(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(発明の概要)
本発明は、大規模な豪雨災害発生時に、河川が氾濫した地域で救援活動を行う地方自治体、消防局等に対して、救援活動を行うために必要な情報を提供する。また、本発明は、端末装置、例えば、スマートフォン等のアプリケーションを介して、一般市民の自発的な提供情報を大量に受け取って、現場の状況を迅速に分析することで、救助活動の支援を行う。
【0019】
具体的には、災害の現場にいる一般市民が、自身の所有する端末装置を介して、自発的に定型化した通報情報(画像情報、位置情報、方位情報)を、分析装置に送信する。これにより、分析装置は、送信されてきた大量の通報情報を受け取って、受け取った通報情報
を、地域ごとの災害状況データにリアルタイムに加工する。リアルタイムに加工された災害状況データを、地方自治体及び消防局等が活用することで、迅速な救助活動が可能となる。
【0020】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、地域監視システム、分析装置、地域監視方法、及びプログラムをについて、
図1〜
図14を参照しながら説明する。
【0021】
[システム構成]
最初に、
図1を用いて、本実施の形態における地域監視システムの概略構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態における地域監視システムの概略構成を示す構成図である。
【0022】
図1に示す、本実施の形態における地域監視システム10は、災害発生時等において地域を監視するための装置である。
図1に示すように、地域監視システム10は、端末装置20と、分析装置30とを備えている。
【0023】
端末装置20は、画像情報、端末装置20の位置を示す位置情報、及び端末装置20の方位を示す方位情報を、通報情報として送信する。また、分析装置30は、複数の通報情報が送信されてきた場合に、複数の通報情報を、位置情報及び方位情報の類似性に基づいて、グループ分けする。更に、分析装置30は、グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する。
【0024】
このように、分析装置30は、多数の端末装置から通報情報が送信されてくると、分析処理として、これらを、その位置情報及び方位情報の類似性に基づいて、グループ分けを実行し、その結果が地図上で示されるようにする。言い換えると、分析装置30における分析処理は、多数の端末装置から通報情報が送信されてきた場合を想定した処理であり、このような場合において、分析処理の遅延を抑制することができる。
【0025】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、端末装置20は、一般の人の端末装置であり、1台のみならず、複数存在している。そして、端末装置20と分析装置30とは、モバイルネットワーク(携帯電話網)40を介して接続されている。
【0026】
更に、
図1に示すように、地域監視システム10は、モバイルネットワーク40を介して、消防防災システム50にも接続されている。消防防災システム50は、災害時に救助活動を行う消防局が保有する消防局監視装置51と、現地で救助活動を行う救助従事者が使用する支援用端末装置52とを備えている。また、消防局監視装置51と、支援用端末装置52とは、消防防災通信ネットワーク53とによって接続されている。消防防災システム50の詳細については後述する。
【0027】
[装置構成]
続いて、
図2〜
図9を用いて、地域監視システム10を構成している各装置の構成及び機能について説明する。
図2は、本発明の実施の形態における地域監視システムの構成を具体的に示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、本実施の形態では、端末装置20及び分析装置30は、モバイルネットワーク40を構成するネットワーク制御装置41に接続されている。ネットワーク制御装置41は、通信制御機能を備え、モバイルネットワーク40と端末装置20及び分析装置30との通信を管理している。
【0029】
端末装置:
ここで、
図2及び
図3を用いて、端末装置20について説明する。
図2の例では、説明のため、単一の端末装置20のみが示されているが、本実施の形態では、端末装置20は複数存在していても良い。各端末装置20は、同様の構成を備えている。
【0030】
図2に示すように、端末装置20は、本実施の形態では、撮像部21と、GPS(Global Positioning System)受信機22と、方位センサ23と、表示部25と、データ処理部24とを備えている。端末装置20は、具体的には、カメラ機能を備えた、スマートフォン、タブレット型端末等である。
