特許第6747475号(P6747475)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6747475粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6747475
(24)【登録日】2020年8月11日
(45)【発行日】2020年8月26日
(54)【発明の名称】粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20200817BHJP
   C09J 7/24 20180101ALI20200817BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20200817BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20200817BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20200817BHJP
   C09J 133/12 20060101ALI20200817BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20200817BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20200817BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200817BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200817BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J7/24
   C09J7/25
   C09J7/10
   C09J133/14
   C09J133/12
   C09J11/06
   C09J4/02
   B32B27/00 M
   B32B27/30 A
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-134389(P2018-134389)
(22)【出願日】2018年7月17日
(65)【公開番号】特開2020-12047(P2020-12047A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2020年1月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】山本 真之
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴迪
【審査官】 武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−212526(JP,A)
【文献】 特開2017−110050(JP,A)
【文献】 特開昭61−064773(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/088099(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00−201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル共重合体、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体及び分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体を含有する粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記アクリル共重合体はアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位及び窒素含有単量体に由来する単位を含有し、
前記アクリル共重合体の全質量に対して、前記アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が50〜90質量%であり、前記ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜35質量%であり、前記メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜15質量%であり、
前記多官能単量体は、1分子内にビスフェノール骨格を有する単量体であり、
前記単官能単量体は、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン及びビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記粘着剤層は実質的に熱硬化型架橋剤を含有しない、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層のゲル分率が5質量%以下である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層は、自己開裂型光重合開始剤をさらに含む請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層における前記多官能単量体の含有量は、前記アクリル共重合体100質量部に対して、5〜40質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層における前記単官能単量体の含有量は、前記アクリル共重合体100質量部に対して、1〜20質量部である請求項1〜4のいずれか1項記載の粘着シート。
【請求項6】
前記アクリル共重合体におけるカルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、前記アクリル共重合体の全質量に対して、0.1質量%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射することで硬化させた粘着剤層と、硬化後の粘着剤層の少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の粘着シートの粘着剤層を被着体に貼合した後、活性エネルギー線を照射して前記粘着剤層を硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、剥離シート付き粘着シート、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられている。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合せる用途に透明な粘着シートが使用されており、表示装置と入力装置との貼合にも透明な粘着シートが使用されている。
【0003】
光学部材用の粘着シートとしては、粘着剤層に溶剤型粘着剤を用いた粘着シートが広く使用されている。溶剤型粘着剤は、一般的にアクリル樹脂を主成分とする。このようなアクリル樹脂は、溶液重合と呼ばれる手法で、アクリルモノマーを溶剤に溶解させた溶剤中で重合反応を行うことによって得られる。溶液重合では重合が進行するにつれてポリマーの分子量が上昇し反応溶液の粘度が上昇することから、粘着剤として必要な凝集力を得るために必要な分子量を有するポリマーの合成には技術的な制限がある。そこで、粘着剤に必要な凝集力を確保するため、粘着剤組成物にイソシアネート系化合物やエポキシド系化合物などのアクリル樹脂と反応し得る架橋剤を配合することが行われている。このような架橋剤は経時でアクリル樹脂と反応することで架橋ネットワークを構築し、粘着剤層の凝集力を高める。
【0004】
