくなってしまう。このようにd2方向に蛍光112の一部が進行する理由としては、発光部101内に含まれる蛍光体粒子の粒界での反射、拡散や、透光性基板102の光取り出し面側の面での反射、透光性基板102の光取り出し面とは反対側の面における反射などが考えられる。なお、透光性基板102は微細な凹凸構造103が形成されているものの、完全には全反射を防止することができず、一部の蛍光112はこの面で反射される。
【0009】
例えば、発光素子100から取り出される蛍光をプロジェクタ用の光源に利用することを想定した場合、プロジェクタに含まれる光学系は、所定の範囲内のエタンデュを有する光束しか取り込めないように構成されることが一般的である。つまり、特許文献1の構成では、取り出された光の一部の光しか利用できないこととなってしまい、光の利用効率が低い。この問題は、プロジェクタ用途に限られず、当該発光素子100から取り出される蛍光を利用する一般的な光学部品に対して生じ得る。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、発光面積を限定的にして高い輝度を実現することのできる発光素子及び蛍光光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る発光素子は、
第一基板と、
前記第一基板の上層に形成された反射層と、
前記反射層の上層に形成された、蛍光体を含む蛍光プレートと、
前記蛍光プレートの上層に形成された、透光性の第二基板とを有し、
前記第二基板は、
前記蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面に形成され、マイクロメートルオーダーの径で、前記蛍光プレートの面に達しない深さを有する、複数の凹状孔部と、
前記蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面の、少なくとも複数の前記凹状孔部に挟まれた領域において、ナノメートルオーダーの径で形成された複数の第一凹凸部と、を有することを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、第二基板には、蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面に、マイクロメートルオーダーの径を有する複数の凹状孔部が形成されている。このため、蛍光プレートから放射された蛍光が、第二基板内を進行するにあたり、当該基板の面に平行な方向に進行したとしても、凹状孔部に達した後に外部に取り出されるか、又は進行方向が変更される。すなわち、この凹状孔部が存在することによって、蛍光が第二基板内を進行する際に、基板の面に平行な方向に進行する距離が制限される。この結果、第二基板から取り出される蛍光の領域が制限され、高輝度の光源が実現される。
【0013】
また、第二基板内に設けられた凹状孔部は、蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面から、蛍光プレートの面に達しない深さを有する。すなわち、蛍光プレートの面は大気には曝露されておらず、第二基板に覆われている。この結果、蛍光プレートによる発熱を第二基板によって排熱する効果は、ほとんど損なわれない。
【0014】
また、第二基板の、蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面、すなわち光取り出し面には、凹状孔部よりも極めて微細な、ナノメートルオーダーの第一凹凸部が形成されている。このため、蛍光が第二基板の光取り出し面で全反射される量が低減される。
【0015】
つまり、ナノメートルオーダーの径を有する第一凹凸部は、蛍光が光取り出し面で全反射する光量を削減する目的で設けられている。これに対し、マイクロメートルオーダーの径を有する凹状孔部は、第二基板内を面方向に進行する蛍光の拡がりを制限する目的で設けられている。
【0016】
従って、上記の構成によれば、発光効率を低下させることなく、輝度を高めた発光素子が実現される。
【0017】
なお、第一凹凸部の径は、300nm以上460nm以下で構成されており、凹状孔部の径は、10μm以上70μm以下で構成されているものとすることができる。
【0018】
第二基板は、波長400nm以上800nm以下の光に対して透光性を有する材料で構成されるものとすることができる。より詳細には、前記第二基板は、サファイア、GaN、MgO、又はSiCのいずれかを少なくとも含む材料で構成されることができる。