【0031】
撮像部21は、カメラユニットであり、固体撮像素子、制御回路等を備えている。撮像部21は、操作者によって撮影が指示されると、撮影を行い、得られた画像データを、データ処理部24に出力する。また、表示部25は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。
【0032】
GPS受信機22は、GPS衛星が発信するGPS信号を受信して、位置を測定する。また、GPS受信機22は、測定した位置を示す情報を、位置情報として、データ処理部24に出力する。
【0033】
方位センサ23は、端末装置20の方位を測定し、測定した方位を示す方位情報を、データ処理部24に出力する。ここで、「端末装置の方位」とは、例えば、端末装置20がスマートフォンであれば、最上部(画面上方側の部分)が向いている方向である。通常、「端末装置の方位」は、その端末装置において設定されている。また、方位情報は、例えば、0〜359の値で表される。この場合、「0」が真北を示し、時計回りに「90」が真東を示し、「180」が真南を示し、「270」が真西を示す。
【0034】
データ処理部24は、端末装置20に予めインストールされたアプリケーションプログラムによって構築されており、各種処理を実行する。具体的には、データ処理部24は、まず、
図3に示すように、表示部25の画面上に専用のGUI(Graphical User Interface)を表示させる。
【0035】
図3は、本発明の実施の形態において端末装置の画面に表示されるGUIの一例を示す図である。
図3に示すように、画面上には、撮像部21によって撮影されている画像26と、状況コードの一覧27と、通報ボタン28とが、表示される。状況コードは、豪雨、暴風雨、崖崩れといった現場の状況毎に、予め割り当てられているコードであり、操作者によってGUI上で選択される。
【0036】
図3に示すGUIが画面に表示されると、端末装置20の操作者は、画像26が被写体としたい現場となるように、端末装置20の位置を調整した後、状況コードを選択する。
図3の例では、選択された状況コードには、「●」が付与されている。その後、操作者は、通報ボタン28をタッチする。
【0037】
通報ボタン28がタッチされると、データ処理部24は、撮像部21に撮影を実行させ、画像情報として、画像データのファイルを出力させ、これを取得する。また、データ処理部24は、GPS受信機22から位置情報を取得し、方位センサ23から方位情報を取得する。そして、データ処理部24は、本実施の形態では、画像情報を構成するファイルのデータ書き込み領域に位置情報を書き込み、画像情報のファイル名に方位情報を付加し、得られた画像情報を、通報情報として、分析装置30に送信する。
【0038】
具体的には、本実施の形態では、撮像部21は、画像データのファイルとして、例えば
、JPEGファイルを出力する。この場合、データ処理部24は、JPEGファイルに規定化されているEXIF情報(Exchangeable image file format:付加情報)に、GPS受信機22から取得した位置情報を書き込む。また、データ処理部は、方位センサ23から取得した方位情報(0〜359:0=真北)と、GUI上で選択された状況コードの値とを、JPEGファイルの名前に付与する。
【0039】
このように、本実施の形態では、通報情報は、JPEGファイルを加工することによって得られており、最小のサイズで、必要な情報を全て含んでいる。災害時においては、通信環境が不安定になる可能性が高いと考えられることから、このような通報情報を用いることは有益である。
【0040】
分析装置:
続いて、
図4〜
図8を用いて、分析装置30について説明する。
図2に示すように、分析装置30は、モバイルネットワーク40(
図1参照)を介して、端末装置20が送信した通報情報を受信し、受信した通報情報に基づいて、監視対象となる地域における状況の分析を行う。また、分析装置30は、分析結果を示す表示データを作成し、これを、モバイルネットワーク40を介して、消防防災システム50に送信する。
【0041】
また、
図2に示すように、本実施の形態では、分析装置30は、情報管理部31と、記憶部32と、グルーピング部33と、表示データ作成部34と、を備えている。このうち、情報管理部31は、各端末装置20から通報情報が送信されてくると、これらを受信し、受信した各通報情報に識別子を付与する。そして、情報管理部31は、各通報情報から、画像情報、位置情報、及び方位情報、それぞれを抽出し、抽出した各情報と識別子とを紐付け状態で、これらを記憶部32に格納する。