例えば、特許文献1には、炭素数が14以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを62〜99.9重量%及び水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体0.1〜8重量%を含む単量体混合物から得られる共重合体であるアクリル樹脂と、架橋剤、並びにカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル単量体を含有する粘着剤組成物が開示されている。ここでは、架橋剤を含有しつつも、塗工から裁断等の加工までの養生期間が短く、加工性に優れる粘着シートを提供することが検討されている。
【0005】
また、光学部材用の粘着シートを形成する方法としては、熱(又は活性エネルギー線)による重合をした後に、活性エネルギー線(又は熱)による重合を行う2段重合により硬化する方法が用いられる場合がある。このような粘着シートは、例えば、熱硬化性および活性エネルギー線硬化性の両方を備える粘着剤組成物(以下、「デュアル硬化型粘着剤組成物」ということがある。)から形成されるため、熱硬化性及び活性エネルギー線硬化性を有している。このため、被着体との貼合前に、例えば熱硬化のみを行うことで仮接着させることができ、その後、さらに活性エネルギー線により硬化させる(後硬化またはアフターキュアと言われる)ことで被着体に強固に接着できる。
【0006】
例えば、特許文献2には、非架橋性(メタ)アクリル酸エステル単位(a1)及び架橋性官能基を有するアクリル単量体単位(a2)を含むベースポリマー(A)と、ラウリルアクリレート(b1)を含む単量体(B)と、熱によりベースポリマー(A)と反応する架橋剤(C)と、活性エネルギー線の照射により単量体(B)の重合反応を開始させる重合開始剤(D)と、溶剤(E)と、を含有する粘着剤組成物を加熱により半硬化させてなる粘着剤層を含む粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−216722号公報
【特許文献2】特開2016−084391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者らが特許文献1及び2に記載の粘着シートの特性を検討したところ、基材密着性が不十分な場合があり、特に高温高湿条件下においては、基材密着性が十分に得られない場合があることを見出した。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、高温高湿条件下においても優れた基材密着性を発揮し得る粘着シートを提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、アクリル共重合体を構成する単量体として、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート及びメチル(メタ)アクリレートを用い、かつアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートが占める割合を所定範囲とし、粘着剤層における熱硬化型架橋剤の含有量を0.1質量%以下とすることにより、高温高湿条件下においても優れた基材密着性を発揮し得る粘着シートが得られることを見出した。
具体的に、本発明は、以下の構成を有する。
【0010】
[1] アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する粘着シートであって、
アクリル共重合体はアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、及びメチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有し、
アクリル共重合体の全質量に対して、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が50〜90質量%であり、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜35質量%であり、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜15質量%であり、
粘着剤層の全質量に対して、熱硬化型架橋剤の含有量が0.1質量%以下である、粘着シート。
[2] 粘着剤層のゲル分率が5質量%以下である[1]に記載の粘着シート。
[3] 粘着剤層は、自己開裂型光重合開始剤をさらに含む[1]又は[2]に記載の粘着シート。
[4] 粘着剤層は、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体及び分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体をさらに含む[1]〜[3]のいずれかに記載の粘着シート。
[5] 粘着剤層における多官能単量体の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、5〜40質量部である[4]に記載の粘着シート。
[6] 粘着剤層における単官能単量体の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、1〜20質量部である[4]又は[5]記載の粘着シート。
[7] 単官能単量体が、アルキル(メタ)アクリレートである[4]〜[6]のいずれかに記載の粘着シート。
[8] アクリル共重合体は、窒素含有単量体に由来する単位をさらに含む[1]〜[7]のいずれかに記載の粘着シート。
[9] アクリル共重合体におけるカルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、0.1質量%以下である[1]〜[8]のいずれかに記載の粘着シート。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の粘着シートの両表面に剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを備える剥離シート付き粘着シート。
[11] [3]〜[9]のいずれかに記載の粘着シートの粘着剤層に活性エネルギー線を照射することで硬化させた粘着剤層と、硬化後の粘着剤層の少なくとも一方の面側に被着体と、を備える積層体。
[12] [3]〜[9]のいずれかに記載の粘着シートの粘着剤層を被着体に貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化させる工程を含む積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温高湿条件下においても優れた基材密着性を発揮し得る粘着シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、定荷重剥離距離の測定方法を説明する図である。
図2図2は、剥離シートもしくは基材を有する粘着シートの断面を表す概略図である。
図3図3は、本発明の積層体の一例の断面を表す概略図である。
図4図4は、本発明の積層体の他の一例の断面を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
なお、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表す。
また、本明細書において、“単量体”と“モノマー”は同義であり、“重合体”と“ポリマー”は同義である。
【0015】
<粘着シート>
本発明の粘着シートは、アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する。ここで、アクリル共重合体はアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、及びメチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有する。アクリル共重合体の全質量に対して、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は50〜90質量%であり、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は5〜35質量%であり、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜15質量%である。そして、粘着剤層の全質量に対して、熱硬化型架橋剤の含有量は、0.1質量%以下である。
