(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユーザの第1の血圧データに含まれる前記ユーザの体動に関するノイズが抑圧された第2の血圧データの周波数領域表現である第1のスペクトルに基づいて前記ユーザの呼吸周期を推定する呼吸周期推定部を具備し、
前記呼吸周期推定部は、
前記第1のスペクトルのパワースペクトルにおいてピークを示すピーク周波数の1つを選択するピーク選択部と、
前記第1のスペクトルのうち選択されているピーク周波数の成分を抑圧し、第2のスペクトルを生成する第1の周波数成分抑圧部と、
前記第2の血圧データにおける第1の呼吸性変動を算出し、前記第2のスペクトルの時間領域表現である第3の血圧データにおける第2の呼吸性変動を算出する呼吸性変動算出部と、
前記第1の呼吸性変動に対する前記第2の呼吸性変動の減衰量を算出する減衰量算出部と、
前記減衰量が第1の閾値よりも大きければ前記選択されているピーク周波数に対応する周期を前記ユーザの呼吸周期として決定する呼吸周期決定部と
を含む、
血圧データ処理装置。
前記呼吸周期決定部は、前記減衰量が前記第1の閾値以下であれば前記ピーク選択部に未選択のピーク周波数の1つを選択させる、請求項1に記載の血圧データ処理装置。
前記第2の血圧データに含まれる前記ユーザの呼吸性変動を抑圧する処理のイネーブル/ディセーブルを示す第1の制御パラメータと、前記呼吸性変動を抽出する処理のイネーブル/ディセーブルを示す第2の制御パラメータとを設定する設定部と、
前記第1の制御パラメータがイネーブルを示す場合に、前記第2の血圧データに含まれる前記ユーザの呼吸性変動を抑圧した処理済み血圧データを生成する呼吸性変動抑圧部と、
前記第2の制御パラメータがイネーブルを示す場合に、前記呼吸性変動を抽出し、呼吸性変動データを生成する呼吸性変動抽出部と、
をさらに具備し、
前記呼吸性変動抑圧部は、
前記第1のスペクトルのうち前記ユーザの呼吸周期に対応する周波数成分を抑圧し、第3のスペクトルを生成する第2の周波数成分抑圧部と、
前記第3のスペクトルを時間領域表現へと変換し、前記処理済み血圧データを生成する第1の変換部と
を含み、
前記呼吸性変動抽出部は、
前記第1のスペクトルのうち前記ユーザの呼吸周期に対応しない周波数成分を抑圧し、第4のスペクトルを生成する第3の周波数成分抑圧部と、
前記第4のスペクトルを時間領域表現へと変換し、前記呼吸性変動データを生成する第2の変換部と
を含む、
請求項1に記載の血圧データ処理装置。
ユーザの第1の血圧データに含まれる前記ユーザの体動に関するノイズが抑圧された第2の血圧データの周波数領域表現である第1のスペクトルに基づいて前記ユーザの呼吸周期を推定することを具備し、
前記ユーザの呼吸周期を推定することは、
前記第1のスペクトルのパワースペクトルにおいてピークを示すピーク周波数の1つを選択することと、
前記第1のスペクトルのうち選択されているピーク周波数の成分を抑圧し、第2のスペクトルを生成することと、
前記第2の血圧データにおける第1の呼吸性変動を算出し、前記第2のスペクトルの時間領域表現である第3の血圧データにおける第2の呼吸性変動を算出することと、
前記第1の呼吸性変動に対する前記第2の呼吸性変動の減衰量を算出することと、
前記減衰量が第1の閾値よりも大きければ前記選択されているピーク周波数に対応する周期を前記ユーザの呼吸周期として決定することと
を含む、
血圧データ処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら実施形態の説明を述べる。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1に例示されるように、第1の実施形態に係る血圧データ処理装置は、第1の血圧データ記憶部10と、体動データ記憶部20と、体動ノイズ抑圧部100と、第2の血圧データ記憶部30と、呼吸周期推定部200と、第1のスペクトル記憶部40と、呼吸周期記憶部50と、呼吸性変動抑圧部300と、処理済み血圧データ記憶部60とを含む。
【0021】
第1の血圧データ記憶部10は、ユーザに装着された血圧センサによって血圧を測定(例えば連続測定)することで得られた血圧データ(第1の血圧データ)を格納する。第1の血圧データ記憶部10に格納された第1の血圧データは、体動ノイズ抑圧部100によって必要に応じて読み出される。
【0022】
第1の血圧データは、例えば、一拍毎の収縮期血圧および拡張期血圧の値を含み得るが、これに限られない。第1の血圧データは、それぞれ測定時刻に関連付けられ得る。
【0023】
ユーザに装着される血圧センサは、ユーザの血圧を1拍毎に連続測定可能な血圧センサ(以降、連続型の血圧センサと称する)を含むことができる。連続型の血圧センサは、脈波伝播時間(PTT;Pulse Transit Time)からユーザの血圧を連続測定してもよいし、トノメトリ法または他の技法により連続測定を実現してもよい。
【0024】
血圧センサは、連続型の血圧センサに加えて、連続測定不可能な血圧センサ(以降、非連続型の血圧センサと称する)を含むこともできる。非連続型の血圧センサは、例えば、カフを圧力センサとして用いてユーザの血圧を測定する(オシロメトリック法)。
【0025】
