(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリヒドロキシアミン化合物が、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1,3-プロパンジオールから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の電子写真用トナーの製造方法。
結着樹脂として、ポリエステル、及びポリエステルセグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の電子写真用トナーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[電子写真用トナー]
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂と、結着樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上5.0質量部以下の下記式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物(以下、単に「ポリヒドロキシアミン化合物」ともいう)とを含有する。
【化2】
〔式中、R
1は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
3及びR
4は、炭素数1以上5以下のアルカンジイル基を示す。R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよい。〕
【0009】
本発明によれば、優れた帯電立ち上がり性を示す電子写真用トナーが得られる。
その理由は定かではないが、ポリヒドロキシアミン化合物は分子内に正電荷を保持しやすいアミノ基と、負電荷を保持しやすいヒドロキシル基を含有しているため、負帯電トナーの場合はアミノ基からヒドロキシル基への電荷の片寄により、また、正帯電性トナーの場合はヒドロキシル基からアミノ基への電荷の片寄により、速やかに帯電できたものと推察される。
【0010】
<ポリヒドロキシアミン化合物>
ポリヒドロキシアミン化合物は、優れた帯電立ち上がり性と臭気抑制性の観点から、下記式(1)で表されるものである。
【化3】
〔式中、R
1は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
3及びR
4は、炭素数1以上5以下のアルカンジイル基を示す。R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよい。〕
【0011】
R
1のアルキル基の炭素数は、優れた帯電立ち上がり性を得る観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R
1のアルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられ、好ましくはメチル基及びエチル基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはメチル基である。
【0012】
R
1のヒドロキシアルキル基の炭素数は、優れた帯電立ち上がり性を得る観点から、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R
1のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられ、好ましくはヒドロキシメチル基及び2-ヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくはヒドロキシメチル基である。
【0013】
これらの中でもR
1は、好ましくは、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基及びヒドロキシエチル基から選ばれる少なくとも1種、更に好ましくはヒドロキシメチル基である。
【0014】
R
2のアルキル基の炭素数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下であり、そして、好ましくは1以上である。
R
2のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
R
2のヒドロキシアルキル基の炭素数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下であり、そして、好ましくは1以上である。R
2のヒドロキシアルキル基の例としては、上述のR
1と同様のものが挙げられる。
これらの中でもR
2は、好ましくは、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基、又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0015】
R
3及びR
4のアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、より好ましくは2以下、より好ましくは1である。
R
3及びR
4のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン-1, 2-ジイル基、テトラメチレン基等が挙げられ、好ましくはメチレン基である。
【0016】
ポリヒドロキシアミン化合物の具体例としては、例えば、2-アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオール、4-アミノ-4-ヒドロキシプロピル-1, 7-ヘプタンジオール、2-(N-エチル)アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-(N-エチル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-(N-デシル)アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール等が挙げられる。
これらの中では、優れた帯電の立ち上がり性を得る観点から、好ましくは、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-エチル-1, 3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種、より好ましくは、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種、より好ましくは、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオールである。
上記のポリヒドロキシアミン化合物は、1種又は2種以上を用いることができる。なお、ポリヒドロキシアミン化合物は、常法により製造することができる。
【0017】
ポリヒドロキシアミン化合物の含有量は、優れた帯電の立ち上がり性を得る観点から、電子写真用トナーの全結着樹脂100質量部に対して、0.001質量部以上5.0質量部以下であり、優れた帯電の立ち上がり性を得る観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0018】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド等の重縮合系樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、又はこれらの複合樹脂等が挙げられる。なお、複合樹脂としては、例えば、ポリエステル-ポリアミド;ポリエステルセグメントを有する複合樹脂が挙げられる。ポリエステルセグメントを有する複合樹脂としては、例えば、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