【0016】
本発明の粘着シートは上記構成を有するため、優れた基材密着性を発揮することができる。例えば、85℃、相対湿度85%といった高温高湿条件下においても優れた基材密着性を発揮することができる。ここで、基材密着性は、定荷重剥離を測定することで評価することができる。
【0017】
定荷重剥離の測定を行う際には、まず以下の方法で測定用の試験片を作製する。粘着シートの一方の面にトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、フジタックTD60UL 厚み60μm)をハンドローラーを用いて貼合し、積層フィルムを作製する。この積層フィルムを幅25mm、長さ100mmの大きさにカットし、次いで、粘着シートの他方の面の幅25mm、長さ100mm粘着面のうち幅25mm、長さ75mmの領域を被着体(ハードコート層付ポリカーボネート板:三菱ガス化学社製、ユーピロンMR58 厚み1mm)のハードコート面側に2kgの圧着ローラーを用いて貼り付ける。この状態で、40℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に30分間保持させて被着体に密着させる。次いで、測定用の試験片のトリアセチルセルロースフィルム側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射する。
【0018】
試験片を85℃、相対湿度85%の環境下で30分放置した後、85℃の環境下で図1のように積層フィルムの非貼合領域(幅25mm、長さ25mm)の長さ方向端部に100gの錘34を吊るし、被着体32の平面に対して90°の方向に100gの荷重を加え、その状態でさらに5分間放置する。その間に積層フィルムが剥離した箇所の長さL(定荷重剥離距離)を測定する。85℃、相対湿度85%の環境下における定荷重剥離距離が20mm以下である場合に、基材密着性が良好であると判定できる。
【0019】
また、本発明の粘着シートは上記構成を有することにより、優れた加工性を有している。具体的には、アクリル共重合体においてアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートを主成分として配合することにより、架橋剤を用いなくても、粘着シートの端面ベタツキが抑えられ、例えば、抜き加工時の打抜き刃への粘着剤の付着やそれに伴う粘着剤層の変形などを防ぐことができる。
【0020】
<粘着シートの構成>
本発明の粘着シートは、粘着剤層を有する。粘着シートは、粘着剤層のみから構成される単層の粘着シートであってもよい。また、粘着シートは、片面に基材(好ましくは透明基材)を備えた片面粘着シートでも、両面粘着シートでもよい。両面粘着シートとしては、粘着剤層からなる単層の粘着シート、粘着剤層を複数積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に他の粘着剤層を積層した多層の粘着シート、粘着剤層と粘着剤層の間に支持体を積層した多層の粘着シート、支持体の片面に粘着剤層が積層し、他方の面に他の粘着剤層が積層した多層の粘着シートが挙げられる。両面粘着シートが支持体を有する場合、支持体として透明な支持体を用いたものが好ましい。支持体としては、透明基材と同様に光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。このような両面粘着シートは、粘着シート全体としての透明性にも優れることから、光学部材同士の接着に好適に用いることができる。
【0021】
本発明の粘着シートが片面粘着シートである場合、図2に示されるように、粘着剤層11の片面に透明基材12aを備えた構成であってもよい。この場合、粘着剤層11のもう一方の面は剥離シート12bによって覆われていることが好ましい。粘着シートを使用する場合はこの剥離シート12bを剥がして所望の被着体に粘着剤層11が密着するように貼合し、その後、活性エネルギー線を照射するなどして硬化(後硬化)をすることが好ましい。透明基材としてはポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることができる。また、これらの透明基材の粘着剤層側には易接着層を設けていてもよい。さらに、透明基材の粘着剤層とは逆面にはハードコート層や反射防止層、防汚層、紫外線吸収層などの機能層が備えられていてもよい。
【0022】
本発明は、粘着シートの両表面に剥離シートを備える剥離シート付き粘着シートに関するものであってもよい。本発明の粘着シートの両表面に剥離シートが備えられている場合、図2に示されるように粘着剤層11の両表面に剥離シート12a及び12bを有することが好ましい。
【0023】
剥離シートとしては、剥離シート用基材とこの剥離シート用基材の片面に設けられた剥離剤層とを有する剥離性積層シート、あるいは、低極性基材としてポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。
剥離性積層シートにおける剥離シート用基材には、紙類、高分子フィルムが使用される。剥離剤層を構成する剥離剤としては、例えば、汎用の付加型もしくは縮合型のシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル基含有化合物が用いられる。特に、反応性が高い付加型シリコーン系剥離剤が好ましく用いられる。
シリコーン系剥離剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−4527、SD−7220等や、信越化学工業(株)製のKS−3600、KS−774、X62−2600などが挙げられる。また、シリコーン系剥離剤中にSiO2単位と(CH33SiO1/2単位あるいはCH2=CH(CH3)SiO1/2単位を有する有機珪素化合物であるシリコーンレジンを含有することが好ましい。シリコーンレジンの具体例としては、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のBY24−843、SD−7292、SHR−1404等や、信越化学工業(株)製のKS−3800、X92−183等が挙げられる。
剥離性積層シートとして、市販品を用いてもよい。例えば、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである重セパレータフィルムや、帝人デュポンフィルム(株)製の離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムである軽セパレータフィルムを挙げることができる。
【0024】
本発明の粘着シートが両面粘着シートの場合は、剥離力が互いに異なる1対の剥離シートを有することが好ましい。すなわち、剥離シートは、剥離しやすくするために、剥離シート12aと剥離シート12bとの剥離性を異なるものとすることが好ましい。一方からの剥離性と他方からの剥離性とが異なると、剥離性が高い方の剥離シートだけを先に剥離することが容易となる。その場合、貼合方法や貼合順序に応じて剥離シート12aと剥離シート12bの剥離性を調整すればよい。
【0025】
また、本発明は、粘着シートの少なくとも一方の面に透明フィルムを備える透明フィルム付き粘着シートに関するものであってもよい。この場合、透明フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム及びシクロオレフィンポリマーフィルムから選択される少なくとも1種であることが好ましい。透明フィルム付き粘着シートは、透明フィルム/粘着シート/剥離シートがこの順で積層されたシートであってもよい。
【0026】
<粘着剤層>
本発明の粘着シートは、粘着剤層を有し、この粘着剤層は後硬化性を有していることが好ましい。後硬化性を有する粘着シートは、粘着剤層を被着体に貼合させた後に硬化する性質を有している。
【0027】