【0019】
前記第二基板は、前記第一基板の面に平行な方向に関し、前記蛍光プレートと同等の幅を有するものとしても構わない。
【0020】
上述したように、第二基板には複数の凹状孔部が設けられており、第二基板の面に平行な方向に係る蛍光の拡がりは、この凹状孔部によって制限される。このため、第二基板を蛍光プレートと同等の幅で実現しても、蛍光プレートから発せられた蛍光の全て又は大部分を、第二基板の蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面、すなわち光取り出し面から外部に取り出すことができる。
【0021】
前記凹状孔部は、当該凹状孔部の内側面に、当該凹状孔部の径よりも小さい径で形成された複数の第二凹凸部を有するものとしても構わない。
【0022】
このような構成とすることで、第二基板内を進行した蛍光が、凹状孔部の側面に達した後、当該面で反射される光量を減らし、当該凹状孔部の側面から直接外部に取り出す光量を増やすことができる。つまり、凹状孔部の側面が光拡散面を構成する。
【0023】
この第二凹凸部は、第二基板に対して凹状孔部を設けるときに形成されることができる。例えば、第二基板の面(蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面)の所定の箇所にレーザを照射したり、エッチングを施したり、フロスト加工を施すことで、凹状孔部を形成することができる。この加工の過程で、凹状孔部の内側面に微細な凹凸(上記第二凹凸部)が形成されるものとすることができる。
【0024】
前記第二基板の、前記蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面は、
複数の前記凹状孔部が形成された第一領域と、
前記第一領域の外側であって、前記凹状孔部が形成されていない第二領域とを有するものとすることができる。
【0025】
上述したように、第二基板に凹状孔部が設けられることで、第二基板内を面方向に進行する蛍光の拡がりが制限される。このため、蛍光が進行しない領域には凹状孔部の形成を行わない構成とすることができる。かかる構成とすることで、凹状孔部を形成する数を少なくすることができるため、製造工程の簡素化が図られる。
【0026】
本発明に係る蛍光光源装置は、
前記発光素子と、
励起光を射出する励起光源とを有し、
前記励起光は、前記第二基板の、前記蛍光プレートが形成されている側とは反対側の面であって、少なくとも前記第一凹凸部が形成されている領域内に照射されることを特徴とする。
【0027】
上記構成によれば、発光効率を低下させることなく、輝度を高めた蛍光光源装置が実現される。
【0028】
励起光の波長は、例えば400nm以上480nm以下とすることができる。この場合、470nm以上700nm以下の蛍光が放射される蛍光光源が実現される。
【0029】
前記凹状孔部は、前記励起光が照射される領域よりも外側に形成されているものとしても構わない。
【0030】
上述したように、凹状孔部は、第二基板内を面方向に進行する蛍光の拡がりを制限する目的で設けられている。このため、凹状孔部が設けられている第二基板の領域に励起光が照射されなくても、上記の効果にほとんど影響がない。かかる構成とすれば、凹状孔部を形成する数を少なくすることができるため、製造工程の簡素化が図られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、発光面積を限定的にして高い輝度を実現することのできる発光素子及び蛍光光源装置が実現される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の発光素子及び蛍光光源装置の構成につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図において、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致しない。
【0034】
[構成]
図1は、一実施形態の蛍光光源装置の構成を模式的に示す図面である。
図1に示す蛍光光源装置1は、励起光源2と、ダイクロイックミラー3と、発光素子10とを備える。
【0035】
