【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1の発光素子の構成を示した図である。また、
図2は、実施例1の発光素子を上方から見た平面図である。
図1は、
図2におけるA−A’での断面図である。
図2のように、実施例1の発光素子は、平面視で長方形のフェイスアップ型素子である。
【0015】
図1のように、実施例1の発光素子は、基板10と、基板10上にn層11、発光層12、p層13の順に積層されたIII 族窒化物半導体からなる半導体層と、p層13上の所定領域に設けられた電流阻止層18と、p層13および電流阻止層18上に設けられた透明電極14と、透明電極14および露出させたn層11を覆う絶縁膜15と、絶縁膜15上にそれぞれ離間して設けられたp電極16およびn電極17と、素子上面を覆う保護膜19と、によって構成されている。以下、各構成を詳しく説明する。
【0016】
(基板10の構成)
基板10は、その主面上にIII 族窒化物半導体を形成するための成長基板である。基板10のn層11側の表面には凹凸加工が施されており(図示しない)、光取り出し効率の向上が図られている。基板10の材料はサファイア以外を用いてもよく、Si、GaN、SiC、ZnOなどを用いてもよい。
【0017】
(半導体層の構成)
n層11、発光層12、およびp層13の構成は、発光素子の構成として従来採用されている任意の構成でよい。たとえば、n層11は、n−GaNからなるnコンタクト層、アンドープGaNとn−GaNを順に積層させた静電耐圧層、n−GaNとInGaNを交互に繰り返し積層させたn超格子層を順に積層させた構造である。また、発光層12は、InGaNからなる井戸層、GaNまたはAlGaNからなるキャップ層、AlGaNからなる障壁層を順に積層させた構造を1単位として、これを複数回繰り返し積層させたMQW構造である。また、p層13は、p−AlGaNとp−InGaNを交互に繰り返し積層させたpクラッド層、p−GaNからなるpコンタクト層を順に積層させた構造である。
【0018】
p層13表面の所定領域には、n層11に達する深さの溝20が設けられている。この溝20は、n電極17を設けるためにn層11表面を露出させるものである。溝20のパターンは、n電極17のパターンより一回り広いパターンとなっている。
【0019】
(透明電極14の構成)
透明電極14は、p層13および電流阻止層18上に連続して形成されている。透明電極14の材料はIZO(亜鉛ドープの酸化インジウム)である。他にもITO(スズドープの酸化インジウム)やICO(セリウムドープの酸化インジウム)などの導電性酸化物を用いることができる。
【0020】
(絶縁膜15の構成)
絶縁膜15は、素子上面全体を覆うようにして設けられている。つまり、溝の底面に露出するn層11表面から透明電極14表面にかけて覆うようにして形成されている。絶縁膜15の材料はSiO
2 である。もちろん、絶縁膜15の材料はSiO
2 に限らず、TiO
2 、Nb
2 O
5 、Al
2 O
3 、ZrO
2 、HfO
2 などの酸化膜、SiN、TiN、などの窒化膜、SiONなどの酸窒化膜、MgF
2 などのフッ化膜等を用いることができる。また、それらの材料の積層とすることができる。
【0021】
(p電極16の構成)
p電極16は、素子外部と電気的に接続されるpパッド部160と、pパッド部160から延伸するp配線部161と、を有している。
【0022】
pパッド部160は円形であり、絶縁膜15上に位置している。
図2のように、pパッド部160は、一方の短辺側に位置してる。
【0023】
そのpパッド部160から、1本の直線状のp配線部161が長辺に平行に延伸している。p配線部161の線幅は3.5μmである。また、p配線部161は、短辺方向において中央近傍に位置している。絶縁膜15のうち、平面視でp配線部161と重なる領域には孔21が設けられており、p配線部161のパターン全体が、その孔21の底面に露出する透明電極14と接触している。つまり、p電極16は透明電極14に線接触している。
【0024】
また、p配線部161は、pパッド部160の中央部ではなく、端部で接続している。これにより、p配線部161をより長く確保することができ、透明電極14との接触面積も広く取ることができるので、順方向電圧VFをより低減することができる。
【0025】
このように、p電極16のうち、pパッド部160は絶縁膜15上に配置して透明電極14と接触しないようにし、配線状に延伸するp配線部161で透明電極14と接触するようにすることで、電流を面内に効率的に拡散させ、発光強度分布が均一となるようにしている。そして、p配線部161によって透明電極14と線接触するようにして、透明電極14との接触面積を広くし、これにより順方向電圧VFの低減を図っている。