粘着剤層のゲル分率は10質量%未満であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。なお、粘着剤層のゲル分率は0質量%であってもよい。
【0028】
本明細書においては、粘着剤層に以下の条件で活性エネルギー線を照射するか、もしくは粘着剤層を以下の条件で加熱することにより、粘着剤層のゲル分率が10質量%以上高まったことをもって、粘着剤層は後硬化性を有していると言える。粘着剤層が活性エネルギー線を照射することで後硬化する場合、粘着剤層の両表面に光学用透明PETセパレーターを貼合し、光学用透明PETセパレーター側から活性エネルギー線(高圧水銀灯又はメタルハライドランプ)を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射する。なお、粘着剤層が加熱により後硬化する場合、粘着剤層の両表面にセパレータフィルムを貼合した状態で100℃のオーブンにて3時間加熱処理を行う。
【0029】
後硬化後の粘着剤層のゲル分率は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、65質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
【0030】
粘着剤層のゲル分率は、以下の方法で測定した値である。まず、粘着シート(粘着剤層)約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうする。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定する。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求める。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0031】
粘着剤層の厚みは、用途に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、5〜500μmであることが好ましく、10〜300μmであることがより好ましく、12〜100μmであることが特に好ましい。粘着剤層の厚みを上記範囲内とすることにより、高温高湿条件下における基材密着性をより効果的に高めることができる。また、粘着剤のはみ出しやべたつきを抑制することができるため加工性を高めることができる。さらに、粘着剤層の厚さを上記範囲内とすることにより、両面粘着シートの製造が容易となる。
【0032】
<アクリル共重合体>
アクリル共重合体は、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位、及びメチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有する。本明細書において、「単位」は重合体を構成する繰り返し単位(単量体単位)である。なお、アクリル共重合体は、表示装置の視認性を低下させない程度の透明性を有するものが好ましい。
【0033】
<アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレート>
アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートは、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートである。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルコキシ基の炭素数が1〜12であり、アルコキシ基に結合するアルキレン基の炭素数が1〜18であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜8であることが好ましく、1〜4であることがより好ましく、1もしくは2であることが特に好ましい。また、アルコキシ基に結合するアルキレン基の炭素数は1〜12であることが好ましく、1〜8であることがさらに好ましく、1〜4であることが一層好ましく、1〜3であることが特に好ましい。
【0034】
このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2−メトキシメチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−エトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−エトキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとして、2−メトキシエチル(メタ)アクリレートを用いることにより、粘着剤層は、ベタツキを抑えつつ基材に対する濡れ性を上げることが出来る。
【0035】
アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、90質量%以下であることが好ましい。アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、粘着剤層は、基材に対して密着しやすくなる一方で、後硬化後の粘着剤層は高硬度となり、高温耐久性や加工性をより高めることができる。
【0036】
<ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート>
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロシキブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート及び8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロシキブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種は好ましく用いられる。
【0037】
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、被着体への密着性をより高めることができる。
【0038】
<アルキル(メタ)アクリレート>
アクリル共重合体は、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有する。メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。また、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
アクリル共重合体は、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の他にアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位を含有していてもよい。アルキル(メタ)アクリレートの例としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。メチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、メチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、50質量%以下であることが好ましい。メチル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量を上記範囲内とすることにより、ベタツキ(タック性)を低く抑えつつ基材に対する密着性を高めることができる。
【0040】
<他の単量体>
アクリル共重合体は、窒素含有単量体に由来する単位をさらに含んでいることが好ましい。中でも、アクリル共重合体は、アミノ基及びアミド基から選択される少なくとも1種を有する(メタ)アクリレートに由来する単位をさらに含んでいることが好ましい。
【0041】