本発明では、耐久性及び低温定着性の観点から、アルコール成分と、カルボン酸成分と、を重縮合させて得られるポリエステル部位を少なくとも有する樹脂、スチレン系樹脂が好ましく、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、並びに、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ポリエステル、スチレン系樹脂、並びに、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ポリエステル、並びに、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
なお、帯電立ち上がり性を向上させる観点から、ポリエステル、及びポリエステルセグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0019】
〔ポリエステル〕
ポリエステルは、2価以上のアルコールを含有するアルコール成分と2価以上のカルボン酸を含有するカルボン酸成分とを含む原料モノマーの重縮合により得られるものが好ましい。
【0020】
アルコール成分としては、芳香族ポリオール化合物であっても、脂肪族ポリオール化合物であってもよい。
芳香族ポリオール化合物としては、耐久性及び帯電立ち上がり性の観点から、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
【化4】
〔式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる少なくとも1種であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上であり、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下であり、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である。〕で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
【0021】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのプロピレンオキサイド付加物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0022】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0023】
脂肪族ポリオール化合物としては、炭素数2以上20以下の脂肪族ジオール、グリセリン等の3価以上の脂肪族アルコール等が挙げられ、これらの中でも、脂肪族ジオールが好ましい。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0024】
脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0025】
一方、カルボン酸成分において、2価のカルボン酸としては、保存性の観点から、芳香族ジカルボン酸が好ましい。また、低温定着性の観点からは、脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0026】
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸;それらの酸の無水物又はそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、テレフタル酸又はイソフタル酸がより好ましく、テレフタル酸が更に好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。なお、本発明において、カルボン酸成分には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。
【0027】
芳香族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;それらの酸の無水物又はそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上であり、そして、帯電立ち上がり性の観点から、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。
【0030】
また、カルボン酸成分は、生産性の観点から、3価以上のカルボン酸を含有していることが好ましい。
【0031】
3価以上のカルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸又はこれらの酸無水物、低級アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、トリメリット酸又はその酸無水物が好ましい。
【0032】
3価以上のカルボン酸の含有量、好ましくはトリメリット酸又はその酸無水物の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは50モル%以下、より好ましくは40モル%以下、より好ましくは35モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
【0033】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸系化合物が、分子量調整の観点から、適宜含有されていてもよい。
【0034】
カルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、末端基を調整する観点から、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0035】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、180℃以上250℃以下程度の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.6質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0036】
〔スチレン系樹脂〕
スチレン系樹脂は、スチレン化合物を含む原料モノマーの付加重合により得られるものが好ましい。
スチレン化合物としては、少なくとも、スチレン、又はα−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体(以下、スチレンとスチレン誘導体をまとめて単に「スチレン化合物」という)が用いられる。
【0037】
スチレン化合物の含有量は、スチレン系樹脂の原料モノマー中、耐久性の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましく75質量%以上であり、低温定着性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは87質量%以下である。
【0038】
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂の原料モノマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸エステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
【0039】
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂の原料モノマーは2種以上を使用することができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる少なくとも1種を意味する。
【0040】
スチレン化合物以外に用いられるスチレン系樹脂の原料モノマーの中では、トナーの低温定着性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から好ましくは1以上、より好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは12以下、更に好ましくは8以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