励起光源2は、例えば波長が445nm以上465nm以下の青色領域の光を出射する半導体レーザ素子を含む構成である。励起光源2は、必要に応じてコリメータレンズなどの光学系を備えていても構わない。
【0036】
発光素子10は、後述するように蛍光体を含む構成である。励起光源2から射出された励起光21が発光素子10に照射されると、発光素子10に含まれる蛍光体が励起され、発光素子10から蛍光22が放射される。蛍光22は、励起光21よりも長波長の光であり、例えば、470nm以上700nm以下の波長を有する。
【0037】
図1に示される蛍光光源装置1において、ダイクロイックミラー3は、励起光源2から射出される励起光21を透過し、発光素子10から射出される蛍光22を反射するように構成されている。ダイクロイックミラー3は、ミラー面が例えば励起光21の入射角度に対して45°の角度で傾斜するように配置されている。かかる構成とすることで、蛍光22が蛍光光源装置1の外部に取り出され、例えば、図示しない後段の光学系に入射される。
【0038】
図2Aは、発光素子10の構成を模式的に示す斜視図である。
図2Bは、発光素子10の構成を模式的に示す断面図である。
【0039】
発光素子10は、第一基板11と、第二基板12と、反射層13と、蛍光プレート14と、接合層15とを有する。
【0040】
(第一基板11)
第一基板11は、蛍光プレート14で発せられた熱を排熱するために設けられている。第一基板11は、例えば熱伝導率が90W/(m・K)以上、具体的には例えば230〜400W/(m・K)である材料で構成される。このような材料の例としては、Cu、銅化合物(MoCu、CuWなど)、アルミニウムなどが挙げられる。
【0041】
第一基板11の厚みは、例えば0.5〜5mmである。また、排熱性などの観点から、第一基板11の表面における面積は、蛍光プレート14の面積よりも大きいことが好ましい。
【0042】
(接合層15)
接合層15は、第一基板11と蛍光プレート14とを接合する層であり、例えばハンダ材料からなる。排熱性などの観点から、接合層15を構成する材料としては、例えば熱伝導率が40W/(m・K)以上であるものが用いられることが好ましい。より詳細には、例えば、Sn、Pbなどの材料にフラックスやその他の不純物を混ぜてクリーム状(ペースト状)の形態としたクリームハンダ、Sn−Ag−Cu系ハンダ、Au−Sn系ハンダなどを用いることができる。接合層15の厚みは、例えば20〜200μmである。
【0043】
なお、図示していないが、第一基板11と接合層15との接合性の観点から、第一基板11と接合層15との間に、例えばメッキ法によって形成された、Ni/Au膜よりなる金属膜が形成されているものとしても構わない。この金属膜の厚みは、例えばNi/Au=5000〜1000nm/1000〜30nmとすることができる。
【0044】
(反射層13)
反射層13は、蛍光プレート14の、第二基板12とは反対側の面に形成されている。この反射層13は、蛍光プレート14で生成された蛍光のうち、第二基板12の光取り出し面12aとは反対側の面(第一基板11側)に進行した蛍光を反射させて、光取り出し面12a側に導くために設けられている。反射層13は、例えば、Al、Ag等の金属膜や、前記金属膜上に誘電体多層膜を形成した増反射膜などで構成されることができる。
【0045】
なお、図示していないが、蛍光プレート14と接合層15との接合性の観点から、蛍光プレート14の第二基板12とは反対側の面、より具体的には、反射層13の蛍光プレート14とは反対側の面上に、例えば蒸着によって形成されたNi/Pt/Au膜、Ni/Au膜よりなる金属膜が形成されているものとしても構わない。この金属膜の厚みは、例えばNi/Pt/Au=30nm/500nm/500nmとすることができる。
【0046】
(蛍光プレート14)
蛍光プレート14は、反射層13の上層に形成されている。蛍光プレート14は、励起光源2から射出される励起光21が入射されると、蛍光22を放射する。蛍光プレート14は、一例として矩形平板状の構造を示す。蛍光プレート14の厚みは、例えば0.05〜1mmである。
【0047】
蛍光プレート14は、蛍光体が含有されてなり、具体的には、単結晶または多結晶の蛍光体よりなるもの、又は、単結晶若しくは多結晶の蛍光体とセラミックバインダーとの混合物の焼結体よりなる。すなわち、蛍光プレート14は、単結晶又は多結晶の蛍光体によって構成される。
【0048】