窒素含有単量体は、1分子内に窒素元素を含有する単量体である。窒素含有単量体としては、例えば、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ヒドロキシエチルアクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピロリドン、ビニルピリジン等を挙げることができる。中でも、窒素含有単量体は、アクリルアミド誘導体、アミノ基含有モノマー及び含窒素複素環含有モノマーから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリルアミド誘導体であることがより好ましい。アクリルアミド誘導体は、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド及びアクリロイルモルホリンから選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、ジメチルアクリルアミドであることが特に好ましい。アクリル共重合体が、上述したような窒素含有単量体に由来する単位を含むことにより、粘着剤層は、基材に対して密着しやすくなる一方で、後硬化後の粘着剤層は高硬度となり、高温耐久性や加工性をより高めることができる。
【0042】
窒素含有単量体に由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、窒素含有単量体に由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましい。
【0043】
なお、アクリル共重合体におけるカルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量は、アクリル共重合体の全質量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。すなわち、アクリル共重合体には、実質的に、カルボキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位が含まれていないことが好ましい。カルボキシ基含有単量体単位としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0044】
アクリル共重合体は、必要に応じて、上述した単量体単位以外に、他の単量体単位を有してもよい。他の単量体は、上述したアクリル単量体と共重合可能なものであればよく、例えば、酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニル等が挙げられる。アクリル共重合体における他の単量体単位の含有量は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
<アクリル共重合体の重量平均分子量>
アクリル共重合体の重量平均分子量は、10万〜200万が好ましく、20万〜150万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であると、粘着シートが後硬化した際に高硬度となりやすく、加工性に優れる。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定し、ポリスチレン基準で求めた値である。アクリル共重合体としては、市販のものを用いてもよく、公知の方法により合成したものを用いてもよい。
【0046】
<多官能単量体>
粘着剤組成物は、分子内に反応性二重結合を2つ以上有する多官能単量体を含有することが好ましい。多官能単量体は反応性二重結合を2つ以上有するものであり、中でも、多官能単量体は反応性二重結合を2つ以上5つ未満有するものであることが好ましく、2つ以上4つ未満有するものであることがより好ましい。
【0047】
多官能単量体は、1分子内にビスフェノール骨格を有する多官能単量体であることが好ましい。1分子内にビスフェノール骨格を有する多官能単量体を用いることにより、後硬化後の粘着剤層の硬度をより効果的に高めることができる。これにより、後硬化後の粘着剤層の端面のベタツキ(タック性)を低く抑えることができ、粘着剤層の加工性を高めることができる。
【0048】
1分子内にビスフェノール骨格を有する多官能単量体としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAのジアクリレート、ビスフェノールFジグリシジルエーテルのジアクリレート等が挙げられる。
【0049】
多官能単量体として、市販品を使用できる。市販品の例としては、東亞合成社製、二官能モノマーM211B(ビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート)、東亞合成社製、二官能モノマーM08(ビスフェノールF エチレンオキサイド変性ジアクリレート)、新中村化学社製、二官能モノマーA−BPP−3(プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート)等が挙げられる。
【0050】
また、多官能単量体は、1分子内にアルキレングリコール基を有する多官能単量体であってもよい。このような多官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は150℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。また、1分子内にアルキレングリコール基を有する多官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は−35℃以上であることが好ましく、−10℃以上であることがより好ましい。
【0051】
本発明においては、1分子内にアルキレングリコール基を有する多官能単量体を用いることにより、後硬化後の粘着剤層の硬度を高めると同時に応力緩和性を付与することができ、粘着シートの加工性を高めつつ耐カール性を付与することができる。さらに、ホモポリマーとした際のガラス転移温度(Tg)を150℃以下とすることにより、応力緩和性をより高め、耐カール性を良好にすることができる。
【0052】
多官能単量体が有するアルキレングリコール基の炭素数は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、2又は3であることが特に好ましい。すなわち、多官能単量体はエチレングリコール基及びプロピレングリコール基から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。なお、エチレングリコール基は、−CH2CH2O−であり、プロピレングリコール基は、−CH2CH2CH2O−である。
多官能単量体は、1分子中にアルキレングリコール基を1つ有するものであってもよく、2つ以上有するものであってもよい。多官能単量体1分子中におけるアルキレングリコール基の数は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0053】
このような多官能単量体としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート等が挙げられる。
【0054】
多官能単量体として、市販品を使用できる。市販品の例としては、東亞合成社製、三官能モノマーM321(トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、Tg50℃)、二官能モノマーM240(ポリエチレングリコールジアクリレート、Tg50℃)等が挙げられる。
【0055】
多官能単量体の含有量はアクリル共重合体100質量部に対して、5〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることがより好ましい。上記多官能単量体は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。多官能単量体の含有量を上記範囲内とすることにより、後硬化後の粘着剤層の硬度をより効果的に高めることができ、粘着シートの加工性を高めることができる。
【0056】
<単官能単量体>
粘着剤組成物は、分子内に反応性二重結合を1つ有する単官能単量体を含有することが好ましい。単官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃以上200℃未満であることが好ましい。