【0041】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、「(イソ又はターシャリー)」、「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在している場合とそうでない場合の双方を含むことを意味し、これらの接頭辞が存在していない場合には、ノルマルであることを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの双方の場合を含むことを示す。
【0042】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、スチレン系樹脂セグメントの原料モノマー中、低温定着性の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは13質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0043】
なお、スチレン化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む原料モノマーを付加重合させて得られる樹脂をスチレン−(メタ)アクリル樹脂ともいう。
【0044】
スチレン系樹脂の原料モノマーの付加重合反応は、例えば、ジクミルパーオキサイド等の重合開始剤、架橋剤等の存在下、有機溶媒存在下又は無溶媒下で、常法により行うことができるが、温度条件としては、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
【0045】
付加重合反応の際に有機溶媒を使用する場合、キシレン、トルエン、メチルエチルケトン、アセトン等を用いることができる。有機溶媒の使用量は、スチレン系樹脂の原料モノマー100質量部に対して、10質量部以上50質量部以下が好ましい。
【0046】
〔複合樹脂〕
複合樹脂は、好ましくはポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する。
ポリエステルセグメントは、ポリエステルよりなり、当該ポリエステルとしては上述のポリエステルと同様のものが好ましい例として挙げられる。
スチレン系樹脂セグメントは、スチレン系樹脂よりなり、当該スチレン系樹脂としては上述のスチレン系樹脂と同様のものが好ましい例として挙げられる。
スチレン系樹脂セグメントの原料モノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが含まれる場合、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基の炭素数は、上記の観点から、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは18以下である。なお、該アルキルエステルの炭素数は、エステルを構成するアルコール成分由来の炭素数をいう。
複合樹脂は、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、ポリエステルセグメントの原料モノマーとスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーに加えて、更にポリエステルセグメントの原料モノマー及びスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーのいずれとも反応し得る、両反応性モノマーを用いて得られる複合樹脂であることが好ましい。したがって、ポリエステルセグメントの原料モノマー及びスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーを重合させて複合樹脂を得る際に、重縮合反応及び/又は付加重合反応は、両反応性モノマーの存在下で行うことが好ましい。これにより、複合樹脂は、両反応性モノマー由来の構成単位を介してポリエステルセグメントとスチレン系樹脂セグメントとが結合した複合樹脂となり、ポリエステルセグメントとスチレン系樹脂セグメントとがより微細に、かつ均一に分散したものとなる。
【0047】
即ち、複合樹脂は、トナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、(i)式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、芳香族ジカルボン酸を含有するカルボン酸成分とを含む、ポリエステルセグメントの原料モノマー、(ii)スチレン系樹脂セグメントの原料モノマー、及び(iii)ポリエステルセグメントの原料モノマー及びスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂であることが好ましい。
【0048】
両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基、より好ましくはカルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物が好ましく、このような両反応性モノマーを用いることにより、分散相となる樹脂の分散性をより向上させることができる。両反応性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましいが、重縮合反応及び付加重合反応の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸がより好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸が更に好ましい。但し、重合禁止剤と共に用いた場合は、フマル酸等のエチレン性不飽和結合を有する多価カルボン酸は、ポリエステルセグメントの原料モノマーとして機能する。この場合、フマル酸等は両反応性モノマーではなく、ポリエステルセグメントの原料モノマーである。
【0049】
両反応性モノマーの使用量は、低温定着性の観点から、ポリエステルセグメントのアルコール成分の合計100モルに対して、好ましくは1モル以上、より好ましくは2モル以上、更に好ましくは3モル以上であり、そして、トナーの耐久性の観点から、好ましくは20モル以下、より好ましくは10モル以下、更に好ましくは7モル以下である。
【0050】
複合樹脂におけるポリエステルセグメントとスチレン系樹脂セグメントとの質量比(ポリエステルセグメント/スチレン系樹脂セグメント)は、低温定着性の観点から、好ましくは60/40以上、より好ましくは70/30以上、更に好ましくは75/25以上であり、そして、耐久性の観点から、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは85/15以下である。なお、上記の計算において、ポリエステルセグメントの質量は、用いられる重縮合系樹脂の原料モノマーの質量から、重縮合反応により脱水される反応水の量(計算値)を除いた量であり、両反応性モノマーの量は、ポリエステルセグメントの原料モノマー量に含める。また、スチレン系樹脂セグメントの量は、スチレン系樹脂セグメントの原料モノマー量であるが、重合開始剤の量はスチレン系樹脂セグメントの原料モノマー量に含める。
【0051】
〔ウレタン変性ポリエステル樹脂〕
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、耐久性を高める観点から、例えば、1種又は2種以上のポリエステルと、ポリイソシアネート化合物と、反応させたウレタン変性ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物の価数は、好ましくは2価以上であり、そして、好ましくは8価以下、より好ましくは6価以下、更に好ましくは4価以下である。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物、並びに、これらのジイソシアネート化合物のプレポリマー型、イソシアヌレート型、ウレア型、カルボジイミド型変性体が挙げられる。
脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートが挙げられる。
【0052】
ウレタン変性ポリエステル樹脂は、常法により得られるが、例えば、1種又は2種以上のポリエステルの溶融混合物に、ポリイソシアネート化合物を添加して反応させることで得られる。
ポリイソシアネート化合物の添加量は、ポリエステル100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0053】
<結着樹脂の物性>
結着樹脂の軟化点は、耐久性及び耐ホットオフセット性を向上させる観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
【0054】
結着樹脂のガラス転移温度は、耐久性及び保存性を向上させる観点から、好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上であり、そして、トナーの低温定着性を向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である。
【0055】
結着樹脂の酸価は、トナーの帯電量の環境安定性を向上させる観点から、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上である。
【0056】
結着樹脂の数平均分子量は、耐久性及び保存性を向上させる観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは7,000以下、より好ましくは6,000以下、更に好ましくは5,500以下である。
軟化点、ガラス転移温度、酸価、数平均分子量の測定方法は、実施例に記載の方法による。2種以上の樹脂を含有する場合は、軟化点、ガラス転移温度、酸価、数平均分子量は、それぞれの加重平均値が上記範囲にあることが好ましい。
【0057】
〔樹脂H,L〕
上述の樹脂の中でも、本発明のトナーは、耐高温オフセット性及び低温定着性の観点から、軟化点が20℃以上異なる2種の樹脂を含むことが好ましい。
【0058】
軟化点の高い方の樹脂Hの軟化点は、低温定着性の観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは160℃以下であり、そして、耐高温オフセット性の観点から、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である。
【0059】
軟化点の低い方の樹脂Lの軟化点は、耐久性の観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは95℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは125℃以下、より好ましくは115℃以下である。
【0060】
樹脂Hと樹脂Lの軟化点の差は、耐高温オフセット性と低温定着性の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0061】
樹脂Hと樹脂Lの質量比(樹脂H/樹脂L)は、耐久性及び生産性の観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは40/60以上、より好ましくは50/50以上、より好ましくは60/40以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
【0062】
樹脂H及び樹脂Lは、好ましくは非晶質樹脂である。
本発明において、「非晶質樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)による吸熱の最高ピーク温度(℃)に対する軟化点(℃)の比、すなわち[(軟化点)/(吸熱の最高ピーク温度)]で定義される結晶性指数の値が1.4以上、又は0.6未満の樹脂をいう。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、実施例に記載する測定方法の条件下で観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。
樹脂H及び樹脂Lが非晶質樹脂である場合、上述の樹脂の中でも、アルコール成分として、芳香族ポリオール化合物を含む樹脂が好ましい。なお、芳香族ポリオール化合物の好ましい例、その他の好ましい例は上述の例示と同様である。
【0063】
〔樹脂C〕
上述の樹脂の中でも、本発明の電子写真用トナーは、結晶性樹脂C(以下単に「樹脂C」ともいう)を更に含有することが好ましい。
「結晶性樹脂」とは、前記結晶性指数の値が0.6以上1.4未満、好ましくは0.8以上1.2以下である樹脂をいう。
結晶性樹脂Cは、上述の樹脂の中でも、アルコール成分として、脂肪族ポリオール化合物を含む樹脂が好ましい。なお、脂肪族ポリオール化合物の好ましい例は上述の例示と同様である。
【0064】
樹脂Cの軟化点は、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下であり、そして、耐高温オフセット性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
樹脂Cの融点は、低温定着性の観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下であり、そして、耐高温オフセット性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上である。
【0065】
樹脂Cの含有量は、結着樹脂中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは8質量%以下である。
【0066】
結着樹脂中のポリエステル、スチレン系樹脂及び複合樹脂の合計含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。
【0067】
<荷電制御剤>
本発明の電子写真用トナーは、好ましくは、荷電制御剤を含有する。
特定のポリヒドロキシアミン化合物と、荷電制御剤とを組み合わせて用いることで、より優れた帯電立ち上がり性を示す電子写真用トナーを得ることができる。その理由は定かではないが、特定のポリヒドロキシアミン化合物が荷電制御剤表面に吸着し、結着樹脂との親和性の高い構造により、荷電制御剤の分散が改善されたことが、帯電の立ち上がり向上の一つの要因として推察される。
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0068】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、ベンジル酸化合物の金属化合物又はサリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
【0069】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電立ち上がり性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0070】
<着色剤>
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。
【0071】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0072】
<離型剤>
電子写真用トナーは、離型剤を含有していてもよい。
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0073】