非連続型の血圧センサ(特に、オシロメトリック法の血圧センサ)は、連続型の血圧センサに比べて、測定精度が高い傾向にある。故に、血圧センサは、例えば、何らかの条件が満足する(例えば、連続型の血圧センサによって測定されたユーザの血圧データが所定の高リスク状態を示唆した)ことをトリガとして、連続型の血圧センサに代えて非連続型の血圧センサを作動させることにより、血圧データをより高い精度で測定してもよい。
【0026】
体動データ記憶部20は、ユーザに装着された動きセンサによって動きを測定することで得られた体動データを格納する。体動データ記憶部20に格納された体動データは、体動ノイズ抑圧部100によって必要に応じて読み出される。
【0027】
体動データは、例えば、1軸または複数軸の加速度または角速度の値を含み得るが、これに限られない。各血圧データは、測定時刻に関連付けられ得る。動きセンサは、例えば加速度センサまたは角速度センサであってよい。一例として、動きセンサは、3軸の加速度センサであってよい。
【0028】
体動ノイズ抑圧部100は、第1の血圧データに含まれるユーザの体動に関するノイズを抑圧し、第2の血圧データを生成する。体動ノイズ抑圧部100は、第2の血圧データを第2の血圧データ記憶部30に保存する。
【0029】
具体的には、体動ノイズ抑圧部100は、第1の血圧データ記憶部10から第1の血圧データを読み出し、体動データ記憶部20から体動データを読み出す。体動ノイズ抑圧部100は、体動データに基づいて体動発生期間を推定する。体動ノイズ抑圧部100は、推定した体動発生期間に関連付けられた第1の血圧データにデータ処理を行い、第2の血圧データを生成する。データ処理は、例えば、平滑化処理であってもよいし、第1の血圧データを補間生成した血圧データによって置換する処理であってもよい。
【0030】
第2の血圧データ記憶部30は、体動ノイズ抑圧部100によって生成された第2の血圧データを格納する。第2の血圧データ記憶部30に格納された第2の血圧データは、呼吸周期推定部200によって必要に応じて読み出される。
【0031】
呼吸周期推定部200は、第2の血圧データの周波数領域表現である第1のスペクトルに基づいてユーザの呼吸周期を推定し、呼吸周期記憶部50に保存する。
【0032】
具体的には、呼吸周期推定部200は、第2の血圧データ記憶部30から第2の血圧データを読み出し、その周波数領域表現である第1のスペクトルを生成する。呼吸周期推定部200は、第1のスペクトルを第1のスペクトル記憶部40に保存するとともに、第1のスペクトルのパワースペクトルを算出する。そして、呼吸周期推定部200は、後述される技法により、パワースペクトルに含まれるピーク周波数の1つに対応する周期をユーザの呼吸周期と推定する。
【0033】
ただし、呼吸周期推定部200は、後述されるようにユーザの呼吸周期を推定できないこともある。この場合には、例えば、呼吸周期推定部200は、図示されない表示装置またはスピーカからエラー画面またはエラーメッセージを出力するなどのエラー処理を行ってよい。
【0034】
呼吸周期推定部200がユーザの呼吸周期の推定に用いる第2の血圧データのデータ数は、任意に定められ得る。かかるデータ数は、例えば、血圧の被測定者であるユーザまたは他の人間(例えば、医師、健康指導者または血圧データ処理装置の製造者、販売者若しくは管理者)によって指定されてもよいし、自動的に決定されてもよい。
【0035】
一例として、呼吸周期推定部200は、例えば、ユーザの一晩の睡眠時間に相当する約7〜10時間分の第2の血圧データからユーザの呼吸周期を推定してもよい。或いは、呼吸周期推定部200は、特定の時間帯(例えば、PM9:00〜PM12:00、AM1:00からAM4:00)または特定の状態(例えば、就寝直後、就寝中、起床直前)における第2の血圧データからユーザの呼吸周期を推定してもよい。このように呼吸周期の推定に用いる第2の血圧データのデータ数を絞り込むことで、ユーザの呼吸性変動があまり安定していない場合にも呼吸周期を推定することができる。
【0036】
なお、呼吸周期の推定に用いる第2の血圧データのデータ数は、後述されるように、FFT(Fast Fourier Transform)を適用するために、2の冪乗個に成形され得る。故に、呼吸周期推定部200が第2の血圧データ記憶部30から読み出す第2の血圧データのデータ数を2の冪乗個に一致させる必要はない。
【0037】
第1のスペクトル記憶部40は、呼吸周期推定部200によって生成された第1のスペクトルを格納する。第1のスペクトル記憶部40に格納された第1のスペクトルは、呼吸周期推定部200および呼吸性変動抑圧部300によって必要に応じて読み出される。
【0038】
呼吸周期記憶部50は、呼吸周期推定部200によって推定されたユーザの呼吸周期を格納する。呼吸周期記憶部50に格納された呼吸周期は、呼吸性変動抑圧部300によって必要に応じて読み出される。
【0039】
呼吸性変動抑圧部300は、第2の血圧データに含まれるユーザの呼吸性変動を抑圧した処理済み血圧データを生成し、処理済み血圧データ記憶部60に保存する。
【0040】
具体的には、呼吸性変動抑圧部300は、第1のスペクトル記憶部40から第1のスペクトルを読み出し、呼吸周期記憶部50から呼吸周期を読み出す。呼吸性変動抑圧部300は、第1のスペクトルのうち呼吸周期に対応する周波数成分を抑圧し、それから時間領域表現へと変換することで処理済み血圧データを生成する。
【0041】