蛍光プレート14において用いられる蛍光体とセラミックバインダーとの混合物の焼結体は、例えば、セラミックバインダーとしてナノサイズのアルミナ粒子が用いられる。そして、この焼結体は、蛍光体100質量%に対して数質量%〜数十質量%のセラミックバインダーを混合し、その混合物をプレスした後、焼成することによって得られるものを用いることができる。
【0049】
蛍光プレート14を単結晶の蛍光体で構成する場合には、例えば、チョクラルスキー法によって得ることができる。具体的には、るつぼ内において種子結晶を溶融された原料に接触させ、この状態で、種子結晶を回転させながら鉛直方向に引き上げて当該種子結晶に単結晶を成長させることにより、単結晶の蛍光体が得られる。
【0050】
また、蛍光プレート14を多結晶の蛍光体で構成する場合には、例えば以下のようにして得ることができる。まず、母材、賦活材および焼成助剤などの原材料をボールミルなどによって粉砕処理することによって、サブミクロン以下の原材料微粒子を得る。次いで、この原材料微粒子を用い、例えばスリップキャスト法によって成形体を形成して焼結する。その後、得られた焼結体に対して熱間等方圧加圧加工を施すことによって、気孔率が例えば0.5%以下の多結晶の蛍光体が得られる。
【0051】
蛍光プレート14を構成する蛍光体は、具体的には、希土類化合物がドープ(賦活)されたYAG蛍光体よりなるものを用いることができる。このような蛍光体において、希土類元素(賦活材)のドープ量は、0.5mol%程度とすることができる。希土類化合物としては、例えばCe、Pr、又はSmなどを挙げることができる。すなわち、蛍光体の具体例としては、YAG:Ce、YAG:Pr、YAG:Sm、LuAG:Ceなどが挙げられる。なお、蛍光プレート14を、蛍光体に金属化合物が含めて構成しても構わない。
【0052】
蛍光プレート14が単結晶又は多結晶の蛍光体によって構成されることで、高い熱伝導性を有する。蛍光プレート14の熱伝導率としては、例えば熱伝導率が6〜35W/(m・K)程度とするのが好ましい。このように構成されることで、蛍光プレート14で発生した熱が、第一基板11側、及び後述する第二基板12側に効率よく排熱され、蛍光プレート14が高温となることが抑制される。
【0053】
第一基板11と蛍光プレート14とは、例えば以下のようにして接合することができる。第一基板11の面上に接合層15を介して、反射層13が形成された蛍光プレート14を配置する。その後、例えば大気雰囲気または窒素ガス雰囲気とされた減圧下において、ハンダ材料の融点以上の温度に加熱して溶融する。その後、ハンダ材料を冷却して固化する。これにより、第一基板11と蛍光プレート14とが接合される。
【0054】
(第二基板12)
第二基板12は、蛍光プレート14の上層に形成されている。第二基板12は、励起光源2から射出される励起光21、及び蛍光プレート14で生成される蛍光22を透過する材料で構成されている。具体的には、第二基板12は、波長400nm以上800nm以下の光に対して透光性を有する材料で構成されている。
【0055】
また、第二基板12は、第一基板11と同様に、蛍光プレート14で生成された熱を排熱する目的で設けられている。このため、第二基板12は、熱伝導性の高い材料で構成されるのが好ましい。より具体的には、第二基板12は、30W/(m・K)以上の熱伝導率を示す材料で構成されるのが好ましい。
【0056】
以上の観点から、第二基板12は、サファイア(Al
2O
3)、MgO、GaN、SiC、MgAl
2O
4などで構成されることができる。第二基板12の厚みは、30μm以上、1000μm以下とすることができる。
【0057】
上述したように、第二基板12は、蛍光プレート14とは反対側の面12aが光取り出し面を構成する。
図2Cは、
図2Bにおいて、第二基板12の面12a側近傍を拡大した図面である。
【0058】
図2Cに示すように、第二基板12は、この光取り出し面12a側において、マイクロメートルオーダーの径を有する複数の凹状孔部31を有する。この凹状孔部31は、蛍光プレート14の面が露出しない範囲内の深さを有する。一例として、凹状孔部31の深さは、20μm以上、800μm以下とすることができる。
【0059】
凹状孔部31は、例えば径が10μm以上、70μm以下で構成されており、より好ましくは、30μm以上、50μm以下で構成されている。また、隣接する凹状孔部31間の離間距離は、例えば15μm以上、150μm以下で構成されており、より好ましくは、80μm以上、120μm以下で構成されている。