【0042】
具体的には、上述したように、端末装置20から、通報情報として、JPEGファイル(任意名_方位_状況コード.jpeg)が送信されてくると、情報管理部31は、受信したJPEGファイルそれぞれに、識別子(通報XXXX)を付与する。更に、情報管理部31は、通報情報であるJPEGファイルから画像部分を抽出し、そのEXIF情報から位置情報を抽出し、JPEGファイルのファイル名から方位情報と状況コードとを抽出する。
【0043】
そして、
図4に示すように、情報管理部31は、抽出した各情報と識別子とを互いに紐付けた状態で、通報情報を記憶部32に格納する。
図4は、本発明の実施の形態において分析装置において蓄積されている通報情報の一例を示す図である。
【0044】
グルーピング部33は、複数の通報情報が送信されてきた場合に、複数の通報情報を、位置情報及び方位情報の類似性に基づいて、グループ分けする。また、グルーピング部33は、本実施の形態では、広域、地域、地区といった、地図の縮尺に合わせて段階毎にグルーピングを行うことができる。
【0045】
具体的には、グルーピング部33は、まず、記憶部32に格納されている通報情報を取得する。そして、グルーピング部33は、広域でのグルーピングのため、取得した通報情報を、その位置情報が特定する位置に基づいて、予め設定されている地域毎にグループ分けする。続いて、グルーピング部33は、地域内でのグルーピングのため、地域を細分化する地区毎に、各グループの通報情報を、その位置に基づいて更にグループ分けする。
【0046】
また、上述したように2段階でグループ化した後、グルーピング部33は、地区内において、更に細分化したグループ分けを行う。例えば、地区毎に、複数の通報情報の中から、まず、1つの基準となる通報情報(以下「基準通報情報」と表記する)を選択する。そして、グルーピング部33は、同じ地区内の残りの通報情報の中から、設定条件を満たす
通報情報を特定し、特定した通報情報と基準通報情報とを1つのグループとする。設定条件としては、例えば、位置が基準通報情報の位置から100m以内にあり、且つ、方位が基準通報情報の方位から5度以内ある、こと等が挙げられる。また、上記グループの設定後、同じ地区内に未だグルーピングされていない通報情報が残っている場合は、グルーピング部33は、残りの通報情報の中から、新たに基準通報情報を選択し、上記と同様にして地区内に新たなグループを設定する。
【0047】
図5は、本発明の実施の形態で行われたグループ分けの一例を示す図である。
図5の例では、各通報情報(通報XXXX)は、地域毎、及び地区毎にグループ分けされた後、更に、地区内でもグループ分けされている。
【0048】
表示データ作成部34は、グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する。この場合において、表示データ作成部34は、縮尺の異なる複数の電子地図毎に、例えば、広域、地域、地区といった縮尺で、表示データを作成することもできる。
【0049】
また、表示データ作成部34は、グループを構成する通報情報の数と、各通報情報に含まれる方位情報が示す方位と、を表現しているオブジェクトが、電子地図上に表示されるように、表示データを作成することもできる。加えて、表示データ作成部34は、設定間隔をおいて、作成した表示データを更新することもできる。
【0050】
ここで、
図6〜
図9を用いて、表示データ作成部34によって作成される表示データの具体例について説明する。
図6〜
図9は、それぞれ、本発明の実施の形態において作成される表示データの一例(第1例〜第4例)を示す図である。また、これらの図のうち、
図6〜
図8は、電子地図の縮尺の点で異なっている。
【0051】
図6の例では、表示データ作成部34は、地域毎に設定されたグループを示すオブジェクトが表示されるように、対応する縮尺の電子地図を用いて、表示データを作成している。また、
図6の例では、オブジェクトは円であり、地域毎のグループに属する通報情報の数に応じて円の直径が調整されている。
【0052】
図7の例では、表示データ作成部34は、特定の地域(A地域)内の地区毎に設定されたグループを示すオブジェクトが表示されるように、対応する縮尺の電子地図を用いて、表示データを作成している。また、
図7の例でも、オブジェクトは円であり、地区毎のグループに属する通報情報の数に応じて円の直径が調整されている。なお、特定の地域は、後述するように、消防防災システム50から指定される。
【0053】
図8の例では、表示データ作成部34は、特定の地区(X地区)内に設定されたグループを示すオブジェクトが表示されるように、対応する縮尺の電子地図を用いて、表示データを作成している。
