(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性表面波フィルタの出力端子に接続された少なくとも1つの前記共振子のIDT(InterDigital Transducer)電極は、間引き電極を有し、
スミスチャートにおいて、前記弾性表面波フィルタの通過帯域における前記出力インピーダンスが、前記低雑音増幅器の前記入力インピーダンスと複素共役の位置にあるための電極パラメータは、前記間引き電極の本数である、
請求項1に記載の高周波モジュール。
前記電極パラメータは、前記弾性表面波フィルタの入力端子に接続された前記共振子におけるメイン波長の平均値である第1のメイン波長に対する、前記弾性表面波フィルタの出力端子に接続された前記共振子におけるメイン波長の平均値である第2のメイン波長の比であるメイン波長比であり、
前記メイン波長比は、1.01以上である、
請求項6に記載の高周波モジュール。
前記弾性表面波フィルタの出力端子に接続された前記共振子のIDT電極は、前記圧電基板上に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層の上に形成された第2の電極層とを有し、
前記層間絶縁膜が配置された位置における前記配線は、前記第1の電極層と前記第2の電極層とで構成されている、
請求項1に記載の高周波モジュール。
前記弾性表面波フィルタの出力端子に接続された前記共振子の前記IDT電極は、基板上に形成された第1の電極層と、前記第1の電極層の上に形成された第2の電極層とを有し、
前記層間絶縁膜が配置された位置における前記配線は、前記層間絶縁膜の上に形成された第2の電極層で構成されている、
請求項1に記載の高周波モジュール。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは一例であって本発明を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0036】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。また、図示した電極構造では、本発明の理解を容易とするために、共振子および反射器における電極指の本数を実際の電極指の本数よりも少なく図示している。また、図示したスミスチャートでは、弾性表面波フィルタの通過帯域における出力インピーダンスの部分を太線で示している。
【0037】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1について、
図1〜
図11Cを用いて説明する。
【0038】
[1.高周波モジュールの構成]
はじめに、本実施の形態にかかる高周波モジュール1の構成について説明する。
図1は、本実施の形態にかかる高周波モジュール1の構成を示す概念図である。
【0039】
図1に示すように、本実施の形態にかかる高周波モジュール1は、弾性表面波フィルタ10と低雑音増幅器20とを備えている。弾性表面波フィルタ10は、一端が高周波モジュール1の入力端子INに接続され、他端が低雑音増幅器20に接続されている。低雑音増幅器20は、受信後の微弱な電波をできるだけ雑音を増加させずに増幅する増幅器である。
【0040】
なお、弾性表面波フィルタ10において、入力インピーダンスとは、高周波モジュール1の入力端子IN側から弾性表面波フィルタ10をみたときの弾性表面波フィルタ10のインピーダンスのことをいう。つまり、
図1に矢印で示したSAW入力側インピーダンスのことをいう。また、出力インピーダンスとは、高周波信号の出力先である低雑音増幅器20が接続された側の端子(図示せず)から、弾性表面波フィルタ10をみたときの弾性表面波フィルタ10インピーダンスのことをいう。つまり、
図1に矢印で示したSAW出力側インピーダンスのことをいう。低雑音増幅器20に接続された弾性表面波フィルタ10は、入力インピーダンスと出力インピーダンスとが異なっている。
【0041】
[2.弾性表面波フィルタの構成]
図2Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの構成を示す概略図である。
図2Bは、
図2Aに示した弾性表面波フィルタの構成の基本構成を示す概略図である。
【0042】
弾性表面波フィルタ10は、縦結合型の弾性表面波フィルタである。
図2Aに示すように、弾性表面波フィルタ10は、入力端子11と出力端子12との間に、共振子13、共振子14および共振子15と、反射器16および反射器17とを備えている。共振子13、共振子14および共振子15は、反射器16側から反射器17側へと、この順に配置されている。
【0043】
図2Bに示すように、共振子13は、2つのIDT電極130aおよび130bが組み合わされた構成をしている。共振子13のIDT電極130aは、入力端子11に接続されている。IDT電極130bは、グランドに接続されている。同様に、共振子15は、2つのIDT電極150aおよび150bが組み合わされた構成をしている。共振子15のIDT電極150aは、入力端子11に接続されている。IDT電極150bは、グランドに接続されている。
【0044】
また、共振子13と共振子15との間に配置された共振子14は、2つのIDT電極140aおよび140bが組み合わされた構成をしている。共振子14のIDT電極140aは、グランドに接続されている。IDT電極140bは、出力端子12に接続されている。なお、共振子14の構成については、後に詳述する。
【0045】
また、反射器16は、2つのバスバー電極16aおよびバスバー電極16bと、バスバー電極16aとバスバー電極16bとの間に複数設けられ、バスバー電極16aおよびバスバー電極16bにそれぞれ両端が接続された電極指16cとを備えている。同様に、反射器17は、2つのバスバー電極17aおよびバスバー電極17bと、バスバー電極17aとバスバー電極17bとの間に複数設けられ、バスバー電極17aおよびバスバー電極17bにそれぞれ両端が接続された電極指17cとを備えている。
【0046】
ここで、共振子の構成について、一般的な共振子100を用いてより詳細に説明する。
図3は、一般的な弾性表面波フィルタの構成を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)に示した一点鎖線における矢視断面図である。
【0047】
図3の(a)および(b)に示すように、共振子100は、圧電基板123と、櫛形形状を有するIDT電極101aおよびIDT電極101bとで構成されている。
【0048】
圧電基板123は、例えば、所定のカット角で切断されたLiNbO
3の単結晶からなる。圧電基板123では、所定の方向に弾性表面波が伝搬する。
【0049】
図3の(a)に示すように、圧電基板123の上には、対向する一対のIDT電極101aおよびIDT電極101bが形成されている。IDT電極101aは、互いに平行な複数の電極指110aと、複数の電極指110aを接続するバスバー電極111aとで構成されている。また、IDT電極101bは、互いに平行な複数の電極指110bと、複数の電極指110bを接続するバスバー電極111bとで構成されている。IDT電極101aとIDT電極101bとは、IDT電極101aの複数の電極指110aのそれぞれの間に、IDT電極101bの複数の電極指110bのそれぞれが配置される構成となっている。
【0050】
また、IDT電極101aおよびIDT電極101bは、
図3の(b)に示すように、密着層124aと主電極層124bとが積層された構造となっている。
【0051】
密着層124aは、圧電基板123と主電極層124bとの密着性を向上させるための層であり、材料としては、例えば、NiCrが用いられる。
【0052】
主電極層124bは、材料として、例えば、Ptが用いられる。主電極層124bは、1つの層で構成された単層構造であってもよいし、複数の層が積層された積層構造であってもよい。
【0053】
保護層125は、IDT電極101aおよびIDT電極101bを覆うように形成されている。保護層125は、主電極層124bを外部環境から保護する、周波数温度特性を調整する、および、耐湿性を高めるなどを目的とする層である。保護層125は、例えば、二酸化ケイ素を主成分とする膜である。保護層125は、単層構造であってもよいし積層構造であってもよい。
【0054】
なお、密着層124a、主電極層124bおよび保護層125を構成する材料は、上述した材料に限定されない。さらに、IDT電極101aおよびIDT電極101bは、上記積層構造でなくてもよい。IDT電極101aおよびIDT電極101bは、例えば、Ti、Al、Cu、Pt、Au、Ag、Pdなどの金属又は合金から構成されてもよく、また、上記の金属又は合金から構成される層が複数積層された積層構造で構成されてもよい。また、保護層125は、形成されていなくてもよい。