離型剤の融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、低温定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下である。
【0074】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、結着樹脂中への分散性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
【0075】
電子写真用トナーの原料には、更に、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が適宜用いられていてもよい。
【0076】
本発明の電子写真用トナーの体積中位粒径(D
50)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
【0077】
[電子写真用トナーの製造方法]
本発明の電子写真用トナーの製造方法としては、例えば、
(1)結着樹脂を含むトナー用原料混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕してトナーを製造する方法、
(2)結着樹脂を水溶性媒体中に分散させた分散液を含むトナー用原料混合物中で、結着樹脂粒子を凝集及び融着させてトナー粒子を得ることによりトナーを製造する方法、
(3)結着樹脂を水溶性媒体中に分散させた分散液とトナー用原料を高速撹拌させてトナー粒子を得ることによりトナーを製造する方法
等が挙げられる。
なお、ポリヒドロキシアミン化合物は、いずれの工程において添加してもよい。トナーの生産性を向上させる観点、及びトナーの定着性を向上させる観点から、(1)の溶融混練法が好ましい。また、(2)の凝集及び融着法によりトナーを得てもよい。
添加時期については、分散性の観点から、(1)においては、結着樹脂含めた原料を混合する段階で添加することが好ましい。
【0078】
前記のいずれの方法でトナーを製造する場合においても、結着樹脂の使用量は、トナー中、トナーの保存性、トナーの定着性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下である。
【0079】
(1)溶融混練法
溶融混練法では、好ましくは、結着樹脂と、結着樹脂100質量部に対し0.001質量部以上5.0質量部以下の式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物とを含むトナー用原料混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕してトナーを製造する。
(1)の方法は、好ましくは下記工程1及び工程2を含む。
工程1:結着樹脂と、結着樹脂100質量部に対し0.001質量部以上5.0質量部以下の式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物とを含むトナー用原料混合物を溶融混練する工程
工程2:工程1で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
【0080】
また、工程1では、更に着色剤も溶融混練することがより好ましく、他の離型剤、荷電制御剤等の添加剤も、ともに溶融混練することが好ましい。
【0081】
溶融混練には、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、トナー中に着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤を効率よく高分散させることができる観点から、オープンロール型混練機を用いることが好ましく、該オープンロール型混練機には、ロールの軸方向に沿って供給口と混練物排出口が設けられていることが好ましい。
【0082】
結着樹脂、ポリヒドロキシアミン化合物、及び、着色剤、荷電制御剤、離型剤等のトナー用原料は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0083】
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず解放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び溶融混練時の温度を低減させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
【0084】
溶融混練の温度(ロール内の加熱温度)は、添加剤の分散性の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは、〔ポリヒドロキシアミン化合物の常圧における沸点−30℃〕以下、より具体的には、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができる。
【0085】
ロール回転周速度は、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点から、同方向回転二軸押出機の場合、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上、より好ましくは20m/min以上であり、そして、好ましくは50m/min以下、より好ましくは40m/min以下、より好ましくは30m/min以下である。
【0086】
高回転側ロールの周速度は、離型剤、着色剤、荷電制御剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐久性及び低温定着性を向上させる観点から、好ましくは2m/min以上、より好ましくは10m/min以上、さらに好ましくは25m/min以上であり、また、好ましくは100m/min以下、より好ましくは75m/min以下であり、さらに好ましくは50m/min以下である。
【0087】
低回転側ロールの周速度は、同様の観点から、好ましくは1m/min以上、より好ましくは5m/min以上、さらに好ましくは15m/min以上であり、また、好ましくは90m/min以下、より好ましくは60m/min以下、さらに好ましくは30m/min以下である。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0088】
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高め、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点から、各ロールの表面に複数の螺旋状の溝を有することが好ましい。
【0089】
工程1で得られた溶融混練物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程2に供する。
【0090】
工程2では、工程1で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する。
【0091】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、溶融混練物を硬化させて得られた樹脂混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、更に所望の粒径に微粉砕してもよい。
【0092】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、流動層式ジェットミルを用いることがより好ましい。
【0093】
分級工程に用いられる分級機としては、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
【0094】
(1)の方法は、更に下記工程3を含んでいてもよい。
工程3:分級し得られた粉体と外添剤を混合する工程
外添剤としては、疎水性シリカ、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等が挙げられ、これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0095】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の電子写真用トナー等を開示する。
