(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記焦電セラミックの前記第1の焼結金属および前記第2の焼結金属が設けられた主面とは反対側の主面に外部電極をさらに備えた、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の焦電センサ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について説明する。なお、実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0013】
[実施形態1]
<焦電センサの構造>
図1に、実施形態1の焦電センサ10の模式的な斜視図を示す。
図1に示す実施形態1の焦電センサ10は、たとえば平板状であるが、可撓性を有しているため、たとえば
図1に示すような円筒状にすることができる。
【0014】
図2に、
図1に示す焦電センサ10の破線で囲まれた領域10aの模式的な拡大平面図を示す。また、
図3に、
図2のIII−IIIに沿った模式的な断面図を示す。
図2および
図3に示すように、焦電センサ10は、共焼結体であって、焦電セラミック2と、焦電セラミック2の第1の主面2a上において焦電セラミック2と一体に設けられた、第1の焼結金属3aと、第2の焼結金属3bと、第3の焼結金属3cとを備えている。実施形態1において、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cのそれぞれは、アイランド状であり、互いに間隔を空けて、焦電セラミック2の第1の主面2a上に配置されている。なお、実施形態1においては、複数の焼結金属として、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cを例示しているが、焦電セラミック2と一体に設けられて互いに間隔を空けて配置された複数の焼結金属であれば、実施形態1の構成に限定されるものではない。
【0015】
第1の焼結金属3aと第2の焼結金属3bとの間には溝状の第1の切欠き4aが設けられており、第2の焼結金属3bと第3の焼結金属3cとの間には溝状の第2の切欠き4bが設けられている。第1の切欠き4aおよび第2の切欠き4bは、それぞれ、たとえば、焦電セラミック2を部分的に除去することによって形成することができる。
【0016】
第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cは、卑金属を含んでいる。ここで、卑金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)およびオスミウム(Os)以外の金属である。焼結金属とは、焦電セラミックの焼結前には金属粉末状態であるが、焦電セラミックと同時に共焼結されて薄板状金属となったものを指す。共焼結体は、セラミックと卑金属とが共焼結されているものである。
【0017】
第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cを低コストで形成するためには、卑金属としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、およびアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも1種を含む金属を用いることが好ましく、NiおよびCuの少なくとも一方を含む金属を用いることがより好ましく、Niを用いることがさらに好ましい。
【0018】
焦電セラミック2は、特には限定されないが、たとえば、ペロブスカイト型化合物を主要物質として含んでおり、主要物質は、ニオブ(Nb)と、アルカリ金属と、酸素(O)とを含んでおり、焦電セラミック2に含まれる全物質の総モル量に対する主要物質の含有量は90モル%以上である焦電セラミックを用いることができる。
【0019】
焦電セラミック中における主要物質としてのペロブスカイト型化合物の存在および含有量は、X線回折法により求めることができる。すなわち、ペロブスカイト型化合物の存在は、X線回折法により得られたX線回折パターンの特定の位置にX線回折ピークが現れることによって確認することができる。たとえば、Acta Crystallogr., Sec. A, 34 309 (1978)に(Na
0.35K
0.65)NbO