処理済み血圧データ記憶部60は、呼吸性変動抑圧部300によって生成された処理済み血圧データを格納する。処理済み血圧データ記憶部60に格納された処理済み血圧データは、例えば急激な血圧変動の検出のために図示されない血圧データ処理のための機能部または装置によって必要に応じて読み出されてよい。
【0042】
急激な血圧変動は、血圧サージを含む。血圧サージとは、例えば、睡眠時無効吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)の発作時に低酸素状態をトリガとして生じることがある急激な血圧変動を指す。従って、血圧サージ回数をモニタリングすることは、ユーザのSASの症状の軽重を把握するのに役立つ。
【0043】
図1の血圧データ処理装置は、
図2に例示されるように動作する。
体動ノイズ抑圧部100は、第1の血圧データからユーザの体動に関するノイズを抑圧し、第2の血圧データを生成する(ステップS400)。ステップS400の詳細は、
図4を用いて後述される。
【0044】
呼吸周期推定部200は、ステップS400において生成された第2の血圧データの周波数領域表現である第1のスペクトルに基づいてユーザの呼吸周期を推定する(ステップS500)。ステップS500の詳細は、
図8および
図9を用いて後述される。
【0045】
呼吸性変動抑圧部300は、ステップS500において推定されたユーザの呼吸周期に基づいて、第2の血圧データに含まれるユーザの呼吸性変動を抑圧し、処理済み血圧データを生成する(ステップS600)。ステップS600の詳細は、
図13を用いて後述される。
【0046】
図1の体動ノイズ抑圧部100が
図3に例示される。この体動ノイズ抑圧部100は、体動判定部101と、血圧データ補間部102とを含む。
【0047】
体動判定部101は、第1の血圧データ記憶部10から第1の血圧データを読み出し、体動データ記憶部20から体動データを読み出す。体動判定部101は、単位期間の体動データに基づいて、当該単位期間において体動が発生したか否かを判定する。体動判定部101は、単位期間において体動が発生していないならば、当該単位期間の第1の血圧データを当該単位期間の第2の血圧データとして第2の血圧データ記憶部30に保存する(パススルー)。他方、体動判定部101は、単位期間において体動が発生しているならば、当該単位期間(以降、体動発生期間とも呼ぶ)の第1の血圧データを血圧データ補間部102へと出力する。
【0048】
ここで、単位期間とは、例えば、連続する拍動間の間隔、すなわち、拍動の1周期(例えば始点から終点までの間隔)であってよい。或いは、これを複数連結したもの、すなわち、拍動の複数周期であってもよい。これにより、拍動単位で体動ノイズの抑圧処理を施すことができる。
【0049】
血圧データ補間部102は、体動判定部101から体動発生期間の第1の血圧データを受け取る。血圧データ補間部102は、この第1の血圧データの代わりとなる血圧データを体動発生期間の前後の第1の血圧データから補間生成する。補間生成には、例えば線形補間またはスプライン補間などの補間法が用いられてよい。かかる補間処理によれば、信頼性の低い血圧データを破棄して、血圧データの時間的相関を利用して生成した擬似的な血圧データを利用することができる。そして、血圧データ補間部102は、補間生成した血圧データを体動発生期間の第2の血圧データとして第2の血圧データ記憶部30に保存する。なお、血圧データ補間部102の代わりに、または、血圧データ補間部102に追加して、例えば平滑化処理などの他のノイズ低減処理を施すデータ処理部が用意されてもよい。
【0050】
図5に、体動データとしての加速度データおよび(第1の)血圧データを例示する。体動判定部101は、
図5に示す期間において体動が発生していると判定したとする。この場合に、血圧データ補間部102は、体動発生期間の血圧データをその前後の血圧データに基づいて補間生成した血圧データによって置換し、
図6に例示される(第2の)血圧データを生成し得る。なお、
図6の例では、血圧データ補間部102は、収縮期血圧を処理対象としているが、拡張期血圧を処理対象としていない。しかしながら、血圧データ補間部102は、さらに拡張期血圧を処理してもよい。
【0051】
図5および
図6の例では、簡単化のために血圧データとして収縮期血圧(SBP:Systolic Blood Pressure)および拡張期血圧(DBP:Diastolic Blood Pressure)のみの波形を描いているが、ユーザに装着された連続型の血圧センサによって1拍毎の圧脈波データが測定されている場合には、かかる圧脈波の波形を可視化することも可能である。
【0052】
図4に
図2のステップS400の詳細が例示される。
体動判定部101は、体動データ記憶部20から単位期間の体動データを読み出す(ステップS401)。体動判定部101は、ステップS401において読み出した体動データに基づいて、当該体動データに関連付けられる単位期間において体動が発生したか否かを判定する(ステップS402)。体動が発生したと判定されれば処理はステップS404へと進み、そうでなければ処理はステップS403へと進む。
【0053】
ステップS403において、体動判定部101は、ステップS402において体動が発生していないと判定された単位期間の第1の血圧データを第2の血圧データ記憶部30に保存する。
【0054】