【0060】
凹状孔部31は、円柱状、円錐状、円錐台状、角柱状、角錐状、角錐台状など、任意の形状を有することができる。
図2Cでは、一例として凹状孔部31の形状が円錐状の場合が図示されている。
【0061】
また、第二基板12は、光取り出し面12a側において、複数の凹状孔部31が形成されていない領域の少なくとも一部分に、ナノメートルオーダーの径を有する微細な第一凹凸部32を有する。
【0062】
第一凹凸部32は、例えば径が300nm以上、460nm以下で構成されており、より好ましくは、400nm以上、460nm以下で構成されている。また、隣接する第一凹凸部32間の離間距離は、例えば360nm以上、460nm以下で構成されており、より好ましくは、400nm以上、460nm以下で構成されている。
【0063】
つまり、第二基板12は、光取り出し面12a側に、複数の凹状孔部31と、この凹状孔部31の間隔や径と比べて極めて微細に形成された複数の第一凹凸部32とが形成されている。
【0064】
第二基板12の光取り出し面12a側に複数の凹状孔部31を設けるときの態様は、種々の方法を採用することができる。
図3A〜
図3Dは、いずれも発光素子10を光取り出し面12a側から見たときの模式的な平面図である。複数の凹状孔部31は、光取り出し面12のほぼ全体にわたって配置されても構わないし(
図3A参照)、光取り出し面12aの中央付近の領域にのみ配置されても構わない(
図3B参照)。
【0065】
すなわち、
図3Bに示す発光素子10においては、第二基板12は、光取り出し面12a側から見たときに、複数の凹状孔部31が形成された第一領域41と、この第一領域41の外側であって、凹状孔部31が形成されていない第二領域42とを有することになる。後述するように、凹状孔部31は、蛍光22を第二基板12の面に平行な方向に拡がって進行するのを抑制する機能を有する。このため、蛍光22が進行しない領域内については凹状孔部31を設けなくても構わない。
図3Bのような構成とすることで、凹状孔部31の形成本数が削減できるため、製造工数の削減が図られる。
【0066】
更に、
図3Cに示すように、
図3Bの態様において光取り出し面12の中心の近傍に対応する領域43にのみ配置しない態様としても構わない。この場合、領域43内に励起光21が照射されるものとしても構わない。
【0067】
また、複数の凹状孔部31の配置形状は、任意であり、例えば
図3Dに示すように、複数の凹状孔部31を千鳥格子状に配置しても構わない。
図3B及び
図3Cの配置態様において、千鳥格子状に配置しても構わない。凹状孔部31は、少なくとも2箇所以上に設けられていればよい。複数の凹状孔部31が千鳥格子状に配置されることで、蛍光プレート14から射出される蛍光の広がりが抑制される。
【0068】
第二基板12と蛍光プレート14とは、例えば以下のようにして接合することができる。
【0069】
第二基板12と蛍光プレート14の表面はCMPにより研磨される。そして、両者が純水によって洗浄され、プラズマ処理によって両者の表面に対して活性化処理が施される。その後、第二基板12と蛍光プレート14とを貼り合わせ、250℃〜1000℃の熱処理が施される。このとき、加圧処理を施しても構わない。かかる処理を行うことで、両者間に良好な接合面が得られる。
【0070】
その後、第二基板12の面12a側に対して、エッチングなどの方法により、表面に微細な凹凸加工を施す。これにより、第一凹凸部32が形成される。その後、所定の領域に、レーザを照射することで凹状孔部31が形成される。より具体的には、レーザ径20μm程度のピコ秒レーザを用い、レーザの光軸を同心円状に移動させながら第二基板12の面12aを加工する。これにより、円錐形状又は円錐台形状の凹状孔部31が得られる。
【0071】
なお、仮に凹状孔部31が第二基板12を貫通した場合には、蛍光プレート14が黒化し、同黒化部が発光しなくなる。これにより、蛍光の取り出し効率が低下してしまう。よって、凹状孔部31は、蛍光プレート14の面に達しない深さとなるように加工する必要がある。余裕度を考慮して、第二基板12の面と、凹状孔部31の底面との間の距離を10μm以上確保するのが好ましい。
【0072】
また、レーザを照射する以外の方法としては、エッチングを施したり、フロスト加工を施すことでも凹状孔部31を形成することができる。より具体的な一例としては、第二基板12の面12aに対してSiCなどの微粒子を吹き付けることによって凹状孔部31を形成することができる。