【0026】
(n電極17の構成)
n電極17は、素子外部と電気的に接続されるnパッド部170と、nパッド部170から延伸するn配線部171と、を有している。
【0027】
nパッド部170は、長円形を短手方向で半分にした形状であり、絶縁膜15上に位置している。
図2のように、nパッド部170は、pパッド部160側とは反対側の短辺中央近傍に位置してる。
【0028】
n配線部171は、nパッド部170から短辺に沿って延伸し、発光素子の長方形の角部にて屈曲し、長辺近傍において、pパッド部160側の短辺に向かって長辺方向に延伸する直線状の形状であり、pパッド部160近傍まで延びている。n配線部171は絶縁膜15上に位置している。p配線部161とn配線部171は平行であり、その間隔は、短辺の長さの1/2である。このn配線部171により、電流が面内に均一に拡散するようにしている。
【0029】
絶縁膜15のうち、n配線部171下の領域には、その絶縁膜15を貫通する孔21が等間隔に複数設けられている。孔21の底面にはn層11が露出している。n配線部171は、この孔21を埋めるようにして設けられており、孔21を介してn配線部171はn層11と接触し、電気的に接続されている。つまり、n電極17はn層11に点接触している。
【0030】
(p電極16およびn電極17の材料)
p電極16およびn電極17は、Ni/Al合金/Ti/Au/Au/Alからなる。つまり、NiからなるNi層100、Al合金からなるAl合金層101、TiからなるTi層102、Auからなる第1Au層103、同じくAuからなる第2Au層104、AlからなるAl層105を絶縁膜15側から順に積層した構造である。各層の厚さは、積層順に、3〜8Å、100nm、70nm、10nm、1500nm、10nmである。
【0031】
図3に、p電極16およびn電極17の積層構造を示す。
図3(a)は、孔21を介してp配線部161と透明電極14とが接触する領域における、p配線部161の積層構造を示した図である。また、
図3(b)は、孔21を介してn配線部171とn層11とが接触する領域における、n配線部171の積層構造を示した図である。
【0032】
p電極16およびn電極17の積層構造における各層の役割は次の通りである。Ni層100は、透明電極14に対して良好なコンタクトを取るために設ける層である。Al合金層101は、n層11に対して良好なコンタクトを取るため、および、発光層12から放射される光のうち、およびp電極16およびn電極17に向かう光を反射し、p電極16およびn電極17による光の吸収を低減するために設ける層である。Ti層101は、Al合金層101と第1Au層103間の金属の拡散をバリアする層である。第1Au層103は、表面酸化を防止するための層である。第2Au層104は、電流を輸送するための層である。Al層105は、保護膜19との密着性を高めるための層である。
【0033】
Ni層100は、
図3のように、島状に複数に分離して設けられている。そのため、Ni層100上のAl合金層101は、そのNi層100の島と島の間の領域を埋めるように設けられている。
【0034】
したがって、p電極16と透明電極14が接する孔21の領域では、
図3(a)のように、透明電極14上にNi層100とAl合金層101の双方が接する。Niは耐酸化性が高く、透明電極14とNi層100との間に酸化物を形成せず、透明電極14とNi層100とが直接接する。そのため、透明電極14とNi層100との間で局所的な導通領域を形成し、p電極16は透明電極14に対して良好にコンタクトを取ることができる。
【0035】
また、n電極17とn層11が接する孔21の領域においても、
図3(b)のように、n層11上にNi層100とAl合金層101の双方が接する。Al合金層101は、n層11に対して良好にコンタクトを取ることができ、n層11とAl合金層101との間で導通領域を形成する。そのため、n電極17はn層11に対して良好にコンタクトを取ることができる。
【0036】
このように、p電極16とn電極17は同一材料でありながら、透明電極14とn層11の双方に対して良好なコンタクトを取ることができる。
【0037】
Ni層100の厚さは、3〜8Åである。ここで、厚さは平均膜厚であり、厚さの均一な1つの膜に換算したときの厚さである。Ni層100が島状に複数に分離して形成されているのであれば、Ni層100の厚さは上記範囲に限らないが、実施例1のように3〜8Åとすることが望ましい。Ni層100の厚さを3Å以上とすれば、p電極16は透明電極14に対して良好にコンタクトを取ることができる。また、Ni層100の厚さを8Å以下とすれば、n電極17はn層11に対して良好にコンタクトを取ることができる。より望ましいNi層100の厚さは6〜8Åである。