ステップS404において、血圧データ補間部102は、ステップS402において体動が発生していると判定された単位期間について、第1の血圧データの代わりとなる血圧データを補間生成する。それから、血圧データ補間部102は、ステップS404において補間生成した血圧データを第2の血圧データ記憶部30に保存する(ステップS405)。
【0055】
図1の呼吸周期推定部200の詳細が
図7に例示される。この呼吸周期推定部200は、FFT部201と、パワースペクトル算出部202と、パワースペクトル記憶部203と、ピーク選択部204と、LPF(Low Pass Filter)部205と、第2のスペクトル記憶部206と、IFFT(Inverse FFT)部207と、第3の血圧データ記憶部208と、呼吸性変動算出部209と、減衰量算出部210と、呼吸周期決定部211とを含む。
【0056】
FFT部201は、第2の血圧データ記憶部30から第2の血圧データを読み出す。FFT部201は、第2の血圧データに対してFFTを施し、当該第2の血圧データの周波数領域表現である第1のスペクトルを生成する。FFT部201は、第1のスペクトルを第1のスペクトル記憶部40に保存する。なお、FFT部201は、FFTを行う前に、第2の血圧データのデータ数を2の冪乗個になるように、当該第2の血圧データを成形してもよい。FFT部201は、他の時間−周波数変換部に置き換えられてもよい。
【0057】
パワースペクトル算出部202は、第1のスペクトル記憶部40から第1のスペクトルを読み出す。パワースペクトル算出部202は、第1のスペクトルのパワースペクトルを算出する。パワースペクトル算出部202は、パワースペクトルをパワースペクトル記憶部203に保存する。
【0058】
パワースペクトル記憶部203は、パワースペクトル算出部202によって算出されたパワースペクトルを格納する。パワースペクトル記憶部203に格納されたパワースペクトルは、ピーク選択部204によって必要に応じて読み出される。
【0059】
ピーク選択部204は、パワースペクトル記憶部203からパワースペクトルを読み出す。ピーク選択部204は、パワースペクトルにおいてピークを示すピーク周波数の1つを選択する。ピーク選択部204は、選択したピークをLPF部205に通知する。
【0060】
ピーク選択部204によって選択されているピーク周波数が呼吸周波数に相当するか否かの検証が、後述される呼吸周期決定部211によって行われる。そして、選択されているピーク周波数がユーザの呼吸周波数に相当しなかった場合には、呼吸周期決定部211は、ピーク選択部204に未選択のピーク周波数の1つを選択させる。このように呼吸周期に対応するピーク周波数を探索すれば、ユーザの個性、精神若しくは肉体の状態、または血圧の測定環境、などの要因に関わらず安定的かつ正確に呼吸周期を推定することができる。
【0061】
具体的には、ピーク選択部204は、パワースペクトルの全周波数帯よりも狭い解析範囲を設定し、この解析範囲からピーク周波数の1つを選択してもよい。解析範囲の一例が
図10に示される。解析範囲は、ユーザの主要な血圧変動成分が分布する周波数領域に比べて高周波数領域に設定されてよい。解析範囲は、ユーザの呼吸周期に対応する呼吸周波数が存在する可能性のある範囲に定められ得る。例えば、解析範囲は、呼吸周期の推定対象となるユーザまたは他のユーザの呼吸周波数の分布の実測に基づいて定められてもよいし、理論的に定められてもよい。
【0062】
ピーク選択部204は、さらに、閾値を設定し、この閾値以上であるピークを示すピーク周波数に限って選択してもよい。閾値は、例えば、解析範囲内のパワースペクトルの平均値であるがこれに限られない。ピーク選択部204は、さらに、
図11に例示されるように、周波数の降順にピーク周波数を選択してもよい。
図11の例において、Nはピーク周波数の選択順序を表しており、ピーク選択部204は、N=1のピーク周波数を最初に選択することになる。一般に、呼吸周波数は、ユーザの主要な血圧変動成分が分布する周波数領域に比べて高い周波数領域にある。故に、呼吸周期に対応するピーク周波数を無駄なく探索できるとともに、ユーザの血圧変動成分に起因して誤った呼吸周期が推定されることを防止できる。
【0063】
LPF部205は、第1のスペクトル記憶部40から第1のスペクトルを読み出し、ピーク選択部204から選択されているピーク周波数を通知される。LPF部205は、第1のスペクトルに対して低域通過型フィルタ処理を施して第2のスペクトルを生成する。この低域通過型フィルタ処理は、選択されているピーク周波数よりも低い遮断周波数が定められる。すなわち、このピーク周波数は、通過域に含まれない。これにより、第1のスペクトルのうちピーク周波数の成分を含む高周波成分をまとめて抑圧することができる。LPF部205は、第2のスペクトルを第2のスペクトル記憶部206に保存する。
【0064】
なお、LPF部205は、第1のスペクトルのうち選択されているピーク周波数の成分を抑圧し、第2のスペクトルを生成する周波数成分抑圧部に置き換えられてもよい。かかる周波数成分抑圧部は、例えば、かかるピーク周波数を阻止帯域に含む帯域除去型フィルタ処理を行ってもよい。
【0065】
第2のスペクトル記憶部206は、LPF部205によって生成された第2のスペクトルを格納する。第2のスペクトル記憶部206に格納された第2のスペクトルは、IFFT部207によって必要に応じて読み出される。
【0066】