図8の例では、オブジェクトは、通報情報の方位を示す矢印の集合で構成されており、矢印の数は、グループを構成する通報情報の数に対応している。なお、特定の地区は、後述するように、消防防災システム50から指定される。
【0054】
図9の例では、表示データ作成部34は、
図8に示した表示データの縮小版と、
図8に示す特定の地区での状況コードの集計結果と、特定の地区内の特定のグループを構成する各通報情報の画像とを組み合わせて、表示データを作成している。なお、特定のグループは、後述するように、消防防災システム50から指定される。
【0055】
また、分析装置30は、表示データ作成部34に作成された各表示データを、消防防災システム50からの指示に応じて送信する。例えば、消防防災システム50が、特定の地
域を指定すると、指定された地域について表示データを作成し、これを送信する(
図7参照)。また、消防防災システム50が、特定の地区を指定すると、指定された地区について表示データを作成し、これを送信する(
図8参照)。更に、消防防災システム50が、特定の地区内のいずれかのグループを指定すると、指定されたグループについて表示データを作成し、これを送信する(
図9参照)。
【0056】
消防防災システム:
続いて、
図2を用いて、消防防災システム50について説明する。
図2に示すように、消防防災システム50において、消防局監視装置51及び支援用端末装置52は、消防防災通信ネットワーク53を構成するネットワーク制御装置54に接続されている。ネットワーク制御装置54は、通信制御機能を備え、消防局監視装置51と支援用端末装置52との通信を管理している。
【0057】
また、ネットワーク制御装置54は、モバイルネットワーク40を構成するネットワーク制御装置41にも接続されており、消防局監視装置51と分析装置30とのモバイルネットワーク40を介した通信も管理している。
【0058】
消防局監視装置51は、装置の管理者からの指示に応じて、広域、地域、地区といったレベルを指定して、分析装置30に対して、表示データの作成を指示する。消防局監視装置51から指示を受けると、分析装置30は、指示に従って、上述したように表示データを作成し、これを送信する。
【0059】
消防局監視装置51は、分析装置30から送信されてきた表示データを受け取ると、これを、表示画面に表示する。また、管理者は、更に細分化された表示データが必要な場合は、地域、地区、又は矢印を指定して(
図6〜
図9参照)、細分化された表示データを要求する。そして、管理者は、送信されてきた表示データによって表示された情報から、災害地域の状況を把握し、救助活動の優先順を決定する。その後、管理者は、消防局監視装置51から、支援用端末装置52に対して指示を送信する。現地の救助従事者は、支援用端末装置52で指示を受信すると、受信した指示に沿って救助活動を実行する。
【0060】
[システム動作]
次に、本発明の実施の形態1における地域監視システム10の動作について、
図10〜
図13を用いて説明する。以下の説明においては、適宜
図1〜
図9を参照する。また、本実施の形態では、地域監視システム10を動作させることによって、地域監視方法が実施される。よって、本実施の形態における地域監視方法の説明は、以下の地域監視システム10の動作説明に代える。
【0061】
端末装置:
最初に、
図10を用いて、端末装置20の動作について説明する。
図10は、本発明の実施における端末装置の動作を示すフロー図である。
【0062】
図10に示すように、最初に、データ処理部24は、まず、
図3に示すように、表示部25の画面上に専用のGUIを表示させる(ステップA1)。次に、データ処理部24は、撮像部21から出力されてきた画像データを用いて、撮影対象となる領域の画像を、GUI内に表示させる(ステップA2)
【0063】
次に、データ処理部24は、操作者がGUI上で、状況コードを選択すると、選択された状況コードを特定する(ステップA3)。次に、データ処理部24は、操作者が通報ボタン28をタッチして、通報を指示すると、通報の指示を受け付ける(ステップA4)。
【0064】
続いて、データ処理部24は、通報の指示を受け付けると、通報情報を作成し(ステップA5)、作成した通報情報を分析装置30に送信する(ステップA6)。
【0065】
具体的には、ステップA5では、データ処理部24は、撮像部21に撮影を実行させ、画像情報として、画像データのファイルを取得する。また、データ処理部24は、GPS受信機22から位置情報を取得し、方位センサ23から方位情報を取得する。そして、データ処理部24は、画像情報を構成するファイルのデータ書き込み領域に位置情報を書き込み、画像情報のファイル名に、状況コードと方位情報とを付加し、得られた画像情報を、通報情報とする。