3の粉末X線回折データが記載されている。このデータと比較し、各ピークの強度比、面間隔dに対するピーク位置が類似であれば、アルカリ金属とニオブを含むペロブスカイト型化合物と判断できる。また、ペロブスカイト型化合物の含有量とX線回折ピーク強度の大きさとは比例関係にあるため、ペロブスカイト型化合物とそれ以外の物質との含有量が既知の試料を用いてペロブスカイト型化合物の含有量とX線回折ピーク強度の大きさとの関係を示す検量線を作成することができる。その検量線に基づき、焦電セラミック中における主要物質としてのペロブスカイト型化合物の含有量を求めることができる。さらに、焦電セラミックに含まれる各構成元素の含有量(重量%)は、誘導結合高周波プラズマ分光分析(ICP分光分析)により求めることができる。そして、X線回折法によって焦電セラミックがどのような結晶構造を有しているかがわかるため、焦電セラミックの結晶構造のどのサイトにどの構成元素の原子が位置しているかがわかる。具体的には、上述の(Na
0.35K
0.65)NbO
3の回折データと比較し、類似していれば、アルカリ金属とニオブと酸素を含むペロブスカイト化合物と判断できる。これにより、焦電セラミックに含まれる全物質の総モル量に対して、Nbとアルカリ金属とOとを含むペロブスカイト型化合物が主要物質として90モル%以上含まれていることを確認することができる。
【0020】
なお、上記の主要物質としてのペロブスカイト型化合物には、タンタル(Ta)が含まれていてもよい。
【0021】
また、主要物質(ペロブスカイト型化合物)以外の副物質としては、たとえば、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、錫(Sn)、マンガン(Mn)、Ni、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)およびルテチウム(Lu)からなる群から選択された少なくとも1種を挙げることができる。
【0022】
焦電セラミック2は、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cのそれぞれと一体に設けられている。すなわち、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cと、焦電セラミック2との接合界面において、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cに含まれる卑金属の結晶粒と、焦電セラミック2に含まれる焦電セラミックの結晶粒とが接して固着していることによって、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cと、焦電セラミック2とが一体となって、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cと、焦電セラミック2とが接合されている共焼結体である。焼結金属は、焦電セラミックの焼成前には卑金属粉末として存在するが、焦電セラミックと同時に共焼結されて卑金属粉末が焼結したものである。
【0023】
焦電センサ10は、焦電セラミック2の第1の主面2aと反対側の第2の主面2b上に外部電極1を備えている。実施形態1において、外部電極1は、焦電セラミック2の第1の主面2a上の第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cのそれぞれと対向するように1つ設けられているが、外部電極1は複数設けられていてもよい。
【0024】
外部電極1は、焦電セラミック2と一体に設けられた焼結金属である。焦電セラミック2と外部電極1とが一体に設けられている場合には、焦電セラミック2と外部電極1との接合界面において、焦電セラミック2に含まれる焦電セラミックの結晶粒と、外部電極1に含まれる卑金属等の導電性材料の結晶粒とが接して固着していることによって焦電セラミック2と外部電極1との接合をより強固なものとすることができるため、焦電セラミック2からの外部電極1の剥がれの発生をより効果的に抑制することができる。
【0025】
<焦電センサの製造方法>
以下、
図4〜
図8の模式的断面図を参照して、実施形態1の焦電センサ10の製造方法の一例について説明する。まず、
図4に示す焦電セラミック粉末20と
図5に示す卑金属粉末30とを用意する。
【0026】
焦電セラミック粉末20は、後述する共焼結によって、焦電セラミック2となる物質である。
【0027】
焦電セラミック粉末20は、たとえば、主要物質となるペロブスカイト型化合物の含有量が90モル%以上となるように、少なくともNbの酸化物粉末とアルカリ金属の炭酸物粉末とを秤量した後に、これらを混合して焦電セラミック素原料粉末を作製し、これを仮焼した後に粉砕することによって得ることができる。焦電セラミック粉末20は、他の物質と組み合わされて、または他の物質と組み合わされないで、たとえば、シート状、テープ状またはペースト状等の粉末状以外の形態とされていてもよい。