【0073】
なお、第二基板12の面に第一凹凸部32及び凹状孔部31を形成した後に、蛍光プレート14と接合するものとしても構わない。
【0074】
[作用]
上述したように、発光素子10が凹状孔部31を含む第二基板12を備えたことで、排熱性を確保しながらも発光面積を制限できることにつき、説明する。
図4は、発光素子10に対して励起光21が照射されたときの、励起光21及び蛍光22の光線の進行を模式的に示した図面である。
【0075】
励起光21が第二基板12に入射されると、第二基板12内を透過して蛍光プレート14内へ侵入する。なお、第二基板12の面12a側には微細な第一凹凸部31が形成されているため、当該第一凹凸部31の面で反射される光量は少なく、大部分の光は第二基板12内へと進行する。
【0076】
励起光21は、蛍光プレート14内の蛍光体粒子16に入射されると、蛍光体粒子16が励起されて蛍光22が生成される。蛍光22のうち、一部の光は、隣接する蛍光体粒子16の粒界で反射したり、反射層13で反射することで、蛍光プレート14の面に平行なd1方向に拡がりながら進行する。この光は、第二基板12の面12a側に設けられた凹状孔部31の側面31aに入射されることで、当該面から外部に取り出されたり、又は当該面で反射されることで、第一凹凸部32側に進行方向が変換される。すなわち、凹状孔部31の側面31aに入射されることで、反射の回数が強制的に減らされるため、d1方向への光の進行が抑制される。この結果、第二基板12の光取り出し面12a側の、限られた範囲内の領域から蛍光22が取り出される。
【0077】
[検証]
以下、実施例を用いて検証する。実施例1〜6は、いずれも上述した発光素子10の構造を有し、第二基板12の厚み、又は隣接する凹状孔部31の間隔を異ならせたものである。また、参考例1は、発光素子10において凹状孔部31を備えない第二基板51を備えた構成に対応する。
図5は参考例1の発光素子50の構造を模式的に示す断面図である。
【0078】
実施例1〜6の条件は以下の通りである。
【0079】
実施例1〜3は、いずれも、第二基板12の厚みを100μm、凹状孔部31の深さを70μm、径を40μmとした。また、実施例1は隣接する凹状孔部31同士の間隔を100μmとし、実施例2は隣接する凹状孔部31同士の間隔を150μmとし、実施例3は隣接する凹状孔部31同士の間隔を200μmとした。
【0080】
実施例4〜6は、いずれも、第二基板12の厚みを300μm、凹状孔部31の深さを70μm、径を40μmとした。また、実施例4は隣接する凹状孔部31同士の間隔を100μmとし、実施例5は隣接する凹状孔部31同士の間隔を150μmとし、実施例6は隣接する凹状孔部31同士の間隔を200μmとした。
【0081】
なお、実施例1〜6及び参考例1は、その他の条件を同一としている。
【0082】
図6Aは、実施例1〜3と参考例1のエタンデュ毎の蛍光22の光束を対比したグラフであり、
図6Bは、実施例4〜6と参考例1のエタンデュ毎の蛍光22の光束を対比したグラフである。いずれのグラフも、横軸はエタンデュを示し、縦軸は参考例1の素子が示す光束に対する相対値を示している。エタンデュ毎の光束は、例えば積分球を用いて測定することができる。
【0083】
図6A及び
図6Bによれば、各実施例1〜6はいずれも参考例1と比べてエタンデュ毎の光束が上昇していることが分かる。
【0084】
また、
図6Cは、実施例1の条件において、凹状孔部31の径を変更したときの蛍光22の光束を、参考例1と対比したグラフである。
図6Cにおいて、横軸は凹状孔部31の径を示し、縦軸は参考例1の素子が示す光束に対する相対値を示している。なお、
図6Cにおいて、凹状孔部31の径が0である点が参考例1の素子に対応する。
図6Cでは、エタンデュが6.8Sr・mm
2のときの光束の値を比較しているが、他のエタンデュの値においてもほぼ同様の結果が確認される。
【0085】
図6Cによれば、凹状孔部31の径を大きくするほど光束が上昇していることがわかる。なお、この傾向は、他の実施例でも同様に確認された。すなわち、凹状孔部31の径や間隔によらず、第二基板12の面12a側に凹状孔部31を設けることで、エタンデュ毎の光束が高められ、高い輝度の発光素子10が実現されることが分かる。
【0086】