IFFT部207は、第2のスペクトル記憶部206から第2のスペクトルを読み出す。IFFT部207は、第2のスペクトルに対してIFFTを施し、当該第2のスペクトルの時間領域表現である第3の血圧データを生成する。IFFT部207は、第3の血圧データを第3の血圧データ記憶部208に保存する。IFFT部207は、他の周波数−時間変換部に置き換えられてもよい。
【0067】
第3の血圧データ記憶部208は、呼吸性変動算出部209によって生成された第3の血圧データを格納する。第3の血圧データ記憶部208に格納された第3の血圧データは、呼吸性変動算出部209によって必要に応じて読み出される。
【0068】
呼吸性変動算出部209は、第2の血圧データ記憶部30から第2の血圧データを読み出し、第3の血圧データ記憶部208から第3の血圧データを読み出す。呼吸性変動算出部209は、第2の血圧データにおける呼吸性変動(第1の呼吸性変動と呼ぶ)と、第3の血圧データにおける呼吸性変動(第2の呼吸性変動と呼ぶ)とをそれぞれ算出する。呼吸性変動算出部209は、第1の呼吸性変動および第2の呼吸性変動を減衰量算出部210へと出力する。
【0069】
減衰量算出部210は、第1の呼吸性変動に対する第2の呼吸性変動の減衰量を算出する。LPF部205によって呼吸周期に対応する周波数成分が抑圧されていれば、第1の呼吸性変動に対して第2の呼吸性変動は大きく減衰する。すなわち、ピーク選択部204によって選択されているピーク周波数に対応する周期が呼吸周期であると推定することが可能となる。減衰量算出部210は、減衰量を呼吸周期決定部211に通知する。
【0070】
呼吸周期決定部211は、減衰量を減衰量算出部210から通知される。呼吸周期決定部211は、減衰量を閾値Yと比較する。減衰量が閾値Yよりも大きければ、呼吸周期決定部211は、ピーク選択部204によって選択されているピーク周波数に対応する周期をユーザの呼吸周期として決定する。それから、ピーク選択部204は、ユーザの呼吸周期を呼吸周期記憶部50に保存する。他方、減衰量が閾値Y以下であれば、呼吸周期決定部211は、ピーク選択部204に未選択のピーク周波数の1つを選択させる。
【0071】
ただし、ピーク選択部204は、ピーク周波数の選択可能回数を制限してもよい。具体的には、ピーク選択部204は、未選択のピーク周波数が残存する場合であっても、ピーク周波数の選択回数が上記選択可能回数に達していたならば、呼吸周期を推定できないとして、エラー処理(例えば、呼吸周期を推定できないことを示すエラー画面またはエラーメッセージの出力)を行ってもよい。未選択のピーク周波数が空になった場合も同様である。
【0072】
呼吸周期が推定できない場合には、例えば、呼吸周期の推定に用いる第2の血圧データのデータ数を変更(例えば、絞り込む)したり、体動ノイズ抑圧部100において異なる体動ノイズ抑圧処理を施して第2の血圧データを生成し直したりしてから、呼吸周期を再推定してもよい。
【0073】
図8に
図2のステップS500の詳細が例示される。
呼吸性変動算出部209は、ステップS400において生成された第2の血圧データにおける第1の呼吸性変動を算出する(ステップS501)。他方、FFT部201は、ステップS400において生成された第2の血圧データに対してFFTを施し、第1のスペクトルを生成する(ステップS502)。なお、ステップS501およびステップS502は、
図8とは異なる順序で実行され得る。
【0074】
パワースペクトル算出部202は、ステップS502において生成された第1のスペクトルのパワースペクトルを算出する(ステップS503)。ステップS503の後に、処理はステップS510へと進む。
【0075】
ステップS510において、ピーク選択部204は、ステップS503において算出されたパワースペクトルからピーク周波数の1つを選択する。なお、ステップS510の詳細は
図9を用いて後述される。
【0076】
LPF部205は、ステップS502において生成された第1のスペクトルに対して、ステップS510において選択されたピーク周波数よりも低い遮断周波数を設定した低域通過型フィルタ処理を施し、第2のスペクトルを生成する(ステップS521)。IFFT部207は、ステップS521において生成された第2のスペクトルに対してIFFTを施し、第3の血圧データを生成する(ステップS522)。
【0077】
呼吸性変動算出部209は、ステップS522において生成された第3の血圧データにおける第2の呼吸性変動を算出する(ステップS523)。減衰量算出部210は、ステップS501において算出された第1の呼吸性変動に対する、ステップS523において算出された第2の呼吸性変動の減衰量を算出する(ステップS524)。
【0078】
呼吸周期決定部211は、ステップS524において算出された減衰量を閾値Yと比較する(ステップS525)。減衰量が閾値Yよりも大きければ、呼吸周期決定部211は、ステップS510において選択されたピーク周波数に対応する周期をユーザの呼吸周期として決定する(ステップS526)。他方、減衰量が閾値Y以下であれば、処理はステップS510へと戻る。この結果、ピーク選択部204は未選択のピーク周波数の1つを選択することになる。
【0079】
図9に
図8のステップS510の詳細が例示される。
図8のステップS503の後に、ピーク選択部204は、パワースペクトルの全周波数帯よりも狭い解析範囲を設定する(ステップS511)。ピーク選択部204は、ステップS511において設定した解析範囲内のパワースペクトル(