【0038】
なお、Ni層100に替えて、CoまたはCuからなる層を用いてもよいし、Ni、Co、Cuのうち少なくとも1種の元素を主成分とする合金を用いてもよい。
【0039】
Al合金層101は、Al−Ni合金からなる。Al−Ni合金以外にも、Al−Nd合金、Al−Ta合金、など任意のAl合金を用いることができる。また、合金ではなくAlを用いてもよい。特に、n層11へのコンタクト抵抗の低さから、AlまたはAl−Nd合金を用いるのがよい。n電極17がn層11に対してより良好にコンタクトを取ることができる。また、Al−Nd合金は、高い反射率を有しているため、p電極16およびn電極17の光吸収低減により光出力の向上を期待できる。なお、Ni層100は非常に薄く、かつ島状に形成されているため、p電極16およびn電極17に向かう光はNi層100にほとんど影響されず、p電極16およびn電極17の反射率は、ほぼAl合金層101の反射率と等しくなる。
【0040】
Al合金層101の厚さは、100nmに限らないが、75nm以上とすることが望ましい。75nm以上とすることで、反射率を十分に高めることができ、p電極16およびn電極17による光の吸収を十分に抑制できるためである。厚さの上限は特にないが、反射率向上の飽和などを考慮して、300nm以下とすることが望ましい。より望ましくは75〜200nmである。
【0041】
(反射膜22の構成)
絶縁膜15中であって、pパッド部160下、nパッド部170下およびn配線部171下の領域には、Alからなる反射膜22が設けられている。反射膜22は絶縁膜15中にあるため、電気的に絶縁されており、マイグレーションが防止される。この反射膜22は、p電極16、n電極17方向へ向かう光を反射させることでp電極16、n電極17による光の吸収を抑制し、これにより発光効率を向上させるために設けるものである。
【0042】
反射膜22は、Al以外にも、Ag、Al合金、Ag合金などの反射率の高い材料を用いることができる。反射膜22は単層としてもよいし多層としてもよい。多層とする場合、Al合金/Ti、Ag合金/Al、Ag合金/Ti、Al/Ag/Al、Ag合金/Niなどを用いることができる。反射膜22と絶縁膜15との密着性を向上させるために、Ti、Cr、Alなどの薄膜を、反射膜22と絶縁膜15との間に設けてもよい。
【0043】
なお、
図4に示すように、反射膜22は設けなくともよい。反射膜22を設けないことで光出力は低下するものの、製造工程がより簡素となり、コストの低減を図ることができる。
【0044】
(電流阻止層18の構成)
電流阻止層18は、p層13と透明電極14との間であって孔21下の領域(すなわち、p配線部161と透明電極14とが接触している領域下)に設けられている。電流阻止層18はSiO
2 からなる。このように電流阻止層18を設けることで、発光層12のうち孔21下の領域を発光させないようにしている。また、電流阻止層18とp層13との界面での反射によりp配線部161に向かう光を減少させている。これらによりp配線部161による光吸収を減少させ、光出力の向上を図っている。
【0045】
電流阻止層18の材料はSiO
2 に限らず、TiO
2 、Nb
2 O
5 、Al
2 O
3 、ZrO
2 、HfO
2 などの酸化膜、SiN、TiN、などの窒化膜、SiONなどの酸窒化膜、MgF
2 などのフッ化膜等を用いることができる。また、それらの材料の積層とすることができる。反射率を高めるためにDBR構造としてもよい。
【0046】
(保護膜19の構成)
pパッド部160とnパッド部170を除いた上面全体には、SiO
2 からなる保護膜19が形成されている。保護膜19の材料はSiO
2 に限らず、TiO
2 、Nb
2 O
5 、Al
2 O
3 、ZrO
2 、HfO
2 などの酸化膜、SiN、TiN、などの窒化膜、SiONなどの酸窒化膜、MgF
2 などのフッ化膜等を用いることができる。また、それらの材料の積層とすることができる。
【0047】
以上、実施例1の発光素子では、p電極16およびn電極17がNi層100とAl合金層101の積層であり、Ni層100が透明電極14上あるいはn層11上に島状に複数に分離して形成されているため、透明電極14とn層11の双方に対して良好なコンタクトを取ることができ、p電極16とn電極17とを同一材料とできる。
【0048】