【0057】
単官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は50℃より高いことが好ましく、55℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることがさらに好ましい。また、単官能単量体を重合した場合のホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましい。
【0058】
単官能単量体としては、例えば、イソボルニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドンなどを挙げることができる。中でも、単官能単量体は、アルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、イソボルニルアクリレートであることが好ましい。単官能単量体の市販品の例としては、大阪有機化学工業社製のIBXA等が挙げられる。
【0059】
単官能単量体の含有量はアクリル共重合体100質量部に対して、1〜20質量部であることが好ましく、2〜20質量部であることがより好ましい。上記単官能単量体は1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。
【0060】
また、単官能単量体と多官能単量体の合計含有量はアクリル共重合体100質量部に対して6〜50質量部であることが好ましく、10〜45質量部であることがより好ましく、15〜40質量部であることがさらに好ましい。単官能単量体と多官能単量体の合計含有量を上記範囲内とすることにより、後硬化後に基材密着性と加工性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0061】
<自己開裂型光重合開始剤>
粘着剤層は、自己開裂型光重合開始剤をさらに含むことが好ましい。粘着剤層が自己開裂型光重合開始剤を含むことにより、活性エネルギー線を照射することで上述した多官能単量体や単官能単量体が重合し、後硬化性を付与することが可能となる。
ここで、「活性エネルギー線」とは電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
【0062】
自己開裂型光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン系開始剤、ベンゾインエーテル系開始剤、ベンゾフェノン系開始剤、ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤、チオキサントン系開始剤、アミン系開始剤、アシルフォスフィンオキシド系開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系開始剤として具体的には、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾインエーテル系開始剤として具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルフェノン系開始剤として具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184として市販)等が挙げられる。
チオキサントン系開始剤として具体的には、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
アミン系開始剤として具体的には、トリエタノールアミン、4−ジメチル安息香酸エチル等が挙げられる。
アシルフォスフィンオキシド系開始剤として具体的には、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(BASFジャパン(株)製、IRGACURE819として市販)等が挙げられる。
【0063】
自己開裂型光重合開始剤の含有量はアクリル共重合体100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。なお、粘着剤層は水素引抜型重合開始剤を実質的に含有しないことが好ましく、具体的には、水素引抜型重合開始剤の含有量は、アクリル共重合体100質量部に対して、0.1質量部以下であることが好ましい。
【0064】
<熱硬化型架橋剤>
粘着剤層においては、熱硬化型架橋剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、0.1質量%以下であればよい。これは、粘着剤層が実質的に熱硬化型架橋剤を含有しないことを意味する。すなわち、粘着剤層においては、熱硬化型架橋剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、0質量%であることがより好ましい。なお、熱硬化型架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などの公知の架橋剤が挙げられる。
【0065】
本発明の粘着シートにおいては、粘着剤層が上述したようなアクリル単量体を含有し、さらに粘着剤層が実質的に熱硬化型架橋剤を含有しないため、粘着シートはエージング工程を設けなくても必要な粘着特性等を発揮することができる。また、粘着剤層が実質的に熱硬化型架橋剤を含有しないことにより、粘着シートは高温高湿条件下においても優れた基材密着性を発揮することができる。
【0066】
<溶剤>
粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、溶剤を含んでいてもよい。この場合、溶剤は、粘着剤組成物の塗工適性の向上のために用いられる。溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類;ジクロロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酪酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート等のポリオール及びその誘導体が挙げられる。
【0067】
粘着剤組成物中の溶剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル共重合体100質量部に対し、25〜500質量部が好ましく、30〜400質量部がより好ましい。
また、溶剤の含有量は、粘着剤組成物の全質量に対し、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。溶剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよく、2種類以上を併用する場合は、合計質量が上記範囲内であることが好ましい。なお、粘着剤組成物中の溶剤の一部は、粘着剤層にも残留する場合があってもよい。
【0068】
<他の成分>
粘着剤層は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、粘着剤用の添加剤として公知の成分を挙げることができる。例えば可塑剤、酸化防止剤、金属腐食防止剤、粘着付与剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系化合物等の光安定剤等の中から必要に応じて選択できる。また、着色を目的に染料や顔料を添加してもよい。
可塑剤としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニルのようなカルボン酸ビニルエステル類やスチレン等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。これら酸化防止剤は1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
金属腐食防止剤としては、粘着剤の相溶性や効果の高さから、ベンゾリアゾール系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられる。ただし、後硬化時の活性エネルギー線に紫外線を用いる場合は、重合反応を阻害しない範囲で添加することが好ましい。