【0066】
分析装置:
次に、
図11を用いて、分析装置30で行われる情報管理処理について説明する。
図11は、本発明の実施の形態における分析装置の情報管理処理時の動作を示すフロー図である。
【0067】
図11に示すように、最初に、分析装置30において、情報管理部31は、各端末装置20から送信されてきた通報情報を受信する(ステップB1)。次に、情報管理部31は、受信した各通報情報に識別子を付与する(ステップB2)。
【0068】
次に、情報管理部31は、ステップB2にて識別子が付与された各通報情報から、画像情報、位置情報、及び方位情報、それぞれを抽出し、抽出した各情報と識別子とを紐付ける(ステップB3)。
【0069】
具体的には、通報情報として、JPEGファイル(任意名_方位_状況コード.jpeg)を受信した場合は、ステップB3において、情報管理部31は、受信したJPEGファイルから画像部分を抽出する。また、情報管理部31は、JPEGファイルのEXIF情報から位置情報を抽出し、JPEGファイルのファイル名から方位情報と状況コードとを抽出する。
【0070】
次に、情報管理部31は、基準時から現在までの経過時間が保管周期を満了しているかどうかを判定する(ステップB4)。基準時は、例えば、最初に通報情報を受信した時点などに設定されてる。
【0071】
ステップB4の判定の結果、基準時から現在までの経過時間が保管期間を満了していない場合は、情報管理部31は、ステップB1を実行する。一方、ステップB4の判定の結果、基準時から現在までの経過時間が保管期間を満了している場合は、情報管理部31は、ステップB1〜B3の処理の対象となった通報情報を、記憶部32に格納する(ステップB5)。
【0072】
ステップB1〜B5の実行により、
図4に示すように、端末装置20から送信されてきた通報情報は、抽出された各情報と識別子とが互いに紐付けられた状態で、記憶部32に格納される。
【0073】
続いて、
図12を用いて、分析装置30で行われるグルーピング処理について説明する。
図12は、本発明の実施の形態における分析装置のグルーピング処理時の動作を示すフロー図である。
【0074】
図12に示すように、最初に、分析装置30において、グルーピング部33は、記憶部32に格納されている通報情報を、その位置情報が特定する位置に基づいて、予め設定されている地域毎にグループ分けする(ステップC1)。
【0075】
次に、グルーピング部33は、ステップC1で得られた地域毎のグループそれぞれにおいて、その地域を細分化する地区毎に、各グループの通報情報を、その位置に基づいて更にグループ分けする(ステップC2)。
【0076】
次に、グルーピング部33は、ステップC2で得られた地区毎のグループそれぞれにおいて、更に細分化したグループ分けを行う(ステップC3)。
【0077】
具体的には、ステップC2では、グルーピング部33は、地区毎のグループそれぞれにおいて、まず、1つの基準通報情報を選択し、残りの通報情報の中から、上述した設定条件を満たす通報情報を特定し、特定した通報情報と基準通報情報とを1つのグループとする。また、同じ地区内に未だグルーピングされていない通報情報が残っている場合は、グルーピング部33は、残りの通報情報の中から、新たに基準通報情報を選択し、上記と同様にして地区内に新たなグループを設定する。
【0078】
ステップC1〜C3の実行により、
図5に示すように、各通報情報(通報XXXX)は、地域毎、及び地区毎にグループ分けされた後、更に、地区内でもグループ分けされる。
【0079】
続いて、
図13を用いて、分析装置30で行われる表示データの作成処理について説明する。
図13は、本発明の実施の形態における分析装置の表示データの作成処理時の動作を示すフロー図である。
【0080】
図13に示すように、最初に、分析装置30は、消防局監視装置51から送信されてきた、表示データの作成の要求を受け付ける(ステップD1)。
【0081】
次に、分析装置30において、表示データ作成部34は、表示データの作成の要求におけるレベルが広域であるかどうかを判定する(ステップD2)。
【0082】
ステップD2の判定の結果、レベルが広域である場合は、表示データ作成部34は、地域毎に設定されたグループを示すオブジェクトが表示されるように、対応する縮尺の電子地図を用いて、表示データを作成する(ステップD3)。
【0083】
具体的には、ステップD3では、表示データ作成部34は、
図6に示すように、地域毎のグループに属する通報情報の数に応じて直径が設定された円を、グループを示すオブジェクトとして、表示データを作成する。
【0084】