【0055】
ここで、IDT電極101aおよびIDT電極101bの設計パラメータについて説明する。
図3の(b)に示すλは、IDT電極101aおよびIDT電極101bを構成する電極指110aおよび電極指110bのピッチという。弾性表面波フィルタのメイン波長は、IDT電極101aおよびIDT電極101bを構成する複数の電極指110aおよび電極指110bのピッチλで規定される。なお、メイン波長とは、後述するIDT電極101aおよび101bのメインピッチ領域における波長のことをいう。
【0056】
ピッチλとは、詳細には、同一のバスバー電極に接続された隣り合う電極指において、一方の電極指の幅の中央から他方の電極指の幅の中央までの長さのことをいう。例えば、
図3の(b)では、バスバー電極111aに接続された一の電極指110aの幅の中央から、当該一の電極指110aが接続されたバスバー電極111aと同一のバスバー電極111aに接続され、一の電極指110aに隣り合う他の電極指110aの幅の中央までの長さである。
【0057】
また、
図3の(b)に示すWは、共振子100におけるIDT電極101aの電極指110aおよびIDT電極101bの電極指110bの幅のことをいう。また、
図3の(b)に示すSは、電極指110aと電極指110bとの間隔のことをいう。また、
図3の(a)に示すLは、IDT電極101aおよびIDT電極101bの交叉幅といい、IDT電極101aの電極指110aとIDT電極101bの電極指110bとが重複する電極指の長さのことをいう。また、対数とは、電極指110aまたは電極指110bの本数のことをいう。
【0058】
また、IDT電極101aおよび101bのデューティとは、電極指110aおよび110bの繰り返しピッチλに対する、電極指110aおよび110bの幅が占める割合をいう。より具体的には、IDT電極101aおよび101bのデューティとは、
図3の(b)に示すように、IDT電極101aおよび101bの電極指110aおよび110bの幅をW、電極指110aと電極指110bとの間隔をSとしたときの、W/(W+S)のことをいう。また、メインデューティとは、後述するIDT電極101aおよび101bのメインピッチ領域におけるデューティのことをいう。
【0059】
また、共振子100の中央部分とは、共振子100のIDT電極101aおよびIDT電極101bにおいて弾性表面波の伝搬方向の中央から所定の範囲の部分をいう。所定の範囲については、後に詳述するように、例えば、共振子100の全体に対して中央部分の46%をいう。所定の範囲については、適宜変更してもよい。
【0060】
なお、共振子100の構造は、
図3の(a)および(b)に記載された構造に限定されない。また、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10の構造は、上述した構成に限らない。
【0061】
以下、共振子14の構成についてより詳細に説明する。
【0062】
図4は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aの構成の詳細を示す概略図である。
図5は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aにおいて、間引き電極が1本のときの共振子14aの構成を示す概略図である。
図6Aは、間引き電極が2本のときの共振子14aの構成を示す概略図である。
図6Bは、間引き電極が3本のときの共振子14aの構成を示す概略図である。
【0063】
図4に示すように、共振子14aは、2つのIDT電極140aおよび140bが組み合わされた構成をしている。IDT電極140aは、バスバー電極141aと、バスバー電極141aに一端が接続された複数の電極指142aを有している。同様に、IDT電極140bは、バスバー電極141bと、バスバー電極141bに一端が接続された複数の電極指142bを有している。電極指142aおよび142bのピッチは、共振子14aの両端近傍における電極指のピッチが、両端近傍以外の中央部分の電極指のピッチに比べて狭くなっている。なお、電極指のピッチが狭くなっている領域を狭ピッチ領域、その他の領域をメインピッチ領域という。狭ピッチ領域における電極指142aおよび142bの対数は、例えば3である。
【0064】
また、共振子14aは、グランドに接続されたIDT電極140aに、間引き電極143を有している。間引き電極143とは、
図5の(a)に示すように、出力端子12に接続されるIDT電極140bのバスバー電極141bに接続される複数の電極指142bのうちの一部が間引きされ、
図5の(b)に示すように、バスバー電極141bではなくグランドに接続されたIDT電極140aのバスバー電極141aに接続されたものをいう。
【0065】
間引き電極143を1本設ける場合には、
図5の(b)に示すように、IDT電極140aでは、バスバー電極141aに接続された2本の電極指142aの間に間引き電極143aが設けられる。したがって、IDT電極140bを構成する2本の電極指142bの間には、バスバー電極141aに接続された電極指が連続して3本並ぶこととなる。
【0066】
なお、間引き電極143の本数は、1本に限らず2本以上であってもよい。このとき、バスバー電極141bに接続された連続する2本以上の電極指142bを間引き電極143としてもよいし、連続しない2本以上の電極指142bを間引き電極143としてもよい。
【0067】
例えば、連続する2本の間引き電極143aおよび143bを設ける場合、
図6Aに示すように、IDT電極140bを構成する2本の電極指142bの間には、バスバー電極141aに接続された電極指142aと間引き電極143aおよび143bとが連続して5本並ぶこととなる。また、連続する3本の間引き電極143a、143bおよび143cを設ける場合、
図6Bに示すように、IDT電極140bを構成する2本の電極指142bの間には、バスバー電極141aに接続された電極指142aと間引き電極143a、143bおよび143cとが連続して7本並ぶこととなる。後に詳述するように、間引き電極143の本数を変更することによって、弾性表面波フィルタ10aと低雑音増幅器20の雑音指数および利得の整合をとることができる。すなわち、間引き電極の本数は、弾性表面波フィルタ10aと低雑音増幅器20の雑音指数および利得の整合をとるための電極パラメータである。
【0068】
なお、間引き電極143は、上述のようにグランドに接続されたバスバー電極141aに接続されてもよいし、出力端子12に接続されたバスバー電極141bに接続されてもよい。
【0069】
図7は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aの出力端子側の反射特性を示す図である。
図7では、間引き電極143を0本、1本、2本、3本と連続して設けたときの弾性表面波フィルタ10aの出力端子側の反射特性を、それぞれ実線、破線、一点鎖線、2点鎖線で示している。
【0070】
間引き電極143の本数を0本、1本、2本、3本と増加させると、
図7に示すように、出力インピーダンスはスミスチャート上において容量性側に移動する。したがって、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを容量性側に変化させたいときには、間引き電極143を用いることが有効であることがわかる。また、連続して設ける間引き電極143の本数を増加することにより、出力インピーダンスをより容量性側に変化させることができる。
【0071】
ここで、共振子14aにおいて、間引き電極143が設けられる位置について説明する。
図8は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aにおいて、間引き電極143aを設ける位置について説明するための、共振子14aの構成を示す概略図である。
図9は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aにおいて、間引き電極143を設ける位置と弾性表面波フィルタ10aの出力端子側の信号損失との関係を示す図である。なお、
図9の縦軸は、紙面下方に向かうほど信号損失が大きく、紙面上方に向かうほど信号損失が小さいことを示している。
【0072】
図8に示すように、間引き電極143は、共振子14aの全体に対して中央部分に設けられる。なお、間引き電極143を設ける領域を、間引き領域とよぶ。
【0073】
共振子14aにおいて、弾性表面波の伝搬方向の両端近傍には、上述したように狭ピッチ領域が設けられている。ここで、共振子14aにおいて間引き電極143を設ける位置を変更した場合、狭ピッチ領域において電極指142aおよび142bの配置を変更することは、共振モードに何らかの影響を与えることになると想定される。