【0028】
卑金属粉末30は、後述する共焼結によって、卑金属を含む第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、第3の焼結金属3cおよび外部電極1となる物質である。卑金属粉末30も、他の物質と組み合わされて、または他の物質と組み合わされないで、たとえば、シート状、テープ状またはペースト状等の粉末状以外の形態とされていてもよいが、シート状またはテープ状であることで均一となり、焦電センサの厚みが薄い場合は卑金属粉末の焼結が均一となるため、焦電センサの破損がなくなる。そのため、卑金属粉末の形態はシート状またはテープ状であることがより好ましい。
【0029】
次に、
図6に示すように、卑金属粉末30が焦電セラミック粉末20を挟むように、卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20とを重ね合わせる。卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20とを重ね合わせる方法は、特に限定されないが、たとえば、図示しないポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の基材の表面上に、たとえば、シート状またはテープ状の卑金属粉末30を設置した後に、卑金属粉末30上に、たとえば、シート状、テープ状またはペースト状の焦電セラミック粉末20を設置する方法等を用いることができる。
【0030】
次に、卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20とを重ね合わせた状態で共焼結を行うことによって、
図7に示すように、焼結金属3と焦電セラミック2とが一体化するとともに、外部電極1と焦電セラミック2とが一体化する。卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20との共焼結においては以下の現象が進行すると考えられる。すなわち、卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20との界面において、卑金属粉末30に含まれる卑金属の粒子と焦電セラミック粉末20に含まれる焦電セラミックの粒子とが互いに接触して固着し、次第にその固着面積が増大していく。そして、これらの固着面積が増大した粒子の結合体が多数集まって凝集し、これらの粒子の結合体間の空孔が次第に減少して緻密化していく。これにより、
図7に示す焼結金属3と焦電セラミック2との接合界面においては、焼結金属3に含まれる卑金属の結晶粒と、焦電セラミック2に含まれる焦電セラミックの結晶粒とが接して固着することにより焼結金属3と焦電セラミック2とが一体化するため、焼結金属3と焦電セラミック2との間の強固な接合強度が発現する。また、外部電極1と焦電セラミック2との接合界面においても、外部電極1に含まれる卑金属の結晶粒と、焦電セラミック2に含まれる焦電セラミックの結晶粒とが接して固着することにより外部電極1と焦電セラミック2とが一体化するため、外部電極1と焦電セラミック2との間の強固な接合強度が発現する。
【0031】
次に、焦電セラミック2の第1主面2a上の焼結金属3をたとえばエッチング等によって複数に分離する。これにより、
図8に示すように、互いに間隔を空けて配置された、第1の焼結金属3aと、第2の焼結金属3bと、第3の焼結金属3cとが形成される。また、第1の焼結金属3aと第2の焼結金属3bとの間、および第2の焼結金属3bと第3の焼結金属3cとの間に、焦電セラミック2の第1主面2aが露出する。
【0032】
その後、第1の焼結金属3aと第2の焼結金属3bとの間、および第2の焼結金属3bと第3の焼結金属3cとの間に露出した焦電セラミック2を、たとえばRIE(反応性イオンエッチング)等によって除去する。これにより、たとえば
図3に示すように、第1の切欠き4aおよび第2の切欠き4bを形成する。以上により、実施形態1の焦電センサ10が完成する。
【0033】
なお、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3bおよび第3の焼結金属3cと、圧電セラミック2とを含む焦電センサを形成する場合には、卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20とを重ね合わせた積層体をZrO