【0069】
<粘着シートの製造方法>
本発明の粘着シートの製造方法は、剥離シート上に粘着剤組成物を塗工して塗膜を形成する工程を含むことが好ましい。ここで、粘着剤組成物は、アクリル共重合体を含み、アクリル共重合体の全質量に対して、アルコキシアルキル基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が50〜90質量%であり、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜35質量%であり、メチル(メタ)アクリレートに由来する単位の含有量が5〜15質量%である。なお、粘着剤組成物における熱硬化型架橋剤の含有量は0.1質量%以下である。
【0070】
粘着剤組成物の塗工は、公知の塗工装置を用いて実施できる。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等が挙げられる。
【0071】
粘着シートの製造方法は、塗膜を加熱する工程を含むことが好ましい。この場合、粘着剤組成物を塗工して形成される塗膜の加熱には、加熱炉、赤外線ランプ等の公知の加熱装置を用いることができる。
【0072】
なお、粘着剤組成物は、上記構成を有し、かつ架橋剤を実質的に有さないため、塗工後に一定温度で一定期間粘着シートを静置するエージング処理を施す必要がない。従って、エージング工程を設けなくても必要な粘着特性等を発揮し得る粘着シートを提供することができ、粘着シートの製造コスト等を抑制することができる。
【0073】
<粘着シートの使用方法>
本発明の粘着シートの使用方法においては、粘着シートの粘着剤層を被着体表面に接触させることが好ましい。粘着シートが後硬化性を有している場合は、粘着剤層が未硬化状態のときに被着体と貼合し、例えば活性エネルギー線を照射するなどして粘着剤層を硬化させることが好ましい。
【0074】
<粘着シートの用途>
本発明の粘着シートは、高温高湿条件下においても耐久性が必要とされる光学部材、特に形状が複雑で積層体になってからの打抜き加工や切削加工が必要な用途に好ましく用いられる。
【0075】
<積層体>
本発明は、上述した粘着シートと被着体を有する積層体に関するものでもある。粘着剤層が、例えば、多官能単量体、単官能単量体および自己開裂型光重合開始剤を含む両面粘着シートである場合、積層体は、2つの被着体を未硬化状態の粘着シートで貼合した状態で活性エネルギー線を照射することで、硬化することで形成されるものであることが好ましい。ここで、被着体は、基材および光学部材であることがより好ましく、ポリカーボネート基材、偏光板、透明フィルム、透明樹脂またはガラスであることが特に好ましい。
【0076】
図3は、本発明の積層体の一例の断面を表す概略図である。図3は、本発明の粘着シート21を基材22と光学部材24に貼合した積層体20の構成の一例を表す断面図である。図3に示されているように、本発明の粘着シート21は、基材22に貼合するために用いられることが好ましく、基材22と他の光学部材24の貼合に用いられることが好ましい。なお、本発明の粘着シート21は、偏光板との貼合に用いられてもよい。
【0077】
積層体に含まれる光学部材としては、タッチパネルや画像表示装置等の光学製品における各構成部材や最表層のカバーレンズに貼合される飛散防止フィルム等を挙げることができる。タッチパネルの構成部材としては、例えば透明樹脂フィルムにITO膜が設けられたITOフィルム、ガラス板の表面にITO膜が設けられたITOガラス、透明樹脂フィルムに導電性ポリマーをコーティングした透明導電性フィルム、ハードコートフィルム、耐指紋性フィルムなどが挙げられる。画像表示装置の構成部材としては、例えば液晶表示装置に用いられる反射防止フィルム、配向フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルムなどが挙げられる。
これらの部材に用いられる材料としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、トリアセチルセルロース、ポリイミド、セルロースアシレートなどが挙げられる。
【0078】
本発明の粘着シートが両面粘着シートである場合は、2つの被着体の貼合に用いることができる。この場合、本発明の粘着シートは、タッチパネルの内部における透明光学用フィルム同士の貼合、透明光学用フィルムとガラスとの貼合、タッチパネルの透明光学用フィルムと液晶パネルとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合、カバーガラスと透明光学用フィルムとの貼合などに用いられ、いずれかの部材がポリカーボネート基材である場合に有用である。透明光学用フィルムは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光学分野に用いられる一般的なフィルムを用いることが出来る。また、透明光学用フィルムやポリカーボネート基材にはハードコート層が設けられていてもよい。
【0079】
図4は、本発明の積層体の他の一例の断面を表す概略図である。図4に示されているように、被着体は段差部(27a、27b、27c、27d)を有していてもよい。図4では、基材は段差部(27a、27b)を有しており、光学部材が段差部(27c、27d)を有している。なお、段差部(27a、27b、27c、27d)の厚みは、通常5〜60μmである。このように本発明の粘着シート21は、段差部を有する部材にも貼合することができ、段差部から生じる凹凸に追従することができる。
【0080】
<積層体の製造方法>
粘着剤層が、例えば、多官能単量体、単官能単量および自己開裂型光重合開始剤を含むものである場合、積層体の製造方法は、上述した粘着シートの粘着剤層を被着体に対して未硬化状態で貼合した後、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化させる工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射する前は、粘着シートの粘着剤層は未硬化状態であることから、基材への初期密着性が良好となる。このように、粘着シートを被着体に貼合した後、粘着剤層を活性エネルギー線で後硬化させることで、粘着剤層の凝集力が高まり、被着体への粘着性が向上する。また、後硬化した粘着剤層は基材が変形したり、歪んだりすることを防止できる。
【0081】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、可視光線、X線、イオン線等が挙げられ、粘着剤層に含まれる重合開始剤に応じて適宜選択できる。中でも、汎用性の点から、紫外線または電子線が好ましく、紫外線が特に好ましい。
紫外線の光源としては、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク、無電極紫外線ランプ等を使用できる。
電子線としては、例えば、コックロフトワルト型、バンデクラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種類の電子線加速器から放出される電子線を使用できる。
紫外線の照射出力は、積算光量が100〜10000mJ/cm2となるようにすることが好ましく、500〜5000mJ/cm2となるようにすることがより好ましい。
【0082】
粘着シートを基材と光学部材に貼合する場合、活性エネルギー線は基材側からでも光学部材側からでも照射できるが、基材側から照射することが好ましい。
【実施例】
【0083】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0084】
[実施例1]
<アクリル共重合体(A−1)の合成>