【0074】
例えば、弾性表面波フィルタ10aの出力端子側のインピーダンスの整合をとるために、共振子14aの両端の所定の範囲に間引き電極143を設けた場合には、
図9に示すように、弾性表面波フィルタ10aの出力端子側のインピーダンスの不整合による信号損失(不整合損失)が劣化、すなわち、大きくなっており、出力端子側のインピーダンスの整合が取れていないことがわかる。一方、共振子14aの中央部分に間引き電極143aを設けた場合には、不整合損失は小さくなり(例えば、5dB程度)、出力端子側のインピーダンスの整合が取れていることがわかる。なお、間引き電極143を設けない場合の不整合損失は5.5dB程度であり、共振子14aの中央部分に間引き電極143を設けた場合、すなわち間引き領域を共振子14の中央部分とした場合には、間引き電極143aを設けない場合と同等に不整合損失は劣化しないことがわかる。より具体的には、
図9において不整合損失が劣化しないための間引き領域は、共振子14a全体に対して中央部分の46%程度である。
【0075】
以上より、間引き電極143は、共振子14aの中央部分に設けるのがよい。例えば、間引き電極143は、共振子14aの中央部分の46%の範囲に設けられることとしてもよい。
【0076】
[3.弾性表面波フィルタの出力インピーダンスの調整]
次に、
図1に示したように、弾性表面波フィルタ10aに低雑音増幅器20を接続する場合の、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスの調整について説明する。
【0077】
図10は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aの、出力インピーダンスの調整方法を説明するための図である。
【0078】
弾性表面波フィルタ10aは、
図1に示したように低雑音増幅器20に接続され高周波モジュール1として使用されるため、高周波モジュール1全体の伝送特性が良くなるように、出力インピーダンスを調整する必要がある。つまり、低雑音増幅器20の入力インピーダンスに合わせて、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整する。
【0079】
詳細には、スミスチャートにおいて、弾性表面波フィルタ10a側から低雑音増幅器20をみたときの低雑音増幅器20の入力インピーダンスの複素共役の位置に、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスが位置するように、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整する。ここで、低雑音増幅器20の入力インピーダンスとは、低雑音増幅器20の利得と雑音指数の両方の特性向上を満足する入力インピーダンスである。つまり、スミスチャートにおいて、低雑音増幅器20の利得が最大となる低雑音増幅器20の入力インピーダンスと、低雑音増幅器20の雑音指数が最小となる低雑音増幅器20の入力インピーダンスとの間の領域に位置する入力インピーダンスである。この領域に対応する複素共役の領域(
図10に示すSAW出力端の狙いImp領域)に、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整する。
【0080】
つまり、
図10に示すように、スミスチャートにおいて、弾性表面波フィルタ10aの通過帯域における出力インピーダンスが、低雑音増幅器20の利得が最大となるときの弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンス(第1の出力インピーダンス)と、低雑音増幅器20の雑音指数が最小となるときの弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンス(第2の出力インピーダンス)との間の領域(SAW出力端の狙いImp領域)に存在するように、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整する。
【0081】
このとき、上述した間引き電極143を設けることにより、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整する。また、間引き電極143の本数を増減することにより、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整する。すなわち、間引き電極143の本数を、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスをSAW出力端の狙いImp領域に調整するための電極パラメータとする。また、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整するには、弾性表面波フィルタ10aの出力端子12側のIDT電極140bにおける電極指142bを、バスバー電極141aに接続して間引き電極143とするとよい。これにより、共振子14aにおいて一部の領域だけ同じ極性の電極指が並ぶため、間引き電極143を設けない場合に比べて共振子14aの容量が小さくなる。これにより、間引き電極143を設けた共振子14aが接続された、弾性表面波フィルタ10aの出力端子側のインピーダンスが変化することとなる。また、
図7に示したように、間引き電極143を設けることにより、弾性表面波フィルタ10aの出力端子側のインピーダンスは、容量性側に変化することとなるため、スミスチャート上におけるSAW出力端の狙いImp領域に、弾性表面波フィルタ10aの出力端子側のインピーダンスを容易に調整することができる。
【0082】
図11Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整したときの、弾性表面波フィルタ10aの通過特性を示す図である。
図11Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整したときの、弾性表面波フィルタ10aの出力端子側の反射特性を示す図である。
図11Cは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整したときの、高周波モジュール1の通過特性を示す図である。
図11A〜
図11Cでは、間引き電極143aを設けない場合の特性を実線、間引き電極143を設けた場合の特性を破線で示している。
【0083】
図11Aに示すように、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整した場合、弾性表面波フィルタ10a単体では、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整しない場合に比べて挿入損失が大きくなっている。このときの弾性表面波フィルタ10aの通過帯域における出力インピーダンスは、
図11Bに示すように、上述したSAW出力端の狙いImp領域に調整されている。
【0084】
一方、弾性表面波フィルタ10aに低雑音増幅器20を含めた高周波モジュール1全体の通過特性については、
図11Cに示すように、通過帯域において挿入損失が向上していることがわかる。したがって、弾性表面波フィルタ10aにおいて、出力端子側の共振子14aに間引き電極143を設け、スミスチャート上において上述したSAW出力端の狙いImp領域に弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整することにより、弾性表面波フィルタ10aに低雑音増幅器20を含めた高周波モジュール1全体の伝送特性を向上することができる。
【0085】
[4.効果等]
以上、本実施の形態にかかる高周波モジュールによると、弾性表面波フィルタ10aにおいて、出力端子側の共振子14aに間引き電極143を設け、スミスチャート上において上述したSAW出力端の狙いImp領域に弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを調整することにより、弾性表面波フィルタ10aに低雑音増幅器20を含めた高周波モジュール1全体の伝送特性を向上することができる。
【0086】
また、このとき、連続して設けられる間引き電極143の本数を増加することにより、弾性表面波フィルタ10aの出力インピーダンスを、より容量性に変化させることができる。
【0087】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、
図12A〜