2、Al
2O
3およびSiO
2からなる群から選択された少なくとも1つ以上含む物質を主要物質とするセラミックで挟み、共焼結することが好ましい。セラミックは、緻密であっても、空隙が存在していてもよい。セラミックは板状であっても、塊状であっても、曲面を有していてもよい。このようにすることで、共焼結の際の意図しない変形を抑制することができる。
【0034】
ここで、卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20との共焼結は、卑金属粉末30に含まれる卑金属(焼結金属3に含まれる卑金属)と当該卑金属の酸化物とが平衡となる酸素分圧の1000倍以下の酸素分圧の雰囲気下で行われることが好ましい。卑金属と卑金属の酸化物との平衡酸素分圧よりも雰囲気の酸素分圧が高くなると卑金属の酸化が進行する傾向にあるが、卑金属の酸化は急激に進行するわけではないため、卑金属と卑金属の酸化物との平衡酸素分圧の1000倍を共焼結雰囲気の酸素分圧の上限とした場合でも、卑金属の酸化を抑制しながら卑金属粉末30の焼結を進行させることができ、たとえばNiOまたは酸化銅(Cu
2O)等の卑金属の酸化物の含有を抑制して焼結金属3を形成することができる。共焼結時の雰囲気の酸素分圧は、たとえば、ジルコニア酸素濃度センサーを用いて測定した酸素濃度から算出することができる。
【0035】
なお、ジルコニア酸素濃度センサーは、基準ガス中の酸素濃度と、測定ガス中の酸素濃度との比によって決定される起電力が発生することがよく知られており、その起電力は、以下のネルンストの式によって求められる。
【0037】
なお、上記のネルンストの式において、E:起電力(V)、R:気体定数(8.3145(J・mol
-1・K
-1))、T:絶対温度(K)、n:反応に含まれる電子数、F:ファラデー定数(9.649×10
4(C・mol
-1))、Pr:基準ガス中の酸素濃度(通常は大気)、Pm:測定ガス中の酸素濃度である。
【0038】
図9に、NiとNiOとの平衡酸素分圧(Ni−NiO平衡酸素分圧)の対数と温度との関係を示す。また、
図10に、CuとCu
2Oとの平衡酸素分圧(Cu−Cu
2O平衡酸素分圧)の対数と温度との関係を示す。
【0039】
金属と酸化物の平衡反応と、酸素分圧および温度との関係は熱力学的に解析でき、一般的にエリンガム図から理解できる。系が平衡状態にあるとき、たとえば2Ni+O
2→←2NiOの反応が平衡状態にあるとき、標準反応ギブスエネルギー△G
0は、△G
0=−RTlnKの式で表すことができる。すなわち、2Ni+O
2→←2NiOの平衡反応の場合、NiおよびNiOは固体であるため、酸素分圧をP
O2とすると、P
O2=1/Kとなる。したがって、lnP
O2=△G
0/RTとかける。
【0040】
<作用効果>
実施形態1においては、卑金属粉末30と焦電セラミック粉末20との共焼結によって焼結金属3を焦電セラミック2と一体に設けているため、焦電センサ10を薄く形成することができる。これにより、焦電センサ10に可撓性を付与することができるため、たとえば
図1に示すように、焦電センサ10をたとえば円筒状等の形状に変形させることができる。したがって、実施形態1においては、従来の特許文献1に記載の焦電センサとは異なり、複数の方向から入射する赤外線を検知可能にすることができる。実施形態1においては、焦電セラミック2の厚さT(
図3参照)は、たとえば100μm以下とすることができる。また、実施形態1においては、切欠きの深さt(
図3参照)は、たとえば焦電セラミック2の厚さTの1/10以上の深さとすることができる。なお、切欠きは、外部電極1が露出するような深さに形成されてもよい。また、隣り合う焼結金属の間隔wは、たとえば2μm以上とすることができる。また、切欠きの側壁14と底面24とが為す角度αは、たとえば90°以下とすることができる。
【0041】
また、実施形態1においては、第1の焼結金属3aと第2の焼結金属3bとの間に第1の切欠き4aが設けられているとともに、第2の焼結金属3bと第3の焼結金属3cとの間に第2の切欠き4bが設けられている。そのため、たとえば