また、p電極16とn電極17はNi層100上にAl合金層101を有するため、反射率が高い。そのため、発光層12から放射されてp電極16およびn電極17に向かう光をAl合金層101によって効果的に反射させることができ、p電極16およびn電極17による光の吸収が低減される。その結果、実施例1の発光素子は光出力が向上している。
【0049】
(実施例1の発光素子の製造方法)
次に、実施例1の発光素子の製造方法について、
図5を参照に説明する。
【0050】
まず、表面に凹凸加工が施されたサファイアからなる基板10を用意し、水素雰囲気下で熱処理して表面に付着する不純物を除去する。次に、MOCVD法を用いて、基板10上にn層11、発光層12、p層13を順に積層する。原料ガスには、Ga源としてTMG(トリメチルガリウム)、Al源としてTMA(トリメチルアルミニウム)、In源としてTMI(トリメチルインジウム)、N源としてアンモニア、p型ドーパントガスとしてビスシクロペンタジエニルマグネシウム、n型ドーパントガスとしてシランを用いる。キャリアガスには水素と窒素を用いる。
【0051】
次に、p層13上に電流阻止層18を形成する。電流阻止層18は、蒸着またはCVDによってSiO
2 膜を形成後、フォトリソグラフィとウェットエッチングによってパターン形成する。フォトリソグラフィ、スパッタまたは蒸着、リフトオフによってパターン形成してもよい。電流阻止層18は、p層13上であって、後に形成する孔21を含む領域にのみ形成する。
【0052】
次に、p層13および電流阻止層18上の所定領域に、透明電極14を形成する。透明電極14は、スパッタによってIZO膜を形成後、フォトリソグラフィとウェットエッチングによってパターン形成する。
【0053】
次に、p層13表面の所定の領域をドライエッチングして溝20を形成し、溝20の底面にn層11を露出させる(
図5(a)参照)。
【0054】
次に、上方全面を覆うようにして、反射膜22が埋め込まれた絶縁膜15を形成する。詳細には次のように形成する。まず、CVD法によって上方全面に第1絶縁膜を形成する。そして、第1絶縁膜上の所定領域(後に形成するpパッド部160、p配線部161、nパッド部170およびn配線部171に平面視で重なる領域)に、蒸着、フォトリソグラフィ、エッチングによって反射膜22を形成する。リフトオフによって反射膜22を形成してもよい。次に、CVD法によって、第1絶縁膜上および反射膜22上に第2絶縁膜を形成し、第1絶縁膜と第2絶縁膜とで一体の絶縁膜15とする。以上により、内部の所定領域に反射膜22が埋め込まれた絶縁膜15を形成する。
【0055】
なお、
図4に示す変形例の発光素子のように、反射膜22を設けない場合には、単に絶縁膜15を形成する工程とできるので、製造工程をより簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
次に、絶縁膜15の所定領域(p配線部161と透明電極14あるいはn配線部171とn層11とを接触させる領域)をドライエッチングして絶縁膜15を貫通する孔21を形成する。孔21の底面には透明電極14、n層11が露出する(
図5(b)参照)。
【0057】
次に、絶縁膜15上の所定領域に、p電極16のpパッド部160、p配線部161、およびn電極17のnパッド部170、n配線部171を形成し、孔21を介してp配線部161は透明電極14と接触し、n配線部171はn層11に接触するように形成する(
図5(c)参照)。パターニングはリフトオフ法による。より詳細に説明すると、以下の通りである。
【0058】
まず、フォトリソグラフィにより、絶縁膜15上およびn層11上にレジスト層を形成する。レジスト層のうち、後にp電極16のpパッド部160、p配線部161、およびn電極17のnパッド部170、n配線部171を形成する領域は開口したパターンとする。
【0059】
次に、レジスト層上、および開口に露出する絶縁膜15およびn層11上に、EB(電子ビーム)蒸着法によりNiからなるNi層100を3〜8Å形成する。ここで、3〜8Åの厚さは、平均の厚さである。平均の厚さがこの範囲では、Ni層100は複数の島状に分離されて形成される。
【0060】
次に、スパッタ法によってAl−NiからなるAl合金層101を100nm、TiからなるTi層102を70nm、Auからなる第1Au層103を10nm、順に積層する。ここでAl合金層101は、Ni層100の島と島の間の領域も埋めるようにして形成される。そのため、孔21の領域では、透明電極14上、あるはn層11上に、Ni層100とAl合金層101の双方が接触する。
【0061】