図14Bを用いて説明する。本実施の形態にかかる高周波モジュールが実施の形態1にかかる高周波モジュール1と異なる点は、弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスの調整方法として、出力端子側の共振子14bのIDT電極が、交叉幅方向に2つに分割されている点である。
【0088】
はじめに、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10bの構成について説明する。
図12Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10bの構成を示す概略図である。
図12Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10bにおいて、共振子14bの構成を示す概略図である。
【0089】
図12Aに示すように、弾性表面波フィルタ10bは、共振子13、共振子14bおよび共振子15を有している。共振子13および共振子15の構成は、実施の形態1に示した共振子13および共振子15と同一であるため、説明を省略する。
【0090】
共振子14bは、
図12Aに示すように、交叉幅方向に2つに分割されたIDT電極を有している。つまり、共振子14bは、
図12Bに示すように、交叉幅方向に直列に接続された第1のIDT電極145aと第2のIDT電極145bを有している。つまり、弾性表面波フィルタ10bにおいて、IDT電極の分割数は2である。
【0091】
詳細には、
図12Bに示すように、共振子14bは、IDT電極140a、IDT電極140bおよびIDT電極140cとが組み合わされた構成をしている。IDT電極140aは、実施の形態1に示したIDT電極140aと同様、バスバー電極141aと、バスバー電極141aに一端が接続された複数の電極指142aを有している。同様に、IDT電極140bは、バスバー電極141bと、バスバー電極141bに一端が接続された複数の電極指142bを有している。IDT電極140cは、バスバー電極141cと、バスバー電極141cに一端が接続され、バスバー電極141cからバスバー電極141aに向けて設けられた電極指142cと、バスバー電極141cに一端が接続され、バスバー電極141cからバスバー電極141bに向けて設けられた電極指142dとを有している。電極指142aと電極指142cとは、弾性表面波の伝搬方向に交互に配置されている。同様に、電極指142bと電極指142dとは、弾性表面波の伝搬方向に交互に配置されている。
【0092】
これにより、第1のIDT電極145aは、IDT電極140aとIDT電極140cのバスバー電極141cおよび電極指142cとで構成される。また、第2のIDT電極145bは、IDT電極140bとIDT電極140cのバスバー電極141cおよび電極指142dとで構成される。バスバー電極141cは、第1のIDT電極145aと第2のIDT電極145bに共通して用いられている。
【0093】
また、共振子14bにおいて、バスバー電極141aとバスバー電極141bとの間の距離は、IDT電極が交叉幅方向に分割されていない共振子14におけるバスバー電極141aとバスバー電極141bとの間の距離と同一である。つまり、第1のIDT電極145aと第2のIDT電極145bの交叉幅方向の長さは、IDT電極が交叉幅方向に分割されていない共振子14の交叉幅方向の長さよりも短くなっている。例えば、第1のIDT電極145aと第2のIDT電極145bの交叉幅方向の長さは、それぞれ、IDT電極が交叉幅方向に分割されていない場合の交叉幅方向の長さの1/2程度となっている。
【0094】
この構成により、以下に示すように、弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスを増加することができる。
【0095】
ここで、上述した共振子14bにより弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスを調整した場合の、弾性表面波フィルタ10bおよび高周波モジュール1の伝送特性について説明する。
【0096】
図13は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10bの出力端子側の反射特性を示す図である。
図14Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10bの出力端子側の通過特性を示す図である。
図14Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10bを有する高周波モジュール1全体の出力端子側の雑音特性を示す図である。
図13では、IDT電極を交叉幅方向に分割していない共振子14を用いた弾性表面波フィルタ10の特性を実線、IDT電極を交叉幅方向に分割した共振子14bを用いた弾性表面波フィルタ10bの特性を一点鎖線で示している。
図14Aおよび
図14Bでは、IDT電極を交叉幅方向に分割していない共振子14を用いた弾性表面波フィルタ10の特性を実線、IDT電極を交叉幅方向に分割した共振子14bを用いた弾性表面波フィルタ10bの特性を破線で示している。
【0097】
上述のように、IDT電極を交叉幅方向に分割した共振子14bを用いた弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスは、
図13に示すように、IDT電極を交叉幅方向に分割していない共振子14を用いた弾性表面波フィルタ10の出力インピーダンスに対して、スミスチャート上において、通過帯域における出力インピーダンスが増加する方向に移動している。
【0098】
これは、IDT電極を2分割することにより、交叉幅方向の長さの1/2程度となった第1のIDT電極145aと第2のIDT電極145bが交叉幅方向に直列接続されたことになるため、結果としてインピーダンスが4倍程度となるためである。したがって、
図13に示したように、弾性表面波フィルタ10bにおいて、出力インピーダンスは増加している。
【0099】
また、
図14Aに示すように、弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスを調整した場合、弾性表面波フィルタ10b単体では、弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスを調整しない場合に比べて挿入損失が大きくなっている。なお、このときの弾性表面波フィルタ10bの通過帯域における出力インピーダンスは、実施の形態1において
図11Bに示したSAW出力端の狙いImp領域に調整されている。
【0100】
一方、弾性表面波フィルタ10bに低雑音増幅器20を含めた高周波モジュール1全体については、
図14Bに示すように、IDT電極を2分割した弾性表面波フィルタ10bを用いると、IDT電極を2分割していない場合に比べて高周波モジュール1の通過帯域において雑音指数が低減していることがわかる。これは、IDT電極を分割した共振子14bにより弾性表面波フィルタ10bを構成することにより、弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスが、スミスチャート上において低雑音増幅器20のNFサークルに近づいたため、高周波モジュール1全体の雑音特性が向上したものと考えられる。
【0101】
したがって、弾性表面波フィルタ10bにおいて、出力端子側の共振子14bのIDT電極を分割した構成とし、スミスチャート上においてSAW出力端の狙いImp領域に弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスを調整することにより、弾性表面波フィルタ10bに低雑音増幅器20を含めた高周波モジュール1全体の伝送特性を向上することができる。
【0102】
なお、上述した弾性表面波フィルタ10bでは、共振子14のIDT電極を2つに分割した共振子14bについてのみ説明したが、共振子14bのIDT電極の分割数は、2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0103】
また、上述した弾性表面波フィルタ10bでは、弾性表面波フィルタ10bの出力インピーダンスを調整するため、弾性表面波フィルタ10bの出力端子に接続された共振子14bについてIDT電極を分割した構成としたが、弾性表面波フィルタ10bの入力インピーダンスを調整する場合には、弾性表面波フィルタ10の入力端子に接続された共振子のIDT電極を分割してもよい。
【0104】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について、
図15〜