図11の模式的断面図に示すように、第2の焼結金属3bの直下の焦電セラミック2の領域に赤外線が入射して発生した熱51は、第1の切欠き4aと第2の切欠き4bとによって、焦電セラミック2の他の領域(第1の焼結金属3aの直下の焦電セラミック2の領域、および第2の焼結金属3bの直下の焦電セラミック2の領域)を伝導することが妨げられる。そのため、熱51は、第2の焼結金属3bの直下の焦電セラミック2の領域に留まることになり、熱51により発生した電荷は、第1の焼結金属3aおよび第3の焼結金属3cでは検出されず、第2の焼結金属3bのみで検出されることになる。また、熱51が、第2の焼結金属3bの直下の焦電セラミック2の領域に留まることにより、焦電セラミック2の単位体積当たりの熱量が増加するため、第2の焼結金属3bで検出することができる電荷量を増加することができる。これにより、実施形態1の焦電センサ10においては、従来の特許文献1に記載の焦電センサと比べて、分解能を向上させることが可能となる。
【0042】
なお、第1の切欠き4aおよび第2の切欠き4bの形状は溝状に限定されず、たとえば
図12の模式的な拡大平面図に示すような矩形状であってもよく、
図13の模式的な拡大平面図に示すような鉤状であってもよく、
図14の模式的な拡大平面図に示すような円形状であってもよい。すなわち、焼結金属の間の切欠きは、焼結金属の間の少なくとも一部の領域に形成されていればよい。
【0043】
また、焦電センサ10の形状も
図1に示すような円筒状には限定されず、たとえば
図15に示すような四角柱状にすることもでき、
図16に示すような螺旋状にすることもできる。
【0044】
[実施形態2]
図17〜
図20に、実施形態2の焦電センサの製造方法を図解する模式的な断面図を示す。実施形態2の焦電センサの製造方法においては、切欠きを形成するように焦電セラミック粉末を積層することを特徴としている。
【0045】
実施形態2においては、まず、
図17の模式的断面図に示すように、PETフィルム等の基材141の表面上にシート状の卑金属粉末30を積層した後、卑金属粉末30上にシート状の焦電セラミック粉末20aを積層する。
【0046】
次に、
図18の模式的断面図に示すように、焦電セラミック粉末20a上に、第1の切欠き4aを形成するように、シート状の焦電セラミック粉末20bを積層する。
【0047】
次に、
図19の模式的断面図に示すように、焦電セラミック粉末20b上に、第1の切欠き4aとともに第2の切欠き4bを形成するように、シート状の焦電セラミック粉末20cを積層する。
【0048】
次に、
図20の模式的断面図に示すように、焦電セラミック粉末20c上に、第1の焼結金属3aを形成するためのシート状の卑金属粉末30a、第2の焼結金属3bを形成するためのシート状の卑金属粉末30b、および第3の焼結金属3cを形成するためのシート状の卑金属粉末30cを積層する。
【0049】
その後、卑金属粉末30、焦電セラミック粉末20a、焦電セラミック粉末20b、焦電セラミック粉末20c、卑金属粉末30a、卑金属粉末30b、および卑金属粉末30cを共焼結することによって、焦電センサ10を作製することができる。
【0050】
実施形態2における上記以外の説明は実施形態1と同様であるため、その説明については繰り返さない。
【実施例】
【0051】
まず、炭酸カリウム(K
2CO
3)、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、炭酸マンガン(MnCO
3)および酸化イッテルビウム(Yb
2O
3)のそれぞれの粉末を用意した。
【0052】
次に、固溶体を形成するニオブ酸アルカリ金属化合物とジルコン酸カルシウムとの比率が98:2となり、かつアルカリ金属(K、NaおよびLi)のモル比がK:Na:Li=0.45:0.53:0.02となるように、K
2CO
3、Na
2CO
3、Li
2CO
3、Nb
2O
5、CaCO
3、およびZrO
2のそれぞれの粉末を秤量した。また、上記固溶体100モルに対して、ZrO
2が3モル、MnOが5モル、Yb
2O
3が0.5モルとなるように、ZrO
2、MnCO
3およびYb
2O
3のそれぞれの粉末を秤量した。
【0053】
次に、上記のように秤量した粉末を、PSZボールが内有されたポットミルに投入し、エタノールを溶媒にして約90時間ポットミルを回転して、湿式で混合することにより焦電セラミック素原料粉末を得た。そして、得られた焦電セラミック素原料粉末を乾燥した後、900℃の温度で仮焼し、その後、粉砕することによって、[100{0.98(K
0.45N
0.53Li
0.02)NbO
3−0.02CaZrO
3}+3ZrO
2+5MnO+0.5Yb
2O
3]の組成式で表される焦電セラミック粉末を得た。
【0054】
次に、上記のようにして得られた焦電セラミック粉末を、有機バインダ、分散剤、アセトン、可塑剤、およびPSZボールとともにポットミルに投入し、ポットミルを回転させながら湿式で十分に混合し、ドクターブレード法でシート成形を行い、焦電セラミック粉末シートを作製した。