図8のステップS503において算出)の平均値を算出し、これに略一致するように閾値を設定する(ステップS512)。ピーク選択部204は変数Nを1に初期化し、処理はステップS514に進む。
【0080】
ステップS514において、ピーク選択部204は、ステップS511において設定した解析範囲内で、ステップS512において設定した閾値以上のピークを示すピーク周波数のうちN番目に高周波のものを選択し、処理は
図8のステップS521へと進む。
【0081】
なお、ステップS525からステップS510に処理が戻った場合には、ピーク選択部204は変数Nを1インクリメントし(ステップS515)、処理はステップS514へと進む。
【0082】
なお、
図9の処理は一部変形されてもよい。具体的には、ステップS515とステップS514との間に判定ステップがさらに設けられてもよい。この判定ステップでは、Nが予め定められた選択可能回数以下であるか否かが判定される。Nが選択可能回数以下であるならば、処理はステップS514へと進む。他方、Nが選択可能回数を超えているならば、所定のエラー処理(例えば、呼吸周期を推定できないことを示すエラー画面またはエラーメッセージの出力)の後に処理は終了する。
【0083】
図1の呼吸性変動抑圧部300の詳細が
図12に例示される。この呼吸性変動抑圧部300は、周波数成分抑圧部301と、第3のスペクトル記憶部302と、IFFT部303とを含む。
【0084】
周波数成分抑圧部301は、第1のスペクトル記憶部40から第1のスペクトルを読み出し、呼吸周期記憶部50からユーザの呼吸周期を読み出す。周波数成分抑圧部301は、第1のスペクトルのうちユーザの呼吸周期に対応する周波数成分を抑圧し、第3のスペクトルを生成する。周波数成分抑圧部301は、第3のスペクトルを第3のスペクトル記憶部302に保存する。
【0085】
周波数成分抑圧部301は、例えば、ユーザの呼吸周期に対応する呼吸周波数よりも低い遮断周波数を設定した低域通過型フィルタ処理または呼吸周波数を阻止帯域に含む帯域除去型フィルタ処理を行ってよい。これにより、
図14に例示されるように、ユーザの呼吸周波数の成分が抑圧されることになる。
【0086】
第3のスペクトル記憶部302は、周波数成分抑圧部301によって生成された第3のスペクトルを格納する。第3のスペクトル記憶部302に格納された第3のスペクトルは、IFFT部303によって必要に応じて読み出される。
【0087】
IFFT部303は、第3のスペクトル記憶部302から第3のスペクトルを読み出す。IFFT部303は、第3のスペクトルに対してIFFTを施し、当該第3のスペクトルの時間領域表現である処理済み血圧データを生成する。IFFT部303は、処理済み血圧データを処理済み血圧データ記憶部60に保存する。IFFT部303は、他の周波数−時間変換部に置き換えられてもよい。
【0088】
図15に、第2の血圧データの波形(元波形)と、処理済み血圧データの波形(呼吸性変動抑圧後の波形)とを例示する。なお、
図15の第2の血圧データおよび処理済み血圧データは、
図14に例示したパワースペクトルに対応する。処理済み血圧データは、呼吸性変動による周期的な揺れが抑圧されているので、ユーザの呼吸以外の要因による血圧変動(例えば、血圧サージ)の分析に好適である。
【0089】
図13に
図2のステップS600の詳細が例示される。
周波数成分抑圧部301は、第1のスペクトルのうち、
図2のステップS500において推定されたユーザの呼吸周期に対応する周波数成分を抑圧し、第3のスペクトルを生成する(ステップS601)。
【0090】
IFFT部303は、ステップS601において生成された第3のスペクトルに対してIFFTを施し、第3のスペクトルの時間領域表現である処理済み血圧データを生成する(ステップS602)。IFFT部303は、ステップS602において生成した処理済み血圧データを処理済み血圧データ記憶部60に保存する(ステップS603)。
【0091】
以上説明したように、第1の実施形態に係る血圧データ処理装置は、ユーザの体動に関するノイズが抑圧された血圧データの周波数領域表現であるスペクトルに基づいてユーザの呼吸周期を推定する。具体的には、血圧データ処理装置は、このスペクトルのパワースペクトルにおいてピークを示すピーク周波数の1つを選択し、当該ピーク周波数の成分を抑圧した場合の呼吸性変動の減衰量に基づいて当該ピーク周波数が呼吸周波数に相当するか否かを検証する。故に、この血圧データ処理装置によれば、ユーザの個性、精神若しくは肉体の状態、体動の有無、血圧の測定環境、などの要因に関わらず安定的かつ正確に呼吸周期を推定することができる。
【0092】
また、この血圧データ処理装置は、推定した呼吸周期を用いて、ユーザの呼吸性変動を抑圧した処理済み血圧データを生成する。故に、この血圧データ処理装置によれば、ユーザの呼吸以外の要因による血圧変動(例えば、血圧サージ)の分析に好適な処理済み血圧データを得ることができる。すなわち、前述のように、
図14に示したパワースペクトルから呼吸周期を正しく推定し、
図15に示した処理済み血圧データを生成することができる。
【0093】
さらに、前述のように、この血圧データ処理装置によれば、ユーザの個性、精神若しくは肉体の状態、体動の有無、血圧の測定環境、などの要因に関わらず安定的かつ正確に呼吸周期を推定することができる。
図16に、
図14とは異なる位置に呼吸周波数があるパワースペクトルを例示する。この血圧データ処理装置は、かかるパワースペクトルが得られた場合にも、呼吸周期を正しく推定し、