図18Bを用いて説明する。本実施の形態にかかる高周波モジュールが実施の形態1にかかる高周波モジュール1と異なる点は、弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスの調整方法として、弾性表面波フィルタ10cの入力端子側に接続された共振子におけるメイン波長と出力端子側に接続された共振子におけるメイン波長とを調整している点である。
【0105】
まず、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの構成の一例として、共振子を3つ有する縦結合型の弾性表面波フィルタ10cについて説明する。
【0106】
図15は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10cの構成を示す概略図である。
図15に示すように、弾性表面波フィルタ10cは、縦結合型の弾性表面波フィルタである。弾性表面波フィルタ10cは、入力端子11と出力端子12との間に、共振子13、共振子14cおよび共振子15と、反射器16および反射器17とを備えている。共振子13、共振子14cおよび共振子15は、反射器16側から反射器17側へと、この順に配置されている。
【0107】
また、共振子13と共振子15は、弾性表面波フィルタ10cの入力端子11に接続されている。共振子14cは、弾性表面波フィルタ10cの出力端子12に接続されている。弾性表面波フィルタ10cの入力端子11における入力インピーダンス、および、出力端子12における出力インピーダンスは、それぞれ50Ωである。
【0108】
共振子13、共振子15の構成は、実施の形態1に示した弾性表面波フィルタ10と同様である。また、反射器16および反射器17の構成は、実施の形態1に示した弾性表面波フィルタ10と同様である。
【0109】
共振子14cは、実施の形態1に示した共振子14と同様、2つのIDT電極140aおよび140bが組み合わされた構成をしている。IDT電極140aは、バスバー電極141aと、バスバー電極141aに一端が接続された複数の電極指142aを有している。同様に、IDT電極140bは、バスバー電極141bと、バスバー電極141bに一端が接続された複数の電極指142bを有している。
【0110】
弾性表面波フィルタ10cの入力端子11に接続された共振子13および共振子15と、弾性表面波フィルタ10cの出力端子12に接続された共振子14cとは、メイン波長の平均値が異なっている。なお、出力端子12に接続された共振子14cについては、出力端子12に接続された共振子は1つのみであるため、共振子14cのメイン波長そのものがメイン波長の平均値である。共振子13および共振子15のメイン波長は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0111】
例えば、共振子13および共振子15におけるメイン波長は、それぞれ4.515μm、4.525μmであり、これらのメイン波長の平均値は4.520μmとしてもよい。また、共振子14cのメイン波長は、4.542μmとしてもよい。また、このとき、弾性表面波フィルタ10cの出力端子12に接続された共振子14cにおけるメイン波長の平均値の、弾性表面波フィルタ10cの入力端子11に接続された共振子13および15におけるメイン波長の平均値に対する比(メイン波長比)は、1.005である。
【0112】
なお、弾性表面波フィルタ10cの入力端子11に接続された共振子13および共振子15のメイン波長の平均値は、本発明における第1のメイン波長に相当する。また、弾性表面波フィルタ10cの出力端子12に接続された共振子14cのメイン波長の平均値は、本発明における第2のメイン波長に相当する。
【0113】
このように、弾性表面波フィルタ10cの入力端子11に接続された共振子13および共振子15のメイン波長の平均値(第1のメイン波長)に対する、弾性表面波フィルタ10cの出力端子12に接続された共振子14cのメイン波長の平均値(第2のメイン波長)の比(メイン波長比)を変えることにより、以下に説明するように、弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスを調整することができる。
【0114】
以下、上述したようにメイン波長比を変更することにより弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスを調整した場合の、弾性表面波フィルタ10cの伝送特性について説明する。
図16Aおよび
図16Bでは、弾性表面波フィルタ10cにおいてメイン波長比を1.005、1.008、1.012としたときの、弾性表面波フィルタ10cの伝送特性について説明する。
【0115】
図16Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10cの出力端子側の反射特性を示す図である。
図16Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10cの出力端子側の通過特性を示す図である。
図16Aおよび
図16Bでは、メイン波長比を1.005、1.008、1.012としたときの弾性表面波フィルタ10cの特性を、それぞれ実線、一点鎖線、破線で示している。
【0116】
メイン波長比を1.005、1.008、1.012としたときの弾性表面波フィルタ10cの通過帯域における出力インピーダンスは、
図16Aに示すように、メイン波長比が大きくなるにつれてスミスチャートにおいて右方向に移動している。すなわち、メイン波長比を大きくするにつれて、弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスは増加することがわかる。
【0117】
したがって、弾性表面波フィルタ10cにおいて、共振子13、14cおよび15のメイン波長比を大きくすることにより、弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスを50Ωよりも増加させることができる。
【0118】
なお、
図1に示した高周波モジュール1のように、弾性表面波フィルタ10cの後段に低雑音増幅器20を設ける場合、弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスは、70Ω程度とすることが好ましい。弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスを70Ω程度まで増加させるには、メイン波長比は1.01以上とすることが望ましい。
【0119】
また、
図16Bに示すように、メイン波長比を1.005、1.008、1.012としたとき、弾性表面波フィルタ10cの通過帯域幅は拡大している。すなわち、メイン波長比を大きくするにつれて、弾性表面波フィルタ10cの通過帯域は拡大することがわかる。
【0120】
また、
図17は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの他の構成として、共振子を5つ有する縦結合型の弾性表面波フィルタ10dの構成を示す概略図である。
【0121】
図17に示すように、弾性表面波フィルタ10dは、入力端子11と出力端子12との間に、共振子23a、共振子24a、共振子25a、共振子26aおよび共振子27aと、反射器16および反射器17とを備えている。共振子23a、共振子24a、共振子25a、共振子26aおよび共振子27aは、反射器16側から反射器17側へと、この順に配置されている。
【0122】
共振子23a、共振子25aおよび共振子27aは、弾性表面波フィルタ10dの入力端子11に接続されている。共振子24aおよび共振子26aは、弾性表面波フィルタ10dの出力端子12に接続されている。弾性表面波フィルタ10dの入力端子11における入力インピーダンス、および、出力端子12における出力インピーダンスは、それぞれ50Ωである。
【0123】
共振子23a、共振子25aおよび共振子27aの構成は、上述した弾性表面波フィルタ10cの共振子13と同様である。また、共振子24aおよび共振子26aの構成は、上述した弾性表面波フィルタ10cの共振子14と同様である。
【0124】
弾性表面波フィルタ10dの入力端子11に接続された共振子23a、共振子25aおよび共振子27aと、弾性表面波フィルタ10dの出力端子12に接続された共振子24aおよび共振子26aとは、メイン波長の平均値が異なっている。共振子23a、共振子25aおよび共振子27aそれぞれのメイン波長は、同一であってもよいし異なっていてもよい。また、共振子24aおよび共振子26aのメイン波長は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
【0125】