次に、RH(抵抗加熱)蒸着法により、Auからなる第2Au層104を1500nm、AlからなるAl層105を10nm、順に積層する。
【0062】
次に、レジスト層を除去するとともに、レジスト層上に形成された金属の積層も除去する。以上により、所定の領域にNi/Al合金/Ti/Au/Au/Alからなるp電極16のpパッド部160、p配線部161、およびn電極17のnパッド部170、n配線部171を形成する。
【0063】
次に、pパッド部160およびnパッド部170を除く全面に、CVD法、フォトリソグラフィ、ドライエッチングによって保護膜19を形成する。以上により、実施例1の発光素子が作製される。このように、実施例1の発光素子では、p電極16およびn電極17を、透明電極14とn層11の双方に対して良好なコンタクトを取ることができる材料としており、p電極16とn電極17を同時に形成することで製造工程を簡略化している。
【0064】
(各種実験例)
次に、実施例1の発光素子に関する各種のデータを説明する。
【0065】
図6は、p電極16およびn電極17のp側コンタクト性についてのNi層100厚さ依存性を示したグラフである。p側コンタクト性は、透明電極14上にテストエレメントグループ(TEG)用パターンであってp電極16およびn電極17と同一の積層構造の電極を形成して、20mAでの電圧値ppによって評価した。比較のため、Ni層100およびAl合金層101を、Ti層とRh層の積層に置き換えた電極(比較例1)についても、電圧値ppのTi層厚さ依存性を評価した。
【0066】
図6のように、Ni層100、Ti層がいずれの厚さであっても、Ni層100を用いた実施例1の電極は、Ti層を用いた比較例の電極に比べてpp値が低く、比較例よりも実施例1の方が、透明電極14に対して良好なコンタクトを取ることができるとわかった。また、
図6のように、実施例1の電極では、Ni層100の厚さが増加すると急激にpp値が減少し、3Å以上でほぼ一定のpp値となることがわかった。
【0067】
図7は、p電極16およびn電極17のn側コンタクト性についてのNi層100厚さ依存性を示したグラフである。n側コンタクト性は、n層11上にテストエレメントグループ(TEG)用パターンであってp電極16およびn電極17と同一の積層構造の電極を形成して、20mAでの電圧値nnによって評価した。同様に比較例1についても電圧値nnを評価した。
【0068】
図7のように実施例1、比較例1の双方ともに、Ni層100、Ti層の厚さの増加とともにnn値が増加していくことがわかった。特に、厚さ10Åまでは実施例1、比較例1とでほぼ同等のnn値増加であるが、厚さ10Åより大きくなると、実施例1の方がnn値の増加が大きくなることがわかった。また、8Å以下ではnn値の増加は微増であることがわかった。
【0069】
図8は、実施例1の発光素子について、20mAでの順方向電圧VFとNi層100の厚さとの関係を示したグラフである。比較例1の発光素子についても、同様に順方向電圧VFとNi層100の厚さとの関係を示す。
【0070】
図8のように、実施例1の発光素子では、Ni層100の厚さが3Åまでは急激にVFが低下し、3〜8Åではほぼ一定のVFとなり、8Åを超えるとVFがわずかに上昇していくことがわかった。また、比較例1の発光素子では、Ti層の厚さが12Åまでは次第にVFが低下していくが、12Åより厚いとほぼVFは一定となった。また、いずれの厚さにおいても、実施例1の発光素子の方が比較例1の発光素子よりもVFが小さいことがわかった。
【0071】
図6〜8から、Ni層100の厚さを3〜8Åとすることにより、p側とn側の双方に対して良好なコンタクトを取ることができ、VFを低減できることがわかった。また、p側のコンタクト性の方が、n側のコンタクト性よりもVFへの寄与が大きいことがわかった。
【0072】
図9は、実施例1の発光素子について、20mAで駆動した場合の全放射束のNi層100厚さ依存性を示したグラフである。
図9のように、Ni層100の厚さが増加するにつれて全放射束も増加する傾向にあり、厚さが6Å以上では全放射束はほぼ一定となって飽和する傾向にあることがわかった。
図6〜8と
図9から、VFを維持しつつ光出力を向上させるためには、Ni層100の厚さを6〜8Åとすることが最適であるとわかった。
【0073】
図10は、実施例1の発光素子と比較例1の発光素子について、20mAで駆動した場合の全放射束を比較したグラフである。実施例1におけるNi層100の厚さ、および比較例1におけるTi層の厚さは6Å、8Åとした。
図10のように、実施例1の発光素子は比較例1の発光素子に比べて光出力が高く、0.6〜2.2%光出力が向上することがわかった。