<1>結着樹脂と、結着樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上5.0質量部以下の下記式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物とを含有する電子写真用トナー。
【化5】
〔式中、R
1は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
3及びR
4は、炭素数1以上5以下のアルカンジイル基を示す。R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよい。〕
【0096】
<2>ポリヒドロキシアミン化合物が、2-アミノ-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-エチル-1, 3-プロパンジオール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール、及び2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオールから選ばれる1種以上である、<1>に記載の電子写真用トナー。
<3>ポリヒドロキシアミン化合物が、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオールである、<1>又は<2>に記載の電子写真用トナー。
<4>ポリヒドロキシアミン化合物の含有量が、結着樹脂100質量部に対し、0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上であり、そして、5.0質量部以下、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下である、<1>〜<3>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<5>荷電制御剤、好ましくは負帯電性荷電制御剤、より好ましくはベンジル酸化合物の金属化合物又はサリチル酸化合物の金属化合物を更に含有する、<1>〜<4>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<6>荷電制御剤の含有量が、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である、<1>〜<5>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<7>結着樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド等の重縮合系樹脂、スチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、又はこれらの複合樹脂である、<1>〜<6>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<8>結着樹脂としては、好ましくは、アルコール成分と、カルボン酸成分と、を重縮合させて得られるポリエステル部位を少なくとも有する樹脂、及びスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有し、より好ましくは、ウレタン変性ポリエステル樹脂、ポリエステル、スチレン系樹脂、並びに、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有し、更に好ましくは、ポリエステル、スチレン系樹脂、並びに、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有する、<1>〜<7>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<9>結着樹脂として、ポリエステル、及びポリエステルセグメントを有する複合樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有する、<1>〜<8>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<10>ポリエステルのアルコール成分が、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む、<9>に記載の電子写真用トナー。
<11>結着樹脂の数平均分子量が、1,000以上、好ましくは1,500以上、より好ましくは3,000以上であり、そして、7,000以下、好ましくは6,000以下、より好ましくは5,500以下である、<1>〜<10>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<12>結着樹脂の軟化点が、90℃以上、好ましくは95℃以上、より好ましくは100℃以上であり、そして、160℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは145℃以下、更に好ましくは140℃以下である、<1>〜<11>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<13>結着樹脂のガラス転移温度が、45℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上であり、そして、80℃以下、好ましくは75℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは65℃以下である、<1>〜<12>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<14>結着樹脂の酸価が、40mgKOH/g以下、好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下であり、そして、1mgKOH/g以上、好ましくは2mgKOH/g以上である、<1>〜<13>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<15>結着樹脂として、非晶質ポリエステルを含有する、<1>〜<14>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<16>結着樹脂として、ポリエステルセグメント及びスチレン系樹脂セグメントとを有する複合樹脂を含有する、<1>〜<15>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<17>複合樹脂が、(i)ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分と、芳香族ジカルボン酸を含有するカルボン酸成分とを含む、ポリエステルセグメントの原料モノマー、(ii)スチレン系樹脂セグメントの原料モノマー、及び(iii)ポリエステルセグメントの原料モノマー及びスチレン系樹脂セグメントの原料モノマーのいずれとも反応し得る両反応性モノマーを重合させることにより得られる樹脂である、<1>〜<16>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<18>両反応性モノマーとしては、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基、好ましくは水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基、より好ましくはカルボキシ基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物、更に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及び無水マレイン酸から選ばれる少なくとも1種である、<1>〜<17>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