なお、弾性表面波フィルタ10dの入力端子11に接続された共振子23a、共振子25aおよび共振子27aのメイン波長の平均値は、本発明における第1のメイン波長に相当する。また、弾性表面波フィルタ10dの出力端子12に接続された共振子24aおよび共振子26aのメイン波長の平均値は、本発明における第2のメイン波長に相当する。
【0126】
弾性表面波フィルタ10dの入力端子11に接続された共振子23a、共振子25aおよび共振子27aのメイン波長の平均値(第1のメイン波長)に対する、弾性表面波フィルタ10dの出力端子12に接続された共振子24aおよび共振子26aのメイン波長の平均値(第2のメイン波長)の比(メイン波長比)を異なるものとすることにより、以下に説明するように、弾性表面波フィルタ10dの出力インピーダンスを調整することができる。
【0127】
以下、上述したようにメイン波長比を変更することにより弾性表面波フィルタ10dの出力インピーダンスを調整した場合の、弾性表面波フィルタ10dの伝送特性について説明する。
図18Aおよび
図18Bでは、弾性表面波フィルタ10dにおいてメイン波長比を1.005、1.008、1.012としたときの、弾性表面波フィルタ10dの伝送特性について説明する。
【0128】
図18Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10dの出力端子側の反射特性を示す図である。
図18Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10dの出力端子側の通過特性を示す図である。
図18Aおよび
図18Bでは、メイン波長比を1.005、1.008、1.012としたときの弾性表面波フィルタ10dの特性を、それぞれ実線、一点鎖線、破線で示している。
【0129】
メイン波長比を1.005、1.008、1.012としたときの弾性表面波フィルタ10dの通過帯域における出力インピーダンスは、
図18Aに示すように、上述した弾性表面波フィルタ10cの場合と同様、メイン波長比が大きくなるにつれてスミスチャートにおいて右方向に移動している。すなわち、メイン波長比を大きくするにつれて、弾性表面波フィルタ10dの出力インピーダンスは増加することがわかる。
【0130】
したがって、弾性表面波フィルタ10dにおいて、共振子23a、共振子24a、共振子25a、共振子26aおよび共振子27aのメイン波長比を大きくすることにより、弾性表面波フィルタ10dの出力インピーダンスを50Ωよりも増加させることができる。
【0131】
また、
図18Aと
図16Aとを比較すると、共振子を5つ有する弾性表面波フィルタ10dの出力インピーダンスは、共振子を3つ有する弾性表面波フィルタ10cの出力インピーダンスと比較して、弾性表面波フィルタ10dの通過帯域における出力インピーダンスの巻きが小さいことがわかる。つまり、弾性表面波フィルタ10dのように共振子を増加することにより、弾性表面波フィルタ10dの出力インピーダンスを増加させると共に安定させることができる。
【0132】
なお、弾性表面波フィルタ10dにおいても、出力インピーダンスを70Ω程度まで増加させるためには、メイン波長比は1.01以上とすることが望ましい。
【0133】
また、
図18Bに示すように、メイン波長比を1.005、1.008、1.012としたとき、弾性表面波フィルタ10dの通過帯域幅は、上述した弾性表面波フィルタ10cと同様、拡大している。すなわち、メイン波長比を大きくするにつれて、弾性表面波フィルタ10dの通過帯域は拡大することがわかる。
【0134】
なお、本実施の形態では、3つの共振子を有する弾性表面波フィルタ10cと、5つの共振子を有する弾性表面波フィルタ10dについて説明したが、共振子の数はこれらに限定されるものではなく、変更してもよい。
【0135】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について、
図19〜
図22Bを用いて説明する。本実施の形態にかかる高周波モジュールが実施の形態1にかかる高周波モジュール1と異なる点は、弾性表面波フィルタ10の出力インピーダンスの調整方法として、弾性表面波フィルタ10の出力端子側に接続された共振子におけるメインデューティを調整している点である。
【0136】
まず、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの構成の一例として、共振子を3つ有する縦結合型の弾性表面波フィルタ10eについて説明する。
【0137】
図19は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10eの構成を示す概略図である。
【0138】
図19に示すように、弾性表面波フィルタ10eは、縦結合型の弾性表面波フィルタである。弾性表面波フィルタ10eは、実施の形態3に示した弾性表面波フィルタ10cと同様、入力端子11と出力端子12との間に、共振子13、共振子14dおよび共振子15と、反射器16および反射器17とを備えている。共振子13、共振子14dおよび共振子15は、反射器16側から反射器17側へと、この順に配置されている。
【0139】
また、共振子13と共振子15は、弾性表面波フィルタ10eの入力端子11に接続されている。共振子14dは、弾性表面波フィルタ10eの出力端子12に接続されている。共振子13および共振子15の構成は、実施の形態1に示した弾性表面波フィルタ10と同様である。共振子14dは、メインデューティ以外の構成については実施の形態1に示した共振子14と同様である。
【0140】
共振子14dのメインデューティは、例えば、0.64である。弾性表面波フィルタ10eの出力端子12に接続された共振子14dのメインデューティを変えることにより、以下に説明するように、弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスを調整することができる。
【0141】
以下、上述したようにメインデューティを変更することにより弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスを調整した場合の、弾性表面波フィルタ10eの伝送特性について説明する。
図20Aおよび
図20Bでは、弾性表面波フィルタ10eにおいてメインデューティを0.64、0.71、0.75としたときの、弾性表面波フィルタ10eの伝送特性について説明する。
【0142】
図20Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10eの出力端子側の反射特性を示す図である。
図20Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10eの出力端子側の通過特性を示す図である。
図20Aおよび
図20Bでは、共振子14dのメインデューティを0.64、0.71、0.75としたときの弾性表面波フィルタ10eの特性を、それぞれ一点鎖線、実線、破線で示している。
【0143】
共振子14dのメインデューティを0.64、0.71、0.75としたときの弾性表面波フィルタ10eの通過帯域における出力インピーダンスは、
図20Aに示すように、メインデューティが大きくなるにつれてスミスチャートにおいて左方向に移動している。すなわち、メインデューティを大きくするにつれて、弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスは減少する。
【0144】
したがって、弾性表面波フィルタ10eにおいて、共振子14dのメインデューティを小さくすることにより、弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスを50Ωよりも増加させることができる。
【0145】
なお、
図1に示した高周波モジュール1のように、弾性表面波フィルタ10eの後段に低雑音増幅器20を設ける場合、弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスは、70Ω程度とすることが好ましい。弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスを70Ω程度まで増加させるには、共振子14dのメインデューティは0.55より大きく0.75より小さくすることが望ましい。なお、弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスを50Ωとする場合には、共振子14dのメインデューティは、例えば0.4より大きく0.6より小さい値である。
【0146】
なお、