ステップD2の判定の結果、レベルが広域でない場合は、表示データ作成部34は、表示データの作成の要求におけるレベルが地域であるかどうかを判定する(ステップD4)。
【0085】
ステップD4の判定の結果、レベルが地域である場合は、要求において指定された地域を特定し、特定した地域内の地区毎に設定されたグループを示すオブジェクトが表示されるように、対応する縮尺の電子地図を用いて、表示データを作成する(ステップD5)。
【0086】
具体的には、ステップD5では、表示データ作成部34は、
図7に示すように、地区毎のグループに属する通報情報の数に応じて直径が設定された円を、グループを示すオブジェクトとして、表示データを作成する。
【0087】
ステップD4の判定の結果、レベルが地域でない場合は、表示データ作成部34は、表示データの作成の要求におけるレベルが地区であるかどうかを判定する(ステップD6)
。
【0088】
ステップD6の判定の結果、レベルが地区である場合は、表示データ作成部34は、要求において指定された地区を特定し、特定した地区内に設定されたグループを示すオブジェクトが表示されるように、対応する縮尺の電子地図を用いて、表示データを作成する(ステップD7)。
【0089】
具体的には、ステップD7では、表示データ作成部34は、
図8に示すように、通報情報の方位を示す矢印の集合で構成され、且つ、矢印の数が、グループを構成する通報情報の数に対応している、オブジェクトを作成し、このオブジェクトが表示されるように表示データを作成する。
【0090】
ステップD6の判定の結果、レベルが地区でない場合は、消防局監視装置51の管理者は、特定の地区内の特定のグループ(矢印の集合)を指定している。従って、この場合は、表示データ作成部34は、
図9に示すように、地区毎の表示データの縮小版と、状況コードの集計結果と、各通報情報の画像とを組み合わせて、表示データを作成する(ステップD8)。
【0091】
ステップD3、ステップD5、ステップD7、又はステップD8が実行されると、分析装置30は、消防局監視装置51からの要求の応答として、これらのステップで作成された表示データを送信する(ステップD9)。
【0092】
以上のステップD1〜D9の実行により、消防局監視装置51は、分析装置30から送信されてきた表示データを受け取り、これを、表示装置の画面に表示する。そして、管理者は、送信されてきた表示データによって表示された情報から、災害地域の状況を把握し、救助活動の優先順を決定する。その後、管理者は、消防局監視装置51から、支援用端末装置52に対して指示を送信する。
【0093】
[実施の形態における効果]
以上のように本実施の形態によれば、多数の端末装置20から送信されてきた通報情報に対して、迅速に分析処理を行うことができる。つまり、本実施の形態によれば、対象エリアの災害についての大量の情報を、局所毎に災害の状況を示すデータにリアルタイムに加工することができる。このため、地方自治体、消防局等においては、優先度をつけて、迅速に救助活動を行うことが可能となる。また、救助活動中において、臨機応変に、人員の再配分、救命ルートの変更を判断することも可能となる。
【0094】
また、本実施の形態では、通報情報において個人情報は特定されないので、一般市民による通報の抵抗感をなくすことができ、大量の通報情報の収集が可能となるので、災害の状況を精度良く特定することが可能となる。更に、本実施の形態では、通報情報そのもののデータ量を小さくすることができるので、通信負荷の軽減を図ることができる。また、通報情報をデータ量の小さい形式に定型化することで、分析装置30における処理速度の向上も図られることになる。
【0095】
[変形例]
上述した例では、グルーピング処理及び表示データの作成処理は、地域、地区、地区内の箇所の3段階で行われているが、本実施の形態は、グルーピング処理及び表示データの作成処理は、4段階以上であっても良いし、2段階以下であっても良い。
【0096】
また、本実施の形態では、画像情報、位置情報、及び方位情報を含む通報情報が用いられているが、通報情報は、これらの情報以外の情報を更に含んでいても良い。また、一般
市民に通報情報を自発的に発信させ、これをビッグデータとしてリアルタイムに分析して活用するにあたり、分析装置30は、通報情報を、交通情報及び気象情報等と連携させて、分析を行っても良い。この場合は、消防防災システム50側において、災害現場の状況及び時間変化を詳細に把握することが可能となる。
【0097】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図11に示すステップB1〜B5、
図12に示すステップC1〜C3、及び