<19>結着樹脂として、1種又は2種以上のポリエステルと、ポリイソシアネート化合物と、反応させたウレタン変性ポリエステル樹脂を含有する、<1>〜<18>のいずれかに記載の電子写真用トナー。
【0097】
<20>結着樹脂と、結着樹脂100質量部に対し0.001質量部以上5.0質量部以下の下記式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物とを含むトナー用原料混合物を溶融混練し、得られた溶融混練物を粉砕する、電子写真用トナーの製造方法。
【化6】
〔式中、R
1は、水素原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
2は、水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、又は炭素数1以上5以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
3及びR
4は、炭素数1以上5以下のアルカンジイル基を示す。R
3及びR
4は、同一でも異なっていてもよい。〕
<21>溶融混練に、オープンロール型混練機を用いる、<20>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<22>溶融混練の温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは、〔ポリヒドロキシアミン化合物の常圧における沸点−30℃〕以下、より具体的には、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である、<20>又は<21>に記載の電子写真用トナーの製造方法。
<23>式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物の電子写真用トナーへの使用。
<24>式(1)で表されるポリヒドロキシアミン化合物の電子写真用トナーの帯電立ち上がり性を向上させるための使用。
【実施例】
【0098】
樹脂等の各物性値については次の方法により測定、評価した。
【0099】
[樹脂の酸価]
樹脂の酸価は、JIS K0070の方法に基づき測定した。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0100】
[樹脂の軟化点及びガラス転移温度]
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)吸熱の最高ピーク温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、室温(20℃)から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した試料をそのままの温度で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/分で180℃まで昇温しながら測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とした。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
(4)樹脂の数平均分子量、重量平均分子量
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、樹脂の数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwを求めた。
(4−1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、樹脂をクロロホルムに溶解させた。ついで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター(住友電気工業株式会社製、商品名「FP-200」)を用いて濾過して不溶成分を除き、試料溶液とした。
(4−2)分子量測定
下記装置を用いて、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定化させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の分子量が既知の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製;2.63×10
3、2.06×10
4、1.02×10
5、ジーエルサイエンス株式会社製;2.10×10
3、7.00×10
3、5.04×10
4)を標準試料として作成したものを用いた。
測定装置:「CO-8010」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMH
XL」+「G3000H
XL」(いずれも東ソー株式会社製)
【0101】
[トナーの体積中位粒径(D
50)]
トナーの体積中位粒径(D
50)は以下の方法で測定した。
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mLと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D
50)を求める。
【0102】
[評価:帯電立ち上がり]
温度25℃、相対湿度50%トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業株式会社製、平均粒子径90μm)19.4gとを50ml容のポリビンに入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、帯電量をQ/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量の現像剤を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。混合時間60秒後における帯電量と混合時間600秒後における帯電量の比率(混合時間60秒後における帯電量/混合時間600秒後の帯電量)を計算し、帯電立ち上がり特性評価した。
【0103】
[評価:臭気抑制性]
実施例又は比較例で得られたトナー5gを200℃のホットプレートで5分間加熱し、その臭気を10人により、ランク1〜4(1:非常に臭い、2:臭い、3:ほとんど臭わない、4:臭わない)で評価した。10人の評価結果の平均値を表に示す。
【0104】
[樹脂製造例]
製造例H1(樹脂H-1)
表1に示すフマル酸、無水トリメリット酸以外のポリエステルの原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、7h反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、20kPaにて1h反応を行った。
その後、160℃に冷却し、表1に示すセグメント(A2)(スチレン系樹脂)の原料モノマーであるスチレン、2−エチルへキシルアクリレート、両反応性モノマーであるアクリル酸、及び重合開始剤であるジブチルパーオキサイドの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、160℃にて1h保持した後、200℃に昇温し、8kPaにて0.5h反応を行った後、フマル酸及び無水トリメリット酸を添加し、1時間常圧で反応させた後、210℃に昇温し、1時間反応させた後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂H-1を得た。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう(以下同様)。
【0105】
製造例H2(樹脂H-2)