図17に例示される処理済み血圧データを生成することができる。
【0094】
(第2の実施形態)
図18に例示されるように、第2の実施形態に係る血圧データ処理装置は、第1の血圧データ記憶部10と、体動データ記憶部20と、体動ノイズ抑圧部100と、第2の血圧データ記憶部30と、呼吸周期推定部200と、第1のスペクトル記憶部40と、呼吸周期記憶部50と、呼吸性変動抽出部700と、呼吸性変動データ記憶部70とを含む。
【0095】
呼吸性変動抽出部700は、第2の血圧データに含まれるユーザの呼吸性変動を抽出して呼吸性変動データを生成し、呼吸性変動データ記憶部70に保存する。
【0096】
具体的には、呼吸性変動抽出部700は、第1のスペクトル記憶部40から第1のスペクトルを読み出し、呼吸周期記憶部50から呼吸周期を読み出す。呼吸性変動抽出部700は、第1のスペクトルのうち呼吸周期に対応しない周波数成分を抑圧し、それから時間領域表現へと変換することで呼吸性変動データを生成する。
【0097】
呼吸性変動データ記憶部70は、呼吸性変動抽出部700によって生成された呼吸性変動データを格納する。呼吸性変動データ記憶部70に格納された呼吸性変動データは、例えば奇脈の検出のために図示されない血圧データ処理のための機能部または装置によって必要に応じて読み出されてよい。奇脈をモニタリングすることは、ユーザの喘息、COPD、心タンポナーデ等の症状の軽重を把握するのに役立つ。
【0098】
図18の血圧データ処理装置は、
図19に例示されるように動作する。
図19において、ステップS400およびステップS500は
図2と同様であり得る。
呼吸性変動抽出部700は、ステップS500において推定されたユーザの呼吸周期に基づいて、第2の血圧データに含まれるユーザの呼吸性変動を抽出し、呼吸性変動データを生成する(ステップS800)。ステップS800の詳細は、
図21を用いて後述される。
【0099】
図18の呼吸性変動抽出部700の詳細が
図20に例示される。この呼吸性変動抽出部700は、周波数成分抑圧部701と、第4のスペクトル記憶部702と、IFFT部703とを含む。
【0100】
周波数成分抑圧部701は、第1のスペクトル記憶部40から第1のスペクトルを読み出し、呼吸周期記憶部50からユーザの呼吸周期を読み出す。周波数成分抑圧部701は、第1のスペクトルのうちユーザの呼吸周期に対応しない周波数成分を抑圧(換言すれば、第1のスペクトルのうちユーザの呼吸周期に対応する周波数成分を抽出)し、第4のスペクトルを生成する。周波数成分抑圧部701は、第4のスペクトルを第4のスペクトル記憶部702に保存する。
【0101】
周波数成分抑圧部701は、例えば、ユーザの呼吸周期に対応する呼吸周波数を通過域に含む帯域通過型フィルタ処理または呼吸周波数よりも低い遮断周波数を設定した高域通過型フィルタ処理を行ってよい。これにより、
図22に例示されるように、ユーザの呼吸周波数の成分が抽出されることになる。
【0102】
第4のスペクトル記憶部702は、周波数成分抑圧部701によって生成された第4のスペクトルを格納する。第4のスペクトル記憶部702に格納された第4のスペクトルは、IFFT部703によって必要に応じて読み出される。
【0103】
IFFT部703は、第4のスペクトル記憶部702から第4のスペクトルを読み出す。IFFT部703は、第4のスペクトルに対してIFFTを施し、当該第4のスペクトルの時間領域表現である呼吸性変動データを生成する。IFFT部703は、呼吸性変動データを呼吸性変動データ記憶部70に保存する。IFFT部703は、他の周波数−時間変換部に置き換えられてもよい。
【0104】
図23に、第2の血圧データの波形(元波形)と、呼吸性変動データの波形(呼吸性変動抽出後の波形)とを例示する。なお、
図23の第2の血圧データおよび呼吸性変動データは、
図22に例示したパワースペクトルに対応する。呼吸性変動データは、呼吸性変動による周期的な揺れが抽出されているので、ユーザの奇脈などの分析に好適である。
【0105】
図21に
図19のステップS800の詳細が例示される。
周波数成分抑圧部701は、第1のスペクトルのうち、
図19のステップS500において推定されたユーザの呼吸周期に対応しない周波数成分を抑圧し、第4のスペクトルを生成する(ステップS801)。
【0106】
IFFT部703は、ステップS801において生成された第4のスペクトルに対してIFFTを施し、第4のスペクトルの時間領域表現である呼吸性変動データを生成する(ステップS802)。IFFT部703は、ステップS802において生成した呼吸性変動データを呼吸性変動データ記憶部70に保存する(ステップS803)。
【0107】
以上説明したように、第2の実施形態に係る血圧データ処理装置は、推定した呼吸周期を用いて、ユーザの呼吸性変動を抽出した呼吸性変動データを生成する。故に、この血圧データ処理装置によれば、ユーザの呼吸性変動(例えば、奇脈)の分析に好適な呼吸性変動データを得ることができる。
【0108】
(第3の実施形態)
図24に例示されるように、第3の実施形態に係る血圧データ処理装置は、第1の血圧データ記憶部10と、体動データ記憶部20と、体動ノイズ抑圧部100と、第2の血圧データ記憶部30と、呼吸周期推定部200と、第1のスペクトル記憶部40と、呼吸周期記憶部50と、呼吸性変動抑圧部300と、処理済み血圧データ記憶部60と、呼吸性変動抽出部700と、呼吸性変動データ記憶部70と、制御パラメータ設定部900とを含む。