アクリル共重合体(A−1)を、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。2−メトキシエチルアクリレートモノマー(MEA)、2−ヒドロキシエチルアクリレートモノマー(2HEA)、メチルメタクリレート(MMA)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)及びブチルアクリレート(BA)を質量比で70:10:10:5:5となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、固形分濃度が35質量%、23℃における溶液粘度が2000mPa・sのアクリル共重合体溶液(A−1)を得た。
アクリル共重合体溶液(A−1)100質量部に対して、多官能単量体として、ビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成(株)社製、アロニックス M211B)を15質量部、単官能単量体としてイソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製、IBXA、Tg=97℃)を15質量部、自己開裂型光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(BASFジャパン(株)製、IRGACURE184)を0.7質量部添加し、固形分濃度が40質量%となるように溶剤として酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を得た。
【0085】
上記粘着剤組成物を、第1の剥離シート(重セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム)上へ塗工した。塗工は、ヨシミツ精機株式会社製、ドクターブレードYD型を用いて、乾燥後の厚みが25μmとなるように行った。その後、熱風乾燥機にて100℃で3分間乾燥させて溶剤を除去し、粘着剤層を有する粘着シートを形成した。
この粘着シートの片面に第1の剥離シートより剥離性の高い離型処理が施された第2の剥離シート(軽セパレータフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製)を貼り合わせ、剥離シート付きの粘着シートである実施例1の粘着シートを得た。
【0086】
[実施例2]
多官能単量体の添加量を20質量部、単官能単量体の添加量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の粘着シートを得た。
【0087】
[実施例3]
多官能単量体、単官能単量体及び自己開裂型光重合開始剤を配合しなかった以外は実施例1と同様にして実施例3の粘着シートを得た。
【0088】
[比較例1]
アクリル共重合体溶液(A−1)100質量部に対して、架橋剤としてキシリレンジイソシアネート化合物(三井化学(株)製、タケネートD−110N)0.5質量部をさらに配合した以外は実施例1と同様にして比較例1の粘着シートを得た。
【0089】
[比較例2]
アクリル共重合体溶液(A−1)の代わりに、以下のようにして作製したアクリル共重合体溶液(A−2)を使用した以外は比較例1と同様にして比較例2の粘着シートを得た。
アクリル共重合体(A−2)を、酢酸エチル中での溶液重合により作製した。2−ヒドロキシエチルアクリレートモノマー(2HEA)、ジメチルアクリルアミド(DMAA)及びブチルアクリレート(BA)を質量比で5:20:75となるように配合し、ラジカル重合開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)を溶液へ溶解した。溶液を60℃に加熱してランダム共重合させ、固形分濃度が35質量%、23℃における溶液粘度が2500mPa・sのアクリル共重合体溶液(A−2)を得た。
【0090】
[測定及び評価]
<ゲル分率>
実施例及び比較例で得た粘着シート(粘着剤層)を100mm×60mmとなるようにカットし、硬化前の測定用サンプルを作製した。
粘着シート(粘着剤層)を100mm×60mmとなるようにカットし、重セパレータフィルムである第1の剥離シート側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、後硬化後の測定用サンプルを作製した。
各測定用サンプルの粘着シート約0.1gをサンプル瓶に採取し、酢酸エチル30mlを加えて24時間振とうした。その後、このサンプル瓶の内容物を150メッシュのステンレス製金網でろ別し、金網上の残留物を100℃で1時間乾燥して乾燥質量(g)を測定した。得られた乾燥質量から下記式1によりゲル分率を求めた。
ゲル分率(質量%)=(乾燥質量/粘着シートの採取質量)×100・・・式1
【0091】
<加工性>
粘着シートの軽セパレータフィルムである第2の剥離シートを剥がし、厚み25μmのPETフィルムに貼合した。
次に重セパレータフィルムである第1の剥離シートを剥がし、PC板に貼着した。PET/粘着剤層/PCの構成のサンプルをオートクレーブ処理(40℃、0.5MPa、30min)し、次いで、PETフィルム側より紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、試験サンプルを得た。次いで、試験サンプルの端部をギロチン断裁機を用いてカットし、カット端部をPC板側から手でPETフィルムを剥がすようにこすった。その際の剥がれ距離を測定した。
剥がれ距離が0.05mm未満・・・◎
剥がれ距離が0.05mm以上0.1mm未満・・・〇
剥がれ距離が0.1mm以上・・・×
【0092】
<基材密着性>
基材密着性は、85℃、相対湿度10%以下の環境下、もしくは85℃、相対湿度85%の環境下における定荷重剥離距離を測定することで評価した。具体的には、第2の剥離シートである軽剥離セパレーターを剥がして、剥がしたセパレーターの代わりにトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、フジタックTD60UL 厚み60μm)をハンドローラーを用いて貼合し、積層フィルムを作製した。この積層フィルムを幅25mm、長さ100mmの大きさにカットし、第1の剥離シートを剥がした。次いで、露出した幅25mm、長さ100mm粘着面のうち幅25mm、長さ75mmの領域を被着体(ハードコート層付ポリカーボネート板:三菱ガス化学社製、ユーピロンMR58 厚み1mm)のハードコート面側に2kgの圧着ローラーを用いて貼り付けた。この状態で、40℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に30分間保持させてPC板に密着させた後、トリアセチルセルロースフィルム側から紫外線を積算光量が3000mJ/cm2となるように照射し、試験片を作製した。同様にして試験片を作製し、2つ(1組)の試験片を作製した。
この2つの試験片を各々、85℃、相対湿度10%以下の環境下、もしくは、85℃、相対湿度85%の環境下で24時間放置した後、85℃、相対湿度10%以下の環境下、もしくは、85℃、相対湿度85%の環境下で図1のように、粘着シート1とトリアセチルセルロースフィルム30からなる積層フィルムの非貼合領域(幅25mm、長さ25mm)の長さ方向端部に100gの錘34を吊るし、被着体32の平面に対して90°の方向に100gの荷重を加え、その状態で5分放置した。その間に積層フィルムが剥離した箇所の長さL(定荷重剥離距離)を測定した。
○:定荷重剥離距離が20mm以下である。
×:定荷重剥離距離が20mmを超える。
【0093】
【表1】
【0094】
M211B:ビスフェノールA エチレンオキサイド変性ジアクリレート
IBXA:イソボルニルアクリレート
【0095】
上記表1より、実施例の粘着シートは、高温高湿条件下における基材密着性に優れることがわかった。また、実施例の粘着シートは、端面ベタツキがなく、加工性も良好であった。
一方、比較例の粘着シートは高温高湿条件下における基材密着性が劣っていた。
【符号の説明】
【0096】
1 剥離シート付き粘着シート
11 粘着剤層
12a 透明基材または剥離シート
12b 剥離シート
20 積層体
21 粘着シート
22 基材
24 光学部材
27a、27b、27c、27d 段差部
30 トリアセチルセルロースフィルム
32 被着体
34 錘
L 定荷重剥離距離
図1
図2
図3
図4