表1に示すフマル酸、無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、7h反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、190℃まで冷却を行い、フマル酸及び無水トリメリット酸を添加し、210℃まで10℃/hにて昇温を行った後、1時間常圧で反応させた後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂H-2を得た。
【0106】
製造例H3(樹脂H-3)
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、7h反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、210℃まで冷却を行い、無水トリメリット酸を添加し、1時間常圧で反応させた後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂H-3を得た。
【0107】
製造例H4(樹脂H-4)
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、185℃まで昇温し、5h反応を行い、220℃まで10℃/hにて昇温を行い、220℃にて反応率が80%以上に到達したのを確認し、210℃まで冷却を行い、無水トリメリット酸を添加し、1時間常圧で反応させた後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂H-4を得た。
【0108】
製造例H5(樹脂H-5)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットル容の四つ口フラスコにキシレン1000gを入れ、窒素雰囲気下にて125℃で攪拌しつつ、表1に示す原料の混合物を滴下ロートから、2時間かけて滴下した。更に125℃で1時間保持後、150℃で1時間還流を行った後、反応系内を、200℃、8.0kPaに保持し、2時間かけてキシレンを除去し、樹脂H-5を得た。
【0109】
製造例H6(樹脂H-6)
表1に示すフマル酸、無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、7時間反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、190℃まで冷却を行い、フマル酸及び無水トリメリット酸を添加し、210℃まで10℃/hにて昇温を行った後、1時間常圧で反応させた。その後、8kPaにて反応を行いポリエステルを得た。更に、得られた樹脂100質量部に対し、イソホロンジイソシアネート2質量部を添加し、180℃にて30分反応させた。
【0110】
【表1-1】
【0111】
【表1-2】
【0112】
製造例L1(樹脂L-1)
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、10h反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、無水トリメリット酸を添加し、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂L-1を得た。
【0113】
製造例L2(樹脂L-2)
表2に示す、ポリエステルの原料モノマー、エステル化触媒、及び助触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、160℃に昇温し、表2に示すビニル系樹脂の原料モノマーであるスチレン、2−エチルへキシルアクリレート、両反応性モノマーであるアクリル酸、及び重合開始剤であるジブチルパーオキサイドの混合物を1時間かけて滴下した。滴下後、160℃にて1h保持した後、235℃まで昇温し、10h反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂L-2を得た。
【0114】
製造例L3(樹脂L-3)
窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱伝対を装備した5リットル容の四つ口フラスコにキシレン1000gを入れ、窒素雰囲気下にて135℃で攪拌しつつ、表2に示す原料の混合物を滴下ロートから、2時間かけて滴下した。更に135℃で1時間保持後、150℃で1時間還流を行った後、反応系内を、200℃,8.0kPaに保持し、2時間かけてキシレンを除去し、樹脂L-3を得た。
【0115】
製造例L4(樹脂L-4)
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、10h反応を行い、反応率が80%以上に到達したのを確認し、無水トリメリット酸を添加し、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂L-1を得た。更に、得られた樹脂100質量部に対し、イソホロンジイソシアネート2質量部を添加し、180℃にて30分反応させた。
【0116】
【表2】
【0117】
製造例C1, C2(樹脂C-1, C-2)
表3に示す原料モノマー、及びエステル化触媒を、温度計、ステンレス製攪拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、5h反応を行い、200℃まで10℃/hにて昇温を行い、200℃で反応率が80%以上に到達したのを確認し8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂C-1(結晶性ポリエステル)を得た。また、同様にして樹脂C-2(結晶性ポリエステル)を得た。
【0118】
【表3】
【0119】
[電子写真用トナーの製造]
実施例及び比較例
表4に示す樹脂を混合した結着樹脂100質量部、ポリヒドロキシアミン化合物、着色剤「Regal 330R」(キャボット社製、カーボンブラック)5質量部、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット株式会社製)1質量部及び離型剤「NP-105」(三井化学株式会社製、ポリプロピレンワックス、融点:140℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーにて攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱温度は120℃であり、混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を冷却ローラーで圧延冷却した後、ジェットミルで体積中位粒径(D
50)6.5μmの粉体を得た。
【0120】
得られた粉体100質量部に、外添剤「アエロジルR-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、平均粒子径:16nm)1.0質量部及び「SI-Y」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒径(D
50)6.5μmのトナーを得た。得られたトナーの評価を行い表4に示した。
【0121】
(ポリヒドロキシアミン化合物添加方法)
表中で示す添加方法は、以下のとおりである。
添加法A…粉末のまま添加
添加法B…水溶液添加:ポリヒドロキシアミン化合物100gを200gのイオン交換水に溶解させ、50質量%のポリヒドロキシアミン化合物水溶液を調製した。
【0122】
表中、ポリヒドロキシアミン化合物は、以下のとおりである。
PHA-1:2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1, 3-プロパンジオール
PHA-2:2-アミノ-2-ヒドロキシエチル-1, 3-プロパンジオール
PHA-3:2-アミノ-2-メチル-1, 3-プロパンジオール
【0123】
【表4】
【0124】
以上、本発明の実施例の電子写真用トナーによれば、特定のポリヒドロキシアミン化合物を含有することで、比較例の電子写真用トナーに比較して、優れた帯電立ち上がり性を示すと理解できる。