図13に示すステップD1〜D9を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における分析装置30及び地域監視方法を実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、情報管理部31、グルーピング部33、及び表示データ作成部34として機能し、処理を行なう。
【0098】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、情報管理部31、グルーピング部33、及び表示データ作成部34のいずれかとして機能しても良い。
【0099】
ここで、本実施の形態におけるプログラムを実行することによって、分析装置30を実現するコンピュータについて
図14を用いて説明する。
図14は、本発明の実施の形態における分析装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0100】
図14に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。また、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていても良い。
【0101】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0102】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0103】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0104】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexib
le Disk)等の磁気記録媒体、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0105】
なお、本実施の形態における分析装置30は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによっても実現可能である。更に、分析装置30は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【0106】
上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)〜(付記16)によって表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0107】
(付記1)
端末装置と分析装置とを備え、
前記端末装置は、画像情報、前記端末装置の位置を示す位置情報、及び前記端末装置の方位を示す方位情報を、通報情報として送信し、
前記分析装置は、
複数の前記通報情報が送信されてきた場合に、複数の前記通報情報を、前記位置情報及び前記方位情報の類似性に基づいて、グループ分けし、
グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する、
ことを特徴とする、地域監視システム。
【0108】
(付記2)
付記1に記載の地域監視システムであって、
前記端末装置が、前記画像情報を構成するファイルのデータ書き込み領域に前記位置情報を書き込み、前記画像情報のファイル名に前記方位情報を付加し、得られた前記画像情報を、前記通報情報として送信する、
ことを特徴とする、地域監視システム。
【0109】
(付記3)
付記1または2に記載の地域監視システムであって、
前記分析装置が、
縮尺の異なる複数の電子地図毎に、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、地域監視システム。
【0110】
(付記4)
付記1〜3のいずれかに記載の地域監視システムであって、
前記分析装置が、
前記グループを構成する前記通報情報の数と、それに含まれる前記方位情報が示す方位と、を表現している前記オブジェクトが、前記電子地図上に表示されるように、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、地域監視システム。
【0111】
(付記5)
端末装置から、画像情報、前記端末装置の位置を示す位置情報、及び前記端末装置の方位を示す方位情報が、通報情報として、複数送信されてきた場合に、複数の前記通報情報を、前記位置情報及び前記方位情報の類似性に基づいて、グループ分けする、グルーピング部と、
グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する、表示データ作成部と、
を備えている、ことを特徴とする、分析装置。
【0112】
(付記6)
付記5に記載の分析装置であって、