【0055】
また、焦電セラミック粉末のシート成形と同様に、Ni粉末と有機バインダ等をポットミルに投入して回転させながら十分に混合し、ドクターブレード法でシート成形を行い、卑金属粉末シートを作製した。
【0056】
次に、
図21の模式的断面図に示すように、PETフィルムからなる基材141上に、卑金属粉末シート300、焦電セラミック粉末シート200、および卑金属粉末シート300をこの順に重ね合わせた。
【0057】
次に、
図21に示す積層体を静水圧加圧後、Ni−NiO平衡酸素分圧の0.5桁還元側(Ni−NiO平衡酸素分圧の1/3.16の酸素分圧)になるように調整された雰囲気下で、1000℃〜1160℃の温度で2時間共焼結した。これにより、
図7に示すように、焦電セラミック2の第1の主面2aに焼結金属3が形成され、焦電セラミック2の第2の主面2bに外部電極1が形成された焦電セラミック積層構造体(共焼結体)が作製された。焦電セラミック積層構造体の焦電セラミック2の厚さは15μmであった。
【0058】
次に、
図8に示すように、フォトリソグラフィを用いたウエットエッチングによって焼結金属3を部分的にエッチングすることにより、互いに間隔を空けて配置された、第1の焼結金属3aと、第2の焼結金属3bと、第3の焼結金属3cとを形成した。
【0059】
次に、焼結金属3を部分的に除去した部分から露出した焦電セラミック2の部分を反応性イオンエッチングにより除去した。これにより、
図9に示すように、第1の焼結金属3aと第2の焼結金属3bとの間に溝状の第1の切欠き4aを形成するとともに、第2の焼結金属3bと第3の焼結金属3cとの間に溝状の第2の切欠き4bを形成することによって、
図3に示す断面構造を有する実施例の焦電センサを得た。
【0060】
ここで、実施例の焦電センサの第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cのそれぞれの直下の焦電セラミック2は、1辺が100μmの正方形状の第1の主面1aを有し、そこから外部電極1の方向に向かって延在するアイランド状に形成された。その結果、実験例1の焦電センサの焦電セラミック2の第1の主面2a側からの2次元的な平面視において、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cもそれぞれアイランド状に配置されることになった。なお、第1の焼結金属3a、第2の焼結金属3b、および第3の焼結金属3cのそれぞれからは引き出し電極が引き出されている。引き出し電極は、たとえば、エッチング、切り欠き積み上げ方式、スパッタリング、または蒸着等により形成されている。
【0061】
上記のようにして作製された実施例の焦電センサの焦電セラミック2の第1の主面2a側の1辺が3mmの正方形状の表面に赤色半導体レーザモジュールから波長650nmの赤色レーザ光を1mWの出力で1mm
2程度の照射面積に1秒照射および1秒非照射を繰り返し行い、エレクトロメータ(KEITHLEY製の6514)で発生電荷量を測定した。その結果を
図22に示す。
図22に示すように、実施例の焦電センサにおける発生電荷量は0.3[nC/mm
2]であった。
【0062】
これに対して、比較のために、卑金属と共焼結ができないために厚さ80μmとしたNiNb系PbTiO
3系単板(比較例1の焦電センサ)、ならびに第1の切欠き4aおよび第2の切欠き4bを形成しなかったこと以外は実施例の焦電センサと同様にして作製した焦電センサ(比較例2の焦電センサ)についても、実施例の焦電センサと同様にして発生電荷量の測定を行なった。その結果、比較例1の焦電センサにおける発生電荷量は0.04[nC/mm
2]であり、比較例2の焦電センサにおける発生電荷量は0.1[nC/mm
2]であった。
【0063】
実施例の焦電センサ、比較例1の焦電センサ、および比較例2の焦電センサにおける発生電荷量を以下の表1にまとめる。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示す結果から明らかなように、実施例の焦電センサの発生電荷量は、比較例1および比較例2のそれぞれの焦電センサの発生電荷量よりも多くなることが確認された。これは、実施例の焦電センサの焦電セラミックに切欠きが設けられたことによるものと考えられる。
【0066】
以上のように実施形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0067】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。