図20Bに示すように、メインデューティを0.64、0.71、0.75と変化させても、弾性表面波フィルタ10eの通過帯域幅はほとんど変化がない。すなわち、メインデューティを変化させることにより、弾性表面波フィルタ10eの通過帯域を変化させることなく、弾性表面波フィルタ10eの出力インピーダンスを変えることができる。
【0147】
図21は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの他の構成として、共振子を5つ有する縦結合型の弾性表面波フィルタ10fの構成を示す概略図である。
【0148】
図21に示すように、弾性表面波フィルタ10fは、入力端子11と出力端子12との間に、共振子23b、共振子24b、共振子25b、共振子26bおよび共振子27bと、反射器16および反射器17とを備えている。共振子23b、共振子24b、共振子25b、共振子26bおよび共振子27bは、反射器16側から反射器17側へと、この順に配置されている。
【0149】
共振子24bおよび共振子26bは、弾性表面波フィルタ10fの入力端子11に接続されている。共振子23b、共振子25bおよび共振子27bは、弾性表面波フィルタ10fの出力端子12に接続されている。弾性表面波フィルタ10fの入力端子11における入力インピーダンス、および、出力端子12における出力インピーダンスは、それぞれ50Ωである。
【0150】
共振子24bおよび共振子26bの構成は、上述した弾性表面波フィルタ10eの共振子13と同様である。また、共振子23b、共振子25bおよび共振子27bの構成は、上述した弾性表面波フィルタ10eの共振子14dと同様である。
【0151】
ここで、上述したようにメインデューティを変更することにより弾性表面波フィルタ10fの出力インピーダンスを調整した場合の、弾性表面波フィルタ10fの伝送特性について説明する。
図22Aおよび
図22Bでは、弾性表面波フィルタ10fにおいてメインデューティを小、中、大としたときの、弾性表面波フィルタ10fの伝送特性について説明する。弾性表面波フィルタ10fにおいてメインデューティが小のときとは、共振子23bおよび27bのメインデューティを0.64、共振子25bのメインデューティを0.67とした場合である。また、弾性表面波フィルタ10fにおいてメインデューティが中のときとは、共振子23bおよび27bのメインデューティを0.70、共振子25bのメインデューティを0.74とした場合である。弾性表面波フィルタ10fにおいてメインデューティが大のときとは、共振子23bおよび27bのメインデューティを0.74、共振子25bのメインデューティを0.77とした場合である。
【0152】
図22Aは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10fの出力端子側の反射特性を示す図である。
図22Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10fの出力端子側の通過特性を示す図である。
図22Aおよび
図22Bでは、メインデューティを上述した小、中、大としたときの弾性表面波フィルタ10fの特性を、それぞれ実線、一点鎖線、破線で示している。
【0153】
出力端子12に接続された共振子23b、25bおよび27bのメインデューティを上述した小、中、大としたときの、弾性表面波フィルタ10fの通過帯域における出力インピーダンスは、弾性表面波フィルタ10eと同様、
図22Aに示すように、共振子23b、25bおよび27bのメインデューティが大きくなるにつれてスミスチャートにおいて左方向に移動している。すなわち、共振子23b、25bおよび27bのメインデューティを大きくするにつれて、弾性表面波フィルタ10fの出力インピーダンスは減少する。
【0154】
したがって、弾性表面波フィルタ10fにおいて、共振子23b、25bおよび27bのメインデューティを小さくすることにより、弾性表面波フィルタ10fの出力インピーダンスを50Ωよりも増加させることができる。
【0155】
なお、
図1に示した高周波モジュール1のように、弾性表面波フィルタ10fの後段に低雑音増幅器20を設ける場合、弾性表面波フィルタ10fの出力インピーダンスは、70Ω程度とすることが好ましい。弾性表面波フィルタ10fの出力インピーダンスを70Ω程度まで増加させるには、共振子23b、25bおよび27bのそれぞれのメインデューティは、0.55より大きく0.75より小さくすることが望ましい。
【0156】
なお、
図22Bに示すように、共振子23b、25bおよび27bのメインデューティを上述した小、中、大と変化させても、弾性表面波フィルタ10fの通過帯域幅はほとんど変化がない。すなわち、共振子23b、25bおよび27bのメインデューティを変化させることにより、弾性表面波フィルタ10fの通過帯域を変化させることなく、弾性表面波フィルタ10fの出力インピーダンスを変えることができる。
【0157】
なお、メインデューティの値は、上述した値に限らず、適宜変更してもよい。
【0158】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について、
図23〜
図25Bを用いて説明する。本実施の形態にかかる高周波モジュールが実施の形態1にかかる高周波モジュール1と異なる点は、弾性表面波フィルタ10gにおいて、出力端子に接続された共振子と出力端子との間の配線について、当該配線と基板との間に層間絶縁膜40が配置されている点である。
【0159】
図23は、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10gの構成を示す概略図である。
図23に示すように、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10gは、2つの縦結合型の弾性表面波共振器10gaおよび10gbが直列に接続された構成をしている。
【0160】
第1の弾性表面波共振器10gaは、
図23に示すように、共振子33a、共振子34aおよび共振子35aと、反射器36aおよび反射器37aとを備えている。共振子33a、共振子34aおよび共振子35aは、反射器36a側から反射器37a側へと、この順に配置されている。共振子33a、共振子34aおよび共振子35aと、反射器36aおよび反射器37aの構成は、実施の形態1に示した弾性表面波フィルタ10の共振子13、共振子14および共振子15と、反射器16および反射器17の構成と同様である。
【0161】
同様に、第2の弾性表面波共振器10gbは、
図23に示すように、共振子33b、共振子34bおよび共振子35bと、反射器36bおよび反射器37bとを備えている。共振子33b、共振子34bおよび共振子35bは、反射器36b側から反射器37b側へと、この順に配置されている。共振子33b、共振子34bおよび共振子35bと、反射器36bおよび反射器37bの構成は、実施の形態1に示した弾性表面波フィルタ10の共振子13、共振子14および共振子15と、反射器16および反射器17の構成と同様である。
【0162】
共振子34aにおいて、一対のIDT電極のうちの一方は、弾性表面波フィルタ10gの入力端子11に接続されている。共振子34bにおいて、一対のIDT電極のうちの一方は、弾性表面波フィルタ10gの出力端子12に接続されている。また、共振子34aの一対のIDT電極のうちの他方と共振子34bの一対のIDT電極のうちの他方は、それぞれグランドに接続されている。
【0163】
また、共振子33aにおいて、一対のIDT電極のうちの一方は、共振子33bの一対のIDT電極のうちの一方に接続されている。また、共振子33aの一対のIDT電極のうちの他方と、共振子33bの一対のIDT電極のうちの他方は、それぞれグランドに接続されている。
【0164】
同様に、共振子35aにおいて、一対のIDT電極のうちの一方は、共振子35bの一対のIDT電極のうちの一方に接続されている。また、共振子35aの一対のIDT電極のうちの他方と、共振子35bの一対のIDT電極のうちの他方は、それぞれグランドに接続されている。
【0165】
この構成により、弾性表面波フィルタ10gは、入力端子11と出力端子12との間に、縦結合型の第1の弾性表面波共振器10gaおよび第2の弾性表面波共振器10gbとが直接に接続された構成となっている。このように、弾性表面波フィルタ10gが複数段の弾性表面波共振器で構成されている場合、各弾性表面波共振器のグランドを確保するために、層間絶縁膜を用いて立体的に配線を行う場合がある。すなわち、1つの引き回し配線の上に層間絶縁膜を設け、当該層間絶縁膜の上に他の引き回し配線を形成することがある。
【0166】
本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10gでは、このような立体的な配線が必要な位置ではなく、立体的に配線を必要としない、共振子34bの一方のIDT電極と出力端子12とを接続する配線39の位置において、配線39と圧電基板42との間に層間絶縁膜40を設けている。