前記端末装置が、前記画像情報を構成するファイルのデータ書き込み領域に前記位置情報を書き込み、前記画像情報のファイル名に前記方位情報を付加し、得られた前記画像情報を、前記通報情報として送信する、
ことを特徴とする、分析装置。
【0113】
(付記7)
付記5または6に記載の分析装置であって、
前記表示データ作成部が、縮尺の異なる複数の電子地図毎に、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、分析装置。
【0114】
(付記8)
付記5〜7のいずれかに記載の分析装置であって、
前記表示データ作成部が、前記グループを構成する前記通報情報の数と、それに含まれる前記方位情報が示す方位と、を表現している前記オブジェクトが、前記電子地図上に表示されるように、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、分析装置。
【0115】
(付記9)
端末装置と分析装置とを用いた方法であって、
(a)前記端末装置によって、画像情報、前記端末装置の位置を示す位置情報、及び前記端末装置の方位を示す方位情報を、通報情報として送信する、ステップと、
(b)前記分析装置によって、複数の前記通報情報が送信されてきた場合に、複数の前記通報情報を、前記位置情報及び前記方位情報の類似性に基づいて、グループ分けする、ステップと、
(c)前記分析装置によって、グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する、ステップと、
を有する、ことを特徴とする、地域監視方法。
【0116】
(付記10)
付記9に記載の地域監視方法であって、
前記(a)のステップにおいて、前記端末装置が、前記画像情報を構成するファイルのデータ書き込み領域に前記位置情報を書き込み、前記画像情報のファイル名に前記方位情報を付加し、得られた前記画像情報を、前記通報情報として送信する、
ことを特徴とする、地域監視方法。
【0117】
(付記11)
付記9または10に記載の地域監視方法であって、
前記(c)のステップにおいて、縮尺の異なる複数の電子地図毎に、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、地域監視方法。
【0118】
(付記12)
付記9〜11のいずれかに記載の地域監視方法であって、
前記(c)のステップにおいて、前記グループを構成する前記通報情報の数と、それに含まれる前記方位情報が示す方位と、を表現している前記オブジェクトが、前記電子地図
上に表示されるように、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、地域監視方法。
【0119】
(付記13)
コンピュータに、
(a)端末装置から、画像情報、前記端末装置の位置を示す位置情報、及び前記端末装置の方位を示す方位情報が、通報情報として、複数送信されてきた場合に、複数の前記通報情報を、前記位置情報及び前記方位情報の類似性に基づいて、グループ分けする、ステップと、
(b)グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する、ステップと、
を実行させる、プログラム。
【0120】
(付記14)
付記13に記載のプログラムであって、
前記端末装置が、前記画像情報を構成するファイルのデータ書き込み領域に前記位置情報を書き込み、前記画像情報のファイル名に前記方位情報を付加し、得られた前記画像情報を、前記通報情報として送信する、
ことを特徴とする、プログラム。
【0121】
(付記15)
付記13または14に記載のプログラムであって、
前記(b)のステップにおいて、縮尺の異なる複数の電子地図毎に、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、プログラム。
【0122】
(付記16)
付記13〜15のいずれかに記載のプログラムであって、
前記(b)のステップにおいて、前記グループを構成する前記通報情報の数と、それに含まれる前記方位情報が示す方位と、を表現している前記オブジェクトが、前記電子地図上に表示されるように、前記表示データを作成する、
ことを特徴とする、プログラム。
【解決手段】地域監視システム10は、端末装置20と分析装置30とを備える。端末装置20は、画像情報、端末装置20の位置を示す位置情報、及び端末装置20の方位を示す方位情報を、通報情報として送信する。分析装置30は、複数の通報情報が送信されてきた場合に、複数の通報情報を、位置情報及び方位情報の類似性に基づいて、グループ分けし、グループ分けによって得られたグループを示すオブジェクトを電子地図上に表示するための、表示データを作成する。