【0109】
制御パラメータ設定部900は、呼吸性変動を抑圧する処理のイネーブル/ディセーブルを示す第1の制御パラメータを設定し、呼吸性変動を抽出する処理のイネーブル/ディセーブルを示す第2の制御パラメータを設定する。第1の制御パラメータおよび第2の制御パラメータは、血圧の被測定者であるユーザまたは他の人間(例えば、医師、健康指導者または血圧データ処理装置の製造者、販売者若しくは管理者)によって指定されてもよいし、自動的に決定されてもよい。制御パラメータ設定部900は、設定した第1の制御パラメータを呼吸性変動抑圧部300に通知し、設定した第2の制御パラメータを呼吸性変動抽出部700に通知する。
【0110】
第1の制御パラメータを設定可能とすることで、呼吸性変動の抑圧処理の実行/省略が選択可能となる。同様に、第2の制御パラメータを設定可能とすることで、呼吸性変動の抽出処理の実行/省略が選択可能となる。
【0111】
図24の呼吸性変動抑圧部300は、第1の制御パラメータがイネーブルを示す場合に呼吸性変動を抑圧する処理を行い、第1の制御パラメータがディセーブルを示す場合に呼吸性変動を抑圧する処理を行わない、という点で
図1の呼吸性変動抑圧部300とは異なる。
【0112】
図24の呼吸性変動抽出部700は、第2の制御パラメータがイネーブルを示す場合に呼吸性変動を抽出する処理を行い、第2の制御パラメータがディセーブルを示す場合に呼吸性変動を抽出する処理を行わない、という点で
図18の呼吸性変動抽出部700とは異なる。
【0113】
図24の血圧データ処理装置は、
図25に例示されるように動作する。
図25において、ステップS400およびステップS500は
図2と同様であり得る。また、
図25においてステップS800は、
図19と同様であり得る。
【0114】
具体的には、
図25では、ステップS500の後に、ステップS600の実行/省略を決定するためのステップS1001と、ステップS800の実行/省略を決定するためのステップS1002とが設けられる。なお、ステップS1001およびステップS1002は、
図25とは異なる順序で実行されてもよいし、1つのステップとして実行されてもよい。
【0115】
ステップS1001において、呼吸性変動抑圧部300は、制御パラメータ設定部900によって設定された第1の制御パラメータを参照する。第1の制御パラメータが呼吸性変動の抑圧処理のイネーブルを示す場合には処理はステップS600に進み、そうでなければステップS600が省略される。
【0116】
ステップS1002において、呼吸性変動抽出部700は、制御パラメータ設定部900によって設定された第2の制御パラメータを参照する。第2の制御パラメータが呼吸性変動の抽出処理のイネーブルを示す場合には処理はステップS800へと進み、そうでなければステップS800が省略される。
【0117】
以上説明したように、第3の実施形態に係る血圧データ処理装置は、第1の実施形態において説明した呼吸性変動の抑圧処理と、第2の実施形態において説明した呼吸性変動の抽出処理との実行/省略をそれぞれ選択可能とする。故に、この血圧データ処理装置によれば、必要に応じて、ユーザの呼吸以外の要因による血圧変動(例えば、血圧サージ)の分析に好適な処理済み血圧データを得ることも、ユーザの呼吸性変動(例えば、奇脈)の分析に好適な呼吸性変動データを得ることもできる。
【0118】
上述の実施形態は、本発明の概念の理解を助けるための具体例を示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な構成要素の付加、削除または転換をすることができる。
【0119】
上記各実施形態において説明された種々の機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0120】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、汎用のコンピュータを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD−ROM、CD−R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0121】
上記各実施形態の一部または全部は、特許請求の範囲のほか以下の付記に示すように記載することも可能であるが、これに限られない。
(付記1)
メモリと、
前記メモリに接続されたプロセッサと
を具備し、
前記プロセッサは、
(a)ユーザの第1の血圧データに含まれる前記ユーザの体動に関するノイズが抑圧された第2の血圧データの周波数領域表現である第1のスペクトルのパワースペクトルにおいてピークを示すピーク周波数の1つを選択し、
(b)前記第1のスペクトルのうち選択されているピーク周波数の成分を抑圧し、第2のスペクトルを生成し、
(c)前記第2の血圧データにおける第1の呼吸性変動を算出し、前記第2のスペクトルの時間領域表現である第3の血圧データにおける第2の呼吸性変動を算
出し、
(d)前記第1の呼吸性変動に対する前記第2の呼吸性変動の減衰量を算出し、
(e)前記減衰量が第1の閾値よりも大きければ前記選択されているピーク周波数に対応する周期を前記ユーザの呼吸周期として決定する
ように構成される、血圧データ処理装置。