【0167】
図24Aは、
図23に示した弾性表面波フィルタ10gのB−B線における構成を示す断面図である。
図24Bは、
図23に示した弾性表面波フィルタ10gのC−C線における構成を示す断面図である。
【0168】
弾性表面波フィルタ10gは、
図24Aおよび
図24Bに示すように、実施の形態1に示した弾性表面波フィルタ10と同様、圧電基板42の上に形成されている。また、共振子のIDT電極に接続された配線は、IDT電極と同様の構成をしている。
【0169】
具体的には、
図23において共振子34bの一方のIDT電極とグランドとを接続する配線38は、
図24Aに示すように、圧電基板42に形成された第1の電極層38aと、第1の電極層38a上に形成された第2の電極層38bとで構成されている。
【0170】
第1の電極層38aは、IDT電極の主電極層と一体に形成されており、例えばPt、Cu、Au、Ag、Ta、W等で構成されている。なお、第1の電極層38aは、圧電基板42側に密着層(
図3の(b)参照)を備えていてもよい。第1の電極層38aの厚さは、サブミクロンオーダーであり、例えば0.2μmである。第2の電極層38bは、例えばPt、Cu、Au、Ag、Ta、W等で構成されている。第2の電極層38bの厚さは、ミクロンオーダーであり、例えば2μmである。
【0171】
また、第2の電極層38bを覆うように、保護層44が形成されている。保護層44は、例えばSiO
2等で構成されている。保護層44の厚さは、数十nmであり、例えば30nmである。
【0172】
また、
図23において共振子34bの他方のIDT電極と出力端子12とを接続する配線39は、
図24Bに示すように、圧電基板42に形成された層間絶縁膜40の上に形成されている。すなわち、上述した配線38と比較して、配線39では、第1の電極層38aに代えて、層間絶縁膜40が形成されている。
【0173】
層間絶縁膜40は、例えばポリイミド等で構成されている。層間絶縁膜の厚さは、ミクロンオーダーであり、例えば3μmである。また、配線39は、
図24Aに示した第2の電極層38bと同一の材料で構成されている。配線39は、例えばPt、Cu、Au、Ag、Ta、W等で構成されている。なお、
図24Bに示すように、圧電基板42上には、層間絶縁膜40および配線39を覆うように、保護層44が形成されている。
【0174】
出力端子12に接続された配線39と圧電基板42との間に層間絶縁膜40を設けることで、層間絶縁膜40を設けない配線38の構成と比較して、圧電基板42と配線39との間の容量結合を小さくすることができる。これにより、弾性表面波フィルタ10gの出力インピーダンスを誘導性へと調整することができる。
【0175】
また、
図24Bに示すように、層間絶縁膜40の面積を配線39の面積よりも大きくすることにより、圧電基板42と配線39との間の容量結合をさらに小さくすることができる。これにより、弾性表面波フィルタ10gの出力インピーダンスを、より誘導性へと調整することができる。
【0176】
以下、層間絶縁膜40を設けた場合と設けない場合の弾性表面波フィルタ10gの伝送特性について説明する。
【0177】
図25Aは、本実施の形態にかかる他の構成の弾性表面波フィルタ10gの出力端子側の反射特性を示す図である。
図25Bは、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10gに低雑音増幅器20を接続した後の雑音特性を示す図である。
図25Aおよび
図25Bでは、出力端子12に接続された配線39と圧電基板42との間に層間絶縁膜40を設けていない場合の弾性表面波フィルタ10gの特性を実線、第1の電極層38aに代えて層間絶縁膜40を設けた場合の弾性表面波フィルタ10gの特性を破線で示している。
【0178】
第1の電極層38aに代えて層間絶縁膜40を設けたときの弾性表面波フィルタ10gの通過帯域における出力インピーダンスは、
図25Aに示すように、層間絶縁膜40を設けていない場合の弾性表面波フィルタ10gの通過帯域における出力インピーダンスに比べて、スミスチャート上において右上、すなわち誘導性側に移動していることがわかる。したがって、層間絶縁膜40を設けることにより、圧電基板42と配線39との間の容量結合を小さくすることができる。
【0179】
また、弾性表面波フィルタ10gの出力側に低雑音増幅器20が接続された高周波モジュール1では、
図25Bに示すように、配線39と圧電基板42との間に層間絶縁膜40を設けることにより、層間絶縁膜40を設けない場合に比べて雑音指数が低減ことがわかる。したがって、弾性表面波フィルタ10gにおいて配線39と圧電基板42との間に層間絶縁膜40を設けることにより、高周波モジュール1全体において雑音特性を向上させることができる。
【0180】
なお、上述した弾性表面波フィルタ10gでは、出力端子12に接続された配線39は、配線38と比較して、第1の電極層38aに代えて層間絶縁膜40が形成されているとしたが、配線39は、第1の電極層と第2の電極層の両方を有する構成であってもよい。
【0181】
図26は、
図23に示した弾性表面波フィルタ10gのC−C線における他の構成を示す断面図である。
図26に示す配線39は、
図24Aに示した配線38と同様、第1の電極層39aと第2の電極層39bとを有している。第1の電極層39aおよび第2の電極層39bの構成は、第1の電極層38aおよび第2の電極層38bと同様である。配線39と圧電基板42との間には、層間絶縁膜40が形成されている。圧電基板42上には、層間絶縁膜40および配線39を覆うように、保護層44が形成されている。
【0182】
配線39と圧電基板42との間に層間絶縁膜40を設ける場合、第1の電極層39aに代えて層間絶縁膜40を設けるほうが、第1の電極層39aを残したまま層間絶縁膜40を設けるよりも、弾性表面波フィルタ10gの出力インピーダンスの変化は大きくなる。したがって、弾性表面波フィルタ10gの出力インピーダンスの変化を大きく調整したい場合には、第1の電極層39aに代えて層間絶縁膜40を設け、弾性表面波フィルタ10gの出力インピーダンスの変化を小さく調整したい場合には、第1の電極層39aを残したまま層間絶縁膜40を設けるのがよい。
【0183】
なお、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタ10gは、第1の弾性表面波共振器10gaと第2の弾性表面波共振器10gbとを備える構成としたが、これに限らず、弾性表面波フィルタ10gは、1段の縦結合型の弾性表面波共振器で構成されるものであってもよいし、多段の縦結合型の弾性表面波共振器で構成されるものであってもよい。
【0184】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上述した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、例えば以下に示す変形例のように、適宜変更を加えてもよい。
【0185】
例えば、上述した実施の形態では、弾性表面波フィルタの出力インピーダンスを調整するための電極パラメータとして、出力端子に接続された共振子の間引き電極の本数、共振子の交叉幅方向の分割数、共振子のメイン波長およびメインデューティについて説明したが、電極パラメータとして他のパラメータを用いてもよい。例えば、共振子の電極指のピッチ、電極指の対数等を電極パラメータとしてもよい。また、電極パラメータの値は、上述した実施の形態に示された値に限らず、適宜変更してもよい。
【0186】
また、弾性表面波フィルタを構成する共振子の数は、3つまたは5つに限らず、変更してもよい。
【0187】
また、共振子を構成する基板、電極、保護層等の材料は、上述したものに限らず、適宜変更してもよい。また、各共振子の電極指の大きさ、ピッチおよび対数は、上述した条件を満たすものであれば変更してもよい。
【0188】
また、上述した実施の形態では、弾性表面波フィルタと低雑音増幅器とを直接接続しているが、弾性表面波フィルタと低雑音増幅器との間に、さらに整合素子を設けてもよい。なお、本実施の形態にかかる弾性表面波フィルタによると、弾性表面波フィルタの出力インピーダンスを調整することができるので、整合素子を設けずに上述のように直接弾性表面波フィルタと低雑音増幅器とを直接接続した場合でも、低損失化および低雑音化を図ることができる。
【0189】
その他、上述の実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で上述の実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。