また、上述したように、この凹状孔部31は、底面が蛍光プレート14の面に達しない範囲内の深さで構成されている。このため、蛍光プレート14の上面は全て高い熱伝導性を示す第二基板12と連絡されている。この結果、第二基板12に凹状孔部31を設けた発光素子10においても、蛍光プレート14で生じる熱を排熱する機能が維持されている。
【0087】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0088】
〈1〉
図7に示すように、凹状孔部31の側面に微細に形成された第二凹凸部33を設けるものとしても構わない。
図7は、
図2Cにならって、第二基板12の近傍を拡大した模式図である。この構成によれば、凹状孔部31の側面に入射された蛍光22のうち、当該面を通じて外部に取り出す光量を高めることができる。このような第二凹凸部33は、上述した方法によって、第二基板12に対して凹状孔部31を設ける過程で形成されるものとすることができる。この第二凹凸部33は、凹状孔部31の径よりも小さい径で形成されており、第一凹凸部32と同様に、ナノメートルオーダーの径を有する。
【0089】
第二凹凸部33は、例えば径が300nm以上、460nm以下で構成されており、より好ましくは、400nm以上、460nm以下で構成されている。また、隣接する第二凹凸部33間の離間距離は、例えば360nm以上、460nm以下で構成されており、より好ましくは、400nm以上、460nm以下で構成されている。
【0090】
〈2〉
図1に示したような、ダイクロイックミラー3を含む蛍光光源装置1の光学的な配置方法は、あくまで一例であり、どのような配置態様であっても構わない。
【0091】
〈3〉
図8は、励起光21の散乱角、及び凹状孔部31の側面の傾斜角をそれぞれ変化させたときの、発光素子10から発せられる蛍光光束の変化の態様をグラフにしたものである。
【0092】
ここで、凹状孔部31の側面の傾斜角とは、
図9に示すような領域35の角度を指す。すなわち、第二基板12に設けられた凹状孔部31において、凹状孔部31の側面と第二基板12の基板面とがなす角度35が凹状孔部31の側面の傾斜角に対応する。例えば、凹状孔部31を形成する際に照射するレーザの光軸を傾けることで、側面が傾斜した凹状孔部31を形成することができる。この光軸の傾きを調整することで、凹状孔部31の側面の傾斜角は制御される。
【0093】
また、励起光21の散乱角とは、第二基板12に対して励起光を照射した場合において、光強度が最も高いピーク値を示す主光線と、ピーク値に対する1/e
2の値を示す光強度を示す光線とがなす角度に対応する。凹状孔部31の側面の加工状態によって当該面上にも微細な凹凸(
図7における第二凹凸部33に相当)が形成され、この凹凸形状の程度によって、励起光21の散乱角を調整することができる。すなわち、凹状孔部31を形成する際に照射されるレーザの強度や時間等によって、凹状孔部31の内側に照射される励起光21の散乱角が制御される。
【0094】
図8は、横軸を励起光21の散乱角とし、縦軸を発光素子から発せられる蛍光光束の相対値としたときのグラフに対応する。ここで、
図8における縦軸の値は、
図5を参照して説明した参考例1の発光素子50における蛍光光束の値を基準値(100%)としたときの相対値である。
【0095】
図8によれば、まず、散乱角を0°〜30°まで変化させた場合において、傾斜角度が0°、7°、15°、23°、及び45°のいずれの場合においても、参考例1の発光素子50より蛍光光束の値が高いことが確認される。この結果は、第二基板12に凹状孔部31を設けたことで、光束が高められていることを示している。
【0096】
また、
図8によれば、凹状孔部31の傾斜角度にかかわらず、散乱角が0°〜27°の範囲内で蛍光光束が高められていることが確認された。特に、散乱角を10°〜20°の範囲内に設定することで、蛍光光束を更に高められることが確認された。
【0097】
更に、
図8によれば、散乱角を上記の範囲内に設定した場合においては、凹状孔部31の傾斜角を小さくするほど高い蛍光光束が実現されることが確認された。すなわち、散乱角が0°〜27°の範囲内で、且つ凹状孔部31の傾斜角が0°〜15°の範囲内である場合に、高い蛍光光束が実現されることが確認された。特に、散乱角が10°〜20°の範囲内で、且つ凹状孔部31の傾斜角が0°〜15°の範囲内である場合に、高い蛍光光束が実現される。